説明

金属用液体洗浄剤

【課題】切削油および金属粉の洗浄性、洗浄廃液の油水分離性および洗浄時の抑泡性のいずれもが優れる金属用液体洗浄剤を提供する。
【解決手段】本発明の金属用液体洗浄剤は、(A)下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤1〜10質量%と、(B)有機酸系キレート剤1〜20質量%と、(C)重量平均分子量5000以上のカチオン性高分子1〜5質量%とを含有し、pHが9以上である。一般式(1):RO(EO)(PO)H、(式中、Rは炭素数8〜11のアルキル基またはアルケニル基、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドである。nはEOの平均付加モル数で、1〜10であり、mはPOの平均付加モル数で、0〜5である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を切削加工した際に付着した切削油および金属粉を除去するために使用される金属用液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金属(例えば自動車用金属部品等)を切削加工により製造する際には、通常、切削部分に切削油を吹き付けるため、得られた金属部品には切削油が付着している。また、得られた金属部品には、切削加工の際に生じた金属粉も付着している。これら切削油および金属粉は、金属部品を組み付ける装置の性能を低下させる原因になることがある。そのため、切削加工後に、得られた金属部品を洗浄剤により洗浄することが一般的に行われている。
金属用の洗浄剤としては、例えば、特許文献1には、カルボン酸塩またはその塩と高級アルキルアミンと溶剤と非イオン性界面活性剤と水とを含有し、pHが6以上のものが開示されている。
特許文献2には、カルボン酸とアルカノールアミンと水とを含有するものが開示されている。
特許文献3には、界面活性剤(アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤)と金属イオン封鎖剤とアンモニアまたは水溶性アミンと水とを含有し、pHが7.5〜12.5のものが開示されている。
【0003】
金属部品の洗浄によって発生した洗浄廃液には油分と水分とが含まれる。近年、資源の有効活用の観点から、洗浄廃液の油水分離を行い、回収した水を洗浄剤用として再利用することがある。そのため、洗浄廃液の油水分離性を高くできる洗浄剤が求められている。その要求に対し、特許文献4,5には、ポリエチレンイミンやポリアルキレンポリアミンを含む洗浄剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−319499号公報
【特許文献2】特開平6−306662号公報
【特許文献3】特開平5−230499号公報
【特許文献4】特開平8−311492号公報
【特許文献5】特開平8−245991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、切削加工時には切削油が泡立つことがあるが、泡立ちは洗浄の作業性を低下させるため、金属用の洗浄剤においては、切削油や金属粉の洗浄性および洗浄廃液の油水分離性のみならず、洗浄時の抑泡性が高いことが求められている。
しかしながら、従来、洗浄性、洗浄廃液の油水分離性および洗浄時の抑泡性のいずれもが優れる洗浄剤は知られていなかった。
そこで、本発明は、切削油および金属粉の洗浄性、洗浄廃液の油水分離性および洗浄時の抑泡性のいずれもが優れる金属用液体洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが調べた結果、切削油の起泡の原因は、切削油の添加剤として含まれるアニオン系界面活性剤であることを見出した。その知見に基づき、洗浄時の抑泡性が高く、しかも洗浄性および洗浄廃液の油水分離性に優れる洗浄剤について検討した結果、以下の金属用液体洗浄剤を発明した。
【0007】
[1] (A)下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤1〜20質量%と、(B)有機酸系キレート剤1〜10質量%と、(C)重量平均分子量5000以上のカチオン性高分子1〜5質量%とを含有し、pHが9以上であることを特徴とする金属用液体洗浄剤。
O(EO)(PO)H (1)
(式中、Rは炭素数8〜11のアルキル基またはアルケニル基、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドである。nはEOの平均付加モル数で、1〜10であり、mはPOの平均付加モル数で、0〜5である。)
[2] (D)ポリカルボン酸またはその塩を含有する[1]に記載の金属用液体洗浄剤。
[3] (C)カチオン性高分子が、重量平均分子量5000〜50000のポリエチレンイミンである[1]または[2]に記載の金属用液体洗浄剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属用液体洗浄剤は、切削油および金属粉の洗浄性、洗浄廃液の油水分離性および洗浄時の抑泡性のいずれもが優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例および比較例の洗浄剤の洗浄性試験での、洗浄後の試験片表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の金属用液体洗浄剤(以下、洗浄剤と略す。)は、(A)非イオン性界面活性剤と、(B)有機酸系キレート剤と、(C)カチオン性高分子と、溶媒(例えば水等)とを含有する液体である。
【0011】
[(A)非イオン性界面活性剤]
非イオン性界面活性剤は、下記一般式(1)で表される化合物である。
O(EO)(PO)H (1)
式(1)中、Rは、炭素数8〜11、好ましくは炭素数8〜10のアルキル基またはアルケニル基である。Rの炭素数が8〜11の範囲にあることにより、洗浄性が優れたものとなる。
式(1)におけるEOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドである。EOは洗浄性を高め、POは洗浄時の抑泡性を高める効果を有する。EOおよびPOの付加形態は、ブロックであってもよいし、ランダムであってもよい。
nはEOの平均付加モル数で、1〜10、好ましくは3〜6である。nが1以上であることにより、洗浄性が優れたものとなり、10以下であることにより、洗浄時の抑泡性が優れたものとなる。
mはPOの平均付加モル数で、0〜5、好ましくは0〜2である。mが0以上であることにより、洗浄時の抑泡性が優れたものとなり、5以下であることにより、洗浄性が優れたものとなる。
さらに、平均付加モル数nおよびmは、nが3〜6かつmが0〜2であることが好ましく、nが4〜5かつmが0であることがより好ましい。
【0012】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノ2−エチルヘキシルエーテル(EO=4)(例えば、日本乳化剤(株)製ニューコール1004)、ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=4)(例えば、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−40)、ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=5)(例えば、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−50)、ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=6)(例えば、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−60)、ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=6)にアルカリ触媒下、POを2モルブロック付加したものなどが挙げられる。
【0013】
非イオン性界面活性剤の含有量は、洗浄剤全体を100質量%とした際の1〜20質量%であり、2〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。非イオン性界面活性剤の含有量が1質量%未満であると、洗浄性が低下し、20質量%を超えると、液安定性が低下するため、洗浄剤として適さないものになる。
【0014】
[(B)有機酸系キレート剤]
有機酸系キレート剤は、アルカリ土類金属イオンおよび鉄イオンにキレートする有機酸である。
有機酸系キレート剤としては、低級カルボン酸類またはその塩、アミノカルボン酸類またはその塩、有機ホスホン酸類またはその塩が挙げられる。
低級カルボン酸類としては、例えば、酢酸、アジピン酸、グリコール酸、ジグリコール酸、モノクロル酢酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸などの酸またはその塩が挙げられる。
アミノカルボン酸類としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラ酢酸(TTHA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、1,3−プロパン−2−ジアミン四酢酸(PDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、プロピレンジアミンテトラ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、エチレングリコールジエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸ジ酢酸、β−アラニンジ酢酸、ヒドロキシイミノジコハク酸などの酸またはその塩が挙げられる。
有機ホスホン酸類としては、例えば、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、N,N,N’,N’−テトラキス(ホスホノメチル)エチレンジアミン(EDTMP)などの酸またはその塩が挙げられる。
塩を形成する場合の塩基としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
【0015】
上記のアミノカルボン酸系キレート剤の中でも、硬度成分であるアルカリ土類金属イオンのキレート性に優れる点で、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはその塩、ニトリロトリ酢酸(NTA)またはその塩が好ましい。
また、低級カルボン酸系キレート剤または有機ホスホン酸系キレート剤の中でも、鉄イオンのキレート性に優れる点で、グルコン酸またはその塩および1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)またはその塩が好ましい。
アルカリ土類金属イオンと鉄イオンのキレート性の両方を持たせるためには、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはその塩、グルコン酸またはその塩、および1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)またはその塩を併用することがより好ましい。
【0016】
有機酸系キレート剤の含有量は、洗浄剤全体を100質量%とした際の1〜10質量%であり、2〜7質量%であることが好ましく、3〜5質量%であることがより好ましい。有機酸系キレート剤の含有量が1質量%未満であると、洗浄性が低下し、10質量%を超えると、液安定性が低下するため、洗浄剤として適さないものになる。
【0017】
[(C)カチオン性高分子]
カチオン性高分子は重量平均分子量5000以上であり、好ましくは50000以下である。ここで、本発明における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定したポリスチレン換算の値である。カチオン性高分子の重量平均分子量が5000未満であると、切削油に含まれるアニオン性界面活性剤の活性を抑制できず、洗浄時の抑泡性が低くなり、また、洗浄廃液の油水分離性が低くなる。
カチオン性高分子としては、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリメタクリル酸エステルが挙げられる。洗浄廃液の油水分離性、抑泡性の点では、ポリエチレンイミンが好ましい。
また、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、洗浄時の抑泡性および洗浄廃液の油水分離性がより高くなる点から、5000〜50000であることが好ましく、液安定性の点から、10000〜30000であることが好ましい。
【0018】
カチオン性高分子の含有量は、洗浄剤全体を100質量%とした際の1〜5質量%であり、1〜4質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。カチオン性高分子の含有量が1質量%未満であると、抑泡性および油水分離性が低下し、5質量%を超えると、液安定性が低下するため、洗浄剤として適さないものになる。
【0019】
[(D)ポリカルボン酸またはその塩]
洗浄剤は、洗浄性をより高くできることから、ポリカルボン酸またはその塩を含有することが好ましい。
ポリカルボン酸またはその塩としては、ポリアクリル酸またはその塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体またはその塩、エチレン−マレイン酸共重合体またはその塩が挙げられる。洗浄性により優れる点では、ポリアクリル酸またはその塩が好ましい。さらには、重量平均分子量が1000〜20000のポリアクリル酸またはその塩が好ましい。
ポリカルボン酸塩としては、例えば、ポリカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0020】
ポリカルボン酸またはその塩の含有量は、洗浄剤全体を100質量%とした際の0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましく、0.5〜1質量%であることが特に好ましい。ポリカルボン酸またはその塩の含有量が0.1質量%以上であれば、洗浄性向上効果を充分に発揮でき、5質量%以下であれば、洗浄剤としての液安定性をより高くできる。
【0021】
[その他の成分]
また、本発明の洗浄剤は、任意成分として、消泡剤、防腐剤、液安定化剤(防錆剤)等を含有してもよい。
【0022】
消泡剤としては、例えば、炭素数12以上の炭化水素や高級アルコール、シリコーン等が挙げられる。
消泡剤の含有量は、洗浄剤全体を100質量%とした際の0.1〜3質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましく、0.5〜1質量%であることが特に好ましい。消泡剤の含有量が0.1質量%以上であれば、充分な消泡性が得られ、3質量%以下であれば、洗浄剤としての液安定性をより高くできる。
【0023】
防腐剤としては、例えば、メチルイソチアゾリノン、ベンズイソチアゾリノン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート等が挙げられる。
防腐剤の含有量は、洗浄剤全体を100質量%とした際の0.01〜0.3質量%であることが好ましく、0.05〜0.2質量%であることがより好ましく、0.1〜0.2質量%であることが特に好ましい。防腐剤の含有量が0.01質量%以上であれば、充分な防腐性が得られる。しかし、0.3質量%を超えて含有しても、防腐効果が頭打ちになり、コストが高くなるだけである。
【0024】
液安定化剤としては、炭素数が4〜12のカルボン酸またはその塩(脂肪族カルボン酸またはその塩、芳香族カルボン酸またはその塩)等が挙げられる。塩を形成する場合の塩基としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。なお、液安定化剤は防錆剤としても機能する。
脂肪族カルボン酸類としては、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸が挙げられる。
芳香族カルボン酸類としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。
これらの中でも、防錆性と液安定性の点からオクタン酸、安息香酸が好ましい。
【0025】
液安定化剤の含有量は、洗浄剤全体を100質量%とした際の3〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましく、7〜8質量%であることが特に好ましい。液安定化剤の含有量が3質量%以上であれば、充分な液安定性および防錆性が得られる。しかし、20質量%を超えて含有すると、かえって液安定性が損なわれる傾向にある。
【0026】
[pH]
洗浄剤の25℃におけるpHは9以上であり、9〜11であることが好ましい。洗浄剤のpHが9未満であると、洗浄剤として使用できる防錆性および液安定性が得られなくなり、pH11を超えるとアルカリ性が強すぎて作業上の危険性が高まる傾向にあり、洗浄剤として好ましくない。
上記pHにするためには、洗浄剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ剤、アルカノールアミン、第4級アンモニウムヒドロキシ化合物等の有機アルカリ剤を含有することが好ましい。
【0027】
以上説明した洗浄剤では、一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤と有機酸系キレート剤とを併用するため、金属部品に付着した切削油および金属粉の洗浄性に優れる。しかも、非イオン性界面活性剤は起泡性が低い上に、重量平均分子量5000以上のカチオン性高分子によって切削油中のアニオン系界面活性剤の活性を低下させて泡立ちを防ぐため、洗浄時の抑泡性に優れる。さらに、非イオン性界面活性剤およびカチオン性高分子を含有することにより、洗浄廃液の油水分離性が高くなっている。
【実施例】
【0028】
(実施例1〜14、比較例1〜11)
表1,2に示す配合で各成分を混合して、各例の洗浄剤をそれぞれ調製した。なお、表1,2の配合量の単位は「質量%」であり、いずれの成分も純分換算量を示す。また、表中の「水」の欄の「バランス」とは、洗浄剤全体が100質量%になる量のことである。
また、いずれの例についても、pHが表中の値になるように、pH調整剤(25質量%水酸化ナトリウム水溶液または硫酸またはオクタン酸)を添加した。
【0029】
使用した各成分は下記の通りである。
・C4E2:ブチルジグリコール、日本乳化剤(株)製、(比較対象成分)
・C6E2:ヘキシルジグリコール、日本乳化剤(株)製、(比較対象成分)
・C8E4:ポリオキシエチレンモノ2−エチルヘキシルエーテル(EO=4)、日本乳化剤(株)製ニューコール1004
・C10EO4:ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=4)、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−40
・C10EO5:ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=5)、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−50
・C10EO6:ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=6)、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−60
・C10EO6PO2:ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO=6)、第一工業製薬(株)製、ノイゲンXL−60にアルカリ触媒下、POを2モルブロック付加したもの
・C13(2EO/1.1PO)3EO:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル(EO=5,PO=1.1)、ライオン(株)製、ライオノールTDL−50 C13(2EO/1.1POランダム)3EOブロック、(比較対象成分)
・C1214EO5:ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテル(C12−14,EO=5)、ライオン(株)製、レオコールSC−50、(比較対象成分)
・C1214EO7:ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテル(C12−14,EO=5)、ライオン(株)製、レオックスCC−70、(比較対象成分)
・EDTA−4Na:エチレンジアミンテトラ酢酸4ナトリウム・4水塩(アクゾノーベル社製、ディゾルビンNA−T)
・グルコン酸Na:グルコン酸ナトリウム(扶桑化学工業(株)製、グルコン酸ソーダ)
・NTA:ニトリロトリ酢酸3ナトリウム(キレスト(株)製、キレスト3NTA)
・HEDP:ヒドロキシエタンジホスホン酸(ライオン(株)製、フェリオックス115A)
・ポリエチレンイミン Mw2000:BASF製、ルパゾールG35
・ポリエチレンイミン Mw5000:BASF製、ルパゾールG100
・ポリエチレンイミン Mw10000:日本触媒(株)製、エポミンSP−200
・ポリエチレンイミン Mw25000:BASF製、ルパゾールHF
・ポリエチレンイミン Mw750000:BASF製、ルパゾールP
・カチオン性ポリアクリルアミド:MTアクアポリマー(株)製、アロンフロックE 3560、重量平均分子量200万
・カチオン性ポリメタクリル酸エステル:MTアクアポリマー(株)製、アロンフロックE1600、重量平均分子量200万
・モノアルキルアンモニウムクロライド(炭素数12〜14):ライオン(株)製、アーカードC−50、(比較対象成分)
・ポリアクリル酸Na Mw1200:BASF製、ソカランPA15
・ポリアクリル酸Na Mw4000:BASF製、ソカランPA25CL
・ポリアクリル酸/マレイン酸共重合体Na Mw12000:BASF製、ソカランCP9
・トリデカノール:エクソン化学(株)製、エクサール13
・防腐剤:ソー・ジャパン製、アクチサイドMBS
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
得られた洗浄剤の洗浄性、洗浄時の抑泡性、洗浄廃液の油水分離性を以下のように評価した。
(1)洗浄性試験
鉄製の試験片(TP技研(株)製 JIS G 3131 SPCC 2.5cm×7.5cm)に、水溶性切削油(ユシロ化学工業(株)製、シンセティック#770)0.5mlを均一に塗布した。ついで、塗布面に平均粒径が100〜200μmの鉄粉を0.1g塗り広げ、2時間100℃で加熱し、汚垢試験片を作製した。
その後、室温に戻し、汚垢試験片を洗浄剤3質量%希釈液80mlに1分間浸漬した。そして、試験片を洗浄液から取り出し、試験片の表面に残留する鉄粉の量を以下の基準で目視評価した。
5点:鉄粉が全く確認できない(図1(a)参照)。
4点:鉄粉がほぼ確認できない(図1(b)参照)。
3点:数個の鉄粉が残留していた(図1(c)参照)。
2点:数十個の鉄粉が残留していた(図1(d)参照)。
1点:数百個の鉄粉が残留していた(図1(e)参照)。
【0033】
(2)抑泡性試験
エプトン管(直径2.8cm×高さ25cm)に、洗浄剤の3質量%希釈液40mlと水溶性切削油4mlの混合液を入れ、30回振とうして起泡した直後の泡立ち高さを測定した。泡立ち高さが低い程、抑泡性に優れる。
【0034】
(3)油水分離性試験
抑泡性試験の後、一日放置し、浮上した油分の高さを測定した。油分の高さが高い程、油水分離性に優れる。
【0035】
一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤と有機酸系キレート剤と重量平均分子量5000以上のカチオン性高分子とを含有し、pHが9以上である実施例1〜14の洗浄剤は、洗浄性、抑泡性および油水分離性のいずれもが優れていた。
これに対し、有機酸系キレート剤とカチオン性高分子とを含有するが、非イオン性界面活性剤を含まなかった比較例1の洗浄剤は、洗浄性が低かった。
非イオン性界面活性剤の炭素数が8未満であった比較例2,7の洗浄剤は、洗浄性が低かった。
非イオン性界面活性剤とカチオン性高分子とを含有するが、有機酸系キレート剤を含まなかった比較例3の洗浄剤は、洗浄性が低かった。
非イオン性界面活性剤と有機酸系キレート剤とを含有するが、カチオン性高分子を含まなかった比較例4の洗浄剤は、抑泡性および油水分離性が低かった。
カチオン性高分子の代わりにカチオン性の単分子を用いた比較例5の洗浄剤は、抑泡性が低かった。
カチオン性高分子の重量平均分子量が5000未満であった比較例6の洗浄剤は、抑泡性および油水分離性が低かった。
非イオン性界面活性剤の炭素数が11を超えていた比較例8,9,10の洗浄剤は、洗浄性が低かった。特に、比較例9については、抑泡性および油水分離性も低かった。
pHが9未満であった比較例11の洗浄剤は、洗浄性が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤1〜20質量%と、(B)有機酸系キレート剤1〜10質量%と、(C)重量平均分子量5000以上のカチオン性高分子1〜5質量%とを含有し、pHが9以上であることを特徴とする金属用液体洗浄剤。
O(EO)(PO)H (1)
(式中、Rは炭素数8〜11のアルキル基またはアルケニル基、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドである。nはEOの平均付加モル数で、1〜10であり、mはPOの平均付加モル数で、0〜5である。)
【請求項2】
(D)ポリカルボン酸またはその塩を含有する請求項1に記載の金属用液体洗浄剤。
【請求項3】
(C)カチオン性高分子が、重量平均分子量5000〜50000のポリエチレンイミンである請求項1または2に記載の金属用液体洗浄剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−215749(P2010−215749A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62592(P2009−62592)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】