説明

金属粉混合物

本発明は、ASTM C 1070-01による粒度測定器Microtrac(R)X100を用いて測定して、75μm以下、有利には25μm以下の平均粒径D50を有し、より大きなまたは小さな平均粒径を有するベース粉末の粒子を変形工程で加工し、その粒径:粒子厚の比が10:1〜10000:1の間であるプレート状粒子にし、かつこれらのプレート状粒子を更なる方法工程で粉砕助剤の存在で粉砕に課す方法により得られる成分Iの金属粉、合金粉または複合粉、粉末冶金の用途に通常の金属粉(MLV)である成分II、および/または機能性添加剤である成分IIIを含有する金属粉混合物金属粉混合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まずベース粉末をプレート状粒子に変形させ、かつ次にこれを粉砕助剤の存在で更なる添加剤と一緒に粉砕する方法により製造される75μm以下、有利には25μm以下の平均粒径D50を有する金属粉、合金粉または複合粉の混合物ならびにこれらの粉末混合物の使用およびこれらから製造される成形品に関する。
【0002】
まだ縦覧で公開されていない特許明細書PCT/EP/2004/00736からは、大きな平均粒径を有するベース粉末からASTM C 1070-01による Microtrac(R)X100粒度分析装置で測定して、75μm未満、有利には25μm未満の平均粒径D50を有する金属粉、合金粉および複合粉の製造法により得られる粉末が公知であり、その際、ベース粉末の粒子は、変形工程で10:1〜10000:1の粒径:粒子厚の比を有するプレート状粒子に加工され、かつこれらのプレート状粒子は、更なる方法工程で粉砕助剤の存在で粉砕または高エネルギー負荷に課される。この方法に引き続き、解凝集工程が有利に行われる。粉末凝集体がそれらの一次粒子に分解されるこの解凝集工程は、例えば気体向流ミル、超音波浴、ニーダーまたはローター・ステーター中で行うことができる。本明細書内では、このような粉末をPZD粉末と称する。
【0003】
これらのPZD粉末は粉末冶金用途で使用される通常の金属粉、合金粉および/または複合粉に対して様々な利点、例えば、改善された圧粉体強さ、圧縮性、焼結挙動、広い焼結温度範囲および/または低い焼結温度を有し、また製造された成形部材の良好な強度、酸化挙動および腐食挙動ならびに低製造コストも有する。これらの粉末の欠点は、例えば、劣悪な流動挙動である。変化した収縮特性は、僅かなタップ密度と組み合わさり、粉末冶金加工の際に利用する場合に、より強い焼結収縮の結果、問題を生じ得る。粉末のこれらの特性は、PCT/EP/2004/00736に記載されており、これを参照することができる。
【0004】
例えば、金属溶融物の噴霧化により得られる通常の粉末も欠点を有する。特定の合金組成物、いわゆる高合金材料の場合には、焼結活性が欠如していて、圧縮性が悪くかつ製造コストが高い。これらの欠点は、特に金属射出成形(Metal Injection Moulding、略してMIM)、スリップキャスティング、湿式粉体スプレーおよび溶射の場合にはあまり問題ではない。通常の金属粉(金属粉、合金粉および複合粉の意味で、省略してMLV)の劣悪な圧粉体強さにより、これらの材料は通常の粉末冶金圧縮、粉末圧延および冷間等方圧加工法(略してCIP)、後続の焼結前加工には不適切である。それというのも、圧縮粉がこのために十分な強度を有さないからである。
【0005】
本発明の課題は、通常の金属粉(MLV)およびPZD粉末の上記の欠点を有さずに、高い焼結活性、良好な加工性、高い圧粉体強さ、良好な注型適性のような個々の利点を出来る限り大幅に相互に組み合わせた粉末冶金用の金属粉を提供することである。
【0006】
本発明のもう1つの課題は、PZD粉末から製造される成形品に、特徴的特性を付与できる機能性添加剤、例えば、超硬粉末のように衝撃強さまたは耐摩擦性を増大する添加剤、または圧粉体の作用を容易にする添加剤、または細孔構造をコントロールするテンプレートとしてはたらく添加剤を有する粉末を提供することから成る。
【0007】
本発明のもう1つの課題は、通常の金属粉、合金粉または複合粉を用いて利用できない分野でも使用できるように、粉末冶金成形法の全スペクトルに高合金粉を提供することにある。
【0008】
この課題は、ASTM C 1070-01による粒度測定器Microtrac(R)X100を用いて測定して、75μm以下、有利には25μm以下、または25μm〜75μmの平均粒径D50を有し、より大きなまたは小さな平均粒径を有するベース粉末の粒子を変形工程で加工し、その粒径:粒子厚の比が10:1〜10000:1の間であるプレート状粒子にし、かつこれらのプレート状粒子を更なる方法工程で粉砕助剤の存在で粉砕に課す方法により得られる成分Iである金属粉、合金粉または複合粉、
粉末冶金の用途に通常の金属粉(MLV)である成分II、および/または
機能性添加剤である成分III、
を含有する金属粉混合物により解決された。プレート状物製造と粉砕の工程は、その都度の目的(プレート状物製造、粉砕)に合わせて、同じ1つのユニット内で双方を連続して行うことにより直接に組合せることができる。
【0009】
更にこの課題は、DIN 51045-1による膨張計で測定した収縮が、初めの収縮最大の温度に到達するまで、噴霧化により製造される同じ化学組成物で、かつ同じ平均粒径D50を有する金属粉、合金粉または複合粉の収縮の少なくとも1.05倍であり、その際、試験すべき粉末は、収縮を測定する前に理論密度の50%の圧縮密度まで圧縮されている、成分Iである金属粉、合金粉および複合粉、
粉末冶金の用途に通常の金属粉(MLV)である成分IIおよび/または
機能性添加剤である成分III、
を含有する金属粉混合物によっても達成される。取扱うことができる成形体が所望の密度(50%)の通常の粉末から製造できない場合には、プレス成形助剤を用いることにより大きな密度が許容できる。しかし、これは粉末圧縮体の同じ"金属密度"を意味するのであって、MLV粉末とプレス成形助剤の平均密度を意味するのではないと解釈すべきである。
【0010】
成分Iの使用は、酸素、窒素、炭素、ホウ素、シリコンの含有量を詳細に調節できる金属粉混合物の製造を可能にもする。酸素または窒素が供給される場合には、高エネルギーの投入が、成分Iの製造の際に酸化物および/または窒化物相の形成を導くことができる。このような相は、有意な材料補強作用を有するかもしれないので所定の用途に望ましい。この作用は、酸化物分散強化作用(ODS)として公知である。しかし、このような相の挿入は、しばしば加工特性(例えば、圧縮率、焼結活性)における劣化と関連する。合金成分に対する分散質の一般的に不活性な特性ゆえに、これは焼結を阻害し得る。
【0011】
粉砕により、前記相が製造された粉末中に直ちに細かく分散する。従って、形成された相(例えば、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物)は、通常製造される粉末中よりも成分I中により細かく、かつ均質に分散して存在する。これは、別々に挿入された同じタイプの相と比較して増大した焼結活性を導く。これにより、本発明による金属粉混合物の焼結性も改善される。細かく分散した挿入物を有するこのような粉末は、粉砕工程の際に特に酸素の細かな導入により得られ、かつ極めて微細な分散酸化物の形成を生じる。さらに、ODS粒子として適切であり、かつ粉砕工程の際に、機械的均質化と分散化を行う目的を定めた粉砕助剤を使用することができる。
【0012】
本発明による金属粉混合物は、全ての粉末冶金成形法で使用するために適切である。本発明による粉末冶金成形法は、プレス成形、焼結、スリップキャスティング、シートモールディング、湿式粉体スプレー、粉末圧延(冷間圧延、熱間圧延または温間圧延の両方)、ホットプレス法、熱間等方圧加工法(HIP)、焼結−HIP、粉末充填焼結、冷間等方圧加圧法(CIP)であり、特に焼結前加工、溶射および付着溶接を用いる。
【0013】
粉末冶金成形法における金属粉混合物の使用は、加工、物理的性質および材料特性で著しい違いを生じ、かつ化学組成物が通常の金属粉のものに匹敵するか、または同じであるにもかかわらず改善された特性を有する成形品の製造を可能にする。成分IIIの存在は、高温耐性、強度、靭性、耐摩耗性、耐酸化性または多孔性のような成分の特性の細かい"調整"を可能にする。
【0014】
純粋な溶射粉末は、成分の補修溶液として使用できる。まだ縦覧されていない特許明細書PCT/EP/2004/00736による単なる凝集/焼結粉末の使用は、溶射粉末としてベース材料よりも良好な摩耗および腐食挙動を示す表面層で成分の固有の被覆を可能にする。これらの特性は、PCT/EP/2004/00736による粉末製造の際の機械的負荷によって合金マトリックス中に極めて微細に分散したセラミック挿入物(酸素親和性の元素の酸化物)から生じる。
【0015】
成分Iは、2工程の方法により得ることができる金属粉、合金粉および複合粉であり、その際、まずベース粉末は、プレート状粒子に変形され、かつ次にこれらは粉砕助剤の存在で粉砕される。特に、成分IはASTM C 1070-01による Microtrac(R)X100粒度分析装置で測定して、75μm以下、有利には25μm以下の平均粒径D50を有する金属粉、合金粉および複合粉であり、より大きな平均粒径を有するベース粉末から、該ベース粉末の粒子を変形工程で、その粒径:粒子厚の比が10:1〜10000:1であるプレート状粒子に加工し、かつこれらのプレート状粒子を更なる方法工程で粉砕助剤の存在で粉砕に課す方法により入手可能である。
【0016】
Microtrac(R)X100粒度分析装置は、Honeywell社 USAから市販されている。
【0017】
粒径:粒子厚の比を測定するために、粒径と粒子厚は写真−光学顕微鏡を用いて測定する。このために、まず樹脂2体積部とプレート状物1体積部の比で、プレート状粉末粒子を透明な粘性エポキシド樹脂と混合する。この後に、混合の際に取り込まれた気泡を混合物の排気により除去する。次に、気泡不含の混合物を平らな基材の上に注ぎ、引き続きローラーを用いて広く圧延する。このように、プレート状粒子をローラーと基材の間の流れの場(field of stream)で適切に調整する。有利な層は、プレート状物の表面法線が平均して、均質な基材の表面法線に平行に並ぶことに特徴付けられる。すなわち、プレート状物は平均して層状に基材上に平らに並ぶ。硬化後に、基材上に存在するエポキシド樹脂プレートから適切な寸法の試料を加工する。これらの試料を基材に対して垂直および平行に顕微鏡で試験する。校正レンズを備えた顕微鏡を使用しながら、十分な粒子の配向を考慮し、少なくとも50個の粒子を測定し、かつ測定値から平均値を出す。これらの平均値は、プレート状粒子の粒子直径を表すものである。垂直断面から、基材と試験すべき試料を通して校正レンズを備えた顕微鏡を用いて粒子の厚さの測定を行い、これは粒径の測定にも使用した。基材に対して出来るだけ平行にある粒子だけを測定するように留意する。粒子は透明な樹脂により多方面にわたり包まれているので、適切に配向された粒子を選択し、かつ評価すべき粒子の境界を確実に付与するのに何の困難もない。再び、少なくとも50個の粒子を測定し、かつ測定値から平均値を出す。この平均値は、プレート状粒子の粒子厚を示すものである。粒径:粒子厚の比は、予め計算した大きさから計算して与えられる。
【0018】
この方法を用いて、特に細かい延性の金属粉、合金粉または複合粉を製造できる。この場合に、延性の金属粉、合金粉または複合粉とは、破壊するまで機械的負荷をかけた場合に、材料の著しい損傷(材料の脆弱化、材料破壊)が生じる前に塑性伸びまたは変形を受けるような粉末であると解釈される。このような塑性材料の変化は、材料に依存し、かつ最初の長さに対して、0.1パーセント〜数百パーセントである。
【0019】
延性の度合い、すわなち、可塑性を達成する材料の能力、すなわち機械的歪みの作用下の永久歪みは、機械的張力および/または応力試験を用いて測定もしくは記載できる。
【0020】
機械的引張試験により延性の度合いを測定するために、評価すべき材料からいわゆる引張試験体を製造する。この場合に、これは例えば円柱形の試験体であり、長さの中心箇所で試験体の全長の約30〜50%の長さまで、直径が約30〜50%減少したものである。引張試験体は、電気機械または電気油圧式引張試験機のクランプ装置にはめて固定する。実際の機械試験の前に、試験体の全長の約10%である測定長さまで試験体の中心に長さ測定センサーを設置する。これらの測定センサーは、機械的引張歪みを適用した際に選択した測定長さにおける長さの増大を追跡することができる。歪みは試験体が壊れるまで増大され、かつ長さ変化の塑性割合は応力−歪み図を用いて評価する。このような配置で少なくとも0.1%の塑性長さの変化を達成する材料は、本明細書の範囲内で延性と記載する。
【0021】
同様に、約3:1の直径:厚さの比を有する円柱形の材料の試験体に、市販の圧力試験機中で機械的圧力負荷を課すこともできる。この場合に、十分な機械的圧縮歪みを課した後に、円柱形の試験体に永久変形が生じる。一旦圧力が解放され、かつ試験体が取り除かれると、直径:厚さの比が増大したことが確認できる。このような試験で少なくとも0.1%の塑性変化を達成する材料は、本明細書の範囲内で延性とも記載される。
【0022】
少なくとも5%の伸張度を有する細かい延性の合金粉は、特にこの方法により製造される。
【0023】
それ自体が更に粉砕できない合金粉または金属粉の粉砕性は、目標を定めて添加されるか、または粉砕工程で製造される機械的、機械化学的および/または化学作用性粉砕助剤の使用により改善される。このアプローチの基本的な側面は、このように製造された粉末の化学的"目標組成物"が全体として変化してはならないことであり、むしろ例えば、焼結挙動または流動性のような加工特性が改善されるように影響を及ぼすべきである。
【0024】
この方法は、75μm以下、有利には25μm以下の平均粒径D50を有する種々の細かい金属粉、合金粉または複合粉を製造するために適切である。
【0025】
製造される金属粉、合金粉および複合粉は、通常は小さい平均粒径D50により特徴付けられる。平均粒径D50は、ASTM C1070-01により測定して15μm以下であるのが有利である(測定装置:Microtrac(R)X100)。製品特性を改善する目的で、この場合に細かい合金粉はむしろ好ましくないのであるが(多孔質構造は、この場合に焼結状態で特定の材料厚さが酸化/腐食に良く耐えることができる)、改善された加工特性(加圧、焼結)を保持しながら、大抵は試みられたものよりも著しく高いD50値(25〜300μm)を設定することもできる。
【0026】
ベース粉末として、例えば、既に所望の金属粉、合金粉または複合粉の組成物を有する粉末を使用できる。しかし、方法では幾つかのベース粉末の混合物を使用することもでき、これは適切な混合比の選択により漸く所望の組成物を生じる。さらに、製造された金属粉、合金粉および複合粉の組成物は、生成物中に残っている場合には粉砕助剤の選択によっても影響され得る。
【0027】
球状または不規則な形の粒子を有し、かつASTM C 1070-01により測定して、通常75μm以上、特に25μm以上、有利には30〜2000μmもしくは30〜1000μm、または75μm〜2000μmもしくは75〜1000μm、または30μm〜150μmの平均粒子直径D50を有する粉末は、特にベース粉末として有利に使用される。
【0028】
必要とするベース粉末は、例えば、金属溶融物を噴霧化し、必要な場合には引き続き選別または篩い分けすることにより得ることができる。
【0029】
ベース粉末は、はじめに変形工程に課される。変形工程は、公知の装置内、例えば、ロールミル、Hametagミル、高エネルギーミルまたは磨砕機または撹拌ボールミル内で実施できる。適切な方法技術を選択することにより、特に材料または粉末粒子の塑性変形を達成するために十分な機械的歪みの作用により、個々の粒子はこれらが最終的にはプレート状の形をとるように変形され、その際、粒子の厚さは有利には1〜20μmである。これは、例えば、一度だけローラーまたはハンマーミルに装入することにより、または数回"小さな"変形工程にかける、例えば、HametagミルまたはSimoloyer(R)内での衝撃粉砕により、または例えば磨砕機もしくはボールミル内で衝撃粉砕と研磨粉砕を組み合わせることにより実施できる。この変形の際の高い材料負荷は、構造の変化および/または材料の脆化を生じ、これを後続の工程で利用して材料を粉砕できる。
【0030】
公知の溶融冶金の速硬加工法は、リボンまたは"フレーク"を製造するためにも使用できる。機械的に製造されるプレート状物のように、これらは下記のような粉砕に適切である。
【0031】
変形工程が実施される装置、粉砕媒体および他の粉砕条件は、有利には磨砕および/または酸素もしくは窒素との反応の結果生じる不純物ができるだけ低いレベルに維持され、かつ生成物を使用するための臨界のレベルを下回るか、もしくは材料に該当する規格の範囲内にあるように選択される。
【0032】
このことは、例えば、粉砕容器の材料および粉砕媒体の材料の適切な選択により、および/または酸化および窒化阻害ガスの使用により、および/または変形工程の際の保護溶剤の添加により達成できる。
【0033】
方法の特殊な実施態様では、速硬工程で例えば、いわゆる"融解紡糸"により、1つ以上の有利には冷却したローラーの上もしくは間で冷却することにより、溶融物からプレート状粒子が直接に製造され、その結果直にプレート状物(フレーク)が生じる。
【0034】
変形工程で得られるプレート状粒子は、粉砕に課される。この場合に、一方では粒径:粒子厚の比が変えられ、その際、一般に1:1〜100:1、有利には1:1〜10:1の粒径:粒子厚の比を有する一次粒子(解凝集により得られるべき)が得られる。他方で、75μm以下、有利には25μm以下の所望の粒径が、粉砕が困難な粒子凝集物を新たに生じることなく調節される。
【0035】
粉砕は、例えば、遠心振動ミルのようなミル中で、また材料床ローラーミル、押出機または同様の装置中でも実施でき、これは種々の運動速度と負荷速度によりプレート状の形の材料崩壊を引き起こす。
【0036】
粉砕は、粉砕助剤の存在で実施される。粉砕助剤として、例えば、液体の粉砕助剤、ワックスおよび/または脆性粉末を添加できる。この場合に粉砕助剤は、機械的、化学的または機械化学的に作用できる。
【0037】
粉砕助剤は、例えば、パラフィン油、パラフィンワックス、金属粉、合金粉、金属硫化物、金属塩、有機酸の塩および/または硬質材料粉であってよい。
【0038】
脆性粉末または相は、機械的粉砕助剤としてはらたき、かつ例えば、合金、元素、硬質材料、炭化物、ケイ化物、酸化物、ホウ化物、窒化物または塩粉末の形で使用できる。例えば、予備粉砕した素粉末および/または合金粉を、粉砕しにくい使用ベース粉末と一緒に使用して、生成物である粉末の所望の組成物が得られる。
【0039】
使用すべきベース合金中に存在する元素A、B、Cおよび/またはDの二成分、三成分および/またはより多くの成分の組成物から成る粉末は、有利には脆性粉末として使用され、その際、A、B、CおよびDは、以下に挙げるような意味を有する。
【0040】
液体および/または容易に変形可能な粉砕助剤、例えば、ワックスも使用できる。例として、ヘキサン、アルコール、アミンまたは水性媒体のような炭化水素が挙げられる。これらは、有利には更なる加工の後続工程に必要であり、かつ/または粉砕後に簡単に除去できる化合物である。
【0041】
顔料の製造から公知である特殊な有機化合物を使用することもでき、そこでは凝集していない個々のプレート状物を液体環境で安定化させるために使用されている。
【0042】
特殊な実施態様では、ベース粉末との集中的な化学反応に関わり粉砕を促進し、かつ/または生成物の特定の化学組成物を調節する粉砕助剤が使用される。これらは、例えば、粉砕可能な化学的化合物であり、そのうち、単に1個だけ、または複数の成分が所望の組成物を調節するために必要であり、その際、少なくとも1つの成分もしくは構成成分を熱プロセスによって十分に除去することができる。
【0043】
例としては、水素化物、酸化物、硫化物、塩、糖のような還元可能および/または分解可能な化合物が挙げられ、これらは後続の生成物である粉末の加工工程および/または粉末冶金加工で少なくとも部分的に粉砕材料から除去され、かつこれらは残りの残留物と一緒に所望の方法で粉末組成物に化学的に補充される。
【0044】
粉砕助剤を別々に添加せず、粉砕の間にin-situで作ることもできる。この場合に、例えば反応ガスの添加により粉砕助剤を製造することにより進めることができ、粉砕の条件下に脆性相を形成しながらベース粉末と反応させる。反応ガスとして水素が有利に使用される。
【0045】
反応ガスで処理する際に、例えば、水素化物および/または酸化物を形成しながら生じる脆性相は、粉砕を行った後、または得られた細かい金属粉、合金粉または複合粉の加工の際に、通常相応の方法工程により再び取り除くことができる。
【0046】
製造された金属粉、合金粉または複合粉から除去されないか、または単に部分的だけ除去される粉砕助剤が使用される場合には、これらは、残った成分が材料の特性に望ましい影響、例えば、機械的特性の改善、腐食に対する感受性の軽減、硬度の増大および摩耗挙動もしくは摩擦挙動および滑り特性の改善を与えるように選択される。このための例には硬質材料の使用が挙げられ、以下の工程でその割合が、硬質材料と一緒に合金成分が更に加工されて、超硬金属または超硬金属−合金コンポジット材料になるように高くなる。
【0047】
変形工程および粉砕の後に、製造された金属粉、合金粉または複合粉の一次粒子は、ASTM C 1070-01(Microtrac(R) X100)により測定して通常25μm、有利には75μm未満、特に25μm以下の平均粒径50を有する。
【0048】
極めて微細な粒子間の公知の相互作用の結果、粉砕助剤を使用するにもかかわらず、所望の細かい一次粒子が形成される他に、その粒径が25μm以下の所望の平均粒径を著しく上回る粒径を有する粗い二次粒子(凝集物)も形成される。
【0049】
従って、粉砕は有利には解凝集工程に続いて行われるが、但し、製造すべき生成物は(粗い)凝集物を何も許容せず、または必要としない。その際、凝集物は分解され、かつ一次粒子が放出される。解凝集は、例えば、剪断力を機械的応力および/または熱応力の形でもたらすことにより、かつ/または予めプロセスで一次粒子の間に挿入された分離相を除去することにより行うことができる。使用すべき特殊な解凝集法は、極めて細かい粉末の凝集の度合い、意図する用途および酸化に対する感受性ならびに最終生成物中の許容できる不純物による。
【0050】
解凝集は、例えば、気体向流ミル、篩い分け、選別における処理により、または磨砕機、ニーダーまたはローター・ステーターディスペンサー中での処理のような機械的方法により行うことができる。例えば、一次粒子間で予め挿入された分離層を低温処理もしくは高温処理により溶解または転換することにより、または挿入された相もしくは意図的に作られた相の化学的変換により、超音波処理、熱処理の際に生じるような電圧場を使用することもできる。
【0051】
1つ以上の液体、分散助剤および/または結合剤の存在で、解凝集を実施することができる。このように、1〜95重量%の固形分を有するスリップ、ペースト、混練材料または懸濁液が得られる。30〜95重量%の固形分は、例えば、射出成形、シートモールディング、被覆、ホットキャストのような公知の粉末技術により直接に加工でき、次に適切な乾燥、脱脂および焼結工程で最終生成物に変換される。
【0052】
特に酸素に対して感受性のある粉末の解凝集に関しては、例えばアルゴンまたは窒素のような不活性ガス下に運転される気体向流ミルが有利に使用される。
【0053】
製造された金属粉、合金粉または複合粉は、例えば、噴霧化により製造される同じ平均粒径および同じ化学組成物を有する従来の粉末に対して、多くの特別な特性により傑出している。
【0054】
成分Iの金属粉は、例えば傑出した焼結挙動を示す。低い焼結温度の場合には、噴霧化により製造される粉末の場合のように大抵はほぼ同じ焼結密度を達成できる。同じ焼結温度では、同じ圧縮密度の圧縮粉から出発して圧縮体の金属部分に対してより高い焼結密度が達成できる。この増大した焼結活性は、従来製造された粉末の場合よりも、本発明による粉末の主な収縮最大が達成されるまで焼結工程の際に収縮が高くなること、かつ/または収縮最大が生じる(標準)温度は、PZD-粉末の場合には低くなることからも見て取れる。一軸加圧体の場合には、加圧方向に対して平行かつ垂直に種々の収縮経路を生じることができる。この場合に、関連する温度での収縮を付加することにより収縮曲線を計算して決定できる。この場合に、加圧方向の収縮は、収縮曲線に対して三分の一であり、かつ加圧方向に対して垂直の収縮は三分の二である。
【0055】
成分Iの金属粉は、DIN 51045-1による膨張計により測定して、その収縮は、初めの収縮最大の温度が達成されるまで、噴霧化により製造される同じ化学組成物で、かつ同じ平均粒径D50である金属粉、合金粉または複合粉の収縮の少なくとも1.05倍であり、その際、試験すべき粉末は、収縮を測定する前に理論密度の50%の圧縮密度まで圧縮される。
【0056】
成分Iの金属粉は、粗い粒子表面を有する特殊な粒子形態に基づき、さらに比較的良好な圧縮挙動により傑出しており、かつ比較的広い粒度分布に基づき、高い圧縮密度により傑出している。これらは、その他が同じ製造条件下の場合に噴霧化粉末からの圧縮粉が、同じ化学組成物で、かつ同じ平均粒径D50のPZD粉末からの圧縮粉よりも低い曲げ強さ(いわゆる圧粉体強さ)を有することを示している。
【0057】
さらに成分Iの粉末の焼結挙動は、特に粉砕助剤の選択により目標を定めて影響を及ぼすこともできる。従って、粉砕助剤として1つ以上の合金を使用でき、これはベース合金に比べて低い溶融温度に基づき、加熱の際に既に液相を形成する。これは粒子の再配列ならびに材料の拡散、ひいては焼結挙動もしくは収縮挙動を改善し、ひいては同じ焼結温度で高い焼結密度を達成するか、もしくは比較粉末よりも低い焼結温度で同じ焼結密度を達成することができる。化学的に分解可能な化合物を使用することもでき、その分解生成物は、ベース材料と一緒に、高い拡散係数を有する1つまたは複数の液相を生じ、これは圧縮に有益である。
【0058】
粉末冶金に使用するための従来の金属粉(MLV)は、例えばPCT/EP/2004/00736の図1に示されているような実質的に球状の粒子を有する粉末である。これらの金属粉は、素粉末または合金粉であってよい。これらの粉末は当業者に公知であり、かつ市販されている。それらの製造に多くの冶金的および化学的方法が公知である。細かい粉末を製造する場合には、この公知の方法は金属または合金を溶融することにより開始する。金属または合金の機械的な粗粉砕および細粉砕は、同様に"従来の粉末"の製造にも頻繁に使用されるが、しかし球状ではない形態の粉末粒子を生産する。これが原則的に機能するのであれば、これらは粉末製造の極めて簡単かつ有効な方法である(W. Schatt, K.-P. Wieters in "Powder Metallurgy−Processing and Materials"、EPMA European Powder Metallurgy Association, 1997, 5-10)。粒子の形態は、噴霧化の種類によっても決定的に定められる。
【0059】
噴霧化により溶融物の分解が行われる場合は、粉末粒子は製造された溶融液体粒子から凝固により直ちに形成される。冷却の種類(空気、不活性ガス、水での処理)、使用された方法パラメーター、例えば、ノズル形状、ガスの速度、ガスの温度またはノズル材料に応じて、ならびに溶融物の材料パラメーター、例えば、融点および凝固点、凝固挙動、粘度、化学組成および方法媒体との反応性に応じて、多くの可能性が生じるが、しかし方法の制限も生じる(W. Schatt, K.-P. Wieters in "Powder Metallurgy-Processing and Materials", EPMA European Powder Metallurgy Association, 1997, 10-23)。
【0060】
噴霧化による粉末製造は、特に工業的かつ経済的に重要であるので、種々の噴霧化コンセプトが確立されてきた。粒径、粒度分布、粒子形態、不純物のような要求される粉末の特性に応じて、および融点または反応性のような噴霧化すべき溶融物の特性に応じて、ならびに許容可能なコストに応じて、特定の方法が選択される。それでもやはり、経済的かつ工業的な観点で、許容可能なコストを達成するために、粉末の特定の特性プロフィール(粒度分布、不純物含有量、"目標粒子"の収率、形態、焼結活性など)には限界が頻繁に生じる(W. Schatt, K.-P. Wieters in "Powder Metallurgy-Processing and Materials", EPMA European Powder Metallurgy Association, 1997, 10-23)。
【0061】
噴霧化による粉末冶金に使用するための従来の金属粉の製造は、特に大量のエネルギーと噴霧化ガスを使用しなくてはならないという欠点があった。このことは、これらの方法を極めてコスト高にした。特に1400℃を上回る融点を有する高融点の合金からの細かい粉末の製造は、殆ど経済的ではない。なぜなら、一方では溶融物を製造するに当たり、高融点は極めて高いエネルギー投入を必要とし、他方では所望の粒径が小さくなるにつれてガス消費が著しく高まるからである。さらに、少なくとも1つの合金元素が高い酸素親和性を有する場合には、困難が生じる。特別に開発されたノズルを使用することにより、特に細かい合金粉を製造する際にコスト面の優位性を達成できる。
【0062】
噴霧化による粉末冶金に使用するための従来の金属粉を製造する他に、他の一工程の溶融冶金法も頻繁に使用される。これは、溶融物を冷却ローラー上に注ぎ、これにより一般に容易に粉砕できる薄いリボンが生じるいわゆる"溶融紡糸"であるか、またはプロファイルされた高速回転する冷却ローラーを金属溶融物中に浸して、その際に粒子または繊維が得られるいわゆる"るつぼ溶融抽出"である。
【0063】
粉末冶金に使用するための従来の金属粉を製造するために重要なもう1つの変法は、金属酸化物または金属塩の還元による化学的方法である。しかし合金粉の製造は、この方法ではできない(W. Schatt, K.-P. Wieters in "Powder Metallurgy-Processing and Materials", EPMA European Powder Metallurgy Association, 1997, 23-30)。
【0064】
1ミクロメーター未満の粒径を有する著しく細かい粒子は、金属と合金の蒸発および凝縮プロセスの組合せにより、ならびに気相還元により製造できる(W. Schatt, K.-P. Wieters in "Powder Metallurgy-Processing and Materials", EPMA European Powder Metallurgy Association, 1997, 39-41)。しかし、これらの方法は工業規模では極めてコスト高である。
【0065】
溶融物の冷却を大容量/ブロックで行う場合には、粉末冶金により加工できる金属粉または合金粉を製造するために、粗く、細かく、かつ極めて細かく粉砕する機械的方法工程が必要である。機械的粉末製造の概要は、W. Schatt, K.-P. Wieters in "Powder Metallurgy-Processing and Materials", EPMA European Powder Metallurgy Association, 1997, 5-47に挙げられている。
【0066】
機械的粉砕、特にミル中での粉砕は、粒径調節の最も古い方法として工業的観点から極めて有利である。なぜなら、これは殆ど費用がかからず、かつ多くの材料に使用可能であるからである。しかし、これらは例えば、供給材料の大きさや材料の脆性に関して供給材料に特定の要求を課す。さらに、粉砕は任意に続けなくてもよい。むしろ、粉砕平衡が形成され、これは細かい粉末を用いて粉砕プロセスを開始する場合でさえも確立される。従来の粉砕プロセスは、その都度の粉砕材料に関して粉砕性の物理的限界が達成された場合に変更され、かつ例えば低温での脆化または粉砕助剤の作用のような特定の現象は、粉砕挙動もしくは粉砕性を改善する。これらの前記の方法によって、粉末冶金で使用するための従来の金属粉が得られる。
【0067】
成分IとIIは、相互に独立に化学的に同じまたは異なっていることができ、かつ素粉末、合金粉またはこれらの混合物であることができる。
【0068】
成分IとIIの金属粉は、式I
hA−iB−jC−kD (I)
[式中、
Aは、元素Fe、Co、Niの1つ以上を表し、
Bは、元素V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Ti、Si、Ge、Be、Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptの1つ以上を表し、
Cは、元素Mg、Al、Sn、Cu、Znの1つ以上を表し、かつ
Dは、元素Zr、Hf、Mg、Ca、希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)の1つ以上を表し、
h、i、jおよびkは、質量部を表し、その際、
h、i、jおよびkは、相互に独立に0〜100質量%であるが、但し、h、i、jおよびkの合計は100質量%である]
の組成を有していてよい。
【0069】
本発明のもう1つの実施態様では、式I中、
Aは、元素Fe、Co、Niの1つ以上を表し、
Bは、元素V、Cr、Mo、W、Tiの1つ以上を表し、
Cは、元素Mg、Alの1つ以上を表し、かつ
Dは、元素Zr、Hf、Y、Laの1つ以上を表し、
hは、50〜80質量%、または60〜80質量%であり、iは、15〜40質量%、または18〜40質量%であり、jは、0〜15質量%、または5〜10質量%であり、kは、0〜5質量%、または0〜2質量%である。
【0070】
本発明のもう1つの実施態様では、成分IまたはIIは、素粉末または二元合金粉であるので、本発明による金属粉混合物から得ることができる成形品は相応して、より複雑な組成物を有する。例えば、本発明のこの実施態様では、成分IとIIに二元合金を使用することにより、四元合金から成る成形品を得ることができる。
【0071】
本発明のもう1つの実施態様では、成分IとIIは、二元もしくは四元合金粉のような、より高い合金粉であるので、その結果、本発明による金属粉混合物から得ることができる成形品は、相応して、より複雑な組成物を有する。成分IとIIは、相互に独立に、2種、3種、4種または5種の様々な金属を含有する合金から成っていることができるので、より複雑な合金も可能である。例えば、本発明のこの実施態様では、成分Iに二元合金、成分IIに四元合金を使用することにより、6種の金属を含有する合金から成る成形品を得ることができる。
【0072】
本発明のもう1つの実施態様では、金属粉混合物の成分IとIIの組成物、ならびにこれらから得られる成形品は、それぞれお互いに異なる。
【0073】
本発明のもう1つの実施態様では、本発明の金属粉混合物を粉末冶金成形法に課すことにより得られる成形品は、式Iの組成物を有する。
【0074】
本発明のもう1つの実施態様では、成形品は、成分Iおよび/または成分IIが主としてFe20Cr10A10.3Y、Fe22Cr7V0.3Y、FeCrVY、Ni57Mo17Cr16FeWMn、Ni17Mo15Cr6Fe5W1Co、Ni20Cr16Co2.5Ti1.5AlおよびNi53Cr20Co18Ti2.5Al1.5Fe1.5から成るグループから選択される合金から成る。
【0075】
本発明のもう1つの実施態様では、成分Iおよび/またはIIは、種々の素粉末または合金粉の粉末混合物であってもよい。例えば、合金成分として6種の金属を含有する成形品は、この場合に、二元合金である成分Iと、それぞれ二元合金である成分IIaと成分IIbを混合し、これらを粉末冶金成形法に課すことにより得ることができる。
【0076】
金属粉混合物中の成分IIの量は、獲得すべき意図した効果の種類と規模、ならびに金属粉混合物を粉末冶金成形法に課した場合に得られる成形品の所望の化学組成物による。成分IとIIが同じ場合には、成形品の化学組成物は既に確立されている。しかし、成分IとIIが異なる組成物を有する場合には、得られる成形品の組成物は、成分IとIIの種類、組成物および含有量により、これらは相応して調節すべきである。この場合に、本発明によれば、以前は、それらの製造に不適切であった加工法を用いて高合金金属材料から成形品を製造できる。原則的に当業者は、発生する効果に周知であるので、僅かな数の試験により個々の使用目的に最適な混合物を確立できる。一般に、従来の金属粉は成分I:成分IIの比が、1:100〜100:1、または1:10〜10:1、または1:2〜2:1または1:1の比で使用される。
【0077】
本発明は、高合金材料の製造に使用できる。ここで可能な方法を詳説することにする。金属粉混合物用の複合合金成分の製造は、一般に次のように記載できる。係数a、bおよびcの合計は、100質量%までであり、かつ記号aBMP−bLEM−cDOT−dMHM−eFUZは次のように使用される:
BMP(ベース金属粉):Fe、Ni、Co
LEM(合金元素):Cr、Al、Ti、Mo、W、Nb、Ta、V、・・・
DOT(ドーパント):SE(希土類金属)、Zr、Hf、Mg、Ca
MHM(粉砕助剤):パラフィン、炭化水素、脆性金属間相、他の脆性相(セラミック、硬質材料)
FUZ(機能性添加剤):セラミック、炭化水素、硫化物
指数dとeは、付加的に得られる粉砕助剤または機能性添加剤の量を示す。
【0078】
本発明の1実施態様では、合金組成物が保持される。金属粉混合物の組成物は次の通りである:
成分I: a1BMP − b1LEM − c1DOT − d1MHM
成分II: a2BMP − b2LEM − c2DOT
成分III: − e3FUZ(e3=0)
この場合に、成形品が作られる合金は次のようなものから成り、これは前記金属粉混合物から得られる:
(a1+ a2)BMP−(b1+ b2)LEM−(c1+ c2)DOT
(粉砕助剤なし)
この場合に、a1=a2かつb1= b2かつc1= c2である。すなわち、これが同じ合金の混合物であることを意味する。その際、成分IはPZD粉末である。(有機)粉砕助剤(MHM)は記載されない。それというのも、加工の際に完全に取り除かれていて、合金を変化させないからである。成分IとIIの割合は、加工または機能特性の要求に応じて成分I100%〜成分II0%、および成分I 1%〜成分II99%の間で変化できる。
【0079】
本発明のもう1つの実施態様では、合金組成物は成分IとIIの割合に相応して変化する。金属粉混合物は、次のように構成されている:
成分I: a1BMP − b1LEM − − d1MHM
成分II: a2BMP − − c2DOT
成分III: 存在しない
この場合に、成形品が作られる合金は次のようなものから成り、これは前記金属粉混合物から得られる:
(a1+ a2)BMP−(b1)LEM−(c2)DOT
(粉砕助剤なし)
この場合に、a1≠a2かつb1≠ b2かつc1≠ c2である。すなわち、これが2種の合金であることを意味する。成分Iはベース粉末(BMP)と合金元素(LEM)からのみ成り、成分IIは、濃縮した形でドーパントを付加すべき化合物として含有し、有利には特殊な冶金(例えば、低い融点)特性および/または機械(例えば、脆性、粉砕のしやすさ)特性を有する。このように、粉末技術の利点(液相での焼結)を使用して所望する最終的な合金を形成できる。ここでは、ドーパントはマスターバッチの形で導入され、これは合金の種類と組成物に応じて有利であることができる。(有機)粉砕助剤は記載されない。それというのも、加工の際に完全に取り除かれていて、合金を変化させないからである。成分IとIIの量の割合は、目的の組成物に応じて当業者により選択される。
【0080】
本発明のもう1つの実施態様では、合金組成物は成分I、IIaおよびIIbの割合に相応して変化する。金属粉混合物は、次のように構成されている:
成分I: a1BMP − b1LEM − − d1MHM
成分II: a2BMP − (b1LEM) − c2DOT
成分III: a3BMP
この場合に、成形品が作られる合金は次のようなものから成り、これは前記金属粉混合物から得られる:
(a1+ a2+ a3)BMP−(b1)LEM−(c2)DOT
(粉砕助剤なし)
この場合に、a1≠a2≠a3かつb1≠ b2かつc1≠ c2である。すなわち、これが2種の合金と1種のベース金属粉であることを意味する。成分Iはベース金属粉(BMP)と合金元素からのみ成り、成分IIは、ベース金属および/または合金元素と一緒に"濃縮した"形でドーパントを混合物として含有し、特殊な冶金特性と機械特性を有利に使用する。成分IIbは、経済的かつ簡単に製造できるベース金属を含有し、これらは成分I、IIおよびIIbと一緒に全合金を形成する。このように、先に記載した実施態様の粉末技術の利点の他に、工業的および経済的利点も使用できる。(有機)粉砕助剤は記載されない。それというのも、加工の際に完全に取り除かれていて、合金を変化させないからである。
【0081】
本発明のもう1つの実施態様では、合金組成物は成分IとIIの割合に相応して変化する。脆性合金は、混合助剤として有利に使用される。金属粉混合物は、次のようなものから成っている:
成分I: a1BMP − b1LEM − d1MHM=(a2BMP−c2DOT)
成分II: a3BMP
成分III: −e3FUZ=パラフィン
この場合に、成形品が作られる合金は次のようなものから成り、これは前記金属粉混合物から得られる:
(a1+ a2+ a3)BMP (b1)LEM−(c2)DOT
(粉砕助剤なし)
この場合に、a1≠a2≠a3である。すなわち、これが1種の合金と1種のベース金属であることを意味する。成分Iはベース金属粉(BMP)と合金元素(LEM)からのみ成る。粉砕助剤として、特にBMPとDOTから成る脆性組成物が使用される。成分IIIとして、粉末状のパラフィンが混合される。この場合に成分IIはベース金属粉であるが、組成物に変更を加えることができる。このように、合金(a2BMP−c2DOT)の粉末技術の利点を利用できる。成形品が作られる合金中では消えてしまうので、粉砕助剤は個別に記載していない。
【0082】
本発明のもう1つの実施態様では、組成物は成分IとIIの割合に相応して変化する。粉砕助剤として、脆性合金a2BMP−c2DOTを使用し、機能性添加剤(FUZ)として有機成分とセラミック粒子を使用する。金属粉混合物は、次のようなものから成る:
成分I: a1BMP − b1LEM −d1MHM=(a2BMP−c2DOT)
成分II: a3BMP
成分III: −e3FUZ=(PVA、セラミック)
この場合に、成形品が作られる合金は次のようなものから成り、これは金属粉混合物から得られる:
(a1+ a2+a3)BMP−(b1)LEM−(c2)DOT
(粉砕助剤なし)
この場合に、a1≠a2≠a3である。すなわち、これが1種の合金と1種のベース金属粉であることを意味する。成分Iはベース金属粉と合金元素から成る。粉砕助剤としてベース金属とドーパントから成る脆性組成物が使用される。ベース金属粉を用いて、組成物に変更を加えることができる。成分IIIは、PVA(ポリビニルアルコール)とセラミック粒子を含有し、これは例えば噴霧乾燥による更なる加工に有利である。この混合物は、例えば溶射粉末に加工できる。このように、粉末が相応に、例えば溶射により摩耗保護層として加工される場合には、合金(a2BMP−c2DOT)の粉末技術の利点と機能性添加剤の作用(硬さ、耐摩耗性)を利用できる。
【0083】
成分IIIとして、金属粉混合物は機能性添加剤を含有できる。機能性添加剤は、PZD粉末から製造される成形品に特徴的な特性を付与でき、例えば、衝撃強さまたは耐摩耗性を高める超硬粉末のような添加剤、または圧粉体の脆弱性を軽減し、かつ/または圧粉体強さを増大することにより圧粉体の加工を容易にする添加剤、または細孔構造もしくは表面特性を調節する鋳型としてはたらく添加剤である。
【0084】
機能性添加剤とは、均質に挿入される添加剤であると理解され、これは殆どまたは完全に最終生成物、成形品中に残って含有されるか、または殆どまたは完全に製品から取り除かれる。
【0085】
1番目の場合に、これは硬度、強度、減衰または衝撃強さのような機械的特性、または酸化/腐食挙動のような化学的特性、またはトライボロジー、触覚、導電性および磁気伝導性、弾性率、電気的腐食挙動、磁気歪挙動、電歪挙動のような機能性特性をそれらの割合や一次性質によりコントロールする機能性添加剤である。
【0086】
複雑な機械的、化学的および機能特性は、セラミック粒子または硬質材料、例えば、炭化物、ホウ化物、窒化物、酸化物、ケイ化物、水素化物、ダイヤモンド、特に周期系の第4、5および6族の元素の炭化物、ホウ化物および窒化物、周期系の第4、5および6族の酸化物、ならびにアルミニウムおよび希土類金属の酸化物、アルミニウム、ホウ素、コバルト、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウムのケイ化物、タンタル、ニオブ、チタン、マグネシウムおよびタングステンの水素化物;黒鉛、硫化物、酸化物のような潤滑油の特性を有する滑剤、特に硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化スズ(SnS、SnS2)、硫化銅または希土類金属−コバルトもしくは希土類金属−鉄をベースとする特殊な磁気または電気特性を有する金属間化合物のような種々の相/成分を挿入することにより生じさせることができる。
【0087】
このように、金属粉混合物を用いて、PZD−粉末で超硬粉末の被覆も達成できる。このことは、流動床造粒により有利に達成される。
【0088】
流動床造粒の際の使用材料として、BNとTiB2から成る粗い(50〜100μm)硬質材料粒子が使用でき、かつこれらは腐食耐性のある被覆を提供できる。このように、高い腐食負荷および機械負荷のもとで消耗する分野での新たな用途で役立つことができる。被覆の後に凝集物が脱脂され、不活性雰囲気中で焼結され、かつ溶射により塗布される。
【0089】
2番目の場合、すなわち製品から殆どまたは完全に取り除かれる機能性添加剤の場合には、これは適切な化学的方法または熱的方法により除去されるいわゆるプレースホルダー(place holder)であり、よってテンプレートとして機能する。その際に、これらは炭化水素またはプラスチックであることができる。適切な炭化水素は、低分子量の蝋質ポリオレフィンのような長鎖炭化水素、たとえば低分子量のポリエチレンまたはポリプロピレン、ならびに10〜50個の炭素原子を有するか、または20〜40個の炭素原子を有する飽和炭化水素、完全に不飽和の炭化水素または部分的に不飽和の炭化水素、ワックスおよびパラフィンである。適切なプラスチックは、特に400℃未満、または300℃より低い、または200℃より低い天井温度を有するものである。天井温度以上では、プラスチックは熱力学的に不安的であり、かつモノマーに分解する傾向がある(解重合)。適切なプラスチックは、例えば、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリアクリレート、特にポリメチルメタクリレート、またはポリスチレンである。本発明のもう1つの実施態様では、パッケージングまたは断熱材料を製造する際に基本材料または中間体として使用されるように、プラスチックは有利には発泡粒子の形で、例えば、発泡ポリスチレンビーズの形で使用される。同様に、昇華する傾向がある無機化合物もプレースホルダーとして作用できる。例えば、耐熱性金属の幾つかの酸化物、特に、レニウムおよびモリブデンの酸化物のように、ならびに水素化物(Ti水素化物、Mg水素化物、Ta水素化物)、有機塩(金属ステアレート)または無機塩のような、部分的に分解可能な、または完全に分解可能な化合物である。
【0090】
これらの機能性添加剤を加えることにより、十分に濃度の高い成分(理論密度の90〜100%)、低い多孔度(理論密度の70〜90%)および高い多孔度(理論密度の5〜70%)の成分を製造できる。これは、機能性添加剤をプレースホルダーとして含有する本発明による金属粉混合物を粉末冶金成形法に課すことにより行われる。
【0091】
機能性添加剤の量は、達成すべき意図する効果の種類と程度による。当業者は原則としてこの事に周知であるので、僅かな試験により最適な混合物を確立できる。これらの化合物を使用する場合には、プレースホルダー/テンプレートとして使用される化合物が、金属粉混合物中にそれらの目的に適切な構造で、すなわち粒子の形、顆粒、粉末、球状粒子または同様の形で存在するように留意しなくてはならない。
【0092】
一般に、機能性添加剤は、成分I:成分IIの比が1:100〜100:1、または1:10〜10:1または1:2〜2:1、または1:1の比で使用される。機能性添加剤が硬質材料、例えば、タングステンカーバイド、窒化ホウ素または窒化チタンである場合には、これらは有利には3:1〜1:100、または1:1〜1:10、または1:2〜1:7、または1:3〜1:6.3の量で使用される。
【0093】
本発明のもう1つの実施態様では、機能性添加剤は有利には3:1〜1:100、または1:1〜1:10、または1:2〜1:7、または1:3〜1:6.3の量で使用される。
【0094】
本発明のもう1つの実施態様では、金属粉混合物は、成分Iと成分IIおよび/または成分IIIの混合物であるが、但し、成分I:成分IIIの比は、3:1〜1:100、または1:1〜1:10、または1:2〜1:7、または1:3〜1:6.3である。
【0095】
本発明のもう1つの実施態様では、金属粉混合物は、成分Iと成分IIおよび/または成分IIIの混合物であるが、但し、硬質材料が成分III中に存在する場合には、成分I:成分IIIの比は、3:1〜1:100、または1:1〜1:10、または1:2〜1:7、または1:3〜1:6.3である。
【0096】
本発明のもう1つの実施態様では、金属粉混合物は、成分Iと成分IIおよび/または成分IIIの混合物であるが、但し、タングステンカーバイドが成分III中に存在する場合には、成分I:成分IIIの比は、3:1〜1:100、または1:1〜1:10、または1:2〜1:7、または1:3〜1:6.3である。
【0097】
更なる添加剤は、凝集物の圧縮挙動、強度または再分散性のような加工特性を改善するべきである。これらは、ポリエチレンワックスまたは酸化ポリエチレンワックスのようなワックス、モンタン酸エステル、オレイン酸エステルのようなエステルワックス、リノール酸またはリノレン酸のエステル、またはこれらの混合物、パラフィン、プラスチック、例えば、コロホニーのような樹脂、長鎖有機酸の塩、例えば、モンタン酸、オレイン酸、リノレン酸またはリノール酸の金属塩、金属ステアレート、金属パルミテート、例えば、ステアリン酸亜鉛、特にアルカリ金属およびアルカリ土類金属のもの、例えば、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、または滑剤であることができる。これらは、粉末加工(プレス成形、MIM、シートモールディング、スリップキャスティング)において標準である物質であり、かつ当業者に公知である。分析すべき粉末の圧縮は、プレス成形を補助する通常の助剤、例えば、パラフィンワックス、または他のワックス、有機酸の塩、例えばステアリン酸亜鉛を添加して行うことができる。さらに適切な添加剤は、W. Schatt, K-P. Wieters "Powder Metallurgy- Processing and Materials", EPMA European Powder Metallurgy Association, 1997, 49-51に記載されており、これを参照する。
【0098】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するために利用するものであり、その際、実施例は本発明の理解を容易にするものであり、それを制限するものではないことを理解されたい。
【0099】
実施例
実施例中で挙げられている平均粒径50は、ASTM C 1070-01によりHoneywell/US社のMicrotrac(R) X 100を用いて測定したものである。
例1
ベース粉末として、アルゴンで噴霧化したNi20Cr16Co2.5Ti1, 5Alの組成を有するNimonic(R) 90タイプの合金溶融物を利用した。得られた合金粉を53〜25μmの間で篩いにかけた。密度は、約8.2g/cm3であった。ベース粉末は、ほとんど球形粒子を有した。
【0100】
ベース粉末は、垂直型のボールミル中(Netzsch Feinmahltechnik; Type: PR 1S)で変形粉砕にかけ、その結果はじめは球状の粒子がプレート状になった。詳しくは以下のパラメーターを使用した:
・粉砕容器体積: 5リットル
・回転数: 400rpm/分
・周囲速度: 2.5m/秒
・ボール充填量: 80体積%(ボールの嵩容積)
・粉砕容器材料: 100Cr6(DIN 1.3505:約1.5 質量% Cr、約1質量%
C、約0.3質量% Si、約0.4% Mn、<0.3質量%
Ni、<0.3質量% Cu、残りFe)
・ボール材料: 超硬金属(WC-10Co)
・ボール直径: 約6mm(全量:25kg)
・計量供給した粉末: 500g
・処理持続時間: 2時間
・溶剤: エタノール(約2リットル)。
【0101】
引き続き、粉砕を実施した。この場合に、以下の方法パラメーターを用いて全体の遠心振動ミル(Siebtechnik GmbH社製の ESM 324)を使用した:
・粉砕容器体積: 5リットル、遊星として運転(直径20cm、長さ約16cm)
・ボール充填量: 80体積%(ボールの嵩容積)
・粉砕容器材料: 100Cr6(DIN 1.3505:約1.5 質量% Cr、約1質量%
C、約0.3質量% Si、約0.4% Mn、<0.3質量%
Ni、<0.3質量% Cu、残りFe)
・ボール材料: 100Cr6
・ボール直径: 10mm
・計量供給した粉末: 150g
・粉砕助剤: 2gパラフィン
・振幅: 約10mm
・粉砕雰囲気: アルゴン(99.998%)。
【0102】
2時間の粉砕持続時間の後に、極めて細かい粒子の凝集物が得られた。REM画像では、得られた生成物の1000倍の大きさで、カリフラワーの様な構造の凝集物(二次粒子)が検出可能であり、その際、一次粒子は25μmを大きく下回る粒径を有した。
【0103】
一次粒子または極めて細かい粒子凝集物の試料を3番目の方法工程に課し、TG400超音波装置(Sonic Ultraschallanlagenbau GmbH社)内で、イソプロパノール中、50%の最大出力で10分間の長さの超音波処理に課し、分離した一次粒子が得られた。
【0104】
解凝集した試料の粒度分布をASTM C 1070-01によりMicrotrac(R) X100(製造元:Honeywell/US)を用いて測定した。ベース粉末のD50値は40μmであり、処理の結果約15μmまで減少させた。
【0105】
粉砕から得られる一次粒子の残りの量は、二者択一的に第三の方法工程に課し、気体向流ミル中での処理により解凝集し、引き続きTG 400超音波装置(Sonic Ultraschallanlagenbau GmbH社)内で、イソプロパノール中、50%の最大出力で超音波処理に課した。再びMicrotrac(R) X100を用いて再び粒径の測定を行った。D50値は、今度は8.4μmであった。
【0106】
挿入した粉砕助剤であるパラフィンは、合金粉の粉末冶金による更なる加工の間に、熱劣化および/または蒸留により除去できるか、もしくはプレス成形助剤として使用できる。
【0107】
本発明による金属粉混合物を上記のように得られたPZD粉末から以下のように製造した:
先に開示したように製造したNimonic(R) 90−PZD粉末5kg(d50:10μmおよびd90:20μm)と(気体噴霧化した)球状のNimonic(R)90−粉末5kg(d50:10μmおよびd90:20μm)を粉末状のプレス成形助剤(Licowax C)233gと一緒にアイリッヒミキサー(Eirich mixer)中に加えた。20分間にわたり、3成分の強力な混合を行った。この粉末をVSP-711と称する。
【0108】
これと同様に、単に噴霧化した(通常の)粉末(Nimonic(R)90粉末10kg(d50:10μmおよびd90:20μm))を同じように加工したが、その際、Licowax300gを添加した。この粉末をKON-711と称する。
【0109】
両方の粉末を500MPaの圧力で、一軸加圧により高さ10mm、直径30mmの円柱物に加工した。KON-711の圧縮密度は、理論密度の75%であったが、しかしこの試験体は僅かな圧粉体強さだけを有した。VSP-711から得られた試験体は、その低い理論密度(70%)にもかかわらず、著しく改善された強度を有した。
【0110】
圧粉体強さを正確に測定するために、500MPaの加圧応力で正方形の圧縮体を製造した。図1は、種々の含有量のプレス成形助剤を有する粉末の品質VSP-711またはKON-711と、圧粉体強さの関係を原則的に示している。VSP-711から製造された圧縮体の圧粉体強さは、記載された条件下で2.5MPaまでであり、従って、比較試験体KON-711の場合の少なくとも2倍であった。試験体の圧縮体強さの測定は、DIN ISO 3995/1985に倣って曲げ歪下に直角の断面で行った。これらの測定の結果は表1に挙げられている。
【0111】
【表1】

【0112】
両方の粉末(VSP-711とKON-711)を金属粉プレス中で加圧し、DIN ISO 3927による6.35cm2の面積(加圧方向に平行)と5mmの長さを有する更なる試験体のPM引張試験棒にした。圧力は300〜800MPaの間で変化した。成分の密度は、圧力の増加に伴って増大した。表2には、粉末から直接にプレス成形された引張り試験体の圧粉体強さにおける加圧応力の依存性が記載されている[A(加圧方向の面積):6.35cm2;L(加圧方向での試験体の長さ):4〜5mm]。記載されている密度の値は、金属粉とプレス成形助剤(3%Licowax)の混合物に当てはまることに留意されたい。
【0113】
【表2】

【0114】
PM−引張り試験棒を水素下にガス流中で2K/分の加熱速度で室温から600℃まで脱脂し、次に約10-3mbarの高真空中、1290℃の温度で2時間焼結した。粉末タイプの試験体KON-711は脱脂と焼結の後に損傷(亀裂、破壊の兆候)を示し、これは加圧状態では目視されなかった。これとは異なり、VSP-711の引張り試験体は損傷を示さず、かつ殆ど粗さのない滑らかな試験体表面を有した。試験体は図2に示されている。さらに、両方のタイプの粉末の部分量を2K/分の加熱速度で室温から600℃まで脱脂した後に、水素下にホットプレス法(1150℃/2時間/35MPa/窒素)により黒鉛モールド中で圧縮した。ホットプレス後に、温度を約5〜15K/分まで下げ、室温まで達成した。このように生じた円板状物は、8.18g/cm3(KON-711)もしくは8.14g/cm3(VSP-711)の密度を有した。これらの円板状物(直径:100mm;厚さ:約5mm)を両サイドの研削により3.5mmの厚さにした。図3に示されているように、ウォータージェット切断により、これらから平らな引張り試験体を作った。その機械的性質は、引張り試験機中で評価した(Rm、引張り試験での破断歪み;Pp 0.2、0.2%の引張り試験体の伸び率が測定される機械的歪み)。図4には、引張り試験の測定曲線が記載され、室温での強度の比較が可能である。
【0115】
圧縮体を500MPaでプレス成形し、かつ1300℃と1330℃の焼結釜中、アルゴン−水素雰囲気(6.5体積%H2)中で、2時間焼結し、その後に水素下に有機プレス成形助剤を600℃まで除去した。結果は表2bに示してある。
【0116】
【表3】

【0117】
更なる特質は、KON-711とVSP-711から製造された試験体の細孔構造にあり、これは図5に記載されている
例2
良好な圧縮性、易流性かつ良好な焼結性を備えた顆粒の製造は、以下のように行った:
例1で製造されたNimonic(R) 90−PZD粉末5kg(d50:10μmおよびd90:20μm)と(気体噴霧化した)球状のNimonic(R)90−粉末5kg(d50:10μmおよびd90:20μm)を有機結合剤(ポリビニルアルコール、PVA、3質量%)および界面活性安定剤と一緒に水2〜3リットル中に加えた。安定な懸濁液が形成されるまでこの混合物を分散させた。この懸濁液を噴霧乾燥により加工し、1〜150μmの直径を有する殆どが球状から成る単一粒子の凝集物にした。向流の加熱窒素(気体温度30〜80℃)を作動気体として使用し、懸濁液を乾燥させた。乾燥の際に形成された気体混合物を、噴霧乾燥器の出口でフィルターを介して周囲に放出した。
【0118】
更なる加工性を改善し、保健工業基準のコンプライアンスを保証するために、"粉末状"の細かい部分(<10μm)と、>150μmの大きすぎる粒状物の部分を篩いにより分離した。このような顆粒(-150μm+10μm)は、十分な流動挙動を有した。このように得られた顆粒をVSP-712と称する。
【0119】
この顆粒の製造と平行して、噴霧化した(通常の)粉末(10kg)(Nimonic(R)90−粉末(d50:10μmおよびd90:20μm))を同様に、顆粒(-150μm+10μm)に加工した。これらの粉末をKON-712と称する。
【0120】
両方の粉末(VSP-712とKON-712)を例1で記載したのと同様に、焼結した部分の粉末の加圧特性、圧粉体強さ、焼結挙動および表面品質(粗さ)に関して評価した。結果は、上記の例で算出したデータと特性に一致した。
【0121】
例3
濃厚な注入性の顆粒の製造
冷間等方圧加圧法(CIP)により例1で製造した粉末混合物VSP-711とKON-711を用いてそれぞれ圧縮体を製造した。このために、顆粒をゴムモールド中に注ぎ、気密シールで密封し、引き続き、2000barの静水圧搾圧で圧縮した。KON-711から成る圧縮体では70%TDの圧縮が測定されたが、それに対してVSP-711は約65%TDの圧縮密度が達成された。CIP圧縮体を機械加工により次々に分解した(回転炉に装填し、かつ削り取りにより粗い"チップ"にした)。VSP-711の場合には、大部分(>50%、粒径d50:>100μm)が粗い粒状物に加工された。主に粉末状の生成物(粒子>100μm(<5%))が、KON-711の圧縮体から得られた。
【0122】
次に、これらのプレ顆粒をシーブグラニュレータープレート(sieve granulator plate)を用いて更に加工した。この方法は、"粉末チップ"のエッジを丸く削り、より流動性の顆粒を製造した。篩い分けの後に、−65μm+25μmのフラクション、すなわち、65μm未満および25μm以上の粒径を有するフラクションが得られた。この顆粒を粉末冶金成形法により更に加工した。このフラクションをVSP-721もしくはKON-721と称する。高密度および流動性の顆粒を製造する際の全収率は、VSP-721の場合には20〜50%であり、KON-721の場合には<20%であった。所望の顆粒バンド内に無かった顆粒部分を、それぞれ新たにCIP−体の製造法で使用した。
【0123】
例2からの金属粉混合物VSP-721とKON-721の加工特性の試験(圧粉体強さ、焼結特性)は、匹敵する結果を生じた。VSP-721は、所定の焼結温度で同じ初期密度を用いる場合に、KON-721と比べて高い圧粉体強さと、焼結密度を有した。
【0124】
例4
VSP-721、KON-721および同じ組成物の噴霧粉末VER-6525(フラクション:−65+25μm)からの多孔質体の製造
予め製造した顆粒VSP-721とKON-721ならびに保護ガスの噴霧化により製造した使用顆粒(-65+25μm)のような同じ組成物と同じ粒径の粉末VER−6525を、以下のように加工して多孔質の成形体にした:
3種の顆粒を、それぞれ3つの同じ焼結用平鍋(底面積:6cm×2cm;鋳込み高さ:3cm)に注入した。これらを焼結釜中、水素下に2K/分の加熱速度で600℃の温度までにした。この後に、10K/分の加熱速度で1250℃まで加熱した。1250℃の温度を2時間保持し、その後に焼結体を有する焼結釜を10K/分の速度で室温までにした。
【0125】
形成された(収縮)成形体を取り出し、かつ3点曲げ試験で評価した。これは、成形品が次のような様々な曲げ強さを達成したことを示している:VSP-721:40−約20MPa、KON-721:約20−5 MPaおよびVER−6525:<5 MPa。従って、変異体VSP-721の比較的に高い焼結活性は、例えば、フィルタエレメントにおける使用に望ましいように、十分に硬い成形品の生産を可能にする。焼結条件の最適化は、VSP-721を50MPaを上回る硬さまで高めることができる。
【0126】
例5
多孔質チューブ
高密度の顆粒(VSP-721、KON-721)から成る粉末充填物、かつ前記顆粒のように噴霧化により作られた同じ化学組成物で、かつ粒径の粉末(VER-6525)の焼結によるチューブ形多孔質体の製造。このために、それぞれ相応して製造された顆粒もしくは粗い噴霧粉末を、完全燃焼可能なコアを備えたセラミックモールドに入れた。このコアは、薄肉プラスチックチューブの形であり、これは注入後にその範囲にかかる粉末の圧力に十分に耐えて安定である。充填は、篩い分けにより製造された狭い顆粒もしくは粉末フラクション(-65+25μm)だけでされる。
【0127】
次の工程で、有機成分ならびに注入されたチューブは、熱分解または排除により焼結釜中で取り除かれ、同時に高温(1000℃)で予備焼結が始まった。次に予備焼結体を、なお立てたまま他の焼結釜中に入れ、そこで高ガス純度(真空、10-2mbarの圧力)で1300℃の温度が達成された。焼結後に、十分な収縮と十分な強度を有するVSP-721顆粒から成る成形品が得られた。これに対して、KON-721から成る成形品は、僅かな強さを示した。粗い粉末(VER-6525)から成る成形品は、使用した条件下に単に約5MPaの強度を達成し、これは不十分な強度ゆえに工業的利用を不可能にした。
【0128】
例6
強度の高い顆粒から成る粉末成形品
先に記載したVSP-721とKON-721の顆粒を、一軸成形機の粉末圧縮装置の隙間に注いだ。成形品を700MPaの一軸性加圧応力で製造し、これは次のような密度を達成した:VSP-721:5.3g/cm3(理論密度の65%)もしくはKON-721約6(g/cm3)(理論密度の73%)。圧粉体強さは、VSP-721から成る成形品に関しては10〜15MPaであり、KON-721から成る成形品に関しては2〜5MPaであった。例4に記載された温度−時間−プログラムに相応する焼結の後に、VSP-721から焼結された成形品は、7.8g/cm3の密度(理論密度の95%)、KON-721から焼結された成形品は7.7g/cm3の密度(理論密度の94%)を達成した。典型的な構造は、図5に記されている。
【0129】
例7
流動性および圧縮性を備えた粉末を製造するための流動床顆粒化
流動床顆粒化によるPZD粉末(例1によるNIMONIC(R)90)の加工(Glatt社のProCell機械を使用)は、10μm〜約300μmの粒径を有する凝集物の製造を可能にした。水性濁液を製造し、これを流動床室に噴入した。噴入した材料を乾燥させることにより、幾つかの一次粒子から作られた非常に小さな凝集物がまず液滴から形成された。これらを流動床顆粒化用のシードとして利用した。更なる液滴の分離とそれらの乾燥により、増大する直径を有する凝集物が生じた。増大プロセスは、増大する粒子の間で衝突を伴い、それにより表面の圧縮が達成された。懸濁液中に含有されている結合剤により、一次粒子はシードと成長する凝集物の表面に粘着した。粒径と凝集特性は、流動条件と空気の量の適切な調節により影響させることができる。このように製造された凝集物は、個々の凝集物顆粒中の成分の特に良好な均質性を有する。
【0130】
例8
ミル中での凝集による粗い粉末の製造
10μmのd50と20μmのd90を有する純粋なNimonic(R) 90 PZD−粉末を使用することにより、例1と同じ方法で製造して、極めて細かい粉末の一次特性(特に焼結挙動と加圧挙動)が殆ど保持されたまま凝集を行うことができた。
【0131】
詳細には、PZD−粉末600gを遠心振動ミルの測定容器中に加えた。材料100Cr6(DIN 1.3505)から成る直径15mmのスチールボールを使用した。媒体としてのアルゴン4.8中、80%のボール充填レベルと5リットルの粉砕容器体積で1500rpmの回転数で1時間粉砕した後に、明らかに"粗くなった"粉末がミルから取り出された。粒径d50は約40μmであった。
【0132】
例9
噴霧乾燥による機能性成分を有する金属粉混合物
溶射用の粉末として使用するための易流動性の顆粒の製造は、以下のように行った:
商標名Hastelloy(R) Cとして市販されている40μmの平均粒径D50を有する球面状に噴霧化したNi17Mo15Cr6Fe5W1Co−合金を例1に記載したように変形工程に課した。
【0133】
得られたプレート状粒子の粉砕は、粉砕助剤としてのタングステンカーバイドの存在で、遠心振動ミル中、以下の条件下で行った:
・粉砕容器体積: 5リットル
・ボール充填量: 80体積%
・粉砕容器材料: 100Cr6(DIN 1.3505)
・ボール材料: WC−10Co−超硬金属材料
・ボール直径: 約6.3mm
・計量供給した粉末: 150g
・振幅: 12mm
・粉砕雰囲気: アルゴン(99.998%)
・粉砕時間: 90分
・粉砕助剤: 13.5gWC(D50=1.8μm)
粉砕の結果、合金−硬質材料−複合粉が生じ、その際、その合金成分を粉砕して約5μmの平均粒径D50にし、かつ硬質材料成分を粉砕して約1μmの平均粒径D90にした。硬質材料粒子は、合金粉の体積中に殆ど均質に分散した。
【0134】
このように得られた5μmのd50と10μmのd90を有するHastelloy(R) C−PZD粉末1.5kgを、タングステンカーバイド(d50:1μm、d90:2μm)9.5kgと一緒に例2でVSP-712の製造で記載したように噴霧顆粒化により加工し、顆粒にした。噴霧顆粒化のパラメーターは、最小の細かい部分を形成できるように設定した。後の更なる加工(溶射)に不適切な部分を取り除くために、65μmよりも大きな粒径を有する粒子を篩い分けし、粗い部分を噴霧しやすい懸濁液に再び供給した(混入)。65μm未満の粒径を有するフラクションを底面積15cm×15cmの焼結用ボート中に高さ3cmまで充填し、引き続き水素下に脱脂し(2K/分の加熱速度で600℃まで加熱)、かつ1150℃の温度で焼結した。焼結ケーキを冷却後に取り除き、更に乳鉢中で軽く破砕することにより更に加工した。この場合に生じた細かい部分を、50μm−シーブで"トップ"に、および25μmシーブで"ボトム"に分類した。このように生じた、50μm未満〜25μmまでの粒径を有するフラクションを耐摩耗性の低いHastelloy C材料への耐摩耗性層と耐腐食層として溶射(高速フレーム溶射)により塗布した。図6では、部分画像"B"が、この被覆の結果を含んでいる。硬質材料粒子を包囲している均質なマトリックス合金が生じているのが見て取れる。よって期待した耐腐食性と耐摩耗性が可能になる。これとは異なり、容易に噴霧可能な粉末の製造と同様に顆粒化された基本的なベース粉末の使用は(部分画像"A")、形成された層中で不均質性を生じた。これは腐食環境の条件下では、強い腐食性を生じ得る。
【0135】
例10
容易に再分散可能な噴霧顆粒[LRDG]の製造
例2に倣って製造を行った。しかし、溶剤としてベンゼン(約10体積%)とエチルアルコール(約90体積%)から成る混合物を使用し、かつプラスチックとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。引火性の高い溶剤を取り扱う条件を考慮して、噴霧乾燥により各粒子(Hastelloy Cとタングステンカーバイド)が十分に強い結合を生じる顆粒を製造した。噴霧顆粒化のパラメーターは、細かい粒子の含有量が少ない粗い顆粒を生じ、これが良好な流動性を有するように調節した(d50:100μm、d90:150μm)。個々の狭いフラクションを蛍光X線分析により調査することにより、種々のフラクションで同じ化学組成物、従って使用した粉末成分の同じ割合が存在することが定量的に証明された。従って、各フラクションの成分が分解したとしても、化学的観点から分解する見込みが薄いので、形成された顆粒が均質に分布されることが推定できる。より長い期間の運動の後でも、例えば、DIN EN ISO 787-11またはASTM B 527によりキャップ密度を測定する場合に、周辺部の粒度分布の変化だけが生じ、このことから、顆粒中では使用した粉末成分の強い結合が達成されていたことが結論付けられる。
【0136】
例11
金属粉の射出成形により更に加工するための容易に再分散可能な顆粒(LRDG)からの粉末含有供給材料の製造
例10で製造した顆粒をアルコール中に撹拌しながら入れることにより、各粒子(Hastelloy Cとタングステンカーバイド)を放出できた。高剪断力を同時に使用しながら、十分に高い加工温度でワックス、ポリプロピレンおよび安定剤を剪断ローラーに加え、有機環境中で粉末状の機能材料の均質な分布が達成された。気泡不含の材料を顆粒化系により加工して、容易に運搬可能で、かつ均質な溶融冷却顆粒にした。これらを次に金属粉射出成形機のディスペンサー系に加え、加熱し、かつ測定すべき加工パラメーター(温度、圧力、圧力変化、後圧力、射出成形機中での冷却期間など)を用いて"射出成形"できる。これらの射出成形部材から溶剤抽出により、有機成分80〜95%を溶出した。これに続いて、水素下に試験体をゆっくり加熱すること(1K/分の加熱速度で室温から600℃まで)により、残りの熱脱脂が起こった。同じ焼結釜中、1000℃の温度で水素下にこれらの部材の予備焼結を行った。次に、真空焼結釜中で約10-2〜10-3mbarの圧力でこれらの試験体を完全に焼結した(5K/分の加熱速度で室温から1250℃まで加熱、1250℃で2時間保持および10K/分で室温まで冷却)。
【0137】
例12
冷間粉末圧延による成分の製造
例2で製造した顆粒VSP-712とKON-712を垂直型の粉末圧延機のスリットに次々に加え、圧縮した。この圧縮の結果、VSP-712の場合には、約2〜10MPaの圧粉体強さを有する扱いやすいシートが生じた。顆粒KON-712では、圧粉体強さを確実に測定できる試験体を取出すことができなかった。
【0138】
例11で記載したような熱後処理、脱脂および焼結により、VSP-712から成るシートを製造でき、これらは選択される焼結温度により、密度高(理論密度の93〜98%)、または多孔質(理論密度の60〜90%)であることができる。多孔質構造の僅かな密度にもかかわらず、これらのシートは、なお少なくとも50〜100MPaの強度を有した。
【0139】
例13
粉末圧延により製造された成分−シート製造
例2で製造した顆粒VSP-712とKON-712を緩い粉末供給物として脱脂し、かつ顆粒の安定化(強化)のために予備焼結した。これは例5で記載したような条件下に1000℃まで脱脂/予備焼結するために行った。例9に記載されているような−50+25μmまでの分類を含めて粉砕後に、このように生じた顆粒をそれぞれ粉末圧延により加工して未焼結リボンにした。顆粒KON-712の場合に未焼結リボンの強度は、焼結による更なる加工に十分であった。KON-712から成るフラグメントは、意図するシートへの更なる加工には不適切であった。例5に記載したように、1300℃の温度で未焼結リボンVSP-712の焼結を行う場合には、理論密度の92%を上回る密度が達成できた。
【0140】
例14
ローラーによる温間後圧縮により製造される成分
例13で記載した未焼結リボンは、焼結によって必ずしも圧縮する必要はない。圧縮の簡単な実現性は、ローラースリットに挿入する前に不活性保護ガス雰囲気(アルゴン)下に1100℃まで誘導的に未焼結リボンを加熱し、かつこの温度で強力な圧力負荷をかけることである。この方法から、シート状の成分が極めて簡単な方法で生じ、その際、ローラースリットのバリエーションにより、完全な圧縮(理論密度の>98%)または所望の残留多孔度(理論密度の50〜90%)を調節できた。ここでも、焼結成分を得るために、変異体KON-712は僅かな圧粉体強さを示した。
【0141】
例15
シート成形、脱脂および焼結により製造された成分
例10で記載した容易に再分散可能な粉末混合物を作る方法に基づき、かつそれに倣い、Hastelloy C粉末からのみ成る顆粒を製造した。タングステンカーバイドの割合は省略し、合金だけから成るシートを製造できるようにした。例11に記載した方法に基づき、かつそれに倣い、強力な粉砕によりシート成形可能な細孔不含の材料を製造した。
【0142】
この材料をナイフ塗布により平らな基材の表面上に連続的に塗布した。乾燥後に、金属粉で充填したシートは、有機成分と共にゴムのような性質を示す成形体として存在した。今度はこの成形体を0.1K/分の加熱速度で室温から600℃まで加熱することにより脱脂に課した。引き続き、この部材を例5で記載した条件下に焼結に課し、強度の増大を達成した。この工程では一般的に線圧縮が生じた。これは、焼結温度と期間に応じて10〜25%であることができる。
【0143】
例16
"標準に"調節された多孔度を有する成分
例15に倣って製造された圧粉体を、針型プレス(直径0.1〜0.5mmを有する針として形成されたスタンプ)の形の型打機を用いて、チューブ状の変形が表面法線に垂直に残るように処理した。
【0144】
例5で記載された条件下に脱脂および焼結した後に、密度の高い材料部分と、表面法線にある細孔チャンネルから成るシートが形成された。これらのチャンネルの数と直径により、粉末粒子の粒径が直接的な役割をすることなく簡単な方法で流れ抵抗を調節できる。このことは、極めて細かい粉末粒子を使用する場合には腐食特性と酸化特性の調節に重要である。
【0145】
例17
細かいセル多孔質構造を製造するためのVSPと有機プレースホルダーの混合物
PZD−粉末(VSP-711)3.7kg、粉末状(<30・・・50μm)ポリメチルメタクリレート(PMMA)148gならびにベンゼン(約10体積%)とエチルアルコール(約90体積%)との十分な量の混合物から、ニーダー中で"ハチミツ様の"粘度を有する気泡不含の供給材料を製造した。この後に、ニーダー中の前記供給材料に発泡ポリスチレンから成るビーズ(φ1〜1.5mm)0.67リットルを混合した。この材料(体積約0.9・・・1.1リットル)を平らなセラミックモールド(約30×30×1.5cm3)に加え、かつ乾燥させた。このように生じた成形体を水素下に約400℃までゆっくり加熱(0.5K/分)することにより、有機成分(ポリスチレンプレースホルダー、PMMA、残りの溶剤)から遊離させた。この後に、成形品を同じ釜中、5K/分で室温から1000℃まで加熱した。予備焼結した試験体を10K/分で室温から1300℃にし、かつそれを2時間保持することにより、予備焼結を真空焼結釜中(10-2〜10-3mbar)で行った。当初の体積(約1リットル)と比べて、完全焼結した試験体の体積は約0.4リットル減少した。これは、約26%の線圧縮に相応した。細孔(プレースホルダーにより引き起こされる)は、未焼結の状態で元の1〜1.5mm減少し、0.74〜1.1mmの減少に相応し、約7.4g/cm3の材料密度が金属部分で達成された。
【0146】
例18
ホットプレスしたFe22Cr7V0.3Y−合金の機械的特性
例1に倣って、PZD−粉末の製造を行ったが、その際、例1とは異なり抽出物(Nimonic(R)-90−粉末の代わり)として、噴霧化したFe22Cr7V0.3Y合金を使用した。
【0147】
相応して製造されたPZD−粉末と通常の(球形)粉末(−25μm、−53μm/+25μm)から、例3にまとめられている加工性粉末混合物をアイリッヒミキサー中で製造した。
【0148】
【表4】

【0149】
ホットプレス法による加工の前に、18.2、18.3および18.4から成る部分量を、水素下に2K/分の加熱速度で室温から600℃まで脱脂に課した。ホットプレスは、以下の条件下に行った:黒鉛モールド中1150℃/2時間/35MPa/アルゴン4.8。ホットプレス法の後、約5〜15K/分で室温に達するまで温度を下げた。このように得られた円板状物は、約100mmの直径を有した。これらから例1のようにウォータージェット切断により引張り試験体を製造し、かつ同じ厚さ(約3.4mm)に研削した。全ての試料は、7.55〜7.50g/cm3のほぼ同じ材料密度を有した。室温での機械的引張り試験の結果は、表4に挙げてある。
【0150】
表4からは、強度の値Rp0.2とRmが全てのPZD粉末含有変異体に関して改善されたことが分かる(Rp0.2:+5〜70%/Rm:+20〜50%)。延性(At−Fmax:弾性部分とプラスチック部分)に関して、18.1は最も良い値を有し、PZD−粉末含有の変異体は95〜45%の間のAt−Fmax値を達成している。さらに、変異体18.2、18.3および18.4は、プレス成形法と焼結法により総じて加工可能であるという事実を考慮して、本発明による金属粉混合物の原則的な利点が生じた。
【0151】
【表5】

【0152】
例19
"自由焼結"したFe22Cr7V0.3Y−圧縮粉の機械的特性
表3に挙げられた粉末混合物18.1、18.2、18.3および18.4をプレス成形助剤としてのLicowaxと混合することにより、粉末混合物19.1、19.2、19.3および19.4が得られた。これらを用いて、一軸加圧により引張試験棒[A(加圧方向の面):6.35cm2、l(加圧方向の長さ):4〜5mm、p:700MPa]の形の成形品が得られた。Licowaxの量は、全部で4質量%の有機成分が圧縮物に含まれるように選択した。これらの高い含有量はPZD−不含変異体(18.1もしくは19.1)だけに必要不可欠であるので、一般にそれらから十分な圧粉体強さを有する圧縮物を得ることができた。比較可能性を改善するために、残りの粉末を同量のプレス成形助剤で処理した。
【0153】
製造後に、水素下に成形品を脱脂に課した(2K/分で、室温から600℃まで)。次にMoヒーター付きの冷壁焼結釜(Thermal Technologie社)中、アルゴン4.8下に4つの異なる温度(1290、1310、1340および1350℃)で焼結を行った。10K/分で加熱を行い、最大温度を2時間保持した。焼結の後に、10〜15K/分の冷却速度で試験体を室温まで冷却した。
【0154】
結果は以下の表にまとめられている。細心の注意を払ったにもかかわらず、19.1の場合に1310℃と1340℃では試験可能な試験体が製造できなかった。これは、焼結温度によるものではなく、容易には見えないが、脱脂後に既に崩壊を頻繁に生じている加圧後の欠陥によるものであった。このような問題は、19.2〜19.4の場合には生じなかった。
【0155】
(これまで測定可能であったように)本発明による試験体(19.2、19.3および19.4)の全ての特性は、通常の粉末19.1のものと同じであるか、または改善されたことが見て取れる。最適温度では、+40〜130%のRm(表5.1)、5〜45%のRp0.2(表5.2)、+0〜270%のAt- Fmax(表5.3)および0〜2%(表5.4)において改善が達成された。しかし、これまでは焼結方法が何も最適化されていなかったことを言及すべきである。これが行われた後には、特に19.2〜19.4の特性の改善が期待できる。それというのも"加圧欠陥"する傾向が著しく低いので、特性の再現性における高い利点を期待できるからである。
【0156】
【表6】

【0157】
【表7】

【0158】
【表8】

【0159】
【表9】

【0160】
例20
Fe20C10A10.3Y−合金の焼結挙動
例1にならって、PZD−粉末の製造を行った。Nimonic(R)90−粉末の代わりに噴霧化したFe20Cr10A10.3Y−合金を抽出物として使用した。製造したPZD粉末を20.1(PZD-720)および比較粉末20.2(KON-720)と称する。表6には、加工した粉末混合物の情報が記載されている。プレス成形助剤としてLicowaxを使用した。
【0161】
【表10】

【0162】
表6に含まれている粉末を引張り試験棒(A:6.35cm2、l:4〜5mm;p:700MPa)に加工した。振動切断(加圧方向に対して垂直)により膨張計測定用の試験体を製造し、これを次に加圧方向に対して垂直に測定した。測定は、加熱速度2K/分で室温から500℃までゆっくり加熱する脱脂の他に、10K/分(保持時間:10分)で1320℃までの加熱と、1320℃から室温までの冷却速度10K/分での冷却から成った。結果は、図7に示されている。加熱速度は、注釈無しの下方の曲線により示されている。20.1の曲線は連続的であるが、20.2の曲線は中断されている。表7には結果がまとめられている。収縮の経過から、通常の粉末20.2の圧縮粉が熱膨張係数の結果、約1290℃まで延長を受けていることが分かる。収縮最大は温度1320℃まで存在しない。これを達成するためには、焼結温度を増大させる必要があったであろう。それに対して、PZD−試験体20.1の焼結収縮は、既に約1000℃で始まっていた。記載されてはいないが、最初の収縮最大は、約1300℃であった。
【0163】
これは、特許明細書PCT/EP/2004/00736に開示されている噴霧化により製造された通常の粉末およびそこで製造されているPZD−粉末の挙動に相応する。20.1は、4.78g/cm3(有機成分不含)という僅かな出発密度にもかかわらず、焼結後に約7.5g/cm3の密度を達成していることは注意に値する。これに対して、通常の試験体20.2は、出発密度5g/cm3の場合に、約5.7g/cm3だけの密度を達成している。よって、圧縮粉の製造能以外に、PZD粉末を焼結する利点が証明された。
【0164】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1は、プレス成形助剤の含有量が圧粉体強さに与える影響を示す図である。
【図2】図2は、引張試験体KON-711またはVSP-711を示す図である。
【図3】図3は、厚さ3.0〜3.5mmの試験体を示す図である。
【図4】図4は、引張試験の測定曲線を示す図である。
【図5】図5は、KON-711とVSP-711の細孔構造を示す図である。
【図6】図6は、不均質なマトリックス合金(画像A)と均質なマトリックス合金(画像B)を示す図である。
【図7】図7は、(20.1)(PZD-720)試験体と比較の(20.2)(KON-720)試験体の挙動を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM C 1070-01による粒度測定器Microtrac(R)X100を用いて測定して、75μm以下、有利には25μm以下の平均粒径D50を有し、より大きなまたは小さな平均粒径を有するベース粉末の粒子を変形工程で加工し、その粒径:粒子厚の比が10:1〜10000:1の間であるプレート状粒子にし、かつこれらのプレート状粒子を更なる方法工程で粉砕助剤の存在で粉砕に課す方法により得られる成分Iである金属粉、合金粉または複合粉、
粉末冶金の用途に通常の金属粉(MLV)である成分II、および/または
機能性添加剤である成分III、
を含有する金属粉混合物。
【請求項2】
DIN 51045-1による膨張計で測定した収縮が、初めの収縮最大の温度に到達するまで、噴霧化により製造される同じ化学組成物で、かつ同じ平均粒径D50を有する金属粉、合金粉または複合粉の収縮の少なくとも1.05倍であり、その際、試験すべき粉末は、収縮を測定する前に理論密度の50%の圧縮密度まで圧縮されている、成分Iである金属粉、合金粉および複合粉、
粉末冶金の用途に通常の金属粉(MLV)である成分IIおよび/または
機能性添加剤である成分III、
を含有する金属粉混合物。
【請求項3】
成分IまたはIIは、相互に独立に同じまたは異なっていて、かつ式Iの組成物
hA−iB−jC−kD (I)
[式中、
Aは、元素Fe、Co、Niの1つ以上を表し、
Bは、元素V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Ti、Si、Ge、Be、Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptの1つ以上を表し、
Cは、元素Mg、Al、Sn、Cu、Znの1つ以上を表し、かつ
Dは、元素Zr、Hf、Mg、Ca、希土類金属の1つ以上を表し、かつ
h、i、jおよびkは、質量部を表し、その際、
h、i、jおよびkは、相互に独立に0〜100質量%であるが、但し、h、i、jおよびkの合計は100質量%である]
を有する、請求項1または2に記載の金属粉混合物。
【請求項4】
Aは、元素Fe、Co、Niの1つ以上を表し、
Bは、元素V、Cr、Mo、W、Tiの1つ以上を表し、
Cは、元素Mg、Alの1つ以上を表し、かつ
Dは、元素Zr、Hf、Y、Laの1つ以上を表す、
請求項3に記載の金属粉混合物。
【請求項5】
hは、50〜80質量%であり、
iは、15〜40質量%であり、
jは、0〜15質量%であり、かつ
kは、0〜5質量%であるが、但し、h、i、jおよびkから成る合計は、100質量%である、請求項3または4に記載の金属粉混合物。
【請求項6】
成分Iおよび/または成分IIがFe20Cr10A10.3Y、Fe22Cr7V0.3Y、Ni17Mo15Cr6Fe5W1Co、FeCrVY、Ni20Cr16Co2.5Ti1.5Al、Ni53Cr20Co18Ti2.5Al1.5Fe1.5およびNi57Mo17Cr16FeWMnから成るグループから選択される合金である、請求項1または2に記載の金属粉混合物。
【請求項7】
通常の加圧助剤またはプレス成形助剤を含有している、請求項1から6までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項8】
成分IとIIから成る混合物である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項9】
成分IとIIIから成る混合物である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項10】
成分I、IIおよびIIIから成る混合物である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項11】
成分IIIとして、硬質材料、滑剤または金属間化合物を含有している、請求項1から10までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項12】
成分IIIとして、炭化物、ホウ化物、窒化物、酸化物、ケイ化物、水素化物、ダイヤモンド;周期系の第4、5および6族の元素の炭化物、ホウ化物および窒化物;周期系の第4、5および6族の酸化物;アルミニウムおよび希土類金属の酸化物;アルミニウム、ホウ素、コバルト、ニッケル、鉄、マンガン、モリブデン、タングステン、ジルコニウムのケイ化物;タンタル、ニオブ、チタン、マグネシウムおよびタングステンの水素化物;黒鉛、硫化物、酸化物、硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化スズ(SnS、SnS2)、硫化銅;窒化ホウ素、ホウ化チタンまたは希土類金属−コバルトもしくは希土類金属−鉄をベースとする特殊な磁気または電気特性を有する金属間化合物を含有している、請求項1から11までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項13】
金属IIIとして、長鎖炭化水素、ワックス、パラフィン、プラスチック、完全に分解可能な水素化物、耐熱性金属酸化物、有機および/または無機塩を含有している、請求項1から12までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項14】
成分IIIとして、低分子量のポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスチレン、酸化レニウム、酸化モリブデン、水素化チタン、水素化マグネシウム、水素化タンタルを含有している、請求項1から13までのいずれか1項に記載の金属粉混合物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の金属粉混合物を粉末冶金成形法に課す、成形品の製造法。
【請求項16】
粉末冶金成形法は、プレス成形、焼結、スリップキャスティング、シートキャスティング、湿式粉体スプレー、粉末圧延(冷間粉末圧延、熱間粉末圧延または温間粉末圧延の両方)、ホットプレス法、熱間等方圧加工法(HIP)、焼結−HIP、粉末充填物の焼結、冷間等方圧加圧法(CIP)から成るグループから選択され、特に焼結前加工、溶射および溶着溶接を用いる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法により得られる成形品。
【請求項18】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の粉末混合物を含有している成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−527167(P2008−527167A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549862(P2007−549862)
【出願日】平成18年1月7日(2006.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000085
【国際公開番号】WO2006/072586
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506350458)ハー ツェー シュタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシヤフト (14)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】