説明

重送検知装置及び重送検知方法

【課題】シート状部材を格納した搬送補助部材などが搬送されたときの重送検知の精度を従来よりも向上させる。
【解決手段】重送検知装置は、特定の印刷材料を用いた印刷が施される予め指定された指定領域を有するシート状部材が搬送される搬送路と、搬送路の一方の側に配設されてシート状部材の方向に信号を出力する発信手段と、搬送路の他方の側に配設されて発信手段の発信する信号を受信して受信信号を出力する受信手段と、シート状部材に付着した印刷材料の有無により印刷検知信号を出力する印刷検知手段と、受信信号と、印刷検知信号に基づいてシート状部材が重送しているか否かを判定する重送判定手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシート状部材を1枚ずつ搬送する工程において、2枚以上のシート状部材を重ねたまま搬送してしまう重送を検知する重送検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ、プリンタ、複写機、印刷機、ATM(Automated Teller Machine)などでは、シート状部材を1枚づつ分離・搬送する機構が備えられている。しかし、シート状部材を1枚だけ搬送すべきところを、2枚以上のシート状部材の一部又は全体が重なったまま搬送される「重送」が発生する可能性が考えられる。このため、シート状部材を搬送する装置には、シート状部材の重送を検知する機能が必要となる。シート状部材の重送を検知する機構として、超音波を利用した重送検知装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
図24は、特許文献1に記載されている紙幣の重送検知装置の概要を示した図である。紙幣101は、検知対象としてのシート状部材である。超音波発信手段102は、紙幣101に対して超音波を発信する。超音波受信手段103は、超音波発信手段102の発信する超音波を受信する。超音波受信手段103は、紙幣101を透過した超音波を受信可能なように紙幣101の搬送路を挟んで超音波発信手段102と対向するように設置されている。
【0004】
制御手段104は、超音波発信信号としてパルス信号を駆動手段105に供給する。駆動手段105は、制御手段104より供給されたパルス信号を増幅し、超音波発信パルスとして出力する。これにより、超音波発信手段102は、信号増幅された超音波発信パルスを基に超音波を発信する。なお、制御手段104が供給するパルス信号は、たとえば、数周期分のパルス信号である。これは、一般にバースト波と呼ばれる。バースト波はたとえば数ms(ミリ秒)に一度の頻度で発信される。
【0005】
信号増幅手段106は、超音波受信手段103の出力する超音波受信信号を増幅する。信号増幅率調整手段110は、信号増幅手段106の信号増幅率を調整する。ここで、信号増幅率調整手段110は、たとえばボリュームである。また、この信号増幅率の調整は、たとえば、製品出荷前に個々の製品について行われたり、製品使用者によって行われたりする。
【0006】
A−D変換器107は、信号増幅手段106によって増幅された超音波受信信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換して信号解析手段108へ出力する。信号解析手段108は、A−D変換器107においてデジタル化した超音波受信信号を解析して、解析結果を制御手段104へ出力する。記憶手段109は、重送検知装置の各設定値を保持する。これにより、重送検知装置は、記憶手段109に保持された設定値を使用して重送検知動作を行う。
【0007】
次に、図24に示した重送検知装置の動作について説明する。超音波発信手段102から発信された超音波は、紙幣101に当たり、その透過波を超音波受信手段103が受信する。これにより、超音波受信手段103は、受信した超音波の受信信号強度に応じて変化する超音波受信信号を出力する。信号増幅手段106は、超音波受信手段103が出力する超音波受信信号を信号増幅率調整手段110の調整状態に応じた増幅率で増幅する。A−D変換器107は、信号増幅手段106が増幅した超音波受信信号をデジタル信号へ変換し、デジタル化した超音波受信信号を信号解析手段108へ出力する。信号解析手段108は、A−D変換器107の出力するデジタル化した超音波受信信号を解析する。制御手段104は、信号解析手段108の解析結果を基に重送であると判断した場合は、装置または装置の利用者に重送が発生した旨を通知する処理を行う。
【0008】
図24に示した重送検知の手法は、受信した超音波受信信号の振幅の変化を信号解析手段108が解析することによって重送を検知するレベル判定方式と呼ばれる手法である。このレベル判定方式についてさらに説明する。予め重送判定閾値を設定した上で、紙幣101を搬送して紙幣101を透過した超音波の振幅を超音波受信手段103が取得する。紙幣101が正常に1枚ずつ搬送された場合の透過超音波の振幅と比較して、紙幣101が重送した場合の透過超音波の振幅は小さい値となる。これは、重なっている紙幣の枚数に応じて超音波の減衰量が大きくなるためである。したがって、超音波受信手段103が取得し、信号増幅手段106が増幅した超音波受信信号の振幅を、信号解析手段108において重送判定閾値と比較することにより、比較結果から紙幣101の重送を検知することが可能となる。
【特許文献1】特許第3860126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
次に、シート状部材として、チェック(小切手や手形の総称とする)を搬送する例について説明する。通常、チェックはそのまま搬送されるが、破損したチェックは搬送補助部材に格納されて搬送される。搬送補助部材としては、たとえば、エンベロープと呼ばれる半透明の封筒が使用される。チェックを格納したエンベロープは、たとえば、チェック3枚と同じ枚数になる。エンベロープは、おもて面の透明シート及び裏面のシートによって形成され、その間にチェックが挿入される構造をしているからである。なお、チェックを格納したエンベロープは、3枚のシートが重送した場合と同じ枚数のため、同等の超音波の減衰を起こす。このため、エンベロープを搬送したときの超音波受信信号の振幅(受信強度)はチェックのみを搬送したときの超音波受信信号の振幅よりも小さい値となる。したがって、チェックを格納したエンベロープが搬送されたときにも、制御手段104は重送が発生したと判断してしまうだろう。
【0010】
チェックをエンベロープに入れて搬送させる場合などのように、重送との判断による読取作業の停止を避けたいときに、ユーザーは、重送検知機能を無効にする必要がある。しかし、無効にするための作業はユーザーの負担となろう。また、重送検知機能を無効にしたあと再び有効にするのを忘れてしまえば、その後に発生する重送を検知できなくなってしまう。重送の発生を検知できなければ、シートの画像を正しく読み込めなくなり、画像データの損失のおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題のうち、少なくとも1つを解決することを目的とする。たとえば、本発明の目的は、シート状部材を格納した搬送補助部材などが搬送されたときの重送検知の精度を従来よりも向上させ、かつ、ユーザーに手間を取らせないようにすることである。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点によれば、磁気印刷用に指定された領域を有するシート状部材が搬送される搬送路と、搬送路の一方の側に配設されてシート状部材の方向に超音波を発信する超音波発信手段と、搬送路の他方の側に配設されて超音波発信手段の発信する超音波を受信して超音波受信信号を出力する超音波受信手段と、シート状部材の磁気印刷の有無により磁気印刷検知信号を出力する磁気印刷検知手段と、超音波受信信号と磁気印刷検知信号に基づいてシート状部材が重送しているか否かを判定する重送判定手段とを含むことを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0013】
本発明の第2の観点によれば、磁気印刷検知手段は、シート状部材が搬送補助部材に格納されて搬送されてきたときにはシート状部材の磁気印刷を検知でき、シート状部材が搬送補助部材に格納されずに搬送されてきたときにはシート状部材の磁気印刷を検知できない位置に配置されていることを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0014】
本発明の第3の観点によれば、搬送路は、シート状部材の一辺又はシート状部材を格納した搬送補助部材の一辺が通過する位置を規制するための規制手段を備えていることを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0015】
本発明の第4の観点によれば、重送判定手段は、超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、シート状部材が重送していないと判定し、超音波受信信号が重送の疑いありを示していたとしても、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示している場合は、シート状部材が重送していないと判定し、超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、シート状部材が重送していると判定することを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0016】
本発明の第5の観点によれば、超音波受信信号を増幅する増幅手段をさらに備え、重送判定手段は、増幅手段により増幅された超音波受信信号と、増幅手段により増幅されていない超音波受信信号と、磁気印刷検知信号とに基づいてシート状部材が重送しているか否かを判定することを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0017】
本発明の第6の観点によれば、重送判定手段は、増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、シート状部材が重送していないと判定し、増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、シート状部材が重送していると判定し、増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示していたとしても、増幅された超音波受信信号が重送の疑いありを示している場合は、シート状部材が重送していると判定し、増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示し、かつ、増幅された超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、シート状部材が重送していないと判定することを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0018】
本発明の第7の観点によれば、搬送路の一方の側に配設されてシート状部材の方向に光を照射する発光手段と、搬送路の他方の側に配設されて発光手段からの光を受光して受光信号を出力する受光手段とをさらに備え、重送判定手段は、受光信号と、超音波受信信号と、磁気印刷検知信号とに基づいてシート状部材が重送しているか否かを判定することを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0019】
本発明の第8の観点によれば、重送判定手段は、超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、シート状部材が重送していないと判定し、超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、シート状部材が重送していると判定し、超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示していたとしても、受光信号が重送の疑いありを示している場合は、シート状部材が重送していると判定し、超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示し、かつ、受光信号が重送の疑いなしを示している場合は、シート状部材が重送していないと判定することを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0020】
本発明の第9の観点によれば、発光手段は、シート状部材が有する磁気印刷用に指定された領域内で磁気印刷材料が付着した領域を避けた位置に光を照射するように配置されていることを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0021】
本発明の第10の観点によれば、磁気印刷用に指定された領域は、MICR(Magnetic Ink Character Recognition)印刷が行われる領域であることを特徴とする重送検知装置が提供される。
【0022】
本発明の第11の観点によれば、磁気印刷用に指定された領域を有するシート状部材が搬送される搬送路の一方の側に配設された超音波発信手段によりシート状部材の方向に超音波を発信するステップと、超音波発信手段の発信する超音波を搬送路の他方の側に配設された超音波受信手段が受信して出力する超音波受信信号を取得するステップと、シート状部材の磁気印刷の有無により磁気印刷検知手段が出力する磁気印刷検知信号を取得するステップと、超音波受信信号と、磁気印刷検知信号に基づいてシート状部材が重送しているか否かを判定するステップとを含むことを特徴とする重送検知方法が提供される。
【0023】
本発明の第12の観点によれば、特定の印刷材料を用いた印刷が施される予め指定された指定領域を有するシート状部材が搬送される搬送路と、搬送路の一方の側に配設されてシート状部材の方向に超音波又は光の少なくとも一方を送出する送出手段と、搬送路の他方の側に配設されて送出手段の送出する超音波又は光を受けて信号を出力する信号出力手段と、シート状部材に付着した印刷材料の有無により印刷検知信号を出力する印刷検知手段と、信号出力手段の出力信号と、印刷検知信号に基づいてシート状部材が重送しているか否かを判定する重送判定手段とを含むことを特徴とする重送検知装置が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1、第11及び第12の観点によれば、シート状部材を格納した搬送補助部材などが搬送されたときの重送検知の精度を従来よりも向上させ、かつ、ユーザーに手間を取らせないようにすることができる。すなわち、ユーザーが重送検知機能の有効無効を切り替える手間を削減できる。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、シート状部材単体で搬送されるときとシート状部材が搬送補助部材に格納されるときとで磁気印刷の位置が磁気印刷検知手段の位置に対して変更されることを利用して、重送の有無を精度良く検知できるようになる。
【0026】
本発明の第3の観点によれば、規制手段によってシート状部材や搬送補助部材が通過する位置が整列されるため、重送の有無を精度良く検知できるようになる。
【0027】
本発明の第4の観点によれば、超音波受信信号が複数枚のシート状部材が搬送されていることを示していても、磁気印刷が検知されたのであれば、重送が発生したとは判断しないため、シート状部材が搬送補助部材に格納されても誤って判断することが減る。
【0028】
本発明の第5及び第6の観点によれば、シート状部とシート状部材を格納した搬送補助部材とによる重送についても精度良く検知することができる。とりわけ、増幅手段を追加するだけで、超音波発信手段や超音波受信手段を追加しなくてもよいため、コストも低減できよう。
【0029】
本発明の第7及び第8の観点によれば、発光手段と受光手段とを追加することで、シート状部とシート状部材を格納した搬送補助部材とによる重送についても精度良く検知することができる。
【0030】
本発明の第9の観点によれば、磁気印刷に伴う光の減衰の影響を低減することができる。
【0031】
本発明の第10の観点によれば、MICR(Magnetic Ink Character Recognition)印刷の物理特性を利用することで、重送の検知精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の一実施形態を示す。以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0033】
以下では、特定の印刷材料を用いた印刷が施される予め指定された指定領域を有するシート状部材が搬送される搬送路の一方の側に配設されてシート状部材の方向に超音波を発信する超音波発信手段と、搬送路の他方の側に配設されて超音波発信手段の発信する超音波を受信して超音波受信信号を出力する超音波受信手段を有する装置について説明する。なお、本発明は、超音波に限られることはなく、赤外光や可視光などを採用してもよい。また、以下では、シート状部材に付着した印刷材料の有無により印刷検知信号を出力する印刷検知手段の一例として、磁気印刷検知手段について説明する。しかし、シート状部材が備える、厚み以外の他の物理的な特性(たとえば、特殊な反射塗料や反射部材、ホログラムなど)を検知する手段が採用されてもよい。
【0034】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における重送検知装置の概略構成を示す図である。重送検知装置11は、超音波センサと磁気センサを利用して、2枚以上のシート状部材が重なって搬送される現象である「重送」を検知する装置である。チェック1は、搬送対象であるシート状部材の一例である。チェック1は、磁気印刷画像1−aの形成用に指定された領域であるクリアバンド1−bを有している。1−cは、磁気印刷が施されない非クリアバンドである。なお、本実施形態において、シート状部材の一例としてチェックを採用しているが、本発明のシート状部材は、この限りではなく、紙幣などであってもよい。このように、重送検知装置の搬送路は、磁気印刷用に指定された指定領域(クリアバンド1−b)を有するシート状部材が搬送されることになる。
【0035】
超音波発信器2は、チェック1に対して超音波を発信する。超音波受信器3は、超音波発信器2が発信する超音波を受信する。なお、図1に示すように、超音波受信器3は、チェック1を透過した超音波を受信できるようにチェック1の搬送路を挟んで超音波発信器2と対向するように設置されている。これにより、超音波発信器2から発信された超音波は、チェック1を透過して、その透過波を超音波受信器3が受信する。また、超音波受信器3は、受信した超音波の受信強度に応じて信号強度が変化する超音波受信信号を出力する。
【0036】
上述したように搬送路にチェック1が存在するときにはチェック1を透過した超音波が超音波受信器3により受信される。一方、搬送路にチェック1が存在しないときには、超音波発信器2が発信した超音波がそのまま超音波受信器3により受信される。
【0037】
磁気印刷検知手段4は、磁気印刷の有無に応じて信号強度が変化する磁気印刷検知信号を出力する。
【0038】
制御手段5は、超音波を発信させるための信号としてパルス信号(以下、超音波発信信号とする)を駆動手段6に供給する。駆動手段6は、制御手段5より供給された超音波発信信号を増幅し、超音波発信パルスを出力する。これにより、超音波発信器2は信号増幅された超音波発信パルスを基に超音波を発信する。なお、制御手段5が駆動手段6へ供給する超音波発信信号は、たとえば、一定時間に渡る数周期分のパルスを有する信号である。
【0039】
信号増幅手段7は、超音波受信器3の出力する超音波受信信号を増幅する。超音波発信器2と超音波受信器3の間に搬送対象であるチェック1が存在すると、超音波発信器2より発信した超音波が超音波受信器3に到達するまでに減衰し、非常に微弱な信号となってしまう。また、超音波受信器3が出力する超音波受信信号も振幅が微弱となる。そこで、これを信号増幅手段7で増幅し、重送検知判断の可能な信号振幅に引き上げる。
【0040】
A−D変換器8は、信号増幅手段7によって増幅された超音波受信信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換して信号解析手段9へ出力する。また、A−D変換器8は、磁気印刷検知手段4からの磁気印刷検知信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換して信号解析手段9へ出力する。
【0041】
信号解析手段9は、A−D変換器8においてデジタル化された超音波受信信号、及び、デジタル化された磁気印刷検知信号を解析して、解析結果を制御手段5へ出力する。制御手段5は解析結果に応じて、紙搬送手段(不図示)の動作を停止させたり、表示部(不図示)にメッセージを表示させてユーザーに重送を知らせたりする等の制御を行う。信号解析手段9や制御手段5は、たとえば、CPUとコンピュータプログラムとの組み合わせ、又は、ASICなどによって実現可能である。
【0042】
記憶手段10は、重送検知装置11において利用される設定値やデータなどを保持する。具体的には、記憶手段10は、超音波発信信号のパルス数、超音波発信信号の振幅、超音波発信信号の周波数、超音波受信信号の取得時間、超音波重送検知レベル(閾値)、磁気印刷検知レベル(閾値)などの設定値を保持する。また、制御手段5は、記憶手段10に保持される、それらの設定値を使用して重送検知を行うよう各手段を制御する。
【0043】
信号解析手段9には、超音波重送判定部12と、磁気印刷判定部13がある。デジタル化された超音波受信信号は超音波重送判定部12で処理される。デジタル化された磁気印刷検知信号は磁気印刷判定部13で処理される。信号解析手段9は、超音波重送判定部12の判定結果と磁気印刷判定部13の判定結果を解析し、重送が発生しているか否かを判断する。
【0044】
図2は、実施形態におけるシート状部材の一例を示した図である。磁気印刷画像1−aは、たとえば、MICR(Magnetic Ink Character Recognition)画像である。磁気印刷画像1−aは、磁気印刷材料を用いて印刷された文字列(金融機関や金額の情報)などである。磁気印刷材料を用いてMICR画像を印刷する理由は、チェック1をチェックスキャナに搬送させたときに、磁気ヘッド(不図示)によりMICR画像の磁気情報を自動的に検出および処理するためである。クリアバンド1−bには、MICR画像が印刷される。クリアバンド1−bは、MICR画像、地色及び地模様を除き、不特定の画像が印刷されないように指定された領域である。非クリアバンド1−cは、MICR画像が印刷されず、通常のペン等で金額やサインが記入される領域である。非クリアバンド1−cには、地色、地模様が印刷されてもよい。
【0045】
図3は、実施形態における搬送保護部材の一例を示した図である。チェック1は、シート状部材であるため破れやすい。そこで、破損したチェック1は、一般的に、エンベロープという半透明の封筒に入れて搬送する場合がある。
【0046】
図3において、エンベロープ1’は、内部にチェック1を格納した状態で示されている。エンベロープ1’の上部が開口しており、チェック1をこの上部から内部に挿入できるようになっている。エンベロープ1’の1−a’、1−b’、1−c’は、それぞれチェック1と同様に、磁気印刷画像(MICR画像)、クリアバンド、非クリアバンドである。MICR画像1−a’として、格納されるチェック1に印刷されたMICR画像1−aと同じ文字列を印刷しておく。これは、チェック1をエンベロープ1’に入れた場合でも、MICR読取用の磁気ヘッドを使用してMICRの情報を読み取れるようにするためである。クリアバンド1−b’は、その表裏が接着されている。これは、チェック1がクリアバンド1−b’に侵入しないようにするためである。非クリアバンド1−c’は、左端の表裏と右端の表裏とが接着されている。左端と右端との間にチェック1が格納される。エンベロープ1’にチェック1を収納した場合、エンベロープ1’のクリアバンド1−b’の上段に、チェック1のクリアバンド1−bが位置するようになる。
【0047】
エンベロープ1’の材質について説明する。エンベロープ1’の表側のシートはほぼ透明のシート素材であり、中に入れたチェック1が見えるようになっている。エンベロープ1’の裏側のシートは半透明のシート素材である。エンベロープ1’の裏側のシートは一般にエンドーサと呼ばれるスタンプを押せるように、紙などの素材で作られている。クリアバンド1−b’の表側のシートには、MICR画像を印刷できるように、紙などの素材が貼り付けてある。
【0048】
図4は、実施形態におけるチェックのみを搬送した例を示した図である。チェック1は、立てられた状態で図の右から左に移動する。この際に、クリアバンド1−bの下側の辺が、重力によって、搬送路底面40に接触した状態で、チェック1は搬送される。重力は、図の上から下に働いている。このように、搬送路底面40は、シート状部材の一辺が通過する位置を規制するための規制手段として機能している。
【0049】
磁気印刷検知手段4は、磁気ヘッド、磁気抵抗素子、ホール素子、磁気インピーダンス素子等のように、エンベロープ1’を介してMICR画像1−aからの磁気を検出可能な素子であればどれでもよく、図4に示す位置に設置されている。磁気印刷検知手段4の設置位置は、チェック1の非クリアバンド1−cが通過するようになっている。これは、搬送路底面40からのクリアバンド1−bの高さh1よりも、磁気印刷検知手段4の設置位置の下限までの高さh2が高い(値が大きい)からである。このようにチェック1をそのまま搬送した場合、磁気印刷検知手段4は、磁気印刷であるMICR画像1−aを検知しないことになる。クリアバンド1−b上のMICR画像1−aは、磁気印刷検知手段4の設置位置を通過しないからである。磁気印刷検知手段4の設置位置は、検知可能位置と呼ばれてもよい。
【0050】
図5は、実施形態におけるチェック1を格納したエンベロープ1’を搬送する例を示した図である。磁気印刷検知手段4の設置位置を、チェック1のクリアバンド1−bが通過するようになっている。すなわち、エンベロープ1’のクリアバンド1−b’の高さは、磁気印刷検知手段4の上限(上底)と下限(下底)との間をMICR画像1−aが通過するように、予め設計されている。よって、磁気印刷検知手段4は、MICR画像1−aを検知する。なお、図4と図5で、磁気印刷検知手段4の設置位置は同じである。なお、エンベロープ1’の底辺も搬送路底面40に沿って搬送される。よって、搬送路底面40は、エンベロープ1’に対しても規制手段として機能する。
【0051】
チェック1のサイズ、エンベロープ1’のサイズ及び磁気印刷検知手段4の設置位置を上述した関係にすることで、磁気印刷検知手段4の検知結果から、チェック1のみを搬送したか、チェック1をエンベロープ1’に入れて搬送したかを判別できるようになる。
【0052】
図6及び図7は、実施形態における磁気ヘッドの設置位置を示した図である。磁気ヘッド60は、MICR画像1−aを検知してその磁気情報を読み取る情報読取手段である。それゆえ、磁気印刷検知手段4は、磁気ヘッド60とは配置位置及び配置目的が異なる。磁気ヘッド60はMICR画像1−aからの磁気を検知してその印字内容を読み取る必要がある。そのため、図6のようにチェック1を搬送させた場合にはチェック1のクリアバンド1−bが通過する位置、かつ、図7のようにチェック1をエンベロープ1’に入れて搬送させた場合にはエンベロープ1’のクリアバンド1−b’が通過する位置に配置する。このような位置に設置された磁気ヘッド60の出力信号からは、磁気印刷の有無から、チェック1のみを搬送したか、チェック1をエンベロープ1’に入れて搬送したかを判別できない。よって、磁気印刷検知手段4が必要となる。
【0053】
超音波重送判定部12の判定結果は2種類ある。チェックが1枚搬送されたという判定結果と、チェックが2枚以上重なって搬送されたという判定結果である。磁気印刷判定部13の判定結果も2種類ある。磁気印刷が検知されなかったという判定結果(チェックがエンベロープに格納されていない)と、磁気印刷が検知されたという判定結果(チェックがエンベロープに格納されている)である。よって、超音波重送判定部12の判定結果と、磁気印刷判定部13の判定結果との組み合わせは、2×2=4通りである。ただし、超音波重送判定部12が1枚搬送されたと判定し、磁気印刷判定部13がエンベロープに入れられていると判定することはありえない。これは、チェック1がエンベロープ1’に入れられているときは、超音波重送判定部12は2枚以上と判定するからである。よって、この組み合わせを除いた3通りが、実際に起こりえる判定結果の組み合わせとなる。
【0054】
次に、図を用いて超音波受信信号波形(増幅してデジタル化した信号。以下略)と磁気印刷検知信号波形(デジタル化した信号。以下略)の具体例を示し、両波形に対する信号解析手段9の判断結果を説明する。
【0055】
図8は、全ての搬送状態に対する各判定部の判定結果と説明図との対応関係を示した表である。ここでは、超音波受信信号が重送の疑いなし(チェック1枚以下)を示している場合は、シート状部材が重送していないと判定する。また、超音波受信信号が重送の疑いあり(チェック2枚以上)を示していたとしても、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示している場合は、シート状部材が重送していないと判定する。これは、チェックを格納したエンベロープが搬送されているケースである。超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、シート状部材が重送していると判定する。これは、2枚のチェックが重送しているケースである。
【0056】
図9は、チェック1を1枚搬送した場合(重送していない場合)の波形例を示した図である。とりわけ、図9の中段は超音波受信信号波形90を示している。図9の下段は磁気印刷検知信号波形91を示している。それぞれ図9の上段に示したチェックに対応させている。なお、両波形が波打っているのはノイズの影響を表している。
【0057】
超音波受信信号波形90は、チェック1により超音波が減衰すると、信号強度が低下するようになっている。閾値S1は、チェック1を1枚だけ搬送したとき(重送していないとき)の第1の信号強度と、2枚搬送したとき(重送したとき)の第2の信号強度との間に設定されている。閾値S1は、記憶手段10に保持されている。この閾値S1より信号強度が下回った場合、重送と判定することができる。
【0058】
図9に示した超音波受信信号波形90の信号強度が閾値S1を下回っていない。このため、超音波重送判定部12はシートが1枚のみ搬送されたと判定する。一方、磁気印刷検知信号の信号強度は、MICR画像1−aが磁気印刷検知手段4の検知可能位置を通過したことで磁気印刷を検知すると、増加するようになっている。
【0059】
磁気印刷検知信号の閾値S2は、磁気印刷を検知しないときの第3の信号強度と、磁気印刷を検知したときの第4の信号強度との間に設定されている。閾値S2も記憶手段10に保持されている。この閾値S2より信号強度が上回った場合、磁気印刷判定部13は、磁気印刷がある(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられている)と判定する。
【0060】
図9の下段に示した磁気印刷検知信号波形91は磁気印刷の検知がないためノイズの信号強度のみが現われている信号であり、閾値S2を上回らない。このため、磁気印刷判定部13は、磁気印刷が無い(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられていない)と判定する。信号解析手段9は、この2つの判定結果から、シートが1枚のみ搬送されたことと、エンベロープ1’に入れられていないことを認識し、重送が発生していないと判定できる。
【0061】
図10は、チェック1が重送した場合の波形例を示した図である。超音波受信信号波形1000が表す超音波受信信号の信号強度は、重送により重なったチェックの重複部分が超音波受信器の設置位置を通過している間、常に閾値S1を下回る。このため、超音波重送判定部12は、シートが2枚以上搬送されたと判定する。磁気印刷検知信号波形1001が表す磁気印刷検知信号の信号強度は、閾値S2を上回らない。このため、磁気印刷判定部13は、磁気印刷が無い(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられていない)と判定する。信号解析手段9は、この2つの判定結果から、シートが2枚以上搬送されたことと、エンベロープ1’に入れられていないことを認識するため、重送が発生していると判定できる。
【0062】
図11は、チェックをエンベロープに入れて搬送した場合の波形例を示した図である。超音波受信信号波形1100が表す超音波受信信号の信号強度は、エンベロープ1’が搬送されている間、常に閾値S1を下回る。このため、超音波重送判定部12は、シートが2枚以上搬送されていると判定する。一方、磁気印刷検知信号波形1101が表す磁気印刷検知信号の信号強度は、チェック1のMICR画像1−aを検知した箇所で、閾値S2を上回る。このため、磁気印刷判定部13は磁気印刷がある(すなわちチェック1がエンベロープ1’に入れられている)と判定する。信号解析手段9は、この2つの判定結果から、シートが2枚以上搬送されたことと、エンベロープ1’に入れられていることを認識し、重送していない(エンベロープに入れて搬送された)と判定する。
【0063】
図12は、実施形態に係る重送検知方法の一例を示したフローチャートである。ステップS1201で、超音波重送判定部12は、超音波受信信号が重送の疑いを示しているか否かを判定する。たとえば、超音波重送判定部12は、超音波受信信号の信号強度が閾値S1を下回っているか否かを判定する。下回っていなければ、重送が発生していないため、ステップS1204に進む。ステップS1204で、制御手段5は、磁気ヘッド60による磁気情報の読み取り処理などの通常処理を実行する。
【0064】
一方、超音波受信信号波形の信号強度が閾値S1を下回っていれば、重送の疑いがあるため、ステップS1202に進む。ステップS1202で、磁気印刷判定部13は、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していることを示しているか否かを判定する。たとえば、磁気印刷判定部13は、磁気印刷検知信号の信号強度が閾値S2を超えているか否かを判定する。磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していることを示していれば、チェックを格納したエンベロープが搬送されているのであって、重送は発生していない。よって、この場合もステップS1204に進む。
【0065】
一方、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示していれば、重送が発生しているため、ステップS1203に進む。ステップS1203で、制御手段5は、重送の通知(表示)や搬送の停止など、重送処理を実行する。
【0066】
本実施形態によれば、チェックを格納したエンベロープなどが搬送されたときの重送検知の精度を従来よりも向上させ、かつ、ユーザーに手間を取らせないようにすることができる。すなわち、ユーザーが重送検知機能の有効無効を切り替える手間を削減できる。
【0067】
また、シート状部材単体で搬送されるときとシート状部材が搬送補助部材に格納されるときとで磁気印刷の位置が磁気印刷検知手段の位置に対して変更されることを利用して、重送の有無を精度良く検知できるようになる。
【0068】
さらに、シートを立てて搬送し、搬送路の底面を規制手段として機能させることによってシート状部材や搬送補助部材が通過する位置が整列されるため、重送の有無を精度良く検知できるようになる。
【0069】
さらに、複数枚のシート状部材が搬送されていることを超音波受信信号が示していても、磁気印刷が検知されたのであれば、重送が発生したとは判断しない。そのため、シート状部材が搬送補助部材に格納されて搬送されても重送の発生を誤って認識することが減る。
【0070】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、複数のチェックが重送を起こすことを想定しており、チェックとエンベロープとによる重送については発生しないことを前提としている。しかし、実際には、チェックをエンベロープに入れた物と他のチェックとによる重送が起こることも考えられる。
【0071】
しかし、チェックをエンベロープに入れた物と他のチェックとの重送が起こった場合の超音波受信信号と磁気印刷検知信号は、図11に示した例と同一となってしまう。よって、この2つの信号からだけでは、エンベロープとチェックとによる重送を判別できない。
【0072】
そこで、本実施形態では、チェックをエンベロープに入れた物と他のチェックとの重送を検知する構成を追加することを提案する。
【0073】
まず、本実施形態の概略を説明する。チェックを格納したエンベロープは、3枚のシート(エンベロープのおもて面のシート、チェック及びエンベロープの裏面のシート)を重ねたものに相当する。このようなエンベロープに対して他のもう1枚のチェックが重なって搬送されると、4枚のシートが同時に搬送されたことになる。よって、シートが3枚以下か4枚以上かを判別する構成が必要となる。一般に、超音波センサの発信部と受信部の間に介在する遮蔽物の数が増すと超音波が大きく減衰する。そこで、超音波受信信号を分岐し、その一方の増幅率を大きくすることで、シートが3枚以下か4枚以上かを判別できるようにする。もちろん、シートが4枚以上であれば、重送が発生したものとして認識する。
【0074】
図13は、第2の実施形態に係る重送検知装置の概略ブロック図である。すでに説明した箇所には同一の参照符号を付与することで、説明の簡潔化を図る。第2の実施形態に係る重送検知装置14は、重送検知装置11に、第二信号増幅手段15及び第二超音波重送判定部16が追加されている。なお、信号解析手段9は、第二超音波重送判定部16を追加された信号解析手段17に置換されている。
【0075】
図13によれば、第二信号増幅手段15は、超音波受信器3の出力し信号増幅手段7が増幅した超音波受信信号をさらに増幅する。第二信号増幅手段15は、シートが3枚の場合と4枚の場合の差を判別するために設けられている。
【0076】
第二信号増幅手段15によって増幅された高増幅の超音波受信信号(アナログ信号)は、A−D変換器8によってデジタル信号に変換され、信号解析手段17へ送られる。このように、信号解析手段17には、第二信号増幅手段15によって増幅された信号と、第二信号増幅手段15によって増幅されなかった信号とが入力されることになる。
【0077】
なお、超音波受信器3の出力を2つに分岐し、一方を信号増幅手段7で増幅し、他方を第二信号増幅手段15により増幅するように変形しても良い。ただし、第二信号増幅手段15の増幅率は信号増幅手段7の増幅率よりも高く設定される必要がある。なお、この場合の信号経路は、破線1301によって示している。また、第二信号増幅手段15を設ける代わりに、信号増幅手段7の増幅率を変える制御を、重送判定枚数に応じて行っても良い。
【0078】
信号解析手段17が備える第二超音波重送判定部16は、デジタル化された高増幅の超音波受信信号を処理する。信号解析手段17は、超音波重送判定部12の判定結果、磁気印刷判定部13の判定結果及び第二超音波重送判定部16の判定結果を用いて、重送が発生しているか否かを判別する。
【0079】
図14は、エンベロープ入りのチェックが搬送されたときの全ての搬送状態に対する各判定部の判定結果と説明図の対応を示した表である。ここでは、図示は省略するが高増幅されていない超音波受信信号を用いて超音波重送判定部が重送の疑いなしと判定している場合は、単独のチェックが重送なく搬送されていると判定される。また、高増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いあり(2枚以上)を示し、かつ、磁気印刷検知信号の信号強度が弱く磁気印刷を検知していないことを示している場合は、チェックが重送していると判定される。これは、複数枚のチェックが重送しているか、エンベロープに対してチェックが上になって重送しているケースである。さらに、高増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示していたとしても、高増幅された超音波受信信号を用いて第二超音波重送判定部が重送の疑いあり(4枚以上)と判定している場合は、チェックが重送していると判定される。これは、エンベロープとチェックとが重送しているケースである。さらに、高増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いあり(2枚以上)を示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示し、かつ、高増幅された超音波受信信号が重送の疑いなし(3枚以下)を示している場合は、チェックが重送していないと判定される。これは、1組のエンベロープのみが搬送されているケースである。
【0080】
図15は、チェック1をエンベロープ1’に入れた物を1組搬送した場合(重送していない場合)の波形例を示した図である。高増幅の超音波受信信号波形1500は、第二信号増幅手段15から出力された信号の波形である。
【0081】
高増幅の超音波受信信号波形1500が表す超音波受信信号の信号強度は、チェック1により超音波が減衰すると低下するけれども、高増幅されているためエンベロープ入りのチェック1でも、閾値S3を下回らないようになっている。閾値S3は、チェック1が3枚搬送されたときに相当する信号強度(エンベロープ入りのチェック1のみが搬送されており重送していないとき)である第5の信号強度と、チェック1が4枚搬送されたときに相当する信号強度(重送したとき)である第6の信号強度との間に設定されている。閾値S3は、記憶手段10に保持されている。この閾値S3より信号強度が下回った場合、信号解析手段17は、重送が発生していると判断できる。図15に示した波形は、信号強度が閾値S3を下回っていない。このため、第二超音波重送判定部16は、搬送されたシートは3枚以下であると判定する。
【0082】
なお、超音波重送判定部12と磁気印刷判定部13の判定方法は、第1の実施形態で説明したとおりである。よって、両者の判定結果は図11の例と同じとなる。超音波重送判定部12は、チェック1が2枚以上搬送されていると判定し、磁気印刷判定部13は磁気印刷がある(チェック1はエンベロープ1’に入れられている)と判定する。
【0083】
これらの3つの判定結果から、シートが2枚以上搬送されていること、エンベロープ1’に入れられていること、及び、シートが3枚以下であることを信号解析手段17が認識する。その結果、信号解析手段17は、重送が発生していない(エンベロープに入れて搬送された)と判断できる。
【0084】
図16は、チェック1をエンベロープ1’に入れた物と他のチェック18とが重送した場合の波形例を示した図である。チェック1をエンベロープ1’に入れた物が磁気印刷検知手段4に近い側、重送した他のチェック18が磁気印刷検知手段4から遠い側となっている。
【0085】
高増幅の超音波受信信号波形1601は、重送している間、常に閾値S3を下回る。このため、第二超音波重送判定部16は、チェック1が4枚以上搬送されていると判定する。なお、超音波重送判定部12と磁気印刷判定部13の判定方法は、図11の例と同じになる。よって、超音波重送判定部12は、チェック1が2枚以上搬送されていると判定する。磁気印刷判定部13は磁気印刷がある(チェック1はエンベロープ1’に入れられている)と判定する。
【0086】
これらの3つの判定結果から、シートが2枚以上搬送されていること、エンベロープ1’に入れられていること、及び、シートが4枚以上であることを信号解析手段17は認識する。その結果、信号解析手段17は、重送が発生している(エンベロープに入れて搬送されかつ重送が発生した)と判断できる。
【0087】
図17は、チェック1をエンベロープ1’に入れた物と他のチェック18が重送した場合のもう1つの波形例を示した図である。図17の例が図16の例と異なる点は、重送したチェック18が磁気印刷検知手段4に近い側、チェック1をエンベロープ1’に入れた物が磁気印刷検知手段4から遠い側となっている点である。
【0088】
エンベロープ1’に入れたチェック1のMICR画像1−aと磁気印刷検知手段4との間に、重送したチェック18が介在すると、磁気印刷検知信号波形1701の信号強度は弱くなる。よって、磁気印刷検知信号波形1701は、閾値S2を上回らない。このため、磁気印刷判定部13は、磁気印刷が無い(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられていない)と判定する。この判定結果は、磁気印刷検知手段に近い側を搬送しているシートが、エンベロープ1’に入れられていない、ということを意味する。
【0089】
超音波受信信号波形1700が表す超音波受信信号の信号強度は、エンベロープが搬送されている間、常に閾値S1を下回る。このため、超音波重送判定部12は、チェック1が2枚以上搬送されていると判定する。これらの2つの判定結果から、信号解析手段17は、シートが2枚以上搬送されたことを認識する。また、信号解析手段17は、エンベロープ1’に入れられていないことを認識する。その結果、信号解析手段17は、重送が発生していると判断できる。
【0090】
図17に示した例を用いて、磁気印刷検知信号波形1701が表す磁気印刷検知信号の信号強度が弱くなり、閾値S2を上回らない場合について説明した。一方で、磁気印刷検知信号の信号強度が弱くならず、閾値S2を上回る場合も考えられるため、この場合について説明する。
【0091】
磁気印刷検知信号の信号強度が閾値S2を上回ると、波形は図16の例と同じになる。超音波受信信号と高増幅の超音波受信信号も、図16の例と同じでなる。よって、超音波重送判定部12と磁気印刷判定部13と高増幅の第二超音波重送判定部16の各判定結果は図16の例と同じになる。すなわち、超音波重送判定部12は、チェック1が2枚以上搬送されていると判定し、磁気印刷判定部13は磁気印刷がある(チェック1はエンベロープ1’に入れられている)と判定し、第二超音波重送判定部16は、チェック1が4枚以上搬送されていると判定する。
【0092】
よって、これら3つの判定結果から、信号解析手段17は、シートが2枚以上搬送されていること、エンベロープ1’に入れられていること、及び、シートが4枚以上であることを認識する。最終的に、信号解析手段17は、重送が発生している(エンベロープに入れて搬送されかつ重送が発生した)と判断できる。
【0093】
図18は、実施形態に係る重送検知方法の一例を示したフローチャートである。なお、既に説明した箇所には同一の参照符号を付与することで、説明の簡潔化を図る。上述のステップS1202で磁気印刷が検出されたときは、ステップS1801に進む。
【0094】
ステップS1801で、第二超音波重送判定部16は、超音波受信信号が重送の疑いを示しているか否かを判定する。たとえば、第二超音波重送判定部16は、高増幅の超音波受信信号の信号強度が閾値S3を下回っているか否かを判定する。下回っていなければ、重送が発生していないため、ステップS1204に進む。一方、高増幅の超音波受信信号の信号強度が閾値S3を下回っていれば、重送が発生しているため、ステップS1203に進む。
【0095】
本実施形態によれば、シート状部材を格納した搬送補助部材と他のシート状部材とによる重送についても精度良く検知することができる。とりわけ、増幅手段を追加するだけで、超音波発信手段や超音波受信手段を追加しなくてもよいため、コストも低減できよう。
【0096】
[第3の実施形態]
第2の実施形態は、第二信号増幅手段15を設けることで、あたかも感度の異なる2つの超音波センサを配置した場合と同等の重装検知を行うものであった。本実施形態は、第2の実施形態とは異なる方法で検知漏れの少ない高性能な重送検知装置を実現する。具体的には、搬送路の一方の側に配設されてシート状部材の方向に光を照射する発光手段と、搬送路の他方の側に配設されて発光手段からの光を受光して受光信号を出力する受光手段とが追加される。これにより、受光信号と、超音波受信信号と、磁気印刷検知信号とに基づいてシート状部材が重送しているか否かを判定することが可能となる。
【0097】
図19は、第3の実施形態に係る重送検知装置19の概略ブロック図である。重送検知装置19は、上述した超音波センサと磁気センサの他に、光センサを用いて重送を検知する装置である。すなわち、重送検知装置19の構成は、第1の実施形態を示した図1の重送検知装置11に、発光手段20、受光手段21、発光部駆動手段22、受光信号増幅手段23及び光学重送判定部24が追加されている。また、信号解析手段9は、光学重送判定部24を備えた信号解析手段25に置換されている。
【0098】
発光手段20は、チェック1に対して赤外光を発光する発光素子(例:LEDなど)である。受光手段21は、発光手段20の発光する赤外光を受光する受光素子(例:フォトダイオード)である。なお、図19に示すように、受光手段21は、チェック1を透過した赤外光を受信できるようにチェック1の搬送路を挟んで発光手段20と対向するように設置されている。これにより、発光手段20から発光された赤外光は、チェック1を透過して、その透過光を受光手段21が受光する。また、受光手段21は、受光した赤外光の受光強度に応じて出力電圧が変化する信号(受光信号)を出力する。
【0099】
なお、上述したように搬送路にチェック1が存在するときにはチェック1を透過した赤外光が受光手段21により受光されるが、搬送路にチェック1が存在しないときには、発光手段20が発光した赤外光が遮られることなく受光手段21により受光される。
【0100】
図19を用いた説明に戻る。制御手段5は、発光手段20が発光する赤外光の光量や発光タイミングを制御する信号(以下、発光信号とする)を発光部駆動手段22に供給する。発光部駆動手段22は、制御手段5より供給された発光信号に従い、発光手段20を所定の光量とタイミングで発光させる。
【0101】
受光信号増幅手段23は、受光手段21の出力する受光信号を増幅する。これは、発光手段20と受光手段21の間に搬送対象であるチェック1が入ると、発光手段20より発光した赤外光は、受光手段21に到達するまでに反射・散乱・吸収などにより減衰し、非常に微小な光量となってしまう。そのため、受光手段21が出力する受光信号も振幅が微弱となる。そこで、これを受光信号増幅手段23で増幅し、重送検知判断の可能な信号振幅に引き上げる。
【0102】
A−D変換器8は、受光信号増幅手段23によって増幅された受光信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換して信号解析手段25へ出力する。信号解析手段25は、信号解析手段に光学重送判定部24を追加したユニットである。受光手段21から出力された受光信号を増幅してデジタル化した信号は光学重送判定部24で処理される。信号解析手段25は、超音波重送判定部12、磁気印刷判定部13及び光学重送判定部24の各判定結果を元に、チェック1が重送であるか否かを判断する。
【0103】
ところで、赤外光は、一般に、重送時以外にもチェックに付着した印刷材料(印刷画像)によって大きく減衰する。このため、重送していない場合でも印刷画像によって透過光量が減少し、重送と判別できなくなってしてしまう可能性がある。
【0104】
図20は、実施形態に係る発光手段20及び受光手段21の位置の例を示した図である。これを緩和するための対策として、クリアバンド1−bの中でMICR画像1−aを回避可能な位置に発光手段20及び受光手段21を配置する。これは、赤外光の照射位置(透過位置)がMICR画像1−aを回避可能な位置であれば十分であることを意味する。クリアバンド1−bは、MICR画像1−a以外の不特定な印刷がされない領域として定められているため、印刷による影響が最も少ない場所である。このように、発光手段は、シート状部材が有する磁気印刷用に指定された領域内で磁気印刷材料が付着した領域を避けた位置に光を照射するように配置されている。
【0105】
図21は、エンベロープ入りのチェックが搬送されたときの全ての搬送状態に対する各判定部の判定結果と説明図との対応を示した表である。ここでは、超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、チェックが重送していないと判定される。これは、1枚のチェックのみが搬送されているケースである。また、超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、チェックが重送していると判定される。これは、複数枚のチェックが重送しているケースである。さらに、超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示していたとしても、受光信号が重送の疑いありを示している場合は、チェックが重送していると判定される。これは、エンベロープに入れられたチェックとそれとは別のチェックとが重送しているケースである。さらに、超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示し、かつ、受光信号が重送の疑いなしを示している場合は、チェックが重送していないと判定される。これは、1組のエンベロープのみが搬送されているケースである。
【0106】
次に、図を用いて受光信号(増幅してデジタル化した信号。以下略)の波形の具体例を示し、受光信号に対する信号解析手段25の判断結果を説明する。上述した図20の下段には、チェック1をエンベロープ1’に入れた物を1組搬送した場合、すなわち重送していない場合の受光信号波形2001が示されている。
【0107】
受光信号の信号強度(この例では電圧)は、チェック1により赤外光が減衰すると、低下するようになっている。閾値S4は、チェック1が1枚だけ搬送されたとき(重送していないとき)の第7の信号強度と、2枚搬送されたとき(重送したとき)の第8の信号強度との間に設定されている。閾値S4は、記憶手段10に保持されている。信号強度が閾値S4を下回った場合、信号解析手段25は、重送が発生した(2組以上)と判定する。図20に示した受光信号の信号強度は、閾値S4を下回っていない。このため、信号解析手段25の光学重送判定部24は、シートまたはエンベロープ1’に入れられたシートが1組のみ搬送されたと判定する。
【0108】
なお、チェック1を1枚搬送したときの受光信号強度と、チェック1をエンベロープ1’に入れた物を1組搬送したときの受光信号強度は、同程度である。これは、発光手段20及び受光手段21をクリアバンド1−b’に対応させて搬送路に配置しているため、赤外光がクリアバンド1−b’を透過するからである。クリアバンド1−b’は、表裏2枚のシートと、MICR画像1−a’を印刷するための紙等を素材とするシートで構成されている。エンベロープ1’の表側のシートは透明であり、裏側のシートは半透明のため、赤外光がほぼ透過する。よって、表裏2枚のシートでの赤外光の減衰は少ない。
【0109】
クリアバンド1−b’の上に貼られている、紙等を素材としたシートは、赤外光を減衰させるため、信号強度の低下はチェック1のときと同程度となる。また、クリアバンド1−b’は、表裏接着されており、チェック1が入らない構造になっている。そのため、赤外光はエンベロープ1’の中に入れられたチェック1に遮られることなく、エンベロープ1’のクリアバンド1−b’のみによって減衰する。以上のことから、チェック1をエンベロープ1’に入れた物を1組搬送した場合の信号強度の低下は、チェック1を1枚搬送させたときと同程度になる。
【0110】
光学重送判定部24の特徴は、チェック1をエンベロープ1’に入れた物1組のみ搬送された場合はチェック1枚と同等であり、重送なし(1組である)判定することである。この判定結果は超音波重送判定部12の判定結果(2枚以上)と異なる。これは、超音波重送判定部12は、チェック1をエンベロープ1’に入れた物を2枚以上と判定するからである。なお、光学重送判定部24と超音波重送判定部12の判定結果をわかりやすく説明するために、これ以降、光学重送判定部24の判定結果には単位に組を使用し、超音波重送判定部12の判定結果には単位に枚を使用して説明する。
【0111】
超音波重送判定部12と磁気印刷判定部13の判定方法は、実施形態1の図11を用いて説明した通りである。よって、超音波重送判定部12は、チェック1が2枚以上搬送されていると判定し、磁気印刷判定部13は磁気印刷がある(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられている)と判定し、光学重送判定部24は上述したように1組と判定する。
【0112】
これらの3つの判定結果から、シートが2枚以上搬送されていること、エンベロープ1’に入れられていること、シートが1組搬送されていることを信号解析手段25は認識する。そのため、信号解析手段25は、重送が発生していない(エンベロープに入れて搬送された)と判断する。
【0113】
図22は、チェック1をエンベロープ1’に入れた物と他のチェック18が重送した場合の波形例を示した図である。チェック1をエンベロープ1’に入れた物が磁気印刷検知手段4に近い側、重送したチェック18が磁気印刷検知手段4から遠い側となっている。
【0114】
図22の下段に示した受光信号波形2201は、重送している間、常に閾値S4を下回る。このため、光学重送判定部24は、重送が発生している(2組以上のシートが搬送された)と判定する。
【0115】
一方、超音波重送判定部12と磁気印刷判定部13の判定方法は、実施形態1で説明した通りである。このため、超音波重送判定部12は、チェック1が2枚以上搬送されていると判定し、磁気印刷判定部13は磁気印刷がある(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられている)と判定する。
【0116】
これらの3つの判定結果から、シートが2枚以上搬送されていること、エンベロープ1’に入れられていること及びシートやエンベロープ1’に入れられたシートが2組以上搬送されていることを信号解析手段25は認識する。そのため、信号解析手段25は、重送が発生している(エンベロープに入れて搬送されかつ重送した)と判定する。
【0117】
上述した図17は、チェック1をエンベロープ1’に入れた物とチェック18が重送した場合の他の例を示している。図17の例と図22の例とが異なる点は、重送したチェック18が磁気印刷検知手段4に近い側、チェック1をエンベロープ1’に入れた物が磁気印刷検知手段4から遠い側となっていることである。
【0118】
エンベロープ1’に入れたチェック1のMICR画像1−aと磁気印刷検知手段4との間に重送したチェック18が介在すると、磁気印刷検知信号の信号強度は弱くなる。よって、磁気印刷検知信号は、閾値S3を上回らない。このため、磁気印刷判定部13は、磁気印刷が無い(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられていない)と判定する。この判定結果は、磁気印刷検知手段に近い側を搬送しているシートが、エンベロープ1’に入れられていないことを意味する。
【0119】
超音波受信信号は、エンベロープ1’が搬送されている間、常に閾値S1を下回る。このため、超音波重送判定部12は、チェック1が2枚以上搬送されていると判定する。よって、これら2つの判定結果から、シートが2枚以上搬送されたことがわかる。また、エンベロープ1’に入れられていないとこともわかる。よって、信号解析手段25は、重送が発生していると判断する。この判断には光学重送判定部24の判定結果は用いない。
【0120】
図17に示した例では、磁気印刷検知信号の信号強度が弱くなり、閾値S2を上回らない場合について説明した。しかし、磁気印刷検知信号の信号強度が弱くならず、閾値S2を上回る場合も考えられる。以下では、このもう1つの例について説明する。
【0121】
磁気印刷検知信号が閾値S2を上回ると、そのときの波形は、図11に示した波形例と同等となる。超音波受信信号は図17に示した波形例と同等になり、受光信号は図22に示した波形例と同等になる。よって、超音波重送判定部12、磁気印刷判定部13及び光学重送判定部24の各判定結果は、図22に示した例と同じになる。超音波重送判定部12は、シートが2枚以上搬送されていると判定し、磁気印刷判定部13は磁気印刷がある(すなわちチェック1はエンベロープ1’に入れられている)と判定し、光学重送判定部24は、シートやエンベロープ1’に入れられたシートが2組以上搬送されていると判定する。
【0122】
これらの3つの判定結果から、信号解析手段25は、シートが2枚以上搬送されていること、エンベロープ1’に入れられていること、及び、シートが2組以上搬送されていることを認識する。すなわち、信号解析手段17は、重送が発生している(エンベロープに入れて搬送されかつ重送が発生した)と判断する。
【0123】
図23は、実施形態に係る重送検知方法の一例を示したフローチャートである。なお、既に説明した箇所には同一の参照符号を付与することで、説明の簡潔化を図る。上述のステップS1202で磁気印刷が検出されたときは、ステップS2301に進む。
【0124】
ステップS2301で、光学重送判定部24は、受光信号が重送の疑いを示しているか否かを判定する。たとえば、光学重送判定部24は、受光信号の信号強度が閾値S4を下回っているか否かを判定する。下回っていなければ、重送が発生していないため、ステップS1204に進む。一方、受光信号の信号強度が閾値S4を下回っていれば、重送が発生しているため、ステップS1203に進む。なお、上述のもう1つの例を考慮した判定を行う場合は、ステップS1202とステップS1203の間にステップS2301と同様の判断ステップを追加してもよい。
【0125】
本実施形態によれば、発光手段と受光手段とを追加することで、チェック1を格納したエンベロープ1’と他のチェック18とによる重送についても精度良く検知することができる。また、発光手段と受光手段の取り付け位置を工夫することで、磁気印刷に伴う光の減衰の影響を低減することができる。
【0126】
ところで、図20及び図22に示した例では、光学重送判定部24の判定結果がそのまま信号解析手段25の判断結果になっているように見える。このことから、もし、光学重送検知のみを使用するだけで十分に重送検知を行えるのではという疑問が生じるかもしれない。そこで、超音波重送判定部と磁気印刷検知部を使用しないで構成された重送検知装置について説明する。
【0127】
この構成の場合、チェックが重送しているか否かを、光学重送検知のみで判断しなければならない。チェックの地色、地模様には制限が無いので、どのような印刷がされるかを事前に特定することができない。このため、地色、地模様によって重送の誤検知が起こる可能性がある。誤検知が起こる可能性のあるチェックの一例としては、地色として全面に赤外光を透過し難い色(たとえば濃い灰色)が印刷されているチェックなどがある。このようなチェックが搬送された場合、一般的なチェックと比較して、チェックの先頭から最後まで透過光量が少ない状態が続く。そのため、複数のチェックが重送している場合の透過光量との違いを判別することが難しく、重送の誤検知が起こる可能性がある。よって、この構成では、実施形態2,3の構成よりも、重送検知精度は悪くなると考えられる。
【0128】
次に、本実施形態の光学重送検知における、地色、地模様による誤検知の可能性について説明する。本実施形態の光学重送検知は、超音波重送検知と磁気印刷検知の補助として使用されている。具体的には、超音波重送判定部12が重送と判定し、磁気印刷判定部13がエンベロープに入れられていると判定したときのみ、光学重送検知が必要となる。
【0129】
このため、光学重送検知が誤検知する(1組のシートを2組以上と判断してしまう)場合とは、エンベロープ1組を誤検知する場合である。よって、エンベロープに印刷される地色及び地模様について考えれば良い。なお、発光手段20及び受光手段21をクリアバンド1−bに配置しているため、クリアバンド1−bの地色及び地模様に限定して考えることができる。
【0130】
エンベロープ1’は搬送補助部材という特性上、地模様が印刷されることは少ないと考えられる。また、MICR画像1−aは一般的に黒色なため、クリアバンドに濃い色の地色を印刷してMICR画像1−aを見難くする可能性は低いと考えられる。
【0131】
以上のことから、エンベロープ1’のクリアバンド1−bに印刷又は印字がされる可能性は低く、本実施形態の光学重送検知が地色及び地模様によって誤検知する可能性は低いと考えられる。よって、本実施形態の光学重送検知は、充分な検知精度を確保することができると考えられる。以上を考慮して、本実施形態から超音波重送検知を省略し、光学重送検知と磁気印刷検知を併用した構成に変更しても、クリアバンドのあるチェックの正確な重送検知が可能であり、このような構成も本発明に含むものとする。
【0132】
地色及び地模様による誤検知対策について、さらなる一例を示す。図22に示したように、受光信号の強度が低下して閾値S4を下回り、下回っている期間が所定期間以上継続すると、光学重送判定部24は、重送が発生していると判定する。これにより、地色及び地模様による一時的な受光信号の強度の減少による誤検知を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】第1の実施形態における重送検知装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施形態におけるシート状部材の一例を示した図である。
【図3】実施形態における搬送保護部材の一例を示した図である。
【図4】実施形態におけるチェックのみを搬送した例を示した図である。
【図5】実施形態におけるチェック1を格納したエンベロープ1’を搬送する例を示した図である。
【図6】実施形態における磁気ヘッドの設置位置を示した図である。
【図7】実施形態における磁気ヘッドの設置位置を示した図である。
【図8】全ての搬送状態に対する各判定部の判定結果と説明図との対応関係を示した表である。
【図9】チェック1を1枚搬送した場合(重送していない場合)の波形例を示した図である。
【図10】チェック1が重送した場合の波形例を示した図である。
【図11】チェックをエンベロープに入れて搬送した場合の波形例を示した図である。
【図12】実施形態に係る重送検知方法の一例を示したフローチャートである。
【図13】第2の実施形態に係る重送検知装置の概略ブロック図である。
【図14】全ての搬送状態に対する各判定部の判定結果と説明図の対応を示した表である。
【図15】チェック1をエンベロープ1’に入れた物を1組搬送した場合(重送していない場合)の波形例を示した図である。
【図16】チェック1をエンベロープ1’に入れた物と他のチェック18とが重送した場合の波形例を示した図である。
【図17】チェック1をエンベロープ1’に入れた物と他のチェック18が重送した場合のもう1つの波形例を示した図である。
【図18】実施形態に係る重送検知方法の一例を示したフローチャートである。
【図19】第3の実施形態に係る重送検知装置19の概略ブロック図である。
【図20】実施形態に係る発光手段20及び受光手段21の位置の例を示した図である。
【図21】全ての搬送状態に対する各判定部の判定結果と説明図との対応を示した表である。
【図22】チェック1をエンベロープ1’に入れた物と他のチェック18が重送した場合の波形例を示した図である。
【図23】実施形態に係る重送検知方法の一例を示したフローチャートである。
【図24】特許文献1に記載されている紙幣の重送検知装置の概要を示した図である。
【符号の説明】
【0134】
1 チェック(磁気印刷用に指定された領域を有するシート状部材)
1−a MICR画像
1−b クリアバンド
1−c 非クリアバンド
2 超音波発信器
3 超音波受信器
4 磁気印刷検知手段
5 制御手段
6 駆動手段
7 信号増幅手段
8 A−D変換器
9 信号解析手段
10 記憶手段
11 重送判定装置
12 超音波重送判定部
13 磁気印刷定部
1’ エンベロープ
1−a’ エンベロープのMICR画像
1−b’ エンベロープのクリアバンド
1−c’ エンベロープの非クリアバンド
S1 超音波重送判定の閾値
S2 磁気印刷判定の閾値
14 実施形態2の構成の重送判定装置
15 第二信号増幅手段
16 第二超音波重送判定部
17 信号解析手段
18 重送したチェック
S3 第二超音波重送判定の閾値
19 実施形態3の構成の重送判定装置
20 発光手段
21 受光手段
22 発光部駆動手段
23 受光信号増幅手段
24 光学重送判定部
25 信号解析手段
S4 光学重送判定の閾値
101 紙幣
102 超音波発信手段
103 超音波受信手段
104 制御手段
105 駆動手段
106 増幅手段
107 A−D変換器
108 信号解析手段
109 記憶手段
110 信号増幅率調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気印刷用に指定された領域を有するシート状部材が搬送される搬送路と、
前記搬送路の一方の側に配設されて前記シート状部材の方向に超音波を発信する超音波発信手段と、
前記搬送路の他方の側に配設されて前記超音波発信手段の発信する前記超音波を受信して超音波受信信号を出力する超音波受信手段と、
前記シート状部材の磁気印刷の有無により磁気印刷検知信号を出力する磁気印刷検知手段と、
前記超音波受信信号と、前記磁気印刷検知信号に基づいて前記シート状部材が重送しているか否かを判定する重送判定手段と
を含むことを特徴とする重送検知装置。
【請求項2】
前記磁気印刷検知手段は、
前記シート状部材が搬送補助部材に格納されて搬送されてきたときには前記シート状部材の磁気印刷を検知でき、前記シート状部材が前記搬送補助部材に格納されずに搬送されてきたときには前記シート状部材の磁気印刷を検知できない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の重送検知装置。
【請求項3】
前記搬送路は、
前記シート状部材の一辺又は前記シート状部材を格納した前記搬送補助部材の一辺が通過する位置を規制するための規制手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の重送検知装置。
【請求項4】
前記重送判定手段は、
前記超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、前記シート状部材が重送していないと判定し、
前記超音波受信信号が重送の疑いありを示していたとしても、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示している場合は、前記シート状部材が重送していないと判定し、
前記超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、前記シート状部材が重送していると判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重送検知装置。
【請求項5】
前記超音波受信信号を増幅する増幅手段をさらに備え、
前記重送判定手段は、
前記増幅手段により増幅された超音波受信信号と、前記増幅手段により増幅されていない超音波受信信号と、前記磁気印刷検知信号とに基づいて前記シート状部材が重送しているか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重送検知装置。
【請求項6】
前記重送判定手段は、
前記増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、前記シート状部材が重送していないと判定し、
前記増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、前記シート状部材が重送していると判定し、
前記増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示していたとしても、前記増幅された超音波受信信号が重送の疑いありを示している場合は、前記シート状部材が重送していると判定し、
前記増幅されていない超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示し、かつ、前記増幅された超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、前記シート状部材が重送していないと判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の重送検知装置。
【請求項7】
前記搬送路の一方の側に配設されて前記シート状部材の方向に光を照射する発光手段と、
前記搬送路の他方の側に配設されて前記発光手段からの前記光を受光して受光信号を出力する受光手段と
をさらに備え、
前記重送判定手段は、
前記受光信号と、前記超音波受信信号と、前記磁気印刷検知信号とに基づいて前記シート状部材が重送しているか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の重送検知装置。
【請求項8】
前記重送判定手段は、
前記超音波受信信号が重送の疑いなしを示している場合は、前記シート状部材が重送していないと判定し、
前記超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知していないことを示している場合は、前記シート状部材が重送していると判定し、
前記超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示していたとしても、前記受光信号が重送の疑いありを示している場合は、前記シート状部材が重送していると判定し、
前記超音波受信信号が重送の疑いありを示し、かつ、前記磁気印刷検知信号が磁気印刷を検知したことを示し、かつ、前記受光信号が重送の疑いなしを示している場合は、前記シート状部材が重送していないと判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の重送検知装置。
【請求項9】
前記発光手段は、
前記シート状部材が有する磁気印刷用に指定された領域内で磁気印刷材料が付着した領域を避けた位置に前記光を照射するように配置されている
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の重送検知装置。
【請求項10】
前記磁気印刷用に指定された領域は、MICR(Magnetic Ink Character Recognition)印刷が行われる領域であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の重送検知装置。
【請求項11】
磁気印刷用に指定された領域を有するシート状部材が搬送される搬送路の一方の側に配設された超音波発信手段により前記シート状部材の方向に超音波を発信するステップと、
前記超音波発信手段の発信する前記超音波を前記搬送路の他方の側に配設された超音波受信手段が受信して出力する超音波受信信号を取得するステップと、
前記シート状部材の磁気印刷の有無により磁気印刷検知手段が出力する磁気印刷検知信号を取得するステップと、
前記超音波受信信号と、前記磁気印刷検知信号に基づいて前記シート状部材が重送しているか否かを判定するステップと
を含むことを特徴とする重送検知方法。
【請求項12】
特定の印刷材料を用いた印刷が施される予め指定された指定領域を有するシート状部材が搬送される搬送路と、
前記搬送路の一方の側に配設されて前記シート状部材の方向に超音波又は光の少なくとも一方を送出する送出手段と、
前記搬送路の他方の側に配設されて前記送出手段の送出する前記超音波又は光を受けて信号を出力する信号出力手段と、
前記シート状部材に付着した前記印刷材料の有無により印刷検知信号を出力する印刷検知手段と、
前記信号出力手段の出力信号と、前記印刷検知信号に基づいて前記シート状部材が重送しているか否かを判定する重送判定手段と
を含むことを特徴とする重送検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−256073(P2009−256073A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109526(P2008−109526)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】