説明

酸含浸活性化炭素とその形成方法及び使用方法

酸含浸活性化炭素マトリックスが鉱酸の添加により炭素質物質から形成され、アンモニアをガス流から化学吸着するのに用いられ得る。該アンモニアは該酸と反応して肥料剤塩を形成する。使用済みマトリックスは肥料剤として用いられ得るか、又は該肥料剤塩が該マトリックスから溶出され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機酸で含浸された活性化炭素マトリックスを含む組成物とその製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは工業及び農業において重要な化学物質である。それは多くのポリマー及び織物の製造に用いられており、並びに窒素肥料の必須成分である。
空気中又は水中に見出されるアンモニアは、尿素、タンパク質、及び他の窒素有機物質の分解、又は工業又は農業におけるその使用中のアンモニアの偶発的な漏出から生じ得る。空気中のアンモニアは、許容される暴露時間に依存して百万部分当たり25〜500部分の濃度でヒト及び動物に有毒である。いかなる濃度でも、空気中のアンモニアは二酸化硫黄などの酸性成分と結合して、直径2.5μm未満(PM2.5)の粒状物質を形成し、これは特にヒトの呼吸器官内深くに浸透し得る有毒な汚染物質である。さらに、空中のアンモニアは金属構造の腐食を引き起こし、悪臭問題の主要要因と考えられている。
【0003】
アンモニアは高度な水溶性であり、これは高濃度で魚の大量死を引き起こし、藻類の集合体の成長を刺激することによって富栄養化及び酸素の減少に寄与し得る。
アンモニアは複数の方法で空気中から除去され得る。第一に、最も安価にはアンモニア含有空気を低アンモニア濃度の空気で希釈することで、許容濃度が達成される。しかし、この"希釈"方法はアンモニアを広い領域に分散し、それによってPM2.5の形成に寄与する。密閉された家畜運営場では、毒性濃度のアンモニアが動物の尿が堆積した結果に増加した場合、内部の空気を追い出し、外部の空気を"入れ替え空気"として入れる。しかし、寒い気候条件下では、アンモニア含有空気の除去は、納屋内の一定の温度を保つために取り替える空気を加熱する必要がある。
【0004】
別の選択肢は、水にバブリングすることによってアンモニアを空気中から除去し、それによってアンモニア水としての該アンモニア及びアンモニウムイオン(NH4+)を捕獲することである。しかし、アンモニウム濃度が増加すると、水のpHが増加してアンモニアが再び空気中に放出される。さらに、希薄なアンモニア処理水は価値がなく、さらに処理しなければならない。第三の選択肢はおそらく最も一般的であり、アンモニア含有空気を無機酸、例えば硫酸又は塩酸又は硝酸にバブリングすることである。該アンモニアは等価な塩(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム又は硝酸アンモニウム)に転化される。第三の選択肢の欠点は、:(a)かなりの逆圧が空気を液体にバブリングすることで上昇すること、及び(b)形成された塩を液体酸と混合すると、分離するのが困難になり、それによって副生成物の実用性を制限することである。
別の選択肢は電気化学的処理によってアンモニアを窒素ガス(N2)に還元することであるが、この方法は高い操作費用及び複雑な処理設備の要求に苦しむ。
【0005】
天然水の集合に再導入される排水などの水からアンモニアを除去しなければならない場合、該アンモニアが水から空気中には揮散され、これが再び空気除去問題となる。従って、アンモニアを空気中から除去するための上記技術の全ては、水中のアンモニアを処理するのに等しく適用される。
従って、当技術分野ではアンモニアを空気中から除去する活性化炭素マトリックスであって、先行技術で見出された問題点の一部又は全てを緩和し得るものが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、酸含浸活性化炭素を含む新規組成物を意図し、これは炭素質物質を活性化炭素マトリックスに転化し、酸を該活性化炭素マトリックス内に注入することによって製造され得る。さらに、本発明は、酸含浸活性化炭素を用いてアンモニアをガス流から除去する方法、及び肥料物質を使用済み媒体から製造する方法を含み得る。さらに、本発明は、該酸含浸活性化炭素マトリックス及び該肥料塩含浸副生成物を活性化炭素に転化するための方法を含み得る。
従って、一つの特徴では、本発明は、無機酸で含浸された活性化炭素マトリックスを含む固体組成物を含み、これはアンモニアを化学吸着するのに有用となり得る。一つの実施態様では、該無機酸が硫酸、塩酸、リン酸又は硝酸の1種を含む。該固体組成物は、好ましくは少なくとも約10m2/g、さらに好ましくは少なくとも約30m2/g、及び最も好ましくは少なくとも約500m2/gの表面積を有する。
一つの実施態様では、該活性化炭素マトリックスが該無機酸を炭素質物質に加えることによって該炭素質物質から形成され、該活性化炭素マトリックスは、該炭素質物質の少なくとも約5倍、好ましくは約10倍、さらに好ましくは約100倍、及び最も好ましくは約300倍の表面積を有する。該炭素質物質は、かつて生きていた有機体、例えば、木材、動物の排泄物又はピートモス、又はかつて生きていた有機体から形成された任意の物質を含むバイオマス物質を含む。
【0007】
別の特徴では、本発明は、以下の工程:
(a)必要に応じて、炭素質物質を好適な水分含有量まで乾燥させる工程;
(b)炭素質物質を好適な粒子サイズ範囲に粉砕する工程;及び
(c)無機酸を該炭素質物質に与え、両成分を混合する工程、
を含む無機酸で含浸された活性化炭素マトリックスを製造するための方法を含み得る。
【0008】
一つの実施態様では、該炭素質物質は木材、動物の排泄物又はピートモスを含み得る。該炭素質物質は無機酸を与える前にペレット化され得るか、又は無機酸で含浸された該活性化炭素マトリックスがペレット化され得る。一つの実施態様では、無機酸で含浸された該活性化炭素マトリックスを水で溶出し、肥料塩をアンモニア化学吸着後に洗い流してもよい。
別の特徴では、本発明は、アンモニアをガス流から化学吸着する方法であって、該ガス流が無機酸で含浸された活性化炭素マトリックスの上又は中を通過する工程を含む方法を含み得る。一つの実施態様では、該方法は、以下の工程:
(a)無機酸で含浸された活性化炭素マトリックスを反応器に置く工程;及び
(b)アンモニア含有ガスを該反応器に流す工程、
を含み得る。
【0009】
一つの実施態様では、無機酸で含浸された該活性化炭素マトリックスが、ガスが流れている間に妨害されてペレット化又は顆粒化され得る。
別の特徴では、本発明は、酸含浸活性化炭素マトリックスを肥料生成物に転化する方法であって、以下の工程:
1. 該使用済み活性化炭素マトリックスをアンモニアガスに暴露することによって、該活性化炭素マトリックスにおける酸をその対応する塩に転化する工程;及び
2. 該活性化炭素マトリックスを所望の粒子サイズ範囲に篩い分けするか、又は該活性化炭素マトリックスをペレット化して所望の粒子サイズ範囲を達成する工程、
を含み得る。
【0010】
一つの実施態様では、該方法は、該肥料生成物を該活性化炭素マトリックスから溶出し、活性化炭素から出す工程をさらに含む。
本発明は、具体的な実施態様として添付されている簡単な図表の非縮尺図面を参照して記載される。該図面において、図1は、所望の最小圧力降下を保持するための、該フローガスの表面速度と活性化炭素マトリックスの必要とされる床の深さの関係を示すグラフを示している。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、酸で含浸された炭素質物質から製造された固体多孔性媒体、及びガス流を酸で含浸された該固体多孔性媒体に流すことによってアンモニアを該ガスから除去するための装置、及びアンモニアと該活性化炭素マトリックスに含浸された酸との反応の副生成物である組成物に関する。本発明を記載する際、以下の用語は特に明記しない限り以下の意味を有する。ここに定義されていない全ての用語は、それらの技術分野で共通認識されている意味を有する。
以下の記載が本発明の特別な実施態様又は特定の使用である限り、それは説明するためだけのものであり、本発明の請求項を制限しない。以下の記載は、請求項に定義されているような本発明の意図及び範囲に含まれる全ての変形、改良及び同等物を含むことが意図される。
【0012】
"炭素質物質"は任意のバイオマス物質を意味し、これは最近まで生きていた又はかつて生きていた生物学的物質、例えば植物、動物、藻類、又は微小生命体、又はかつて生きていた生命体から形成される任意の物質又は残渣を含む。炭素質物質は、限定はしないが、木材及び他のリグノセルロース物質、動物の排泄物又は副生成物、例えば消化型又は堆肥型動物肥料、農業用副生成物、ピートモス、ストロー、都市ゴミ、肥料含有地層物質、クルミの殻、ココナッツの皮、及び化石燃料及び化石燃料副生成物、例えば石炭及び石油コークスを含み得る。
"液体酸"は、限定はしないが、硫酸、リン酸、硝酸、又は塩酸を含む任意の無機酸を意味する。
【0013】
"活性化炭素"は、主に炭素原子からなり、該活性化炭素が形成された炭素質物質で元来見出される少量の他の元素を含有する高表面積の固体微小孔性物質を意味し、これは、限定はしないが、酸素、水素、窒素、硫黄、ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム及びカリウムなどの元素を含み得る。
"活性化炭素マトリックス"は、ガスをその内部空間に通すのに十分な多孔性の固体形態における活性化炭素を意味する。
"ガス"は、標準の温度及び圧力下でガス状態にある任意の物質又は物質の組み合わせを意味する。
"化学吸着"は、固体又は液体表面上におけるガス分子の結合又は吸着、及び該ガス分子及び該固体又は液体の間で起こり得る任意の反応を意味する。
本願発明者は、炭素質物質が液体酸と反応して該酸で含浸された活性化炭素マトリックスを形成することを見出した。この反応は周囲条件下で生じ得る。
【0014】
一般的な場合には、酸-含浸活性化炭素マトリックスは:
必要に応じて、炭素質物質の水分含有量を所望の濃度に調節する工程;
該炭素質物質の粒子サイズを所望の範囲に調節する工程;
液体酸を該炭素質物質に与える工程;及び
該炭素質物質及び液体酸を該化学反応が完了するまで混合する工程、
によって形成され得る。
【0015】
該炭素質物質は任意の好適なバイオマス物質を含み、木材及び他のリグノセルロース物質、動物の排泄物又は副生成物、例えば消化型又は堆肥型動物肥料、農業用副生成物、ピートモス、ストロー、都市ゴミ、肥料含有地層物質、クルミの殻、ココナッツの皮、及び化石燃料及び化石燃料副生成物、例えば石炭及び石油コークスなどである。木材チップ又は削り屑が特に好ましい炭素質物質である。
該炭素質物質の水分含有量は該フィードストック及び該粒子サイズに依存し、湿った質量基準で約0〜50%、好ましくは約5〜35%及びさらに好ましくは約15〜25%の範囲を有し得る。該炭素質物質は、該水分含有量が所望の濃度より高い場合、又は水が該炭素質物質に加えられて該水分濃度を上昇させる場合に乾燥させてもよい。
【0016】
該炭素質物質は、意図される用途及びフィードストックに依存して、任意の好適な方法、例えば、チョッピング、粉砕、カッティング又は粒子サイズを小さくすることなどによって適切なサイズの粒子に加工され得る。さらに、該フィードストックが非常に小さな粒子からなる場合、該粒子は凝集して好適なサイズのより大きい粒子を製造し得る。該炭素質物質の粒子サイズは、約0.1mm〜10mm、好ましくは約1〜5mm及びさらに好ましくは約3mmの平均範囲を有し得る。
該液体酸は、任意の好適な無機酸、例えば硫酸、リン酸、塩酸又は硝酸でよい。酸の選択は、該酸が化学吸着剤分子と反応する場合にはもちろんのこと形成される塩を変化させる。従って、該物質を用いてアンモニアをガス流から除去する場合は、続いて硫酸の使用が硫酸アンモニウムの形成を生じる。
【0017】
用いられる液体酸の濃度は該炭素質物質の水分含有量に依存し、低濃度が低水分含有量に好適であり、及び約20〜100%、好ましくは約75〜100%及びさらに好ましくは100%(100%が該酸の濃縮形態の場合)の範囲を有し得る。用いられる液体酸の量は、該炭素質物質の粒子サイズ及び用いられる酸の濃度に部分的に依存し、より小さな粒子では約1部分の酸に1部分の炭素質物質(質量基準)から、最も大きな粒子(約10mm)では10部分の酸に1部分の炭素質物質の範囲を有し得る。好ましくは、酸と炭素質物質の比は約2:1〜5:1であり、さらに好ましくは約4:1(質量基準)である。
該炭素質物質及び液体酸は、該反応が実質的に完了するまで混合し、この時間の長さは水分含有量、粒子サイズ、酸濃度及び酸/フィードストック比に依存するが、典型的に約2〜35分、好ましくは約5〜25分及びさらに好ましくは約15分である。一つの実施態様では、反応の完了が温度で記録され得る。該反応が開始すると、該温度は典型的に上昇して最大値に到達し、該反応が完了すると減少する。
【0018】
一つの実施態様では、混合工程として該液体酸を該炭素質物質上に噴霧する。別の実施態様では、該炭素質物質をペレットに形成し、続いて該液体酸を炭素質物質のペレット化形態に与える。
該酸は該炭素質物質を活性化炭素マトリックスに転化し、過剰な酸自体を該活性化炭素マトリックス上に浸透させる。該炭素マトリックスに含浸された酸が大量にある場合でも、該生成物は固体物質として見えるし、そのような挙動をする。大量の強酸を含有する固体マトリックスは、ガスが多孔性活性化炭素マトリックスに相当量の液体よりも効率的且つ安価に流れることができるために、科学的且つ商業的に重要である。
一つの実施態様では、該炭素質物質の活性化炭素への転化工程、及び酸の含浸工程が一つの工程で行われる。さらに、該酸-含浸活性化炭素マトリックスは、化学吸着剤としての使用の前にさらなる加工工程を必要としない。従って、加熱工程、洗浄又は中和工程、又はそれに続くガススルホン化工程は必要でなく、望ましくもない。
【0019】
結果として、該酸-含浸炭素マトリックスは、その微小孔性及び大きな表面積によって化学吸着剤物質として用いられ得る。従って、該物質を流れるガスにおける全ての塩基性成分がより効率的に除去され、固体副生成物に転化され得る。
一つの実施態様では、該物質を用いてアンモニアをガス流から除去し得る。アンモニアは無機酸と反応して対応するアンモニウム塩を形成し、該固体物質によって該ガスが通過するように保持される。
アンモニア含有ガス流は、酸含浸活性化炭素マトリックスを固体、顆粒又はペレット形態のいずれかで含む密閉反応チャンバーから排出され得る。該活性化炭素マトリックスは固定床を含むか、又はガスフロー又は機械的手段、例えば流動床又は疑似流動床で妨害され得る。好ましくは、定期的に該活性化炭素マトリックスを補充又は交換する手段が提供される。
【0020】
該アンモニアは酸含浸活性化炭素マトリックスに化学吸着され、少量の残渣酸性度及び少量の炭素及び他の元素を有する肥料塩に転化される。従って、該使用済み活性化炭素マトリックスは、農業用及び園芸用の用途に選択される栄養素の有用な供給源である。ゆえに、アンモニア除去の費用は減少し、付加価値のある副生成物が製造される。
該使用済み活性化炭素マトリックスは、従来の方法を用いてペレット化して肥料ペレットにするか、又はそれとは別に有用な農業用又は園芸用の形態に加工してもよい。顆粒形態にペレット化又は加工される場合は、該ペレットはアンモニウム塩肥料のための遅い放出メカニズムを提供し得る。
一つの実施態様では、該アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウムが、該活性化炭素マトリックスから水で溶出される。該硫酸アンモニウム溶液を続いて濃縮して肥料として形成し、該活性化炭素マトリックスから出すことができる。
【0021】
実施例
以下の実施例は説明することを意図しており、本発明を限定しない。
濃硫酸を炭素質物質に約2.5:1〜約4.5:1の質量比で加えた。該物質の温度を観察し、該物質の最終的な酸含有量を記録した。結果を以下の表1に示す。
【0022】

【0023】
表1からも分かるように、液体酸は該炭素質物質を活性化炭素に変形させるだけでなく、該活性化炭素マトリックスにおける酸の含浸を生じる。液体酸と炭素質物質の比に依存して、得られた活性化炭素マトリックスの82質量%程度が酸から構成されていた。
さらに、表1は、該反応の最大温度が減少し、酸と炭素質物質の比が増加することを示している。表1に示されていないが、いずれの試験も物質収支で5%以上の損失、すなわち、該反応中の炭素質物質及び酸の損失の合計を生じず、5%を超えない固体生成物を製造した。
数種の炭素質物質と硫酸の反応の程度を定量した。数種の炭素質物質の活性化炭素を含む多孔性活性化炭素マトリックスへの変形が、表面積の大きな変化によって示された。
【0024】

【0025】
炭素質物質と液体酸の反応は、該炭素マトリックス、特に木材の表面積を大きく増加させる。反応前の経木の表面積は1g当たり約2m2であったが、反応後に該表面積は1g当たり600m2以上まで増加した。これは約300倍の表面積増加を表している。牛肥料の嫌気性消化由来のバイオソリッドは、硫酸で処理した結果として約10倍の表面積増加を示し、市販のピートモスは同一の処理で約5倍の表面積増加を示したことに注目すべきである。
驚くべきことに、ガス流におけるアンモニアのいかなる濃度も、該酸-含浸活性化炭素マトリックスによって完全且つ迅速に化学吸着されることが見出された。
【0026】

【0027】
表3に集計されている結果は、百万体積部分当たり95部分〜150000部分のガス流におけるアンモニアが活性化炭素マトリックスによって化学吸着されることで、アンモニア排出濃度が百万部分当たり1部分未満となることを示している。さらに、表3は、該ガスの温度又は相対湿度を変化させてもアンモニア化学吸着に影響を与えないことを示しており、但し、温度の有意な減少は起こらない。
重要な応答変量を決定するために、試験を行ってガス流に存在する100%のアンモニアを吸着するのに必要な最小の床深さ及び反応時間を決定した。
【0028】

【0029】
表4は、7〜11mmのみの酸-含浸活性化炭素マトリックスが、全てのアンモニア(百万体積部分当たり約二千部分)を1秒当たり10〜17cmで流れるガスから迅速(61〜109m秒)に化学吸着するのに必要であることを示している。結論として、アンモニア化学吸着は非常に迅速であり、完全に除去される酸-含浸活性化炭素マトリックスの塊への非常にわずかな暴露を必要とする。表4は、高いガス温度(60℃)が、該活性化炭素マトリックスを通過することで該ガスの温度が下がる限り(全てのガス流がそれらの各温度で水分により飽和された)、アンモニアの化学吸着に必要とされる保持時間に影響を与えないことを示している。表3及び表4は、炭素質物質の供給源が経木由来であろうが牛肥料からのバイオソリッドであろうが、アンモニア化学吸着に必要な保持時間に有意な影響を与えないことを示していることにも注目すべきである。
【0030】
酸-含浸活性化炭素マトリックスは、その肥料塩に転化に転化されるときも、ガスの流れを最小の圧力降下や流量が高いときでも容易にすることを試験することによって確信した。図1に示されているグラフは、アンモニアの化学吸着によってすでにその肥料塩に転化されている非ペレット化の酸-含浸活性化炭素マトリックスのために、該圧力降下は、1秒当たり80cmが10cmの活性化炭素マトリックスを通る流量であっても1.5kPaを超えないことを示している。図1からも明らかなように、流量が減少するにつれて、活性化炭素マトリックス床の深さは1.5kPa以上の圧力降下を引き起こすことなく指数関数的に増加した。また、試験によって、同じガス流量で表面速度を測定すると、不安定な床-定期的に振動されるもの-が"固定"床、すなわち、試験中に不安定でないものよりも少ない圧力降下を引き起こすことを確信した。
【0031】
酸-含浸活性化炭素マトリックスに吸着されるアンモニアの量は、該活性化炭素マトリックスの単位質量当たりに吸着されたアンモニアの比によって測定した。表6は、該酸-含浸活性化炭素マトリックスが1gの活性化炭素マトリックス当たり200〜323mgのアンモニアを吸着し、20〜23質量%のアンモニアを表すことを示している。
【0032】

【0033】
表6は、アンモニア吸着後の該活性化炭素マトリックスのバルク密度が、1m3当たり約500〜700kgまで増加することも示している。
アンモニア化学吸着後の該酸-含浸活性化炭素マトリックスの化学組成を決定するための試験を行った。全てが転化された酸-含浸媒体を、"使用済み"活性化炭素マトリックスと呼ぶ。表7は、アンモニアの完全な化学吸着後の使用済み活性化炭素マトリックスの化学組成が完了したことを示している。表7から分かるように、該肥料塩は、アンモニア化学吸着完了後に84質量%の使用済み活性化炭素マトリックスを含む。
【0034】

【0035】
さらに、表7は、最初の酸の61%のみが該使用済み活性化炭素マトリックスにあることを示している。該使用済み活性化炭素マトリックスの元素組成は肥料塩の大部分と一致し、これは表7で示されているデータを生じる実験の場合には硫酸アンモニウムである。最初の経木又は他の炭素質物質から残った炭素含有量は6質量%未満であった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】所望の最小圧力降下を保持するための、該フローガスの表面速度と活性化炭素マトリックスの必要とされる床の深さの関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱酸と炭素質物質を混合することによって形成される、該酸で含浸された活性化炭素マトリックスを含むアンモニア化学吸着のための固体組成物。
【請求項2】
前記鉱酸が、硫酸、塩酸、リン酸又は硝酸の1種を含む、請求項1記載の固体組成物。
【請求項3】
前記活性化炭素マトリックスが少なくとも約10m2/gの表面積を有する、請求項1記載の固体組成物。
【請求項4】
前記活性化炭素マトリックスが少なくとも約30m2/gの表面積を有する、請求項3記載の固体組成物。
【請求項5】
前記活性化炭素マトリックスが少なくとも約500m2/gの表面積を有する、請求項4記載の固体組成物。
【請求項6】
前記活性化炭素マトリックスが、前記炭素質物質の少なくとも約5倍の表面積を有する、請求項1記載の固体組成物。
【請求項7】
顆粒又はペレットの形態である、請求項1記載の固体組成物。
【請求項8】
前記炭素質物質が、木材、消化型又は堆肥型動物肥料、ピートモス、ストロー、都市ゴミ、肥料含有地層物質、クルミの殻、ココナッツの皮、石炭又は石油コークスを含む、請求項6記載の固体組成物。
【請求項9】
鉱酸で含浸された活性化炭素マトリックスを製造するための方法であって、以下の工程:
(a)必要に応じて、炭素質物質を好適な水分含有量まで乾燥させる工程;
(b)必要に応じて、炭素質物質を好適な粒子サイズ範囲に粉砕する工程;及び
(c)鉱酸を該炭素質物質に与え、両成分を混合する工程、
を含む方法。
【請求項10】
前記炭素質物質が、木材、消化型又は堆肥型動物肥料、ピートモス、ストロー、都市ゴミ、肥料含有地層物質、クルミの殻、ココナッツの皮、石炭又は石油コークスを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記炭素質物質を、鉱酸を与える前にペレット化する工程をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
鉱酸で含浸された活性化炭素マトリックスをペレット化する工程をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記鉱酸が、硫酸、硝酸、リン酸又は塩酸を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記鉱酸が濃硫酸を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
アンモニアをガス流から化学吸着する方法であって、以下の工程:
(a)鉱酸で含浸された活性化炭素マトリックスを反応器に入れる工程;及び
(b)アンモニア含有ガスを該反応器に流す工程、
を含む方法。
【請求項16】
鉱酸で含浸された活性化炭素マトリックスがガスフロー中に揺らされる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
鉱酸で含浸された活性化炭素マトリックスがペレット又は顆粒の形態である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
鉱酸で含浸された活性化炭素マトリックスのペレット又は顆粒が、ガスフロー中に揺らされる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記鉱酸が、硫酸、硝酸、リン酸又は塩酸を含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
酸-含浸活性化炭素マトリックスを肥料生成物に転化する方法であって、以下の工程:
(a)該使用済み活性化炭素マトリックスをアンモニアガスに暴露することによって、該活性化炭素マトリックスにおける酸をその対応する塩に転化する工程;及び
(b)該活性化炭素マトリックスを所望の粒子サイズ範囲に篩い分けするか、又は該活性化炭素マトリックスをペレット化して所望の粒子サイズ範囲を達成する工程、
を含む方法。
【請求項21】
前記肥料生成物を前記活性化炭素マトリックスから溶出する工程をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項20記載の方法によって製造される、肥料組成物。
【請求項23】
請求項21記載の方法によって製造される、活性化炭素。

【図1】
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【公表番号】特表2010−501320(P2010−501320A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524856(P2009−524856)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001492
【国際公開番号】WO2008/022461
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(509051565)カーボン ソリューションズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】