説明

金型温度調節装置

【課題】高低温媒体切り替えにおいて回収する一方の媒体量を減少させ、熱効率を向上し得る金型温度調節装置を提供する。
【解決手段】金型温度調節装置1は、高温媒体供給部2と、低温媒体供給部3と、金型8に近接した送媒側切替接続部4と返媒側切替接続部5と、高温媒体貯留部20、低温媒体貯留部30、回収媒体貯留部60、及び管路を備えており、制御部は、金型加熱状態からは、低温媒体送媒路14、管路、回収媒体貯留部60及び低温媒体貯留部30を連通接続させた加熱・冷却切替状態とした後に、金型冷却状態に切り替える一方、この金型冷却状態からは、高温媒体送媒路11、管路、回収媒体貯留部60及び高温媒体貯留部20を連通接続させた冷却・加熱切替状態とした後に、前記金型加熱状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に設けられた媒体流通路に高温媒体を循環供給する高温媒体供給部と、上記媒体流通路に低温媒体を循環供給する低温媒体供給部とを備えた金型温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型に設けられた媒体流通路に高温媒体を循環供給する高温媒体供給部と、上記媒体流通路に低温媒体を循環供給する低温媒体供給部とを備えた金型温度調節装置(金型温度調節システム)が提案されている。このような金型温度調節装置によれば、金型を加熱することで、金型のキャビティに射出されて充填される溶融樹脂の固化を遅らせることができ、成形品へのキャビティ面の転写性(転写率)を向上させることができるものであった。また、溶融樹脂の充填後に金型を冷却することで、溶融樹脂を迅速に固化させることができ、成形サイクルの短縮化を図ることができるものであった。
このような金型温度調節装置においては、従来、高温媒体を循環供給する金型加熱工程から低温媒体を循環供給する金型冷却工程に切り替えられた際に、金型の媒体流通路や各経路に残留する高温媒体の熱量が廃棄され、熱損失が大きくなるという問題があった。また、上記金型冷却工程から上記金型加熱工程に切り替えられた際においても、金型の媒体流通路や各経路に残留する低温媒体が高温媒体貯留部に返媒され、高温媒体供給部の熱効率が低下するという問題があった。
【0003】
下記特許文献1では、金型の熱媒体流路に接続される送り配管路及び戻り配管路を備え、これらに送水路、返送路及び循環路を介して冷却ユニット及び加熱ユニットをそれぞれ接続した加熱冷却装置が提案されている。また、この加熱冷却装置では、上記戻り配管路に、一対の熱媒体一時貯水タンクを備えた一時貯水配管路を接続した構成としている。
この加熱冷却装置では、熱水から冷水に切り替える際には、金型の熱媒体流路に接続された戻り配管を一時貯水タンクに接続し、冷水の送り込みにより金型の熱媒体流路から押し出された熱水を一時貯水タンクへ送り込む。この熱水の送り込みにより、一時貯水タンクに先に貯蔵された冷水を押し出し、冷水返送路を介して冷水循環路に返送する構成としている。一方、冷水から熱水に切り替える際には、金型の熱媒体流路に接続された戻り配管を一時貯水タンクに接続し、熱水の送り込みにより金型の熱媒体流路から押し出された冷水を一時貯水タンクへ送り込む。この冷水の送り込みにより、一時貯水タンクに先に貯蔵された熱水を押し出し、熱水返送路を介して熱水循環路に返送する構成としている。
【0004】
また、下記特許文献2では、温度調整器がそれぞれに配設された高温水タンク及び低温水タンクのそれぞれを供給系統及び戻り系統によって金型の流体通路に接続した金型温度調整装置が提案されている。また、この金型温度調整装置では、上記高温水タンクと低温水タンクとの間に熱回収タンクを設けた構成としている。
この金型温度調整装置では、加熱から冷却に切り替える際には、金型の流体通路内等に残存する高温水を、低温水の供給により高温水タンクを介して熱回収タンクに回収する。また、この高温水の供給に伴い、熱回収タンクの下部側に貯留された低温水を、低温水タンクに戻す構成としている。一方、冷却から加熱に切り替える際には、低温水を熱回収タンクの下部側へ送り込むことで、熱回収タンクの上部側の高温水を高温水タンクに送り込む。この送り込みを伴い高温水タンクから金型の流体通路に高温水を供給することで、金型の流体通路内等に残存する低温水を低温水タンクに回収する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−145599号公報
【特許文献2】特許第4421318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記各特許文献に記載されたような従来の金型温度調節装置では、比較的に長い送媒管路や返媒管路を介して金型の媒体流通路に接続されるものである。このようなものでは、高温媒体の供給から低温媒体の供給に切り替える際、及び低温媒体の供給から高温媒体の供給に切り替える際に、金型の媒体流通路内に残留する高温媒体乃至は低温媒体に加えて、各管路に残留する高温媒体乃至は低温媒体の量が比較的に多くなり、その媒体量も加味して一時貯水タンクや熱回収タンクを比較的に大きくして、残留する媒体を回収する必要があり、更なる改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、一方の媒体から他方の媒体に切り替える際において回収する一方の媒体量を減少させ、熱効率を向上し得る金型温度調節装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る金型温度調節装置は、高温媒体を貯留する高温媒体貯留部を有し、高温媒体送媒路及び高温媒体返媒路を介して金型に設けられた媒体流通路に高温媒体を循環供給する高温媒体供給部と、低温媒体を貯留する低温媒体貯留部を有し、低温媒体送媒路及び低温媒体返媒路を介して前記媒体流通路に低温媒体を循環供給する低温媒体供給部とを備えた金型温度調節装置であって、前記媒体流通路の入口側に近接して設置され、前記高温媒体送媒路と前記低温媒体送媒路とを前記媒体流通路の入口に切替可能に連通させる送媒側切替接続部と、前記媒体流通路の出口側に近接して設置され、前記高温媒体返媒路と前記低温媒体返媒路とを前記媒体流通路の出口に切替可能に連通させる返媒側切替接続部と、この返媒側切替接続部、前記高温媒体貯留部及び前記低温媒体貯留部のそれぞれに管路を介して接続された回収媒体貯留部と、この回収媒体貯留部に接続された管路を開閉する開閉弁と、これら開閉弁及び前記各切替接続部を制御する制御部と、を備えており、前記制御部は、前記媒体流通路に高温媒体を循環供給する金型加熱状態からは、前記低温媒体送媒路、前記媒体流通路、前記回収媒体貯留部及び前記低温媒体貯留部を連通接続させた加熱・冷却切替状態とした後に、前記媒体流通路に低温媒体を循環供給する金型冷却状態に切り替える一方、この金型冷却状態からは、前記高温媒体送媒路、前記媒体流通路、前記回収媒体貯留部及び前記高温媒体貯留部を連通接続させた冷却・加熱切替状態とした後に、前記金型加熱状態に切り替えることを特徴とする。
【0009】
上記構成とされた本発明では、前記金型加熱状態からは、前記加熱・冷却切替状態とした後に、前記金型冷却状態に切り替える一方、この金型冷却状態からは、前記冷却・加熱切替状態とした後に、前記金型加熱状態に切り替えるようにしている。
前記加熱・冷却切替状態では、前記低温媒体送媒路、前記媒体流通路、前記回収媒体貯留部及び前記低温媒体貯留部が連通接続される。これにより、低温媒体の供給によって、金型の媒体流通路等に残留する高温媒体が回収媒体貯留部へ送給され、この送給に伴い、回収媒体貯留部に貯留された低温の媒体が、低温媒体貯留部へ送給される。従って、残留する高温媒体が直接的に低温媒体貯留部へ送給されることがなく、低温媒体貯留部における熱効率を向上させることができる。
一方、前記冷却・加熱切替状態では、前記高温媒体送媒路、前記媒体流通路、前記回収媒体貯留部及び前記高温媒体貯留部が連通接続される。これにより、高温媒体の供給によって、金型の媒体流通路等に残留する低温媒体が排出され、これに伴い媒体量が減少する高温媒体貯留部へは、前記加熱・冷却切替状態において回収媒体貯留部に貯留(回収)された高温の媒体が補給される。従って、残留する低温媒体が直接的に高温媒体貯留部へ送給されることがなく、また、回収媒体貯留部において回収した高温の媒体の熱量を有効に利用でき、高温媒体貯留部における熱効率を向上させることができる。
【0010】
また、高温媒体送媒路と低温媒体送媒路とを金型の媒体流通路の入口に切り替えて連通させる送媒側切替接続部と、高温媒体返媒路と低温媒体返媒路とを金型の媒体流通路の出口に切り替えて連通させる返媒側切替接続部とを、それぞれ媒体流通路の入口側と出口側とに近接して設置されるものとし、この返媒側切替接続部に、管路を介して回収媒体貯留部を接続している。従って、一方の媒体から他方の媒体に切り替える際において回収する一方の媒体量を減少させることができる。つまり、金型加熱状態から金型冷却状態に切り替える際においては、金型の媒体流通路内に残留する高温媒体に加えて、高温媒体の送媒側の管路と低温媒体の送媒側の管路とが合流して、これらを切り替える部位から金型の媒体流通路の入口までの部位(送媒側共通管路)及び、金型の媒体流通路の出口から高温媒体の返媒側の管路と低温媒体の返媒側の管路とに分岐して、これらを切り替える部位(返媒側共通管路)にも高温媒体が残留することとなる。一方、金型冷却状態から金型加熱状態に切り替える際においても同様、金型の媒体流通路内に残留する低温媒体に加えて、上記送媒側共通管路及び上記返媒側共通管路にも低温媒体が残留することとなる。上記構成とされた本発明では、送媒側切替接続部及び返媒側切替接続部を金型の入口側及び出口側のそれぞれに近接して設置されるものとし、返媒側切替接続部に、管路を介して回収媒体貯留部を接続しているので、上記送媒側共通管路及び上記返媒側共通管路の容積に相当する容積を比較的に小さくでき、これらに残留する媒体量(残留媒体量)を減少させることができる。この結果、回収する媒体量、つまりは、少なくとも上記残留媒体量を減少させることができ、各媒体貯留部における熱効率を効果的に向上させることが可能となるとともに、回収媒体貯留部の小型化を図ることもできる。これにより、各媒体貯留部の加熱器や冷却器等の熱交換器への負荷低減やこれらの小型化を図ることができる。つまり、高温媒体や低温媒体は、各媒体貯留部において、予め設定された温度となるように温度調整がなさるものであるが、上記各切替の際に回収する媒体量を減少させることで、各切替の際に各媒体貯留部に流入する媒体量を減少させることができるので、上記熱交換器への負荷低減やこれらの小型化を図ることができ、省電力化を図ることが可能となる。
さらに、回収する媒体量を減少させることができるので、上記加熱・冷却切替状態から上記金型冷却状態への切り替え、及び上記冷却・加熱切替状態から上記金型加熱状態への切り替えに要する時間を短縮化することができ、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
【0011】
本発明においては、前記低温媒体送媒路から分岐して設けられるとともに、前記回収媒体貯留部に低温媒体を送給する媒体送給管路と、この管路を開閉するとともに前記制御部に制御される開閉弁とを更に備えた構成としてもよい。この場合、前記制御部によって前記各切替接続部及び前記各開閉弁を制御して、前記冷却・加熱切替状態において、前記低温媒体返媒路、前記低温媒体貯留部及び前記媒体送給管路を介して、前記媒体流通路と前記回収媒体貯留部とを連通接続させるようにしてもよい。
このような構成とすれば、冷却・加熱切替状態においては、高温媒体の供給によって、金型の媒体流通路等に残留する低温媒体が低温媒体貯留部へ送給され、また、低温媒体貯留部からは低温媒体送媒路及び媒体送給管路を介して低温媒体が回収媒体貯留部へ送給される。また、上記高温媒体の供給に伴い、媒体量が減少する高温媒体貯留部へは、前記加熱・冷却切替状態において回収媒体貯留部に貯留(回収)された高温の媒体が補給される。つまり、上記構成によれば、加熱・冷却切替状態において回収する高温媒体と、冷却・加熱切替状態において回収する低温媒体とを、別の管路を介して各回収部(高温媒体を回収媒体貯留部、低温媒体を低温媒体貯留部)へ送給することができる。従って、例えば、これらを返媒側切替接続部と回収媒体貯留部とを接続する管路を利用してそれぞれ送給し、回収する構成とした場合と比べて、回収される高温媒体と回収される低温媒体とが管路において混合することを防止でき、各媒体貯留部における熱効率をより効果的に向上させることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記送媒側切替接続部及び前記返媒側切替接続部を、前記媒体流通路の入口側及び出口側のそれぞれに固定される構造としてもよい。
このような構成とすれば、各切替の際に上記した部位に残留する媒体量(上記残留媒体量)を極めて減少させることができ、回収する媒体量をより効果的に減少させることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記媒体流通路の出口側に媒体の温度を検出する温度センサを更に設け、前記制御部によって、この温度センサの検出温度が予め設定された所定の第1切替設定温度を下回ったときには、前記加熱・冷却切替状態から前記金型冷却状態に切り替える一方、この温度センサの検出温度が予め設定された所定の第2切替設定温度を上回ったときには、前記冷却・加熱切替状態から前記金型加熱状態に切り替えるようにしてもよい。
このような構成とすれば、例えば、時間や流量等に基づいて切替制御する場合と比べて、各媒体貯留部における熱効率をより安全に向上させることができる。つまり、金型加熱状態から金型冷却状態に切り替えられる際には、金型の媒体流通路に低温媒体の供給がなされるが、上記部位に残留する高温媒体の通過と比較的に熱容量の大きい金型からの伝熱とによって、金型の出口側の温度は、高温媒体の設定温度程度から比較的に瞬発的なものではあるが徐々に低下する。一方、金型冷却状態から金型加熱状態に切り替えられる際にも同様、金型の媒体流通路に高温媒体の供給がなされるが、上記部位に残留する低温媒体の通過と金型からの伝熱とによって、金型の出口側の温度は、低温媒体の設定温度程度から比較的に瞬発的なものではあるが徐々に上昇する。このような金型の媒体流通路の出口側の温度を監視して上記各状態への切り替えを制御することで、高温媒体を回収する際には、所定温度(第1切替設定温度)よりも低い温度の媒体の回収を安全かつ確実に防止でき、一方、低温媒体を回収する際には、所定温度(第2切替設定温度)よりも高い温度の媒体の回収を安全かつ確実に防止できる。この結果、各媒体貯留部の加熱器や冷却器等の熱交換器への負荷を安全に低減させることができ、各媒体貯留部における熱効率を安全に向上させることができる。
【0014】
また、前記第1切替設定温度及び前記第2切替設定温度を、予め設定された高温媒体の設定温度と低温媒体の設定温度との略中間の温度としてもよい。
このような構成とすれば、各媒体貯留部における熱効率を簡易な制御で安全に向上させることができる。つまり、上記各切替設定温度をそれぞれ別の温度に設定することも可能であるが、この場合、一方の各媒体貯留部の加熱器や冷却器等の熱交換器への負荷が増加する傾向となる場合がある。上記のように、各切替設定温度を高温媒体及び低温媒体の各設定温度の略中間の温度とすることで、各媒体貯留部における熱効率を損なわない程度に安全にかつ簡易な切替制御を実行することができる。すなわち、上記構成によれば、略中間の温度よりも低い温度の媒体が高温媒体貯留部に補給されることを防止することができるとともに、略中間の温度よりも高い温度の媒体が低温媒体貯留部に送給されることを防止することができる。つまりは、高温側の負荷を小さくし、熱効率を向上させるには、例えば、上記所定の第1切替設定温度を比較的に高温域に設定しておくことも考えられるが、この場合、上記した部位に残留する媒体乃至は排出される媒体が比較的、高い状態のままとなる傾向があり、この媒体が金型冷却状態に切り替えられた際に、低温側へ返媒されるので低温側における負荷が大きくなる場合がある。一方、逆も同様であるが、上記構成とすることで、略中間の比較的に負荷の小さい温度の媒体を各側に確実に戻すことができ、各媒体貯留部の負荷をバランス良く低減させることができる。この結果、より成形サイクルの短縮化を図ることも期待できる。
【0015】
また、本発明においては、前記回収媒体貯留部に貯留された媒体を加熱する加熱器を更に設けてもよい。
このような構成とすれば、高温媒体貯留部に補給される前に、回収媒体貯留部に貯留された媒体を予備昇温乃至は保温させることができる。従って、補給された高温の媒体を高温媒体貯留部において予め設定された高温媒体の設定温度に加熱する時間を短縮することができ、成形サイクルをより短縮化することができる。また、上述のように、回収媒体貯留部において回収する媒体量を減少させることができるので、このような加熱器を設けた場合にも、比較的、小型で消費電力(電気容量)の小さい加熱器を採用することができ、全体としては、省電力化が期待できる。
【0016】
また、本発明においては、前記回収媒体貯留部を、上下に長尺の筒型とし、上端部に前記返媒側切替接続部及び前記高温媒体貯留部に接続された管路を接続し、下端部に前記低温媒体貯留部に接続された管路を接続してもよい。
このような構成とすれば、回収媒体貯留部の上部側から高温の媒体を貯留させ、その上部側から高温媒体貯留部に高温の媒体を補給することができ、高温媒体貯留部における熱効率をより効果的に向上させることができる。
【0017】
また、本発明においては、前記回収媒体貯留部を、長尺の管路状に形成されたものとしてもよい。
このような構成とすれば、回収媒体貯留部内に回収、送給される高温の媒体と低温の媒体との混合を効果的に低減させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る金型温度調節装置は、上述のような構成としたことで、一方の媒体から他方の媒体に切り替える際において回収する一方の媒体量を減少させることができ、熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る金型温度調節装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【図2】同金型温度調節装置が備える切替接続部の一例を模式的に示す概略斜視図である。
【図3】同金型温度調節装置で実行される基本動作の一例を示す概略タイムチャートである。
【図4】(a)は、同金型温度調節装置で実行される金型加熱工程の動作を説明する概略構成図、(b)は、同金型温度調節装置で実行される加熱・冷却切替工程の動作を説明する概略構成図である。
【図5】(a)は、同金型温度調節装置で実行される金型冷却工程の動作を説明する概略構成図、(b)は、同金型温度調節装置で実行される冷却・加熱切替工程の動作を説明する概略構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る金型温度調節装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図5は、第1実施形態に係る金型温度調節装置を説明するための説明図である。
なお、図1,図4〜図6においては、媒体を流通させる管路(配管)等を、実線にて模式的に示している。
【0021】
本実施形態に係る金型温度調節装置1は、図1に示すように、金型8に設けられた媒体流通路80に高温媒体を循環供給する高温媒体供給部2と、媒体流通路80に低温媒体を循環供給する低温媒体供給部3と、媒体流通路80の入口81側に近接して設置される送媒側切替接続部4と、媒体流通路80の出口82側に近接して設置される返媒側切替接続部5と、各部を制御する制御部(CPU)70等を有した制御盤7とを備えている。
【0022】
当該金型温度調節装置1によって加熱及び冷却される金型8としては、どのようなものでもよく、一般的には、固定型と可動型とを有したものとしてもよい。このような金型8では、固定型と可動型とによって形成されるキャビティ等に、射出成形機(不図示)のシリンダ等で溶融された樹脂がノズル等から射出されて充填され、成形品が成形される。この金型8には、当該金型8の温度を上昇または低下させるための媒体が流通する媒体流通路80が設けられている。なお、符号83は、金型8の温度を検出する温度センサであって、この温度センサ83の検出温度に基づいて、後記する金型加熱工程から加熱・冷却切替工程への切り替え、及び金型冷却工程から冷却・加熱切替工程への切り替えを実行するようにしてもよい。このような切り替えは、射出成形機の成形動作に連動させて切り替えるようにしてもよい。
【0023】
高温媒体供給部2は、高温媒体を貯留する高温媒体貯留部20と、この高温媒体貯留部20に貯留される媒体を加熱する加熱手段としての加熱器21と、高温媒体送媒路11及び高温媒体返媒路12を介して高温媒体を金型8に設けられた媒体流通路80に循環供給するための高温媒体循環ポンプ22とを備えている。図例では、複数本の高温媒体貯留管からなる高温媒体貯留部20のそれぞれの貯留管にシーズヒーター等の加熱器21を設けた多段式とした例を示しているが、単一の貯留タンク等に単一の加熱器を設けたものとしてもよい。
この高温媒体貯留部20の出口側等の適所には、高温媒体の温度を検出する温度センサ23が設けられており、高温媒体が予め設定された温度となるように、この温度センサ23の検出温度に基づいて、加熱器21への通電等が後記する制御部70によって制御される。なお、この高温媒体の設定温度は、溶融されて充填される樹脂の温度や金型8の設定温度等にもよるが、例えば、60℃〜200℃程度としてもよく、120℃〜180℃程度としてもよい。
高温媒体循環ポンプ22の吐出圧力は、媒体の種類や各管路の径、長さ等の圧力損失因子等にもよるが、例えば、水(清水)を媒体とした場合で、常圧の沸点よりも高温に媒体を加熱する必要がある場合には、その温度に合わせて媒体が沸騰しない圧力となるように高温側の系内の圧力が維持されるものとしてもよい。なお、図示は省略しているが、この系内の圧力を検出する圧力計等が適所に設けられている。また、媒体としては、水に限られず、油系、アルコール系等の他の媒体を採用するようにしてもよい。
【0024】
また、高温媒体供給部2には、高温媒体送媒路11及び高温媒体返媒路12のそれぞれが接続される送媒接続口24及び返媒接続口25が設けられている。送媒接続口24と高温媒体貯留部20の媒体出口とは、高温媒体送媒路11aによって接続され、返媒接続口25と高温媒体貯留部20の媒体入口とは、高温媒体返媒路12aによって接続されている。また、高温媒体送媒路11aに、上記した高温媒体循環ポンプ22が配設されており、この高温媒体循環ポンプ22の下流側(吐出側)の高温媒体送媒路11aの途中部位と、高温媒体返媒路12aの途中部位とは、高温媒体バイパス管路13によって接続されている。この高温媒体バイパス管路13には、高温バイパス弁(開閉弁)V3が設けられている。
また、高温媒体貯留部20には、管路(媒体補給管路)10を介して回収媒体貯留ユニット6の回収媒体貯留部60が接続されている。なお、回収媒体貯留ユニット6の詳細については後述する。
なお、高温媒体供給部2の高温媒体貯留部20や加熱器21、高温媒体循環ポンプ22、回収媒体貯留ユニット6等は、図示を省略しているが、高温媒体供給部2の筐体(ケーシング)内に収容されている。
【0025】
低温媒体供給部3は、低温媒体を貯留する低温媒体貯留部30と、この低温媒体貯留部30に貯留される媒体を冷却する冷却手段としての冷却器31と、低温媒体送媒路14及び低温媒体返媒路15を介して低温媒体を金型8に設けられた媒体流通路80に循環供給するための低温媒体循環ポンプ32とを備えている。図例では、低温媒体を貯留するタンク状の低温媒体貯留部30から受け入れた媒体を熱交換して戻す冷却器31としている。このような冷却器31としては、ガス式や空冷式、水冷式等のものとしてもよく、低温媒体貯留部30に貯留した低温媒体を循環させながら、冷媒と間接的に熱交換させて低温媒体を所定の温度に維持するものとしてもよい。つまり、本実施形態では、当該金型温度調節装置1の稼働中は、原則的には系外との媒体の流入出がないように閉じた経路(クローズドループ)を形成するようにしている。これによれば、媒体の品質(水質)管理が行え、スケール等の発生を防止することもできる。
【0026】
なお、冷却器31としては、低温媒体貯留部3に貯留された媒体との熱交換により冷却するものに限られず、媒体が水の場合には、低温媒体貯留部から必要によりオーバーフローさせながら、冷水を供給(直接冷却)することで低温媒体を所定の温度に維持する態様としてもよい。
また、高温側及び低温側の各媒体貯留部20,30においては、媒体が所定レベルに維持されるように、媒体の増量や不足等をレベル計やフロートスイッチ等によって検出乃至は規制し、オーバーフローさせたり、補給したりするようにしてもよい。
【0027】
この低温媒体貯留部30の出口側等の適所には、上記同様、低温媒体の温度を検出する温度センサ33が設けられており、低温媒体が予め設定された温度となるように、この温度センサ33の検出温度に基づいて、冷却器31の圧縮機や凝縮器、ポンプ、給水手段等の作動が後記する制御部70によって制御される。なお、この低温媒体の設定温度は、例えば、5℃〜35℃程度としてもよい。
低温媒体循環ポンプ32の吐出圧力は、上記同様、媒体の種類や各管路の径、長さ等の圧力損失因子等にもよるが、例えば、水を媒体とした場合で、上記のように、高温側が高圧に維持されている場合には、後記するように各状態に切り替えられた際に、低温媒体の循環供給や送給が可能なように、高温側の圧力よりも高い圧力となるように低温側の系内の圧力が維持されるものとしてもよい。なお、図示は省略しているが、この系内の圧力を検出する圧力計等が適所に設けられている。
【0028】
また、低温媒体供給部3には、低温媒体送媒路14及び低温媒体返媒路15のそれぞれが接続される送媒接続口34及び返媒接続口35が設けられている。送媒接続口34と低温媒体貯留部30の媒体出口とは、低温媒体送媒路14aによって接続され、返媒接続口35と低温媒体貯留部30の媒体入口とは、低温媒体返媒路15aによって接続されている。また、低温媒体送媒路14aに、上記した低温媒体循環ポンプ32が配設されており、この低温媒体循環ポンプ32の下流側(吐出側)の低温媒体送媒路14aの途中部位と、低温媒体返媒路15aの途中部位とは、低温媒体バイパス管路16によって接続されている。この低温媒体バイパス管路16には、低温バイパス弁(開閉弁)V6が設けられている。なお、各図において、低温媒体返媒路15aに設けられた符号15bに示す部材は、系内の圧力を維持するためのリリーフバルブである。
【0029】
なお、低温媒体供給部3の低温媒体貯留部30や冷却器31、低温媒体循環ポンプ32等は、図示を省略しているが、低温媒体供給部3の筐体(ケーシング)内に収容されている。
または、このように高温媒体供給部2及び低温媒体供給部3のそれぞれを独立した筐体を有したものとする態様に代えて、これらが備える上記した各部を一つの筐体内に収容させた媒体供給装置としてもよい。
また、各媒体供給部2,3の循環ポンプ22,32から吐出(送媒)される媒体の流量は、100L/分(約0.00167m/秒)〜200L/分(約0.00333m/秒)程度としてもよい。また、これら循環ポンプ22,32は、当該装置1の稼働中は、原則的には常時、作動させるようにしてもよい。
【0030】
送媒側切替接続部4は、金型8の媒体流通路80の入口81側に近接して設置され、高温媒体送媒路11と低温媒体送媒路14とを媒体流通路80の入口81に切替可能に連通させる構造とされている。図例では、高温媒体送媒路11と低温媒体送媒路14とを媒体流通路80の入口81に切替可能に連通させる切替弁(開閉弁)V1,V4を設けた態様としている。
返媒側切替接続部5は、金型8の媒体流通路80の出口82側に近接して設置され、高温媒体返媒路12と低温媒体返媒路15とを媒体流通路80の出口82に切替可能に連通させる構造とされている。図例では、高温媒体返媒路12と低温媒体返媒路15とを媒体流通路80の出口82に切替可能に連通させる切替弁(開閉弁)V2,V5を設けた態様としている。
【0031】
これら送媒側切替接続部4及び返媒側切替接続部5の具体的構造の一例について、図2に基づいて説明する。
図2では、返媒側切替接続部5を示しており、図例の返媒側切替接続部5は、金型8の媒体流通路80の出口82側に固定される構造とされている。
この返媒側切替接続部5は、複数本の媒体流通路80を合流させ、各返媒路12,15及び後記する媒体回収管路17に分岐させる中空状の合流分岐部(マニホールド部)50を備えており、この合流分岐部50が金型8の一側部に固定される。この合流分岐部50の金型8への固定構造は、どのようなものでもよく、例えば、合流分岐部50にフランジ等を設け、金型8の一側部に設けた雌ねじ穴等にボルト等によって締結して着脱可能に固定するようにしてもよい。
【0032】
また、合流分岐部50には、複数本の媒体流通路80の出口82に接続された配管が接続される複数の金型側接続口51と、高温返媒弁(開閉弁)V2の一ポートが接続される高温返媒接続口52と、低温返媒弁(開閉弁)V5の一ポートが接続される低温返媒接続口53と、媒体回収管路17の一端部が接続される接続口54とが設けられている。これら高温返媒弁V2及び低温返媒弁V5の他ポートには、高温媒体返媒路12及び低温媒体返媒路15がそれぞれに接続される。
また、この合流分岐部50には、金型8の媒体流通路80の出口82から排出される媒体の温度を検出する温度センサ55が設けられている。
この合流分岐部50の容積は、金型8の媒体流通路80の本数や容積等にもよるが、例えば、0.2L(200cm)〜1.0L(1000cm)程度、好ましくは、0.2L(200cm)〜0.5L(500cm)程度としてもよい。
【0033】
なお、送媒側切替接続部4は、図2で括弧内に参照符号を付して、その詳細な説明については省略するが、上記した返媒側切替接続部5と概ね同様の構造であり、金型8の他側部に固定され、各送媒路11,14を合流させ、複数本の媒体流通路80に分岐させる中空状の合流分岐部(マニホールド部)40を備えている。この合流分岐部40には、上記同様の金型側接続口、高温送媒弁(開閉弁)V1の一ポートが接続される高温送媒接続口及び低温送媒弁(開閉弁)V4の一ポートが接続される低温送媒接続口が設けられている。これら高温送媒弁V1及び低温送媒弁V4の他ポートには、高温媒体送媒路11及び低温媒体送媒路14がそれぞれに接続される。
【0034】
送媒側切替接続部4及び返媒側切替接続部5を上記のように金型8の媒体流通路80の入口81側及び出口82側にそれぞれ固定される構造とすることで、上記送媒側共通管路及び上記返媒側共通管路に相当する容積を極めて小さくすることができる。
なお、送媒側切替接続部4及び返媒側切替接続部5としては、上記のように固定されるものに限られず、金型8の媒体流通路80の入口81側及び出口82側のそれぞれに近接して設置されるものであればどのようなものでもよい。例えば、金型8の近傍に架台等を設置し、この架台上に設置されるものとしてもよい。または、金型8下方の床等に載置されるものとしてもよい。このようなものでも、従来のような装置近傍乃至は装置内で高温側と低温側とを切り替えるようなものと比べて、上記送媒側共通管路及び上記返媒側共通管路に相当する容積を比較的に小さくすることができる。
【0035】
また、図2では、固定型と可動型とからなる金型の一方に返媒側切替接続部5(送媒側切替接続部4)を固定した例を示している。例えば、本実施形態のような金型温度調節装置1を用いて金型8の加熱と冷却とを交互に実行するような場合には、金型の一方側のキャビティ面のみが成形品の化粧面として転写される場合が多く、この場合、他方側のキャビティ面の転写精度がそれほど高くは要求されない場合も想定される。このような場合には、図2のように、固定型と可動型とからなる金型の一方(化粧面側)のみに返媒側切替接続部5(送媒側切替接続部4)を固定(近接して設置)するようにしてもよい。または、図1のように、他方の媒体流通路80の入口及び出口にそれぞれ接続される配管をさらに接続可能な構成として、両方の金型の媒体流通路にそれぞれ接続される構造としてもよい。さらには、両方の金型のそれぞれに送媒側切替接続部4及び返媒側切替接続部5を設置するようにしてもよい。
【0036】
回収媒体貯留ユニット6は、本実施形態では、図1に示すように、高温媒体供給部2の筐体内に組み込まれており、後記するように回収、送給される媒体を貯留する回収媒体貯留部60を備えている。この回収媒体貯留部60は、本実施形態では、上下に長尺の筒型(タンク型)とされており、その容積は、少なくとも金型8の媒体流通路80の容積を含み、送媒側切替接続部4の各送媒弁V1,V4から返媒側切替接続部5の各返媒弁V2,V5までの上記残留媒体量に相当する容積に応じた容積としてもよい。この回収媒体貯留部60の容積は、上記残留媒体量程度としてもよいが、複数種の金型(つまりは、媒体流通路の容積の異なる金型)に対応可能なような容積としてもよい。また、後記する基本動作例のように、金型8の媒体流通路80の出口82側に設けた温度センサ55の検出温度に基づいて、各切り替えを実行する場合には、回収乃至は送給される媒体の貯留が可能な容積としてもよい。つまり、上記残留媒体量を含み、後記する各切替設定温度となるまでに回収乃至は送給される媒体の貯留が可能な容積としてもよい。
【0037】
この回収媒体貯留部60の外周には、本実施形態では、断熱材63を被装するように設けている。このような断熱材63を設けることで、回収媒体貯留部60の放熱を防止することができ、後記するように回収される高温の媒体の熱量をより有効に利用することができる。
また、本実施形態では、回収媒体貯留部60に貯留された媒体を加熱する加熱手段としての加熱器64を設けている。この加熱器64は、上記同様、シーズヒーター等からなり、回収媒体貯留部60内に設けられている。
なお、符号65は、回収媒体貯留部60に貯留された媒体の温度を検出する温度センサであって、この温度センサ65の検出温度に基づいて、回収媒体貯留部60の加熱器64への通電等を、後記する制御部70によって制御するようにしてもよい。
また、上記加熱手段としては、加熱器を内装するように設けるものに限られず、回収媒体貯留部の外周に設けるようにしてもよい。この場合は、更にその外周に断熱材等を設けるようにしてもよい。
【0038】
この回収媒体貯留部60の上端部には、上記した返媒側切替接続部5の接続口54(図2参照)に一端部が接続された媒体回収管路17と高温媒体貯留部20に一端部が接続された媒体補給管路10とが接続される接続口61が設けられている。図例では、これら媒体回収管路17及び媒体補給管路10の他端部が合流して、その合流した管路が回収媒体貯留部60の上端部の接続口61に接続された例を示している。また、これら媒体回収管路17及び媒体補給管路10には、媒体回収管路開閉弁V7及び媒体補給管路開閉弁V10がそれぞれに設けられている。
【0039】
一方、この回収媒体貯留部60の下端部には、上記した低温媒体貯留部30に一端部が接続された媒体排出管路18と低温媒体送媒路14に一端部が接続された媒体送給管路19とが接続される接続口62が設けられている。図例では、これら媒体排出管路18及び媒体送給管路19の他端部が合流して、その合流した管路が回収媒体貯留部60の下端部の接続口62に接続された例を示している。
媒体排出管路18は、図例では、大気開放された低温媒体貯留部30内に一端部が導入されており、他端部側が回収媒体貯留部60に接続される媒体排出管路18aと高温媒体貯留部20に接続される給排管路18cとに分岐された例を示している。この分岐部の上記一端部側には、高温側の系内の圧力を維持するためのリリーフバルブ18bが設けられている。
媒体排出管路18aには、媒体排出管路開閉弁V8が設けられている。
給排管路18cには、給排弁18dや系内の圧力の異常上昇を防止する安全弁、高温側の系内の媒体の体積膨張を低温側に逃がすリリーフバルブ等が設けられている。なお、この給排弁18dは、当該装置1の稼働中は、原則的に常時、閉とされ、当該装置1の運転前や運転後等に、高温媒体供給部2内へ媒体を供給する際や、高温媒体供給部2内から媒体を排出する際に開放されて、高温媒体供給部2の系内を大気開放するものである。
【0040】
媒体送給管路19は、低温媒体送媒路14から分岐して設けられており、この低温媒体送媒路14を介して送媒される低温媒体を、回収媒体貯留部60に送給する。また、この媒体送給管路19には、媒体送給管路開閉弁V9が設けられている。
なお、上記した各送媒路及び各返媒路並びに各管路に設けられた開閉弁V1〜V10としては、電磁弁やエアーオペレート型の電磁弁、モータ駆動弁等、後記する制御部70によって開閉制御が可能なものであればどのようなものでもよい。エアーオペレート型の電磁弁を採用した場合には、駆動用の圧縮空気を供給する圧縮空気源に、フィルターやレギュレーター等を介して接続するようにしてもよい。
また、上記した各開閉弁V1〜V10は、図例では、それぞれ単独の開閉弁として図示しているが、後記する各切り替え状態を実行可能なものであればどのようなものでもよく、図示のような単独の開閉弁に代えて、三方切替弁やその他の多ポート多位置型の切替弁等を適所に設けるようにしてもよい。
【0041】
制御盤7は、計時手段や演算処理部等を有し、当該金型温度調節装置1の上記した各開閉弁や各機器、各部を所定のプログラムに従って制御するCPU70と、このCPU70に信号線等を介してそれぞれ接続された記憶部71及び表示操作部72とを備えている。このCPU70には、信号線等を介して、上記した各開閉弁や各機器、各種センサ等が接続されている。
表示操作部72は、各種設定操作や、事前設定入力項目(金型設定温度や高温媒体設定温度、低温媒体設定温度、さらには、後記する切替設定温度など)などを設定、入力したり、各種設定条件や、各種運転モードなどを表示したりする。
記憶部71は、各種メモリ等から構成されており、表示操作部72の操作により設定、入力された設定条件や入力値、後記する基本動作などの種々の動作を実行するための制御プログラムなどの各種プログラム、予め設定された各種動作条件や各種データテーブル等が格納される。
なお、この制御盤7は、高温媒体供給部2または低温媒体供給部3の筐体に組み込むようにしてもよく、筐体の上部や側部等に設置するようにしてもよい。
【0042】
次に、上記構成とされた金型温度調節装置1において実行される基本動作の一例を図3〜図5に基づいて説明する。
なお、図3に示すグラフでは、横軸を時間軸、縦軸を返媒側切替接続部5に設けた温度センサ55の検出温度とし、その推移を模式的に示しており、また、各開閉弁の開閉動作や各機器のON/OFF動作を模式的に図示している。
また、図4及び図5では、開状態の開閉弁を白、閉状態の開閉弁を黒で示し、高温の媒体の流れ等を点線、低温の媒体の流れ等を一点鎖線で示している。
【0043】
<金型加熱工程>
金型8に設けられた媒体流通路80に高温媒体を循環供給して金型8を加熱する際には、各開閉弁を制御部70によって開閉制御(乃至は切替制御)して、金型加熱状態とする。
すなわち、図3及び図4(a)に示すように、高温側では、高温送媒弁V1及び高温返媒弁V2を開、高温バイパス弁V3を閉とし、高温媒体貯留部20と金型8の媒体流通路80とを高温媒体送媒路11及び高温媒体返媒路12並びに各切替接続部4,5を介して連通させる。また、この金型加熱工程では、回収媒体貯留部60に接続された各管路17,18,19,10のそれぞれに設けられた開閉弁V7,V8,V9,V10は、閉とされる。
一方、低温側では、低温送媒弁V4及び低温返媒弁V5を閉、低温バイパス弁V6を開とし、低温媒体貯留部30と低温媒体バイパス管路16とを低温媒体送媒路14a及び低温媒体返媒路15aを介して連通させる。
また、この金型加熱工程では、回収媒体貯留部60の加熱器64は停止された状態である。
【0044】
この金型加熱工程では、各媒体供給部2,3に設けられた循環ポンプ22,32によって、高温側では、高温媒体が金型8の媒体流通路80に循環供給されて金型8が加熱される一方、低温側では、低温媒体が低温媒体バイパス管路16を経て循環される。
また、この金型加熱工程では、金型8の媒体流通路80の出口82から排出された媒体の温度を検出する温度センサ55の検出温度は、金型8のキャビティへの溶融樹脂の射出や充填、保圧工程等によって若干は上下するが、予め設定された高温媒体の設定温度(例えば、150℃とする。)程度で推移する。
また、この金型加熱工程では、この金型加熱工程の実行前に実行された後記する冷却・加熱切替工程において低温媒体が送給されることで低温の媒体が回収媒体貯留部60に貯留された状態である。
なお、当該装置1の起動後の初期運転時には、上記したように給排弁18dを開放させ、各媒体貯留部20,60,30等に媒体を供給させて所定レベルまで貯留させた後に、上記金型加熱工程を実行するようにしてもよい。
【0045】
<加熱・冷却切替工程>
上記金型加熱工程の後、本実施形態では、加熱・冷却切替工程を実行するようにしている。つまり、上記金型加熱状態から、各開閉弁を制御部70によって開閉制御(乃至は切替制御)して、低温媒体送媒路14、金型8の媒体流通路80、回収媒体貯留部60及び低温媒体貯留部30を連通接続させた加熱・冷却切替状態とする。
すなわち、図3及び図4(b)に示すように、高温送媒弁V1及び高温返媒弁V2を閉、高温バイパス弁V3を開とし、高温媒体貯留部20と高温媒体バイパス管路13とを高温媒体送媒路11a及び高温媒体返媒路12aを介して連通させる。また、低温バイパス弁V6を閉とし、低温送媒弁V4、媒体回収管路開閉弁V7及び媒体排出管路開閉弁V8を開とする。
【0046】
この加熱・冷却切替工程では、各媒体供給部2,3に設けられた循環ポンプ22,32によって、高温側では、高温媒体が高温媒体バイパス管路13を経て循環される。一方、低温側では、低温媒体送媒路14を介して低温媒体が金型8の媒体流通路80に向けて供給され、この低温媒体の供給に伴い、媒体流通路80内の高温媒体を含み送媒側切替接続部4から返媒側切替接続部5までに残留する少なくとも上記残留媒体量に相当する高温媒体が、媒体回収管路17を介して回収媒体貯留部60に向けて送給される。そして、この高温媒体が回収媒体貯留部60の上端部から回収媒体貯留部60内に供給され、これにより、回収媒体貯留部60に貯留された低温の媒体が回収媒体貯留部60の下端部から排出され、媒体排出管路18を介して低温媒体貯留部30に送給される。つまり、この加熱・冷却切替工程では、回収媒体貯留部60に貯留された低温の媒体が高温の媒体と置換されるようにして排出され、回収媒体貯留部60に高温の媒体が貯留(回収)される。
【0047】
また、この加熱・冷却切替工程では、金型8の媒体流通路80の出口82から排出された媒体の温度を検出する温度センサ55の検出温度は、低温媒体の供給によって、高温媒体の設定温度程度から低下する。
本動作例では、この温度センサ55の検出温度が予め設定された所定の第1切替設定温度(切替設定温度、閾値)を下回れば、この加熱・冷却切替状態から後記する金型冷却状態に切り替えるようにしている。
【0048】
<金型冷却工程>
上記のように、温度センサ55の検出温度が予め設定された所定の第1切替設定温度を下回れば、図3及び図5(a)に示すように、各開閉弁を制御部70によって開閉制御(乃至は切替制御)して、上記加熱・冷却切替状態から、金型冷却状態に切り替え、金型冷却工程を実行する。この金型冷却状態では、低温返媒弁V5を開とし、媒体回収管路開閉弁V7及び媒体排出管路開閉弁V8を閉とする。また、本動作例では、上記加熱・冷却切替状態からこの金型冷却状態に切り替える際には、回収媒体貯留部60の加熱器64を起動させ、上記加熱・冷却切替工程において回収した高温の媒体を予備昇温乃至は保温させるようにしている。
【0049】
この金型冷却工程では、各媒体供給部2,3に設けられた循環ポンプ22,32によって、低温側では、低温媒体が金型8の媒体流通路80に循環供給されて金型8が冷却される一方、高温側では、上記加熱・冷却切替工程と同様、高温媒体が高温媒体バイパス管路13を経て循環される。
また、金型8の媒体流通路80の出口82から排出された媒体の温度を検出する温度センサ55の検出温度は、低温媒体の供給によって、上記所定の第1切替設定温度からさらに低下し、予め設定された低温媒体の設定温度(例えば、10℃とする。)程度で推移する。
【0050】
<冷却・加熱切替工程>
上記金型冷却工程の後、本実施形態では、冷却・加熱切替工程を実行するようにしている。つまり、上記金型冷却状態から、各開閉弁を制御部70によって開閉制御(乃至は切替制御)して、高温媒体送媒路11、金型8の媒体流通路80、回収媒体貯留部60及び高温媒体貯留部20を連通接続させた冷却・加熱切替状態とする。本実施形態では、上記のように、低温媒体送媒路14から分岐して設けられた媒体送給管路19を備えており、この冷却・加熱切替状態においては、低温媒体返媒路15、低温媒体貯留部30、低温媒体送媒路14及び媒体送給管路19を介して、金型8の媒体流通路80と回収媒体貯留部60とを連通接続させるようにしている。
すなわち、図3及び図5(b)に示すように、高温送媒弁V1を開、高温バイパス弁V3及び低温送媒弁V4を閉とし、媒体送給管路開閉弁V9及び媒体補給管路開閉弁V10を開とする。
また、本動作例では、上記金型冷却状態からこの冷却・加熱切替状態に切り替える際には、回収媒体貯留部60の加熱器64を停止させるようにしている。
【0051】
この冷却・加熱切替工程では、各媒体供給部2,3に設けられた循環ポンプ22,32によって、高温媒体貯留部20からの高温媒体が金型8の媒体流通路80に向けて供給され、この高温媒体の供給に伴い、媒体流通路80内の低温媒体を含み送媒側切替接続部4から返媒側切替接続部5までに残留する少なくとも上記残留媒体量に相当する低温媒体が、低温媒体返媒路15を介して低温媒体貯留部30に向けて送給される。また、低温媒体貯留部30からの低温媒体が低温媒体送媒路14及び媒体送給管路19を介して回収媒体貯留部60に向けて送給され、回収媒体貯留部60の下端部から回収媒体貯留部60内に供給される。また、回収媒体貯留部60に貯留された高温の媒体が回収媒体貯留部60の上端部から排出され、媒体補給管路10を介して高温媒体貯留部20に補給される。
すなわち、高温媒体の供給に伴い金型8の媒体流通路80等を経た低温の媒体が低温媒体貯留部30に送給され、また、この送給に伴い媒体が減少する高温媒体貯留部20には、低温媒体貯留部30からの低温媒体の回収媒体貯留部60への送給に伴い、回収媒体貯留部60に貯留(回収)されていた高温の媒体が補給される。つまり、この冷却・加熱切替工程では、回収媒体貯留部60に貯留された高温の媒体が低温の媒体と置換されるようにして排出され、回収媒体貯留部60に低温の媒体が貯留される。
【0052】
また、この冷却・加熱切替工程では、金型8の媒体流通路80の出口82から排出された媒体の温度を検出する温度センサ55の検出温度は、高温媒体の供給によって、低温媒体の設定温度程度から上昇する。
本動作例では、この温度センサ55の検出温度が予め設定された所定の第2切替設定温度(切替設定温度、閾値)を上回れば、この冷却・加熱切替状態から上記金型加熱状態に切り替えるようにしている。
上記所定の第1切替設定温度及びこの所定の第2切替設定温度は、異なる切替設定温度としてもよいが、本動作例では、図3に示すように、予め設定された高温媒体の設定温度と予め設定された低温媒体の設定温度との略中間の温度(閾値)としている。例えば、上記のように高温媒体設定温度が150℃で、低温媒体設定温度が10℃であった場合には、切替設定温度を80℃としてもよい。
【0053】
上記のように、温度センサ55の検出温度が予め設定された上記切替設定温度を上回れば、上記冷却・加熱切替状態から上記金型加熱状態に切り替え、つまり、図3及び図4(a)に示すように、高温返媒弁V2を開、低温返媒弁V5を閉、低温バイパス弁V6を開とし、媒体送給管路開閉弁V9及び媒体補給管路開閉弁V10を閉とし、上記金型加熱工程を実行する。
以下、同様にして、射出成形機の成形動作に連動させて、金型加熱工程と、加熱・冷却切替工程と、金型冷却工程と、冷却・加熱切替工程とがこの順で繰り返し、実行される。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る金型温度調節装置1によれば、各媒体供給部2,3の各媒体貯留部20,30における熱効率を向上させることができる。
また、一方の媒体から他方の媒体に切り替える際において回収する一方の媒体量を減少させることができる。つまり、従来の上記送媒側共通管路及び上記返媒側共通管路に残留する媒体量に相当する残留媒体量を極めて減少させることができ、この結果、回収する媒体量、つまりは、少なくとも上記残留媒体量を減少させることができ、各媒体貯留部20,30における熱効率を効果的に向上させることが可能となるとともに、回収媒体貯留部60の小型化を図ることもできる。これにより、各媒体貯留部20,30の加熱器21や冷却器31等の熱交換器への負荷低減やこれらの小型化を図ることができる。つまり、上記各切替の際に回収する媒体量を減少させることで、各切替の際に各媒体貯留部20,30に流入(補給乃至は送給)する媒体量を減少させることができるので、上記熱交換器21,31への負荷低減やこれらの小型化を図ることができ、省電力化を図ることが可能となる。
さらに、回収する媒体量を減少させることができるので、上記加熱・冷却切替状態から上記金型冷却状態への切り替え、及び上記冷却・加熱切替状態から上記金型加熱状態への切り替えに要する時間を短縮化することができ、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、低温媒体送媒路14から分岐して設けられるとともに、回収媒体貯留部60に低温媒体を送給する媒体送給管路19と、この管路を開閉するとともに制御部70に制御される開閉弁V9とを備えた構成とし、冷却・加熱切替状態において、低温媒体返媒路15、低温媒体貯留部30及び媒体送給管路19を介して、金型8の媒体流通路80と回収媒体貯留部60とを連通接続させるようにしている。従って、加熱・冷却切替状態において回収する高温媒体と、冷却・加熱切替状態において回収する低温媒体とを、別の管路17,15を介して各回収部(高温媒体を回収媒体貯留部60、低温媒体を低温媒体貯留部30)へ送給することができる。従って、例えば、これらを返媒側切替接続部5と回収媒体貯留部60とを接続する管路17を利用してそれぞれ送給し、回収する構成とした場合と比べて、回収される高温媒体と回収される低温媒体とが当該管路において混合することを防止でき、各媒体貯留部20,30における熱効率をより効果的に向上させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、回収媒体貯留部60に貯留された媒体を加熱する加熱器64を設けているので、高温媒体貯留部20に補給される前に、回収媒体貯留部60に貯留(回収)された高温の媒体を予備昇温乃至は保温させることができる。従って、補給された高温の媒体を高温媒体貯留部20において設定温度に加熱する時間を短縮することができ、成形サイクルをより短縮化することができる。また、上述のように、回収媒体貯留部60において回収する媒体量を減少させることができるので、このような加熱器64を設けた場合にも、比較的、小型で消費電力(電気容量)の小さい加熱器64を採用することができ、全体としては、省電力化が期待できる。
さらにまた、本実施形態では、回収媒体貯留部60を、上下に長尺の筒型とし、上端部に媒体回収管路17及び媒体補給管路管路10を接続し、下端部に媒体排出管路18を接続している。従って、回収媒体貯留部60の上部側から高温の媒体を貯留させ、その上部側から高温媒体貯留部20に高温の媒体を補給することができ、高温媒体貯留部20における熱効率をより効果的に向上させることができる。さらに、本実施形態では、上記のように設けた媒体送給管路19を、回収媒体貯留部60の下端部に接続しているので、回収媒体貯留部60では、その上端部から高温の媒体の流入出がなされ、その下端部から低温の媒体の流入出がなされる。従って、各媒体貯留部20,30における熱効率をより効果的に向上させることができる。
【0057】
また、上記動作例では、金型8の媒体流通路80の出口82側に媒体の温度を検出する温度センサ55の検出温度に基づいて、加熱・冷却切替状態から金型冷却状態への切り替え、及び冷却・加熱切替状態から金型加熱状態への切り替えを実行するようにしている。従って、例えば、時間や流量等に基づいて切替制御する場合と比べて、各媒体貯留部20,30における熱効率をより安全に向上させることができる。つまり、各状態への切り替えに伴い上記のように上下する金型8の媒体流通路80の出口82側の温度を監視して上記各状態への切り替えを制御することで、高温媒体を回収する際には、所定温度(第1切替設定温度)よりも低い温度の媒体の回収を安全かつ確実に防止でき、一方、低温媒体を回収する際には、所定温度(第2切替設定温度)よりも高い温度の媒体の回収を安全かつ確実に防止できる。この結果、各媒体貯留部20,30の加熱器21や冷却器31等の熱交換器への負荷を安全に低減させることができ、各媒体貯留部20,30における熱効率を安全に向上させることができる。
さらに、上記動作例では、上記第1切替設定温度及び上記第2切替設定温度を、予め設定された高温媒体の設定温度と低温媒体の設定温度との略中間の温度としている。従って、各媒体貯留部20,30における熱効率を簡易な制御で安全に向上させることができる。つまり、上記略中間の温度よりも低い温度の媒体が高温媒体貯留部に補給されることを防止することができるとともに、上記略中間の温度よりも高い温度の媒体が低温媒体貯留部に送給されることを防止することができる。つまりは、略中間の比較的に負荷の小さい温度の媒体を各側へ確実に戻すことができ、各媒体貯留部20,30の負荷をバランス良く低減させることができる。この結果、より成形サイクルの短縮化を図ることも期待できる。
【0058】
なお、上記動作例では、加熱・冷却切替状態から金型冷却状態に切り替える際、及び冷却・加熱切替状態から金型加熱状態に切り替える際の切替設定温度を予め設定された高温媒体の設定温度と低温媒体の設定温度との略中間の温度とした例を示しているが、このような態様に限られない。上記した所定の第1切替設定温度と所定の第2切替設定温度とをそれぞれ異なる値としてもよい。例えば、所定の第1切替設定温度を、予め設定された高温媒体の設定温度から予め設定された閾値を減じた値としたり、所定の第2切替設定温度を、予め設定された低温媒体の設定温度に予め設定された閾値を加えた値としたりしてもよい。
【0059】
また、上記動作例では、金型8の媒体流通路80の出口82側に媒体の温度を検出する温度センサ55の検出温度に基づいて、加熱・冷却切替状態から金型冷却状態への切り替え、及び冷却・加熱切替状態から金型加熱状態への切り替えを実行するようにした例を示しているが、このような態様に限られない。金型8の媒体流通路80の出口82側の媒体の温度が所定の温度を下回るように、上記加熱・冷却切替状態を継続させた後に上記金型冷却状態に切り替える一方、金型8の媒体流通路80の出口82側の媒体の温度が所定の温度を上回るように、上記冷却・加熱切替状態を継続させた後に上記金型加熱状態に切り替えるようにしてもよい。この場合、温度センサ55の検出温度によらず、例えば、各媒体の設定温度や各媒体の設定流量、配管経路などの各種条件に基づいて、各切り替えの際に媒体流通路の出口から排出される媒体が、上記所定の温度となるように切替時間や切替流量等を予め設定しておき、タイマーや流量計によってこれらを監視し、切替制御するような態様としてもよい。
【0060】
さらには、このような態様に代えて、上記残留媒体量や各媒体の設定流量、配管経路などの各種条件に基づいて、上記残留媒体量に相当する高温媒体乃至は低温媒体の回収が可能なように、切替時間や切替流量等を予め設定しておき、タイマーや流量計によってこれらを監視し、切替制御するような態様としてもよい。
つまりは、上記金型加熱状態からは、低温媒体送媒路14、金型8の媒体流通路80、回収媒体貯留部60及び低温媒体貯留部30を連通接続させた加熱・冷却切替状態とした後に、上記金型冷却状態に切り替える一方、この金型冷却状態からは、高温媒体送媒路11、金型8の媒体流通路80、回収媒体貯留部60及び高温媒体貯留部20を連通接続させた冷却・加熱切替状態とした後に、上記金型加熱状態に切り替えるようにすればよい。
また、本実施形態では、回収媒体貯留部60に貯留された媒体を加熱する加熱器64を設けた例を示しているが、このような加熱器を設けないようにしてもよい。
【0061】
次に、本発明に係る金型温度調節装置の他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第2実施形態に係る金型温度調節装置について説明するための説明図である。
なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、同様の動作例についても説明を省略または簡略に説明する。
【0062】
本実施形態に係る金型温度調節装置1Aは、高温媒体供給部2Aに設けた回収媒体貯留ユニット6Aの構成及びこの回収媒体貯留ユニット6Aが備える回収媒体貯留部60Aに接続される管路の接続態様が上記第1実施形態とは主に異なる。
本実施形態では、図6に示すように、長尺の管路状に形成された回収媒体貯留部60Aとしている。このような長尺の管路状の回収媒体貯留部60Aとすることで、この回収媒体貯留部60Aに回収乃至は送給される高温の媒体と低温の媒体との混合を効果的に低減させることができる。
また、本実施形態では、この回収媒体貯留部60Aの容積を、上記残留媒体量に応じた容積としている。
また、本実施形態では、回収媒体貯留部60Aの一端部61Aに、媒体回収管路17及び媒体送給管路19を接続し、回収媒体貯留部60Aの他端部62Aに、媒体排出管路18及び媒体補給管路10を接続した例を示している。
【0063】
上記構成とされた本実施形態に係る金型温度調節装置1Aでは、上記した温度センサ55の検出温度に基づく切替制御に代えて、上記残留媒体量や各媒体の設定流量、配管経路などの各種条件に基づいて、上記残留媒体量に相当する高温媒体乃至は低温媒体の回収が可能なように、切替時間や切替流量等を予め設定しておき、タイマーや流量計によってこれらを監視し、加熱・冷却切替状態から金型冷却状態への切り替え、及び冷却・加熱切替状態から金型加熱状態への切り替えを実行するように切替制御する動作態様としてもよい。この場合、温度センサ55を設けないようにしてもよい。
つまり、本実施形態においても上記第1実施形態と同様、上記残留媒体量を小さくすることができるため、その残留媒体量に相当する各媒体の回収が少なくとも終了すれば、加熱・冷却切替状態から金型冷却状態への切り替え、及び冷却・加熱切替状態から金型加熱状態への切り替えを実行するようにしてもよい。これによれば、上記第1実施形態において説明した基本動作例と比べて、より高温の媒体を回収媒体貯留部60Aに回収でき、その高温の媒体を高温媒体貯留部20に補給することができる。また、上記第1実施形態において説明した基本動作例と比べて、より成形サイクルの短縮化が期待できる。
【0064】
なお、回収媒体貯留部60Aの外周に、上記同様の断熱材を設けるようにしてもよい。
また、回収媒体貯留部60Aの外周に、回収媒体貯留部の加熱器としての線状ヒーターを巻回させるようにしてもよい。または、これに代えて、若しくは加えて、その内側に、回収媒体貯留部の加熱器としての線状ヒーターを配設してもよい。
さらに、複数本の管路状の回収媒体貯留部を継手等で着脱可能に接続し、当該回収媒体貯留部を、上記残留媒体量に応じた容積となるように変更可能とされたものとしてもよい。
さらにまた、回収媒体貯留部60Aと各管路17,18,19,10との接続態様を、上記第1実施形態と同様の接続態様としてもよい。この場合は、上記第1実施形態の基本動作例と同様の切替制御を実行する動作態様としてもよい。また、この場合は、上記第1実施形態と同様、回収媒体貯留部60Aの容積を、上記残留媒体量を含み、各切替設定温度となるまでに回収乃至は送給される媒体の貯留が可能な容積としてもよい。
さらには、本実施形態において説明した回収媒体貯留部と各管路との接続態様を、上記第1実施形態に係る金型温度調節装置に適用するようにしてもよい。
【0065】
なお、上記各実施形態においては、上記したような各部を備えた金型温度調節装置1,1Aとして説明したが、高温媒体貯留部20等を有した高温媒体供給装置2(2A)と、低温媒体貯留部30等を有した低温媒体供給装置3と、送媒側切替接続ユニット(送媒側バルブユニット)4と、返媒側切替接続ユニット(返媒側バルブユニット)5と、回収媒体貯留部60(60A)等を有した回収媒体貯留ユニット6(6A)と、制御部70等を有した制御ユニット7とを備えた金型温度調節システム1(1A)として把握するようにしてもよい。
また、低温媒体供給部の低温媒体貯留部としては、例えば、工場等に設置されるクーリングタワー等を低温媒体貯留部として把握し、これの金型の上流側にポンプや冷却器等を配置し、これらによって低温媒体供給部を構成したものとしてもよい。
さらに、上記各実施形態では、回収した高温媒体の熱量を効率的に回収するために、回収媒体貯留ユニット6(6A)を、高温媒体供給部2(2A)内に設けた例を示しているが、高温媒体供給部2(2A)とは別の装置として設置されるものとしてもよい。
【0066】
さらにまた、上記各実施形態では、低温媒体送媒路から分岐させて回収媒体貯留部に接続した媒体送給管路を設けた例を示しているが、このような媒体送給管路を設けないようにしてもよい。この場合、上記冷却・加熱切替状態においては、媒体回収管路17を介して、金型8の媒体流通路80と、回収媒体貯留部60(60A)とを連通接続させるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、上下に長尺の筒型または長尺の管路状とされた回収媒体貯留部をそれぞれに例示しているが、回収媒体貯留部としては、このような態様に限られず、回収した媒体を貯留し得るものであればどのような形状のものとしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A 金型温度調節装置
10 媒体補給管路(回収媒体貯留部と高温媒体貯留部とを接続する管路)
11 高温媒体送媒路
12 高温媒体返媒路
14 低温媒体送媒路
15 低温媒体返媒路
17 媒体回収管路(返媒側切替接続部と回収媒体貯留部とを接続する管路)
18 媒体排出管路(回収媒体貯留部と低温媒体貯留部とを接続する管路)
19 媒体送給管路
2,2A 高温媒体供給部
20 高温媒体貯留部
3 低温媒体供給部
30 低温媒体貯留部
4 送媒側切替接続部
5 返媒側切替接続部
55 温度センサ
60,60A 回収媒体貯留部
64 加熱器
8 金型
80 媒体流通路
81 媒体流通路の入口
82 媒体流通路の出口
V7 媒体回収管路開閉弁
V8 媒体排出管路開閉弁
V9 媒体送給管路開閉弁
V10 媒体補給管路開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温媒体を貯留する高温媒体貯留部を有し、高温媒体送媒路及び高温媒体返媒路を介して金型に設けられた媒体流通路に高温媒体を循環供給する高温媒体供給部と、低温媒体を貯留する低温媒体貯留部を有し、低温媒体送媒路及び低温媒体返媒路を介して前記媒体流通路に低温媒体を循環供給する低温媒体供給部とを備えた金型温度調節装置であって、
前記媒体流通路の入口側に近接して設置され、前記高温媒体送媒路と前記低温媒体送媒路とを前記媒体流通路の入口に切替可能に連通させる送媒側切替接続部と、前記媒体流通路の出口側に近接して設置され、前記高温媒体返媒路と前記低温媒体返媒路とを前記媒体流通路の出口に切替可能に連通させる返媒側切替接続部と、この返媒側切替接続部、前記高温媒体貯留部及び前記低温媒体貯留部のそれぞれに管路を介して接続された回収媒体貯留部と、この回収媒体貯留部に接続された管路を開閉する開閉弁と、これら開閉弁及び前記各切替接続部を制御する制御部と、を備えており、
前記制御部は、前記媒体流通路に高温媒体を循環供給する金型加熱状態からは、前記低温媒体送媒路、前記媒体流通路、前記回収媒体貯留部及び前記低温媒体貯留部を連通接続させた加熱・冷却切替状態とした後に、前記媒体流通路に低温媒体を循環供給する金型冷却状態に切り替える一方、この金型冷却状態からは、前記高温媒体送媒路、前記媒体流通路、前記回収媒体貯留部及び前記高温媒体貯留部を連通接続させた冷却・加熱切替状態とした後に、前記金型加熱状態に切り替えることを特徴とする金型温度調節装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記低温媒体送媒路から分岐して設けられるとともに、前記回収媒体貯留部に低温媒体を送給する媒体送給管路と、この管路を開閉するとともに前記制御部に制御される開閉弁とを更に備え、
前記制御部は、前記冷却・加熱切替状態において、前記低温媒体返媒路、前記低温媒体貯留部及び前記媒体送給管路を介して、前記媒体流通路と前記回収媒体貯留部とを連通接続させることを特徴とする金型温度調節装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記送媒側切替接続部及び前記返媒側切替接続部は、前記媒体流通路の入口側及び出口側のそれぞれに固定される構造とされていることを特徴とする金型温度調節装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記媒体流通路の出口側に媒体の温度を検出する温度センサを更に設け、
前記制御部は、この温度センサの検出温度が予め設定された所定の第1切替設定温度を下回ったときには、前記加熱・冷却切替状態から前記金型冷却状態に切り替える一方、この温度センサの検出温度が予め設定された所定の第2切替設定温度を上回ったときには、前記冷却・加熱切替状態から前記金型加熱状態に切り替えることを特徴とする金型温度調節装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1切替設定温度及び前記第2切替設定温度は、予め設定された高温媒体の設定温度と低温媒体の設定温度との略中間の温度であることを特徴とする金型温度調節装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記回収媒体貯留部に貯留された媒体を加熱する加熱器を更に設けたことを特徴とする金型温度調節装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記回収媒体貯留部は、上下に長尺の筒型とされており、上端部に前記返媒側切替接続部及び前記高温媒体貯留部に接続された管路が接続され、下端部に前記低温媒体貯留部に接続された管路が接続されていることを特徴とする金型温度調節装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記回収媒体貯留部は、長尺の管路状に形成されていることを特徴とする金型温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−45872(P2012−45872A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191770(P2010−191770)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000146054)株式会社松井製作所 (70)
【Fターム(参考)】