金属化フィルム及び金属化フィルムコンデンサ
【課題】金属膜の端面での電界集中を緩和して静電容量の低下を抑制できる金属化フィルムコンデンサの実現。
【解決手段】一側辺に沿ってマージン部14が形成されるように、誘電体フィルム12の表面に金属膜16を蒸着して成り、上記マージン部14と接する金属膜16の端面16aを曲面形状と成した複数の金属化フィルム10を、上記複数の金属化フィルム10同士のマージン部14が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子18を形成すると共に、該コンデンサ素子18の両端面にメタリコン電極20を形成して成る金属化フィルムコンデンサ22。
【解決手段】一側辺に沿ってマージン部14が形成されるように、誘電体フィルム12の表面に金属膜16を蒸着して成り、上記マージン部14と接する金属膜16の端面16aを曲面形状と成した複数の金属化フィルム10を、上記複数の金属化フィルム10同士のマージン部14が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子18を形成すると共に、該コンデンサ素子18の両端面にメタリコン電極20を形成して成る金属化フィルムコンデンサ22。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムと、複数の上記金属化フィルムを積層又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着させた複数の金属化フィルムを積層又は積層巻回して成るコンデンサ素子を用いた金属化フィルムコンデンサは、コンデンサ素子に部分的な絶縁破壊を生じても再び絶縁性を回復する自己回復性に優れているため、家庭用電気製品をはじめとする種々の電気・電子機器等に広く用いられている。
【0003】
この金属化フィルムコンデンサに用いられる金属化フィルム70は、図13に示すように、誘電体フィルム72の表面に、一側辺に沿ってマージン部74が形成されるように金属膜76を蒸着して構成されている。
上記構造を有する一対の金属化フィルム70,70を、図14に示すように、それぞれのマージン部74が反対側に配されるように積層又は積層巻回してコンデンサ素子78を形成すると共に、該コンデンサ素子78の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極80を形成することにより金属化フィルムコンデンサ82が構成される(図15)。
【0004】
尚、上記構造の金属化フィルムコンデンサ82は、例えば、特開平5−304044号公報(特許文献1)に開示されている。
【特許文献1】特開平5−304044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造の金属化フィルムコンデンサ82は、異常電圧が印可されて誘電体フィルム72に部分的な絶縁破壊が生じても再び絶縁性を回復する自己回復性を有するものであるが、異常電圧が繰り返し印可された場合には、、部分的絶縁破壊の発生頻度が増大することにより静電容量の著しい低下を招くこととなる。
従来の金属化フィルム70の場合、マージン部74と接する金属膜76の端面76a(図14)が、誘電体フィルム72の表面に対して「略垂直」となっており、また、金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されているため、異常電圧の印可時に金属膜76の端面76aに電界が集中して放電が発生し、これが誘電体フィルム72に絶縁破壊を生じさせる要因となっていることが判明した。
【0006】
この発明は、従来の上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属膜の端面での電界集中を緩和して静電容量の低下を抑制できる金属化フィルム及び金属化フィルムコンデンサを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の金属化フィルムは、
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムであって、上記マージン部と接する金属膜の端面を曲面形状と成したことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の金属化フィルムは、請求項1に記載の金属化フィルムにおいて、
曲面形状と成された上記金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の金属化フィルムは、請求項2に記載の金属化フィルムにおいて、
上記傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の金属化フィルムは、請求項1乃至3の何れかに記載の金属化フィルムにおいて、
上記金属膜がアルミニウムで構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載の金属化フィルムコンデンサは、
請求項1乃至4の何れかに記載の複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、マージン部と接する金属膜の端面を「曲面形状」と成したことにより、従来の金属化フィルムコンデンサ70の如く金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されている場合に比べて、電界集中が生じ易い金属膜の端面の距離を長くすることができるので、電界集中の生じる箇所が分散化され、その結果、金属膜の端面での電界集中が緩和されて静電容量の低下を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、曲面形状と成された金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルムの部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることから、電界を傾斜金属膜の多数の箇所に分散させることができ、電界集中を緩和することができる。
【0015】
請求項4に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、金属膜をアルミニウムで構成したので、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際に、金属化フィルムが振動して発する音である「鳴き」の発生を抑制することができる。
すなわち、アルミニウムを誘電体フィルムに蒸着させる金属膜の構成材料として用いた場合、アルミニウムは凝着力が大きく、金属化フィルム間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3は、本発明に係る金属化フィルム10を示すものであり、図1は平面図、図2は図1のX−X拡大断面図、図3は図1のY−Y拡大断面図である。
上記金属化フィルム10は、ポリプロピレンやポリエステル等より成る誘電体フィルム12の表面に、一側辺に沿ってマージン部14が形成されるように金属膜16を10nm〜80nmの厚さで蒸着して成る。
【0017】
図1〜図3に示すように、マージン部14と接する上記金属膜16の端面16aは、「曲面形状」と成されている。すなわち、図13に示した従来の金属化フィルム70の場合には、金属膜76の端面76aは「平面形状」と成されていたが、本発明の金属化フィルム10にあっては、金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成している。
この結果、同一長さの金属化フィルムで比較した場合、本発明の金属化フィルム10における金属膜16の端面16aの距離は、従来の金属化フィルム70における金属膜76の端面76aの距離より長く成されることとなる。
尚、上記金属膜16はアルミニウムで構成されている。
【0018】
上記構造を有する一対の金属化フィルム10,10を、図4〜図6に示すように、それぞれのマージン部14が反対側に配されるように積層又は積層巻回し、これにヒートプレスを施してコンデンサ素子18を形成すると共に、該コンデンサ素子18の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極20を形成することにより本発明の金属化フィルムコンデンサ22が構成される(図7及び図8)。
【0019】
本発明の金属化フィルムコンデンサ22にあっては、マージン部14と接する金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成したことにより、従来の金属化フィルムコンデンサ70の如く金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されている場合に比べて、電界集中が生じ易い金属膜16の端面16aの距離を長くすることができるので、電界集中の生じる箇所が分散化され、その結果、金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和されて静電容量の低下を抑制することができる。
【0020】
尚、本発明の上記金属化フィルムコンデンサ22にあっては、金属膜16を「アルミニウム」で構成したことにより、高耐湿性が実現されると共に、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際のいわゆる「鳴き」の発生を抑制することができる。斯かる金属化フィルムコンデンサ22の「鳴き」とは、コンデンサに交流電圧が印加された際に電極間にクーロン力が働き、クーロン力の周期的変化により金属化フィルム10が振動して発する音のことであり、振動が可聴周波数範囲(20Hz〜20kHz)である場合にうなり音として聞こえるものである。
【0021】
而して、本発明の金属化フィルムコンデンサ22の如く、「アルミニウム」を誘電体フィルム12に蒸着させる金属膜16の構成材料として用いた場合には、他の材料(例えば亜鉛やアルミニウム−亜鉛合金等)に比べて「アルミニウム」は凝着力が大きく、ヒートプレスしてコンデンサ素子18を形成すると金属化フィルム10間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【0022】
図9及び図10は、本発明に係る金属化フィルム10の変形例を示すものであり、この金属化フィルム10の変形例は、曲面形状と成された金属膜16の端面16aに、外側(マージン部14側)に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜24を形成した点に特徴を有するものである。
【0023】
上記傾斜金属膜24は、金属膜16と同一材料のアルミニウムで構成されている。この傾斜金属膜24は、例えば、誘電体フィルム12への金属膜16の蒸着工程において、マージン部14と接する金属膜16の端面16a部分に、外側へ向かって蒸着量が減少するよう金属蒸気を導いて形成される。この場合、傾斜金属膜24を構成する金属粒子は、金属膜16を構成する金属粒子より疎らに蒸着されるため、傾斜金属膜24の表面は凸凹状と成される。
【0024】
上記構造を有する一対の金属化フィルム10,10の変形例を、図11に示すように、それぞれのマージン部14が反対側に配されるように積層又は積層巻回し、これにヒートプレスを施してコンデンサ素子18を形成すると共に、該コンデンサ素子18の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極20を形成することにより本発明の金属化フィルムコンデンサ22が構成される(図12)。
【0025】
図12に示す本発明の金属化フィルムコンデンサ22にあっては、マージン部14と接する金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成したことにより、従来の金属化フィルムコンデンサ70の如く金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されている場合に比べて、電界集中が生じ易い金属膜16の端面16aの距離を長くすることができるので、電界集中の生じる箇所が分散化され、その結果、金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和されて静電容量の低下を抑制することができる。
【0026】
また、図12に示す金属化フィルムコンデンサ22にあっては、曲面形状と成された金属膜16の端面16aに、外側(マージン部14側)に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜24を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルム12の部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる。
また、傾斜金属膜24の表面が凸凹状と成されていると、電界を傾斜金属膜24の多数の箇所に分散させることができるため、電界集中を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る金属化フィルムを示す平面図である。
【図2】図1のX−X拡大断面図である。
【図3】図1のY−Y拡大断面図である。
【図4】一対の金属化フィルムを積層する状態を示す要部平面図である。
【図5】一対の金属化フィルムを積層した状態における図1のX−X拡大断面図である。
【図6】一対の金属化フィルムを積層した状態における図1のY−Y拡大断面図である。
【図7】本発明に係る金属化フィルムコンデンサを示す図1のX−X位置における部分断面図である。
【図8】本発明に係る金属化フィルムコンデンサを示す図1のY−Y位置における部分断面図である。
【図9】本発明に係る金属化フィルムの変形例を示す平面図である。
【図10】図9のZ−Z拡大断面図である。
【図11】一対の金属化フィルムの変形例を積層した状態を示す拡大断面図である。
【図12】金属化フィルムの変形例を用いて製造した金属化フィルムコンデンサを示す部分断面図である。
【図13】従来の金属化フィルムを示す平面図である。
【図14】一対の従来の金属化フィルムを積層する状態を示す拡大断面図ある。
【図15】従来の金属化フィルムコンデンサを示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 金属化フィルム
12 誘電体フィルム
14 マージン部
16 金属膜
16a 金属膜の端面
18 コンデンサ素子
20 メタリコン電極
22 金属化フィルムコンデンサ
24 傾斜金属膜
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムと、複数の上記金属化フィルムを積層又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着させた複数の金属化フィルムを積層又は積層巻回して成るコンデンサ素子を用いた金属化フィルムコンデンサは、コンデンサ素子に部分的な絶縁破壊を生じても再び絶縁性を回復する自己回復性に優れているため、家庭用電気製品をはじめとする種々の電気・電子機器等に広く用いられている。
【0003】
この金属化フィルムコンデンサに用いられる金属化フィルム70は、図13に示すように、誘電体フィルム72の表面に、一側辺に沿ってマージン部74が形成されるように金属膜76を蒸着して構成されている。
上記構造を有する一対の金属化フィルム70,70を、図14に示すように、それぞれのマージン部74が反対側に配されるように積層又は積層巻回してコンデンサ素子78を形成すると共に、該コンデンサ素子78の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極80を形成することにより金属化フィルムコンデンサ82が構成される(図15)。
【0004】
尚、上記構造の金属化フィルムコンデンサ82は、例えば、特開平5−304044号公報(特許文献1)に開示されている。
【特許文献1】特開平5−304044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造の金属化フィルムコンデンサ82は、異常電圧が印可されて誘電体フィルム72に部分的な絶縁破壊が生じても再び絶縁性を回復する自己回復性を有するものであるが、異常電圧が繰り返し印可された場合には、、部分的絶縁破壊の発生頻度が増大することにより静電容量の著しい低下を招くこととなる。
従来の金属化フィルム70の場合、マージン部74と接する金属膜76の端面76a(図14)が、誘電体フィルム72の表面に対して「略垂直」となっており、また、金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されているため、異常電圧の印可時に金属膜76の端面76aに電界が集中して放電が発生し、これが誘電体フィルム72に絶縁破壊を生じさせる要因となっていることが判明した。
【0006】
この発明は、従来の上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属膜の端面での電界集中を緩和して静電容量の低下を抑制できる金属化フィルム及び金属化フィルムコンデンサを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の金属化フィルムは、
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムであって、上記マージン部と接する金属膜の端面を曲面形状と成したことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の金属化フィルムは、請求項1に記載の金属化フィルムにおいて、
曲面形状と成された上記金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の金属化フィルムは、請求項2に記載の金属化フィルムにおいて、
上記傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の金属化フィルムは、請求項1乃至3の何れかに記載の金属化フィルムにおいて、
上記金属膜がアルミニウムで構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載の金属化フィルムコンデンサは、
請求項1乃至4の何れかに記載の複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、マージン部と接する金属膜の端面を「曲面形状」と成したことにより、従来の金属化フィルムコンデンサ70の如く金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されている場合に比べて、電界集中が生じ易い金属膜の端面の距離を長くすることができるので、電界集中の生じる箇所が分散化され、その結果、金属膜の端面での電界集中が緩和されて静電容量の低下を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、曲面形状と成された金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルムの部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることから、電界を傾斜金属膜の多数の箇所に分散させることができ、電界集中を緩和することができる。
【0015】
請求項4に記載の金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサは、金属膜をアルミニウムで構成したので、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際に、金属化フィルムが振動して発する音である「鳴き」の発生を抑制することができる。
すなわち、アルミニウムを誘電体フィルムに蒸着させる金属膜の構成材料として用いた場合、アルミニウムは凝着力が大きく、金属化フィルム間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3は、本発明に係る金属化フィルム10を示すものであり、図1は平面図、図2は図1のX−X拡大断面図、図3は図1のY−Y拡大断面図である。
上記金属化フィルム10は、ポリプロピレンやポリエステル等より成る誘電体フィルム12の表面に、一側辺に沿ってマージン部14が形成されるように金属膜16を10nm〜80nmの厚さで蒸着して成る。
【0017】
図1〜図3に示すように、マージン部14と接する上記金属膜16の端面16aは、「曲面形状」と成されている。すなわち、図13に示した従来の金属化フィルム70の場合には、金属膜76の端面76aは「平面形状」と成されていたが、本発明の金属化フィルム10にあっては、金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成している。
この結果、同一長さの金属化フィルムで比較した場合、本発明の金属化フィルム10における金属膜16の端面16aの距離は、従来の金属化フィルム70における金属膜76の端面76aの距離より長く成されることとなる。
尚、上記金属膜16はアルミニウムで構成されている。
【0018】
上記構造を有する一対の金属化フィルム10,10を、図4〜図6に示すように、それぞれのマージン部14が反対側に配されるように積層又は積層巻回し、これにヒートプレスを施してコンデンサ素子18を形成すると共に、該コンデンサ素子18の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極20を形成することにより本発明の金属化フィルムコンデンサ22が構成される(図7及び図8)。
【0019】
本発明の金属化フィルムコンデンサ22にあっては、マージン部14と接する金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成したことにより、従来の金属化フィルムコンデンサ70の如く金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されている場合に比べて、電界集中が生じ易い金属膜16の端面16aの距離を長くすることができるので、電界集中の生じる箇所が分散化され、その結果、金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和されて静電容量の低下を抑制することができる。
【0020】
尚、本発明の上記金属化フィルムコンデンサ22にあっては、金属膜16を「アルミニウム」で構成したことにより、高耐湿性が実現されると共に、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際のいわゆる「鳴き」の発生を抑制することができる。斯かる金属化フィルムコンデンサ22の「鳴き」とは、コンデンサに交流電圧が印加された際に電極間にクーロン力が働き、クーロン力の周期的変化により金属化フィルム10が振動して発する音のことであり、振動が可聴周波数範囲(20Hz〜20kHz)である場合にうなり音として聞こえるものである。
【0021】
而して、本発明の金属化フィルムコンデンサ22の如く、「アルミニウム」を誘電体フィルム12に蒸着させる金属膜16の構成材料として用いた場合には、他の材料(例えば亜鉛やアルミニウム−亜鉛合金等)に比べて「アルミニウム」は凝着力が大きく、ヒートプレスしてコンデンサ素子18を形成すると金属化フィルム10間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【0022】
図9及び図10は、本発明に係る金属化フィルム10の変形例を示すものであり、この金属化フィルム10の変形例は、曲面形状と成された金属膜16の端面16aに、外側(マージン部14側)に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜24を形成した点に特徴を有するものである。
【0023】
上記傾斜金属膜24は、金属膜16と同一材料のアルミニウムで構成されている。この傾斜金属膜24は、例えば、誘電体フィルム12への金属膜16の蒸着工程において、マージン部14と接する金属膜16の端面16a部分に、外側へ向かって蒸着量が減少するよう金属蒸気を導いて形成される。この場合、傾斜金属膜24を構成する金属粒子は、金属膜16を構成する金属粒子より疎らに蒸着されるため、傾斜金属膜24の表面は凸凹状と成される。
【0024】
上記構造を有する一対の金属化フィルム10,10の変形例を、図11に示すように、それぞれのマージン部14が反対側に配されるように積層又は積層巻回し、これにヒートプレスを施してコンデンサ素子18を形成すると共に、該コンデンサ素子18の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極20を形成することにより本発明の金属化フィルムコンデンサ22が構成される(図12)。
【0025】
図12に示す本発明の金属化フィルムコンデンサ22にあっては、マージン部14と接する金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成したことにより、従来の金属化フィルムコンデンサ70の如く金属膜76の端面76aが「平面形状」と成されている場合に比べて、電界集中が生じ易い金属膜16の端面16aの距離を長くすることができるので、電界集中の生じる箇所が分散化され、その結果、金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和されて静電容量の低下を抑制することができる。
【0026】
また、図12に示す金属化フィルムコンデンサ22にあっては、曲面形状と成された金属膜16の端面16aに、外側(マージン部14側)に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜24を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルム12の部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる。
また、傾斜金属膜24の表面が凸凹状と成されていると、電界を傾斜金属膜24の多数の箇所に分散させることができるため、電界集中を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る金属化フィルムを示す平面図である。
【図2】図1のX−X拡大断面図である。
【図3】図1のY−Y拡大断面図である。
【図4】一対の金属化フィルムを積層する状態を示す要部平面図である。
【図5】一対の金属化フィルムを積層した状態における図1のX−X拡大断面図である。
【図6】一対の金属化フィルムを積層した状態における図1のY−Y拡大断面図である。
【図7】本発明に係る金属化フィルムコンデンサを示す図1のX−X位置における部分断面図である。
【図8】本発明に係る金属化フィルムコンデンサを示す図1のY−Y位置における部分断面図である。
【図9】本発明に係る金属化フィルムの変形例を示す平面図である。
【図10】図9のZ−Z拡大断面図である。
【図11】一対の金属化フィルムの変形例を積層した状態を示す拡大断面図である。
【図12】金属化フィルムの変形例を用いて製造した金属化フィルムコンデンサを示す部分断面図である。
【図13】従来の金属化フィルムを示す平面図である。
【図14】一対の従来の金属化フィルムを積層する状態を示す拡大断面図ある。
【図15】従来の金属化フィルムコンデンサを示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 金属化フィルム
12 誘電体フィルム
14 マージン部
16 金属膜
16a 金属膜の端面
18 コンデンサ素子
20 メタリコン電極
22 金属化フィルムコンデンサ
24 傾斜金属膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムであって、上記マージン部と接する金属膜の端面を曲面形状と成したことを特徴とする金属化フィルム。
【請求項2】
曲面形状と成された上記金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルム。
【請求項3】
上記傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることを特徴とする請求項2に記載の金属化フィルム。
【請求項4】
上記金属膜がアルミニウムで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属化フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成ることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項1】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムであって、上記マージン部と接する金属膜の端面を曲面形状と成したことを特徴とする金属化フィルム。
【請求項2】
曲面形状と成された上記金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルム。
【請求項3】
上記傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることを特徴とする請求項2に記載の金属化フィルム。
【請求項4】
上記金属膜がアルミニウムで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属化フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成ることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−227401(P2012−227401A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94628(P2011−94628)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】
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