説明

重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法並びに成膜装置及び成膜方法

【課題】本発明は、真空中において特に2次元的に重量物を搬送させるのに適した重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法を提供し、また、それらを適用した成膜装置または成膜方法を提供することである。
【解決手段】重量物を一次元的又は2次元的に搬送させるメイン軸を有し、前記メイン軸の負荷を低減する重量物搬送アシストする際に、前記搬送は一端を前記真空チャンバの壁に回転可能に固定され、他端に回転可能に設けられた前記重量物を有するリンクを有するリンク部を介して行われ、前記重量物を駆動するメイン軸の負荷を低減するようにアシスト軸によって前記一端にトルクを付与することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法並びに成膜装置及び成膜方法に係わり、特に重量物の二次元的搬送に適した重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法並びにそれを適用した成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造過程においては、真空下でガラス基板に有機EL材料の蒸着処理を施す真空処理装置を複数備えた、マルチチャンバタイプの真空処理システムが採用されている。
前記のような真空処理システムは大気側の基板の搬出入に際するロードロック室、基板に蒸着処理を施す蒸着処理室(チャンバ) 及び前記蒸着処理室へ搬出入させる搬送ロボットを有した搬送室(チャンバ)を有する。また、蒸着処理室は複数枚の基板を処理可能となっている場合もある。
【0003】
蒸着処理室では、膜厚の均一性を良くするために、基板側を固定し、蒸着源を搬送させる方法と蒸着源を固定して基板側を搬送させる方法が実用化されている。蒸着源を搬送させる方法としては、蒸着源を長手方向に垂直に搬送させ、膜厚分布の均一化を図ると共に、長手方向に平行して基板間を長手方向に移動させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、蒸着源は一般的に重量の大きいものであり、2次元的に搬送するためには、大きな駆動力が必要となってしまうため、駆動力をアシストする機構が求められる。また、真空中で重量物を昇降する機構においてはコイルばねの付勢力によるアシスト技術は開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−086956号公報
【特許文献2】特開2007−069991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の真空中での重量物の搬送をアシストする技術に関してはコイルばねによる技術が開示されているが、これは昇降搬送機構のみのアシスト技術であり、2次元的に搬送する機構に関しては適用できない。
【0007】
本発明の第1の目的は、特に、真空中で2次元的に重量物を搬送させるのに適した重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、前記重量物搬送アシスト機構または重量物搬送アシスト方法を成膜装置または成膜方法に適用し、小型な成膜装置または省エネルギーを実現できる成膜方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の目的を達成するために、重量物を一次元的又は2次元的に搬送させるメイン軸を有し、前記メイン軸の負荷を低減する重量物搬送アシスト機構または重量物搬送アシスト方法において、前記搬送は、一端を回転可能に固定され、他端に回転可能に設けられた前記重量物を有するリンクを有するリンク部を介して行われ、前記重量物を搬送させるメイン軸の負荷を低減するように前記一端にトルクを付与することを第1の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、第2の目的を達成するために、真空チャンバ内で重量物を一軸方向または前記一軸方向を含む2次元的に搬送させるメイン軸を有する成膜装置又は成膜方法において、前記搬送は一端を前記真空チャンバの壁に回転可能に固定され、他端に回転可能に設けられた前記重量物を有する複数のリンクを有するリンク部を介して行われ、前記重量物を駆動するメイン軸の負荷を低減するようにアシスト機構によって前記一端にトルクを付与することを第2の特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、第2の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記真空チャンバは成膜材料を被処理対象に蒸着する真空蒸着チャンバであり、前記重量物は蒸着源であり、前記蒸着源により被処理対象に蒸着することを第3の特徴とする。
また、第2の目的を達成するために、第3の特徴に加え、前記成膜材料は有機EL材料であり、前記処理対象は表示基板であることを第4の特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、第2の目的を達成するために、第3または第4の特徴に加え、前記真空蒸着チャンバは前記蒸着する蒸着部を複数有し、前記メイン軸のうち第1の駆動軸によって前記蒸着源を前記蒸着部間を搬送させ、前記メイン軸のうち第2の駆動軸によって前記蒸着部において前記蒸着源を前記上下方向に搬送させることを第5の特徴とする。
また、第2の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記トルクは前記重量物の位置または前記重量物の位置、速度及び加速度に基づいて定められることを第6の特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、第2の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記リンクは中空であり、前記リンク部の回転可能部を真空シールし、前記リンク内に前記重量物への配線または流体を流す配管のうち少なくとも一方を敷設することを第7の特徴とする。
また、第2の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記メイン軸及びアシスト軸の駆動源は前記真空チャンバ外に設けられた、前記重量物は前記壁に設けられた真空シールを介して前記重量物を搬送させることを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特に真空中で2次元的に重量物を搬送させるのに適した重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法を提供できる。
【0015】
また、本発明によれば、前記重量物搬送アシスト機構または重量物搬送アシスト方法を成膜装置または成膜方法に適用し、小型な成膜装置または省エネルギーを実現できる成膜方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である有機EL表示装置の製造装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である搬送チャンバと処理チャンバの構成の模式図と動作説明図である。
【図3】マスクから見た蒸着部と重量物搬送アシスト機構の構成を示す図である。
【図4】真空蒸着チャンバの側部から見た蒸着部と重量物搬送アシスト機構の構成を示す図である。
【図5】実施形態おける重量物搬送アシスト方法による蒸着動作例を示した図である。
【図6】真空チャンバ内の重量物搬送のアシスト制御方法の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる成膜装置の一例として、有機EL表示装置の製造装置に適用した例を説明する。有機EL表示装置の製造装置は、陽極の上に正孔注入層や正孔輸送層、発光層(有機膜層)、陰極の上に電子注入層や輸送層など様々な材料の薄膜層を真空蒸着により多層積層して形成する装置である。
【0018】
図1は有機EL表示装置の製造装置構成の一実施形態を示したものである。本実施形態における有機EL表示装置の製造装置100は、大別して処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ3、前記基板6を処理する4つのクラスタ(A〜D)、隣接する各クラスタ2a〜d間又はクラスタとロードクラスタ3あるいは次工程(封止工程)との間に設置された5つの受渡室4a〜eを備えて構成されている。
【0019】
ロードクラスタ3は、前後に真空を維持するためにゲート弁10を有するロードロック室31とロードロック室31から基板6を受取り、旋回して受渡室4aに基板6を搬入する搬送ロボット5Rを備えている。各ロードロック室31及び各受渡室4aは前後にゲート弁10を有し、当該ゲート弁10の開閉を制御し真空を維持しながら(真空を維持するための手段、例えば真空排気ポンプの図は省略)ロードクラスタ3あるいは次のクラスタ等へ基板を受渡する。
【0020】
各クラスタ(A〜D)は、搬送ロボット5a〜dを備えた搬送チャンバ2a〜dと、搬送ロボット5a〜dから基板を受取り、所定の処理を行う図面上で上下に配置された2つの処理チャンバ1a〜d,u又はd(第1の添え字a〜dはクラスタを示し、第2の添え字u、dは上側下側を示す)を有する。各搬送チャンバ2a〜dと各処理チャンバ(1au〜1du、1ad〜1dd)の間には、それぞれゲート弁10が設けてある。
【0021】
処理チャンバ1の構成は処理内容によって異なるが、真空で発光材料を蒸着しEL層を形成する真空蒸着チャンバ1buを例にとって図2を用いて説明する。図2は搬送チャンバ2bと真空蒸着チャンバ1buの構成の模式図と動作説明図である。搬送ロボット5は、全体を上下に移動可能(図2の矢印53参照)で、左右に旋回可能なリンク構造のアーム51を有する。なお、図1において搬送チャンバ2は4角形の平面形状で表され各々2つの処理チャンバと接続されているが、装置構成としてはこれに限定されるものではない。
【0022】
一方、真空蒸着チャンバ1buは、大別して発光材料を蒸発させ基板6に蒸着させる蒸着部7と、基板6の必要な部分に蒸着させるアライメント部8と、搬送ロボット5と基板の受渡しを行い、蒸着部7へ基板6を移動させる処理受渡部9からなる。ここでは、蒸着部7、アライメント部8及び処理受渡部9の概略構成を説明する。
アライメント部8と処理受渡部9は右側Rラインと左側Lラインの2系統設ける。処理受渡部9は、搬送ロボット5の櫛歯状ハンド52と干渉することなく基板6を受渡し可能で、基板6を固定する手段94を有する基板チャック(櫛歯状ハンド)91と、前記櫛歯状ハンド91を旋回させて基板6を直立させアライメント部8に搬送するハンド旋回駆動手段92を有する。基板6を固定する手段94としては、真空中であることを考慮して電磁吸着やクリップ等の手段を用いる。アライメント部8は、マスク81のアライメント窓85と基板6上のアライメントマーク84によって基板6とマスク81とを位置合せをする。
【0023】
蒸着部7は、蒸着源71と蒸着源を搬送(移動)させる蒸着源駆動手段70とを有する。蒸着源71は、内部に蒸着材料である発光材料を有し、前記蒸着材料を加熱制御(図示せず)することによって安定した蒸発速度が得られ、図2の引出し図に示すように、ライン状に並んだ複数の噴射ノズル73から噴射される構造となっている。必要によっては、安定した蒸着が得られるように添加剤も同時に加熱して蒸着する。蒸着源駆動手段70は、マスクの下部側に設けられ蒸着源71を左右に搬送(移動)させる左右搬送(移動)手段74と、RラインとLラインのそれぞれマスク81の外側側部に設けられ蒸着源71を上下に搬送(移動)させる上下搬送(移動)手段72とを有する。
【0024】
次に、本発明の特徴とである重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法を、重量物としての蒸着源71の搬送に適用した実施形態を説明する。
図3はマスク81から見た蒸着部7と重量物搬送アシスト機構50の構成を示す図である。図4は真空蒸着チャンバ1buの側部から見た蒸着部7と重量物搬送アシスト機構50の構成を示す図である。
【0025】
まず、重量物搬送アシスト機構50は、先端部が蒸着源71に回転可能に接続され、蒸発部の上下、左右の搬送に伴い追随して動作するリンク部51と、前記リンク部を介して前記蒸着源の搬送をアシストするように前記リンク部にトルク付与するアシスト駆動部55を有する。
リンク部51は、一端が真空蒸着チャンバ1buの壁に回転可能で大気雰囲気に開放にされた状態で固定された中空の第1リンク51aと、一端が前記第1リンク51aの他端に回転可能に接続され、他端が結合リンク51cに回転可能に固定された中空の第2リンク51bと、後述する蒸着源台71dに固定された前記結合リンク51cとを有する。各リンクは錆に強く十分な強度を持つ金属、例えばステンスやアルミニウムなどで構成されている。また、中空のリンク内には、前述した蒸着源71に接続される配線(図示せず)が敷設されている。リンク部51は、前記配線を安定して目的位置に接続した状態を維持することが可能である。
【0026】
本リンク部51によれば、蒸着源71が移動してもリンク部でその移動を吸収し、回転部がシールされたステンレス製のリンクで真空領域から完全に遮断しているので、リンク部内を真空にする必要はない。さらに、リンク部をステンレスまたはアルミニウム、マグネシウム又はその合金、あるいはセラミックス又はセラミックスコンポジット材料製のリンクなどで構成しているのでアウトガスの発生もない。
上記ではリンク内に配線のみを敷設する説明をしたが、例えば蒸着源の冷却が必要であれば、冷却水用の配管を敷設してもよい。また、逆に配線等敷設が必要ないないならば、リンクは中空である必要もない。
【0027】
一方、アシスト駆動部55は、図4に示すように、真空蒸着チャンバ1buの外壁に固定された駆動固定ケース55kに設けられたアシストモータ55mと、減速器55gと、伝達軸であるアシスト軸55jと、アシスト軸と第1リンク51aに固定されたトルク伝達部55dと、アシスト軸をシールするシール部55sとを有する。この構成によって、蒸着源71を図3に示す左右、上下搬送する駆動軸であるメイン軸の負荷を軽減するようにアシストする。
【0028】
本重量物搬送アシスト機構によれば、蒸着源(重量物)71のメイン搬送駆動軸をアシストすることにより、真空蒸着チャンバ内での蒸着源の2次元的な搬送をスムーズに行なうことができる。また、メイン軸のモータ負荷を軽減できることからメイン軸モータの小型化及び真空蒸着チャンバの省スペース化を可能にできる。
【0029】
次に、図3、図4を用いて蒸着源駆動手段70をより詳細に説明する。
まず、左右搬送手段74を説明する。左右駆動手段74は蒸着源71を固定する蒸着源台71dを図3に示す左右(図4では図面奥行き方向)に搬送し、蒸着源台の両端に設けられた引出図A,Bに示す結合ナット72nRまたは72nLを上下駆動手段72L、72Rの上下ボール螺子72bに結合する役目を有する。例えば、結合ナット72nRがRライン用の上下ボール螺子72bと結合すれば、上下駆動手段72Rによって蒸着源71が、前記上下ボール螺子72bと上下レール72rに沿って上下し、Rラインに設けられた基板への前面蒸着が可能となる。
【0030】
上記役目を果たすために、左右搬送手段74は、下壁1h上の真空蒸着チャンバ内に固定されたベース74dと、前記ベース上に設けられた2本の左右レール74rと、前記左右レール上を搬送する左右駆動ベース74kと、前記左右駆動ベースを左右に搬送させる左右ボール螺子74bと、前記左右ボール螺子を駆動する左右駆動モータ74mと、蒸着源71を固定したL字状の蒸着源台71dと、左右搬送時上下レール72rをガイドする上部ガイド74gとを有する。
【0031】
蒸着源台71dは、L字状の側部に設けられ、前記上下レール72r上に沿って摺動する上下に配置された2つの摺動子72pと、上下搬送時に蒸着源台が前記上下レール72rにガイドされるガイド孔72hとを有する。また、左右駆動モータ74mは発熱及び真空蒸着チャンバ1bu内での発塵を抑えるために真空蒸着チャンバの外部に設置されている(図3参照)。それ故、左右駆動モータ74mと左右ボール螺子74bとのカップリング部74Mが必要である。カップリング部は、磁性流体シール74sとその前後に設けられたカップリング74cとを有する。カップリング部は、磁性流体シール74sが真空蒸着チャンバ壁1hの変形等で傾く場合に、磁性流体シールと左右駆動モータ74mまたはボール螺子74bとの間に発生する軸間の変位や角度誤差を吸収する役目を有する。この役目よって、スムーズな動力の伝達が可能になる。なお、符号72は上下駆動手段を構成する要素を示す。
【0032】
一方、上下搬送手段72は真空蒸着チャンバ1buの内壁に設置され、前述したようにRライン、Lライン用の上下搬送手段72R,72Lを有する。基本的には両者は同一なので上下搬送手段72Lを代表して説明する。但し、説明が複雑になるのでLラインを示す添え字は付さない。
上下搬送手段72は、真空蒸着チャンバ1buの上部外側に設けた上下駆動モータ72mと、前述した蒸着源台71dの左に設けた結合ナット72nLを移動させる上下ボール螺子72bと、上下ボール螺子と上下駆動モータ及び真空蒸着チャンバ壁1hとのカップリング部72M,72Kとを有する。カップリング部72Mは前述したカップリング部74Mと全く同様な構成を有している。一方、カップリング部72Kは、カップリング部74Mとは異なり駆動源ない壁側にはカップリング74cに相当するカップリング72cがない構造を有する。
【0033】
上下駆動手段72においても、上下駆動モータ72mを真空蒸着チャンバ1buの上部外側に設けているので、左右駆動モータ74mの発熱及び真空蒸着チャンバ1bu内での発塵を抑えることができる。また、上下駆動手段72においても、カップリング部72M,72Kを設けることでスムーズな動力の伝達が可能になる。
【0034】
次に、本実施形態おける蒸着動作例を図5を用いて説明する。図5は左側下部から蒸着を開始する例である。重量物である蒸着源71の動作としては、まず左側下部の開始位置に蒸着源を搬送させる(S0)。Lラインの上下搬送手段72Lにより蒸着源71を左側最上部へ搬送させながら、Lラインの基板チャック91により垂直に維持された基板6Lの全面に蒸着をする(S1)。その後、基板6Lを水平にした後、再び蒸着源を左側最下部へ搬送する(S2)。次に、前記ステップまでに垂直維持されたRラインの基板6Rを蒸着するために、蒸着源71を左右搬送手段74により右側に搬送し、Rラインの水平最下部へ搬送する(S3)。その後、Rラインの上下駆動手段72Rにより蒸着源71を右側最上部へ搬送させながら、Rラインの基板チャック91により垂直に維持された基板6Rの全面に蒸着をする(S4)。次に、基板6Rを水平にした後、再び蒸着源を右側最下部へ搬送する(S5)。そして、開始位置である左側最下部へ左右搬送手段74により水平に搬送する(S6)。以後、ステップS1からS6の蒸着動作を繰り返すことになる。
【0035】
次に、図6に、図5における重量物である蒸着源71の搬送時における重量物搬送アシスト制御方法の例を示す。
図6では真空チャンバ内の重量物搬送のアシスト制御方法の実施形態を示す。前記アシスト制御を実施するアシスト制御プログラム64は図5に示す制御装置60に設けられている。本実施形態では、上下駆動手段72R、72L及び左右駆動手段74の駆動軸をメイン軸65とする。また、リンク部51による重量物搬送アシスト機構による駆動軸をアシスト軸66とする。
まず、図3に示す制御装置60は蒸着源71の搬送のメイン軸65(上下方向2箇所、左右方向1箇所)の位置を読み取り、アシスト制御プログラム64に位置指令61を与える。アシスト制御プログラム64は位置指令を受け取ると、前記位置指令にローパスフィルタ62を掛ける。次に、ローパスフィルタ62を掛けた位置指令63を微分して速度V、さらに微分して加速度αを得る。予め求めておいた速度、加速度及び定数のテーブルTA,TB及びTCから、位置指令63、得られた速度V、加速度αに適した乗数または定数A,B,Cを選び、式(1)に基づいてアシスト軸への指令トルクτrを算出し、アシスト軸66へ指令を与える。
τr=Aα+Bv+C (1)
その結果、重量物である蒸着源の2次元における搬送において、アシスト軸によりメイン軸の負荷をリアルタイムで低減でききる。
【0036】
上記アシスト制御方法では位置指令63、得られた速度V、加速度αに基づいてトルクを求めたが、これに限るものではない。
【0037】
以上説明した本実施形態によれば、メイン軸の小型化が可能となり、真空蒸着チャンバ内の省スペース、または真空蒸着チャンバ自体の小型化を実現できる成膜装置、あるいは省エネルギーを実現できる成膜方法を提供できる。
【0038】
また、以上説明した実施形態では、重量物である蒸着源を2次元的に搬送する例を示したが、蒸着源を単に上下方向に搬送する場合にも適用できる。
【0039】
さらに、以上説明した実施形態では、有機EL表示装置の製造装置を例に説明したが、本発明は重量物である蒸着源を有する成膜装置にも適用できる。さらにまた、本発明は成膜装置において蒸着源以外の重量物の搬送にも適用可能である。
まして、重量物搬送アシスト機構及び重量物搬送アシスト方法に関しては、成膜装置に限らずに一般の重量物の搬送にも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:処理チャンバ 1bu:真空蒸着チャンバ
2:搬送チャンバ 3:ロードクラスタ
4:受渡室 5:搬送ロボット
6:基板 7:蒸着部
8:アライメント部 9:処理受渡部
10:ゲート弁 31:ロードロック室
50:重量物搬送アシスト機構 51:リンク部
55:アシスト駆動部 60:制御装置
61:メイン軸の位置指令 62:ローパスフィルタ
63:ローパスフィルタを通ったメイン軸の位置指令
64:アシスト制御プログラム 65:メイン軸
66:アシスト軸 70:蒸着源駆動手段
71:蒸着源 72:上下駆動手段
74:左右駆動手段 81:マスク
91:基板チャック 100:有機EL表示装置の製造装置
A〜D:クラスタ TA、TB、TC:テーブル
V:位置指令に基づく速度 α:位置指令に基づく加速度
τr:アシスト軸へのトルク指令。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内で重量物を一軸方向または前記一軸方向を含む2次元的に搬送させるメイン軸を有する成膜装置において、
一端を前記真空チャンバの壁に回転可能に固定され、他端を直接的または間接的に前記重量物に回転可能に接続され、前記他端が前記重量物の前記搬送に追随する機構を有するリンク部と、前記メイン軸の負荷を低減するように前記一端にトルクを付与するアシスト機構を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記真空チャンバは成膜材料を被処理対象に蒸着する真空蒸着チャンバであり、前記重量物は蒸着源であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記成膜材料は有機EL材料であり、前記被処理対象は表示基板であることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記真空蒸着チャンバは前記蒸着する蒸着部を複数有し、前記メイン軸は、前記蒸着源を前記蒸着部間を搬送させる第1の駆動軸と、前記蒸着部において前記蒸着源を第1の駆動軸と垂直方向に搬送させる第2の駆動軸を有することを特徴とする請求項2または3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記複数は2であり、前記一端は前記複数の蒸着部間の中間の位置に相当する前記真空蒸着チャンバの壁面に固定され、前記第2の駆動軸は前記複数の蒸着部の各々に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記リンクは中空であり、前記リンク内に前記重量物への配線または流体を流す配管のうち少なくとも一方を敷設することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記メイン軸及びアシスト機構の駆動源は前記真空チャンバ外に設けられ、前記壁に設けられた真空シールを介して前記重量物を搬送させることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項8】
真空チャンバ内で重量物を一次元的又は2次元的に搬送させ、前記重量物によって所望の処理を実施する成膜方法において、
前記搬送は一端を前記真空チャンバの壁に回転可能に固定され、他端に回転可能に設けられた前記重量物を有するリンクを有するリンク部を介して行われ、前記重量物を搬送させるメイン軸の負荷を低減するようにアシスト機構によって前記一端にトルクを付与することを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
前記真空チャンバは成膜材料を被処理対象に蒸着する真空蒸着チャンバであり、前記重量物は蒸着源であり、前記蒸着源により被処理対象に蒸着することを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記成膜材料は有機EL材料であり、前記被処理対象は表示基板であることを特徴とする請求項8又は9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記真空蒸着チャンバは前記蒸着する蒸着部を複数有し、前記メイン軸のうち第1の駆動軸によって前記蒸着源を前記蒸着部間を搬送させ、前記メイン軸のうち第2の駆動軸によって前記蒸着部において前記蒸着源を第1の駆動軸と垂直方向に搬送させることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項12】
前記トルクは前記重量物の位置に基づいて定められることを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記トルクは前記重量物の位置、速度及び加速度に基づいて定められることを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項14】
重量物を一次元的又は2次元的に搬送させるメイン軸を有し、前記メイン軸の負荷を低減する重量物搬送アシスト機構において、
一端を回転可能に固定され、他端を前記重量物に回転可能に接続され、前記他端が前記重量物の搬送に追随するリンク部と、前記メイン軸の負荷を低減するように前記一端にトルクを付与するアシスト機構を有することを特徴とする重量物搬送アシスト機構。
【請求項15】
重量物を一次元的又は2次元的に搬送させるメイン軸を有し、前記メイン軸の負荷を低減する重量物搬送アシスト方法において、
前記搬送は、一端を回転可能に固定され、他端に回転可能に設けられた前記重量物を有するリンクを有するリンク部を介して行われ、前記重量物を搬送させるメイン軸の負荷を低減するように前記一端にトルクを付与することを特徴とする重量物搬送アシスト方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−12626(P2012−12626A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147454(P2010−147454)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】