説明

金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置

【課題】非磁性体の金属薄板に対して好適に検査し得る金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】非磁性体の金属薄板1に対して渦流探傷を行う金属薄板の非破壊検査方法であって、プローブ2の周波数を10kHz以上100kHz以下にすると共に、プローブ先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップを1.0mm以下にし、非磁性体の金属薄板1を搬送中に検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に金属薄板を製造する圧延工程では金属薄板の表面や内部に割れ等のきずを生じる可能性があり、現在、金属薄板のきずを検査する非破壊検査方法では金属薄板の表面を目視で検査すると共に金属薄板の内部を超音波探傷で検査するようにしている。
【0003】
尚、金属薄板の非破壊検査方法に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1,2等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−223788号公報
【特許文献2】特開平8−178902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属薄板の製造工程において目視の検査と超音波探傷の検査を実施する場合には、二種類の検査を行う検査場所のスペースと検査時間が必要になり、更に製造コストが増加するという問題があった。また目視の検査は人間の目で判断を行うため、眼精疲労等によるきずの見逃しが懸念されている。
【0006】
また耐食性や耐熱性等の特性を有するチタン等の非磁性体の金属薄板を製造する際には好適に非破壊検査を行うことが求められていた。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、非磁性体の金属薄板に対して好適に検査し得る金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属薄板の非破壊検査方法は、非磁性体の金属薄板に対して渦流探傷を行う金属薄板の非破壊検査方法であって、プローブの周波数を10kHz以上100kHz以下にすると共に、プローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを1.0mm以下に保持し、非磁性体の金属薄板を搬送中に検査するものである。
【0009】
また本発明の金属薄板の非破壊検査方法において、プローブ先端と非磁性体の金属薄板との間に非磁性フィルムを配してギャップを一定にすることが好ましい。
【0010】
更に本発明の金属薄板の非破壊検査方法において、非磁性体の金属薄板は、0.1mm以上5.0mm以下の板厚であることが好ましい。
【0011】
更にまた本発明の金属薄板の非破壊検査方法において、プローブの周波数を40kHz以上80kHz以下にすると共に、プローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを0.5mm以下にすることが好ましい。
【0012】
本発明の金属薄板の非破壊検査装置は、非磁性体の金属薄板に対して渦流探傷を行う金属薄板の非破壊検査装置であって、10kHz以上100kHz以下の周波数を発振するプローブと、該プローブからの信号を処理して金属薄板のきずを判定する制御部とを備え、非磁性体の金属薄板を検査する際には、プローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを1.0mm以下に保持し、非磁性体の金属薄板を搬送中に検査するように構成するものである。
【0013】
また本発明の金属薄板の非破壊検査装置において、プローブ先端と非磁性体の金属薄板との間に非磁性フィルムを配することが好ましい。
【0014】
本発明の金属薄板の非破壊検査装置は、非磁性体の金属薄板の移送手段に配置する金属薄板の非破壊検査装置であって、非磁性体の金属薄板の下面または上面のいずれか一面に接触するように非導電性のシートを配するギャップ保持手段と、該ギャップ保持手段のシートと反対側から非磁性体の金属薄板を押える押付手段とを備え、前記プローブは、ギャップ保持手段のシートを介して非磁性体の金属薄板を探傷する構成を備え、前記ギャップ保持手段は、シートの厚みでプローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを一定にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置によれば、プローブの周波数を10kHz以上100kHz以下に保持すると共に、プローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを1.0mm以下にする条件下で、非磁性体の金属薄板を搬送中に渦流探傷するので、チタン等の非磁性体の金属薄板に対して好適に検査することができる。また渦流探傷を行うことにより金属薄板の表面や内部を同時に検査し得るので、金属薄板の製造工程において目視の検査と超音波探傷の検査とを実施することを不要にし、検査場所のスペースと検査時間を低減し、更に製造コストを抑制することができるという種々の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置を示す概念図である。
【図2】発明者らが開発した装置であって本発明の実施の他例を概念的に示す側面図である。
【図3】本発明の実施の他例であって移送手段及びギャップ保持手段の配置を概念的に示す平面図である。
【図4】本発明の実施の他例であって押付手段の配置を概念的に示す平面図である。
【図5】非磁性体の金属薄板及びギャップ保持手段のシートを挟み込む状態を概念的に示す拡大側面図である。
【図6】プローブホルダ内のプローブの配置を示す概念図である。
【図7】チタン等の非磁性体の金属薄板の疵部を断面から観察した結果を示す写真である。
【図8】非磁性体の金属薄板に対し、試験周波数40kHzにて試験したときのプローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップ値と内在きず信号の出力電圧を示すグラフである。
【図9】非磁性体の金属薄板に対し、試験周波数80kHzにて試験したときのプローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップ値と内在きず信号の出力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の実施の形態例の金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置は、図1に示す如く渦流探傷に用いるものであって、非磁性体の金属薄板1に近接して配置するプローブ2と、該プローブ2からの信号を処理する制御部3とを備えている。
【0019】
プローブ2は、コイル(図示せず)により非磁性体の金属薄板1に渦電流を生じ、専用の渦電流発生用コイルと2つの検出コイルからなる相互誘導自己比較方式で構成されている。またプローブ2は10kHz以上100kHz以下、好ましくは40kHz以上80kHz以下の周波数を発振するようになっている。ここでプローブ2は、10kHz以上100kHz以下の周波数を発振するならば他の形式のものでも良い。またプローブ2内のコイルは、螺旋状に支持されると共にプローブ2の先端から0.1mm離れた位置にコイル先端を配置している。
【0020】
制御部3は、プローブ2に接続されてコイルのインピーダンス変化を検出する検出回路と、検出回路の信号を増幅する増幅回路と、前記信号を弁別する弁別回路と、更に弁別回路からの信号に対してノイズをカットするフィルタ回路とを備えている。また制御部3には、検出回路等を介して得られた信号から関数処理に基づいて金属薄板1の割れ等のきずを判断する処理部が配置されている。
【0021】
またプローブ2と非磁性体の金属薄板1との間隔は、一定に保つ必要があり公知の方法や装置が採用できる。また発明者らが開発した下記のような装置を採用しても良い。
【0022】
発明者らが開発した装置は、図2〜図6に示す如く非磁性体の金属薄板1を移送する移送手段に配置されるものであり、非磁性体の金属薄板1の下面または上面のいずれか一面(図2では下面)に非導電性のシートを配するギャップ保持手段5と、ギャップ保持手段5のシートを介して非磁性体の金属薄板1の一面に近接する渦流探傷のプローブ6と、非磁性体の金属薄板1の他面をプローブ6と反対側から押える押付手段7とを備えている。
【0023】
移送手段は、両側のコンベアプーリ8に無端状ベルト9を巻き掛けたコンベア10であり、複数のコンベア10を配置して非磁性体の金属薄板1を移送するようにしている。
【0024】
ギャップ保持手段5は、互いに隣接する二つのコンベア10の間に位置し、非磁性体の金属薄板1の下面に近接する第一従動プーリ11及び第二従動プーリ12と、第一従動プーリ11及び第二従動プーリ12の下方に位置する主プーリ13とに、シート状のベルト14を無端状に巻き掛けて構成されている。またベルト14は、第一従動プーリ11と第二従動プーリ12の間を走行する部分が非磁性体の金属薄板1の移送方向と略平行になって非磁性体の金属薄板1の下面に面接触している。更にベルト14は、厚みを0.10mm以上0.50mm未満、好ましくは0.25mm以上0.30mm以下にした非導電性のシートで形成されており、素材は非導電性で且つ摺動性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂で構成されている。ここでギャップ保持手段5は、非磁性体の金属薄板1の移送に伴ってベルト14を従動させても良いし、主プーリ13にモータ等の駆動手段を備えてベルト14を非磁性体の金属薄板1の移送と同期させるようにしても良い。
【0025】
プローブ6は、非磁性体の金属薄板1の移送方向と略垂直に延在するプローブホルダ15内に、互い違い(千鳥状)に複数個(図6では8個)で配置され、検査範囲を重ねて非破壊検査の範囲に漏れが無いようにしている。プローブホルダ15は、外部から延在するフレーム16によりベルト14の内周側で第一従動プーリ11と第二従動プーリ12との間に固定され、ベルト14の下側に面接触してプローブ6と非磁性体の金属薄板1とでギャップ保持手段5のベルト14を挟み込むようにしている。ここでプローブ6は、コイル(図示せず)により磁界mを生じて導電体の非磁性体の金属薄板1に渦電流を生じ、金属薄板1の違う部位で比較する相互誘導自己比較方式で構成されているが、プローブ6で渦流探傷し得るならば方式や構成は制限されるものではない。またプローブ6内のコイルは、螺旋状に支持されると共にプローブ6の先端から0.1mm離れた位置にコイル先端を配置している。
【0026】
押付手段7は、プローブ6の上方に位置するローラ17で構成されており、ローラ17は、プローブ6の反対側から非磁性体の金属薄板1及びギャップ保持手段5のベルト14を押圧している。またローラ17は、軸部18にスプリング等の弾性手段(図示せず)を備えて板厚の異なる非磁性体の金属薄板1に対応し得ると共に、ローラ17の荷重及び弾性力等により非磁性体の金属薄板1の反りを矯正するようにしている。更にローラ17は、ポリウレタン等の非導電性の樹脂素材からなる外周部19を備え、渦流探傷に影響を与えることがないようにすると共に、外周部19の圧縮変形により平面状の接触面を構成するようにしている。ここでローラ17は、非磁性体の金属薄板1の移送に伴って従動して回転しても良いし、モータ等の駆動手段(図示せず)を備えて非磁性体の金属薄板1の移送と同期するように回転しても良い。
【0027】
一方、非磁性体の金属薄板1は、非磁性体の金属であれば問題は無いが、例えばJIS H 4600に記載されている、チタンまたはチタン合金、非磁性ステンレス鋼板等が例示できる。板厚は0.1mm以上5.0mm以下、好ましくは0.5mm以上2.0mm以下、導電率は0.0058×10S/m以上0.6×10S/m以下のものであれば特に制限されるものではない。なお図1の実施例の場合にも同じ素材、板厚、導電率の非磁性体の金属薄板1が例示できる。
【0028】
以下本発明を実施する形態例の作用を説明する。
【0029】
非磁性体の金属薄板1を圧延工程で検査する際には、プローブ2から10kHz以上100kHz以下、好ましくは40kHz以上80kHz以下の周波数を発振すると共に、非磁性体フィルムを用いてプローブ先端から非磁性体の金属薄板1の表面までのギャップを0mmより大きく1.0mm以下、好ましくは0.001mm以上0.5mm以下の一定値にして渦流探傷する。
【0030】
そして、チタン等の非磁性体の金属薄板1に対して表面や内部に割れ等のきずがある場合には、非磁性体の金属薄板1に渦電流の変化を生じることから、制御部3の検出回路、増幅回路、弁別回路、フィルタ回路を介して信号を処理し、更に処理した信号から処理部の関数処理に基づいて金属薄板1の割れ等のきずを検出する。
【0031】
また発明者らが開発した装置の場合について説明すると、非磁性体の金属薄板1を圧延工程で非破壊検査を行う際には、移送手段のコンベア10で板状の非磁性体の金属薄板1を高速で移送し、同時に板状の非磁性体の金属薄板1の移送に伴って、ギャップ保持手段5のベルト14を走行させると共に押付手段7のローラ17を回転させ、プローブ6と押付手段7のローラ17とにより板状の非磁性体の金属薄板1及びギャップ保持手段5のベルト14を一時的に挟み込んで下流側へ移送する。
【0032】
そして板状の非磁性体の金属薄板1及びギャップ保持手段5のベルト14を挟み込んだ際には、ベルト14のシートの厚みによってプローブ6先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップ(間隔)を一定に保つと共にギャップを0mmより大きく1.0mm以下、好ましくは0.001mm以上0.5mm以下の一定値にし、プローブ6の渦流探傷によりベルト14のシートを介して板状の非磁性体の金属薄板1を下方から非破壊検査を行う。
【0033】
ここでプローブ6は、フレーム16に固定された状態で渦流探傷を行うと共に、ギャップ保持手段5によりプローブ6先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップが一定に維持されるので、非磁性体の金属薄板1を高速で移送する場合でも渦流探傷の非破壊検査に悪影響を与えることがない。またギャップ保持手段5のベルト14を形成するシートは、非導電体であることから渦流探傷に影響を与えることがなく、またシートの良好な摺動性によりプローブ6に影響を与えることなくプローブホルダ15を摺動すると共に板状の非磁性体の金属薄板1にきずを付けることがない。更にギャップ保持手段5は、シートの厚みの異なるベルト14に交換することにより、プローブ6先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップを所望の距離(リフトオフ量)に設定することが可能となり、また適宜、調整・交換することも可能となる。
【0034】
以下、本発明の形態例の非磁性体の金属薄板の非破壊検査方法及び非破壊検査装置を用い、JIS H4600に記載されている、JIS第4種のチタン薄板を用いて、渦流探傷した試験結果を示す。用いたチタン材の化学成分を表1に示す。
【表1】


【0035】
[試験1]
試験1では、渦流探傷によりきずを検出し得るか否か周波数を変えて試験を試みた。
〔試験方法の条件設定〕
探傷範囲を所定の部位(試験体の端部より50mm〜100mm)とし、走査ピッチを5mmピッチとし、走査方法を手動走査とした。
渦流探傷方法及び装置の設定条件は、試験周波数を10kHz、40kHz、80kHz、100kHzとし、感度設定を一定にし、位相設定を90°(垂直指示)にして所定の試験体の探傷範囲にて最大波形となる波形を得るようにし、更に画面出力レンジを0.5V/Divとした。
試験体は、チタン等の非磁性体の金属薄板として、厚さ1.5mmのJIS第4種のチタン板であって内部に20μmのきずが連なるように集合したきずや、40μmのきずを有するものを使用した。これらの疵部を、断面から観察した結果として図7の写真に示す。
〔渦流探傷信号の比較検討方法〕
最初に試験周波数100kHzにて各試験体の探傷範囲の探傷を行った結果、それぞれの試験体の中で最大となる渦流探傷出力信号箇所について10kHz、40kHz、80kHz、100kHzの出力信号値の比較を行った。
そして探傷結果データから出力電圧値およびS/N比をまとめた結果を[表1]に示す。
【0036】
【表2】


【0037】
[表1]の結果から、10kHz以上100kHz以下の間で良好な出力電圧値とS/N比を得ることができ、更に40kHz以上80kHz以下の場合に極めて良好な出力電圧値とS/N比を得ることができた。このため10kHz以上100kHz以下の範囲、特に好ましくは40kHz以上80kHz以下の範囲で試験体内のきずの検出に適用でき、非磁性体の金属薄板に対して渦流探傷できることが明らかとなった。
【0038】
また周波数を100kHzより大きくした場合には、非磁性体の金属薄板内のきずの検出性が低下し、周波数を10kHz未満にした場合には、信号のピークを適切に検出することができず、チタン等の非磁性体の金属薄板に対して渦流探傷に適用できないことが判明した。
【0039】
[試験2]
試験2では、渦流探傷においてプローブ先端から非磁性体の金属薄板の表面までのギャップを変えて試験を試みた。使用した非磁性体の金属薄板は、試験1で使用したものを用いた。
〔試験方法〕
試験1で実施した探傷部位と同位置で、きず検出性に優れた40kHzと80kHzの周波数でプローブと試験体との間に厚さ0.3mm、0.5mm、1.0mmの非磁性フィルムを配置し、プローブと試験体と間を一定のギャップにしてリフトオフ量ときず検出性の比較を行った。そして各試験体での試験周波数40kHzと80kHzでのリフトオフによる出力電圧値についてまとめ、その結果を図8、図9のグラフに示す。
【0040】
図8、図9のグラフの結果から試験周波数とリフトオフによる減衰を比較すると、80kHzよりも40kHzの方が減衰が少ないことが分かる。これにより、きずの検出性、S/N比、リフトオフによる減衰を含め、40kHzでの探傷が適正であると判断できた。また図2に示す40kHzでのリフトオフによる出力電圧グラフから、暫定的にきず検出のしきい値を0.5Vと設定した場合、検査装置のリフトオフ量0.5mmが許容範囲と言える。
【0041】
またプローブ先端から非磁性体の金属薄板の表面までのギャップが1.0mmより大きい場合には、出力電圧が低くなることが判明し、プローブ先端から非磁性体の金属薄板の表面までのギャップが0mmの場合には、プローブ先端が非磁性体の金属薄板に直接接触し、非磁性体の金属薄板を搬送に伴って非磁性体の金属薄板の表面に傷を生じ、製品である金属薄板の品質を低下させるため、渦流探傷に適用できないことが判明した。
【0042】
而して、このように実施の形態例によれば、プローブ2の周波数を10kHz以上100kHz以下にすると共に、プローブ先端から非磁性体の金属薄板1の表面までのギャップを0mmより大きく1.0mm以下にする条件下で、非磁性体の金属薄板1を搬送中に渦流探傷するので、チタン等の非磁性体の金属薄板1に対して好適に検査することができる。
【0043】
また渦流探傷を行うことにより非磁性体の金属薄板1の表面や内部を同時に検査し得るので、非磁性体の金属薄板1の製造工程において目視の検査と超音波探傷の検査とを実施することを不要にし、検査場所のスペースと検査時間を低減し、更に製造コストを抑制することができる。また目視の検査を不要にするので、眼精疲労等によるきずの見逃しを防止することができる。
【0044】
また実施の形態例において、プローブ先端と非磁性体の金属薄板1との間に非磁性フィルム4を配してギャップを一定にすると、非磁性体の金属薄板1を搬送中にギャップが変化することを防止すると共に、非磁性体の金属薄板1を確実に保護し、チタン等の非磁性体の金属薄板1に対して一層好適に検査することができる。
【0045】
非磁性体の金属薄板1は、0.1mm以上5.0mm以下、好ましくは0.5mm以上2.0mm以下の板厚であると、非磁性体の金属薄板1の搬送中に渦流探傷により好適に検査することができる。ここで、非磁性体の金属薄板1の板厚が5.0mmより大きい場合には、内部のきずを検出できない虞があり、その場合には金属薄板表面の両面からの検査を実施することで、内部のきずを検出することができる。
【0046】
破壊検査手段の周波数を40kHz以上80kHz以下にすると共に、非破壊検査手段のプローブ先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップを0.5mm以下にすると、チタン等の非磁性体の金属薄板1に対して最適に検査することができる。
【0047】
また実施の形態例において、非磁性体の金属薄板1の下面または上面のいずれか一面に接触するように非導電性のシートを配するギャップ保持手段5と、ギャップ保持手段5のシートと反対側から非磁性体の金属薄1板を押える押付手段7とを備え、プローブ6は、ギャップ保持手段5のシートを介して非磁性体の金属薄板1を探傷する構成を備え、ギャップ保持手段5は、シートの厚みでプローブ6先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップを一定にするように構成すると、ベルト14のシートの厚みによりプローブ6先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップを一定に保ち且つ狭い距離にするので、安定的に非破壊検査を行うことができる。またギャップ保持手段5のシートによりプローブ6を固定状態で検査し得るので、非磁性体の金属薄板1の移送の高速化に対応して非破壊検査を好適に行うことができる。更に非磁性体の金属薄板1の他面をプローブ6と反対側から押える押付手段7を備えると、押付手段7により板状の非磁性体の金属薄板1の反りを矯正してプローブ6が非破壊検査を行う範囲の平坦度を保証し、プローブ6先端から非磁性体の金属薄板1までのギャップを適切に一定に保つと共に、平坦度によりズレや振動等を抑制し、非磁性体の金属薄板1の移送の高速化に対応して非破壊検査を一層好適に行うことができる。
【0048】
尚、本発明の金属薄板の非破壊検査方法及びその非破壊検査装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 非磁性体の金属薄板
2 プローブ
3 制御部
5 ギャップ保持手段
6 プローブ
7 押付手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体の金属薄板に対して渦流探傷を行う金属薄板の非破壊検査方法であって、プローブの周波数を10kHz以上100kHz以下にすると共に、プローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを1.0mm以下に保持し、非磁性体の金属薄板を搬送中に検査することを特徴とする金属薄板の非破壊検査方法。
【請求項2】
プローブ先端と非磁性体の金属薄板との間に非磁性フィルムを配してギャップを一定にすることを特徴とする請求項1に記載の金属薄板の非破壊検査方法。
【請求項3】
非磁性体の金属薄板は、0.1mm以上5.0mm以下の板厚であることを特徴とする請求項1に記載の金属薄板の非破壊検査方法。
【請求項4】
プローブの周波数を40kHz以上80kHz以下にすると共に、プローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを0.5mm以下にすることを特徴とする請求項1に記載の金属薄板の非破壊検査方法。
【請求項5】
非磁性体の金属薄板に対して渦流探傷を行う金属薄板の非破壊検査装置であって、10kHz以上100kHz以下の周波数を発振するプローブと、該プローブからの信号を処理して金属薄板のきずを判定する制御部とを備え、非磁性体の金属薄板を検査する際には、プローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを1.0mm以下に保持し、非磁性体の金属薄板を搬送中に検査するように構成したことを特徴とする記載の金属薄板の非破壊検査装置。
【請求項6】
プローブ先端と非磁性体の金属薄板との間に非磁性フィルムを配したことを特徴とする請求項5に記載の金属薄板の非破壊検査装置。
【請求項7】
非磁性体の金属薄板の移送手段に配置する金属薄板の非破壊検査装置であって、非磁性体の金属薄板の下面または上面のいずれか一面に接触するように非導電性のシートを配するギャップ保持手段と、該ギャップ保持手段のシートと反対側から非磁性体の金属薄板を押える押付手段とを備え、
前記プローブは、ギャップ保持手段のシートを介して非磁性体の金属薄板を探傷する構成を備え、
前記ギャップ保持手段は、シートの厚みでプローブ先端から非磁性体の金属薄板までのギャップを一定にしたことを特徴とする請求項5に記載の金属薄板の非破壊検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−180011(P2011−180011A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45305(P2010−45305)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】