説明

金属箔、それを用いた金属ベース回路基板、金属ベース多層回路基板の製造方法

【課題】高放熱性を有し、長期に渡って信頼性を発揮できる回路基板を安定して提供する。
【解決手段】本発明は、金属箔の一主面上に絶縁層を設けてなる絶縁層付き金属箔であって、絶縁層が、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒および無機フィラーを含有し、Bステージ状態であって、しかも前記エポキシ樹脂がエポキシ樹脂中に水素添加したエポキシ樹脂を40質量%以上含有していることを特徴とする絶縁層付き金属箔、並びに、前記金属箔を用いた金属ベース回路基板、金属ベース多層回路基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電気機器、通信機、自動車等に用いられる金属箔、それを用いた金属ベース回路基板、金属ベース回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器、電気機器等の高密度化、小型化、高信頼性化の要求に伴い、熱硬化性樹脂ワニスをガラスクロスなどの基材に含浸させたプリプレグを調製し、このプリプレグを所定枚数重ね上下に金属箔を配置し、これを加熱、加圧してプリント配線板を作製し、金属箔をエッチング等により回路形成し回路基板とし、これに所定枚数の前記プリプレグを重ね、その外側に金属箔を配置し、これを加熱積層し多層基板が提供されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、電子部品、電気部品更には基板の回路からの高放熱を目的とし、金属板上に無機フィラーを充填したエポキシ樹脂などからなる絶縁層を設け、その上に回路パターンを形成した金属ベース回路基板が、高発熱性電子部品を実装する回路基板として用いられている(特許文献2参照)。
【0004】
また、高密度化、高信頼性化を目的とし、金属ベース上に絶縁層を形成、金属箔を貼り付け、回路化を複数回形成した金属ベース多層回路基板が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−95844号公報
【特許文献2】特開昭62−271442号公報
【特許文献3】特開平09−139580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のプリプレグ樹脂は、放熱性が悪く、プリント配線板の小型化、高密度に限界があった。また、特許文献2は、放熱性についてはおおむね問題ないが、多層化できないため、プリント配線板の小型化、高密度に限界があった。特許文献3は、多層化する際、絶縁層の硬化状態が変化する問題があった。すなわち、経時変化することによって製造直後では加熱加圧成形に問題なかったものでも、硬化時間が短くなり、溶融粘度が高くなってしまう。そのため、内層回路に絶縁層の樹脂を十分に充填することが難しくなり、気泡やプリプレグの剥がれが発生し、絶縁破壊電圧等のプリント配線板の信頼性を著しく低下させる問題があった。
【0007】
本発明者は、上記公知技術の事情に鑑みて、高放熱性を有し、長期に渡って信頼性を発揮できる回路基板を安定して提供できるように、いろいろ検討した結果、特定構造の金属箔を用いることで、前記目的が達成できるとの知見を得て、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、金属箔の一主面上に絶縁層を設けてなる絶縁層付き金属箔であって、絶縁層が、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒および無機フィラーを含有し、Bステージ状態であって、しかも前記エポキシ樹脂がエポキシ樹脂中に水素添加したエポキシ樹脂を40質量%以上含有していることを特徴とする絶縁層付き金属箔であり、好ましくは、水素添加したエポキシ樹脂が、エポキシ当量100以上300以下であることを特徴とする前記の絶縁層付き金属箔であり、更に好ましくは、硬化剤が、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂及びジシンアミドからなる群から選ばれる1種類以上を含んでいることを特徴とする前記の絶縁層付き金属箔である。
【0009】
本発明は、硬化触媒が、イミダゾール化合物またはリン化合物であることを特徴とする前記の絶縁層付き金属箔であり、好ましくは、無機フィラーが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上からなり、しかも硬化後の絶縁層中での充填率が45体積%以上80体積%以下であることを特徴とする前記の絶縁層付き金属箔であり、更に好ましくは、金属箔の厚みが0.013mm〜0.450mmであることを特徴とする前記の絶縁層付き金属箔であり、更に好ましくは、硬化後の絶縁層の熱抵抗から算出した熱伝導率が1.5W/mK以上であることを特徴する前記の絶縁層付き金属箔である。
【0010】
また、本発明は、
(1)金属板を準備する工程、
(2)前記金属板上に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔を絶縁層を介して積層し一体化する工程、
(3)前記絶縁層付き金属箔の金属箔より回路形成する工程、
を順次経ることを特徴とする金属ベース回路基板の製造方法である。
【0011】
加えて、本発明は、
(1)金属ベース回路基板又は金属ベース多層回路基板を準備する工程、
(2)金属ベース回路基板又は金属ベース多層回路基板の回路上に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔を絶縁層を介して積層し一体化する工程、
(3)前記絶縁層付き金属箔の金属箔より回路形成する工程、
からなる金属ベース多層回路基板の製造方法であり、好ましくは、
(2)、(3)の工程を2回以上繰り返すことを特徴とする前記の金属ベース多層回路基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属箔は、前記特定組成の組成物からなる特定状態下の絶縁層を有し、しかも硬化後には、所定数値範囲の熱伝導率を示し、しかも経時変化が少ない特徴を有するので、熱放散性に優れる金属ベース回路基板や金属ベース多層回路基板を容易に安定して提供することが可能となる効果を有する。
【0013】
本発明の金属ベース回路基板の製造方法は、前記特徴ある金属箔を用いているので、安定して、生産性高く、熱放散性に優れる金属ベース回路基板を提供できる。
【0014】
本発明の金属ベース多層回路基板の製造方法は、前記特徴ある金属箔を用いているので、安定して、生産性高く、熱放散性に優れる金属ベース多層回路基板を提供できる。加えて、本発明によれば、熱放散性と電気絶縁性を有する金属ベース多層回路基板に関して、従来は困難であった高発熱性電子部品を実装した際に、電子機器の高密度化、小型化、または薄型化が達成できるし、前記絶縁層付き金属箔の経時変化が少ないので、一体化する際の不具合が大幅に減少し、コストダウンが達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の金属箔は金属箔の一主面上に絶縁層を設けてなる構造である。金属箔は、単に後述する金属ベース回路基板において金属板として用いられると共に、エッチング等の加工を受けて回路を形成することもあるので、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、銀、チタニウムのいずれか、これらの金属を2種類以上含む合金、或いは前記金属又は合金を使用したクラッド箔等を用いることができる。尚、前記金属箔の製造方法は電解法でも圧延法で作製したものでもよく、金属箔上にはNiメッキ、Ni−Auメッキ、半田メッキなどの金属メッキがほどこされていてもかまわないが、絶縁接着材との接着性の点から金属箔(回路)の絶縁接着材に接する側の表面はエッチングやメッキ等により予め粗化処理されていることが一層好ましい。また、本発明において、金属箔の厚みは0.013mm〜0.450mmが好ましい。0.013mm以上であれば、回路基板に於いて、通常の回路形成に十分な厚みである。上限については制限すべき理由はないものの、回路厚さが0.450mmを超えるような用途は実用的でない。
【0016】
本発明の金属箔に設ける絶縁層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒および無機フィラーを含有し、Bステージ状態であって、しかも前記エポキシ樹脂がエポキシ樹脂中に水素添加したエポキシ樹脂を、全エポキシ樹脂100質量%に対して、40質量%以上含有していることを特徴としている。エポキシ樹脂中に水素添加したエポキシ樹脂を40質量%以上含有させることにより、硬化後の絶縁層が、硬化後に、得られる金属ベース回路基板等の特性、特に放熱特性に優れる回路基板を得ることができる。
【0017】
尚、本発明において、Bステージ状態(半硬化状態)とは、絶縁層塗布乾燥、室温まで冷却した状態でタックが無いが、更に加熱および加圧すると溶融する状態のことをいう。また、Bステージ状態にある絶縁層中のエポキシ樹脂の硬化率は、5%〜70%程度あることが好ましく、硬化率が20%〜60%であることが一層好ましい。
【0018】
前記絶縁層に用いるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン、トリスフェニルメタン、ナフタレン、ビフェニル型等やこれらの水素添加したエポキシ樹脂が一般的に用いられ、エポキシ樹脂であれば構造に制限はない。また、前記エポキシ樹脂は一種類または複数種類で使用することが可能である。特に水素添加したエポキシ樹脂を用いる場合は、ビスフェノールA、ビスフェノールF型、ビフェニル型等のエポキシ樹脂を水素添加したエポキシ樹脂などが好ましい。
【0019】
また、水素添加したエポキシ樹脂に関しては、エポキシ当量100以上300以下であることが好ましい。エポキシ等量が100以上であれば、硬化後の樹脂強度が十分とれるし、回路基板としたときの電気絶縁性も問題ない。また、エポキシ等量が300以下ならば、分子量が大きくなり粘度が高くなって無機充填剤の添加が難しくなるようなこともない。
【0020】
硬化剤に関しては、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂、ジシンアミド等が用いることができる。また、これらは一種類または複数種類を併用して使用することも可能であるので、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂及びジシンアミドからなる群から1種以上が選択される。この中では、絶縁層の高温特性並びに高温高湿時の耐久性等を考慮し、アミン系樹脂やフェノール系樹脂が好ましく選択される。硬化剤の配合量については、エポキシ樹脂100質量%に対して、35〜70質量%が好ましい。硬化剤の配合量が35〜70質量%以上の場合は、硬化に不具合を発生することはない。
【0021】
硬化触媒としては、イミダゾール化合物やリン化合物が用いられ、一種類または複数種類を組み合わせて用いられる。添加量については、硬化温度により変化するため特に制限はないが、一般に、エポキシ樹脂100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。0.01質量%以上で確実に硬化するし、5質量%以下ならば、Bステージ状態からCステージ状態にすぐに変化してしまうこともない。
【0022】
無機質充填材としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素等が使用できるが、球状で高充填可能であること、誘電率が小さい、熱膨張係数が小さい、或いは半導体のシリコンに近い等の種々要因を考慮して選択することができ、工業的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化硼素からなる群から選ばれる1種以上が好ましく選択される。無機質充填剤の配合量については、絶縁層中での充填率が45体積%以上80体積%以下であることが好ましい。充填率が45体積%以上ならば絶縁層の放熱性が十分であるし、充填率が80体積以下で絶縁層を形成することが難しくなることもない。好ましくは、充填率が50体積%から75体積%の範囲である。
【0023】
本発明の絶縁層は、その用途を考慮して、硬化後に高熱伝導率を有することが好ましい。本発明者の検討に基づけば、電源用途やLED等の半導体装置を搭載する回路基板に適用するためには、硬化後に1.5W/mK以上であることが好ましく、2W/mK以上であることが一層好ましい。尚、本発明の絶縁層は、その好ましい実施態様に於いて、1.9〜6.5W/mKの硬化体が得られる。
【0024】
本発明の絶縁層付き金属箔は、金属箔上に、前記絶縁層となる絶縁剤を塗布することで得ることができるが、絶縁剤を金属箔に塗布する方法としては、ロールコーター、グラビアコーター、寄付コーター、スクリーン印刷等の公知の方法が挙げられる。また、絶縁層は、単一層もしくは複数層にするのが通常である。複数層の場合、工程が長くなる分コストアップになるが、耐絶縁破壊特性が信頼性高くなるとともに、絶縁層の厚さ精度を向上させることができる特徴がある。
【0025】
金属箔に絶縁層を塗布して得られた「絶縁層付き金属箔」はそのまま、或いは必要に応じて放置、更に必要ならば加熱、乾燥等の処理を施して、所定の硬化度に調整し保管、次に示す、金属ベース回路基板や金属ベース多層回路基板の製造に供される。
【0026】
本発明の金属ベース回路基板の製造方法について、以下説明する。即ち、本発明は、予め脱脂やケミカル処理によって洗浄された金属板を用意し、前記の絶縁層付き金属箔の絶縁層側に配置し、加熱および加圧し一体化し、その後、前記金属箔より回路を形成することで金属ベース回路基板を得る方法である。
【0027】
金属板の材質に特に制限はないが、放熱性や絶縁層の接着性を考慮し、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケルおよびそれらの合金が好ましく選択され、接着性の問題から純度が90質量%以上であることが好ましい。また、接着性、熱伝導性、重量および価格の問題からアルミニウムおよびアルミニウム合金が好ましく選択される。更に、絶縁層との接着性を改善させるため粗化処理、カップリング剤処理、プライマー処理、アルマイト処理等の表面処理を必要によって施すことができる。また、金属板の厚みとしては、特に制限はないが0.3mm〜4.0mmが一般的に用いられる。
【0028】
絶縁層付き金属箔と金属板とを一体化するには、加熱、加圧可能なロールや積層プレス機等を用い、これを80℃から180℃、5〜70kg/cm、60〜240分の条件で加熱、加圧することが好ましい。加熱温度が低いまたは加熱時間が短い場合は、硬化が不十分なため、十分な接着性と電気的絶縁性が確保できない。逆に、加熱温度が高いまたは加熱時間が長い場合は、樹脂の熱劣化が起こり接着性と電気的絶縁性が低下してしまう。また、圧力が低い場合は、樹脂付き金属箔の樹脂が、金属板等を均一に濡らすことができず、接着力にばらつきが発生し、圧力が高い場合は、樹脂付き金属箔の樹脂が高圧により流れでてしまい、電気的絶縁性が著しく低下してしまう。
【0029】
前記絶縁層付き金属箔の金属箔より回路形成とする方法としては、格別な制限はなく、所定箇所をドライフィルムやスクリーン印刷用のエッチングレジスト等で保護し、所定箇所以外の金属箔をエッチング等の方法により除去する方法が一般に用いられる。
【0030】
金属ベース多層回路基板は、金属板又は金属ベース回路基板に絶縁層付き金属箔を積層一体化し、回路形成することを繰り返すことで容易に得ることができる。尚、前記金属ベース回路基板は必ずしも本発明の方法で得られたものに限定される必要はないが、本発明の方法で得られたものを用いるとき、最低限度の設備で対応でき安価に得られることから好ましい。
【0031】
尚、前記金属ベース多層回路基板は、必要に応じて導体回路又は金属箔間を接続するためのスルーホールを設けることができる。スルーホール形成方法に特に制限はなく、回路間を導通させることができればその方法に制限はない。
【実施例】
【0032】
(実施例1)35μm厚の銅箔上に、エポキシ当量が201の水素添加されたビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「YX−8000」)をエポキシ樹脂全体で50質量%とエポキシ当量が180のビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「jer−807」)50質量%とからなるエポキシ樹脂100質量部に対し、硬化剤としてフェノールノボラック(明和化成社製、「HF−3」)48質量部を加え、最大粒子径が75μm以下で平均粒子径が21μmである球状粗粒子の酸化アルミニウム(昭和電工社製、「CB−A20」)と平均粒子径が0.6μmである球状微粒子の酸化アルミニウム(アドマテックス社製、「AO−502」)とを合わせて絶縁層中に50体積%(球状粗粒子と球状微粒子は質量比が65:35)となるように配合し、さらに硬化触媒として2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール(四国化成社製、「TBZ」)を0.05重量部配合したものを使用して、硬化後の厚さが100μmになるように絶縁層を形成し、130℃で40分加熱乾燥し、Bステージ状の絶縁層付き銅箔を作製した。

【0033】
前記絶縁層付き銅箔を25℃の雰囲気下で保存した後、樹脂のゲルタイムを170℃で測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
25℃500時間保存した絶縁層付き銅箔を用い以下の手続きを行った。
予め脱脂により付着部を除去したアルミニウム板上に前記樹脂付き銅箔を、絶縁層がアルミニウム板に面するように配置し、プレス機により、90℃30分+130℃90分、30kgf/cmで加熱、加圧することにより絶縁層を熱硬化、一体化させ、金属ベース基板を得た。この金属ベース基板、又これを用いた金属ベース回路基板等について、以下の評価を行い、表1に示した。
【0035】
前記操作に於いて、「成形性の評価」として、
ボイド、樹脂流れ、接合不良があるもの ×、
前記不具合がないもの ○、
とした。
【0036】
「耐電圧」については、銅箔より直径20mmの円形の回路パターンを形成し、JIS C 2110に規定された段階昇圧法により、回路とアルミ板との間の耐電圧を測定した。
【0037】
回路と絶縁層の「接着強度」は、金属ベース回路基板の導体回路を10mm幅の帯状に加工し、JIS C 6481に規定された方法により求めた。
【0038】
「熱伝導率」の測定は、金属ベース回路基板の金属板と回路を除去し、硬化した絶縁層を直径10mm、厚さ100μmに加工して、レーザーフラッシュ法により求めた(使用装置;真空理工株式会社製、TC−7000)。
【0039】
さらに、得られた金属ベース回路基板について、所定の位置をドライフィルムでマスクして銅箔をエッチングした後、ドライフィルムを除去して回路を形成し内層回路基板とした。
【0040】
内層回路基板をベースとして、上記絶縁層付き銅箔の絶縁層を内装基板の回路に面するように配置し、前記と同一の条件で、加熱、加圧硬化させた後、最外層にある金属箔をエッチングして外層回路を形成し、金属ベース多層基板を作製した。更に、所定のスルーホール部分の銅箔を上記方法と同様にエッチングにより除去し、絶縁層を露出させた。
【0041】
前記銅箔除去した箇所にYAGレーザーを用い、直径0.2mmの穴を空け、内層回路および外層回路を貫通させて後、銅メッキを施しスルーホールを形成した。この表面にさらに上記方法で外層回路をエッチングし、金属ベース多層回路基板を得た。
【0042】
金属ベース多層回路基板について、前記した方法と同じ方法で、(1)外観、(2)内層−上層間の絶縁耐電圧、(3)内層−上層間の接着性、を測定し、評価した。
これらの結果を表1に併せて示した。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例2)絶縁層の組成の硬化触媒として1−アミノエチル−2−ウンデシイミダゾール(四国化成社製、「C11Z−CNS」)を0.1質量部添加したこと以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース多層回路基板を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。それらの評価結果を表1に示す。
【0045】
(実施例3)絶縁層の組成の硬化触媒としてトリフェニルフォスフィン(北興化学社製、「TPP」)を0.2質量部添加したこと以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース多層回路基板を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。それらの評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例4)絶縁層の組成を、エポキシ当量が201の水素添加されたビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「YX−8000」)をエポキシ樹脂全体で80質量%とエポキシ当量が4371のビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「EP4010P」)20質量%添加したこと以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース多層回路基板を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。それらの評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例5)絶縁層の組成の硬化剤としてビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ社製、「VH4240」)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース多層回路基板を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。それらの評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例6)絶縁層の組成の無機フィラーの総量を65体積%になるように配合したこと以外は、実施例1と同様の方法で多層回路基板を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。それらの評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例7)絶縁層の組成の無機フィラーを最大粒子径が75μm以下で平均粒子径が24μmである粗粒子の窒化アルミニウム(電気化学工業製)と平均粒子径が0.6μmである球状微粒子の酸化アルミニウム(アドマテックス社製、「AO−502」)を合わせて絶縁層中65体積%(球状粗粒子と球状微粒子は質量比が65:35)となるように配合したこと以外は、実施例1と同様の方法で金属ベース多層回路基板を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。それらの評価結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1)絶縁層の組成をエポキシ当量が201の水素添加されたビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「YX−8000」)をエポキシ樹脂全体で20質量%とエポキシ当量が180のビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「jer−807」)80質量%になるように配合したこと以外は、実施例1と同様の方法で多層回路基板を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。それらの評価結果を表1に示す。成形性に低下がみられ、そのため耐電圧が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の絶縁層付き金属箔は、特定組成の組成物からなる特定状態下の絶縁層を有し、しかも硬化後には、所定数値範囲の熱伝導率を示し、しかも経時変化が少ない特徴を有するので、熱放散性に優れる金属ベース回路基板や金属ベース多層回路基板を容易に安定して提供することが可能で、産業上非常に有用である。
【0052】
本発明の金属ベース回路基板の製造方法は、前記特徴ある金属箔を用いているので、安定して、生産性高く、熱放散性に優れる金属ベース回路基板を提供できるので、産業上有用である。
【0053】
本発明の金属ベース多層回路基板の製造方法は、前記特徴ある金属箔を用いているので、安定して、生産性高く、熱放散性に優れる金属ベース多層回路基板を提供できるし、熱放散性と電気絶縁性を有する金属ベース多層回路基板に関して、従来は困難であった高発熱性電子部品を実装した際に、電子機器の高密度化、小型化、または薄型化が達成できるし、前記絶縁層付き金属箔の経時変化が少ないので、一体化する際の不具合が大幅に減少し、コストダウンが達成できるという効果が得られるので、産業上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の一主面上に絶縁層を設けてなる絶縁層付き金属箔であって、絶縁層が、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒および無機フィラーを含有し、Bステージ状態であって、しかも前記エポキシ樹脂がエポキシ樹脂中に水素添加したエポキシ樹脂を40質量%以上含有していることを特徴とする絶縁層付き金属箔。
【請求項2】
水素添加したエポキシ樹脂が、エポキシ当量100以上300以下であることを特徴とする請求項1記載の絶縁層付き金属箔。
【請求項3】
硬化剤が、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂及びジシアンアミドからなる群から選ばれる1種類以上を含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の絶縁層付き金属箔。
【請求項4】
硬化触媒が、イミダゾール化合物またはリン化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔。
【請求項5】
無機フィラーが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上からなり、しかも硬化後の絶縁層中での充填率が45体積%以上80体積%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔。
【請求項6】
金属箔の厚みが0.013mm〜0.450mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔。
【請求項7】
硬化後の絶縁層の熱抵抗から算出した熱伝導率が1.5W/mK以上であることを特徴する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔。
【請求項8】
(1)金属板を準備する工程、
(2)前記金属板上に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔を絶縁層を介して積層し一体化する工程、
(3)前記絶縁層付き金属箔の金属箔より回路形成する工程、
を順次経ることを特徴とする金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項9】
(1)金属ベース回路基板又は金属ベース多層回路基板を準備する工程、
(2)金属ベース回路基板又は金属ベース多層回路基板の回路上に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の絶縁層付き金属箔を絶縁層を介して積層し一体化する工程、
(3)前記絶縁層付き金属箔の金属箔より回路形成する工程、
からなる金属ベース多層回路基板の製造方法。
【請求項10】
(2)、(3)の工程を2回以上繰り返すことを特徴とする請求項9記載の金属ベース多層回路基板の製造方法。

【公開番号】特開2008−213426(P2008−213426A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57905(P2007−57905)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】