説明

金属パターン及び導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材並びにそれを用いた電磁波遮蔽部材

【課題】幾何学図形を有する金属に黒化度が十分なあるいは色調又は形状においてより均質な黒化処理が施された金属パターン及び導体層パターン付き基材の製造方法、導体層パターン付き基材並びにそれを用いた電磁波遮蔽部材を提供する。
【解決手段】幾何学図形状の導電性金属パターンにパルス電解法により金属を析出させて黒化処理を行う表面が黒化処理された金属パターン9の製造方法において、パルス電解法が、高通電時間をT、低通電時間をTとし、1サイクルをTとTの和と定義し、パルス電解でのサイクル率EをE=100×(T/(T+T))とした場合、サイクル率を2%以上または90%以下に維持し、各パルス通電時間を2ms以上200ms以下に保持する条件で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れかつ光透過性を有するようにパターニングされた金属パターン及びその金属パターンを有する導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材並びにそれを用いた電磁波遮蔽部材に関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設、ホール、病院、学校、企業ビル、住宅等の壁面、ガラス窓、樹脂パネル、電磁波を発生するディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する方法は、従来種々提案されている。例えば、被遮蔽面上に電磁波遮蔽塗料を全面塗布する方法、被遮蔽面上に金属箔を貼り合わせる方法、金属めっきされた繊維メッシュを樹脂板に熱ラミネートしてなる電磁波遮蔽シートを、被遮蔽面に貼り合わせる方法、導電性繊維をメッシュ状に編んだものを被遮蔽面に貼り合わせる方法等が一般的に行われている。
【0003】
これらのうち、透明ガラス面、透明樹脂パネル面、陰極線管(CRT)やプラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する場合においては、電磁波遮蔽用部材がなるべく薄いことが要求されるとともに、光透過性(透明性)と、これに相反する電磁波遮蔽性とをバランスよく両立させることができるものとして、金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材が主流になっている。
【0004】
ディスプレイからの透過光の輝度を引き立たせる(以下、視認性と定義する)ためには、金属メッシュの少なくとも観察者側は黒色であることが望ましく、そのため視認性を向上させるために金属メッシュを黒化処理することが行われている。
【0005】
特許文献1にはメッシュ状に金属電着が可能な電着基板上に金属電解液を使用して金属を電着して金属パターンを製造すること、この後、接着剤を介して電磁波遮蔽基板に接着転写して電磁波遮蔽板を作製する方法(以下、転写法という)が記載されている。前記の電着基板は、金属板等の導電性基板の上に、電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ−ンと逆のパターンを形成し、この結果、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製される。この電着基板を用いて転写法にて電磁波遮蔽板を作製する場合、数回〜数十回程度の繰り返し使用は可能であるが、数百回〜数千回繰り返し使用が出来ず量産レベルにはならないという問題がある。これは、電着基板上のメッシュパターンを形成する絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用でめっき用導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうためである。
【0006】
前記特許文献1記載の方法において、また、一般に、金属電着を行う工程と析出した金属の表面を黒化処理する工程は別工程である。
電気めっきにより、メッシュ状の金属に、銅の酸化反応を行わせるなどして黒化処理を行う場合、電流の集中により過剰析出となりやすく金属表面への黒色粒子の付着が不均一であったり、あるいは樹枝状に付着、成長してメッシュパターン全体または部分的にライン太りやさらには粉落ちと呼ばれる黒色粒子の脱落が発生しやすい。これらの現象は透明性を要求される用途では、透過率の低下という支障を及ぼす。逆に黒化処理のための電流または電圧が不十分であると黒化度が不足し、全体的に赤っぽい色調であったり、あるいは一部赤色状の色むらが発生しやすくなる。
また、一般には、金属電着を行う工程で使用する溶液と黒化処理する工程で使用する溶液は別のものであり、通常お互いにめっき槽内で混ざり合うことが許されず、同一工程で行うことができない。そのために十分な水洗、さらには黒化処理の前処理工程が必要となる場合があり、製造に要する時間及びコスト、環境負荷は小さくない。
【0007】
一方、鉄、銅、クロム、ニッケルなどの金属箔、またはこれら金属の合金箔は、一般に、不溶性のカソード体と、同じく不溶性のアノード体との間に、これら金属のイオンを含む所定の電解液を供給しながら電解反応を行うことにより目的とする金属をカソード体の表面に所望の厚みだけ電析させて金属導体層を箔として形成し、ついで形成されたその金属導体層をカソード体の表面から剥離することによって製造されている。この場合カソード体としては、ドラム形状のものまたは板状のものが用いられている。この製造方法を応用して特許文献2が示すように同一の電解液槽を使用しつつ二つもしくはそれ以上のアノードを一つのドラム状カソードに対して配置し、めっき浴中にドラム状カソードを半分程度浸漬し、それを回転させつつ第1の電流密度により銅箔を製箔した後、引き続き、第2の電流密度を印加してその表面に微粒子上の銅を析出させることにより、つや消し表面のある銅箔を製造する方法が知られている。しかし、本発明者らの知見によれば、特許文献2の方法により、表面を黒色または茶褐色化することは困難である。
【0008】
【特許文献1】特開平11−119675号公報
【特許文献2】特表2002−506484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の問題点に鑑み、第一に、幾何学図形を有する金属に黒化度が十分なあるいは色調又は形状においてより均質な黒化処理が施された金属パターンの製造方法を提供するものである。本発明は、第二に、より生産性に富んだ金属パターンの製造方法を提供するものである。第三に、本発明は、このような金属パターンの製造工程を含む導体層パターン付き基材の製造方法を提供するものである。第四に、さらにその上で、本発明は、黒化処理された導体層パターンの転写工程を含む導体層パターン付き基材の製造方法において転写がより円滑に行うことができる方法を提供するものである。本発明は、さらにこのような方法により得られる電磁波シールド性及び光透過性が優れる導体層パターン付き基材及びこれを用いた電磁波遮蔽部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は次のものに関する。
1. 幾何学図形状の導電性金属層にパルス電解法により金属を析出させて黒化処理を行う表面が黒化処理された金属パターンの製造方法において、パルス電解法が、高通電時間をT、低通電時間をTとし、1サイクルを
1サイクル=T+T
と定義し、パルス電解でのサイクル率Eを
E=100×(T/(T+T))
とした場合、サイクル率を2%以上または90%以下に維持し、各パルス通電時間を2ms以上200ms以下に保持する条件で行われることを特徴とする表面が黒化処理された金属パターンの製造方法。
2. 幾何学図形状のめっき部パターンを有するめっき用導電性基材に電気めっきにより銅金属を析出させる金属パターンの製造方法において、第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程、及び、前記第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面に、その表面が黒色または茶褐色になるように金属を析出させる黒化処理をパルス電解法で行う工程を同一のめっき浴槽内で行うことを特徴とする表面が黒化処理された金属パターンの製造方法。
3. めっき部パターンが開口方向に向かって幅広な凹部パターンである項2に記載の金属パターンの製造方法。
4. パルス電解法が、高通電時間をT、低通電時間をTとし、1サイクルを
1サイクル=T+T
と定義し、パルス電解でのサイクル率Eを
E=100×(T/(T+T))
とした場合、サイクル率を2%以上または90%以下に維持し、各パルス通電時間を2ms以上200ms以下に保持する条件で行われることを特徴とする項2又は3のいずれかに記載の金属パターンの製造方法。
5. 表面が黒化処理された金属パターンについて、明度25の黒色を背景にして、その開口部面積が約50%以上となる光透過部の明度が25〜50になるように黒化処理する項1〜4のいずれかに記載の金属パターンの製造方法。
6. 黒化処理工程において、各パルス電解処理の制御を電圧で行うことを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の金属パターンの製造方法。
7. 幾何学図形状のめっき部パターンを有するめっき用導電性基材に電気めっきにより銅金属を析出させる金属パターンの作製工程及びめっき用導電性基材上に析出した金属を接着性支持体に転写する転写工程を含む導体層パターン付き基材の製造方法において、金属パターンの作製工程が第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程、及び、前記第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面に、その表面が黒色または茶褐色になるように金属を析出させる黒化処理をパルス電解法で行う工程を同一のめっき浴槽内で行うことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
8. めっき部パターンが開口方向に向かって幅広な凹部パターンである項7に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
9. パルス電解法が、高通電時間をT、低通電時間をTとし、1サイクルを
1サイクル=T+T
と定義し、パルス電解でのサイクル率Eを
E=100×(T/(T+T))
とした場合、サイクル率を2%以上または90%以下に維持し、各パルス通電時間を2ms以上200ms以下に保持する条件で行われることを特徴とする項7又は8のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
10. 表面が黒化処理された金属パターンについて、明度25の黒色を背景にして、その開口部面積が約50%以上となる光透過部の明度が25〜50になるように黒化処理する項7〜9のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
11. 黒化処理工程において、各パルス電解処理の制御を電圧で行うことを特徴とする項7〜10のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
12. 項7〜11のいずれかに記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
13. 項12に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
14. 項12に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、表面が黒化処理された金属パターンを特定条件のパルス電解法を利用して製造することにより、黒化度が十分なあるいは色調又は形状においてより均質な黒化処理された金属パターンを製造することができる。(黒化処理された金属銅の過剰析出が抑えられ、ライン太りがなく、粉落ちのない)
また、本発明によれば、導電層形成工程と黒化処理をパルス電解法で行う工程を同一のめっき浴槽内で行うことができるので良好に黒化処理された金属パターンを生産性良く作製することができる。
本発明において、導体層付き基材の製造方法は、前記の金属パターン製造方法を含むので、黒化度が十分なあるいは色調又は形状においてより均質な黒化処理された金属パターンを有し、従って、その良好な特性を有する導体層パターン付き基材を製造することができ、また、導体層パターン付き基材を産性良く製造することができる。
これらの方法において、めっき部パターンが開口方向に向かって幅広な凹部パターンである場合、表面が黒化処理された金属パターンの剥離又は転写が容易になる。
前記の導電層パターンを利用して得られる電磁波遮蔽体は、光透過性に優れたものとすることができる。このためディスプレイの電磁波遮蔽体として使用した場合、その輝度を高めることなく通常の状態とほぼ同様の条件下で鮮明な画像を快適に、電磁波による体への悪影響なく観賞することができる。また、その電磁波遮蔽体は電磁波遮蔽性に優れるため、ディスプレイそのほかの電磁波を発生する装置、あるいは外部からの電磁波から保護される測定装置、測定機器や製造装置の筐体、特に透明性を要求される覗き窓のような部位に設けて使用すると効果が大きい。さらに、本発明における電磁波遮蔽体は前記の導体層パターン付き基材と同様、生産効率よく製造することができる。
【0012】
前記導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面への透明基板貼合せ、または透明樹脂のコーティングにより、導体層パターンを保護することができる。別の基材の導体層転写面に予め接着剤層を形成していた場合には、この接着剤層への異物の付着の防止効果も有する。また、このとき透明基板の貼り合わせは接着剤層に透明基板を直接又は別の接着剤を介して加圧して貼り合わせることにより行うことができる。この場合適度な圧力により導体層パターンが接着剤層に埋設されるので、透明性や透明基板との密着性を向上させることが可能である。
【0013】
導体層パターン付き透明基材を利用すれば高い光透過性(特に、導体層パターンの線幅が小さく高精細)と良導電性(高電磁波シールド性)を兼ね備える電磁波遮蔽体を容易に得ることができる。このためPDP等のディスプレイの電磁波遮蔽体として使用した場合、その輝度を高めることなく通常の状態とほぼ同様の条件下で鮮明な画像を快適に鑑賞することができる。また、その電磁波遮蔽体は電磁波遮蔽性に優れているため、ディスプレイその他の電磁波を発生する装置、あるいは電磁波から保護されるべき測定装置、測定機器、製造装置等の内部を覗く窓や筐体、特に透明性を要求される窓やディスプレイ表面のような部位に設けて使用すると効果が大きい。さらに、本発明における電磁波遮蔽体の製造法は、前記の導体層パターンの製造に於けると同様、生産効率が優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においては、幾何学図形状の導電性金属層にパルス電解法を利用しためっきによる黒化処理を行うことを根幹としている。
この幾何学図形状の金属層は、めっき用導電性基材上に形成されたものでも、プラスチックフィルム、プラスチック板、硝子板等の基材上に形成されたものであってもよい。
まずは、めっき用導電性基材上に形成される幾何学図形状の金属層及びその金属層への黒化処理について説明する。
【0015】
本発明において、幾何学形状のめっき部パターンを有するめっき用導電性基材に電解めっき又は無電解めっきすることにより、幾何学図形上の金属層(金属パターン)を製造することができる。上記のめっき部パターンは、導電性基材に形成された凸部または凹部によって形成される。
【0016】
めっき部が凹部であるめっき用導電性基材について説明する。導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に凹部(めっき部)が形成されているものが好ましく、特に、開口方向に向かって幅広なめっきを形成するための凹部(めっき部)が形成されているものが好ましい。この凹部の底面には導電性材料が露出している。
【0017】
本発明において、導電性基材に用いられる導電性材料は、その露出表面に電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが特に好ましい。また、その基材は表面に電解めっきにより形成された金属層を接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層との密着力が低く、容易に剥離できるものであることが好ましい。このような導電性基材の材料としてはステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料、ニッケルなどが特に好ましい。
【0018】
上記の導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、シート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。導電性基材をロールに巻きつけて使用する場合、ロールとして導電性のものを使用し、ロールと導電性基材が容易に導通するようにしたものが好ましい。
【0019】
絶縁層の厚さは、0.5μm以上、10μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層の厚さは、凹部の深さに対応する。凹部の深さは、析出するめっきの厚さとも関係するため、目的に応じて適宜決定される。
めっきの厚さは、十分な導電性を示すためには0.5μm以上が好ましく、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、めっきは、絶縁層より1μm程度以上高く析出させることが好ましい。
絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。絶縁層の厚さは、1〜5μmであることが特に好ましい。
【0020】
上記の絶縁層は、ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとする)薄膜のうち、絶縁性を有するものにて形成することができる。DLC薄膜は、特に、耐久性、耐薬品性に優れているため、特に好ましい。
さらに、絶縁層をAl、SiO等の無機化合物のような無機材料で形成することもできる。
【0021】
凹部又は絶縁層の形状は、目的応じて適宜決定されるが、平面形状が、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、楕円、星型などの幾何学図形があり、これらを適宜組み合わせた模様としてもよい、これらの単位は、単独で又は2種類以上組み合わせて繰り返されることが可能である。一つのめっき用導電性基材において、凹部の形状と絶縁層の形状は、互いに対応した形状となる。
光透過性電磁波遮蔽部材の性能の観点からは溝状の凹部に囲まれる絶縁層を三角形とすることが最も有効であり、可視光透過性の点からは溝状の凹部が同一のライン幅なら、それにより囲まれる絶縁層が(正)n角形のとき、n数が大きいほど導体層パターンの開口率が上がる。
【0022】
上記のめっき用導電性基材の一例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のめっき用導電性基材の一例を示す一部斜視図である。図2は、図1のA−A断面図を示す。図2の(a)はめっき部である凹部の側面が平らな面であるが、(b)は凹部の側面になだらかな凹凸がある場合を示す。めっき用導電性基材1は、導電性基材2の上に絶縁層3が積層されており、絶縁層3に凹部4が形成されており、凹部4の底部は、導電性基材2が露出している。凹部4の底部は、導電性基材に導通している導電性材料からなる導体層であってもよい。
この例においては、絶縁層3は、幾何学図形としては正方形であり、この正方形の周りに凹部4が溝状に形成されている。
導電性基材2と絶縁層3の間には、絶縁層3の接着性の改善等を目的として、導電性又は絶縁性の中間層(図示せず)が積層されていてもよい。または、凹部4は、その幅が、開口方向に向かって全体として幅広になっている。図面のよう勾配αで一定に幅広になっている必要は必ずしもない。めっきにより形成される導体層パターンの剥離に問題がなければ、凹部は、開口方向に向かって幅が狭くなっている部分があってもよいが、このような部分がない方が良く、凹部は開口方向に向かって狭まっておらず全体として広がっていることが好ましい。
【0023】
凹部の側面は、必ずしも平らな面ではない。この場合には、図2(b)に示すように、前記の勾配αは、凹部の高さh(多くの場合、絶縁層の厚さにより規定される)と凹部の側面の幅s(水平方向で凹部の側面の幅方向)を求め、
【数1】

によってαを決定する。
αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上60度以下が特に好ましい。この角度が小さいと作製が困難となる傾向があり、大きいと凹部にめっきにより形成し得た金属層(導体層パターン)を剥離する際、又は、別の基材に転写する際の抵抗が大きくなる傾向がある。
【0024】
また、絶縁層の厚さは、前記と同様であるが、これに対応するように、凹部4の深さは、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。
【0025】
めっき用導電性基材を、転写法により光透過性電磁波遮蔽部材を作製するために使用するときは、図2に示すような凹部4の幅は、開口部の幅dが2〜60μm、底部の幅d′が1〜40μmで有ることが好ましい。また、凹部4の開口部の幅dは4〜15μm、底部の幅d′は3〜10μmであることが特に好ましい。凹部4の中心間隔(ラインピッチ)は50〜1000μmであることが好ましく、特に100〜400μmであることが好ましい。溝の幅及びその間隔は、導体層パターンの開口率を好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上とすることを考慮して決定する。
なお、本発明において、凹部の中心間隔(ラインピッチ)は、凹部によって形成されている絶縁層の図形パターンが複雑な図形であったり、複数の図形の組み合わせであったりして簡単に決定できない場合は、パターンの繰り返し単位を基準としてその面積を正方形の面積に換算し、その一辺の長さであると定義する。
【0026】
上記めっき用導電性基材の凹部は、表面が黒化処理された金属パターンの形状に対応するが、同様に導体層パターン付き基材における導体層パターンに対応するものであり、その導体層パターンは、最終的に電磁波遮蔽部材を作製したときの電磁波シールド層に対応するものである。
【0027】
ディスプレイ用の電磁波遮蔽材における可視光透過性の点からは、電磁波遮蔽材等の透明性を要求される部材における上記のような幾何学図形を描く導体層パターンの開口率は50%以上であることが好ましく、導体層パターンの開口率は80%以上であることがさらに好ましい。導体層パターンの開口率は、電磁波遮蔽材等の用途において、機能として有効面積(例えば、上記の幾何学図形が描かれている範囲の面積等電磁波遮蔽に有効に機能する範囲の面積)に対するその有効面積から導電層で覆われている面積を引いた面積の比(百分率)である。
【0028】
本発明のめっき用導電性基材を用いて穴明き金属箔を作製するために使用するときは、図2に示すような絶縁層3は、その底面(導電性基材との接触面)の面積が1〜1×10平方ミクロンメートルであることが好ましく、絶縁層の間隔(凸部と凸部の最短距離)が1〜1000μmであることが好ましい。また、絶縁層3は、底面の面積が1×10〜1×10平方ミクロンメートルであることがより好ましく、絶縁層の間隔が10〜100μmであることがより好ましい。絶縁層底面の面積及びその間隔は、導体層パターンの開口率を好ましくは10%以上、特に好ましくは30%以上とすることを考慮して決定する。このような穴明き金属箔は、キャパシタの集電体として有用である。
【0029】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法としては、導電性基材の表面に、導電性基材を露出させている凹部によって幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を含む。
この工程は、(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含む方法により作製することができる。
【0030】
上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程としては、印刷法やフォトリソグラフ法を利用して、レジストパターンを形成する方法を利用することができる。
フォトリソグラフ法を利用する場合、この方法は、
(a−1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(a−2)感光性レジスト層をめっき部となる凹部パターンに対応したマスクを通して露光する工程
及び
(a−3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む(以上の方法「a法」という)。
【0031】
また、上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程は、
(b−1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(b−2)感光性レジスト層にめっき部となる凹部パターンに対応した部分にマスクをせずレーザー光を照射する工程
及び
(b−3)レーザー光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程(感光性レジストの不要部を除去する工程)
を含む(以上の方法「b法」という)。
【0032】
感光性レジストとしては、よく知られたネガ型レジスト(光が照射された部分が硬化する)を使用することができる。また、このとき、マスクもネガ型マスク(凹部に対応する部分は光が通過する)が使用される。また、感光性レジストとしてはポジ型レジストを用いることができる。これらの方式の対応して上記a法及びb法における光照射部分が適宜決定される。
【0033】
フォトリソグラフ法を用いる場合には、感光性レジスト層の形成は、ドライフィルムレジストを導電性基材にラミネートすることにより行うことができる。また、感光性レジスト層の形成は、液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥あるいは仮硬化させることにより行うことができる。液状レジストは、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。
枚葉で版のサイズが大きい場合、あるいはロール・トゥ・ロール(Roll−to−Roll)で作製する場合などはドライフィルムレジストをラミネートしてマスクを介して露光する方法が生産性の観点からは好ましく、めっきドラムなどに直接加工する場合にはドライフィルムレジストを貼り合わせたり、液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザなどでダイレクトに露光する方法が好ましい。
【0034】
前記b法において、感光性レジストの代わりに熱硬化性樹脂を用い、レーザー光の照射により熱硬化性樹脂の不要部を除去する方法によっても行うことができる。
【0035】
印刷法を用いてレジストパターン(凸部パターン)を形成することができるが、この場合には、レジストパターンの印刷方法としては様々な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凸版オフセット印刷、凸版反転オフセット印刷、凹版印刷、凹版オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いることができる。レジストとしては光硬化性又は熱硬化性の樹脂が使用できる。印刷後、光照射又は熱によりレジストを硬化させる。
【0036】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法の一例を図面を用いて説明する。
図3は、めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を断面図で示したものである。
【0037】
導電性基材2の上に感光性レジスト層(感光性樹脂層)5形成されている(図3(a))。この積層物の感光性レジスト層(感光性樹脂層)5に対し、フォトリソグラフ法を適用して感光性レジスト層5をパターン化する(図3(b))。パターン化は、パターンが形成されたフォトマスクを感光性レジスト層5の上に載置し、露光した後、現像して感光性レジスト層5の不要部を除去して凸状パターン6を残すことにより行われる。凸状パターンは、導電性基材2上の凹部4に対応するよう考慮される。
【0038】
この時、凸状パターン6の断面形状において、その側面は、導電性基材に対して垂直であること、又は、凸状パターンが導電性基材2に接する端部に対して、その凸状パターンの側面上方の少なくとも一部がその端部に覆い被さるような位置にあることが好ましい。凸状パターンの幅で言う場合は、凸状パターン幅の最大値dは、凸状パターンと導電性基材2に接する幅dと等しいか大きくすることが好ましい。これは、形成される密着性の良い絶縁層の凹部幅はdによって決定されるからである。ここで、凸状パターン6の断面形状で、凸状パターン幅の最大値dが凸状パターンと導電性基材2に接する幅dと等しいか大きくする方法としては、凸状パターン6の現像時にオーバ現像とするか、形状がアンダカットとなる特性を有するレジストを使用すれば良い。dは凸部の上部で実現されていることが好ましい。
めっき用導電性基材を、光透過性電磁波遮蔽部材用の導体層パターンの作製するために使用するときは、除去可能な凸部のパターン形状は、凹部の形状に対応づけられるが、最大幅1〜40μm、間隔が50〜1000μm及び高さ1〜30μmであることがそれぞれ好ましい。特に最大幅3〜10μm、間隔が100〜400μmであることが好ましい。
【0039】
前記した(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程について、説明する。
凸状パターン6を有する導電性基材2(図3(b)参照)の表面に絶縁層7を形成する(図3(c)参照)。
【0040】
絶縁層としてのDLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波によるプラズマCVD法が特に好ましい。
【0041】
前記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香属炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。前記ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして前述した炭素源と水素ガスとの混合物、前述した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0042】
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、金属板等の導電性基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
【0043】
前記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
【0044】
中間層は、前述したようなドライコーティング法により形成させることができる。
【0045】
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
【0046】
絶縁層をAl、SiO等の無機化合物のような無機材料で形成する場合にも、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。例えばスパッタリング法で形成する場合には、ターゲットをSiまたはAlにして反応性ガスとして酸素、窒素などの導入することでSiO、Siなどの酸化物、窒化物を成膜することができる。また、イオンプレーティング法を用いる場合にはSiやAlを原料とし、電子ビームをこれらに照射することで蒸発させ、基板に成膜することができる。その際に、酸素、窒素、アセチレンといった反応性ガスを導入することで酸化物、窒化物、炭化物を成膜することができる。
また、CVD法で成膜する場合には金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物などのような化合物ガスを原料とし、それらの化学反応を利用して成膜することでできる。酸化シリコンのCVDは、例えばTEOS、オゾンを用いたプラズマCVDで行える。窒化シリコンのCVDは、例えばアンモニアとシランを用いたプラズマCVDで行える。
【0047】
次に、前記した(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程について説明する。絶縁層7が付いている状態(図3(c)参照)で、凸状パターンを除去する(図3(d)参照)。
絶縁層の付着しているレジストの除去には、市販のレジスト剥離液や無機、有機アルカリ、有機溶剤などを用いることができる。また、パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば、それを用いることもできる。
剥離の方法としては、例えば薬液に浸漬することでレジストを膨潤、破壊あるいは溶解させた後これを除去することが可能である。液をレジストに十分含浸させるために超音波、加熱、撹拌等の手法を併用しても良い。また、剥離を促進するためにシャワー、噴流等で液をあてることもできるし、柔らかい布や綿棒などでこすることもできる。
また、絶縁層の耐熱が十分高い場合には高温で焼成してレジストを炭化させて除去することもできるし、レーザーを照射して焼き飛ばす、といった方法も利用できる。
剥離液としては、例えば、3%NaOH溶液を用い、剥離法としてシャワーや浸漬が適用できる。
【0048】
導電性基材2上に形成される絶縁層と、凸状パターン6の側面に形成される絶縁層とでは、性質又は特性が異なるようにする。例えば、硬度が、前者の方が後者より大きくする。こうすることにより、凸部パターンを除去するとき、絶縁層は、この境界で分離され、その結果、凹部の側面の傾斜角αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上60度以下が特に好ましい。このような制御は、DLC膜をプラズマCVDで作製する場合、容易に行うことができ、上記の角度をほぼ40〜60度に制御することが容易である。従って、凹部4は、開口方向に向かって幅広になるように形成される。傾斜角αの制御方法としては、突起部6の高さを調整する方法が好ましい。突起部6の高さが大きくなるほど、傾斜角αを大きく制御しやすくなる。
【0049】
上記の絶縁層の形成において、導電性基材はレジスト(凸状パターン)の影にならないので、導電性基材上の絶縁層は性質が均一である。これに対し、凸状パターンの側面への絶縁層の形成は、凸状パターンの側面が導電性基材上の膜厚方向に対し角度を有しているため、形成される絶縁層(特にDLC膜)は、導電性基材上の絶縁層と同じ特性(例えば、同じ硬度)の絶縁層が得られない。このような異質な絶縁層の接触面においては、絶縁層の成長に伴い絶縁層の境界面が形成され、しかも、その境界面は絶縁層の成長面であることから、滑らかである。このため、凸状パターンを除去するとき、絶縁層(特にDLC膜)は、この境界で容易に分離される。さらに、この境界面、即ち、凹部側面となる傾斜角αは、導電性基材上の膜厚方向に対し凸部パターンの側面で絶縁層の成長が遅れるため、結果として、境界面の傾斜角は、上記のように制御される。
【0050】
本発明において導電性基材上に形成された絶縁層の硬度は、10〜40GPaであることが好ましい。硬度が10GPa未満の絶縁層は軟質であり、めっき用導電性基材として繰り返して使用する場合に、耐久性が低くなる。硬度が40GPa以上では、導電性基材を折り曲げ等の加工をした際に基材の変形に追随できなくなり、絶縁層にひびや割れが発生するので好ましくない。より好ましくは12〜30GPaである。
これに対して、凸部側面に形成される絶縁層の硬度は1〜15GPaであることが好ましい。凸部側面に形成される絶縁層は、少なくとも導電性基材上に形成される絶縁層の硬度よりも低くなるように形成しなければならない。そうすることにより両者間に境界面が形成され、後の絶縁層の付着した凸部パターンを剥離する工程を経た後に、幅広な凹部が形成されることになる。凸部側面に形成される絶縁層の硬度は1〜10GPaであることがより好ましい。
絶縁層の硬度は、ナノインデンテーション法を用いて測定することができる。ナノインデンテーション法とは、先端形状がダイヤモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を薄膜や材料の表面に押込み、そのときの圧子にかかる荷重と圧子の下の射影面積から硬度を求める。ナノインデンテーション法による測定として、ナノインデンターという装置が市販されている。導電性基材上に形成された膜の硬度はそのまま導電性基材上から圧子を押し込んで測定することができる。また、凸部側面に形成される膜の硬度を測定するためには、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、断面から凸部側面に形成された絶縁層に圧子を押し込んで測定することができる。通常ナノインデンテーション法では圧子に1〜100mNの微少荷重をかけて硬度測定を行うが、本発明では3mNの荷重で10秒間負荷をかけて測定した値を硬度の値として記載している。
このようにして、めっき用導電性基材1を作製することができる。
【0051】
図4は、中間層を有するめっき用導電性基材とその前駆体の断面図を示す。
凸状パターン6が形成された導電性基材2の表面に、絶縁層7を形成する前に、中間層8を形成することが好ましい(図4(c′))。中間層としては、前記したものが使用でき、その形成方法も前記したとおりである。中間層8を形成した場合、得られるめっき用導電性基材は、凹部4の底部は、導電性基材2が露出しており、それ以外では、中間層8の上に絶縁層7が形成されている(図4(d′))。また、中間層は、凸状パターン6の形成前に、導電性基材2の表面に形成しても良い。この後、その表面に、前記したように導電性基材を露出させている凹部によって幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を行っても良い。この場合、中間層として、電解めっきが十分可能な程度に導電性のものを使用した場合、凹部の底部はその中間層のままでよいが、十分な導電性を有していない場合は、ドライエッチング等の方法により、凹部の底部の中間層を除去し、導電性基材2を露出させる。
【0052】
本発明のめっき用導電性基材において、めっき部パターンが凹部パターンであり、その凹部が開口方向に向かって幅広になっている場合、これは、導電性基材の表面に除去可能な凸状パターンを形成し、絶縁層を形成後に、絶縁層が付着している凸状パターンを除去することにより作製することができるため、その製造が容易で、生産性に富む。同様の理由で、本発明のめっき用導電性基材の製造法によれば、工程数が少なく、特に、めっき部パターンが凹部パターンであり、その凹部が開口方向に向かって幅広になっている場合、その凹部を容易に作製することができるため、それを生産効率よく製造できる。
【0053】
めっき部が導電性の凸部パターンからなる導電性基材をめっき用導電性基材として使用することもできる。
この凸部は、(露出部分が)先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなっていることが好ましい。このとき、凸部に対応した凹部は、絶縁層で被覆されていることが好ましい。さらに、この場合、凸部の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)との高さ方向の距離h10に対する第1の位置と第2の位置との幅方向の距離d10との関係d10/h10が、角度で30°〜80°に相当することが好ましい。凸部先端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超えるものが好ましい。
【0054】
導電性基材上に導電性の凸部を形成させる方法としては、次のような方法をあげることができる。
(1)基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)に、直接レーザ光を照射し、凹部を形成し、導体層パターンに対応した凸部を形成する方法、
(2)基材上にフォトリソグラフ法又は印刷法によって、基材に光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂により幾何学図形状のパターン(レジストパターン)を形成する工程を行なった後、基材をエッチングする方法、
(3)彫刻により基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)を掘削する方法、
(4)導電性基材上にフォトリソグラフ法又は印刷法によって、導電性基材に光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂により幾何学図形状のパターン(レジストパターン)を形成する工程を行なった後、導電性基材の露出部分にレジストパターンの厚さより厚くめっきを行い、導電性の凸部パターンを形成する方法などがある。
基材の材質が硬い場合、直接加工するには上記(1)方法(レーザ加工法)または(2)の方法(エッチング法)などを用いることが好ましいが、銅などの柔らかく加工性に優れた材料を用いる場合は、上記(3)の方法(彫刻法)により容易に加工することもでき、このとき、加工後に、クロム等の硬質のめっきを表面に施して、強度を上げることができる。
上記(1)〜(3)の方法において、基材として、導電性又は非導電性の表面に導電性膜を形成したものを用いてもよい。また、導電性又は非導電性の基材を用いて上記の処理を施して凸部を形成後に表面に導電性膜を形成しても良い。
【0055】
上記(2)の方法において、印刷法を用いる場合には、レジストパターンの印刷方法としては様々な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凸版オフセット印刷、凸版反転オフセット印刷、凹版印刷、凹版オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いることができる。レジストとしては光硬化性又は熱硬化性の樹脂が使用できる。
また、フォトリソグラフ法を用いる場合には、ドライフィルムレジストなどをラミネートし、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来るし、液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥あるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来る。光硬化性の樹脂にマスクを介して活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。枚葉で版のサイズが大きい場合、あるいはロール・トゥ・ロール(Roll−to−Roll)で作製する場合などはドライフィルムレジストをラミネートしてマスクを介して露光する方法が生産性の観点からは好ましく、めっきドラムなどに直接加工する場合にはドライフィルムレジストを貼り合わせるあるいは液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザーなどでダイレクトに露光する方法が好ましい。
また、上記(2)の方法における基材のエッチングは、エッチング液を用いて行うことができる。エッチング液としては基材の材質によって様々な種類があり、それぞれの基材に対してエッチング液が市販されている場合は、それらを使用することができる。例えば、基材がステンレスであれば、塩化第二鉄を用いることが一般的であり、チタンであればふっ酸系のエッチング液がよく用いられる。ステンレスのエッチングに関しては、塩化第二鉄の比重が40°Be(ボーメ)〜60°Be(ボーメ)の範囲の液が好んで用いられる。比重が低いとエッチングスピードは速いが、サイドエッチングが大きくなるため、凹部が浅くなる傾向にあり、逆に比重が高いと、エッチングスピードは遅いが、サイドエッチングが少なく、凹部が深くなる傾向にある。したがって、エッチング液の比重は、45°Be(ボーメ)〜50°Beであることがさらに好ましい。また、エッチング温度は、低いとエッチンスピードが低下し生産性が低下するため、40℃以上であることが好ましい。さらに、エッチング温度が60℃を超えると、エッチング液の腐食性が大きくなるため、エッチング槽をチタン製にする等設備投資が大きくなるため、60℃以下であることが好ましい。
残存するレジストは、基材のエッチング後に、剥離液等を使用して剥離することができる。
【0056】
凹部に絶縁層を形成する方法としては、例えば、次の方法がある。
次いで、この導電性基材の一方の面を剥離可能な粘着フィルムなどを貼り合わせて保護し、エッチングした面の全面に絶縁層を被覆する。この後に、プラズマエッチングに対するマスク層を絶縁層の上に形成する。
絶縁層のための料絶縁材は、導電性基材との密着性が高く、耐薬品性が強い材料が好んで用いられる。電気めっきもしくは無電解めっきの工程では、前処理液やめっき液に浸漬されるため、耐酸性と耐アルカリ性双方に強い材料が特に好ましい。絶縁材料としては、前記したDLCを用いることができる。DLC膜と導電性基材の間に前記した中間層を介在させても良い。
絶縁材料として、また、熱硬化性樹脂、例えば、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等が用いることができるが、これらは自己硬化性のものである(硬化触媒を使用してもよい)。
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとして、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。熱硬化性樹脂を用いる絶縁層の形成方法としては、例えば、刷毛塗りや、スプレー塗装、さらには、ディッピングした後にスキージやブレード等で樹脂を掻き取った後に乾燥させるなどの方法が挙げられる。
絶縁材料としては、さらに、皮膜の均一性や、形成の簡便さ、さらに環境に対する負荷が少ないことから、電着塗料を用いてもよい。電着塗料は、それ自体既知のカチオン型及びアニオン型のいずれでも使用することができる。
【0057】
マスク層が形成されている箇所では、絶縁層がエッチングされないため、導電性基材の凸部の先端部分に形成された絶縁層の上のマスク層を除去する。マスク層のこの部分的な除去は凸部の露出させる先端部分の幅を勘案して除去される。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、露出する絶縁層の幅が、上面の幅と同一又はそれよりも広くなるようにすることが好ましい。
【0058】
次いで、絶縁層にドライエッチングを施すことにより、凸部の先端部分に形成された絶縁層を除去することができ、これにより凸部の先端部分を露出させることができる。
特に、酸素ガスでプラズマエッチングを行った場合などには、導電性基材がストッパー層となる。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、凸部の上面の幅を超えた部分の絶縁層をマスク層から露出させておけば、絶縁層のドライエッチングによる除去が、凸部の側面部にまで及び、その結果、凸部の側面までいくらか露出させることができる。側面部の絶縁層の除去の制御は、ドライエッチングの時間、出力によって行うことができる。
次いで、凹部の絶縁層8上に形成されているマスク層は、薬液浸漬等により除去される。このようにしてめっき部が凸部パターンからなるめっき用導電性基材を作製することができる。
【0059】
上記マスク層は、無機系と有機系のマスク層に大別できる。
無機系のマスク層としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、金(Au)、チタン(Ti)等の金属が、特に酸素プラズマに対する耐性が強く好ましく用いられる。これらの膜は、スパッタ法、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電着法、無電解めっき法などの薄膜形成方法により形成される。これらの材料の中では、酸素プラズマに対する耐性が高く、廉価であり、蒸着が容易で、酸性物質に対しても塩基性物質に対しても可溶であることから、アルミニウム(Al)が好んで用いられる。アルミニウムは導電性であるため、ドライエッチング後に残しておくと導電性基材の全面にめっきが析出するので、除去する必要がある。アルミニウムのエッチング剤としては、塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム等、また酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸及びその塩等であるが、絶縁層の耐性を考慮して、適宜選択する。
【0060】
さらに、酸素プラズマに対する耐性を持つ無機材料としては、ウェットコーティング法を用いる場合にはアルカリ金属、オルガノポリ金属、オルガノアルコキシ金属、アルコキシ金属、変性アセチルアセトネート金属等からなる金属酸化物系ポリマーや、無機フィラーを含有した塗料、さらに、セラミックコーティングと呼ばれるケイ素化合物フリット類による塗料を、アルコールや水などの溶剤を加えた状態でスプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。また、金属のフッ化物錯体を用いて液層析出法(LPD法)などにより絶縁層の上にマスク層として形成させることもできる。また、ドライコーティング法で各種金属の酸化物を形成させることも可能である。コーティングする方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングといったPVD法や、プラズマCVD、熱CVDといったCVD法の他、溶射などの方法を用いて作製することができる。具体的には、Al、Cr、Fe、MgO、SiO、SiO、SnO、TaO、TiO、WO、Y、ZnO、ZnO、ZrO等の皮膜が好ましく用いられる。
【0061】
また、有機系のマスク層としては、ドライエッチングに対する耐性があるもので、公知のものが使用できるが、特に酸素プラズマを用いる場合には、一般的にシリコンを含有するレジスト膜が酸素プラズマに対する耐性があるため、好んで用いられる。シリコンを含有するレジスト膜には、感光性があっても、なくてもよい。凸部の上面にあるマスク層を除去する方法として、凸部の上面にあるマスク層を現像して除去してから、現像した箇所をドライエッチングする場合には、レジスト膜が感光性を有していることが好ましいが、凸部の上面にあるマスク層を機械研磨で除去する場合には、必ずしも感光性は必要でない。用いるレジスト膜は、ネガ型でもポジ型でもよく、液状でもフィルム状でもよい。液状の場合は、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布でき、フィルムの場合は、加熱ラミネートして、凹部にレジストを追随させながら埋め込むことができる。
【0062】
本発明において、金属の表面が黒色または茶褐色となるよう金属析出を行う黒化処理にあたり、周期的に一定時間だけ電流を下げるまたは停止する通電方法であるパルス電解法を利用する。これにより、黒色または茶褐色の析出状態を良好に発現することができる。
【0063】
本発明における黒化処理に用いるめっき浴としては各種めっき液を使用することが可能であり、一例としてピロリン酸銅浴、硫酸銅浴などの銅めっき浴を用いることができる。ピロリン酸銅浴は、ピロリン酸銅及びピロリン酸塩を含む電解液である。その具体例としては次の配合からなるものがある。
ピロリン酸銅 63〜105 g/L(銅分として23〜38 g/L)
ピロリン酸カリウム 200〜470 g/L
を含み、必要に応じて、アンモニア水、硝酸カリウム、光沢剤等を溶解・配合した水溶液が用いられる。アンモニア水は、たとえば、比重0.88のものが用いられ、1〜6 mL/L使用することが好ましく、硝酸カリウムは、8〜16 g/L使用することが好ましく、光沢剤(メルカプトチアゾール、メルカプトチアゾール系添加物など)は適量使用することが好ましい。
その他、ピロリン酸ナトリウムや、市販のピロリン酸銅めっき用添加剤を用いることもできる。さらに、モリブデン等VI族元素、及びコバルト、ニッケル等VIII族元素のうち一つ又はそれ以上の成分をめっき浴に添加すると、より安定して黒化処理を施すことができる。
硫酸銅浴は、硫酸銅及び硫酸を含む電解液であり、その具体例としては次の配合からなるものがある。
硫酸銅(五水和物) 50〜400 g/L(銅分として12〜100 g/L)
硫酸 50〜200 g/L
を含み、必要に応じて、塩素イオン、界面活性剤を溶解・配合した水溶液が用いられる。
塩素イオン源としては、塩酸、塩化ナトリウムなどがあり、20〜100 mg/L使用することが好ましい。また、界面活性剤は、1〜20mL/L、光沢剤は、0.1〜10mL/L使用することがそれぞれ好ましい。界面活性剤に替わる薬剤として高分子多糖類、低分子膠を用いても対応可能である。
【0064】
上記の界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又は両性の界面活性剤を用いることができる。特にノニオン系界面活性剤が好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、高分子界面活性剤を包含する概念であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド等の高分子界面活性剤を包含する。また、このような高分子界面活性剤には、炭素数1〜20のアルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール化合物、炭素数1〜25のアルキルを有するアルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、炭素数1〜25のアルキルを有するアルキルナフトール、炭素数1〜25のアルキルを有するアルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、スチレン化フェノール、ポリアルキレングリコール、炭素数1〜22の脂肪族アミン、炭素数1〜22の脂肪族アミドなどにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドをどちらか又は両方併せて2〜300モル付加縮合したものなどがある。
カチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、(モノ−、ジ−又はトリ−)アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、(モノ、ジ、トリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
前記の光沢剤としては、有機硫黄化合物などがある。有機硫黄化合物としては、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、ビス(2−スルホプロピル)ジスルフィド、ビス(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)ジスルフィド、ビス(4−スルホブチル)ジスルフィド、ビス(p−スルホフェニル)ジスルフィド、ジ−n−プロピル−チオエーテル−ジ−3−スルホン酸、3−(ベンゾチアゾリル−2−チオ)プロピルスルホン酸、N,N−ジメチル−ジチオカルバミン酸−(3−スルホプロピル)エステル、O−エチル−ジエチル炭酸−S−(3−スルホプロピル)エステル、チオ尿素及びその誘導体、S−(2−エチルアミド)−チオプロパンスルホン酸、S−(3−プロピルアミド)−チオプロパンスルホン酸、S−(4−ブチルアミド)−チオプロパンスルホン酸、S−(3−ブチルアミド)−チオプロパンスルホン酸、S−(3−プロピルアミド)−チオプロピル−2−ヒドロキシ−3−スルホン酸、S−(3−プロピルアミド)−チオフェニルスルホン酸、S−(N,N−ジメチル−3−プロピルアミド)−チオプロパンスルホン酸、S−(N−フェニル−3−プロピルアミド)−チオプロパンスルホン酸等、これらのナトリウム塩、カリウム塩などの塩がある。
【0065】
黒化処理として、その他、黒色ニッケルめっき、コバルトめっき等の他元素のめっき処理を行うことができる。
【0066】
黒色ニッケルめっきは硫化ニッケルを主成分とする黒色合金を被めっき体表面に電着で形成するめっき法であるが、VIII族元素の鉄、コバルトもいずれも硫化物としたとき黒色を呈すので用いることができる。同じVIII族元素の中でも硫化ニッケルは目的にかなった黒色を呈し、さらに下地金属とも良好な密着性を有する。VIII族元素以外の硫化物では銀、水銀、銅、鉛などを、用いることが可能である。またスズとニッケル、スズとコバルトなどの合金めっきや黒色クロムめっきを用いても粉落ちが無く、金属層のみに良好な密着性を有する黒化処理層(黒色層)を形成することができる。
【0067】
黒色ニッケルめっき層を形成するに際しては、硫酸ニッケル60〜100g/L、硫酸ニッケルアンモニウム30〜50g/L、硫酸亜鉛20〜40g/L、チオシアン酸ナトリウム10〜20g/Lを含有するめっき液を用いることができる。このめっき浴を用い、pH:4〜7、温度:45〜55°C、電流密度(パルス電解法における高通電時の電流密度)0.5〜3.0A/dmの条件で、ステンレスアノード又はニッケルアノード、攪拌には循環ポンプ並びにエアー攪拌を使用することにより、プラズマディスプレイパネル用として好適な黒色ニッケルめっき層を形成することができる。黒色ニッケルめっきの前処理としては下地となる金属層との密着性を高めるために適切なアルカリ脱脂、酸洗浄を行うことがより好ましい。各成分の濃度範囲を超えたところでめっきを行うとめっき液が分解しやすく、良好な黒色を得ることが困難になる。また、温度に関しても55℃を超える温度でめっきを行うとめっき液が分解しやすくなる。逆に45℃未満では1.0A/dm以上のめっきを行うと、製品にざらつきが生じて粉落ちしやすくなり、やはりめっき液寿命が短くなる。45℃未満で1.0A/dm以下の電流密度でめっきを行うことは可能であるが、望む黒色を得るのに長時間のめっきが必要となり、生産性を低下させてしまう。それゆえ、上の濃度組成のめっき液を使用して短時間で黒色ニッケルめっきを行う際の温度範囲は45〜55℃が最適である。また、電流密度(パルス電解法における高通電時の電流密度)に関しては温度範囲内で0.5A/dm未満でも可能であるが、望む黒色を得るのに長時間のめっきが必要となる。3.0A/dmを超えるでめっきを行うとめっき液が分解しやすく、粉落ちしやすい黒色皮膜が形成される。黒色ニッケルめっきではステンレスアノードを使用した場合、めっき液寿命が短くなるので、通常ニッケルアノードを使用するのが望ましい。
【0068】
黒化処理されていない金属パターンの作製のために、また、めっき用導電性基材を用いる表面が黒色化された金属パターンの製造工程の導電層形成工程においても、電気めっきにより、金属パターンを形成することができるが、この場合に使用されるめっき浴としては、前記したピロリン酸銅浴、硫酸銅浴などの銅めっき浴が好ましく使用される。
その他のめっき浴として、電解ニッケルめっきであれば、ワット浴、スルファミン酸浴などを使用することができる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。コバルトめっきの場合には、硫酸コバルトを含む硫酸コバルトめっき液がある。さらに、電解金めっきの場合は、シアン化金カリウムを用いた合金めっきや、クエン酸アンモニウム浴やクエン酸カリウム浴を用いた純金めっきなどが用いられる。合金めっきの場合は、金−銅、金−銀、金−コバルトの2元合金や、金−銅−銀の3元合金が用いられる。他の金属に関しても同様に公知の方法を用いることができる。電界めっき法としては、例えば、「現場技術者のための実用めっき」(日本プレーティング協会編、1986年槇書店発行)第87〜504頁を参照することができる。
【0069】
幾何学図形状の導電性金属層の作製は、従来公知の方法により作製することができる。
幾何学図形状の導電性金属層は、特に、めっき用導電性基材を用いてめっきにより作製することが好ましい。この方法は、めっき用導電性基材を用いる表面が黒色化された金属パターンの製造工程であって導電層形成工程及び黒化処理工程を含む方法のうち導電層形成工程と同一である。ただし、金属は、銅金属に限らない。このような方法において、めっき用導電性基材(陰極)と陽極の間に印加される特定の電流密度の下に、めっき用導電性基材に対し電気めっきが行われ(すなわち、導電性基材のめっき部に金属を析出させて)、導電性の金属層が形成される。導電性金属層の体積抵抗率は、10μΩ・cm以下であることが好ましく、5μΩ・cm以下であることがさらに好ましい。上記の特定の電流密度の範囲としては正常な皮膜を生成する電流密度の上限を示す最大電流密度以下で、なおかつ正常な皮膜を生成するには下限となる臨界電流密度以上の範囲である。具体的には、電解液の組成、添加物の種類、濃度、さらには循環方法や温度、攪拌方法などにより影響を受け、また、めっき部パターンが凸部のパターンか凹部のパターンかにより影響を受けるので、一概に、規定できないが、好ましくは、0.5A/dm以上60A/dm以下の範囲で適宜決定される。その理由は臨界電流密度を外れると正常な皮膜が得られない。0.5A/dmを下回ると目標厚みまで析出するのに長時間必要とし、結果生産効率が低下し生産コストが下がらない、また60A/dmを超過すると析出銅が正常な皮膜にならずその後の転写又は剥離などの工程に支障を及ぼす。この観点からは、上記の電流密度は40A/dm以下であることが好ましい。
【0070】
本発明において、めっき用導電性基材を用いる表面が黒色化された金属パターンの製造工程は、導電層形成工程及び黒化処理工程を含み、これらの工程をそれぞれ別個のめっき浴または同一めっき浴中で行なうことができる。導電層形成工程は上記の通りである。同一めっき浴中で行うことは、生産性向上の上で好ましい。
【0071】
幾何学図形状の導電性金属層の黒化処理及びめっき用導電性基材を用いる表面が黒色化された金属パターンの製造工程であって導電層形成工程及び黒化処理工程を含む方法のうちの黒化処理工程について説明する。
【0072】
本発明における黒化処理工程は、パルス電解法が採用される。高通電時間と低通電時間を交互に行うめっき法である。高通電時間をT、低通電時間をT、1サイクルを
1サイクル=T+T
と定義し、サイクル率Eを
E=100×(T/(T+T))
とした場合、高通電時間Tと低通電時間Tは、それぞれ短すぎてもあるいは長すぎてもその効果が不十分で良好な黒化処理ができなかったり、あるいは過剰析出となってしまう。パルス効果が不足時は十分に黒くならず、反対に過剰条件の場合、黒太りや粉落ちといった不具合を生じる。また、サイクル率は、電流密度の兼ね合いで適正なサイクルが定められる。望ましい通電時間はTは2ms以上20ms以下であり、Tは5ms以上、200ms以下である。さらに好ましくは、Tは5〜10ms、Tは50〜100msである。また、好ましいサイクル率は2%以上75%以下であり、さらに好ましくは5%〜50%である。
高通電時の電流密度は低通電時の電流密度より大きくされ、低通電時の電流密度は印加しない状態(0A/dm)又は0A/dmより大きく前記した導電性金属層作製のためのめっき時の電流密度の最大以下の範囲内の電流密度が望ましい。高通電時の電流密度はサイクル率及びサイクル毎の通電時間により好適な値が変わる。傾向としてはサイクル率が低いあるいは通電時間が短いほど高い電流密度を必要とし、反対にサイクル率が高いあるいは通電時間が長いと直流電流条件での電流密度に近い値で対応できる。
高通電時の電流密度の上限は、500A/dmとすることが好ましい。また、高通電時の電流密度は、低通電時の電流密度よりも5A/dm以上高いことが好ましく、10A/dm以上高いことがさらに好ましい。
好適な電流密度はパターンの形状や面積及びめっき液温度や液攪拌といった諸条件、及びT及びTの条件によって変化するが、それぞれ好ましい処理時間が決れられる。
【0073】
めっき用導電性基材を用いる表面が黒色化された金属パターンの製造工程であって導電層形成工程及び黒化処理工程を含む方法において、導電層形成工程における電流密度を第1の電流密度、黒化処理工程における高通電時の電流密度を第2の電流密度とすると、第2の電流密度は、銅金属のめっき(特に、同一の銅めっき浴中で)行う時、第1の電流密度より高くすることが好ましい。この第2の電流密度の範囲は正常な皮膜を生成する電流密度の上限を示す最大電流密度以上であり、拡散によるイオンの補給が限界に達し、電圧を上げても電流密度が増加しなくなる電流密度の最大値を示す限界電流密度以下であることが好ましい。第2の電流密度は、メッシュ形状や、他のめっき条件によって適正値は変化するので一概にいえないが、黒色度を勘案して適宜決定される。場合により第2の電流密度が10A/dmであっても黒化処理することができ、場合により、もっと高くないと黒化処理できないことがある。一般に、パターンが微細になるとより大きな電流密度が必要になる傾向がある。他の条件が同じなら、第2の電流密度は、一般に、選択した第1電流密度よりは大きい範囲から適宜選択される。第2の電流密度が大きすぎると析出金属は針状析出となり転写不良や粉落ちなどの不具合を生じる傾向がある。このため、第2の電流密度の上限は、500A/dmとすることが好ましい。また、第2の電流密度は、第1の電流密度よりも5A/dm以上高いことが好ましく、10A/dm以上高いことがさらに好ましい。第2の電流密度は、一つに限らず、二つもしくはそれ以上を段階的に変化させて黒化皮膜として析出する粒子の大きさを制御するようにしてもよい。
第1の電流密度は、前記した幾何学図形状の導電性金属層を電気めっきで作製するときの電流密度と同様であり、黒化処理工程における低通電時の電流密度は、0A/dm又は0A/dmを超えて第1の電流密度の最大値以下である。
【0074】
以上、幾何学図形状の導電性金属層がめっき用導電性基材上に形成された場合について、その形成方法と黒化処理の方法を説明したが、幾何学図形状の導電性金属層は、別の方法で形成されたものやめっき用導電性基材に形成された幾何学図形状の導電性金属層を別の基材に転写したものであってもよく、この場合、前記した黒化処理工程が適用される。このときの、サイクル率、T、Tは、前記の通りであり、高通電時の電流密度は低通電時の電流密度以上(0A/dmは除く)500A/dm以下の範囲から選択されることが好ましく、低通電時の電流密度は0A/dm又は0A/dmを超えて60A/dm以下の範囲から選択されることが好ましいが、高通電時の電流密度より小さくされる。低通電時の電流密度は、高通電時の電流密度よりも0.5A/dm低くても、また、1A/dm低くてもよく、黒化処理に適した電流密度が選択される。
【0075】
黒化処理工程においては、導電性金属層(特に、代表的には金属銅層)の表面に微粒子状の金属(特に、代表的には金属銅)が電気めっきにより析出し、これにより黒色または茶褐色を帯びるようになる。この黒色または茶褐色は、微粒子状の金属がその下の導電性金属層上に析出した結果そのように見えるようになったものであり、そのような微粒子が導電性金属層上に並んで、場合により重なって黒色金属層を形成しているといってよい。
黒化処理は導電性金属層上が黒色または茶褐色の金属層で覆われることを目的とするため、導電性金属層のめっきによる形成においては所定の皮膜の厚みを析出させる目的として電流密度を一定にする、即ち定電流による制御が一般であるが、定電流制御を黒化処理に適用した場合、被めっき面積が変化すると黒化処理に好適な電流密度が変化しその結果、通電量が不足または過剰となりやすくなる。さらに、被めっき物の形状、めっき液組成や液循環、温度条件によっても黒化処理の適正範囲は変化するため、黒化処理の電流密度の管理は、一般に繊細な管理・制御を必要とする。特にロール状やフープ状で連続的に生産する場合は、導電性基材及び絶縁層の形状によっては被めっき面積が周期的に変化する。そこで、好適な電流密度を一定にするための方法として、黒化処理工程では定電圧又はほぼ定電圧による制御で行うことが好ましい。定電圧又はほぼ定電圧による制御では主に被めっき面積に応じて流れる電流値が変化し、その結果、概ね一定の電流密度で制御することが可能となる。低通電時の電圧は0V又は0Vを超えて3V以下、高通電時の電圧は低通電時の電圧を超えて10V以下の範囲が好ましい。
【0076】
色の定量的な評価を行うために数値化することが求められ、その方法として国際照明委員会(CIE)ではいくつか規格化されているが、その中の代表的な方法としてL*a*b*表色系がある。これは、L*が明度を表し、a*は赤緑、b*は黄青の色相と彩度を示すものである。L*は完全な黒色(光の全吸収)は0で、反対に完全な白(光の全反射)は100で表される。
ディスプレイの表示面などを電磁波遮蔽する導体層パターン付き基材は良好な光透過性が求められ、そのため電磁波遮蔽用の導体層パターンによる被覆率をなるべく減少させることが好ましく、さらに外光を反射せず、透過光の輝度を引き立たせ画質を向上させるためには、導体層パターン自体は黒であることが望ましい。しかしながら導体層パターン付き基材は前記の理由からそれ自体が光透過性が高いために微細な形状の導体層パターン自体の色度(明度)を直接測定することは困難である。表面が黒化処理された金属パターン(以下、「黒化金属パターン」という)も以上と同様である。そこで、明度25の黒色を背景に、導体層パターン部分又は黒化金属パターンの明度を測定する。具体的には、導体層パターン又は黒化金属パターンの黒色面を上して、導体層パターン付き基材の下に明度25の黒色紙を敷き、明度を測定する。導体層パターンが良好な黒色ならば、明度L*は25乃至50の値となり、また色度a*とb*はともに5以下の値を示す。一方黒色の程度が不十分で銅本来の色が残存する場合は、明度L*は60以上の高い値を示し、色度a*、b*ともに赤みまたは黄色を示す5より大きい値となる。
なお、色度は分光測色計CM−508d(コニカミノルタホールディングス(株))を使用し、反射モードに設定して測定できる。本計測機器の明度及び色度を測定する測色対象部は直径8mmの円形であり、その開口部の平均表色を求めることができる。
本発明において、黒化処理における黒色度は、望ましくは完全な黒色であるが、黒化金属パターン若しくは導体層パターン又は導体層パターン付き基材とこれらの用途(例えば具体的な用途として電磁波遮蔽部材又はそれを含むフィルター若しくはディスプレイ装置)における製造技術および管理技術の高度化により、幾何学図形を有する黒化金属パターン又は導体層パターンは、必ずしも良好な黒色を必要とせず、表面の光沢を消し、反射を抑えることが可能な暗い色調、即ち茶褐色の色合いでもよく、これらの評価は上記のようにして行うことができる。
【0077】
また、めっき用導電性基材を用いて導電性金属層の生成及び黒化処理を連続して、特に、同一のめっき浴槽内で行うと、導体層形成工程と黒化処理工程の間に水洗処理、及び導電性金属層の表面処理が不要になるために製造時間の短縮・コストの低減ができ、環境負荷も低減できる。このような工程は、金属が銅であるときに特に有用である。
【0078】
めっき用導電性基材のめっき部にめっきにより析出させる金属の厚さ(めっき厚さ)は、十分な導電性を示す(このとき電磁波シールド性が十分に発現する)ためには、0.5μm以上であることが好ましく、導体層にピンホールが形成される(このとき、電磁波シールド性が低下する)可能性を小さくするためには、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、めっき厚さが大きすぎると、析出した金属は幅方向にも広がるため、転写したラインの幅が広くなり、導体層付きパターン基材の開口率が低下し、透明性、非視認性が低下する。したがって、透明性、非視認性を確保するためには、析出した金属の厚みを20μm以下とすることが好ましく、さらに、めっきの析出時間を短縮し、生産効率をあげるためには、めっきの厚みは10μm以下であることがさらに好ましい。以上のめっきの厚さは、導電性金属層の厚さとしても説明できる。黒化処理については、前述した明度を目安として処理される。
めっき部が凹部であるめっき用導電性基材を使用する場合、剥離用基材により接着剤または粘着剤を介してめっき皮膜を断線や剥離不良なく良好に剥離するために、めっきは、絶縁層より1μm程度以上高く金属を析出させるように行うことが好ましい。一方、析出する金属層の厚さに対して相対的に凹部がより深くなることにより、析出する金属層をより形状的に規正することができるという観点から、めっきにより形成される金属の厚さを絶縁層の高さの2倍以下とすることが好ましく、特に1.5倍以下、さらに1.2倍以下とすることが好ましいが、これに制限されるものではない。
めっきの程度を、析出する金属層が凹部内に存在する程度とすることができる。このような場合であっても、凹部形状が開口方向に幅広である場合には、さらには、絶縁層により形成される凹部側面の表面を平滑にできるため、導体層パターンの剥離時のアンカー効果は極めて小さくできる。また、析出する金属層の幅に対する高さの割合を高くすることが可能となり、透過率をより向上させることができる。
【0079】
上記のようにしてめっき用導電性基材上に形成された、黒化金属パターンを通常の方法で剥離することにより黒化金属パターンを得ることができる。この場合、剥離用基材として、別の基材に粘着剤層が積層されているものを使用し、黒化金属パターンが形成されているめっき用導電性基材の面に粘着剤を向けて、剥離用基材を圧着後、剥離し、黒化金属パターンを剥離用基材に転写してめっき用導電性基材から黒化金属パターンを剥離することもできる。黒化金属パターンは適宜、この剥離用基材から剥離して取得される。
【0080】
本発明における黒化金属パターンは、平面形状として、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などの貫通孔がある金属箔、このような形状の凹部がある金属箔、このような形状の個々に分離された金属箔等であり、めっき後にめっき用導電性基材から剥がしやすくするためには、貫通孔がある場合でも連続した箔であることが好ましい。なお、形状は、目的に応じて選択される。このような形状は、組合せて使用できる。また、貫通孔又は凹部の大きさ、分布密度は、目的応じて適宜決定される。前記しためっき用導電性基材を用いて黒化金属パターンを作製した場合、その形状は、めっき用導電性基材のめっき部の形状に対応したものとなる。
【0081】
図5は黒化金属パターンの一例である穴あき銅箔の一部を示す底面図である。図中、3個の同心円からなる一組の円群が6組描いてあるが、これらは、左右上下方向に適宜の回数千鳥状に繰り返されているものとする。また、図5中のA−A′断面図に相当するものを図6に示すが、図6においては、黒化金属パターンがめっき用導電性基材上に存在する状態を示す。
黒化金属パターン9には、穴10が貫通している。穴10の周りには、段差部11及びこの段差部11に続いて小さな幅の傾斜部12が存在する。段差部11及び傾斜部12は、導電性基材2の上の絶縁層3及びこれにより形成される導電性基材2の上の凹部に対応するものであり、傾斜部12は、絶縁層3の末広がりの傾斜部に対応して形成される。すなわち、傾斜部12には図6において、内周(最小径)と外周(最大径)が表現されるが、直径の小さな内周(段差部11の端)から直径の大きな外周に向かって傾斜している。段差部11は、めっきがめっき用導電性基材の凹部から絶縁層3に覆い被さるように形成された部分に対応する。従って、段差部11における黒化金属パターン9の厚さは、絶縁層3に覆い被さるように形成された部分であるため、穴10に近い部分ほど厚さが小さくなり、また、その底面は、めっき部である凹部に対応する黒化金属パターン9の底面より、絶縁層3の厚さの分だけ高くなる。
【0082】
図7は、黒化金属パターンの別の例(例えば、黒化銅箔金属層からなる)を示す断面図であり、図6と同様にめっき用導電性基材上に存在する状態を示す。導電性基材2上の凹部に析出しためっきは、絶縁層3の上に乗り上げるように成長して貫通孔はないが、絶縁層3に対応した凹部を有する黒化金属パターン9となる。上記の絶縁層3を紙面の表裏方向に伸ばし、幅を小さくしたものにすることにより、黒化金属パターンに微細は溝を形成することができる。この溝を内部が埋まらないように適当な材料で塞ぐことにより、微細な液体又は気体の流路をたやすく形成することができる。従って、ヒートシンク、微量薬物の供給流路等に応用が可能である。なお、上記の適当な材料としては、溝や凹部のない平らな銅箔、上記の黒化金属パターン自体(溝が対向するよう、又は、溝を通す面が対向するが溝が重ならないように貼り合わせる)などがあり、上記の黒化金属パターンを複数枚、同一の向きに積層してもよく、最後の露出している溝を含む面は、適当な材料で塞ぐことができる。
【0083】
本発明において、導体層パターン付き基材は、例えば、
(イ)前記のめっき用導電性基材上に黒化金属パターン(導体層パターン)をめっき部に形成する工程
及び
(ロ)上記めっき用導電性基材上の黒化金属パターンを別の基材に転写する工程
を含む方法により製造される。
上記(イ)の工程は前記したとおりである。次に、上記(ロ)の工程について説明する。
【0084】
前記した別の基材(導体層パターンが転写される基材)としては、ガラス、プラスチック等からなる板、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどがある。ガラスとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、強化ガラス等のガラスを使用することができる。
プラスチックとしては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチックの中では、透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。別の基材の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱い性から好ましい。
【0085】
本発明における別の基材は、プラスチックフィルムが好ましい。このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組合せた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが特に好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚さは特に制限はないが、1mm以下のものが好ましく、厚すぎると可視光透過率が低下しやすくなる傾向がある。また、薄く成りすぎると取扱い性が悪くなることを勘案すると、上記プラスチックフィルムの厚さは5〜500μmがより好ましく、50〜200μmとすることがさらに好ましい。
これらのプラスチックフィルム等の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波の漏洩を防ぐための電磁波シールドフィルムとして使用するためには、透明であるもの(すなわち、透明基材)が好ましい。
【0086】
上記の別の基材の黒化金属パターン(導体層パターン)が転写される面は、転写する際に粘着性を有していることが必要である。そのためには、基材自体が必要な粘着性を有していてもよいが、転写面に粘着層を積層しておくことが好ましい。
上記の粘着層は、転写時に粘着性を有しているもの又は加熱若しくは加圧下に粘着性を示すものが好ましい。粘着性を有しているものとしては、ガラス転移温度が20℃以下の樹脂が好ましく、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂を用いることが最も好ましい。粘着層に用いる材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂等を使用することができる。加熱時に粘着性を示す場合、そのときの温度が高すぎると、透明基材にうねりやたるみ、カール等の変形が起こることがあるので、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂のガラス転移点は80℃以下であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂の重量平均分子量は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500未満では樹脂の凝集力が低すぎるために金属との密着性が低下するおそれがある。
【0087】
上記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのポリマを構成するモノマーは、必要に応じて、2種以上共重合させて得られるコポリマとして用いてもよいし、以上のポリマ又はコポリマを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
【0088】
活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能基として、アクリル基(アクリロイル基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、ビニル基、アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が利用される。
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。また、上記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
【0089】
熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0090】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。
【0091】
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0092】
本発明で粘着性を有しているもの又は粘着性を示すもの(以下、これらを、「粘着剤」という)には、必要に応じて、架橋剤、硬化剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。
【0093】
粘着層の厚さは、薄すぎると十分な強度を得られないため、めっきで形成された金属層を転写する際に、金属が粘着層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着層の厚さが厚いと、粘着層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に、粘着層の変形量が多くなるため、粘着層の厚みは30μm以下が好ましく、15μm以下がさらに好ましい。
別の基材に粘着剤を塗布して形成した粘着層を有するフィルムを、金属層が形成されている面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要ならば加熱される。
【0094】
本発明おける導体層パターン付き基材の導体層パターン(本発明では、片面は少なくとも黒化処理されている)をディスプレイ前面の電磁波遮蔽層として利用するときは、そのライン幅は、40μm以下、ライン間隔は50μm以上の範囲とすることが好ましい。また、導体層パターンの非視認性の観点からはライン幅は25μm以下、可視光透過率の点からライン間隔は120μm以上がさらに好ましい。ライン幅は、あまりに小さく細くなると表面抵抗が大きくなりすぎて遮蔽効果に劣るので1μm以上が好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。本発明によって得られる導体層パターンをディスプレイ前面に使用する場合、開口率は50%以上が必要であるが、60%以上がさらに好ましく、特に80%以上が好ましい。ライン間隔が大きくなり過ぎると、電磁波遮蔽性が低下するため、ライン間隔は1000μm(1mm)以下とするのが好ましい。なお、ライン間隔は、幾何学図形等の組合せで複雑となる場合、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。可視光透過率の点からライン間隔は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、120μm以上が特に好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。
【0095】
また、導体層パターン(黒化金属パターン)の厚みは100μm以下が好ましい。ディスプレイ前面の電磁波遮蔽シートとして適用した場合、厚みが薄いほどディスプレイの視野角が広がり電磁波遮蔽材料として好ましく、また、金属層をめっきにより形成させるのにかかる時間を短縮することにもなるので40μm以下とすることがより好ましく、18μm以下であることがさらに好ましい。あまりに厚みが薄いと表面抵抗が大きくなりすぎて電磁波遮蔽効果に劣るようになり、また、導体層パターンの強度が劣り、転写時の導電性基材からの剥離が困難になるため0.5μm以上が好ましく、さらに1μm以上がさらに好ましい。
【0096】
上記のめっき用導電性基材を用いた導体層パターン付き基材の作製例を次に示す。
図8は、導体層パターン付き基材の作製例の前半を示す断面図である。また、図9はその後半を示す断面図である。
上記のめっき用導電性基材1上に、前記しためっき工程により、凹部4内にめっきを施し、導体層パターン(黒化金属パターン)13を形成する(図8(e))。ついで、別個に準備された転写用基材14、これは、別の基材(透明基材)15に粘着剤層16が積層されている。導体層パターン13が形成されためっき用導電性基材1に転写用基材14を粘着剤層16を向けて圧着する準備を行う(図8(f))。
ついで、導体層パターンが形成されためっき用導電性基材1に転写用基材14を粘着剤層16を向けて圧着する(図9(g))。このとき、粘着剤層16が絶縁層7に接触してもよい。
ついで、転写用基材14を引きはがすと導体層パターン13は、その粘着剤層16に接着してめっき用導電性基材1の凹部4から剥離され、この結果、導体層パターン付き基材17が得られる(図9(h))。
【0097】
図10は、めっき用導電性基材の凹部内にめっきにより導体層パターンを形成した状態を示す断面図、図11は、その凹部内の導体層パターンを転写して得られた導体層パターン付き基材の断面図を示す。
めっき用導電性基材にめっきした際、めっきは等方的に生長するため、導電性基材の露出部分から始まっためっきの析出は、それが進むと凹部からあふれて絶縁層に覆い被さるように突出して析出する。転写用基材への貼着の観点から、突出するようにめっきを析出させることが好ましい。しかし、このとき、めっきの析出を凹部4内に収まる程度に施しても良い。この状態を図10に示す。この場合でも、図11に示すように、転写用基材を圧着することにより、導体層パターン(黒化金属パターン)13を粘着剤層16を介して別の基材(透明基材)15に転写して、めっき用導電性基材1から導体層パターン13を剥離して、導体層パターン付き基材17を作製することができる。
【0098】
本発明により得られる導体層パターン付き基材の導体層パターンを、さらに、黒化処理して、両面が黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材とすることができる。このためには、上記図9(h)又は図11に示すような導体層パターン付き基材17の導体層パターン(黒化金属パターン)13を黒化処理して両面を黒化する方法がある。
黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材としてディスプレイの前面において利用するときは、一般に、黒色層を設けた方の面がディスプレイの視聴者側に向くようにして用いられるが、両面が黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材であれば、そのどちらの面であっても黒化処理された面が視聴者側に向くようになるので、電磁波遮蔽部材としての製品設計の幅が広がる。
【0099】
上記の黒化処理の方法は、導体層パターン(黒化金属パターン)に黒色層を形成する手法であるが、このためには、金属層にめっきや酸化処理、印刷などの様々な手法を用いることができる。
【0100】
別の基材に転写した後に黒化処理工程を行うときの黒化処理としては、前記した黒化処理を施すことができるが、黒色ニッケルめっきなどの黒色めっきを行うこともできる。黒色ニッケルめっきは前記した方法を利用することができる。については、前記した方法が利用できる。ただし、電流密度は0.5〜3.0A/dmが好ましい。
【0101】
本発明における導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽体として用いる場合は、そのまま、ディスプレイ画面に適宜別の接着剤を介して又は介さないで貼着して使用することができるが、他の基材に貼着してからディスプレイに適用してもよい。他の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波を遮断するために使用するには透明であることが必要である。
【0102】
図12に導体層パターン付き基材が他の基材に貼着されて得られた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。図12において、基材(別の基材)15に積層されている粘着剤層16上に銅からなる導体層パターン(金属パターン)13が貼り付けられ、この上に他の基材18が積層されており、導体層パターン13は、粘着剤層16に埋設されている。これは、導体層パターン付き基材の導体層パターン13側を他の基材18に加熱又は非加熱下に加圧することにより作製することができる。この場合、粘着剤層16が十分な流動性を有するものであるか十分な流動性を有するうちに、適度な圧力を加えることにより導体層パターンを粘着剤層16に埋設する。基材(別の基材)15及び基材(他の基材)18として、透明性を有し、しかもその表面の平滑性が優れるものを使用することにより、透明性が高い電磁波遮蔽部材を得ることができる。
図13に導体層パターン付き基材が保護樹脂で覆われた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。基材(別の基材)15に積層されている粘着剤層16上に金属からなる導体層パターン13が貼り付けられており、これらは、透明な保護樹脂19によって被覆されている。
【0103】
図14は、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。この電磁波遮蔽体は、図13の電磁波遮蔽部材が、基材15の導体層パターン13がある面とは反対の面で、接着剤層20を介して他の基材21が貼り合わされたものである。
図15は、さらに、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。図14において、基材(別の基材)15に粘着剤層16を介して金属からなる導体層パターン13が接着されており、その上を透明樹脂からなる接着剤又は粘着剤22により被覆され、さらにその上に保護フィルム23が積層されている。基材15のもう一方の面には接着剤層20を介してガラス板等の他の基材21が貼着されている。この電磁波遮蔽部材では、基材(別の基材)15に粘着剤16を介して接着されている導体層パターン13を有する導体層パターン付き基材の導体層パターン13が存在する面を、透明な接着剤または粘着材22によりコーティングし、さらに保護フィルム23を積層し、ついで、得られた積層物の基材15のもう一方の面(何も積層されていない面)に接着剤を塗布して接着剤層16を形成し、これを他の基材21に押しつけて接着することにより作製することができる。上記の透明樹脂22としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほかに活性エネルギー線で硬化する樹脂をを主成分とする接着剤または粘着剤を用いることもできる。活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることは、それが瞬時に又は短時間に硬化することから、生産性が高くなるので好ましい。
【0104】
本発明における導体層パターン付き基材において、導体層パターンの開口率を高くすることができ、これにより透光性を優良にできる。本発明における導体層パターン付き基材は、透光性電磁波遮蔽部材として使用することができる。
【0105】
また、本発明における導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材として、ディスプレイ等の前面に用いる場合には、反射防止等を含む視認性確保を図るために導電層パターンは、表面が黒化処理されたものであることが好ましい。電磁波遮蔽部材はその前面が黒色から茶褐色の暗色であることがハイコントラストの実現及びディスプレイの電源切断時に画面が黒いこと等の要求を満たすことから好ましいとされている。
【0106】
表面が黒化処理された導体層パターンの防錆処理としては公知の手段としてクロメート処理、ベンゾトリアゾールなどを使用することができる。また、市販されている防錆剤を使用することもできる。また、表面が黒化処理された導電層を別の基材に転写した後に再度黒化処理を施す場合に、防錆処理を行うことが望ましい。防錆処理としては公知の手段としてクロメート処理、ベンゾトリアゾールなどを使用することができる。また、市販されている防錆剤を使用することもできる。また、黒化処理層つき導体層パターンを別の基材に転写した後に再度同じ方法で黒化処理層を形成する場合も同様に防錆処理を行うことが望ましい。
【0107】
回転体を用いることにより電解めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得ることができる。すなわち、図16において電解浴槽101内の電解液(メッキ液)102が陽極103とドラム電極などの回転体104の間のスペースに配管105とポンプ106により供給されるようにする。陽極103と回転体104の間に電圧をかけ、回転体104を一定速度で回転させると回転体104の表面に導体層が電解析出し、さらに、陽極103とは別の陽極107と回転体104の間に陽極103と回転体104の間よりも大きな電圧をかけることにより、析出した導体層パターンの上に黒色乃至茶褐色の皮膜を析出させることができる。陽極107は一つに限らず、二つもしくはそれ以上取り付け、段階的に電圧を変化させて黒化皮膜として析出する粒子の大きさを制御してもよい。
【0108】
なお、図16に示す状態では、第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための陽極103と、第2の電流密度の下に導電性金属層の表面にその表面が黒色乃至茶褐色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための陽極107とが、互いに離れてめっき液の中に浸漬されているが、さらに、各陽極(電極)103、107の間に、絶縁体で構成された遮断部材151を設けてもよい。遮断部材151を設けることにより、第1の電流密度と第2の電流密度とを維持しやすくなる。
【0109】
導電性基材が回転体からなる電性基材又は回転体に取り付けた導電性基材である場合、遮断部材151は板状に形成されて各電極103、107の間に設けられており、遮断部材151の基端部側は、電解浴槽101の内壁に一体的に固定されており、遮断部材151の先端部側は、導電性基材(回転体104)の近傍に位置している。したがって、導電性基材104と遮断部材151の先端部との間では、めっき液が通じている。
【0110】
また、陽極103、107の材質はチタニウム金属を基体とした表面に白金族金属又はその酸化物の薄膜を構成した不溶性陽極などであることが好ましい。さらにその形状としては特に限定されるわけではないが、平板状、棒状、多孔質状、メッシュ状等が挙げられる。
【0111】
すなわち、たとえば、図17に示すように、長手方向に垂直な断面が長方形状である複数の陽極103a(陽極103に対応する陽極)と、長手方向に垂直な断面が長方形状である単数もしくは複数の陽極107b(陽極107に対応する陽極)とを、回転体104の回転中心軸CL1の円周上に配置した構成であってもよい。
【0112】
黒化処理された導体層パターンは、電解液102の外で、形成された導体層パターン108に接着性支持体109を圧接ロール110によって圧接させながら、連続的に回転体104から剥離しつつ接着性支持体109に転写させ、導体層パターン付き接着支持体111をロールに巻き取ることができ、このようにして導体層パターンを製造することができる。なお、回転中の回転体から導体層パターンが剥離された後に、電解液に再び浸漬される前に回転体又は回転体に固定された導電性基材の表面をブラシロールで清掃するようにしてもよい。図示していないが、陽極の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水きりロールを設置してもよい。水切りロールによってせき止められた電解液は陽極の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間には消費された金属イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する工程、また各成分の分析を行う工程を追加することが望ましい。
上記において、導体層パターンは、導体層パターン付き接着支持体111として、得られるようになっているが、接着性支持体109を使用することなく、導体層パターンを回転体から剥離して回収するようにしても良い。
【0113】
さらには、前記第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程を行うための第1の陽極と、前記第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面にその表面が黒色乃至茶褐色になるように金属を析出させる黒化処理工程を行うための第2の陽極とを兼用し、前記第1の電流密度の下で前記導電層形成工程の形成後、前記第2の電流密度の下で前記黒化処理工程を行うようにしてもよい。
【0114】
以上で詳細に説明しためっき部パターン有するめっき用導電性基材において、そのめっき部パターンは、適当な広さで作製される。
【0115】
そのめっき部パターンの領域を領域Aとすると、本発明に係るめっき用導電性基材には、そのまわりに、電磁波遮蔽部材等のアース部に対応する領域(領域Bという)を備えることができる。このとき、領域Aと領域Bは同一のパターンでもよい。また、領域Aにおける凹部の面積比率を、領域Bにおける凹部の面積比率と同じ又はそれよりも大きくすることが好ましく、10%以上大きくすることはさらに好ましい。凹部の面積比率は、平面図で見たときに、ただし、各領域の全面積に対する各領域の凸部における露出部分を除いた部分の面積の比率をいう。また、領域Bの凹部比率を0としてもよいが、この場合には、めっき用導電性基材上にめっきによりベタの金属膜が周辺に形成される。ベタの金属膜は転写に際し、割れやすいので、望ましくは、領域Bの凹部の面積率は40%以上とすることが好ましく、また、97%未満であることが好ましい。
【0116】
領域Bにおいて、凹部のパターンによって描かれる幾何学図形状は、前記説明したものが使用できるが、改めて例示すると、
(1)メッシュ状幾何学的模様
(2)所定間隔で規則的に配列された方形状幾何学的模様
(3)所定間隔で規則的に配列された平行四辺形模様
(4)円模様又は楕円模様
(5)三角形模様
(6)五角形以上の多角形模様
(7)星形模様
等がある。
【0117】
また、領域Bにおける絶縁層及び凹部の形成等は、前述した領域Aと同様に行うことができる。
【0118】
本発明において、透光性の電磁波シールド部の外側をアース部として、使用することが好ましい。このアース部は、透光性の電磁波シールド部と同様のパターンを有していてもよく、異なったパターンを有していてもよい。また、アース部は、前述したようなパターン又は全くベタ状の膜であってもよい。アース部は、その内側の透光性の電磁波シールド部と導通していることが好ましい。
【0119】
めっき用導電性基材の少なくとも透光性の電磁波シールド部の導体層パターンに対応した部分が矩形体又は回転体である場合、その外側で、透光性の電磁波シールド部の導体層パターンに対応した部分を囲むように、または、対向する2片にそって、連続した帯状に前記凸部の上面と同じ高さの部分(絶縁層がない)を設けることができる。これにより、導電性基材へのめっき後、導体層パターンの部分に連続した帯状のめっき箔を有する導体層パターン金属層を形成することができる。例えば、そのパターンの平面図を図18に示す。図18(a)中、黒い部分がめっきにより形成された導体層パターンとそれに連続した箔部分である。この箔部分があることにより、箔自体が支持体代わりとなり導体層パターンを導電性基材から剥離しやすくなる。得られた導体層パターンをその後の工程中に両端部分で十分支えることができるため、取扱に優れる。場合により、接着性支持体を用いず剥離することもできる。箔部分は後で不要分を切り落とすことができ、また、箔部分をある程度の幅で残してアース部として利用することもできる。前記のパターンの別の例を図18(b)に示す。これは、導電性基材として回転体を使用した場合、回転体に導電性支持体を取り付けた場合などに作製できる導体層パターン金属層の一部の平面図である。これにより、透光性の電磁波シールド部の四辺にアース部を形成することができる。本発明で得られる導体層パターンにおいては、電磁波遮蔽部材を作製したときに、遮蔽した電磁波を電流としてアースするために網目状の導体層パターンの周囲に帯状の導体層(額縁部分)が導通状態で連続しているパターンがより好ましい。
【0120】
本発明において、めっき用導電性基材上に作製された導体層パターンは、前述したのと同様の転写法により、中間の接着性支持体を使用して導電性支持体から導体層パターンを転写剥離し、さらに、この中間の接着性支持体から最終の接着性支持体に前記転写法と同様にして導体層パターンを転写してもよい。また、転写された導体層パターンを有する中間の接着性支持体と最終の接着性支持体を導体層パターンを挟んで重ねて圧着して電磁波遮蔽体を作製することもできる。この場合の圧着方法としては、常温下又は加熱下にプレス機により加圧する方法、常温下又は加熱下に加圧ロール間を通過させる方法等がある。
【0121】
本発明における導体層パターン付き基材を遮蔽体として用いる場合には、反射防止層、近赤外線遮蔽層等をさらに積層してもよい。めっき用導電性基材上に析出した金属を転写する基材そのものが反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。さらに、導体層パターン層に樹脂をコーティングする際に用いられるカバーフィルムに、反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。
【0122】
前記の導体層パターン付き基材は、電磁波遮蔽部材以外にも、タッチパネル部材、太陽電池用電極取り出し若しくは配線、デジタイザー部材、スキミングバリアカード部材、透明アンテナ、透明電極、不透明電極、電子ペーパー用部材、調光フィルム用部材として応用が可能である。
【実施例1】
【0123】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
レジストフィルム(フォテックH−Y920、日立化成工業(株) 製)を750×1100mmのステンレス(SUS316L、仕上げ3/4H、厚さ0.3mm、日新製鋼(株)製)板に貼り合わせた。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が30μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°で、格子状に形成したネガフィルムを、レジストフィルムを貼り合わせたステンレス板の上に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムの上から、紫外線を120mJ/cm照射した。さらに、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、SUS板の上にライン幅30μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45°のレジストマスクを形成した。さらに、40℃に加温した塩化第二鉄水溶液(45°B、鶴見曹達(株)製)を用いて、SUS板をエッチングした。エッチングは、SUS板のライン幅が20μmになるまで行った。次いで、5%水酸化ナトリウム溶液を用いて、SUS板の上に形成されたレジストフィルムを剥離して、格子模様状のパターン(ライン幅、すなわち、凸部上面の幅20μm、ピッチ300μm、凸部の高さ15μm、凸部の断面形状は曲面(図2−cと同様))を形成し、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有するめっき用導電性基材を作製した。
【0124】
なお、めっき用導電性基材の外周部40mmに凸部上面の幅80μm、ピッチ300μm、凸部の高さ15μmで凸部の網目状パターンのアース対応部(領域B)を形成した。
【0125】
(絶縁層の形成)
PBII/D装置(TypeIII、株式会社栗田製作所製)によりDLC膜を形成する。チャンバー内にレジスト膜が付いたままのステンレス板を入れ、チャンバー内を真空状態にした後、アルゴンガスで基板表面のクリーニングを行った。次いで、チャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを導入し、膜厚0.1μmとなるように中間層を成膜した。次いで、トルエン、メタン、アセチレンガスを導入し、膜厚が2μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した。そのときレジスト膜により形成された凸部両側のDLC膜の厚さは、2μmであった。境界面の角度は45〜51度であった。なお、絶縁層の厚さ及び境界面の角度の測定は導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、レジスト膜の両側を測定したので計10点の最大値と最小値を採用した。
【0126】
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸部パターンの除去)
絶縁層が付着したステンレス板を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。凸部パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た。
凸部の形状は、凸部上面端部におけるDLC膜の厚さは1.8μm、凹部におけるDLC膜の厚さは2μmであった。この導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。凸部のピッチは300μmであった。
【0127】
(銅めっき)
次いで、絶縁膜を有する導電性基材を陰極となる回転ドラム電極にテフロン(登録商標)テープを使用して固定し、電解銅めっきを行った。
回転ドラム電極の主な仕様は次の通りである。
【0128】
ドラム直径 :425mm
ドラム幅 :900mm
めっき槽 :直径600mm、液容量:80L
陽極 :不溶性電極板
ドラム回転数:0.4rpm
【0129】
電解銅めっき浴の浴組成及び電解条件は次の通りである。
ピロリン酸銅の濃度:100g/L
ピロリン酸カリウムの濃度:250g/L
アンモニア水(30%)使用量:2mL/L
pH:8〜9
浴温:30℃
陽極:チタン基材酸化イリジウムコーティング板
めっき浴の攪拌は穏やかな液循環のみとした。導電性基材の凸部の上面に、析出した金属の厚さが5μmになるまで電流密度10A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.1Ω/□であった。この後、定電流のパルス通電処理として、高通電条件を150A/dm、低通電条件を10A/dmとし処理時間をそれぞれ5ms、10msとすることでサイクル率(E)を33%に設定して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体パターンがついた導電性基材をめっき浴から取り出し、水洗し、乾燥した。
【0130】
(粘着フィルムの作製)
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A−4100、東洋紡績(株)製)の表面にプライマー(HP―1、日立化成工業(株) 製)を厚さ1μm)に、粘着層としてアクリルポリマー(HTR−280、ナガセケムテックス(株)製)を厚さ10μmに順次塗布して粘着フィルムを作製した。
【0131】
(転写)
この粘着フィルムの粘着剤面と、前記導電性基材の表面が黒化処理された銅めっきを有する面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPaとした。次いで、導電性基材に貼り合わせた粘着フィルムを剥離したところ、前記導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着フィルムに転写されていた。
これにより、ライン幅28μm、ラインピッチ300μm、導体厚さ5μmの金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。
転写後の導電性基材を観察した結果、絶縁膜が剥離している箇所はなかった。
ライン幅、導体層厚さの測定は、得られた導体層パターン付き基材を一部切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、凹部の両側を測定したので計10点の値の最大値と最小値を採用した(以下も同様)。ラインピッチの測定は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率200倍で観察して測定し、測定は、無作為の5点で行った(以下も同様)。
【0132】
(保護膜の形成)
前記で得られた表面が黒化処理された導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、UV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングし、ポリカーボネートフィルム(マクロホールDE、バイエル株式会社製、75μm)でラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた後、紫外線ランプを用いて1J/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0133】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を分光測色計CM−508d(コニカミノルタホールディングス(株)製)を用いて測定した。測定は基材の下部に明度L*=25の黒色紙を敷いて反射モードでし、C光源10°のSCI(正反射光込み)方式で行った(以下も同様)。
【0134】
測定対象は、表面が黒化処理された導体層パターンの外側に形成したアース部とし、アース部の開口面積が約50%である。測定したところ、明度L*は34であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は0.4、b*は0.9であり、いずれも色相の低い値が得られた。また、導体層パターンのライン形状は黒の異常析出がなく良好な形状であった。
【実施例2】
【0135】
(凸部パターンの形成)
レジストフィルム(フォテックRY3525(25μm厚、日立化成工業株式会社製) を150mm角のチタン板(鏡面研磨仕上げ、厚さ0.5mm、ミクロン工業(株)製)の両面に貼り合わせた。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が15μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°(正四角形のなかに、ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で、格子状にパターンが120mm角のサイズで形成されているネガフィルムを、チタン板の片面に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置したチタン板の上下から、紫外線を120mJ/cm照射した。さらに1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、チタン板の上にライン幅16〜19μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45度のレジスト膜からなる格子状パターンを形成した。なお、凸部パターンが形成された面の反対面は、全面露光されているため、現像されず、全面にレジスト膜が形成されている。
【0136】
(絶縁層の形成)
実施例1と同様にしてDLC膜による絶縁膜を形成した。
【0137】
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸部パターンの除去)
絶縁層が付着したチタン基板を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。凸部パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た(図3(d)に対応する)。
凹部の形状は、開口方向に向かって幅広になっており、その凹部側面の傾斜角は、前記境界面の角度と同じであった。凹部の深さは2μmであった。また、凹部の底部での幅は、16〜19μm、開口部での幅(最大幅)は21〜27μmであった。凹部のピッチは300μmであった。
【0138】
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材のパターンが形成されていない面に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、電解銅めっきを行った。電解銅めっき浴の浴組成は実施例1と同一とした。
めっき浴の攪拌は穏やかなエアレーションを行った。導電性基材の凹部の金属面上に、析出した金属の厚さが5μmになるまで電流密度10A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.1Ω/□であった。この後、定電流のパルス通電処理として、高通電条件を250A/dm、低通電条件を10A/dmとし処理時間をそれぞれ10ms、60msとすることでサイクル率(E)を14%に設定して引き続き10秒間めっきを行い、表面を黒化した表面が黒化処理された導体パターンがついた導電性基材をめっき浴から取り出し、水洗し、乾燥した。
【0139】
(転写用粘着フィルムの作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の表面にプライマー(HP―1、日立化成工業株式会社製)を厚さ1μm)に、粘着層としてアクリルポリマー(HTR−280、長瀬ケムテック(株)製)を厚さ10μmに順次塗布して転写用粘着フィルムを作製した。
【0140】
(転写)
上記転写用粘着フィルムの粘着層の面と、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき転写用版に貼り合わせた粘着フィルムを剥離したところ、上記めっき用導電性基材上に析出した銅が粘着フィルムに転写されていた。これにより、ライン幅20〜25μm、ラインピッチ300±2μm、導体層厚さが平均で5μmの格子状金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。導体層の形状は、凹部の形状を反映して、図5(h)に示されるように下部から上部(粘着層)に向かって幅広になっており、さらに凹部からあふれた部分が傘のように広がっていた。
転写後のめっき用導電性基材の表面を観察した結果、絶縁層が剥離している箇所はなかった。
【0141】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、UV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングし、ポリカーボネートフィルム(マクロホールDE、バイエル株式会社製、75μm)でラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた後、紫外線ランプを用いて1J/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0142】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を実施例1と同様に測定した。
測定対象は、表面が黒化処理された導体層パターンとし、開口面積は約80%である。測定したところ、明度L*は40であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は2.2、b*は1.7であり、いずれも色相の低い値が得られた。
また、導体層パターンのライン形状は黒の異常析出がなく良好な形状であった。
【実施例3】
【0143】
(凸部パターンの形成)
レジストフィルムをフォテックRY3415(15μm厚、日立化成工業株式会社製)にし、導電性基材を150mm角のチタン板(#400研磨仕上げ、厚さ0.5mm、ミクロン工業(株)製)の両面に貼り合わせた(図3(a)に対応する)。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が15μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°(正四角形のなかに、ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で、格子状にパターンが120mm角のサイズで形成されているネガフィルムを、チタン板の片面に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置したチタン板の上下から、紫外線を120mJ/cm照射した。さらに1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、チタン板の上にライン幅16〜19μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45度のレジスト膜からなる格子状パターンを形成した。突起部の導電性基材との接触部の幅(d)は、この最大幅より0〜約1μm小さかった。また、突起部の最小幅は、最大幅(d)より0〜約2μm小さく、突起部の導電性基材との接触部からわずかに高い箇所の幅である。これらは、倍率3000倍で断面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察することにより実測した。測定点は5点以上とした。
なお、凸部パターンが形成された面の反対面は、全面露光されているため、現像されず、全面にレジスト膜が形成されている。
【0144】
(絶縁層の形成、凹部の形成;絶縁層の付着した凸部パターンの除去)
実施例2と同様にDLC膜による絶縁層を形成し、その後凸部パターンを除去した。
【0145】
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材のパターンが形成されていない面に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、電解銅めっきを行った。電解銅めっき浴の浴組成及び電解条件は次の通りである。
硫酸銅(五水和物)の濃度:200g/L
硫酸の濃度:100g/L
塩酸(35%)使用量:0.2mL/L
添加剤:マイクロフィルVF−AN(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド塩;メルテックス(株)製)0.3mL/L
マイクロフィルVF−BN(界面活性剤;メルテックス(株)製)15mL/L
浴温:25℃
陽極:チタン基材白金コーティング板
めっき浴の攪拌はエアレーションを行い液が十分に攪拌するようにした。導電性基材の凹部の金属面上に、析出した金属の厚さが4μmになるまで電流密度10A/dmでめっきした。この段階での析出した金属は、赤色であり、導電度は、0.05Ω/□であった。この後、エアレーションを止めて液攪拌をなくし、この後、定電流のパルス通電処理として、高通電条件を85A/dm、低通電条件を0A/dmとし処理時間をそれぞれ10ms、5msとすることでサイクル率(E)を67%に設定して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体パターンがついた導電性基材をめっき浴から取り出し、水洗し、乾燥した。
【0146】
(転写用粘着フィルムの作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A−4100、東洋紡績(株)製)の表面にプライマー(HP―1、日立化成工業(株)製)を厚さ1μm)に、粘着層としてアクリルポリマー(HTR−280、長瀬ケムテック(株)製)を厚さ10μmに順次塗布して転写用粘着フィルムを作製した。
【0147】
(転写)
上記転写用粘着フィルムの粘着層の面と、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき転写用版に貼り合わせた粘着フィルムを剥離したところ、上記めっき用導電性基材上に析出した銅が粘着フィルムに転写されていた。これにより、ライン幅20〜25μm、ラインピッチ300±2μm、導体層厚さが平均で5μmの格子状金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。導体層の形状は、凹部の形状を反映して、図5(h)に示されるように下部から上部(粘着層)に向かって幅広になっており、さらに凹部からあふれた部分が傘のように広がっていた。
転写後のめっき用導電性基材の表面を観察した結果、絶縁層が剥離している箇所はなかった。
【0148】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、UV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングし、ポリカーボネートフィルム(マクロホールDE、バイエル株式会社製、75μm)でラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた後、紫外線ランプを用いて1J/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0149】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を実施例1と同様に測定した。測定対象は、表面が黒化処理された導体層パターンとし、開口面積は約85%である。測定したところ、明度L*は43であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は1.1、b*は1.3であり、いずれも色相の低い値が得られた。
また、導体層パターンのライン形状は黒の異常析出がなく良好な形状であった。
【実施例4】
【0150】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
レジストフィルムをフォテックRY3415(15μm厚、日立化成工業株式会社製)にし、導電性基材を750×1200mmのチタン板(#400研磨仕上げ、厚さ0.5mm、ミクロン工業(株)製)に貼り合わせた。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が15μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°で、格子状にパターンが形成されているネガフィルムを、チタン板の片面に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置したチタン板の上下から、紫外線を120mJ/cm照射した。さらに1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、チタン板の上にライン幅16〜19μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45度のレジスト膜からなる格子状パターンを形成した。突起部の導電性基材との接触部の幅(d)は、この最大幅より0〜約1μm小さかった。また、突起部の最小幅は、最大幅(d)より0〜約2μm小さく、突起部の導電性基材との接触部からわずかに高い箇所の幅である。これらは、倍率3000倍で断面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察することにより実測した。測定点は5点以上とした。
なお、凸部パターンが形成された面の反対面は、全面露光されているため、現像されず、全面にレジスト膜が形成されている。
【0151】
(絶縁層の形成)
基材をチタン板に変えた以外は、実施例1と同様にしてDLC膜を形成した。
そのときレジスト膜により形成された凸部両側のDLC膜の厚さは、2μmであった。境界面の角度は45〜51度であった。なお、絶縁層の厚さ及び境界面の角度の測定は導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、レジスト膜の両側を測定したので計10点の最大値と最小値を採用した。
【0152】
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸部パターンの除去)
絶縁層が付着したチタン板を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。凸部パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た(図3(d)に対応する)。
凸部の形状は、凸部上面端部におけるDLC膜の厚さは1.8μm、凹部におけるDLC膜の厚さは2μmであった。この導電性基材は、凸部上面以外は絶縁膜で覆われたものであった。凸部のピッチは300μmであった。
(銅めっき)
次いで、絶縁膜を有する導電性基材を陰極となる回転ドラム電極にテフロン(登録商標)テープを使用して固定し、実施例1と同一の設備、浴で電解銅めっきを行った。
めっき通電処理を以下の条件で行った。
導電性基材の凹部の金属面上に、析出した金属の厚さが4μmになるまで電流密度8A/dmでめっきした。この後、定電圧のパルス通電処理として、高通電条件を7.5V、低通電条件を0Vとし処理時間をそれぞれ3ms、100msとすることでサイクル率(E)を3%に設定して引き続き5秒間めっきを行い、表面を黒化した。表面が黒化処理された導体パターンがついた導電性基材をめっき浴から取り出し、水洗し、乾燥した。
転写用粘着フィルムの製造、転写及び保護フィルムは実施例2と同様にして処理を行った。
【0153】
(明度及び色度の測定)
得られた導体層パターン付き基材の明度及び色度を実施例1と同様に測定した。測定対象は、表面が黒化処理された導体層パターンとし、開口面積は約85%である。測定したところ、明度L*は43であり好適な値の範囲内であった。また、色度はa*は2.8、b*は2.2であり、いずれも色相の低い値が得られた。
また、導体層パターンのライン形状は黒の異常析出がなく良好な形状であった。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明のめっき用導電性基材の一例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を断面図。
【図4】中間層を有するめっき用導電性基材とその前駆体の断面図を示す。
【図5】パターン化銅金属層の一例である穴あき銅箔の一部を示す底面図。
【図6】図5中のA−A′断面図(ただし、めっき用導電性基材上に存在する状態)。
【図7】パターン化銅金属層の別の例を示す断面図(ただし、めっき用導電性基材上に存在する状態)。
【図8】導体層パターン付き基材の作製例の前半を示す断面図。
【図9】導体層パターン付き基材の作製例の後半を示す断面図。
【図10】めっき用導電性基材の凹部内にめっきにより導体層パターンを形成した状態を示す断面図。
【図11】図10に示す凹部内の導体層パターンを転写して得られた導体層パターン付き基材の断面図。
【図12】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図13】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図14】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図15】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図16】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【図17】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の変形例の概念断面図。
【図18】導体層パターンの平面図。
【符号の説明】
【0155】
1:めっき用導電性基材
2:導電性基材
3:絶縁層
4:めっき部である凹部
5:感光性レジスト層(感光性樹脂層)
6:突起部
7:DLC膜
8:中間層
9:黒化金属パターン
10:穴(貫通孔)
11:段差部
12:傾斜部
13:導体層パターン
14:転写用基材
15:別の基材
16:粘着剤層
18:他の基材
19:保護樹脂
20:接着剤
21:他の基材
22:接着剤又は粘着剤
23:保護フィルム
101:電解浴槽
102:電解液
103:陽極
104:回転体
105:配管
106:ポンプ
107:陽極
108:導体層パターン
109:接着性支持体
110:圧接ロール
111:導体層パターン付き接着支持体
151:遮断部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幾何学図形状の導電性金属層にパルス電解法により金属を析出させて黒化処理を行う表面が黒化処理された金属パターンの製造方法において、パルス電解法が、高通電時間をT、低通電時間をTとし、1サイクルを
1サイクル=T+T
と定義し、パルス電解でのサイクル率Eを
E=100×(T/(T+T))
とした場合、サイクル率を2%以上または90%以下に維持し、各パルス通電時間を2ms以上200ms以下に保持する条件で行われることを特徴とする表面が黒化処理された金属パターンの製造方法。
【請求項2】
幾何学図形状のめっき部パターンを有するめっき用導電性基材に電気めっきにより銅金属を析出させる金属パターンの製造方法において、第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程、及び、前記第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面に、その表面が黒色または茶褐色になるように金属を析出させる黒化処理をパルス電解法で行う工程を同一のめっき浴槽内で行うことを特徴とする表面が黒化処理された金属パターンの製造方法。
【請求項3】
めっき部パターンが開口方向に向かって幅広な凹部パターンである請求項2に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項4】
パルス電解法が、高通電時間をT、低通電時間をTとし、1サイクルを
1サイクル=T+T
と定義し、パルス電解でのサイクル率Eを
E=100×(T/(T+T))
とした場合、サイクル率を2%以上または90%以下に維持し、各パルス通電時間を2ms以上200ms以下に保持する条件で行われることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の金属パターンの製造方法。
【請求項5】
表面が黒化処理された金属パターンについて、明度25の黒色を背景にして、その開口部面積が約50%以上となる光透過部の明度が25〜50になるように黒化処理する請求項1〜4のいずれかに記載の金属パターンの製造方法。
【請求項6】
黒化処理工程において、各パルス電解処理の制御を電圧で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属パターンの製造方法。
【請求項7】
幾何学図形状のめっき部パターンを有するめっき用導電性基材に電気めっきにより銅金属を析出させる金属パターンの作製工程及びめっき用導電性基材上に析出した金属を接着性支持体に転写する転写工程を含む導体層パターン付き基材の製造方法において、金属パターンの作製工程が第1の電流密度の下に導電性金属層を形成する導電層形成工程、及び、前記第1の電流密度よりも大きい第2の電流密度の下に前記導電性金属層の表面に、その表面が黒色または茶褐色になるように金属を析出させる黒化処理をパルス電解法で行う工程を同一のめっき浴槽内で行うことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項8】
めっき部パターンが開口方向に向かって幅広な凹部パターンである項7に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項9】
パルス電解法が、高通電時間をT、低通電時間をTとし、1サイクルを
1サイクル=T+T
と定義し、パルス電解でのサイクル率Eを
E=100×(T/(T+T))
とした場合、サイクル率を2%以上または90%以下に維持し、各パルス通電時間を2ms以上200ms以下に保持する条件で行われることを特徴とする請求項7又は8のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項10】
表面が黒化処理された金属パターンについて、明度25の黒色を背景にして、その開口部面積が約50%以上となる光透過部の明度が25〜50になるように黒化処理する請求項7〜9のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項11】
黒化処理工程において、各パルス電解処理の制御を電圧で行うことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
【請求項13】
請求項12に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
【請求項14】
請求項12に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−152285(P2009−152285A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327152(P2007−327152)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】