説明

金属膜作製装置及び金属膜作製方法

【課題】成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置及び金属膜作製方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態は、金属板及び基板が配置されるチャンバと、チャンバ内に原料ガスを導入する原料ガス供給手段と、前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長法により基板の表面に金属膜を作製する金属膜作製装置及び金属膜作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気相成長法により金属膜、例えば、銅の薄膜を作製する場合、例えば、銅・ヘキサフロロアセチルアセトナト・トリメチルビニルシラン等の液体の有機金属錯体を原料として用い、固体状の原料を溶媒に溶かし、熱的な反応を利用して気化して基板に成膜を実施している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、熱的反応を利用した成膜のため、成膜速度の向上を図ることが困難であった。また、原料となる金属錯体が高価であり、しかも、銅に付随しているヘキサフロロアセチルアセトナト及びトリメチルビニルシランが銅の薄膜中に不純物として残留するため、膜質の向上を図ることが困難であった。
【0004】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置及び金属膜作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明は、基板上への金属膜作製装置であって、金属板及び基板が配置されるチャンバと、チャンバ内に原料ガスを導入する原料ガス供給手段と、前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、基板上への金属膜作製装置であって、金属板および基板が配置されるチャンバと、チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、基板上への金属膜作製装置であって、金属製板および基板が配置されるチャンバと、チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、チャンバ内に還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、基板上への金属膜作製装置であって、金属板および基板が配置されるチャンバと、チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する供給手段と、前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と金属板との間に発生させる還元ガス加熱手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、基板上への金属膜作製装置であって、金属板および基板が配置されるチャンバと、チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する供給手段と、前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元ガスを高温に加熱する還元ガス加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、基板上への金属膜作製装置であって、金属板および基板が配置されるチャンバと、チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する供給手段と、前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と金属板との間に発生させる還元ガス加熱手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、上述の装置を用いて基板へ金属膜を作成する基板の製造方法であって、前記金属板の金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成し、前記原子状還元ガスにより前駆体から塩素を還元除去して金属イオンにして基板に当てることで基板上に金属膜を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属膜作製装置は、多数の噴射穴が穿設された金属製の噴射板を有しその内部に塩素を含有する原料ガスが供給される導入容器と、導入容器及び基板を収容するチャンバと、導入容器内の原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで噴射板をエッチングすることによって噴射板に含まれる金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成する第1プラズマ発生手段と、チャンバ内で水素を含有する還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備え、チャンバ内で前駆体が還元ガスプラズマ中に通されることにより、加熱されたチャンバ内壁に前駆体が付着しない状態で前駆体から塩素が還元除去され金属イオンのみにされて基板に当てられて基板上に金属膜が生成されるので、前駆体がチャンバの側壁に付着することが防止される。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、チャンバ内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。
【0013】
また、本発明の金属膜作製装置は、多数の噴射穴が穿設された金属製の噴射板を有しその内部に塩素を含有する原料ガスが供給される導入容器と、噴射板を所定温度に加熱する噴射板加熱手段と、導入容器及び基板を収容するチャンバと、導入容器内の原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで噴射板をエッチングすることによって噴射板に含まれる金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成する第1プラズマ発生手段と、チャンバ内で水素を含有する還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段とを備え、加熱された噴射板をエッチングすることにより生成されて還元されやすくなった前駆体が還元ガスプラズマ中に通されることにより、前駆体から塩素が還元除去され金属イオンのみにされて基板に当てられて基板上に金属膜が生成されるので、還元されやすい単量体の前駆体が生成されやすくなる。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度をより向上させることが可能になる。
【0014】
また、本発明の金属膜作製装置は、多数の噴射穴が穿設された金属製の噴射板を有しその内部に塩素を含有する原料ガスが供給される導入容器と、噴射板を所定温度に加熱する噴射板加熱手段と、導入容器及び基板を収容するチャンバと、導入容器内の原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで噴射板をエッチングすることによって噴射板に含まれる金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成する第1プラズマ発生手段と、チャンバ内で水素を含有する還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備え、加熱された噴射板をエッチングすることにより生成されて還元されやすくなった前駆体が還元ガスプラズマ中に通されることにより、加熱されたチャンバ内壁に前駆体が付着しない状態で前駆体から塩素が還元除去され金属イオンのみにされて基板に当てられて基板上に金属膜が生成されるので、前駆体がチャンバの側壁に付着することが防止されると共に、還元されやすい単量体の前駆体が生成されやすくなる。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、チャンバ内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になると共に、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度をより向上させることが可能になる。
【0015】
また、本発明の金属膜作製装置は、多数の噴射穴が穿設された金属製の噴射板を有しその内部に塩素を含有する原料ガスが供給される導入容器と、導入容器及び基板を収容するチャンバと、導入容器内の原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで噴射板をエッチングすることによって噴射板に含まれる金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成する第1プラズマ発生手段と、水素を含有する還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と噴射板との間に発生させる還元ガス加熱手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備え、チャンバ内で前駆体が原子状還元ガス中に通されることにより、加熱されたチャンバ内壁に前駆体が付着しない状態で前駆体から塩素が還元除去され金属イオンのみにされて基板に当てられて基板上に金属膜が生成されるので、前駆体がチャンバの側壁に付着することが防止される。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、チャンバ内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。
【0016】
また、本発明の金属膜作製装置は、多数の噴射穴が穿設された金属製の噴射板を有しその内部に塩素を含有する原料ガスが供給される導入容器と、噴射板を所定温度に加熱する噴射板加熱手段と、導入容器及び基板を収容するチャンバと、導入容器内の原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで噴射板をエッチングすることによって噴射板に含まれる金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成する第1プラズマ発生手段と、水素を含有する還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と噴射板との間に発生させる還元ガス加熱手段とを備え、加熱された噴射板をエッチングすることにより生成されて還元されやすくなった前駆体が原子状還元ガス中に通されることにより、前駆体から塩素が還元除去され金属イオンのみにされて基板に当てられて基板上に金属膜が生成されるので、還元されやすい単量体の前駆体が生成されやすくなる。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度をより向上させることが可能になる。
【0017】
また、本発明の金属膜作製装置は、多数の噴射穴が穿設された金属製の噴射板を有しその内部に塩素を含有する原料ガスが供給される導入容器と、噴射板を所定温度に加熱する噴射板加熱手段と、導入容器及び基板を収容するチャンバと、導入容器内の原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させ原料ガスプラズマで噴射板をエッチングすることによって噴射板に含まれる金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成する第1プラズマ発生手段と、水素を含有する還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と噴射板との間に発生させる還元ガス加熱手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備え、加熱された噴射板をエッチングすることにより生成されて還元されやすくなった前駆体が還元ガスプラズマ中に通されることにより、加熱されたチャンバ内壁に前駆体が付着しない状態で前駆体から塩素が還元除去され金属イオンのみにされて基板に当てられて基板上に金属膜が生成されるので、前駆体がチャンバの側壁に付着することが防止されると共に、還元されやすい単量体の前駆体が生成されやすくなる。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、チャンバ内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になると共に、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度をより向上させることが可能になる。
【0018】
また、本発明の金属膜作製装置は、塩素を含有する原料ガスを高温の金属フィラメントに接触させて金属フィラメントに含まれる金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を基板が収容されるチャンバ内に生成する前駆体供給手段と、水素を含有する還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と噴射板との間に発生させる還元ガス加熱手段と、チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段とを備え、チャンバ内で前駆体が原子状還元ガス中に通されることにより、加熱されたチャンバ内壁に前駆体が付着しない状態で前駆体から塩素が還元除去され金属イオンのみにされて基板に当てられて基板上に金属膜が生成されるので、前駆体がチャンバの側壁に付着することが防止される。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、チャンバ内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。
【0019】
本発明の金属膜作製方法は、チャンバ内で塩素と金属板により金属成分と塩素との前駆体を生成し、前駆体から塩素を還元除去して金属イオンにしてチャンバ内の基板に当てることで基板上に金属膜を生成するに際し、チャンバを所定温度に加熱してチャンバ内壁に前駆体が付着しないようにしたので、前駆体がチャンバの側壁に付着することが防止される。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、チャンバ内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。
【0020】
また、本発明の金属膜作製方法は、チャンバ内で塩素と金属板により金属成分と塩素との前駆体を生成し、前駆体から塩素を還元除去して金属イオンにしてチャンバ内の基板に当てることで基板上に金属膜を生成するに際し、金属板を所定温度に加熱して前駆体を還元しやすくしたので、還元されやすい単量体の前駆体が生成されやすくなる。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度をより向上させることが可能になる。
【0021】
また、本発明の金属膜作製方法は、チャンバ内で塩素と金属板により金属成分と塩素との前駆体を生成し、前駆体から塩素を還元除去して金属イオンにしてチャンバ内の基板に当てることで基板上に金属膜を生成するに際し、チャンバを所定温度に加熱してチャンバ内壁に前駆体が付着しないようにすると共に、金属板を所定温度に加熱して前駆体を還元しやすくしたので、前駆体がチャンバの側壁に付着することが防止されると共に、還元されやすい単量体の前駆体が生成されやすくなる。この結果、成膜速度が速く、安価な原料を用いることができ、膜中に不純物が残留しない金属膜作製装置とすることができ、しかも、チャンバ内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になると共に、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度をより向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図2】本発明の第2実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図3】本発明の第3実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図4】本発明の第4実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図5】本発明の第5実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図6】本発明の第6実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【図7】本発明の第7実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に基づいて本発明の金属膜作製装置及び金属膜作製方法の第1実施形態例を説明する。図1には本発明の第1実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。
【0024】
図に示すように、箱型に形成された、例えば、ステンレス製のチャンバ1の上部には第1プラズマ発生手段2が備えられ、チャンバ1の下部には第2プラズマ発生手段3が備えられている。また、チャンバ1の側部には磁場コイル4が備えられている。第1プラズマ発生手段2は、チャンバ1の上面に設けられた第1絶縁板21と、第1絶縁板21に設けられた第1プラズマアンテナ22と、第1プラズマアンテナ22に給電を行う第1電源23によって構成されている。また、第2プラズマ発生手段3は、チャンバ1の下面に設けられた第2絶縁板24と、第2絶縁板24に設けられた第2プラズマアンテナ25と、第2プラズマアンテナ25に給電を行う第2電源26によって構成されている。
【0025】
チャンバ1の内部の第1絶縁板21に下部には導入容器6が配置され、導入容器6には原料ガス5である塩素ガス(Cl2 ガス)が供給される。導入容器6の側部には流量制御器7及びノズル8が接続され、導入容器6の底部には銅(Cu)製の噴射板(金属板)9が設けられている。噴射板9には多数の噴射穴10が穿孔されている。チャンバ1の底部近傍には支持台11が設けられ、支持台11には基板12が載置される。支持台11は、図示しないヒータ手段により所定温度に昇温されている。また、磁場コイル4の下方におけるチャンバ1の下端部には還元ガス13である水素ガス(H2ガス)をチャンバ1の内部に供給する還元ガス流量制御器14及び還元ガスノズル15が設けられている。更に、チャンバ1の底部には排気口27が穿設されている。
【0026】
一方、チャンバ1の側壁にはチャンバ加熱手段としてのフィラメント状の加熱ヒータ28が設けられ、電源29により加熱ヒータ28が通電されることで、チャンバ1の側壁が所定温度、例えば、200 ℃〜600 ℃に加熱される。尚、所定温度の上限温度は、チャンバ1の耐久温度以下が好ましい。本実施形態例では、チャンバ1がステンレス製である場合について説明しているので、上限温度を600℃としている。このため、所定温度の上限温度はチャンバ1の材質により適宜設定される。
【0027】
チャンバ1の側壁を加熱することにより、後述する前駆体(CuxCly)がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuxCly)がチャンバ1の側壁に付着することを防止することができる。本実施形態例では、噴射板9がCu製である場合について説明しているので、前駆体(CuxCly)の蒸気圧力と温度との関係により所定温度の下限値を200 ℃としている。このため、所定温度の下限値は、噴射板9の材質に応じて生成される前駆体により適宜設定される。
【0028】
上述した金属膜作製装置では、導入容器6にCl2 ガスを導入し、第1プラズマ発生手段2の第1プラズマアンテナ22から電磁波を導入容器6内に入射することで、導入容器6内のCl2 ガスがイオン化されてCl2 ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)31が発生する。このCl2 ガスプラズマプラズマ31により、Cu製の噴射板9にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)30が生成される。前駆体(CuxCly)30は、噴射穴10を通って下方に噴射される。
【0029】
一方、チャンバ1内にH2ガスを導入し、第2プラズマ発生手段3の第2プラズマアンテナ25から電磁波をチャンバ1内に入射することで、チャンバ1内のH2ガスがイオン化されてH2ガスプラズマ(還元ガスプラズマ)32が発生する。H2ガスプラズマ32は、磁場コイル4によって形成された回転磁場により基板12の表面近傍に高密度で均一に分布する。
【0030】
噴射穴10を通って下方に噴射された前駆体(CuxCly)30は、基板12に到達する直前にH2ガスプラズマ32を通過する。還元ガスプラズマであるH2ガスプラズマ32を通過する前駆体(CuxCly)30は、原子状水素による還元反応により塩素が還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が生成される。
【0031】
この時、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度、例えば、200 ℃に加熱されているため、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。尚、チャンバ1の側壁が所定温度よりも低い温度、例えば、180 ℃程度の場合には、前駆体(CuxCly)30の蒸気圧力が十分に高くならず前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付着してしまうことが確認されている。
【0032】
尚、上記構成の金属膜作製装置では、原料ガス5として塩素ガス(Cl2 ガス)を例に挙げて説明してあるが、HCl ガスを適用することも可能であり、この場合、原料ガスプラズマはHCl ガスプラズマが生成されるが、Cu製の噴射板9のエッチングにより生成される前駆体30はCuxClyである。従って、原料ガス5は塩素を含有するガスであればよく、HCl ガスとCl2 ガスとの混合ガスを用いることも可能である。また、噴射板9の材質は、Cuに限らず、Ag,Au,Pt,Ti,W等を用いることが可能である。この場合、前駆体30はAg,Au,Pt,Ti,W等の塩化物となり、基板12の表面に生成される薄膜はAg,Au,Pt,Ti,W等になる。
【0033】
上記構成の金属膜作製装置は、Cl2 ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)31とH2ガスプラズマ(還元ガスプラズマ)32の2つのプラズマを用いているため、反応効率が大幅に向上して成膜速度が大きくなる。また、原料ガス5として塩素ガス(Cl2 ガス)を用い、還元ガス13として水素を含有したガスを用いているため、コストを大幅に減少させることができる。また、還元反応を独立に高めることができるので、Cu薄膜33中に塩素等の不純物の残留を少なくすることができ、高品質なCu薄膜33を生成することが可能になる。
【0034】
そして、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度に加熱されているため、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。このため、チャンバ1内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。
【0035】
図2に基づいて本発明の第2実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図2には発明の第2実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図1に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0036】
図2に示した第2実施形態例に係る金属膜作製装置は、図1に示した金属膜作製装置に対して、チャンバ加熱手段としてのフィラメント状の加熱ヒータ28及び電源29が設けられておらず、噴射板9を加熱する噴射板加熱手段が設けられている。即ち、導入容器6の底部には絶縁部41を介して銅(Cu)製の噴射板(金属板)9が設けられている。導入容器6の側部には希ガスであるHeガスを供給するための補助ノズル42が接続され、導入容器6には原料ガス5である塩素ガス(Cl2 ガス)と共にHeガスが供給される。導入容器6に供給されるCl2 ガスとHeガスは、略1対1の割合で供給される。噴射板9にはバイアス電源43が接続され、バイアス電源43により直流電圧が噴射板9に印加される。
【0037】
上述した金属膜作製装置では、第1プラズマ発生手段2の第1プラズマアンテナ22から電磁波を導入容器6内に入射することで、導入容器6内のCl2 ガス及びHeガスがイオン化されてCl2 ・Heガスプラズマ44が発生する。このCl2 ・Heガスプラズマ44により、バイアス電圧が印加された噴射板9にHeイオンが衝突して噴射板9が均一に加熱される。尚、噴射板9の加熱手段としては、Heイオンを衝突させる手段の他に、ヒータ等を噴射板9に直接設けて加熱する手段を適用することも可能である。
【0038】
噴射板9の加熱温度は、例えば、200 ℃乃至800 ℃の範囲に加熱され、好ましくは、600 ℃に加熱される。加熱温度の下限は、前駆体(CuxCly)30が噴射穴10を通る時に、重合体ではなく単量体に近い前駆体となる温度が好ましく、600 ℃に加熱されていると前駆体30は単量体のCuClとなりやすく、後述する還元反応が容易となる。また、加熱温度の上限は、噴射板9の材質に依存され、銅(Cu)製の噴射板9の場合は800 ℃が上限となり、800 ℃を越えると軟化して噴射板9が使用不可能になる。噴射板9に印加する電圧を制御することにより、噴射板9は所望の温度に制御される。
【0039】
導入容器6内にCl2 ・Heガスプラズマ44が発生することで、Cl2 ガスプラズマによりCu製の加熱された噴射板9にエッチング反応が生じ、単量体の前駆体(CuCl)30が生成されやすくなる。前駆体(CuCl)30は、噴射板9の噴射穴10を通って下方に噴射される。噴射穴10を通って下方に噴射された前駆体(CuCl)30は、基板12に到達する直前にH2ガスプラズマ32を通過し、原子状水素による還元反応により塩素が還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が生成される。
【0040】
下方に噴射された前駆体30は、単量体のCuClであるため、原子状水素により還元されやすくなっており、塩素が短時間に還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が短時間に生成される。従って、また、噴射板9がHeイオンの衝突により均一に所望温度に加熱されているので、還元されやすい単量体の前駆体(CuCl)30が生成され、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度を向上させることが可能になる。
【0041】
図3に基づいて本発明の第3実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図3には発明の第3実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図1、図2に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0042】
図3に示した第3実施形態例に係る金属膜作製装置は、図2に示した金属膜作製装置に対して、チャンバ加熱手段としてのフィラメント状の加熱ヒータ28及び電源29が設けられている。即ち、チャンバ加熱手段及び噴射板加熱手段が設けられた構成になっている。
【0043】
このため、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度、例えば、200℃に加熱されているため、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。また、下方に噴射された前駆体30は、単量体のCuClであるため、原子状水素により還元されやすくなっており、塩素が短時間に還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が短時間に生成される。
【0044】
従って、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度に加熱されているため、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。このため、チャンバ1内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。また、噴射板9がHeイオンの衝突により均一に所望温度に加熱されているので、還元されやすい単量体の前駆体(CuCl)30が生成され、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度を向上させることが可能になる。
【0045】
図4に基づいて本発明の第4実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図4には発明の第4実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図1に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0046】
図4に示した第4実施形態例に係る金属膜作製装置は、図1に示した金属膜作製装置に対して、還元ガスプラズマであるH2ガスプラズマ32に代えて原子状還元ガス51を発生させるようにしたものである。このため、第2プラズマ発生手段3に代えて、H2ガス等の還元ガス13を加熱して原子状還元ガス51にする還元ガス加熱手段52を備えた構成になっている。還元ガス加熱手段52は、還元ガス流量制御器14に還元ガスノズル15を設け、還元ガスノズル15の内部にタングステンフィラメント53を設け、タングステンフィラメント53の端部を直流電源54に接続したものである。
【0047】
上述した金属膜作製装置では、導入容器6にCl2 ガスを導入し、第1プラズマ発生手段2の第1プラズマアンテナ22から電磁波を導入容器6内に入射することで、導入容器6内のCl2 ガスがイオン化されてCl2 ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)31が発生する。このCl2 ガスプラズマプラズマ31により、Cu製の噴射板9にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)30が生成される。前駆体(CuxCly)30は、噴射穴10を通って下方に噴射される。
【0048】
前駆体(CuxCly)30が基板12に到達する直前に、還元ガス13であるH2ガスを還元ガス流量制御器14により流量制御し、直流電源54でタングステンフィラメント53を1800℃に加熱する。タングステンフィラメント53の加熱により原子状還元ガス51(原子状水素)を発生させ、原子状還元ガス51を還元ガスノズル15からチャンバ1内に噴射する。これにより、噴射穴10を通って下方に噴射された前駆体(CuxCly)30は、基板12に到達する直前に原子状還元ガス51を通過し、前駆体(CuxCly)30は、原子状水素による還元反応により塩素が還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が生成される。
【0049】
この時、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度、例えば、200 ℃に加熱されているため、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。
【0050】
上記構成の金属膜作製装置は、原料ガス5として塩素ガス(Cl2 ガス)を用い、還元ガス13として水素を含有したガスを用いているため、コストを大幅に減少させることができる。また、還元反応を独立に高めることができるので、Cu薄膜33中に塩素等の不純物の残留を少なくすることができ、高品質なCu薄膜33を生成することが可能になる。また、原子状還元ガス51である原子状水素を比較的柔軟な配置が可能な還元ガスノズル15のみで供給することができるので、面積の安定した(例えば、50mm×50mm)成膜に対応することができる。
【0051】
そして、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度に加熱されているため、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。このため、チャンバ1内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。
【0052】
図5に基づいて本発明の第5実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図5には発明の第5実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図4に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0053】
図5に示した第5実施形態例に係る金属膜作製装置は、図4に示した金属膜作製装置に対して、チャンバ加熱手段としてのフィラメント状の加熱ヒータ28及び電源29が設けられておらず、噴射板9を加熱する噴射板加熱手段が設けられている。即ち、導入容器6の底部には絶縁部41を介して銅(Cu)製の噴射板(金属板)9が設けられている。導入容器6の側部には希ガスであるHeガスを供給するための補助ノズル42が接続され、導入容器6には原料ガス5である塩素ガス(Cl2 ガス)と共にHeガスが供給される。導入容器6に供給されるCl2 ガスとHeガスは、略1対1の割合で供給される。噴射板9にはバイアス電源43が接続され、バイアス電源43により直流電圧が噴射板9に印加される。
【0054】
上述した金属膜作製装置では、第1プラズマ発生手段2の第1プラズマアンテナ22から電磁波を導入容器6内に入射することで、導入容器6内のCl2 ガス及びHeガスがイオン化されてCl2 ・Heガスプラズマ44が発生する。このCl2 ・Heガスプラズマ44により、バイアス電圧が印加された噴射板9にHeイオンが衝突して噴射板9が均一に加熱される。尚、噴射板9の加熱手段としては、Heイオンを衝突させる手段の他に、ヒータ等を噴射板9に直接設けて加熱する手段を適用することも可能である。
【0055】
噴射板9の加熱温度は、例えば、200 ℃乃至800 ℃の範囲に加熱され、好ましくは、600 ℃に加熱される。加熱温度の下限は、前駆体(CuxCly)30が噴射穴10を通る時に、重合体ではなく単量体に近い前駆体となる温度が好ましく、600 ℃に加熱されていると前駆体30は単量体のCuClとなりやすく、後述する還元反応が容易となる。また、加熱温度の上限は、噴射板9の材質に依存され、銅(Cu)製の噴射板9の場合は800 ℃が上限となり、800 ℃を越えると軟化して噴射板9が使用不可能になる。噴射板9に印加する電圧を制御することにより、噴射板9は所望の温度に制御される。
【0056】
導入容器6内にCl2 ・Heガスプラズマ44が発生することで、Cl2 ガスプラズマによりCu製の加熱された噴射板9にエッチング反応が生じ、単量体の前駆体(CuCl)30が生成されやすくなる。前駆体(CuCl)30は、噴射板9の噴射穴10を通って下方に噴射される。噴射穴10を通って下方に噴射された前駆体(CuCl)30は、基板12に到達する直前に原子状還元ガス51を通過し、前駆体(CuCl)30は、原子状水素による還元反応により塩素が還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が生成される。
【0057】
下方に噴射された前駆体30は、単量体のCuClであるため、原子状水素により還元されやすくなっており、塩素が短時間に還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が短時間に生成される。従って、噴射板9がHeイオンの衝突により均一に所望温度に加熱されているので、還元されやすい単量体の前駆体(CuCl)30が生成され、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度を向上させることが可能になる。
【0058】
図6に基づいて本発明の第6実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図6には発明の第6実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図4、図5に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0059】
図6に示した第6実施形態例に係る金属膜作製装置は、図5に示した金属膜作製装置に対して、チャンバ加熱手段としてのフィラメント状の加熱ヒータ28及び電源29が設けられている。即ち、チャンバ加熱手段及び噴射板加熱手段が設けられた構成になっている。
【0060】
このため、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度、例えば、200℃に加熱されているため、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。また、下方に噴射された前駆体30は、単量体のCuClであるため、原子状水素により還元されやすくなっており、塩素が短時間に還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が短時間に生成される。
【0061】
従って、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度に加熱されているため、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuCl)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。このため、チャンバ1内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。また、噴射板9がHeイオンの衝突により均一に所望温度に加熱されているので、還元されやすい単量体の前駆体(CuCl)30が生成され、塩素が短時間に還元除去されて成膜速度を向上させることが可能になる。
【0062】
図7に基づいて本発明の第7実施形態例に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法を説明する。図7には発明の第7実施形態例に係る金属膜作製装置の概略側面を示してある。尚、図4に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0063】
図7に示した第7実施形態例に係る金属膜作製装置は、図4に示した金属膜作製装置に対して、導入容器6内でCl2 ガスプラズマ31を発生させて前駆体(CuxCly)30を生成させる代わりに、原料ガス加熱手段61のノズル8から前駆体(CuxCly)30をチャンバ1内に噴射させるようにしたものである。原料ガス加熱手段61は、流量制御器7にノズル8を設け、ノズル8の内部に複数回巻いた状態の銅フィラメント62を設け、銅フィラメント62の端部を直流電源63に接続したものである。直流電源63により銅フィラメント62は300 ℃〜600 ℃に加熱される。
【0064】
上述した金属膜作製装置では、原料ガスであるCl2 ガスを流量制御器7で流量制御してノズル8に導入する。ノズル8の内部には直流電源63により300 ℃〜600 ℃に加熱された銅フィラメント62が設けられているため、Cl2 ガスを加熱された銅フィラメント62に接触させることにより前駆体(CuxCly)30を生成させる。ノズル8からチャンバ1内に前駆体(CuxCly)30を導入すると、前駆体(CuxCly)30は下方に移動する。
【0065】
前駆体(CuxCly)30が基板12に到達する直前に、還元ガス13であるH2ガスを還元ガス流量制御器14により流量制御し、直流電源54でタングステンフィラメント53を1800℃に加熱する。タングステンフィラメント53の加熱により原子状還元ガス51(原子状水素)を発生させ、原子状還元ガス51を還元ガスノズル15からチャンバ1内に噴射する。これにより、噴射穴10を通って下方に噴射された前駆体(CuxCly)30は、基板12に到達する直前に原子状還元ガス51を通過し、前駆体(CuxCly)30は、原子状水素による還元反応により塩素が還元除去されてCuイオンのみにされて基板12に当てられ、基板12の表面にCu薄膜33が生成される。
【0066】
この時、チャンバ1の側壁が前述同様に加熱ヒータ28により所定温度、例えば、200 ℃に加熱されているため、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。
【0067】
上記構成の金属膜作製装置は、前駆体(CuxCly)30を比較的柔軟な配置が可能なノズル8のみで供給し、原子状水素を比較的柔軟な配置が可能な還元ガスノズル15のみで供給することができるので、面積の極めて安定した(例えば、100mm ×100mm )成膜に対応することができる。
【0068】
そして、チャンバ1の側壁が加熱ヒータ28により所定温度に加熱されているため、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付いても蒸気圧力が高くなり気化しやすくなり、前駆体(CuxCly)30がチャンバ1の側壁に付着することが防止されている。このため、チャンバ1内の定期的なクリーニング処理が不要になり、原料歩留りが向上すると共にランニングコストを低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0069】
1 チャンバ
2 第1プラズマ発生手段
3 第2プラズマ発生手段
4 磁場コイル
5 原料ガス
6 導入容器
7 流量制御器
8 ノズル
9 噴射板
10 噴射穴
11 支持台
12 基板
13 還元ガス
14 還元ガス流量制御器
15 還元ガスノズル
21 第1絶縁板
22 第1プラズマアンテナ
23 第1電源
24 第2絶縁板
25 第2プラズマアンテナ
26 第2電源
27 排気口
28 加熱ヒータ
29 電源
30 前駆体(CuxCly)
31 Cl2 ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)
32 H2ガスプラズマ(還元ガスプラズマ)
33 Cu薄膜
41 絶縁部
42 補助ノズル
43 バイアス電源
44 Cl2 ・Heガスプラズマ
51 原子状還元ガス
52 還元ガス加熱手段
53 タングステンフィラメント
54 直流電源
61 原料ガス加熱手段
62 銅フィラメント
63 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板及び基板が配置されるチャンバと、
チャンバ内に原料ガスを導入する原料ガス供給手段と、
前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、
チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、
前記還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と、
チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段と
を備えることを特徴とする基板上への金属膜作製装置。
【請求項2】
金属板および基板が配置されるチャンバと、
チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、
前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、
チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、
前記還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と
を備えることを特徴とする基板上への金属膜作製装置。
【請求項3】
金属製板および基板が配置されるチャンバと、
チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、
前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、
チャンバ内に還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、
前記還元ガスをプラズマ化して還元ガスプラズマを発生させる第2プラズマ発生手段と、
チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段と
を備えることを特徴とする基板への金属膜作製装置。
【請求項4】
金属板および基板が配置されるチャンバと、
チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する供給手段と、
前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、
チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、
前記還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と金属板との間に発生させる還元ガス加熱手段と、
チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段と
を備えることを特徴とする基板への金属膜作製装置。
【請求項5】
金属板および基板が配置されるチャンバと、
チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する供給手段と、
前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、
前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、
チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、
前記還元ガスを高温に加熱する還元ガス加熱手段と
を備えることを特徴とする基板上への金属膜作製装置。
【請求項6】
金属板および基板が配置されるチャンバと、
チャンバ内に塩素を含有する原料ガスを供給する供給手段と、
前記金属板を所定温度に加熱する金属板加熱手段と、
前記原料ガスをプラズマ化して原料ガスプラズマを発生させる第1プラズマ発生手段であって、前記原料ガスプラズマが前記チャンバ内において前記金属板と反応するように配置されている第1プラズマ発生手段と、
チャンバ内に水素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、
前記還元ガスを高温に加熱して原子状還元ガスをチャンバ内の基板と金属板との間に発生させる還元ガス加熱手段と、
チャンバを所定温度に加熱するチャンバ加熱手段と
を備えることを特徴とする基板への金属膜作製装置。
【請求項7】
さらにチャンバ内に希ガスを導入する手段を有することを特徴とする請求項2、請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載の金属膜作製装置。
【請求項8】
前記金属板加熱手段は、チャンバ内に希ガスを導入し、第1プラズマ発生手段で希ガスプラズマを発生させて電圧の印加により希ガス成分イオンを金属板に衝突させることで金属板を加熱する手段であることを特徴とする請求項2、請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載の金属膜作製装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項の装置を用いて基板へ金属膜を作製する基板の製造方法であって、
前記金属板の金属成分と原料ガス中の塩素との前駆体を生成し、前記原子状還元ガスにより前駆体から塩素を還元除去して金属イオンにして基板に当てることで基板上に金属膜を生成することを特徴とする基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−149999(P2009−149999A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88834(P2009−88834)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【分割の表示】特願2000−161507(P2000−161507)の分割
【原出願日】平成12年5月31日(2000.5.31)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】