説明

重合性化合物の製造方法

【課題】リソグラフィ工程における微細化の要求、特に、ラフネスを改善するための重合性化合物を安定した品質で製造する方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)(Rは炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)の化合物とアクリル酸誘導体とを反応させる一般式(3)(Rは上記に同じ。Rは水素原子、メチル基又はCF基を示す。)の重合性化合物の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物の製造方法に関するものである。
詳しくは、フォトレジストリソグラフィ技術において、ラフネスを改善するレジスト樹脂原料である重合性化合物を安定した品質で製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料等として有用であることが知られている。
例えば、光学特性や耐熱性等を有することから、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズ等に用いることが試みられている(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
また、アダマンタンエステル類を、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性等を利用して、フォトレジスト用樹脂原料として使用することが試みられている(例えば、特許文献3)。
しかしながら、特許文献3に記載の2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートを含むフォトレジストは優れた性能を示すものの、近年のリソグラフィ工程における更なる微細化の要求に対しては十分な性能を有していない。
従って、リソグラフィ工程における更なる微細化の要求、特に、微細化に伴って顕在化してきたパターンエッジの凹凸、すなわち、ラフネスに関して、これを改善するための樹脂原料及びその製造方法が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平9−302077号公報。
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記観点からなされたもので、リソグラフィ工程における更なる微細化の要求、特に、ラフネスを改善するための重合性化合物を安定した品質で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、一般式(3)で表される環状飽和炭化水素基を有する重合性化合物を用いて製造したフォトレジストが、フォトレジストリソグラフィ技術において、特にラフネスを改善することを見出し、当該化合物の製造方法について鋭意努力検討した結果、本発明の製造方法を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
1.一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表される化合物と一般式(2)
【化2】

(式中、R2は、水素原子、メチル基又はCF3基を示す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする一般式(3)
【化3】

(式中、R1は炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基を示し、R2は、水素原子、メチル基又はCF3基を示す。)
で表される重合性化合物の製造方法、
2.R1が式(4)、式(5)又は式(6)
【化4】

で表される基である上記1に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法、
3.一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を反応させた後、塩基性化合物水溶液を用いて反応生成物を処理することにより、一般式(2)で表される化合物の含有量を10000質量ppm以下とする上記1又は2に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法、
4.一般式(2)で表される化合物の含有量を2000質量ppm以下とする上記3に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法、
5.塩基性化合物水溶液が無機塩基性化合物水溶液である上記3又は4に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フォトレジストリソグラフィ技術において、特にラフネスを改善する一般式(3)で表される重合性化合物を安定した品質で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、一般式(1)
【化5】

(式中、R1は炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
の化合物と一般式(2)
【化6】

(式中、R2は、水素原子、メチル基又はCF3基を示す。)
の化合物を反応させる一般式(3)
【化7】

(式中、R1及びR2は上記に同じ。)
の重合性化合物の製造方法に関するものである。
本発明における一般式(3)の重合性化合物において、R1の炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基としては、例えば、下記
【化8】

の基が挙げられる。
中でも、式(4)、式(5)又は式(6)
【化9】

の基が好ましい。
本発明における一般式(3)の化合物の具体例としては、シクロペンチルオキシメチルアクリレート、シクロペンチルオキシメチルメタクリレート、シクロペンチルオキシメチルトリフルオロメチルアクリレート、シクロヘキシルオキシメチルアクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルトリフルオロメチルアクリレート、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)オキシメチルアクリレート、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)オキシメチルメタクリレート、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)オキシメチルトリフルオロメチルアクリレート、(2−アダマンチル)オキシメチルアクリレート、(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート、(2−アダマンチル)オキシメチルトリフルオロメチルアクリレート等が挙げられる。
また、本発明における一般式(1)の化合物において、ハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく挙げられる。
一般式(1)の化合物の具体例としては、クロロメトキシシクロペンタン、ブロモメトキシシクロペンタン、クロロメトキシシクロへキサン、ブロモメトキシシクロへキサン、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)クロロメチルエーテル、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン2−イル)ブロモメチルエーテル、(2−アダマンチル)クロロメチルエーテル、(2−アダマンチル)ブロモメチルエーテル等が挙げられる。
更に、本発明における一般式(2)の化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸又はトリフルオロメチルアクリル酸が挙げられる。
【0010】
本発明の一般式(3)の重合性化合物の製造方法において、一般式(2)の化合物の使用量としては、一般式(1)の化合物に対して、通常0.8〜5倍モル、好ましくは1.0〜2.0倍モルである。
反応温度としては、通常、−200〜200℃であり、−50〜100℃が好ましい。
反応圧力としては、通常、絶対圧力で0.01〜10MPaであり、常圧〜1MPaが好ましい。
反応圧力が低すぎる場合、発生するハロゲン化水素ガスの溶媒等への溶解度が低下するため、反応時間が長くなる。
反応圧力が高すぎる場合は、特別な装置が必要となり、経済的でない。
【0011】
反応に際しては、場合により、溶媒を用いることができ、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
【0012】
反応は、必要により、塩基性物質の存在下で行うことができる。
塩基性物質としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。
塩基性物質の使用量としては、一般式(2)の化合物1モルに対し、1〜5倍モル、好ましくは1〜2倍モルである。
【0013】
反応終了後、通常、未反応で存在する一般式(2)の化合物を除去する目的で反応生成物を塩基性化合物水溶液を用いて洗浄する。
ここで、塩基性化合物としては、一般的な塩基性化合物を用いることができるが、中でも、無機塩基性化合物が好ましい。
具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウム、燐酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン等の有機塩基性化合物を使用することもできるが、無機塩基性化合物に比べ、有機塩基性化合物は水洗により除去され難いため、一般式(3)の重合性化合物中に残留し、該化合物の保存安定性に影響する恐れがある。
洗浄は、一般式(3)の重合性化合物中に存在する一般式(2)の化合物が、好ましくは10000質量ppm以下、より好ましくは2000質量ppm以下、更に好ましくは
300質量ppm以下になるまで行う。
上記のように、一般式(2)の化合物の含有量が10000質量ppm以下であると、一般式(3)の重合性化合物の保存安定性が向上する。
【0014】
反応生成物を塩基性化合物水溶液を用いて洗浄後、一般的な後処理操作を行った後、溶媒を減圧留去することにより、一般式(3)の重合性化合物を得ることができる。
このようにして得られた一般式(3)の重合性化合物は、このまま製品とすることもできるし、更に、得られる一般式(3)の重合性化合物の性状と含まれる不純物の種類を考慮して、蒸留、晶析等の精製を行ってもよい。
【0015】
一般式(1)の化合物は、例えば、
一般式(7)
1−OH (7)
(式中、R1は炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基を示す。)
で表される化合物に、有機溶媒中、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド並びに塩化水素ガス又は臭化水素ガスを反応させることにより製造することができる。
本発明の一般式(7)の化合物の具体例としては、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ボルネオール、2−アダマンタノール等が挙げられる。
反応温度としては、通常、−200〜200℃であり、−50〜100℃が好ましい。
反応圧力としては、通常、絶対圧力で0.01〜10MPaであり、常圧〜1MPaが好ましい。
反応圧力が低すぎる場合、反応に用いる塩化水素ガス又は臭化水素ガスの溶媒等への溶解度が低下するため、反応時間が長くなる。
反応圧力が高すぎる場合は、特別な装置が必要となり、経済的でない。
【0016】
有機溶媒としては、通常、反応温度における有機溶媒への水の溶解度が5質量%以下の有機溶媒を用いる。
具体的には、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
【0017】
反応終了後、反応により生成する水と有機層を分離する。
未反応のホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドは、水層に移行し除去される。
得られた反応生成物より溶媒を減圧留去することにより、一般式(1)の化合物を得ることができる。
得られた一般式(1)の化合物は、このまま一般式(3)の重合性化合物の製造に用いてもよいし、必要に応じて、蒸留、再結晶等の精製を行った後、一般式(3)の重合性化合物の製造に用いてもよい。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0019】
実施例1
【化10】

【0020】
(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−イル)クロロメチルエーテルaの合成
攪拌器及び塩化水素ガス導入用のノズルを取付けた500mLナスフラスコに、ボルネオール(endo、exo混合物)46.24g(300mmol)、パラホルムアルデヒド11.71g(390mmol)及び乾燥したジクロロメタン200mLを加え、水浴で30℃に保ちながら攪拌した。
次に、常圧において、塩化ナトリウム175.5gと濃硫酸200mLを混合して発生させた塩化水素ガスを上記ジクロロメタン溶液にノズルを通して60分間吹き込んだ。
更に、60分間攪拌後、反応生成物のガスクロ分析を行ったところボルネオールは完全に消失し、選択率99%で(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−イル)クロロメチルエーテルaが得られていることを確認した。
反応生成物を分液ロートに移し、有機層と水層を分離し、有機層から溶媒を減圧蒸留により留去することにより、粗反応生成物を得た。
更に、粗反応生成物を減圧蒸留することにより、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−イル)クロロメチルエーテルaを収率76.2%(収量46.36g、ガスクロマトグラフィ純度97.0%)で得た。
【0021】
〔(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン2−イル)オキシメチルメタクリレート(1)の合成〕
攪拌器、温度計及び滴下ロートを取り付けた500mLナスフラスコに、上記で得られた(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2−イル)クロロメチルエーテルa 44.60g(220mmol)、重合禁止剤としてメトキノン59mg及びをヘキサン200mLを加えた後、氷浴で液温が2℃になるまで冷却した。
この時点でフラスコ内の状態は無色透明な溶液となった。
次に、トリエチルアミン33.39g(330mmol)を滴下ロートより滴下した後、更に、メタクリル酸28.41g(330mmol)を滴下した。
メタクリル酸を滴下する場合、発熱が観察されるので、液温が15℃以下になるよう滴下速度を調節した。
この時点で反応溶液の状態は、白濁溶液となった。
メタクリル酸の滴下終了後、経時的にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィを用いて、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2−イル)クロロメチルエーテルaが消失するまで3時間攪拌を行い、目的物の生成を確認した。
次に、反応生成物に氷水100mLを加え、3分間撹拌したところ、白濁した反応生成物が無色透明な溶液となった。
この溶液を分液ロートに移し、水層を分離後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLで3回洗浄した。
更に、飽和塩化ナトリウム水溶液200mLで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。
硫酸マグネシウムをろ過後、重合禁止剤としてメトキノン6mgを加えた後、溶媒を減圧留去することにより、(1,7,7,−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン2−イル)オキシメチルメタクリレート(1)を収率97.7%(収量54.2g、ガスクロマトグラフィ純度96.8%)で得た。
<分光データ>
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:クロロホルム−d)〔日本電子株式会社製JNM−ECA500〕
1H−NMR(500MHz):0.78−1.25(m,13H),1.92(s,3H),1.50−2.25(m,3H),3.50−4.85(m,1H),5.25−5.45(m,2H),5.59(s,1H),6.13(s,1H)
13C−NMR(126MHz):11.86,13.55,18.29,18.89,19.71,20.15,20.20,26.54,27.20,28.19,34.36,36.85,39.48,45.06,45.18,46.71,47.64,49.15,49.23,86.29,88.55,90.09,90.18,125.98,126.03,136.39,166.92
GC−MS(EI)〔株式会社島津製作所製GCMS−QP2010〕
252(M+,0.1%),166(22.2%),137(32.6%),121(30.4%),109(43.1%),95(100%),81(38.5%),69(98.6%),55(15.6%),41(51.7%)
【0022】
実施例2
【化11】

【0023】
(クロロメトキシシクロペンタンbの合成)
攪拌器及び塩化水素ガス導入用のノズルを取付けた500mLナスフラスコに、シクロペンタノール25.92g(300mmol)、パラホルムアルデヒド11.71g(390mmol)及び乾燥したジクロロメタン200mLを加え、水浴で30℃に保ちながら攪拌した。
次に、常圧において、塩化ナトリウム175.5gと濃硫酸200mLを混合して発生させた塩化水素ガスを上記ジクロロメタン溶液にノズルを通して60分間吹き込んだ。
更に、60分間攪拌後、反応生成物のガスクロ分析を行ったところシクロペンタノールは完全に消失し、選択率99%でクロロメトキシシクロペンタンbが得られていることを確認した。
反応生成物を分液ロートに移し、有機層と水層を分離し、有機層から溶媒を減圧蒸留により留去することにより、粗反応生成物を得た。
更に、粗反応生成物を減圧蒸留することにより、クロロメトキシシクロペンタンbを収率83.1%(収量33.66g、ガスクロマトグラフィ純度97.6%)で得た。
【0024】
(シクロペンチルオキシメチルメタクリレート(2)の合成)
攪拌器、温度計及び滴下ロートを取り付けた500mLナスフラスコに、上記で得られたクロロメトキシシクロペンタンb 29.61g(220mmol)、重合禁止剤としてメトキノン59mg及びをヘキサン200mLを加えた後、氷浴で液温が2℃になるまで冷却した。
この時点でフラスコ内の状態は無色透明な溶液となった。
次に、トリエチルアミン33.39g(330mmol)を滴下ロートより滴下した後、更に、メタクリル酸28.41g(330mmol)を滴下した。
メタクリル酸を滴下する場合、発熱が観察されるので、液温が15℃以下になるよう滴下速度を調節した。
この時点で反応溶液の状態は、白濁溶液となった。
メタクリル酸の滴下終了後、経時的にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィを用いて、クロロメトキシシクロペンタンbが消失するまで3時間攪拌を行い、目的物の生成を確認した。
次に、反応生成物に氷水100mLを加え、3分間撹拌したところ、白濁した反応生成物が無色透明な溶液となった。
この溶液を分液ロートに移し、水層を分離後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLで3回洗浄した。
更に、飽和塩化ナトリウム水溶液200mLで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。
硫酸マグネシウムをろ過後、重合禁止剤としてメトキノン6mgを加えた後、溶媒を減圧留去することにより、シクロペンチルオキシメチルメタクリレート(2)を収率92.6%(分子量:184.23、収量37.54g、ガスクロマトグラフィ純度97.5%)で得た。
<分光データ>
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:クロロホルム−d)〔日本電子株式会社製JNM−ECA500〕
1H−NMR(500MHz):1.47−1.80(8H),1.93(3H),4.18(m,1H),5.36(d,2H),5.59(d,1H),6.14(s,1H)
13C−NMR(126MHz):18.27,23.37,32.83,82.07,88.85,126.10,136.35,166.94
GC−MS(EI)〔株式会社島津製作所製GCMS−QP2010〕
99(22.03%)、98(17.94%)、87(12.66%)、69(100%)
【0025】
実施例3
【化12】

〔(2−アダマンチル)クロロメチルエーテルcの合成〕
塩化水素ガス導入用のノズルを取付けた2Lナスフラスコに、マグネチックスターラーを入れ、2−アダマンタノール121.8g(800 mmol)、パラホルムアルデヒド1.23g(1040mmol)及び乾燥したジクロロメタン800 mLを加え、30℃に保ちながら攪拌した。
次に、塩化水素ガス145.8g(4000mmol)をノズルを通して120分間吹き込んだ。
更に、120分間攪拌後、反応生成物をガスクロマトグラフィーを用いて分析したところ、2−アダマンタノールは完全に消失し、選択率99.0%で(2−アダマンチル)クロロメチルエーテルcが得られていることを確認した。
反応生成物を分液ロートに移し、有機層と水層を分離し、有機層から溶媒を減圧蒸留により留去することにより、(2−アダマンチル)クロロメチルエーテルcを収率97.2%(収量156.0g、ガスクロマトグラフィ純度99.0%)で得た。
【0026】
〔(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)の合成〕
(反応工程)
2リットルのガラス反応器に攪拌装置、滴下ロートを取付け、上記で得られた(2−アダマンチル)クロロメチルエーテルc 130.52g(650mmol)、重合禁止剤としてメトキノン0.28gをヘキサン1200mLを加えた後、氷浴で液温が5℃になるまで冷却した。
この時点でフラスコ内の状態は無色透明な溶液となった。
次に、トリエチルアミン99.17g(980mmol)を2.3mL/分の速さで滴下ロートより滴下を開始した後、更に、メタクリル酸83.94g(975mmol)を1.4mL/分の速さで滴下した(滴下時間は、トリエチルアミンを滴下してから1時間で終わるようした)。
メタクリル酸を滴下する場合、発熱が観察されるので、液温が20℃以下になるよう滴下速度を調節した。
この時点で反応溶液の状態は、白濁溶液となった。
メタクリル酸の滴下終了後、経時的にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィを用いて、(2−アダマンチル)クロロメチルエーテルcが消失するまで3時間攪拌を行い、目的物の生成を確認した。
【0027】
(後処理工程)
反応終了後、反応生成物に氷水200mLを加え、3分間撹拌したところ、白濁した反応生成物は無色透明な溶液となった。
次に、0.5質量%硫酸水溶液500mLを用いて1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを用いて3回、飽和塩化ナトリウム水溶液300mLを用い3回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。
重合禁止剤としてメトキノン28mgを加え、溶媒を減圧で留去した後、0℃に冷却したところ、結晶が析出した。
この結晶をろ過することにより、(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)収率69.7%(収量113.4g、ガスクロマトグラフィ純度99.4%、メタクリル酸残存量290質量ppm)で得た。
【0028】
実施例4
実施例3の後処理工程において、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いる洗浄を1回にした他は、実施例3と同様にして反応及び操作を行ったところ、(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)を収率65.6%(収量106.7g、ガスクロマトグラフィ純度99.0%、メタクリル酸残存量1800質量ppm)で得た。
【0029】
実施例5
実施例3の後処理工程において、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いる洗浄を省略した他は、実施例3と同様にして反応及び操作を行ったところ、(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)を収率58.8%(収量95.7g、ガスクロマトグラフィ純度98.6%、メタクリル酸残存量11000質量ppm)で得た。
【0030】
実施例6
実施例3の後処理工程において、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、0.5質量%トリエチルアミン水溶液300mLで3回洗浄した他は、実施例3と同様にして反応及び操作を行ったところ、(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)を収率64.8%(収量105.4g、ガスクロマトグラフィ純度99.1%、メタクリル酸残存量900質量ppm)で得た。
【0031】
〔(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)の保存安定性試験〕
実施例3〜6で得られた(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)を20mLのサンプル瓶に5gづつ詰め、10、25、40℃の各温度で所定の期間、保存した。
所定の期間が来る度に、試料1gを10mLのサンプル瓶に採取し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)4gを加えてよく攪拌した後、目視により、溶液の様子を観察した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から、メタクリル酸量が2000質量ppm以下である実施例3及び4の(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)は、いずれの温度においても、長期に亘って品質が安定であるのに対し、メタクリル酸量が10000質量ppm以上である比較例1の(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)では、いずれの温度においても、短期間の内に品質劣化が起こっている。
また、メタクリル酸の除去にトリエチルアミンを用いた実施例6の(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)では、メタクリル酸量が2000質量ppm以下であるにもかかわらず、短期間の内に品質劣化が起こっている。
このことは、炭酸水素ナトリウムに比べ、トリエチルアミンは水洗により除去され難いため、(2−アダマンチル)オキシメチルメタクリレート(3)中に残存し、該化合物の保存安定性に影響していると思われる。
【0034】
実施例7
以下に示すモノマー(1)〜(6)を用いて、樹脂(A)−1〜(A)−4を合成した。
【0035】
【化13】

樹脂の合成方法を、樹脂(A)−1を例にとって以下に説明する。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を入れ、撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
次に、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と、モノマー(1)/モノマー(4)/モノマー(5)=4/4/2(モル比)とを混合した単量体溶液を、滴下装置を用いて、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後、反応溶液を室温に戻した。
次いで、得られた反応溶液を、約30倍量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、無色の析出物の沈殿を得た。
得られた沈殿を濾別し、該沈殿を、重合に使用した単量体に対して約30倍量のメタノール中で洗浄した。
この沈殿を濾別し、減圧下、50℃で約40時間乾燥することにより、樹脂(A)−1を得た。
また、樹脂(A)−2〜(A)−4は、上記樹脂(A)−1の製造方法において各重合体の構成単位を誘導するモノマーを所定のモル比で用いた他は、上記樹脂(A)−1と同様にして製造した。
【0036】
得られた樹脂(A)−1〜(A)−4を下記に示す。
樹脂(A)−1〜(A)−4において、質量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準でそれぞれ求めた。
また、樹脂(A)−1〜(A)−4の熱分解温度(Td)及びガラス転移温度(Tg)をそれぞれ下記のようにして測定した。
Td(℃)は、熱分析装置DSC6200(製品名、Seiko Instrument社製)にて10℃/minの昇温条件で測定を行った。
Tg(℃)は、熱分析装置TG/DTA6200(製品名、Seiko Instrument社製)にて10℃/minの昇温条件で測定を行った。
更に、樹脂(A)−1〜(A)−4中の各構成単位の割合(モル%)を示す組成比は、13CNMRにより算出した。
なお、樹脂(A)−1〜(A)−4の構造を示す下記化学式(A)−1〜(A)−4中、各構成単位の右下に付した数字は、樹脂中の各構成単位の割合(モル%)を示す。
【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

【0040】
【化17】

【0041】
実施例8〜11
表2に示す各成分を混合、溶解して、ポジ型レジスト組成物を調製した。
【0042】
【表2】

【0043】
表2中の各略号は以下のとおりである。また、表中の括弧内の数値は配合量(質量部)を意味する。
(B)−1:下記化学式(B)−1で表される酸発生剤。
【化18】

【0044】
(D)−1:トリイソプロパノールアミン。
(D)−2:トリ−n−ペンチルアミン。
(E)−1:サリチル酸。
(S)−1:γ−ブチロルラクトン。
(S)−2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)/プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)=6/4(質量比)の混合溶剤。
得られたポジ型レジスト組成物を用いて、ラインアンドスペースのレジストパターンを形成し、以下のラインエッジラフネス(LER)、露光余裕度の評価を行った。
【0045】
<レジストパターン形成1>
市販の有機系反射防止膜組成物を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で185℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚38nmの有機系反射防止膜を形成した。
該有機系反射防止膜上に、表2(実施例8〜11)のポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いてそれぞれ塗布し、ホットプレート上で、表2に示すPAB温度で60秒間のプレベーク(PAB)を行い、乾燥することにより、膜厚130nmのレジスト膜を形成した。
次いで、実施例8及び10においては、ArF露光装置NSR−S302A(ニコン社製;NA(開口数)=0.60、2/3輪帯照明)により、実施例9及び11においては、ArF露光装置NSR−S306C(ニコン社製);NA(開口数)=0.78、2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(6質量%ハーフトーンマスク)を介して選択的に照射した。
そして、表2に示すPEB温度で60秒間のPEB(露光後加熱)処理を行い、更に23にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間パドル現像し、その後20秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行った。
その後、100℃で60秒間加熱して乾燥させて、実施例8及び10においてはライン幅120nmの、実施例9及び11においてはライン幅85nmの、ラインアンドスペースのレジストパターン(以下、L/Sパターンという。)をそれぞれ形成した。
【0046】
[感度の評価]
実施例8及び10においては、120nmのL/Sパターン、実施例9及び11においては、85nmのL/Sパターンがライン幅:スペース幅=1:1に形成される際の露光量(感度)(単位:mJ/cm2)を「E1:1」として求めた。
その結果を表3に示した。
【0047】
[ラインエッジラフネス(LER)の評価]
上記E1:1において得られたL/Sパターン(1:1)(実施例8及び10においては、120nm、実施例9及び11においては、85nmのL/Sパターン)について、LERを示す尺度である3σを求めた。
「3σ」とは、側長SEM(日立製作所社製、製品名:S−9220,測定電圧300V)により、上記ポジ型レジスト組成物によって形成された各レジストパターンの幅を測定し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を示す。
この3σは、その値が小さいほどライン側壁のラフネス(凹凸)が小さく、均一幅のレジストパターンが得られることを意味する。
その結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

表2の結果から明らかなように、実施例8及び9は、実施例10に比べてLERの値が小さいことから、LERの低減されたレジストパターンが形成できることが確認できた。
なお、表3において、NGとは測定不可であったことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、一般式(3)の重合性化合物を安定した品質で製造することができるため、フォトレジストリソグラフィ技術分野において、ラフネスが改善されたフォトレジスト材料を安価に供給することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表される化合物と一般式(2)
【化2】

(式中、R2は、水素原子、メチル基又はCF3基を示す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする一般式(3)
【化3】

(式中、R1は炭素数5〜20の環状飽和炭化水素基を示し、R2は、水素原子、メチル基又はCF3基を示す。)
で表される重合性化合物の製造方法。
【請求項2】
R1が式(4)、式(5)又は式(6)
【化4】

で表される基である請求項1に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を反応させた後、塩基性化合物水溶液を用いて反応生成物を処理することにより、一般式(2)で表される化合物の含有量を10000質量ppm以下とする請求項1又は2に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(2)で表される化合物の含有量を2000質量ppm以下とする請求項3に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法。
【請求項5】
塩基性化合物水溶液が無機塩基性化合物水溶液である請求項3又は4に記載の一般式(3)で表される重合性化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−63309(P2008−63309A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245722(P2006−245722)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】