説明

金属帯の冷却方法および冷却装置

【課題】金属帯を均一に冷却し、これにより、形状不良を発生させることなく、板幅方向の機械特性を均一にして金属帯を製造する冷却方法を提供する。
【解決手段】冷却水を噴射することによって金属帯を冷却する水冷装置を用いて、金属帯の表面における冷却水の水量密度を制御しながら、金属帯を冷却する際に、膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における前記金属帯の温度および水量密度の関係を予め求めておき、前記金属帯が、当該関係に基づいて該金属帯の温度に応じて与えられる水量密度を上限とした水量密度で冷却されるように、水量密度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯の冷却方法および冷却装置に関し、具体的には、金属帯を均一に冷却し、これにより、形状不良を発生させることなく、板幅方向の機械特性を均一にして金属帯を製造する冷却方法および冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衝突安全性の向上、省エネルギーさらには環境保護を図るために、自動車部品への高張力鋼板の採用が推進されている。高張力鋼板を製造する際、通常はNiやMnといったオーステナイト相安定化元素を含有することによってフェライト、パーライト変態を抑制し、マルテンサイト、ベイナイト組織を確保してきた。しかし、高張力鋼板の合金元素の含有量が増加するので、高超力鋼板の製造コストが嵩む。
【0003】
鋼板の製造時に連続焼鈍設備で所定の温度に加熱した後に急冷すれば、これらの合金元素の含有量を低減しても、所望の強度を有する高張力鋼板を製造することができる。したがって、高張力鋼板の製造では、連続焼鈍設備における一次冷却の冷却速度が高いことが有利であるので、一次冷却には、例えばウォータクエンチと呼ばれる、鋼板を水冷槽へ直接浸漬する方法や、気水冷却と呼ばれる、水と雰囲気ガスとをミスト状に混合した冷媒を鋼板に吹き付ける方法が用いられ、これらの方法により、鋼板は700〜800℃から350℃〜常温まで急冷される。
【0004】
鋼板にこのような急冷処理を施すと、鋼板の板幅方向に冷却むら(温度むら)が不可避的に発生する。この温度むらは、鋼板と冷媒との間に蒸気の膜が存在する膜沸騰領域から鋼板と冷媒とが直接接触する遷移・核沸騰領域に移行する時(クエンチ点)の急冷によって拡大され、鋼板の板幅方向の温度分布が均一でなくなる。その結果、高張力鋼板の板幅方向の機械特性値が均一でなくなり、また、低温変態相の変態歪みにより鋼板に形状不良が発生する。
【0005】
特許文献1には、縦型の冷却設備を備える熱処理炉において再結晶するように加熱された高張力冷延鋼帯の冷却において、鋼帯の温度が700℃からクエンチ点の温度領域(350℃)までにある場合には、ミスト冷却の水量密度を150l/m・分以上に制御するとともに、100℃/秒以上の冷却速度で急冷処理した後、鋼帯の温度がクエンチ点(350℃)から200℃までにある場合には冷却の水量密度を30〜150l/m・分に制御することにより、遷移沸騰させることなく膜沸騰のままでミスト冷却する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、鋼帯の温度むらを防止して均一に適正温度に連続冷却することが可能なストリップ連続熱処理設備用の気水冷却式冷却ユニットの制御方法として、気水冷却式冷却ユニットにおける、冷却水および気体の混合気を鋼帯に向けて噴射する噴射ノズルから噴射する気体および冷却水の混合比を鋼帯の温度が350℃未満となる位置よりも後段では0.3m/l以上とすることにより、鋼帯の水垂れによる部分的な過冷却を防止する方法が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、冷却すべき温度が低い場合でも冷却炉から抽出される鋼帯の温度を安定化できるストリップ連続熱処理設備用冷却炉の制御方法として、最後段の冷却ユニットよりも前段の冷却ユニットでは、水及び/またはガスにより鋼帯を冷却し、最後段の冷却ユニットではガスのみにより鋼帯を冷却することによって、目的の冷却温度近傍での温度勾配がなだらかになることから、目的の冷却炉出側における鋼帯の温度が安定し、鋼帯の品質が向上するとともに安定操業が可能となる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4109365号明細書
【特許文献2】特許第2647274号明細書
【特許文献3】特開平05−263148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1〜3により開示された方法で鋼帯を冷却しても、膜沸騰を維持できず、金属帯と冷媒とが接触し急冷されてしまうことがあり、確実に温度むらを抑制できないことがあった。特許文献1〜3により開示された方法では、膜沸騰を維持する限界の水量密度を目標として鋼帯を冷却するのではないので、高張力鋼板の生産性が低下することが懸念される。さらに、特許文献1〜3により開示された方法では、鋼帯の冷却速度を抑えるあまり、目標とする冷却温度で鋼帯を冷却できないことも懸念される。
【0010】
すなわち、特許文献1〜3により開示された方法は、遷移沸騰は350℃未満の温度で発生し、遷移沸騰は冷却水量を絞るか、あるいは水の代わりにガスで冷却することによって回避できるという技術常識に立脚するものである。これらの方法には2つの課題がある。
【0011】
第1の課題は、後段の冷却ユニットの冷却能力を低下するために目標とする冷却温度で金属帯を冷却できないことである。目標の冷却速度で金属帯を冷却するには、目標とする冷却温度になるように金属帯の搬送速度を低下して生産性を低下するか、あるいは、前段の冷却ユニットの冷却能力を高めて後段の冷却ユニットの冷却能力を補うことが考えられる。
【0012】
第2の課題は、350℃以上の温度域で遷移沸騰が発生することを考慮しないことに起因する。すなわち、冷却水の水量密度が高い場合には、クエンチ点の温度が350℃以上に上昇する。このため、上述したように第1の課題の対策として前段の冷却ユニットの冷却能力を高めるために前段の冷却ユニットの水量密度を高めると、遷移沸騰を生じる恐れがある。
【0013】
このように、特許文献1〜3により開示された方法には、金属帯を均一に冷却することができず、得られる高張力鋼板に形状不良や、板幅方向の機械特性のばらつきが発生するという課題があるため、結局は金属帯の搬送速度を低下し、金属帯の生産性が低下する。
【0014】
本発明の目的は、金属帯を均一に冷却し、これにより、形状不良を発生させることなく、板幅方向の機械特性を均一にして金属帯を製造する冷却方法および冷却装置を提供することであり、略述すると、高い生産性と冷却時の温度むらの解消とを両立することができる金属帯の冷却方法および冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、冷却水を噴射することによって金属帯を冷却する水冷装置を用いて、金属帯の表面における冷却水の水量密度を制御しながら、金属帯を冷却する際に、膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における金属帯の温度および水量密度の関係を予め求めておき、金属帯が、この関係に基づいて金属帯の温度に応じて与えられる水量密度を上限とした水量密度で冷却されるように、水量密度を制御することを特徴とする金属帯の冷却方法である。
【0016】
別の観点からは、本発明は、金属帯の水冷装置と、金属帯の温度情報を出力する温度情報出力手段と、水冷装置から供給される冷却水の金属帯の表面における水量密度を制御する制御装置とを備える金属帯の冷却装置であって、制御装置は、膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における金属帯の温度と水量密度の関係に基づいて温度情報出力手段から入力される温度情報に応じて与えられる水量密度を上限値として設定し、この上限値を逸脱しないように水量密度を制御することを特徴とする金属帯の冷却装置である。
【0017】
さらに、別の観点からは、本発明は、連続焼鈍炉の冷却帯に上述した本発明に係る冷却装置を備える金属帯の連続焼鈍炉である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、水量密度とクエンチ点の関係を用い金属帯の温度予測を行い水量密度の細かい制御冷却を行うので、金属帯の冷却時に生じる温度むら、およびこれに起因して発生する機械的特性のむらや形状不良を防止することができ、これにより、金属帯の幅方向の機械特性が均一で、かつ形状も良好な金属帯を高い生産性で製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】水量密度比とクエンチ点の関係を示すグラフである。
【図2】鋼帯の冷却制御方法を示すフロー図である。
【図3】水量密度と熱伝達率の関係を示すグラフである。
【図4】発明の冷却前後の温度条件を示すグラフである。
【図5】本発明に係る冷却装置の一例を示す説明図である。
【図6】水量密度と鋼帯出側温度の関係を示すグラフである。
【図7】比較例1(水量密度一定時)の冷却過程を示すグラフである。
【図8】比較例2(特許文献1記載の冷却方法)での冷却過程を示すグラフである。
【図9】本発明例(本発明の制御方式を適用した時)の冷却過程を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
水等の沸騰する冷媒を用いて金属帯を冷却する時には、必ず膜沸騰領域から遷移・核沸騰領域へ移行するクエンチ点を通過する。このクエンチ点の温度は、大別すると、冷媒要因と被冷却材要因とに支配される。
【0021】
冷媒側要因とは、冷媒の種類(鉄鋼業では主に水)で決まる比熱、熱伝導率、表面張力等の物性値と、スプレー冷却やラミナー冷却等の冷却方式によって決まる水量密度や衝突速度等の冷却形態を意味する。また、被冷却材側要因とは、材質によって決まる比熱、熱伝導率等の物性値と、粗さや表面スケール付着性等によって決まる表面性状を意味する。
【0022】
ただし、金属帯の冷却において、用いる冷媒と被冷却材とが決定されると、上述した各要因のうちでコントロールできる要因は、冷却方式のみに限定され、冷却方式のうちでも特に水量密度の影響が大きいため、従来技術でも冷却水の流量制御が行われてきた。
【0023】
しかし、クエンチ点の温度が水量密度によって決まるのに対し、その温度をしっかり予測制御しながら冷却する方法は現在のところ開示されていない。
本発明者らが鋼材の冷却試験を行い、水量密度とクエンチ点の関係(Tq=f(Q))を求めた結果の一例を図1にグラフで示す。
【0024】
図1のグラフは、クエンチ点の温度が300℃の場合の水量密度を1とした場合の水量密度とクエンチ点の温度の変化を示すものであり、クエンチ点の温度がほぼ水量密度に比例して高まることが分かる。
【0025】
図1のグラフにおけるTq>f(Q)の領域はクエンチ回避域であり、この領域では冷却水と鋼材の間に水蒸気の層を挟んで膜沸騰を維持できる。これに対し、図1のグラフにおけるTq<f(Q)の領域はクエンチ発生域であり、この領域では水量密度が高いため冷却水と鋼材とが直接接触する遷移沸騰の状態になり、膜沸騰を維持できない。
【0026】
図1に示す例では、水量密度とクエンチ点の温度との相関式が一次関数となっているが、上述したように様々な要因が影響するため、相関式は、多項式関数、指数関数あるいは対数関数になることもあるので、その形式は限定できないが、いずれにしても、水量密度とクエンチ点の温度との間には、正の相関がある。
【0027】
本発明者らは、冷却水を噴射することにより金属帯を冷却する場合、予め水量密度とクエンチ点の温度の関係を求めておき、その関係に基づいて膜沸騰を維持できるように冷却水の水量密度の上限値を定めれば、遷移沸騰を起こすことなく金属帯を均一かつ確実に冷却できることを知見した。
【0028】
ここで、冷却時に参照する温度は、水冷装置で冷却された直後の金属帯の温度である。仮に水冷装置による冷却前あるいは冷却中の金属帯の温度を参照すると、金属帯の温度を測定した箇所よりも下流側の金属帯では、水量密度が過大になり、遷移沸騰に移行してしまうおそれがあるからである。
【0029】
通常、金属帯の冷却装置は、金属帯の進行方向に複数の冷却ゾーンに分割され、各冷却ゾーンに配置された水冷装置で冷却後の金属帯の目標温度が冷却ゾーン毎に設定される。したがって、その目標温度と水量密度とクエンチ点の温度の関係に基づいて、水量密度の上限値を設定すれば、遷移沸騰に移行することはない。
【0030】
しかし、目標温度に基づいて設定した水量密度の上限値が低過ぎるために、金属帯が目標温度まで冷却されないことがある。この場合、冷却装置内の金属帯の温度は目標温度より高いのであるから、目標温度に基づく水量密度の上限値より適度に高い水量密度の上限値を設定しても遷移沸騰に移行することはないと考えられる。
【0031】
この場合の水量密度の上限値の設定方法を図2にフロー図で示す。
最初に、冷却装置で冷却した後の金属帯の目標温度に基づいて水量密度の上限値を設定する。
【0032】
次に、この冷却による金属帯の温度と目標温度の差を計算する。
次に、金属帯の温度が目標温度より一定値以上高い場合には、水量密度の上限値を高く設定し直して冷却する。水量密度の上限値を設定し直しても、金属帯の温度が一定値以上、水量密度に対応するクエンチ点の温度よりも高ければ、さらに水量密度の上限値を高く設定し直す。
【0033】
これにより、金属帯の温度が目標温度まで冷却されないにしても、遷移沸騰に移行することなく、より目標温度に近い温度まで金属帯を冷却することができる。あるいは遷移沸騰に移行しない範囲で最大の水量密度を確保しても冷却能力が不足する場合は、ライン速度を下げる必要があるがその下げ代を必要最小限に抑えることができる。
【0034】
なお、金属帯の温度が水量密度に対応するクエンチ点の温度よりも低ければ、遷移沸騰に移行しているので、この状態にならないよう注意する必要がある。
つまり、過剰に高い水量密度の上限値を設定すると、遷移沸騰に移行するため、水量密度の上限値は、注意して設定する必要がある。一度に変更する水量密度の上限値の量を制限し、その上で金属帯の温度と水量密度に対応するクエンチ点の温度の差を確認し、必要に応じて水量密度の上限値の設定を繰り返せば、遷移沸騰への移行を確実に防止することができる。
【0035】
上記一定値と、一度に変更する水量密度の上限値の量とは、任意に設定できる。この一定値が大きければ水量密度の上限値を再設定し難くなる半面、小さ過ぎれば例えば金属帯の温度が安定している定常部においてさえ、わずかな温度むらにも反応し過剰な冷却水量を設定し、かえって遷移沸騰への移行を招くことが懸念される。
【0036】
一度に変更する水量密度の上限値の量は、大き過ぎれば遷移沸騰に移行する危険が増すが、小さすぎれば適当な水量密度の上限に到達するまで何度も水量密度の上限値を設定し直すことになり、設定に時間を要する。金属帯の温度と水量密度に対応するクエンチ点の温度の差によって一度に変更する水量密度の上限値の量を変更するようにしてもよい。
【0037】
金属帯の温度は、実測ではなく計算によって求めるようにしてもよい。水冷装置による水量密度を変更し、実際に金属帯の温度の変化が完了するまでには時間を要するため、金属帯の温度の実測値に基づく水量密度の制御には時間がかかり、さらに繰り返し設定するのであれば、制御完了までに要する時間は無視できないほど大きくなる。計算によって求める場合、計算機の性能にもよるが、ほぼ瞬時に最適な条件を導出することができる。
【0038】
この計算の演算要素には、水冷装置の水量、金属帯の表面の水量密度、水冷装置による冷却前の金属帯の温度、金属帯の板厚、金属帯の搬送速度、金属帯の材質に基づく熱伝導率、比熱といった物性値、冷却水の水温、熱伝達係数等が挙げられる。
【0039】
ただし、材質に基づく物性値は、処理する金属帯の材質に差異が無ければ定数で構わない。また、冷却水の水温が一定に保たれる水冷装置であれば、冷却水の水温も定数で構わない。さらに、熱伝達係数も水量密度と冷却水の水温から計算で求めることができるため、この計算値によって代用できる。熱伝達率の計算結果の例を図3にグラフで示す。
【0040】
また、金属帯の温度は、予め作成したテーブル値を参照することによって求めるようにしてもよい。これにより、演算よりも速やかに金属帯の温度を導出することができる。
このテーブル値は、演算と同様の要素が考えられるが、演算と同様に省略できる要素もある。テーブル値は、少なくとも水冷装置の水量、金属帯の水量密度、水冷装置による冷却前の金属帯の温度、金属帯の板厚を要素とすることができる。これにより冷却速度を導出でき、搬送速度に応じて冷却後の金属帯の温度を導出することができる。
【0041】
演算あるいはテーブル値に基づく金属帯の温度を基に水量密度の上限値を設定すると、温度実測に比べて、速やかに最適な水量密度を設定することができる。ただし、定常状態においては、金属帯の温度を実測し、温度実測値に基づいて水量密度を制御するようにしてもよい。実際の冷却装置において演算に使用する演算要素が実際の値からずれていることもあり、そのような場合に温度実測値を使用すると、実際の状態に応じた制御を行うことができる。
【0042】
上述した演算あるいはテーブル値から、水冷装置による冷却前の金属帯の温度に応じて膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における水冷装置による冷却直後の金属帯の温度を導出することができる。この関係の一例を図4にグラフで示す。
【0043】
図4のグラフにおける冷却無しの条件とは、冷却前温度と冷却後温度が等しい条件である。図4のグラフにおいて冷却無しの条件より下の条件は存在しない。図4のグラフにおける境界条件とは、膜沸騰と遷移沸騰との境界条件であり、図1のグラフにおけるTq=f(Q)の条件である。図4のグラフにおける境界条件は、冷却前温度における膜沸騰と遷移沸騰の境界条件の水量密度で冷却した場合の金属帯の冷却後温度を示す。従って、膜沸騰を維持して冷却できる条件は、図4のグラフでは境界条件と冷却無しの間の着色部である。
【0044】
冷却前後それぞれの温度を維持したまま搬送速度が低下すれば、必要な冷却速度が低下するため、冷却に必要な水量密度が小さくなり、低い水量密度では遷移沸騰し難くなるため、着色部は左上に拡大していく。つまり、金属帯の最大搬送速度における図4のグラフの関係を求めておき、水冷装置による冷却前後の目標温度を着色部の領域に定めておけば、遷移沸騰を引き起こす水量密度の冷却を回避することができる。また、目標温度の入力の際、着色部の温度条件でなければ目標温度の入力値を受け付けないとしてもよい。
【0045】
冷却装置は、金属帯の進行方向に分割された複数の冷却ゾーンを備え、冷却ゾーン毎に配置された水冷装置により上記の冷却を行うようにしてもよい。これにより、各冷却ゾーンの冷却終了後の金属帯の目標温度を設定することができるため、複雑な冷却パターンを設定することが可能になる。
【0046】
さらに、冷却装置が分割された複数の冷却ゾーンを備える場合、各冷却ゾーンによる冷却前の金属帯の温度をこの冷却ゾーンの一つ上流の冷却ゾーンの水冷装置で冷却された直後の金属帯の温度により代用してもよい。これにより、ある冷却ゾーンで金属帯を目標温度まで冷却できなかった場合には、この冷却ゾーンの冷却結果を反映して、この冷却ゾーンの下流の冷却ゾーンの冷却条件を調整することができる。
【0047】
本発明の水冷装置の冷却方法は、気水冷却あるいはミスト冷却といった細かい水滴を金属帯に噴射して金属帯を冷却する冷却方法であることが望ましい。本発明に該当しない冷却方法には、例えば、熱間圧延のランアウトテーブルの上流側に見られるような金属帯に水が乗っているような大流量の水量密度の冷却を挙げることができる。このような冷却方法は、高い水量密度で高い温度でクエンチ点を通過し、遷移沸騰領域で金属帯を冷却するものであるから、本発明の冷却方法には該当しない。
【0048】
本発明が最も効果的である金属の種類は鋼である。鋼は他の金属材料に比べて冷却速度による組織や特性の変化が顕著であるため、本発明による均一な冷却が最も効果を発揮する。
【0049】
次に本発明を実施するための冷却装置について説明する。
図5は、本発明に係る冷却装置の一例を示す説明図である。
本発明の冷却装置(1)は、金属帯(8)を水冷する水冷装置(2)、金属帯(8)の温度情報を出力する温度情報出力手段(3)、および、水冷装置(2)による金属帯(8)の表面の水量密度を制御する制御装置(4)からなる。
【0050】
また、冷却装置(1)はラインの進行方向に複数の冷却ゾーン(5,6,7)に分割されて構成されることが多い。冷却ゾーン(5,6,7)には冷媒によって金属帯(8)を冷却する装置が設置される。本発明では冷媒が水である金属帯(8)を冷却する装置を水冷装置(2)という。なお、図5において、冷却ゾーン(5,7)の水冷装置(2)以外の装置および情報は記載を省略した。
【0051】
水冷装置(2)は、ポンプ、配管、スプレーヘッダ、スプレーノズル等によって構成される。水冷装置(2)から金属帯(8)へ噴射される冷却水(9)の水量は制御装置(4)から出力される水量指示(11)によって指示される。
【0052】
制御装置(4)は温度情報出力手段(3)から出力される温度情報(12)に基づき金属帯(8)を冷却する水量密度を決定し、水冷装置(2)の設置個所における金属帯(8)の搬送速度に応じた水冷装置(2)の冷却水(9)の水量を決定し、水量指示(11)として出力する。温度情報出力手段(3)から出力される温度情報(12)は、たとえば金属帯の水量装置(2)で冷却される前の温度実績(13)、水量装置(2)で冷却された後の温度実績(14)、制御装置(4)が出力した水量実績(15)、金属帯(8)の搬送速度等に基づいて出力される。 制御装置(4)は一つの水冷装置(2)に一つの制御装置(4)であってもよいし、一つの制御装置(4)が複数の冷却ゾーン(5,6,7)の各水冷装置(2)に応じた水量指示(11)を出力する構成であってもよい。また、温度情報出力手段(3)も一つの冷却ゾーン(例えば6)に一つの温度情報出力手段(3)であっても良いし、一つの温度情報出力手段(3)が複数の冷却ゾーン(5,6,7)にそれぞれの冷却ゾーン(5,6,7)の制御装置(4)が水量密度設定するのに必要な温度情報(12)を出力する構成であってもよい。
【0053】
この冷却装置(1)の特徴は、制御装置(4)に膜沸騰と遷移沸騰の境界条件(クエンチ点)における金属帯(8)の温度と水量密度の関係を格納しておき、この関係に基づき温度情報出力手段(3)から制御装置(4)に入力される温度情報(12)に応じて膜沸騰を維持できる水量密度を上限値として設定し、その水量密度の上限値を逸脱しない範囲で水量密度を制御することによって、遷移沸騰に移行することなく膜沸騰を維持しながら金属帯(8)を冷却できることである。
【0054】
膜沸騰を維持しながら金属帯(8)を冷却するため、金属帯(8)は均一に冷却され、温度むらに伴う金属帯(8)の特性のばらつきを防止することができる。
温度情報出力手段(3)から出力される温度情報(12)は、例えば金属帯(8)の目標温度である。この場合、目標温度に応じて冷却水(9)の水量密度の上限値を設定するため、目標温度まで冷却されていない金属帯(8)において金属帯(8)を冷却する冷却水(9)が遷移沸騰に移行することを避けることができる。
【0055】
温度情報出力手段(3)から出力される温度情報(12)は、金属帯(8)の温度の測定値、あるいは演算又はテーブル値に基づく金属帯(8)の温度の推定値であってもよい。これにより、冷却装置(2)内を搬送される金属帯(8)の温度に応じた冷却水(9)の水量密度の上限値を設定するため、金属帯(8)を冷却する冷却水(9)が遷移沸騰に移行することを防止することができる。
【0056】
温度情報出力手段(3)から出力される金属帯(8)の温度情報(12)は、金属帯(8)の目標温度と金属帯(8)の温度の測定値、あるいは演算又はテーブル値に基づく金属帯(8)の温度の推定値の両方であってもよい。これにより、金属帯(8)の温度が金属帯(8)の目標温度より所定値以上高い場合、金属帯(8)の温度の測定値あるいは推定値に基づく冷却水(9)の水量密度の上限値に設定値を変更し、金属帯(8)の温度を目標温度に近付けることができる。
【0057】
ただし、水量密度を増加させた結果、金属帯(8)の温度が低下し、金属帯(8)を冷却する冷却水(9)が遷移沸騰に移行し易くなるため、冷却水(9)の水量密度の上限値の設定変更は一度に行うのではなく小刻みに行い、設定変更の都度、変更後の金属帯(8)の温度を確認し、冷却水(9)が遷移沸騰に移行しない(金属帯の温度がその時の冷却水の水量密度に対応するクエンチ点の温度より低くならない)ことを確認しながら、金属帯(8)の温度と水量密度に対応するクエンチ点の温度との差が所定の範囲になるまで冷却水(9)の水量密度の上限値の設定変更を繰り返すことが望ましい。
【0058】
なお、温度情報(12)は、水冷装置による冷却直後の金属帯(8)の温度情報である。仮に水冷装置による冷却前あるいは冷却中の位置の金属帯(8)の温度情報であった場合、この位置より下流側の金属帯(8)では、金属帯(8)の温度が温度情報より低いため、水量密度が過大になり、遷移沸騰に移行することがあるからである。
【0059】
演算の要素には、水冷装置(2)の水量、金属帯(8)の表面の水量密度、水冷装置(2)による冷却前の金属帯(8)の温度、金属帯(8)の板厚および金属帯(8)の搬送速度、金属帯(8)の材質に基づく熱伝導率、比熱といった物性値、冷却水(9)の水温、熱伝達係数等が挙げられる。
【0060】
ただし、材質に基づく物性値は処理する金属帯(8)の材質に差異が無ければ定数で構わない。また、冷却水(9)の水温が一定に保たれる水冷装置(2)であれば、冷却水(9)の水温も定数で構わない。さらに、熱伝達係数も水量密度と冷却水(9)の水温から計算で求めることができるため、代用できる。
【0061】
テーブル値は、演算と同様の要素が考えられるが、演算と同様に省略できる要素もある。テーブル値は少なくとも水冷装置(2)の水量又は金属帯(8)への冷却水量密度、水冷装置(2)による冷却前の金属帯(8)の温度、金属帯(8)の板厚を要素とする。これにより冷却速度を導出でき、金属帯(8)の搬送速度に応じて冷却後の金属帯(8)の温度を導出することができる。
【0062】
また、温度情報出力手段(3)から出力される温度情報(12)のうち、目標温度に図4のグラフにおける着色部のような制約条件を課してもよい。最大搬送速度における図4のグラフの着色部の関係を満たせば、冷却水(9)が遷移沸騰することがないため、膜沸騰のまま冷却することができる。
【0063】
具体的には、制約条件を記録装置に記録しておき、温度情報出力手段(3)は制約条件を参照し、金属帯(8)を冷却する冷却水(9)が遷移沸騰しない水冷装置(2)による冷却直後の金属帯(8)の温度の下限値より高い値を水冷装置(2)による冷却直後の金属帯(8)の温度の目標値として出力する。
【0064】
冷却装置(1)は、金属帯(8)搬送方向に複数の冷却ゾーン(5,6,7)に分割された冷却装置(1)であって、各冷却ゾーン(5,6,7)の水冷装置(2)は上記の冷却水量制御に基づく冷却を行う冷却装置(1)であってもよい。これにより、各冷却ゾーン(5,6,7)の金属帯(8)の目標温度を設定することができるため、複雑な冷却パターンを設定することが可能になる。
【0065】
さらに、冷却装置(1)は金属帯搬送方向に複数の冷却ゾーン(5,6,7)に分割された場合、冷却ゾーン(5,6,7)による冷却前の金属帯(8)の温度をこの冷却ゾーンの一つ上流の冷却ゾーンの水冷装置(2)で冷却された直後の金属帯(8)の温度にしてもよい。そうすると、ある冷却ゾーンで金属帯(8)を目標温度まで冷却できなかった場合、この冷却ゾーンの下流の冷却ゾーンの冷却条件をこの冷却ゾーンの冷却結果を反映して調整することができる。
【0066】
金属帯(8)を水冷する水冷装置(2)の冷却方法は、気水冷却あるいはミスト冷却といった細かい水滴を金属帯(8)に噴射して金属帯(8)を冷却する冷却方法である。この冷却方法に該当しない冷却方法には、例えば、熱間圧延のランアウトテーブルの上流側に見られるような金属帯に水が乗っているような大流量の水量密度の冷却を挙げることができる。このような冷却方法は、高い水量密度で高い温度でクエンチ点を通過し、遷移沸騰領域で金属帯を冷却するものであるから、本発明の冷却装置(1)における水冷装置(2)の冷却方法には該当しない。
【0067】
本発明の冷却装置(1)に、最適な冷却対象は鋼帯である。鋼は他の金属材料に比べて冷却速度による組織や特性の変化が顕著であるため、本発明の冷却装置による均一な冷却が最も効果を発揮する。
【0068】
本発明の冷却装置(1)の最適な設置個所は、連続焼鈍炉の冷却帯である。本発明の冷却装置(1)は、金属帯(8)を温度むらなく均一に冷却することができるため、本発明の冷却装置(1)を冷却帯に設置した連続焼鈍炉は均一な特性の金属帯(8)を製造することができる。
【実施例】
【0069】
実施例として、全長10m(10ゾーン)の冷却帯で700℃の板厚1.4mmの鋼帯を冷却する場合を想定して伝熱計算を行った結果を以下に述べる。
なお、この実施例は、薄鋼板の縦型連続焼鈍炉について記述するが、本発明は他のゾーン毎に冷却条件を操作して鋼板を気水冷却あるいはミスト冷却する設備についても同様に適用できる。また、同様の設備で処理するのであれば、鋼以外の金属でも、その金属に応じた相関式を適用すれば、同様に実施可能である。
【0070】
[比較例1]
全ゾーンを同一水量で300℃まで冷却した場合を図6にグラフで示す。搬送速度を80〜150mpmの間で変化させて検討した。搬送速度80mpm、出側鋼帯温度300℃を図6に白丸印で示す。この条件ではTq>f(Q)であるので、冷却水は鋼板上で膜沸騰が維持される。これは搬送速度80mpmであれば冷却速度が低く、冷却に必要な水量密度も低くなるので冷却水が遷移沸騰することなく安定した均一冷却が可能となるからである。
【0071】
一方、搬送速度150mpm、出側鋼帯温度300℃を図6のグラフ中に黒丸印で示す。この条件ではTq<f(Q)であるので、冷却水は鋼板上で遷移沸騰し、膜沸騰が維持できない。搬送速度150mpmでは冷却速度が高く、冷却に必要な水量密度も高くなるので、全ゾーンを同一水量で冷却した場合、冷却水が遷移沸騰することになる。
【0072】
図6のグラフでは、搬送速度が150mpmの場合、冷却に必要な水量密度が1.6になり、この条件ではTq=f(Q)となる350℃以下では膜沸騰が維持できないことが示されている。すなわち、生産性を上げるために高速通板しようとすると必要な水量密度が増加するため冷却水が膜沸騰を維持できなくなる。
【0073】
図7に、図5の搬送速度150mpmでの各冷却ゾーンの冷却装置で冷却される直前の金属帯の温度(Tsin)と各冷却ゾーンの水量密度設定および各冷却ゾーンの冷却装置で冷却された直後の金属帯の温度(Tsout)の関係を示す。
【0074】
図7において点線は膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における一つの冷却ゾーンでの冷却前後の金属帯の温度を示す。また、Qmaxは金属帯の温度に応じた膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における水量密度を示す。白丸印は各冷却ゾーンの冷却装置で冷却される直前の金属帯の温度と各冷却ゾーンの水量密度の条件を示している。図7においては金属帯の温度によらず水量密度一定の条件としている。白三角印は各冷却ゾーンの冷却装置で冷却される直前の金属帯の温度と各冷却ゾーンの冷却装置で冷却された直後の金属帯の温度の条件を示している。
【0075】
9番目の冷却ゾーンにおいて、冷却水は遷移沸騰に移行した。このとき、冷却前後の金属帯の温度は点線を横切り、水量密度はQmax以上になっている。冷却水が膜沸騰から遷移沸騰へ移行した際、急激に冷却が進み、わずかな水量むらで温度むらが拡大することになる。この時使用した冷却ノズルの水量むらを±10%程度だと仮定すると±22℃の温度むらが生じることになる。
【0076】
[比較例2]
これに対し、特許文献1に記載されているように、350℃以下で水量密度を下げた場合を図8に図7と同様にグラフで示す。搬送速度は150mpmである。この条件では350℃以下で水量密度を下げ冷却能力を落とす分、前段の冷却ゾーンの水量密度を上げ、冷却装置全体として最終的に300℃まで金属帯を冷却している。
【0077】
この方法では高温時の冷却水量が多いため遷移沸騰に移行しやすくなり、金属帯が350℃になるまでに冷却水が遷移沸騰に移行してしまっている。このため金属帯の温度が350℃以下になってから冷却水の水量密度を下げても既に温度むらが発生してしまっている。金属帯の温度が350℃以下で冷却水量を減らすため鋼板温度差が復熱し温度むらは緩和されるものの±17℃の温度むらが生じた。
【0078】
[本発明例]
本発明の実施例を図7、図8と同様に図9にグラフで示す。搬送速度と金属帯の板厚は、図7、図8と同じ150mpmと1.4mmである。水冷装置による最大水量密度(約3)を太線で示す。クエンチ点を回避するよう鋼板の冷却ゾーンの水量密度を低くするため、ライン内で目標温度まで鋼帯温度を下げるためには冷却初期の水量密度を高くしてライン全体の冷却能力を調整することになる。その結果、クエンチ点を一度も通過しないため温度むらは非常に小さく±6℃と大幅に改善された。
【0079】
これを実現するには下記の方法が例示される。
(a)各冷却ゾーンの金属帯の温度に応じた膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における水量密度Qmaxを該冷却ゾーン水量密度の上限値として設定する。
(b)各冷却ゾーンの冷却直前の金属帯温度に応じて、冷却水が遷移沸騰に移行しない各冷却ゾーンの冷却直後の金属帯の温度を各ゾーンの冷却直後の金属帯目標温度に設定する。
【符号の説明】
【0080】
1 冷却装置
2 水冷装置
3 温度情報出力手段
4 制御装置
5,6,7 冷却ゾーン
8 金属帯
9 冷却水
11 水量指示
12 温度情報
13 温度実績(水冷装置による冷却前)
14 温度実績(水冷装置による冷却後)
15 水量実績

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を噴射することによって金属帯を冷却する水冷装置を用いて、前記金属帯の表面における冷却水の水量密度を制御しながら、金属帯を冷却する際に、膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における前記金属帯の温度および水量密度の関係を予め求めておき、前記金属帯が、当該関係に基づいて該金属帯の温度に応じて与えられる水量密度を上限とした水量密度で冷却されるように、前記水量密度を制御することを特徴とする金属帯の冷却方法。
【請求項2】
前記金属帯の温度は、前記水冷装置で冷却された直後の前記金属帯の温度である請求項1に記載された金属帯の冷却方法。
【請求項3】
前記金属帯の温度は、前記水冷装置で冷却された直後の前記金属帯の目標温度であるとともに、前記水量密度の制御は該目標温度に基づいて前記水量密度の上限値を定めることにより行われる請求項1に記載された金属帯の冷却方法。
【請求項4】
前記水冷装置で冷却された直後の前記金属帯の温度が前記金属帯の目標温度より所定値以上高い場合、前記金属帯の温度から前記関係に基づき水量密度に応じて与えられる温度を減算して得られる値が正の所定範囲になるように、前記水量密度の上限値を高い値に変更して再設定する請求項3に記載された金属帯の冷却方法。
【請求項5】
前記金属帯の温度を計算によって求める請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された金属帯の冷却方法。
【請求項6】
前記金属帯の温度は予め作成したテーブル値を参照することによって求められる請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された金属帯の冷却方法。
【請求項7】
予め前記金属帯の板厚と前記水冷装置による冷却前の該金属帯の温度に応じた該金属帯を冷却する冷却水が遷移沸騰しない前記水冷装置による冷却直後の該金属帯の温度の下限値を求めておき、前記目標温度は前記下限値より高い請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載された金属帯の冷却方法。
【請求項8】
前記水冷装置は、前記金属帯の進行方向に分割された複数の冷却ゾーンそれぞれに配置される請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された金属帯の冷却方法。
【請求項9】
金属帯の水冷装置と、該金属帯の温度情報を出力する温度情報出力手段と、前記水冷装置から供給される冷却水の前記金属帯の表面における水量密度を制御する制御装置とを備える金属帯の冷却装置であって、前記制御装置は、膜沸騰と遷移沸騰の境界条件における金属帯の温度と水量密度の関係に基づいて前記温度情報出力手段から入力される金属帯の温度情報に応じて与えられる水量密度を上限値として設定し、該上限値を逸脱しないように前記水量密度を制御することを特徴とする金属帯の冷却装置。
【請求項10】
前記金属帯の温度情報は、該金属帯の目標温度である請求項9に記載された金属帯の冷却装置。
【請求項11】
前記金属帯の温度情報は、該金属帯の温度の測定値、あるいは演算又はテーブル値に基づく該金属帯の温度の推定値である請求項9に記載された金属帯の冷却装置。
【請求項12】
前記金属帯の温度情報は、該金属帯の目標温度、および該金属帯の温度の測定値あるいは演算又はテーブル値に基づく該金属帯の温度の推定値であって、該金属帯の温度が該金属帯の目標温度より所定値以上高い場合に、前記該金属帯の温度の測定値あるいは演算又はテーブル値に基づく該金属帯の温度の推定値と前記関係に基づき水量密度に対応する金属帯の温度の差が正の所定の範囲になるまで水量密度の上限値を上げる再設定を繰り返すことを特徴とする請求項9に記載された金属帯の冷却装置。
【請求項13】
前記金属帯の温度情報は、前記水冷装置による冷却直後の前記金属帯の温度情報である請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載された金属帯の冷却装置。
【請求項14】
前記金属帯の板厚と前記水冷装置による冷却前の該金属帯の温度に応じた該金属帯を冷却する冷却水が遷移沸騰しない前記水冷装置による冷却直後の該金属帯の温度の下限値を記録した記録装置を備え、前記目標温度は前記記録装置に記録された該金属帯温度の下限値より高い請求項13に記載された金属帯の冷却装置。
【請求項15】
前記水冷装置は、前記金属帯の進行方向に分割された複数の冷却ゾーンそれぞれに配置される請求項9から請求項14までのいずれか1項に記載された金属帯の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−82484(P2012−82484A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230695(P2010−230695)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】