説明

金属箔積層フィルム

【課題】 金属箔とPAS層が良好な接着性を有する金属箔積層フィルムを提供する。
【解決手段】 化学処理した金属箔、特に厚さ6〜200μmの化学処理した金属箔及びポリアリーレンスルフィド層、特に厚さ6〜250μmのポリアリーレンスルフィド層、さらにポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、繊維状充填材及び/又は無機充填材を0.01〜200重量部添加してなるポリアリーレンスルフィド組成物からなるポリアリーレンスルフィド層からなる金属箔積層フィルム、及び、化学処理した金属箔表面に、接着剤及び/又は接着層を介さずにポリアリーレンスルフィド層をラミネートする金属箔積層フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔とポリアリーレンスルフィド層が積層されてなる金属箔積層フィルムに関するものであり、更に詳しくは、表面を化学処理した金属箔及びポリアリーレンスルフィド層からなる事を特徴とする金属箔積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的性質、熱的性質、電気的性質を有し、コンデンサの誘電体、電気絶縁材料、電子部品、音響振動板などに幅広く使用されている。
【0003】
PASをコンデンサやプリント基板などの金属箔とPAS層が積層された金属箔積層フィルムとして使用する場合、PAS層と金属箔との接着性を向上させるために様々な手法を施した金属箔積層フィルムが提案されている。
【0004】
例えば耐熱性を有する接着剤を介して銅箔などの金属箔とPPSフィルムを積層させてなるフレキシブルプリント配線板(例えば特許文献1参照。)、片面又は両面にコロナ放電処理又はプラズマ処理を施し金属との密着性を高めたPPSフィルムを用いたコンデンサ(例えば特許文献2参照。)、耐熱性絶縁フィルムに対して無機ガスの低温プラズマ処理を施すことにより、シリコーン系接着剤による接着強さを大幅に改善した耐熱性フレキシブルプリント配線用基板(例えば特許文献3参照。)、高分子樹脂フィルムと金属蒸着膜層が、グリシジル基を有するアクリル又はメタクリル化合物から形成されたプラズマ重合層を介して接合されてなる金属蒸着フィルムを用い接着力を改善したコンデンサ及び包装容器(例えば特許文献4参照。)、等が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭55−36945号公報
【特許文献2】特開昭57−187327号公報
【特許文献3】特開昭61−182942号公報
【特許文献4】特開平01−171856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の提案においては、接着剤による接着が不十分であるため、フィルムと金属箔とが剥離しやすいなどの課題があり、特許文献2の提案においては、未処理品との比較においては接着力の向上効果は見られるものの未だ不十分であった。また、特許文献3の提案においても接着剤による接着が不十分であるため、フィルムと金属箔とが剥離しやすいなどの課題があり、特許文献4の提案においては、蒸着時にピンホールが発生し好ましくない成型品が得られるなどの課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、PAS層に良好な接着性を有する金属箔及びPAS層からなる金属箔積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討した結果、特定の金属箔及びPAS層からなる金属箔積層フィルムが、該金属箔とPAS層の間で優れた接着性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、化学処理した金属箔及びPAS層からなることを特徴する金属箔積層フィルムに関するものである。
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の金属箔積層フィルムのPAS層を構成するPASは、一般的にPASと称される樹脂であり、その中でも特にPAS層とした際の成形加工性に優れることから直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下、測定した溶融粘度が100〜30000ポイズであるPASが好ましい。該PASとしては、例えば下記一般式(1)〜(7)に示されるp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位からなる単独重合体又は共重合体を挙げることができ、PASの具体的例示としては、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドエーテル、アミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)、アミノ基置換ポリフェニレンスルフィドスルフォン、アミノ基置換ポリフェニレンスルフィドケトン、アミノ基置換ポリフェニレンスルフィドエーテル、ヒドロキシル基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ヒドロキシル基置換ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ヒドロキシル基置換ポリフェニレンスルフィドケトン、ヒドロキシル基置換ポリフェニレンスルフィドエーテル、カルボキシル基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)、カルボキシル基置換ポリフェニレンスルフィドスルフォン、カルボキシル基置換ポリフェニレンスルフィドケトン、カルボキシル基置換ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、電気特性に優れた金属箔積層フィルムとなることから、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、アミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

(ただし、式中Yはアルキル基、フェニル基、ニトロ基、カルボキシル基、ニトリル基、アミノ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基又はスルホン酸基を示し、nは1又は2を示す。)
また、本発明に用いられるPASは、直鎖状のものであっても、重合時にトリハロゲン以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したものであっても、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。また、該PAS樹脂は、加熱硬化前又は後に脱イオン処理(酸洗浄や熱水洗浄など)、あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってイオン、オリゴマーなどの不純物を低減させたものであってもよい。さらに、重合反応終了後に酸化性ガス中で加熱処理を行い硬化を行ったものであってもよい。
【0019】
本発明の金属箔積層フィルムに用いられるPAS層は、PAS単独よりなるものであってもよく、その中でも、特に機械的強度に優れた金属箔積層フィルムとなることからPAS100重量部に対し、更に繊維状充填材及び/又は無機充填材を0.01〜200重量部、より好ましくは0.1〜100重量部を配合してなるPAS組成物よりなるPAS層であることが好ましい。
【0020】
この際の繊維状充填材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、グラファイト化繊維、ウイスカー、金属繊維、無機系繊維、有機系繊維、鉱物系繊維等が挙げられる。
【0021】
そして、ガラス繊維の具体的例示としては、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド、ミルドファイバー、ロービング等のガラス繊維;ニッケル、銅等を金属コートしたガラス繊維;シラン繊維;アルミノ珪酸塩ガラス繊維;中空ガラス繊維;ノンホーローガラス繊維等が挙げられる。
【0022】
炭素繊維の具体的例示としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0023】
無機系繊維の具体的例示としては、ロックウール、ジルコニア、アルミナシリカ、チタン酸バリウム、炭化珪素、アルミナ、シリカ、高炉スラグ等の各種無機繊維が挙げられる。
【0024】
鉱物系繊維の具体的例示としては、ワラステナイト、マグネシウムオキシサルフェート等が挙げられる。
【0025】
有機系繊維の具体的例示としては、全芳香族ポリアミド繊維、フェノール樹脂繊維、全芳香族ポリエステル繊維等が挙げられる。
【0026】
ウイスカーの具体的例示としては、窒化珪素ウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、炭化珪素ウイスカー、ボロンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等が挙げられる。
【0027】
また、該無機充填材とは、板状、粉粒状の無機物であり、例えば炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、ガラスパウダー、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレーク、ハイドロタルサイト等が挙げられる。これらの無機充填材は2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものを用いてもよい。
【0028】
本発明の金属箔積層フィルムを構成するPAS層に、場合によっては用いることのできる繊維状充填材及び/又は無機充填材は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤で処理したものあることが好ましく、特にアミノアルコキシルシラン又はエポキシアルコキシルシランで表面処理されたものであることが好ましい。また、繊維状充填材は、場合によって前記表面処理を行った後、ハンドリング性を良くするためにガラス繊維の束をエポキシ樹脂及び/又はウレタン樹脂で収束処理を施したものであってもよい。
【0029】
さらに、本発明の金属箔積層フィルムを構成するPAS層は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のタルク、カオリン、シリカなどの結晶核剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;紫外線防止剤;着色剤;発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものからなるものであってもよい。
【0030】
また、本発明の金属箔積層フィルムを構成するPAS層は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばシアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用してなるものであってもよい。
【0031】
本発明の金属箔積層フィルムを構成するPAS層としてPAS組成物を用いる際にPAS組成物を調製する原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原材料を配合し溶融混練する方法、原材料の一部を配合した後で溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは原材料の一部を配合後単軸又は二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、小量の添加成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することで使用してもよい。そして、溶融混練を行う方法としては、従来から使用されている加熱溶融混練方法を用いることができ、例えば単軸又は二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダーなどによる加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではないが、通常280〜370℃の中から任意に選ぶことができる。
【0032】
本発明の金属箔積層フィルムを構成するPAS層の厚さは任意であり、その中でもフレキシブルな金属箔積層フィルムとなることから6〜250μmであることが好ましい。
【0033】
本発明の金属箔積層フィルムを構成する金属箔は、化学処理した金属箔であり、金属箔の範疇に属するものであればいかなるものでもよく、その中でも得られる金属箔積層フィルムが特に各種用途に適応可能となることからアルミニウム箔、銅箔、真鍮箔、ステンレス箔、ニッケル箔が好ましく、特にアルミニウム箔、銅箔が好ましく、さらにアルミニウム箔が好ましい。
【0034】
また、本発明を構成する金属箔の化学処理方法としては、金属箔を化学処理する方法であれば如何なる方法を用いて化学処理する事も可能であり、該化学処理方法としては、例えばエチレンジアミン等の水溶性アミン系化合物、ヒドラジン水溶液、ヒドラジン誘導体水溶液、アンモニア水溶液、ピリジン水溶液、トリアジンチオール水溶液、トリアジンチオール誘導体水溶液により化学処理する方法;特開2003−103563号公報、特開2004−50488号公報、特開平02−298284等に提案の方法、等を挙げることができる。ここで、金属箔フィルムが化学処理されたものでない場合、PAS層との接着性が劣るものとなり、本発明の目的である接着性に優れる金属箔積層フィルムを得ることができない。
【0035】
本発明の金属箔積層フィルムを構成する金属箔の厚さは、一般的に金属箔と称される範疇に属する限りにおいて任意であり、その中でもその取り扱い性に優れることから6〜200μmである事が好ましい。
【0036】
本発明の金属箔積層フィルムを製造する方法としては、PAS層と化学処理した金属箔からなる金属箔積層フィルムが得られる限り如何なる方法をも用いることができ、その中でも効率よく金属箔積層フィルムが得られることから押出成形、圧縮成形により製造することが好ましく、特に生産効率よく本発明の金属箔積層フィルムを製造することが可能となることから、押出ラミネート成形、サンドウィッチラミネート成形に代表されるラミネート成形により製造することが好ましい。そして、さらに本発明の金属箔積層フィルムは、化学処理した金属箔を構成とすることから金属箔とPAS層の界面の接着性に優れており、該ラミネート成形を行う際には、より生産効率、コストの削減に優れることから、接着剤及び/又は接着層を介さずラミネートすることが好ましい。
【0037】
圧縮成形による方法としては、例えばPAS層を構成するPASを単軸又は二軸押出機に代表される押出成形機等を用いてシート又はフィルム形状に成形を行う。そして、該シート又はフィルムと化学処理された金属箔を積層し金型に装着し圧縮成形に供する方法、化学処理された金属箔表面にPAS層を構成するPASを供し金型に装着し圧縮成形に供する方法、等を挙げることができる。
【0038】
また、ラミネート成形による方法としては、例えば化学処理した金属箔表面にPAS層を構成するPASをT型ダイスを装着した押出成形機等を用いてフィルム形状で押し出し積層体とする方法、等を挙げることができる。
【0039】
本発明の金属箔積層フィルムは、機械特性、接着性に優れることから、コンデンサの誘電体、電気絶縁材料としての基板などに好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の金属箔積層フィルムは、金属箔とPAS層が良好な接着性を有することからその工業的価値は高く、その生産効率も優れたものとなる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0042】
なお、実施例に用いたPAS、PAS組成物、金属箔積層フィルムは、以下の方法により評価・測定した。
【0043】
〜金属箔とPAS層との界面の接着性評価〜
得られた金属箔積層フィルムの金属箔とPAS層との界面に平行に剃刀刃を浸入させ、その侵入具合により接着性の評価を行った。評価基準を以下に示す。
○;剃刀刃が浸入せず分離できない場合を接着性良好とした。
×;剃刀刃が容易に侵入し分離できた場合を接着性不良とした。
【0044】
〜PASの溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター(島津製作所製、商品名CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
【0045】
合成例1
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン16.7リットルを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7160gとN−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し固形分を遠心分離機により単離した。該固形分を温水で繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することによりポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(1)と記す。)を得た。得られたPPS(1)の溶融粘度は、280ポイズであった。
【0046】
合成例2
合成例1で得られたPPS(1)を、さらに空気雰囲気下250℃で3時間硬化を行い熱硬化型ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(2)と記す。)を得た。
【0047】
得られたPPS(2)の溶融粘度は、1800ポイズであった。
【0048】
合成例3
合成例2で得られたPPS(2)を、さらに空気雰囲気下250℃で8時間硬化を行い熱架橋型ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(3)と記す。)を得た。
【0049】
得られたPPS(3)の溶融粘度は、30000ポイズであった。
【0050】
合成例4
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドン11リットルと5水塩硫化ナトリウム7930gを仕込み、窒素気流下約2時間かけて撹拌しながら徐々に205℃まで昇温して、水を3230g留出させた。140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン6620gとN−メチル−2−ピロリドン4リットルを加えて、250℃に昇温し、250℃で3時間重合させて、スラリーを得た。次に、オートクレーブにn−デカン7000gを注入し、250℃に昇温し、5時間重合させた。重合終了後、室温まで冷却し固形分を遠心分離機により単離した。該固形分を温水で繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することによりポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(4)と記す。)を得た。得られたPPS(4)の溶融粘度は、1600ポイズであった。
【0051】
調製例1(金属箔の化学処理)
長さ5m×幅25cm×厚さ100μmのアルミニウム箔(A1100)をアセトンで満たした漕に浸漬し、その後2回イオン交換水で洗浄する事により表面の油膜を除去した。次に、1モル%の水酸化ナトリウム水溶液で満たした漕に該アルミニウム箔を浸漬した。2分後に引き上げ、水道水により洗浄した。水道水による洗浄は3回行った。次に、1モル%の硝酸と0.2モル%のフッ化水素酸を含む水溶液に先ほどのアルミニウム箔を1分間浸漬した。引き上げて水道水により洗浄した。水道水による洗浄は3回行った。そして、1モル%のエチレンジアミン水溶液に先ほどのアルミニウム箔を1分間浸漬し、引き上げて水道水により洗浄した。水道水による洗浄は3回行った。更に、先ほどのアルミニウム箔をアセトンに数秒漬けた後取り出し、冷風にて乾燥し化学処理したアルミニウム箔(以下、A1100処理アルミニウム箔と記す。)を得た。
【0052】
実施例1
合成例2で得られたPPS(2)を二軸押出機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル2D25S型)にて310℃で溶融混練し、ペレットとした。該ペレットを25mmΦのスクリューを装着した押し出しラミネーター((株)プラコー製、商品名TP−350)の押し出し機に供給し、310℃でTダイより押し出し、調製例1により得られたA1100処理アルミニウム箔と積層することによりPPS層が80μm、アルミニウム箔が100μmである金属箔積層フィルムを得た。
【0053】
得られた金属箔積層フィルムの接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
実施例2
合成例3で得られたPPS(3)100重量部、球状シリカ0.5重量部を予めヘンシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)製、商品名TEM−35B−102B)を用い、シリンダー温度310℃で溶融混練してペレットとした。
【0055】
得られたPPS組成物ペレットを用い、330℃でTダイより押し出した以外は、実施例1と同様の方法により、PPS層が85μm、アルミニウム箔が100μmである金属箔積層フィルムを得た。
【0056】
得られた金属箔積層フィルムの接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
合成例4で得られたPPS(4)100重量部、カルナバワックス0.5重量部を予めヘンシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)製、商品名TEM−35B−102B)を用い、シリンダー温度310℃で溶融混練してペレットとした。
【0058】
得られたPPS組成物ペレットを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、PPS層が83μm、アルミニウム箔が100μmである金属箔積層フィルムを得た。
【0059】
得られた金属箔積層フィルムの接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
比較例1
A1100処理アルミニウム箔を、化学処理をしていないアルミニウム箔(A1100)(以下、A1100未処理品と記す。)とした以外は、実施例1と同様の方法によりPPS層が80μm、アルミニウム箔が100μmである金属箔積層フィルムを得た。その評価結果を表2に示す。
【0061】
得られた金属箔積層フィルムは接着性に劣るものであった。
【0062】
比較例2
A1100処理アルミニウム箔を、A1100未処理品とした以外は、実施例2と同様の方法によりPPS層が85μm、アルミニウム箔が100μmである金属箔積層フィルムを得た。その評価結果を表2に示す。
【0063】
得られた金属箔積層フィルムは接着性に劣るものであった。
【0064】
比較例3
A1100処理アルミニウム箔を、A1100未処理品とした以外は、実施例3と同様の方法によりPPS層が83μm、アルミニウム箔が100μmである金属箔積層フィルムを得た。その評価結果を表2に示す。
【0065】
得られた金属箔積層フィルムは接着性に劣るものであった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学処理した金属箔及びポリアリーレンスルフィド層からなることを特徴する金属箔積層フィルム。
【請求項2】
厚さ6〜200μmの化学処理した金属箔及び厚さ6〜250μmのポリアリーレンスルフィド層からなることを特徴とする請求項1に記載の金属箔積層フィルム。
【請求項3】
ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、繊維状充填材及び/又は無機充填材を0.01〜200重量部添加してなるポリアリーレンスルフィド組成物からなるポリアリーレンスルフィド層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属箔積層フィルム。
【請求項4】
化学処理した金属箔表面に、接着剤及び/又は接着層を介さずにポリアリーレンスルフィド層をラミネートすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属箔積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属箔積層フィルムからなることを特徴とするコンデンサ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属箔積層フィルムからなることを特徴とする基板。

【公開番号】特開2008−55679(P2008−55679A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233435(P2006−233435)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】