鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置
【課題】 輪軸に取り付けられたジャーナル軸受や歯車減速装置のコロの振動測定検査において、実走行時とほぼ同様に輪軸自体を回転させ、上記ジャーナル軸受や歯車減速装置内のコロが軸受外輪の内面に密着した状態でのコロの正確な振動測定を可能とする。
【解決手段】 鉄道車両台車1の輪軸2を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキ4と、昇降デッキ4の降下途中において輪軸2の両端ジャーナル軸受11部を下方より支持し、輪軸2を水平に支承する支持架台9と、水平に支承された輪軸2の左右の車輪3踏面に下方より圧着して輪軸2を支持架台9上に持ち上げ、ジャーナル軸受11内のコロ43を当該軸受の外輪42内面に密着させるとともに、圧着車輪3に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤ14とを備える振動検出用の回転装置を設ける。
【解決手段】 鉄道車両台車1の輪軸2を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキ4と、昇降デッキ4の降下途中において輪軸2の両端ジャーナル軸受11部を下方より支持し、輪軸2を水平に支承する支持架台9と、水平に支承された輪軸2の左右の車輪3踏面に下方より圧着して輪軸2を支持架台9上に持ち上げ、ジャーナル軸受11内のコロ43を当該軸受の外輪42内面に密着させるとともに、圧着車輪3に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤ14とを備える振動検出用の回転装置を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両台車の輪軸に取り付けられたジャーナル軸受や減速歯車装置等の軸受異常を、振動検査により非分解で精度良く検出するのに適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、鉄道車両台車1の輪軸2両端には、車体の荷重を輪軸に伝えるジャーナル軸受11が取り付けられている。また、上記台車1が動力台車(M台車)である場合、その輪軸2には、主電動機の回転力を車軸に伝える減速歯車装置24が取り付けられている。
【0003】
ジャーナル軸受11は、図10に示すように、輪軸2の両端に内輪41を嵌着し、該内輪と外輪42との間にコロ43を複列に配してなるコロ軸受である。また、減速歯車装置24は、図11に示すように、その軸44’端部が主電動機に接続される小歯車44の軸受45の内輪46・外輪47間に、また該小歯車と噛み合う大歯車49の軸受50の内輪51・外輪52間に、いずれも円錐形コロ48を配置した構造になっている。これらのジャーナル軸受11や減速歯車装置24においては、その内部のコロ43,48の磨耗や損傷は重大な故障の発生原因となるため、定期的な検修により、常に正常な稼働状態に保持しておく必要がある。
【0004】
従来より、ジャーナル軸受11や減速歯車装置24のコロ検修作業は、これらを輪軸より取り外して分解し、磨耗や損傷の状態を目視で観察することにより行なわれてきたが、非効率的であるため、最近では振動測定センサを使用して輪軸に取り付けたまま非分解で探傷する検修が行われるようになってきた。すなわち、図12に示すように、両端にジャーナル軸受11を取り付けた状態の輪軸2を位置決め機構53に搬入し、その左右の車輪3部をツインローラ54で支承してVブロックの如く固定する。この状態で、輪軸2の両側に設置された外輪回転機構55の回転体(ゴムタイヤ)56を下降させてジャーナル軸受11の外輪42に圧着させ、該外輪42に回転を付与する。そうして、ジャーナル軸受11の端面に取り付けた振動測定センサ57で、ジャーナル軸受11内のコロ43から発生する特定の周波数域の振動を検出し、該検出信号を速度または加速度に変換して、その大きさからコロの損傷程度を検出するのである(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001ー296213号公報
【0006】
しかしながら、前記従来の非分解検修は、輪軸2の回転を固定し、ジャーナル軸受11の外輪42をコロ43のまわりに回転させて振動を発生させるようになっており、実走行時のように、輪軸2側が回転して、すなわちジャーナル軸受の内輪41が回転して、コロ43が固定された外輪42の内面を転動するものではない。このため、振動測定センサ57の検出する振動値の信頼性に問題があった。
【0007】
また、前期従来の非分解検修では、減速歯車装置24を回転させる機構がないため、検修する輪軸2が減速歯車装置24を備えた動力輪軸(M輪軸)である場合には、その減速歯車装置24内のコロ48の磨耗や損傷程度を振動測定することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、検修しようとする輪軸が動力輪軸(M輪軸)である場合には、そのジャーナル軸受と減速歯車装置のいずれのコロについても、振動検出による非分解探傷を行うことができ、しかも台車のままでも、台車に取り付けられた輪軸に対して上記の非分解探傷が行えるとともに、実走行に近い負荷条件で輪軸を回転させることにより、これらのコロの発する損傷振動を振動測定センサにて正確に検出できる装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の装置は、鉄道用車両台車の輪軸を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキと、昇降デッキの降下途中において上記輪軸の両端ジャーナル軸受部を下方より支持し、輪軸を水平に支承する支持架台と、上記水平に支承された輪軸の左右の車輪踏面に下方より圧着して輪軸を支持架台上に持ち上げ、前記ジャーナル軸受内のコロを該軸受の外輪内面に密着させるとともに、圧着車輪に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤとを備えてなるものである。
【0010】
上記の構成によれば、台車の実走行時と同様に、輪軸が回転し、かつ輪軸が昇降式タイヤにより支持架台上に持ち上げられることによって、ジャーナル軸受内のコロが、実走行時と同様に、ジャーナル軸受の外輪上部側の内面に密着する。したがって、ジャーナル軸受内のコロの発生する微小な損傷振動を振動測定センサにより正確に検出することができる。
【0011】
また、本発明の装置においては、輪軸の左右の車輪踏面に昇降式タイヤが圧着した状態で、輪軸に取り付けられた減速歯車装置に接近し、その小歯車軸を掴持するチャックを介して動力の回転を減速歯車装置に伝達するピニオン回転装置を設けておくのがよい。こうすることにより、振動測定を行なう輪軸が減速歯車装置を備えた動力輪軸(M輪軸)である場合には、実走行時と同様に、減速歯車装置を駆動して輪軸を回転させることができ、しかも昇降式タイヤが車輪に圧着し、輪軸を持ち上げた状態であることから、減速歯車装置の回転駆動時に一定のトルクが発生して、実走行時と同様に、減速歯車装置内のコロが外輪内面に押し当てられて密着することとなる。したがって、減速歯車装置内のコロの発生する微小な損傷振動も、ジャーナル軸受のコロと同様に、振動測定センサにより正確に検出することができる。
【0012】
また、本発明の装置においては、輪軸は、台車から取り外した状態のものに限らず、台車に取り付けた状態のままで振動測定に供することができる。この場合には、台車の輪軸の両端ジャーナル部が支持架台にて水平に支持された状態で、当該台車の心皿に上方よりセンターピンを嵌入するとともに、心皿両側の上揺れ枕端部に上方より必要な荷重を負荷する台車位置決め装置を設けておくのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の装置は、輪軸に取り付けられたジャーナル軸受および減速歯車装置のコロの振動測定検査において、実走行時とほぼ同様に輪軸自体を回転させ、しかも輪軸の回転時には、実走行時とほぼ同様に、ジャーナル軸受および減速歯車装置内のコロが軸受外輪の内面に常に密着するようにしたから、コロの発するきわめて微小な損傷振動をも振動測定センサにより正確に検出可能であり、この種の非分解振動測定精度を大きく高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図6は、本発明を実施した装置の一例であり、4は鉄道車両用台車1の輪軸2を所定位置に載置する昇降デッキ、9は支持架台、14は昇降タイヤ、23はピニオン回転装置を示している。
【0015】
すなわち、昇降デッキ4は、平面視で長方形状をなすプレート型デッキであり、その両長辺部が、当該デッキ4上に搬送され来る輪軸2の左右の車輪3のフランジに係合するレール5に形成されている。昇降デッキ4には、その長手方向の前後2ヶ所に、一定の間隔L(図示例では、Lは台車1の2軸間距離である2100mmに一致させてある)をおいて輪軸2の載置位置が設けてある。これらの載置位置は、レール5の一部5’を油圧シリンダによる昇降式となし、これを下降させることにより、開孔したレール5の一部5’に車輪3が嵌まり込んで、レール5上の輪軸2の動きが停止するようにしたものである。この昇降デッキ4は、ピット6底面に垂設された前後2本の油圧シリンダ7にてピット6の中央部上方に水平に支持されており、該油圧シリンダ7の伸縮操作により、想像線で示すように、ピット内を一定範囲で昇降するようになっている。なお、昇降デッキ4の下面側四隅には、ラックアンドピニオン式の同調伸縮ロッド8が設けてあり、前後2本の油圧シリンダ7の伸縮動作が同期的に行われるにようになっている。
【0016】
支持架台9は、ピット6内の昇降デッキ4を挟む左右の側壁で、昇降デッキ4に載置された前後2本の輪軸2のジャーナル軸受11端面と対峙する位置(4カ所)に、それぞれ設けられている。これらの支持架台9は、昇降デッキ4にて下降してくる輪軸2のジャーナル軸受11部を、その水平架台10上に受け止めて、これらの輪軸2をピット6内に水平に支承するものである。水平架台10の支持面にはラバー等の緩衝材12が貼着してあり、また支持する上記軸受11部を水平架台10に固定するためのクランプ(図示せず)が取り付けられるようになっている。これらの支持架台9は、ヒンジ機構13によって、想像線で示すように、先端がほぼ90度上方へ回転するように設けてあり、不要時には、ピット6の壁側へ撥ね上げておくことができる。
【0017】
昇降式タイヤ14は、各支持架台9の下方に、それぞれ設けられている(4ヶ所)。これらの昇降式タイヤ14はゴム製であり、動力15にVベルト16を介して接続された動力タイヤ14aと、動力タイヤ14aの回転に従って回転する従動タイヤ14bとで2個一対に構成されている。動力タイヤ14aと従動タイヤ14bは、その回転シャフト17a,17bの軸受部18a,18bを昇降基盤19上に並べて取り付けてあり(図5参照)、また両タイヤの接触部が、前記支持架台10上に支承された輪軸2の中心P直下で、かつ対応する車輪3の踏面直下に位置するように配置してある。
【0018】
上記の昇降基盤19は、ピット6底面にベース盤20を介して立設された油圧シリンダ21にて水平に支持されており、該油圧シリンダ21を伸長操作すると、ガイド22に沿って所定高さまで上昇する。この上昇により、前記一対のタイヤ14a,14bが、支持架台10上に水平に支承された輪軸2の車輪3踏面に下方より圧着し、さらに当該輪軸2を支持架台10上に水平に持ち上げるようになっている。
【0019】
ピニオン回転装置23は、振動測定を行なう輪軸2が減速歯車装置24を備えた動力輪軸(M輪軸)である場合に、その減速歯車装置24を駆動して、前記昇降式タイヤ14により支持架台10上に水平に持ち上げられた状態の輪軸2を回転させる装置であり、前後の輪軸2について、それぞれ専用のものが設けられている。
【0020】
これらのピニオン回転装置23は、減速歯車装置24の小歯車軸44’(図11参照)を掴持するチャック25と、該チャック25に回転シャフト26、Vベルト27を介して回転を付与する動力28とを、3段に構成された心出しフレーム291 、292 、293 上に搭載した構造になっている。すなわち、下段フレーム293 は、ジャッキ30の伸縮操作で上下方向へ移動可能に、中段フレーム292 は、ボールネジ31の回転操作で、下段フレーム293 上を前後方向へ移動可能に設けてある。また、、チャック25および動力28を直接搭載する上段フレーム291 は、ボールネジ32の回転操作で、中段フレーム292 上を左右方向へ移動可能に設けてある。したがって、これらの各フレーム291 、292 、293 の移動量を調節することにより、チャック25の中心を前記小歯車軸44’の中心に一致させ、該チャック25で小歯車軸26の端部を掴持することができる。
【0021】
なお、前後のピニオン回転装置23は、互いにチャック25の向きを180度異なえて配置してある。このため、両ピニオン回転装置23による減速歯車装置24の駆動が、同じ正回転であっても、前後の輪軸2の回転方向は、互いに正・逆反対方向となる。これにより、前後の輪軸2を台車に取り付けた状態で振動測定する場合等における、前後輪軸2の逸脱を防止している。また、前記した昇降デッキ4は、これらのピニオン回転装置23の設置位置上方に該当する部分4’が取り外し可能となっている。
【0022】
図7および図8に示す台車位置決め装置33は、輪軸2を台車に取り付けた状態のままで振動測定する場合に、前後の輪軸2の両端ジャーナル軸受11部が支持架台9にて支持され、水平に支承された状態の台車1に対して、該台車1の心皿34(図9参照)に上方よりセンターピン35を嵌入するとともに、心皿34両側の上揺れ枕端部36(図9参照)に上方より負荷金具37で必要な荷重を負荷して、台車1の動きを固定するものである。図示例の台車位置決め装置33は、ピット6上方に門形フレーム38を組み、その水平フレーム38’の中心に、ロッド先端にセンターピン35を取り付けた油圧シリンダ39を下向きに垂直に取り付けるとともに、該油圧シリンダ39の両側等位置に、それぞれロッド先端に円筒状の負荷金具37を取り付けた油圧シリンダ40を下向きに垂直に取り付けて構成されている。
【0023】
上記構成よりなる本発明の装置を使用するには、振動測定をしようとする輪軸2をコンベアあるいはクレーン等により昇降デッキ4上に搬入する。このとき、搬入される輪軸2が、台車から取り外された状態の輪軸か、あるいは輪軸を取り付けたままの台車1であるかを予め選定しておく。同時に、搬入される輪軸2が、減速歯車装置24付きの動力輪軸(M輪軸)であるのか、減速歯車装置24のない従動輪軸(T輪軸)であるのか、また、搬入される台車1が2軸とも動力輪軸を備えた動力台車(M台車)であるのか、従動輪軸を備えた従動台車(T台車)であるのかを選定しておく。
【0024】
そうして、例えばT輪軸が昇降デッキ4に搬入された場合は、そのT輪軸2の左右の車輪3をレール5に沿って移動させ、これをレール5の一部5’を下降させた前部輪軸用の載置位置に位置決めする。続いて2本目のT輪軸2を昇降デッキ4上に搬入し、これを同じくレール5の一部5’を下降させた後部輪軸用の載置位置に位置決めする。
【0025】
前後2本のT輪軸2の位置決めが完了すると、油圧シリンダ7を縮退操作して、昇降デッキ4の下降を開始する。この昇降デッキ4の下降途中において、当該デッキ4上に載置された前後の輪軸2は、その両端のジャーナル軸受11部が、ピット6の側壁より突出する支持架台9の水平架台10上に受け止められて、ピット6内に水平に支承されることとなる。各輪軸2のジャーナル軸受部11をクランプ金具で水平架台10に固定する。空の昇降デッキ4が下降限で停止するのを待って、前後の輪軸2の支持架台9に支持されたジャーナル軸受11に、それぞれ振動測定センサ(図示せず)を取り付ける。
【0026】
次ぎに、各昇降式タイヤ14の油圧シリンダ21を伸長操作して、その一対のゴムタイヤ14a,14bを一斉に上昇させる。 そして、これらの一対のゴムタイヤ14a,14bが、それぞれ対応する車輪3の踏面に圧着し、輪軸2を支持架台9上に持ち上げた時点で、その上昇を停止する。この輪軸2の持ち上げにより、ジャーナル軸受11内のコロ43(図10参照)が、実走行時と同様に、外輪42の上部内面に密着することとなる。次いで、各昇降式タイヤ14の動力15を駆動し、動力側のゴムタイヤ14aを回転させると、前後の輪軸2は、いずれも実走行時と同様に、回転を開始する。そして前記動力15の回転数を次第に上げてゆき、輪軸2の回転数が実際の営業速度90km/hに相当する960rpm前後となったところで、振動測定センサによるジャーナル軸受11のコロ振動測定を実施する。
【0027】
また、例えばM台車1が昇降デッキ4に搬入された場合は、M台車1をレール5に沿って移動させ、その前部輪軸2をレール5の一部5’を下降させた前部輪軸用の載置位置に位置決めするとともに、後部輪軸2を同じくレール5の一部5’を下降させた後部輪軸用の載置位置に位置決めする。
【0028】
M台車1の昇降デッキ4上の位置決めが完了すると、前記T輪軸の場合と同様に、昇降デッキ4の下降を開始する。この下降途中において、昇降デッキ4上のM台車1は、その前後の輪軸2のジャーナル軸受11部を、ピット6の側壁より突出する支持架台9の水平架台10上に受け止められて、ピット6内に水平に支承される。この状態で、台車位置決め装置33を駆動し、そのセンターピン35を該台車1の心皿34に嵌入するとともに、左右の負荷金具37を該台車1の上揺れ枕端部36に圧着して、M台車1の動きを固定する。そうして、空の昇降デッキ4が下降限で停止するのを待って、M台車1の前後の輪軸2のジャーナル軸受11と減速歯車装置24に、それぞれ振動測定センサ(図示せず)を取り付ける。
【0029】
次ぎに、各昇降式タイヤ14の油圧シリンダ21を伸長操作して、その一対のゴムタイヤ14a,14bを一斉に上昇させる。そして、これらの一対のゴムタイヤ14a,14bが、それぞれ対応する車輪3の踏面に圧着し、台車1の前後の輪軸2を支持架台9上に持ち上げた時点で、その上昇を停止する。この輪軸2の持ち上げにより、ジャーナル軸受11内のコロ43(図10参照)が、実走行時と同様に、外輪42の上部内面に密着することとなる。
【0030】
次いで、前後のピニオン回転装置23を、これらの対応する輪軸2が備える減速歯車装置24に接近させる。すなわち、3段に構成された心出しフレーム291 ,292 ,293 の上下方向、前後方向、左右方向のそれぞれの移動量を調節することによって、該回転装置23のチャック25を、対応する減速歯車装置24の小歯車軸44’(図11参照)に嵌合し、これを掴持させるのである。そうして、チャック25の動力28を駆動し、チャック25を回転させると、減速歯車装置24の小歯車44が回転し、これに噛合する大歯車49が回転して輪軸2が回転する。このとき、減速歯車装置24の小歯車44および大歯車49には、輪軸2の左右の車輪3にゴムタイヤ14a,14bが圧着していることにより、回転方向に大きなトルクが発生する。このトルクの発生により、小歯車および大歯車の軸受コロが、実走行時と同様に、外輪の上部内面に密着することとなる。前記動力28の回転数を次第に上げてゆき、輪軸2の回転数が実際の営業速度90km/hに相当する960rpm前後となったところで、振動測定センサによるジャーナル軸受11および減速歯車装置24のコロ振動測定を実施する。この振動測定は、輪軸2の逆回転方向についても、正回転方向と同様に実施する。
【0031】
振動測定が完了すると、台車位置決め装置33を上方へ引き上げる。次いで、昇降式タイヤ14を原点まで下降させ、台車1を支持架台9にて水平に支承させる。下降限に停止している昇降デッキ4を上昇させて、その上に再び台車1を載せる。昇降デッキ4を上昇限で停止し、下降しているレール5の一部5’を上昇させて元の位置に戻す。台車1をレール5に沿って移動させ、昇降デッキ4上より搬出する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明装置の一例を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】図3のC−C線断面図である。
【図6】図2のA−A線断面図である。
【図7】台車位置決め装置を説明する正面図である。
【図8】図7のD−D線断面図である。
【図9】鉄道車両用台車を説明する平面図である。
【図10】ジャーナル軸受を説明する要部断面図である。
【図11】減速歯車装置を説明する要部断面図である。
【図12】従来の振動測定用回転装置を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 台車
2 輪軸
3 車輪
4 昇降デッキ
9 支持架台
11 ジャーナル軸受
14 昇降タイヤ
23 ピニオン回転装置
24 減速歯車装置
25 チャック
33 台車位置決め装置
35 センターピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両台車の輪軸に取り付けられたジャーナル軸受や減速歯車装置等の軸受異常を、振動検査により非分解で精度良く検出するのに適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、鉄道車両台車1の輪軸2両端には、車体の荷重を輪軸に伝えるジャーナル軸受11が取り付けられている。また、上記台車1が動力台車(M台車)である場合、その輪軸2には、主電動機の回転力を車軸に伝える減速歯車装置24が取り付けられている。
【0003】
ジャーナル軸受11は、図10に示すように、輪軸2の両端に内輪41を嵌着し、該内輪と外輪42との間にコロ43を複列に配してなるコロ軸受である。また、減速歯車装置24は、図11に示すように、その軸44’端部が主電動機に接続される小歯車44の軸受45の内輪46・外輪47間に、また該小歯車と噛み合う大歯車49の軸受50の内輪51・外輪52間に、いずれも円錐形コロ48を配置した構造になっている。これらのジャーナル軸受11や減速歯車装置24においては、その内部のコロ43,48の磨耗や損傷は重大な故障の発生原因となるため、定期的な検修により、常に正常な稼働状態に保持しておく必要がある。
【0004】
従来より、ジャーナル軸受11や減速歯車装置24のコロ検修作業は、これらを輪軸より取り外して分解し、磨耗や損傷の状態を目視で観察することにより行なわれてきたが、非効率的であるため、最近では振動測定センサを使用して輪軸に取り付けたまま非分解で探傷する検修が行われるようになってきた。すなわち、図12に示すように、両端にジャーナル軸受11を取り付けた状態の輪軸2を位置決め機構53に搬入し、その左右の車輪3部をツインローラ54で支承してVブロックの如く固定する。この状態で、輪軸2の両側に設置された外輪回転機構55の回転体(ゴムタイヤ)56を下降させてジャーナル軸受11の外輪42に圧着させ、該外輪42に回転を付与する。そうして、ジャーナル軸受11の端面に取り付けた振動測定センサ57で、ジャーナル軸受11内のコロ43から発生する特定の周波数域の振動を検出し、該検出信号を速度または加速度に変換して、その大きさからコロの損傷程度を検出するのである(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001ー296213号公報
【0006】
しかしながら、前記従来の非分解検修は、輪軸2の回転を固定し、ジャーナル軸受11の外輪42をコロ43のまわりに回転させて振動を発生させるようになっており、実走行時のように、輪軸2側が回転して、すなわちジャーナル軸受の内輪41が回転して、コロ43が固定された外輪42の内面を転動するものではない。このため、振動測定センサ57の検出する振動値の信頼性に問題があった。
【0007】
また、前期従来の非分解検修では、減速歯車装置24を回転させる機構がないため、検修する輪軸2が減速歯車装置24を備えた動力輪軸(M輪軸)である場合には、その減速歯車装置24内のコロ48の磨耗や損傷程度を振動測定することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、検修しようとする輪軸が動力輪軸(M輪軸)である場合には、そのジャーナル軸受と減速歯車装置のいずれのコロについても、振動検出による非分解探傷を行うことができ、しかも台車のままでも、台車に取り付けられた輪軸に対して上記の非分解探傷が行えるとともに、実走行に近い負荷条件で輪軸を回転させることにより、これらのコロの発する損傷振動を振動測定センサにて正確に検出できる装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の装置は、鉄道用車両台車の輪軸を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキと、昇降デッキの降下途中において上記輪軸の両端ジャーナル軸受部を下方より支持し、輪軸を水平に支承する支持架台と、上記水平に支承された輪軸の左右の車輪踏面に下方より圧着して輪軸を支持架台上に持ち上げ、前記ジャーナル軸受内のコロを該軸受の外輪内面に密着させるとともに、圧着車輪に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤとを備えてなるものである。
【0010】
上記の構成によれば、台車の実走行時と同様に、輪軸が回転し、かつ輪軸が昇降式タイヤにより支持架台上に持ち上げられることによって、ジャーナル軸受内のコロが、実走行時と同様に、ジャーナル軸受の外輪上部側の内面に密着する。したがって、ジャーナル軸受内のコロの発生する微小な損傷振動を振動測定センサにより正確に検出することができる。
【0011】
また、本発明の装置においては、輪軸の左右の車輪踏面に昇降式タイヤが圧着した状態で、輪軸に取り付けられた減速歯車装置に接近し、その小歯車軸を掴持するチャックを介して動力の回転を減速歯車装置に伝達するピニオン回転装置を設けておくのがよい。こうすることにより、振動測定を行なう輪軸が減速歯車装置を備えた動力輪軸(M輪軸)である場合には、実走行時と同様に、減速歯車装置を駆動して輪軸を回転させることができ、しかも昇降式タイヤが車輪に圧着し、輪軸を持ち上げた状態であることから、減速歯車装置の回転駆動時に一定のトルクが発生して、実走行時と同様に、減速歯車装置内のコロが外輪内面に押し当てられて密着することとなる。したがって、減速歯車装置内のコロの発生する微小な損傷振動も、ジャーナル軸受のコロと同様に、振動測定センサにより正確に検出することができる。
【0012】
また、本発明の装置においては、輪軸は、台車から取り外した状態のものに限らず、台車に取り付けた状態のままで振動測定に供することができる。この場合には、台車の輪軸の両端ジャーナル部が支持架台にて水平に支持された状態で、当該台車の心皿に上方よりセンターピンを嵌入するとともに、心皿両側の上揺れ枕端部に上方より必要な荷重を負荷する台車位置決め装置を設けておくのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の装置は、輪軸に取り付けられたジャーナル軸受および減速歯車装置のコロの振動測定検査において、実走行時とほぼ同様に輪軸自体を回転させ、しかも輪軸の回転時には、実走行時とほぼ同様に、ジャーナル軸受および減速歯車装置内のコロが軸受外輪の内面に常に密着するようにしたから、コロの発するきわめて微小な損傷振動をも振動測定センサにより正確に検出可能であり、この種の非分解振動測定精度を大きく高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図6は、本発明を実施した装置の一例であり、4は鉄道車両用台車1の輪軸2を所定位置に載置する昇降デッキ、9は支持架台、14は昇降タイヤ、23はピニオン回転装置を示している。
【0015】
すなわち、昇降デッキ4は、平面視で長方形状をなすプレート型デッキであり、その両長辺部が、当該デッキ4上に搬送され来る輪軸2の左右の車輪3のフランジに係合するレール5に形成されている。昇降デッキ4には、その長手方向の前後2ヶ所に、一定の間隔L(図示例では、Lは台車1の2軸間距離である2100mmに一致させてある)をおいて輪軸2の載置位置が設けてある。これらの載置位置は、レール5の一部5’を油圧シリンダによる昇降式となし、これを下降させることにより、開孔したレール5の一部5’に車輪3が嵌まり込んで、レール5上の輪軸2の動きが停止するようにしたものである。この昇降デッキ4は、ピット6底面に垂設された前後2本の油圧シリンダ7にてピット6の中央部上方に水平に支持されており、該油圧シリンダ7の伸縮操作により、想像線で示すように、ピット内を一定範囲で昇降するようになっている。なお、昇降デッキ4の下面側四隅には、ラックアンドピニオン式の同調伸縮ロッド8が設けてあり、前後2本の油圧シリンダ7の伸縮動作が同期的に行われるにようになっている。
【0016】
支持架台9は、ピット6内の昇降デッキ4を挟む左右の側壁で、昇降デッキ4に載置された前後2本の輪軸2のジャーナル軸受11端面と対峙する位置(4カ所)に、それぞれ設けられている。これらの支持架台9は、昇降デッキ4にて下降してくる輪軸2のジャーナル軸受11部を、その水平架台10上に受け止めて、これらの輪軸2をピット6内に水平に支承するものである。水平架台10の支持面にはラバー等の緩衝材12が貼着してあり、また支持する上記軸受11部を水平架台10に固定するためのクランプ(図示せず)が取り付けられるようになっている。これらの支持架台9は、ヒンジ機構13によって、想像線で示すように、先端がほぼ90度上方へ回転するように設けてあり、不要時には、ピット6の壁側へ撥ね上げておくことができる。
【0017】
昇降式タイヤ14は、各支持架台9の下方に、それぞれ設けられている(4ヶ所)。これらの昇降式タイヤ14はゴム製であり、動力15にVベルト16を介して接続された動力タイヤ14aと、動力タイヤ14aの回転に従って回転する従動タイヤ14bとで2個一対に構成されている。動力タイヤ14aと従動タイヤ14bは、その回転シャフト17a,17bの軸受部18a,18bを昇降基盤19上に並べて取り付けてあり(図5参照)、また両タイヤの接触部が、前記支持架台10上に支承された輪軸2の中心P直下で、かつ対応する車輪3の踏面直下に位置するように配置してある。
【0018】
上記の昇降基盤19は、ピット6底面にベース盤20を介して立設された油圧シリンダ21にて水平に支持されており、該油圧シリンダ21を伸長操作すると、ガイド22に沿って所定高さまで上昇する。この上昇により、前記一対のタイヤ14a,14bが、支持架台10上に水平に支承された輪軸2の車輪3踏面に下方より圧着し、さらに当該輪軸2を支持架台10上に水平に持ち上げるようになっている。
【0019】
ピニオン回転装置23は、振動測定を行なう輪軸2が減速歯車装置24を備えた動力輪軸(M輪軸)である場合に、その減速歯車装置24を駆動して、前記昇降式タイヤ14により支持架台10上に水平に持ち上げられた状態の輪軸2を回転させる装置であり、前後の輪軸2について、それぞれ専用のものが設けられている。
【0020】
これらのピニオン回転装置23は、減速歯車装置24の小歯車軸44’(図11参照)を掴持するチャック25と、該チャック25に回転シャフト26、Vベルト27を介して回転を付与する動力28とを、3段に構成された心出しフレーム291 、292 、293 上に搭載した構造になっている。すなわち、下段フレーム293 は、ジャッキ30の伸縮操作で上下方向へ移動可能に、中段フレーム292 は、ボールネジ31の回転操作で、下段フレーム293 上を前後方向へ移動可能に設けてある。また、、チャック25および動力28を直接搭載する上段フレーム291 は、ボールネジ32の回転操作で、中段フレーム292 上を左右方向へ移動可能に設けてある。したがって、これらの各フレーム291 、292 、293 の移動量を調節することにより、チャック25の中心を前記小歯車軸44’の中心に一致させ、該チャック25で小歯車軸26の端部を掴持することができる。
【0021】
なお、前後のピニオン回転装置23は、互いにチャック25の向きを180度異なえて配置してある。このため、両ピニオン回転装置23による減速歯車装置24の駆動が、同じ正回転であっても、前後の輪軸2の回転方向は、互いに正・逆反対方向となる。これにより、前後の輪軸2を台車に取り付けた状態で振動測定する場合等における、前後輪軸2の逸脱を防止している。また、前記した昇降デッキ4は、これらのピニオン回転装置23の設置位置上方に該当する部分4’が取り外し可能となっている。
【0022】
図7および図8に示す台車位置決め装置33は、輪軸2を台車に取り付けた状態のままで振動測定する場合に、前後の輪軸2の両端ジャーナル軸受11部が支持架台9にて支持され、水平に支承された状態の台車1に対して、該台車1の心皿34(図9参照)に上方よりセンターピン35を嵌入するとともに、心皿34両側の上揺れ枕端部36(図9参照)に上方より負荷金具37で必要な荷重を負荷して、台車1の動きを固定するものである。図示例の台車位置決め装置33は、ピット6上方に門形フレーム38を組み、その水平フレーム38’の中心に、ロッド先端にセンターピン35を取り付けた油圧シリンダ39を下向きに垂直に取り付けるとともに、該油圧シリンダ39の両側等位置に、それぞれロッド先端に円筒状の負荷金具37を取り付けた油圧シリンダ40を下向きに垂直に取り付けて構成されている。
【0023】
上記構成よりなる本発明の装置を使用するには、振動測定をしようとする輪軸2をコンベアあるいはクレーン等により昇降デッキ4上に搬入する。このとき、搬入される輪軸2が、台車から取り外された状態の輪軸か、あるいは輪軸を取り付けたままの台車1であるかを予め選定しておく。同時に、搬入される輪軸2が、減速歯車装置24付きの動力輪軸(M輪軸)であるのか、減速歯車装置24のない従動輪軸(T輪軸)であるのか、また、搬入される台車1が2軸とも動力輪軸を備えた動力台車(M台車)であるのか、従動輪軸を備えた従動台車(T台車)であるのかを選定しておく。
【0024】
そうして、例えばT輪軸が昇降デッキ4に搬入された場合は、そのT輪軸2の左右の車輪3をレール5に沿って移動させ、これをレール5の一部5’を下降させた前部輪軸用の載置位置に位置決めする。続いて2本目のT輪軸2を昇降デッキ4上に搬入し、これを同じくレール5の一部5’を下降させた後部輪軸用の載置位置に位置決めする。
【0025】
前後2本のT輪軸2の位置決めが完了すると、油圧シリンダ7を縮退操作して、昇降デッキ4の下降を開始する。この昇降デッキ4の下降途中において、当該デッキ4上に載置された前後の輪軸2は、その両端のジャーナル軸受11部が、ピット6の側壁より突出する支持架台9の水平架台10上に受け止められて、ピット6内に水平に支承されることとなる。各輪軸2のジャーナル軸受部11をクランプ金具で水平架台10に固定する。空の昇降デッキ4が下降限で停止するのを待って、前後の輪軸2の支持架台9に支持されたジャーナル軸受11に、それぞれ振動測定センサ(図示せず)を取り付ける。
【0026】
次ぎに、各昇降式タイヤ14の油圧シリンダ21を伸長操作して、その一対のゴムタイヤ14a,14bを一斉に上昇させる。 そして、これらの一対のゴムタイヤ14a,14bが、それぞれ対応する車輪3の踏面に圧着し、輪軸2を支持架台9上に持ち上げた時点で、その上昇を停止する。この輪軸2の持ち上げにより、ジャーナル軸受11内のコロ43(図10参照)が、実走行時と同様に、外輪42の上部内面に密着することとなる。次いで、各昇降式タイヤ14の動力15を駆動し、動力側のゴムタイヤ14aを回転させると、前後の輪軸2は、いずれも実走行時と同様に、回転を開始する。そして前記動力15の回転数を次第に上げてゆき、輪軸2の回転数が実際の営業速度90km/hに相当する960rpm前後となったところで、振動測定センサによるジャーナル軸受11のコロ振動測定を実施する。
【0027】
また、例えばM台車1が昇降デッキ4に搬入された場合は、M台車1をレール5に沿って移動させ、その前部輪軸2をレール5の一部5’を下降させた前部輪軸用の載置位置に位置決めするとともに、後部輪軸2を同じくレール5の一部5’を下降させた後部輪軸用の載置位置に位置決めする。
【0028】
M台車1の昇降デッキ4上の位置決めが完了すると、前記T輪軸の場合と同様に、昇降デッキ4の下降を開始する。この下降途中において、昇降デッキ4上のM台車1は、その前後の輪軸2のジャーナル軸受11部を、ピット6の側壁より突出する支持架台9の水平架台10上に受け止められて、ピット6内に水平に支承される。この状態で、台車位置決め装置33を駆動し、そのセンターピン35を該台車1の心皿34に嵌入するとともに、左右の負荷金具37を該台車1の上揺れ枕端部36に圧着して、M台車1の動きを固定する。そうして、空の昇降デッキ4が下降限で停止するのを待って、M台車1の前後の輪軸2のジャーナル軸受11と減速歯車装置24に、それぞれ振動測定センサ(図示せず)を取り付ける。
【0029】
次ぎに、各昇降式タイヤ14の油圧シリンダ21を伸長操作して、その一対のゴムタイヤ14a,14bを一斉に上昇させる。そして、これらの一対のゴムタイヤ14a,14bが、それぞれ対応する車輪3の踏面に圧着し、台車1の前後の輪軸2を支持架台9上に持ち上げた時点で、その上昇を停止する。この輪軸2の持ち上げにより、ジャーナル軸受11内のコロ43(図10参照)が、実走行時と同様に、外輪42の上部内面に密着することとなる。
【0030】
次いで、前後のピニオン回転装置23を、これらの対応する輪軸2が備える減速歯車装置24に接近させる。すなわち、3段に構成された心出しフレーム291 ,292 ,293 の上下方向、前後方向、左右方向のそれぞれの移動量を調節することによって、該回転装置23のチャック25を、対応する減速歯車装置24の小歯車軸44’(図11参照)に嵌合し、これを掴持させるのである。そうして、チャック25の動力28を駆動し、チャック25を回転させると、減速歯車装置24の小歯車44が回転し、これに噛合する大歯車49が回転して輪軸2が回転する。このとき、減速歯車装置24の小歯車44および大歯車49には、輪軸2の左右の車輪3にゴムタイヤ14a,14bが圧着していることにより、回転方向に大きなトルクが発生する。このトルクの発生により、小歯車および大歯車の軸受コロが、実走行時と同様に、外輪の上部内面に密着することとなる。前記動力28の回転数を次第に上げてゆき、輪軸2の回転数が実際の営業速度90km/hに相当する960rpm前後となったところで、振動測定センサによるジャーナル軸受11および減速歯車装置24のコロ振動測定を実施する。この振動測定は、輪軸2の逆回転方向についても、正回転方向と同様に実施する。
【0031】
振動測定が完了すると、台車位置決め装置33を上方へ引き上げる。次いで、昇降式タイヤ14を原点まで下降させ、台車1を支持架台9にて水平に支承させる。下降限に停止している昇降デッキ4を上昇させて、その上に再び台車1を載せる。昇降デッキ4を上昇限で停止し、下降しているレール5の一部5’を上昇させて元の位置に戻す。台車1をレール5に沿って移動させ、昇降デッキ4上より搬出する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明装置の一例を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】図3のC−C線断面図である。
【図6】図2のA−A線断面図である。
【図7】台車位置決め装置を説明する正面図である。
【図8】図7のD−D線断面図である。
【図9】鉄道車両用台車を説明する平面図である。
【図10】ジャーナル軸受を説明する要部断面図である。
【図11】減速歯車装置を説明する要部断面図である。
【図12】従来の振動測定用回転装置を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 台車
2 輪軸
3 車輪
4 昇降デッキ
9 支持架台
11 ジャーナル軸受
14 昇降タイヤ
23 ピニオン回転装置
24 減速歯車装置
25 チャック
33 台車位置決め装置
35 センターピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両台車の輪軸を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキと、昇降デッキの降下途中において上記輪軸の両端ジャーナル軸受部を下方より支持し、輪軸を水平に支承する支持架台と、上記水平に支承された輪軸の左右の車輪踏面に下方より圧着して輪軸を支持架台上に持ち上げ、ジャーナル軸受内のコロを該軸受の外輪内面に密着させるとともに、圧着車輪に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤとを備えてなる鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【請求項2】
鉄道車両台車の輪軸を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキと、昇降デッキの降下途中において上記輪軸の両端ジャーナル軸受部を下方より支持し、輪軸を水平に支承する支持架台と、上記水平に支承された輪軸の左右の車輪踏面に下方より圧着して輪軸を支持架台上に持ち上げ、ジャーナル軸受内のコロを該軸受の外輪内面に密着させるとともに、圧着車輪に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤと、昇降式タイヤが左右の車輪に圧着した状態で、輪軸に取り付けられた減速歯車装置に接近し、その小歯車軸を掴持するチャックを介して動力の回転を減速歯車装置に伝達するピニオン回転装置とを備えてなる鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【請求項3】
鉄道車両台車の輪軸が、台車に取り付けられた状態の輪軸である請求項1又は2に記載の鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【請求項4】
鉄道車両台車の輪軸の両端ジャーナル軸受部が支持架台にて水平に支持された状態で、当該台車の心皿に上方よりセンターピンを嵌入するとともに、台車の心皿両側の上揺れ枕端部に上方より必要な荷重を負荷する台車位置決め装置を備えてなる請求項3に記載の鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【請求項1】
鉄道車両台車の輪軸を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキと、昇降デッキの降下途中において上記輪軸の両端ジャーナル軸受部を下方より支持し、輪軸を水平に支承する支持架台と、上記水平に支承された輪軸の左右の車輪踏面に下方より圧着して輪軸を支持架台上に持ち上げ、ジャーナル軸受内のコロを該軸受の外輪内面に密着させるとともに、圧着車輪に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤとを備えてなる鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【請求項2】
鉄道車両台車の輪軸を所定位置に載置して水平に昇降させる昇降デッキと、昇降デッキの降下途中において上記輪軸の両端ジャーナル軸受部を下方より支持し、輪軸を水平に支承する支持架台と、上記水平に支承された輪軸の左右の車輪踏面に下方より圧着して輪軸を支持架台上に持ち上げ、ジャーナル軸受内のコロを該軸受の外輪内面に密着させるとともに、圧着車輪に回転を付与する回転機能を備えた昇降式タイヤと、昇降式タイヤが左右の車輪に圧着した状態で、輪軸に取り付けられた減速歯車装置に接近し、その小歯車軸を掴持するチャックを介して動力の回転を減速歯車装置に伝達するピニオン回転装置とを備えてなる鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【請求項3】
鉄道車両台車の輪軸が、台車に取り付けられた状態の輪軸である請求項1又は2に記載の鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【請求項4】
鉄道車両台車の輪軸の両端ジャーナル軸受部が支持架台にて水平に支持された状態で、当該台車の心皿に上方よりセンターピンを嵌入するとともに、台車の心皿両側の上揺れ枕端部に上方より必要な荷重を負荷する台車位置決め装置を備えてなる請求項3に記載の鉄道車両台車のベアリング異常の振動検出用回転装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−17674(P2006−17674A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198278(P2004−198278)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000182993)住金関西工業株式会社 (10)
【出願人】(305018476)阪急電鉄株式会社 (7)
【出願人】(592244376)住友金属テクノロジー株式会社 (43)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100123467
【弁理士】
【氏名又は名称】柳舘 隆彦
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000182993)住金関西工業株式会社 (10)
【出願人】(305018476)阪急電鉄株式会社 (7)
【出願人】(592244376)住友金属テクノロジー株式会社 (43)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100123467
【弁理士】
【氏名又は名称】柳舘 隆彦
【Fターム(参考)】
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