説明

金属エレメント検査装置及び金属エレメント検査方法

【課題】 金属エレメントの凹部に噛み込んだ異物の検査を自動化し、以て、効率の改善と検査精度の向上を図る。
【解決手段】 無段変速機用ベルトの金属エレメント(3a)に形成された一方の凹部(3g)をレール(20)に乗せ該レールに沿って多数の金属エレメントを順次に搬送する搬送手段と、前記搬送状態にある金属エレメントの他方の凹部に非接触で挿入される検査棒(26)とを備え、前記金属エレメントの他方の凹部に噛み込んだ異物と前記検査棒との干渉、又は、前記金属エレメントの一方の凹部に噛み込んだ異物による金属エレメントの前記レールからの浮き上がり部分と前記検査棒との干渉によって該異物の存在の有無を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機用ベルト(一般にCVTベルトという)の一構成部品である金属エレメント検査装置及び金属エレメント検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6(a)は、CVTベルトの外観図である。CVTベルト1は、複数枚(たとえば、12枚程度)の無端状の金属ベルト2aからなる二連のベルト積層体2に、多数個(たとえば、400個程度)の金属エレメント3aからなるエレメント積層体3を担持させて組み立てられ、アセンブリ化されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
図6(b)は、金属エレメント3aの外観図である。金属エレメント3aは、金属板を打ち抜き加工して所定形状に成型されたスチールブロック(金属小片)である。所定形状とは、たとえば、人体の上半身像を想起させるような形状、すなわち、「頭部3b」及び「胸部3c」並びにそれらの頭部3bと胸部3cの間を連結する「首部3d」を有する形状のことである。頭部3bの一方面(図面の表面)側には突起3eが形成されており、また、同他方面(図面の裏面)側には窪み3fが形成されている。隣り合う金属エレメント3aの突起3eと窪み3fを嵌め合わすことによって、金属エレメント3a同士の位置合わせと積層とを行うようになっている。
【0004】
二連のベルト積層体2は、それぞれ、金属エレメント3aの頭部3bと胸部3cの間に形成された数mm程度の微小な開き幅Lの凹部3gに嵌め込まれる。
【0005】
ここで、金属エレメント3aは、既述のとおり、金属板を打ち抜き加工して成型されるが、打ち抜き加工後の表面仕上げを行うために、研磨(一般にバレル研磨)が施される。バレル研磨とは、容器(バレル)に被研磨物(ワーク:上記の例では金属エレメント3a)と研磨材(メディア)を入れ、バレルの運動により発生するワークとメディアとの相対摩擦により、バリ取りやR付け等の表面加工を行う技術のことをいう。
【0006】
ところで、金属エレメント3aは、頭部3bと胸部3cの間に、数mm程度の微小な開き幅Lの凹部3gを有しているため、メディアの大きさが凹部3gの開き幅Lを超えていると、凹部3gを研磨できず、この凹部3gのバリ取りやR付け等を行うことができなかった。
【0007】
そこで、異なる大きさのメディアを混合して使用し、金属エレメント3aの凹部3gを含む全体の表面仕上げを行う技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
この従来技術では、少なくとも“L”を超える大きさのメディア(以下、大メディア)と、“L”を下回る大きさのメディア(以下、小メディア)とを混合して使用する。大メディアによって、金属エレメント3aの凹部3g以外の表面仕上げを行うことができ、且つ、小メディアによって、金属エレメント3aの凹部3gの表面仕上げを行うことができる。
【0009】
【非特許文献1】宮地知巳著“理想の変速機CVTの性能を最大限に引き出す”、[online]、[平成14年8月25日検索]、インターネット<URL: http://www.idemitsu.co.jp/lube/cvt/cvtbody2.html>
【特許文献1】特開2003−231053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のように、異なる大きさのメディアを混合して使用し、金属エレメント3aの表面仕上げを行うようにした場合、以下の不都合をもたらす。
【0011】
金属エレメント3aの凹部3gの研磨は、この凹部3fの内部に小メディアが入り込むことによって行われるが、小メディアの大きさが凹部3gの大きさに一致し又はきわめて近い場合に、凹部3gに小メディアが噛み込んでしまい、そのままの状態で後工程に持ち込まれてしまうという不都合がある。また、大メディアに割れや欠け等を生じた場合で、その分離部の大きさが上記の小メディアに相当するもの(凹部3gの大きさに一致し又はきわめて近いもの)となったときにも同様の不都合をもたらす。
【0012】
図6(c)は、メディアが噛み込んだ状態の金属エレメント3aの外観図である。この図に示すように、凹部3gにメディア4(異物)が噛み込んでいる状態では、後工程で、この金属エレメント3aを金属リング2に担持させる際の支障となるから、目視によってメディア4の噛み込みの有無を調べなければならないところ、一つのCVTベルトあたり数百個にも及ぶ大量の金属エレメント3aの目視検査はきわめて面倒で非効率であり、多大な労力を要している。なお、図示の異物(メディア4)は円形状に描かれているが、これは説明の便宜である。円形のみならず様々な形状があり得る。
【0013】
そこで、本発明は、金属エレメントの凹部に噛み込んだ異物の検査を自動化して労力を低減し、以て、効率の改善と検査精度の向上を図るようにした金属エレメント検査装置及び金属エレメント検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明に係る金属エレメント検査装置は、無段変速機用ベルトの金属エレメントに形成された一方の凹部をレールに乗せ該レールに沿って多数の金属エレメントを順次に搬送する搬送手段と、前記搬送状態にある金属エレメントの他方の凹部に非接触で挿入される検査棒とを備え、前記金属エレメントの他方の凹部に噛み込んだ異物と前記検査棒との干渉、又は、前記金属エレメントの一方の凹部に噛み込んだ異物による金属エレメントの前記レールからの浮き上がり部分と前記検査棒との干渉によって該異物の存在の有無を検査することを特徴とする。
請求項2記載の発明に係る金属エレメント検査装置は、請求項1記載の発明において、前記検査棒の動きを検出する検出手段と、該検出手段によって前記検査棒の動きが検出されたときに、その旨を周囲に報知する報知手段とを備えたことを特徴とする。
請求項3記載の発明に係る金属エレメント検査方法は、無段変速機用ベルトの金属エレメントに形成された一方の凹部をレールに乗せ該レールに沿って多数の金属エレメントを順次に搬送する搬送工程と、前記搬送状態にある金属エレメントの他方の凹部に非接触で挿入される検査棒の動きを検出する検出工程とを含み、前記金属エレメントの他方の凹部に噛み込んだ異物との干渉、又は、前記金属エレメントの一方の凹部に噛み込んだ異物による金属エレメントの前記レールからの浮き上がり部分との干渉を、前記検出工程によって検出し、その検出結果から該異物の存在の有無を検査することを特徴とする。
請求項4記載の発明に係る金属エレメント検査方法は、請求項3記載の発明において、前記該検出工程によって前記検査棒の動きが検出されたときに、その旨を周囲に報知する報知工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属エレメントに形成された一方の凹部をレールに乗せ該レールに沿って多数の金属エレメントを順次に搬送する際に、該金属エレメントの他方の凹部に、たとえば、前工程のバレル研磨におけるメディアが噛み込んでいた場合、その凹部に挿入された検査棒との干渉により、当該メディアの存在が検出される。
また、前工程のバレル研磨におけるメディアが一方の凹部に噛み込んでいた場合には、そのメディアによって金属エレメントがレールから浮き上がり、この浮き上がりにより、金属エレメントと検査棒とが干渉するため、同様に、当該メディアの存在が検出される。
したがって、メディアの噛み込みの検査を自動化でき、目視検査に伴う様々な不都合、すなわち、面倒さや効率及び信頼性の悪さを解決することができる。
さらに、前記検査棒の動きを検出する検出手段と、該検出手段によって前記検査棒の動きが検出されたときに、その旨を周囲に報知する報知手段とを備えれば、メディアの噛み込みの検出結果を作業員等に確実に知らせることができ、不良品の後工程への排出を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における様々な細部の特定ないし実例および数値や文字列その他の記号の例示は、本発明の思想を明瞭にするための、あくまでも参考であって、それらのすべてまたは一部によって本発明の思想が限定されないことは明らかである。また、周知の手法、周知の手順、周知のアーキテクチャおよび周知の回路構成等(以下「周知事項」)についてはその細部にわたる説明を避けるが、これも説明を簡潔にするためであって、これら周知事項のすべてまたは一部を意図的に排除するものではない。かかる周知事項は本発明の出願時点で当業者の知り得るところであるので、以下の説明に当然含まれている。
【0017】
図1は、CVTベルトの概略的な製造工程図であり、この工程は、金属エレメント3aのバレル研磨を行う第一の工程10と、この第一の工程10を経た後の金属エレメント3aを整列・積層して搬送する第二の工程11(搬送手段)と、無端状の金属ベルト2aを12枚程度積み重ねて二連のベルト積層体2を製作する第三の工程12と、前記の第二の工程11によって整列・積層状態にされた金属エレメント3aの一つの塊(400枚程度の金属エレメント3aからなるエレメント積層体3)を取り出し、このエレメント積層体3を、前記の第三の工程12によって製作された二連のベルト積層体2に担持させて、CVTベルト1(無段変速機用ベルト)を組み立てる第四の工程13とを含む。
【0018】
ここで、第一の工程10は、打ち抜き加工された多数の金属エレメント3aとメディア(たとえば、冒頭で説明したような大メディア15と小メディア16を混合したもの)をバレル14に入れ、バレル14の運動によって発生する金属エレメント3aとメディア15、16との相対摩擦を利用して、金属エレメント3aのバリ取りやR付け等の表面加工を行うというものである。
【0019】
また、第二の工程11は、第一の工程10を経た後の金属エレメント3aを投入口17から投入すると、整列・積層機構部18の内部で金属エレメント3a向きが整えられ、排出口19から外部に向けて延設されたレール20の上を、積層状態にされた多数の金属エレメント3aが順次に繰り出されるというものであり、レール20の突端付近で所定数(400個程度)の金属エレメント3aの塊を取り出し、この塊をエレメント積層体3として、前記の第三の工程12によって製作された二連のベルト積層体2に担持させて、CVTベルト1を組み立てるというものである。
【0020】
図2は、本実施形態における金属エレメント検査装置を含む要部構成図であり、特に、上記の第二の工程11におけるレール20及びその付近の具体的構成例を示す図である。
【0021】
この図について詳しく説明すると、レール20は、その幅方向Wがテーブル21の表面に対して鉛直となるように垂設されており、且つ、レール20の下側面20aがテーブル21の表面に固定されている。レール20の図面奥方向の一端は、既述のとおり、整列・積層機構部18(図1参照)の内部に入り込んでおり、矢印Aの方向に沿って、整列・積層機構部18の内部から順次に繰り出される整列・積層状態の多数の金属エレメント3aは、その下側の凹部3gが、レール20の上側面20bを遊動状態で挟み込むようにして、スムーズに滑動しつつ、レール20の図面手前側の他端に向かって案内(搬送)されるようになっている。
【0022】
さて、この図におけるポイントは、以下の構成を有する金属エレメント検査装置22を含む点にある。
【0023】
すなわち、金属エレメント検査装置22は、テーブル21の表面に取り付けられたステー23と、このステー23に回転自在に支持された立設状態のシャフト24と、シャフト24の上端に固定状態で取り付けられた水平方向のアーム25と、このアーム25の先端に固定状態で取り付けられた所定長の検査棒26とを備えるとともに、さらに、前記シャフト24の自由回転を弾性的に規制する、たとえば、シャフト24の下端付近に横向き貫通されたピン27や、このピン27の両端に均等かつ同一方向の引っ張り力を作用させる一対のバネ28、29などからなる回転規制手段30と、この回転規制手段30の規制力(一対のバネ28、29の力)に抗して前記のシャフト24が回転した場合に、その状態を検出する検出手段31と、この検出手段31によって、前記のシャフト24の回転が検出されたときに、その状態を周囲に報知する、たとえば、表示灯32やブザー33などからなる報知手段34とを備える。
【0024】
図3は、金属エレメント検査装置22の作用説明図であり、(a)は「定常状態」のときの作用説明図、(b)は「異常状態」のときの作用説明図である。ここで、“定常状態”とは、回転規制手段30によってシャフト24の回転が規制されているときの状態のことをいい、“異常状態”とは、回転規制手段30の規制力に抗してシャフト24が回転したときの状態のことをいう。
【0025】
つまり、アーム25の先端の検査棒26に何らの力も加えられていないときは、シャフト24は回転規制手段30の規制力を受けて、同図(a)の状態にあり、この場合、検出手段31はシャフト24の回転を検出していないので、報知手段34は無報知状態(表示灯32の消灯、ブザー33の無鼓動)にある。
【0026】
これに対して、アーム25の先端の検査棒26に、回転規制手段30の規制力を上回る程度の大きさの、たとえば、図面下向き(矢印Bの方向)の力が加えられたときは、同図(b)のようにシャフト24が回転するため、この回転が検出手段31によって検出され、その結果、報知手段34が報知状態(表示灯32の点灯、ブザー33の鼓動)に移行する。
【0027】
図4(a)は、アーム25の先端の検査棒26とレール20の上を搬送される金属エレメント3aとの関係図である。この図において、検査棒26は、搬送状態にある金属エレメント3aの上側の凹部3gの内部に若干の遊びをもって非接触で挿入されている。“若干の遊び”とは、検査棒26が金属エレメント3aに接触しない程度の適量の遊びのことをいう。これは、検査棒26の接触により、金属エレメント3aの表面(特に凹部3gの表面)に擦り傷等の損傷を与えないようにするための望ましい対策である。
【0028】
図4(b)及び図4(c)は、いずれもレール20に沿って搬送される金属エレメント3aと検査棒26との関係図であり、図4(b)は、メディアの噛み込みがない場合、図4(c)は、メディアの噛み込みがある場合である。
【0029】
メディアの噛み込みがない場合は、金属エレメント3aと検査棒26との間には前記の“若干の遊び”がそのまま保持されており、金属エレメント3aと検査棒26は互いに非接触の状態にあるから、金属エレメント3aの滑動が阻害されることはなく、この場合、金属エレメント検査装置22は前記の「定常状態」(図3(a)参照)にある。
【0030】
これに対して、メディアの噛み込みがある場合は、金属エレメント3aのうちメディア4(異物)を噛み込みんだ部分が、静止状態にある検査棒26の位置に達すると、このメディア4によって検査棒26が矢印Bの方向に押され、結局、金属エレメント3aの滑動が阻害されるとともに、金属エレメント検査装置22が前記の「定常状態」から「異常状態」(図3(b)参照)へと遷移する。
【0031】
したがって、このような場合は、金属エレメント検査装置22の報知手段34によって、メディアの噛み込みを検出した旨の報知(表示灯32の点灯、ブザー33の鼓動)が行われるから、作業員は、その報知に応答して所要の処置、たとえば、該当する金属エレメント3a(検査棒26の直前に位置する金属エレメント3a)を抜き取り、噛み込んだメディア4を除去する等の処置を講ずればよい。
【0032】
以上のとおり、本実施形態の金属エレメント検査装置22によれば、レール20の上を整列・積層状態で順次に搬送される金属エレメント3aの一方の凹部3gに非接触状態で検査棒26を挿入し、この検査棒26に加えられる押圧力をシャフト24の回転運動に変換して、その回転運動を検出手段31により検出するとともに、報知手段34で周囲に報知するようにしたので、搬送中のワーク(金属エレメント3a)集団に、メディア4の噛み込みを生じた金属エレメント3aが混入していた場合には、前記の検査棒26の動きをシャフト24の回転運動に変換して、その回転運動を検出手段31によって検出し、報知手段34で作業員に報知することができる。
【0033】
このため、メディア4の噛み込みの検査を自動化することができ、作業員による金属エレメント3aの目視検査を不要にすることができる。その結果、目視検査を行う上での不都合、すなわち、面倒さや非効率を解決できる。
【0034】
なお、以上の説明では、レール20の上を滑動する金属エレメント3aの“上側の凹部3g”に噛み込んだメディア4を検出する例を示したが、本実施形態の金属エレメント検査装置22では、このような上側の凹部3gに噛み込んだメディア4だけでなく、“下側の凹部3g”(レール20の上側面20bを滑動する凹部3g)に噛み込んだメディア4も支障なく検出することができる。
【0035】
図5は、金属エレメント3aの上側の凹部3gと下側の凹部3gのそれぞれに噛み込んだメディア4を検出するときの概念図であり、(a)は上側の凹部3gに噛み込んだメディア4を検出するときのもの、(b)は下側の凹部3gに噛み込んだメディア4を検出するときのものである。
【0036】
既に説明したとおり、金属エレメント3aの上側の凹部3gには検査棒20が挿入されているため、この上側の凹部3gに噛み込んだメディア4は検査棒26の動きによって直接的に検出することができる。一方、金属エレメント3aの下側の凹部3gには、検査棒26の代わりにレール20が入っており、この下側の凹部3gに噛み込んだメディア4は検査棒26の動きによって直接的に検出することはできない。
【0037】
しかし、この場合には、噛み込んだメディア4によって金属エレメント3aがレール20の上から矢印Cの方向に若干持ち上がり、その持ち上がり部分が検査棒26に干渉するため、やはり、上記と同様に、検査棒26の動きをシャフト24の回転運動に変換して、その回転運動を検出手段31によって検出し、報知手段34で報知することができる。
【0038】
本発明は、以上の実施形態のみならず、その技術思想の範囲内において、様々な発展例や変形例を包含することはもちろんであり、たとえば、以下のようにしてもよい。
【0039】
(1)回転規制手段30や検出手段31及び報知手段34を必要としない構成例。
以上の実施形態では、回転規制手段30や検出手段31及び報知手段34を備えているが、これは、金属エレメント3aに噛み込んだメディア4の検出を自動化し、且つ、その検出結果を周囲に報知するという最良の実施例(ベストモード)を示しているに過ぎない。たとえば、シャフト24をステー23やテーブル21に固定して回転できないようにしてもよい。この場合、回転規制手段30や検出手段31及び報知手段34は不要である。
【0040】
このようにすると、メディア4を噛み込んだ金属エレメント3aは、検査棒26の位置で引っかかってレール20の上で停止するため、その停止状態から、作業員はメディア4の噛み込みを知ることができる。また、このようにすると、検査棒26は常に現在位置を保持するため、たとえば、緩やかに噛み込んだメディア4については、検査棒26で掻き出して除去することも可能であり、メディア4の取り除きも自動化することができる。
【0041】
(2)回転規制手段30にストッパーを追加する例。
既述のとおり、上記の実施形態の回転規制手段30は、シャフト24の自由回転を規制するための要素であり、その構成は、たとえば、シャフト24の下端付近に横向き貫通されたピン27や、このピン27の両端に均等かつ同一方向の引っ張り力を作用させる一対のバネ28、29などを備えるというものである。
【0042】
この構成によれば、シャフト24の回転は、一対のバネ28、29の力で規制されているが、その回転量は比較的大きく(一対のバネ28、29の伸縮限界まで)、したがって、上記の(1)で言及した「検査棒26で掻き出して除去する」という効果は望めない。
【0043】
つまり、一対のバネ28、29の力で規制されてはいるものの、シャフト24の回転がある程度の範囲で許容されているため、たとえば、緩やかに噛み込んだメディア4が存在していても、そのメディア4に押されて検査棒26が変位してしまうため、上記の掻き出し除去効果が得られない。
【0044】
そこで、改良例として、シャフト24の回転量を所定値に制限するストッパーを設けるようにする。このストッパーは、たとえば、図3(b)の符号35で示すように、ピン27の揺動の大きさを所定量で規制する位置に設けてもよい。
【0045】
このようにすると、ストッパー35によって、シャフト24の回転を所定量で制限できるから、たとえば、緩やかに噛み込んだメディア4が存在していた場合に、そのメディア4に押されて変位する検査棒26を途中で停止させることができ、この停止状態の検査棒26によるメディア4の掻き出し除去効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】CVTベルトの概略的な製造工程図である。
【図2】本実施形態における金属エレメント検査装置を含む要部構成図である。
【図3】金属エレメント検査装置22の作用説明図である。
【図4】検査棒26と金属エレメント3aとの関係図である。
【図5】金属エレメント3aの上側の凹部3gと下側の凹部3gのそれぞれに噛み込んだメディア4を検出する際の概念図である。
【図6】CVTベルトの外観図、金属エレメント3aの外観図及びメディアが噛み込んだ状態の金属エレメント3aの外観図である。
【符号の説明】
【0047】
1 CVTベルト(無段変速機用ベルト)
3a 金属エレメント
3g 凹部
4 メディア(異物)
11 第二の工程(搬送手段)
20 レール
22 金属エレメント検査装置
26 検査棒
31 検出手段
34 報知手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速機用ベルトの金属エレメントに形成された一方の凹部をレールに乗せ該レールに沿って多数の金属エレメントを順次に搬送する搬送手段と、前記搬送状態にある金属エレメントの他方の凹部に非接触で挿入される検査棒とを備え、
前記金属エレメントの他方の凹部に噛み込んだ異物と前記検査棒との干渉、又は、前記金属エレメントの一方の凹部に噛み込んだ異物による金属エレメントの前記レールからの浮き上がり部分と前記検査棒との干渉によって該異物の存在の有無を検査することを特徴とする金属エレメント検査装置。
【請求項2】
前記検査棒の動きを検出する検出手段と、該検出手段によって前記検査棒の動きが検出されたときに、その旨を周囲に報知する報知手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の金属エレメント検査装置。
【請求項3】
無段変速機用ベルトの金属エレメントに形成された一方の凹部をレールに乗せ該レールに沿って多数の金属エレメントを順次に搬送する搬送工程と、前記搬送状態にある金属エレメントの他方の凹部に非接触で挿入される検査棒の動きを検出する検出工程とを含み、
前記金属エレメントの他方の凹部に噛み込んだ異物との干渉、又は、前記金属エレメントの一方の凹部に噛み込んだ異物による金属エレメントの前記レールからの浮き上がり部分との干渉を、前記検出工程によって検出し、その検出結果から該異物の存在の有無を検査することを特徴とするエレメント検査方法。
【請求項4】
前記該検出工程によって前記検査棒の動きが検出されたときに、その旨を周囲に報知する報知工程とを備えたことを特徴とする請求項3記載の無段変速機用ベルトのエレメント検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−97848(P2006−97848A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286953(P2004−286953)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】