説明

鉄板用洗浄剤および鉄板の洗浄方法

【課題】洗浄液の液温が60℃未満の低温の場合でも良好な洗浄力を示し、かつ洗浄液を低温化できることで、製鉄所から排出される二酸化炭素の量を削減することができる鉄板用洗浄剤の提供を目的とする。
【解決手段】半導体の粒子と、過酸化物および/または炭酸塩と、ナトリウム化合物、無機酸、有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種である活性促進剤とを少なくとも予め混合して得られた組成物と、アルカリ性物質と、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤とが含有されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄板用洗浄剤および鉄板の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷延鋼板など鉄板表面に付着した鉱物油などの洗浄には、水酸化ナトリウムやオルトケイ酸ナトリウムなどのアルカリ性物質による洗浄が行われている。(特許文献1参照)。
しかし、従来の洗浄では、アルカリ性物質を含む洗浄液を蒸気や70℃〜90℃程度の温水にして使用することから、これら洗浄用の蒸気や温水を作るために多くのエネルギーを必要とし、その結果、製鉄所からの二酸化炭素の排出量が多くなるという問題があった。これは、近年、二酸化炭素の排出量の削減が求められている製鉄所にとっては無視できない課題となっていた。
【0003】
また、鉄板表面に付着した鉱物油などは高粘度のものであることから、従来の界面活性剤のタイプではこれらの油を十分には洗浄できず、また、洗浄力を備えるために界面活性剤の添加量を多くすると洗浄後の廃液処理が困難となるという課題があった。
【特許文献1】特許第3706478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、洗浄液の液温が60℃未満の場合でも良好な洗浄力を示し、かつ洗浄液を低温化できることで、製鉄所から排出される二酸化炭素の量を削減することができる鉄板用洗浄剤および鉄板の洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る鉄板用洗浄剤は、半導体の粒子と、過酸化物および/または炭酸塩と、ナトリウム化合物、無機酸、有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種である活性促進剤とを少なくとも予め混合して得られた組成物と、アルカリ性物質と、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤とが含有されている構成にしてある。
【0006】
ここで、本発明の鉄板用洗浄剤において用いられる半導体としては、特に限定されないが、たとえば、チタン、亜鉛、バナジウム、ビスマス、タングステン、鉄などの酸化物や、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどが挙げられ、中でもチタン、バナジウム、鉄の酸化物が好ましく、安価で洗浄効果が安定するという点から二酸化チタンを用いることがより好ましい。さらに、二酸化チタンを用いる場合には過酸化物および/または炭酸塩との反応安定性の点からルチル型を用いることが好ましい。
【0007】
本発明の鉄板用洗浄剤において用いられる過酸化物としては、特に限定されないが、たとえば、過酸化水素水、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明の鉄板用洗浄剤において用いられる炭酸塩としては、特に限定されないが、たとえば、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。そして、これら過酸化物および/または炭酸塩の何れか一つ又は複数を用いることができる。
なお、これらの過酸化物および/または炭酸塩の中でも、洗浄性能を重視する場合には過酸化物を用いた方が好ましく、皮膚に付着した場合の安全性や廃水処理など環境面を重視する場合には炭酸塩を用いた方が好ましい。また、過酸化物を用いる場合には、半導体の電子励起などの活性化効果が高いという点から過炭酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0008】
本発明の鉄板用洗浄剤において用いられるナトリウム化合物としては、特に限定されないが、たとえば、トリポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩、オルトケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩があげられる。なお、洗浄効果をより向上させるためには、リン酸塩とケイ酸塩とを同時に用いた方が好ましい。
【0009】
本発明の鉄板用洗浄剤において用いられる有機酸としては、特に限定されないが、たとえば、酢酸、クエン酸などがあげられ、無機酸としては、塩酸、硫酸などがあげられる。そして、これら有機酸または無機酸の何れか一つ又は複数を用いることができる。なお、これらの有機酸または無機酸の中でも、皮膚等への安全性の点からクエン酸を用いることが好ましい。
【0010】
本発明の鉄板用洗浄剤において用いられるアルカリ性物質としては、特に限定されないが、たとえば、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどがあげられる。そして、これらアルカリ性物質の中でも、洗浄効果が向上するという点からオルトケイ酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0011】
本発明の鉄板用洗浄剤においては、界面活性剤を含むことが必要である。ここで、本発明の鉄板用洗浄剤は、鉄板に付着した油の除去を目的とするものであることから、界面活性剤についても脱脂効果に優れるノニオン系またはアニオン系界面活性剤を使用することが必要である。
【0012】
また、空気中の水分を吸収し、鉄板用洗浄剤の成分中の過酸化物や炭酸塩などへの吸湿を防止するためにケイ酸カルシウムや塩化カルシウムを混合してもよい。更に、必要に応じて、適宜、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などに代表されるキレート剤等の添加剤を加えることもできる。
【0013】
次に、本発明の鉄板用洗浄剤の製造について説明する。まず、半導体の粒子と、過酸化物および/または炭酸塩と、活性促進剤とが混合された組成物を作製することが重要である。
【0014】
さらに、組成物の作製においては、予め半導体の粒子と過酸化物および/または炭酸塩を混合しておくことが重要であり、混合の方法については、単純に材料をバッチ的に混合するのではなく、材料同士がすり合わさるように混合することが重要である。かかる工程と混合方法によって、洗浄剤となった際に半導体の粒子の活性化を促すことができるのである。すなわち、本発明の鉄板用洗浄剤は半導体が電子励起などの活性化を起こすことで、従来のアルカリ性物質と界面活性剤による洗浄効果に加え、上記混合物が油脂成分を分解することで、より洗浄効果が向上するのである。
【0015】
そして、上記工程の後、上記混合物にナトリウム化合物、無機酸、有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種である活性促進剤を加えることによって組成物を作製する。ここで、活性促進剤中の無機酸および有機酸は、活性促進効果を有するだけでなく、鉄板用洗浄剤を水に溶かして洗浄液を作製する際に洗浄液のpHを中性域に保持する効果も有することになる。
【0016】
そして、最後に、上記組成物にアルカリ性物質と界面活性剤を混合することで鉄板用洗浄剤を得る。
【0017】
本発明の鉄板用洗浄剤における各成分の配合量については、半導体の粒子と、過酸化物および/または炭酸塩と、活性促進剤とが混合された組成物の量を基準にして決定する。
【0018】
すなわち、本発明の鉄板用洗浄剤におけるアルカリ性物質の配合量については、組成物1重量部に対して、アルカリ性物質が2〜7重量部となるようにすることが好ましい。ここで、2重量部よりも少なくなると良好な洗浄性能を示さず、7重量部よりも多くなるとかえって洗浄性能が低下する恐れがある。
【0019】
本発明の鉄板用洗浄剤における界面活性剤の配合量については、組成物1重量部に対して、界面活性剤が0.05〜1重量部となるようにすることが好ましい。ここで、0.05重量部よりも少なくなると良好な洗浄性能を示さず、1重量部よりも多くなるとかえって洗浄性能が低下する恐れがある。
【0020】
さらに、組成物中の各成分の配合量については、半導体粒子の量を基準にして決定する。
【0021】
すなわち、組成物中の過酸化物および/または炭酸塩の配合量は、半導体1重量部に対して、過酸化物および/または炭酸塩が600〜850重量部となるようにすることが好ましい。ここで、600重量部よりも少なくなると良好な洗浄性能を示さず、850重量部よりも多くなるとかえって洗浄性能が低下する恐れがある。
【0022】
組成物中の活性促進剤の配合量は、半導体1重量部に対して、活性促進剤が1100〜1800重量部となるようにすることが好ましい。ここで、1100重量部よりも少なくなると良好な洗浄性能を示さず、1800重量部よりも多くなるとかえって洗浄性能が低下する恐れがある。
【0023】
一方、本発明の鉄板の洗浄方法は、上記鉄板用洗浄剤の水溶液を用いて、鉄板表面の油脂成分を洗浄することを特徴とする。
また、本発明の鉄板の洗浄方法は、油脂成分が付着した鉄板を、アルカリ性物質を含む洗浄剤水溶液を用いた鉄板の洗浄方法において、洗浄剤水溶液中に、半導体粒子と、過酸化物および/または炭酸塩と、活性促進剤とを少なくとも予め混合して得られた組成物を添加することを特徴としている。
ここで、洗浄の方法としては、鉄板表面の油脂成分が洗浄できる方法であれば特に限定はされず、洗浄剤を入れた洗浄槽に鉄板を浸漬させて洗浄する方法、洗浄剤をスプレーによって鉄板に吹き付けて洗浄する方法、カーテンフローコーターを利用して洗浄剤をカーテン状に流下させて、そこに鉄板を通過させることによって洗浄する方法、これらの洗浄方法にブラシや超音波の振動を併用して洗浄する方法などがあげられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る鉄板用洗浄剤は半導体の粒子と、過酸化物および/または炭酸塩と、ナトリウム化合物、無機酸、有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種である活性促進剤とを少なくとも予め混合して得られた組成物と、アルカリ性物質と、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤とが含有されているので、洗浄液中において、鉄板用洗浄剤成分中の半導体が電子励起などの活性化を起こし、従来のアルカリ性物質と界面活性剤による洗浄効果に加え、これらが汚れ物質を分解することで良好な洗浄力を発揮することができ、洗浄液の液温が60℃未満の低温の場合でも洗浄力を維持することができる。
従って、洗浄液を低温化できることによって、製鉄所から排出される二酸化炭素の量を削減することができる。
【0025】
また、本発明に係る鉄板用洗浄剤は活性促進剤がナトリウム化合物または無機酸または有機酸のうち少なくとも一種以上を用いて構成されているので、より洗浄性能を向上させることができる。
【0026】
また、本発明に係る鉄板用洗浄剤はナトリウム化合物がケイ酸ナトリウムおよび/またはリン酸ナトリウムで構成されているので、より洗浄性能を向上させることができる。
【0027】
更に、上記組成物は、半導体と過酸化物および/または炭酸塩とをすり合わせるように混合した後に、活性促進剤を混合することによって得られるので、洗浄剤となった際に電子励起など半導体の活性を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させて説明する。
なお、本発明は、以下の実施例および比較例に限定されるものではない。
【0029】
(組成物の作製)
まず、本発明の鉄板用洗浄剤の主原料の1つである、半導体の粒子と、過酸化物および/または炭酸塩と、活性促進剤とが混合された組成物を作製した。
原料としては、二酸化チタン(テイカ株式会社製、品番:JR−301)、過炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製、品番:020−72485)、炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製、品番:010−71245)、炭酸水素ナトリウム(キシダ化学株式会社製、品番:010−71665)、クエン酸(キシダ化学株式会社製、品番:000−17285)、メタケイ酸ナトリウム・9水和物(キシダ化学株式会社製、品番:010−72045)、トリポリリン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製、品番:010−73175)を用いた。
組成物の作製方法としては、表1に示した配合で、前記した通り半導体の粒子と過酸化物および/または炭酸塩とを、乳鉢等を用いてすり合わせるように混合した後に、その他の成分を撹拌機等を用いて混合することによって作製した。
【0030】
(鉄板用洗浄剤の作製)
次に、鉄板用洗浄剤を作製した。
原料としては、上記組成物とオルトケイ酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製、品番:020−72315)と界面活性剤を用いた。
界面活性剤には、アニオン系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日本合成洗剤株式会社製、品番:D−40)を用いた。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(日華化学株式会社製、品番:サンモールN−95SM、HLB:13.1)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王株式会社製、品番:エマルゲン1135S−70、HLB:17.9)、親油型モノステアリン酸グリセリン(日油株式会社製、品番:モノグリM、HLB:1)を用いた。
また、比較例として、界面活性剤にカチオン系界面活性剤と両性界面活性剤を用いた。具体的には、カチオン系界面活性剤としては、塩化ジアルキルアンモニウム塩(ライオン株式会社製、品番:アーガード2HT−75)を、両性界面活性剤としては、2−アルキルーN−カルボキシメチルーN−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(川研ファインケミカル株式会社製、品番:ソフタゾリンCH)を用いた。
鉄板用洗浄剤の作製方法としては、上記原料を表2〜表13に示した配合で撹拌機等を用いて混合することによって作製した。
【0031】
(洗浄液の作製)
最後に、実施例および比較例に用いる洗浄液を作製した。
洗浄剤の作製方法としては、表2〜表13に示した配合で上記鉄板用洗浄剤を水で1kgに調整することによって作製した。
【0032】
(洗浄性評価)
上記方法にて作製した洗浄液を用いて、鉄板に付着した油脂成分の洗浄性評価を行った。
評価用の鉄板は、縦10cm×横20cm×厚み3mmの鉄板を用い、上記鉄板にポリオールエステルを、ナイロン製水性用筋違いハケを用いて、塗布量が3.3g/m2になるように塗布した後、ガスコンロで約1分間、塗布面の裏側から加熱し、焼き付けたものを使用した。
洗浄性評価については、以下の手順により行った。
まず、1リットル用ガラスビーカーに、洗浄液1Lを、サーモスタット機能付きのスターラーで50℃に保持し、500rpmで撹拌した。
次に、鉄板を洗浄液に180秒浸けた後、水道の流水で30秒洗浄、ドライヤーにて乾燥、メチルセルロース♯4000(キシダ化学株式会社製、品番:020−49105)を幅40mm、長さ60mmのナイロン製水性用筋違いハケにセルロースを含ませ、鉄板の上約10cmの高さから、筆を持った手をもう一方の手でコンコンと叩いて、セルロースを鉄板上に満遍なく振りかけた。その後、振りかけた面を逆さまにして、鉄板の上に残っている、油と定着していないメチルセルロースを振り落とした。
最後に、鉄板の表面を1cm×2cm四方の100個の碁盤目に分割し、メチルセルロースの粉末が定着していない碁盤目の数を数え、100分率(洗浄率)に換算することによって評価した。
すなわち、鉄板上に洗浄されない油が残っているとその油によって、メチルセルロースが定着することから、メチルセルロースの粉末が定着していない碁盤目の数が多い場合には洗浄力が強く、逆の場合には洗浄力が弱いと判定した。
なお、本洗浄性試験においての洗浄率は、実際の製造ラインでは、洗浄液による化学的な洗浄効果だけではなく、ブラシによる洗浄効果も加わることから、30%以上であれば、良好な洗浄性能を示していると判断した。
【0033】
(実験結果)
表2には、表1で作製した組成物1と、オルトケイ酸ナトリウムとアニオン系界面活性剤の3つの成分を備える洗浄液について、洗浄試験を行った結果を示した。
表2の実施例1〜9に示すように、アニオン系界面活性剤を用いた場合には、35〜80%の洗浄率を示した。
【0034】
表3には、表1で作製した組成物1と、オルトケイ酸ナトリウムとノニオン系界面活性剤の3つの成分を備える洗浄液について、洗浄試験を行った結果を示した。
表3の実施例10〜20に示すように、ノニオン系界面活性剤を用いた場合には、30〜75%の洗浄率を示した。
また、ノニオン系界面活性剤でも、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを用いた場合には、35〜75%の洗浄率を示した。これに対し、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや親油型モノステアリン酸グリセリンを用いた場合には、いずれも30%の洗浄率となったことから、ノニオン系界面活性剤を用いる場合には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを用いた方がよいことがわかった。
【0035】
表4には、比較例として、不適当な原料および配合によって作製した洗浄液について洗浄試験を行った結果を示した。
表4に示すように、オルトケイ酸ナトリウムのみで作製した洗浄液(比較例1)の洗浄率は0%、オルトケイ酸ナトリウムと界面活性剤の2成分で作製した洗浄液(比較例2〜5)の洗浄率は0〜20%、オルトケイ酸ナトリウムと組成物の2成分で作製した洗浄液(比較例6〜8)の洗浄率は5〜15%であった。
さらに、比較例9〜14の結果からもわかるように、3成分が含有されていても界面活性剤にカチオン系界面活性剤を用いた洗浄液(比較例9〜11)や、両性界面活性剤を用いた洗浄液(比較例12〜14)の洗浄率は10%であった。
【0036】
表5〜7には、表1で作成した組成物2〜7について、オルトケイ酸ナトリウムとアニオン系界面活性剤の3つの成分を備える洗浄液とオルトケイ酸ナトリウムとノニオン系界面活性剤の3つの成分を備える洗浄液について、洗浄試験を行った結果を示した。
表5〜7の実施例21〜50に示すように、いずれの洗浄液も30%以上の洗浄率を示した。これに対し、比較例15〜20に示すように、3成分が含有されていても界面活性剤に両性界面活性剤を用いた洗浄液では、いずれも0%の洗浄率であった。
【0037】
以上の結果から、本発明の鉄板用洗浄剤は、上記組成物と、アルカリ性物質と、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤の3成分が含有されることによって、初めて洗浄力が発揮されることがわかった。
【0038】
(低温洗浄性評価)
表11〜13には、本発明の表1の各組成物とオルトケイ酸ナトリウムとアニオン系またはノニオン系界面活性剤の3つの成分を備える洗浄液と、従来のオルトケイ酸ナトリウムとノニオン系界面活性剤の2つの成分を備える洗浄液について、洗浄液の温度を変化させて、鉄板に付着した油脂成分の洗浄性評価を行った結果を示した。
【0039】
まず、表11に示すように、洗浄液の温度が従来の洗浄温度である60℃の場合には、実施例51〜57に示すように本発明の洗浄液は60〜85%の洗浄率を示し、比較例16に示すように従来の洗浄液についても、合格レベルである30%の洗浄率を示した。
【0040】
次に、表12に示すように、洗浄液の温度を50℃に低下させた場合には、実施例6、58〜63に示すように本発明の洗浄液は50〜70%の洗浄率を示したが、比較例2に示すように従来の洗浄液は洗浄率が10%に著しく低下した。
【0041】
更に、表13に示すように、洗浄液の温度を40℃に低下させた場合には、実施例64〜70に示すように本発明の洗浄液は30〜40%の洗浄率を示したが、比較例22に示すように従来の洗浄液は洗浄率が0%と洗浄性能を発揮しなくなってしまった。
【0042】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0043】
以上の結果から、本発明の洗浄剤は、洗浄液の温度を従来の60℃から40℃に下げた状態でも従来の洗浄剤と同等以上の洗浄効果を示すことがわかった。特に、組成物1を用いた洗浄液については、洗浄液の温度が40℃である場合でも、40%の洗浄率(実施例64)を示し、従来の洗浄液の60℃での洗浄率30%(比較例21)を超える洗浄力を示したことから、本発明の鉄板用洗浄剤は洗浄液の温度が下がった状態においても高い洗浄能力を有していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の鉄板用洗浄剤は、冷間圧延鋼板の洗浄工程などに用いることができる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
(a)半導体の粒子と、(b)過酸化物および/または炭酸塩と、(c)ナトリウム化合物、無機酸、有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種である活性促進剤とを少なくとも予め混合して得られた組成物と、
(B)アルカリ性物質と、
(C)ノニオン系またはアニオン系界面活性剤とが含有されていることを特徴とする鉄板用洗浄剤。
【請求項2】
前記ナトリウム化合物がケイ酸ナトリウムおよび/またはリン酸ナトリウムである請求項1に記載の鉄板用洗浄剤。
【請求項3】
前記アルカリ性物質がケイ酸ナトリウムである請求項1または請求項2に記載の鉄板用洗浄剤。
【請求項4】
半導体が、チタン、バナジウム、鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物である請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の鉄板用洗浄剤。
【請求項5】
前記組成物が、前記半導体の粒子と、前記過酸化物および/または前記炭酸塩とを、すり合わせるように混合した後に、前記活性促進剤を混合することによって得られる請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の鉄板用洗浄剤。
【請求項6】
油脂成分が付着した鉄板を、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の鉄板用洗浄剤水溶液を用いて洗浄する鉄板の洗浄方法。
【請求項7】
油脂成分が付着した鉄板を、アルカリ性物質を含む洗浄剤水溶液を用いて洗浄する鉄板の洗浄方法において、前記洗浄剤水溶液中に、前記半導体粒子と、前記過酸化物および/または前記炭酸塩と、前記活性促進剤とを少なくとも予め混合して得られた組成物を添加することを特徴とする鉄板の洗浄方法。

【公開番号】特開2010−59444(P2010−59444A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223499(P2008−223499)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(506102525)有限会社ミツコエンタープライズ (5)
【出願人】(397042159)笹野電線株式会社 (3)
【Fターム(参考)】