説明

鉄道車両

【課題】曲線半径の小さなレール上を円滑に走行できるようにする。
【解決手段】台車枠11に取り付けられている軸輪ユニット20は、一対の車輪21と、輪軸22と、輪軸を回転可能に支持する一対の軸箱25と、台車枠と軸箱との間に配置されている軸バネ30と、軸バネ30と台車枠11との間に配置されている旋回器40とを有している。旋回器40は、軸バネ30に取り付けられている第一受け座41と、台車枠11に取り付けられている第二受け座42と、両受け座間に配置されている球形コロ43とを有している。各受け座41,42には、旋回円Cに沿った方向に延びるガイド溝44が形成されている。球形コロ43はこのガイド溝内に転動可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体と、車体の下部に配置されている台車とを備えている鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用台車としては、例えば、特許文献1に記載されている台車がある。
【0003】
この台車は、車体の下部に取り付けられた台車枠と、左右一対の車輪と、一対の車輪を連結する輪軸と、この輪軸を回転可能に支持する左右一対の軸箱と、上下方向における台車枠と軸箱との間に配置されている軸バネと、を有している。
【0004】
軸バネは、基準となる第一軸を中心とする複数の筒と、複数の筒の相互間に配置されているゴムと、を有している。ゴムは、隣り合っている筒の相互間であって、第一軸と垂直な第二軸を含む領域に配置され、第一軸及び第二軸に垂直な第三軸を含む領域には配置されていない。この軸バネは、第一軸が上下方向を向き、且つ第三軸、つまりゴムが配置されていない部分が台車枠の左右方向を向くように配置され、台車枠の上下方向及び左右方向の剛性が低く、この方向に比較的弾性変形し易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2951368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の台車では、鉄道車両が曲線軌条上を走行する際には、左右一対の車輪の中間を通り、上下方向に延びる仮想の旋回軸回り方向に、軸バネ等が僅かに変形することで、車輪及び輪軸を操舵可能にしていると考えられる。しかしながら、当該台車の軸バネは、前述したように、台車枠の上下方向及び左右方向に比較的弾性変形し易くなっているものの、前述の仮想の旋回軸回り方向の剛性が比較的高く、この方向における大きな変形は望めない。このため、上記特許文献1に記載の台車では、曲線半径の小さなレール上を走行することが困難である、という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、曲線半径の小さなレール上を容易に走行できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための発明に係る鉄道車両は、
車体と、該車体の下部に配置されている台車とを備えている鉄道車両において、前記台車は、前記車体の下部に配置されている台車枠と、該台車枠に取り付けられている1以上の輪軸ユニットと、を備え、前記輪軸ユニットは、左右の一対の車輪と、該一対の車輪のそれぞれの回転軸となる輪軸と、該輪軸を回転可能に支持する一対の軸箱と、前記台車枠と前記軸箱との間に配置され、該台車枠の上下方向に弾性変形する軸バネと、を有し、
前記輪軸ユニットのうちの少なくとも一の輪軸ユニットは、前記台車枠と前記軸バネとの間に配置された旋回器を有し、前記旋回器は、前記上下方向に平行な旋回軸を中心として該軸バネを横切る仮想旋回円に沿った方向に延びるガイドを有する第一部材と、該ガイドに沿って該第一部材に対して相対移動可能な第二部材とを有し、該第一部材と該第二部材とのうちの一方の部材が前記軸バネに固定され、他方の部材が前記台車枠に固定されている、ことを特徴とする。
【0009】
当該鉄道車両では、輪軸を回転可能に支持する軸箱に取り付けられている軸バネと、台車枠との間に旋回器を設けたので、台車枠に対して輪軸を極めて容易に旋回させることができる。よって、当該鉄道車両は、小曲線半径のレール上でも、円滑に走行することができる。
【0010】
ここで、前記鉄道車両において、
前記旋回器を有する前記輪軸ユニットは、前記台車枠に対して前記輪軸の旋回を抑制する旋回抑制器を有してもよい。
【0011】
当該当該車両では、台車枠に対する輪軸の旋回が抑制されるので、小曲線半径のレール上でも、直線状のレール上でも安定走行することができる。
【0012】
また、前記鉄道車両において、
前記旋回軸は、前記輪軸上であって、該輪軸が伸びている方向の中心に位置してもよい。
【0013】
当該鉄道車両では、より小曲線半径のレール上でも、走行することができる。
【0014】
また、前記鉄道車両において、前記台車は、前記車体に対して該車体の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、前記輪軸ユニットは、一対の前記台車それぞれの前記台車枠に対して、該台車枠の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、一対の前記輪軸ユニットのいずれもが前記旋回器を有してもよい。
【0015】
当該鉄道車両では、より小曲線半径のレール上でも、走行することができる。
【0016】
また、前記鉄道車両において、前記台車は、前記車体に対して該車体の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、前記輪軸ユニットは、一対の前記台車それぞれの前記台車枠に対して、該台車枠の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、一対の前記輪軸ユニットのうち、前記車体の前後方向での外側に位置する外側輪軸ユニットのみが前記旋回器を有しており、該車体の前後方向での内側に位置する内側輪軸ユニットは前記旋回器を有していなくてもよい。
【0017】
当該鉄道車両では、外側輪軸ユニットの輪軸は比較的容易に旋回できるものの、中央側輪軸ユニットの輪軸はほとんど旋回できない。このため、曲線半径の小さなレール上でも直線状のレール上でも、安定走行することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、輪軸を回転可能に支持する軸箱に取り付けられている軸バネと、台車枠との間に旋回器を設けたので、台車枠に対して輪軸を極めて容易に旋回させることができる。よって、本発明によれば、小曲線半径のレール上でも、円滑に走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第一実施形態における鉄道車両用台車の平面図である。
【図2】本発明に係る第一実施形態における鉄道車両用台車の側面図である。
【図3】本発明に係る第一実施形態における鉄道車両用台車の正面図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態における鉄道車両の概略平面図である。
【図5】本発明に係る第一実施形態における輪軸ユニットの要部斜視図である。
【図6】本発明に係る第一実施形態における軸バネの平面図である。
【図7】本発明に係る第一実施形態における輪軸ユニットの要部切欠側面である。
【図8】本発明に係る第二実施形態における鉄道車両用台車の平面図である。
【図9】本発明に係る第二実施形態における鉄道車両用台車の側面図である。
【図10】本発明に係る第二実施形態における軸箱リンクの平面図である。
【図11】本発明に係る第三実施形態における鉄道車両用台車の平面図である。
【図12】本発明に係る第三実施形態における鉄道車両が曲がっているレール上を走行している際の状態を示す説明図である。
【図13】本発明に係る第一変形例における軸輪ユニットの要部切欠側面図である。
【図14】本発明に係る第二変形例における鉄道車両用台車の平面図である。
【図15】本発明に係る第二変形例における鉄道車両用台車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る鉄道車両の各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
「第一実施形態」
まず、図1〜図7を用いて、本発明に係る第一実施形態としての鉄道車両について説明する。
【0022】
本実施形態の鉄道車両は、図4に示すように、車体1と、この車体1の下部において車体1の前後方向に間隔をあけて配置されている一対の台車10と、を備えている。この台車10は、図1〜図3に示すように、車体1の下部に配置されている台車枠11と、台車枠11と車体1との間に配置されている空気バネ15と、該空気バネ15を車体1の前後方向から挟むようにして台車枠11に取り付けられている一対の車輪を含む輪軸ユニット20と、を備えている。なお、以下において、特に断りなく、単に、「上下方向」「前後方向」「左右方向」としている場合、これらの方向は、当該鉄道車両が水平で且つ直線レール上に位置しているときの車体1を基準にした方向を示しているものとする。すなわち、「上下方向」とは軌道の延在方向に直交する断面において該軌道に対して垂直な方向を意味し、「前後方向」とは軌道の延在方向を意味し、さらに、「左右方向」とは軌道の幅方向を意味している。
【0023】
台車枠11は、前後方向に延びる左右一対の台車枠側梁12と、一対の台車枠側梁12の前後方向の端部で両者を連結する端横梁13と、一対の台車枠側梁12の前後方向の中間部で両者を連結する中間横梁14と、有している。
【0024】
空気バネ15は、一対の台車枠側梁12のそれぞれの前後方向の中央部と、車体1との間に配置されている。
【0025】
輪軸ユニット20は、図4に示すように、前後方向に間隔をあけて配置されている一対の台車10のうち、前側の台車10に関しては、前側の台車10の前側(外側)に配置されている外側輪軸ユニット20oと、前側の台車10の後側(中央側)に配置されている中央側輪軸ユニット20iとがあり、後側の台車10に関しては、後側の台車10の後側(外側)に配置されている外側輪軸ユニット20oと、後側の台車10の前側(中央側)に配置されている中央側輪軸ユニット20iとがある。すなわち、1台の台車10の輪軸ユニット20としては、図1に示すように、台車枠11における車体1の前後方向での外側(図1における左側)に配置されている外側輪軸ユニット20oと、台車枠11における車体1の前後方向における中央側(図1における右側)に配置されている中央側輪軸ユニット20iとがある。
【0026】
各輪軸ユニット20は、いずれも、前述の一対の車輪21と、一対の車輪21を連結する輪軸22と、輪軸22を回転可能に支持する左右一対の軸箱25と、台車枠11と軸箱25との間に配置されている軸バネ30と、軸バネ30と台車枠11との間に配置されている旋回器40と、軸輪22の旋回を抑制する復元バネ(旋回抑制器)51及び減衰ダンパ(旋回抑制器)55と、を有している。
【0027】
左右一対の軸箱25は、それぞれ、輪軸22を基準にして、この輪軸22に対して垂直な前側及び後側に延びる張出し部26を有している。各張出し部26は、台車枠側梁12の下方に位置している。軸バネ30は、軸箱25の前側の張出し部26と台車枠側梁12との間、この軸箱25の後側の張出し部26と台車枠側梁12との間に設けられている。すなわち、軸バネ30は、一つの軸箱25に対して2個設けられ、一つの台車10には合計8個設けられている。
【0028】
各輪軸ユニット20の各軸バネ30は、いずれも、図5〜図7に示すように、基準となる第一軸A1を中心軸とする複数の筒31と、複数の筒31の相互間に配置されている弾性体としてのゴム32と、を有している。複数の筒31は、いずれも、円錐の底面に平行な面で、この円錐の頭部を切断した立体形状の周面の形状を成している。
【0029】
ゴム32は、第一軸A1に対して垂直な面内の方向で、第一軸A1に垂直な第二軸A2を含む領域に配置され、第一軸A1及び第二軸A2に垂直な第三軸A3を含む領域には、配置されていない。
【0030】
この軸バネ30は、第一軸A1が上下方向を向き、第三軸A3が左右方向を向くように配置されている。よって、軸バネ30は、第一軸A1を基準にして、台車枠11の前後方向にゴム32が存在し、第一軸A1を基準にして、台車枠11の左右方向にゴム32が存在しない。
【0031】
軸箱25の張出し部26の上面には、上方に突出した円筒状の凸部26a(図5)が形成されている。この凸部26aが、軸バネ30の最も内側の筒31内に嵌まり込んでいる。
【0032】
各輪軸ユニット20の各旋回器40は、軸バネ30毎に設けられている。各旋回器40は、いずれも、軸バネ30に取り付けられている第一受け座(第一部材)41と、台車枠側梁12に取り付けられている第二受け座(第二部材)42と、これら第一受け座41と第二受け座42との間に配置されている複数の球形コロ43と、を有している。
【0033】
軸バネ30の上部は、軸バネ受け35で覆われている。第一受け座41は、ボルト39により、軸バネ受け35に取り付けられている。また、第二受け座42は、台車枠側梁12の下面から下方に突出した受け座堰12aに囲まれて、台車枠側梁12に対して水平方向に相対移動できないよう取り付けられている。なお、ここでは、台車枠側梁12の下面から下方に突出した受け座堰12aを設けているが、この代りに、台車枠側梁12の下面に、上方へ凹む受け座溝を形成し、ここに第二受け座42を嵌め込んでもよい。
【0034】
第一受け座41及び第二受け座42には、それぞれ、複数の球形コロ43が転がるガイド溝44が形成されている。このガイド溝44は、旋回円C(図5)に沿った方向に延びている。ガイド溝44の溝幅寸法は、球形コロ43の径寸法よりも僅かに大きい。ここで、旋回円Cは、図1に示すように、輪軸22が延びている左右方向におけるこの輪軸22の中心を通り、上下方向に延びる旋回軸Acを中心とし、平面視で、軸バネ30の第一軸A1を通る円のことである。よって、第二受け座42は、第一受け座41に対して、ガイド溝44が延びている方向、つまり旋回円Cに沿った方向に相対移動することができる。
【0035】
このように、第二受け座42は、第一受け座41に対して、旋回円Cに沿った方向に相対移動可能であるため、この相対移動過程で、旋回円Cに沿った方向のガイド溝44の端部から球形コロ43が転がり出るおそれがある。そこで、ここでは、旋回円Cに沿った方向における、第一受け座41の一方の端部は、第一受け座41及び第二受け座42のガイド溝44の開口を塞ぐ蓋が形成され、第二受け座42の他方の端部には、第一受け座41及び第二受け座42のガイド溝44の開口を塞ぐ蓋が形成されている。
【0036】
図1〜図3に示す復元バネ51は、筒状の第一ケーシングと、第一ケーシングの内周面に外周面が接する筒状の第二ケーシングと、一方の端部が第一ケーシングの底に取り付けられ、他方の端部が第二ケーシングの底に取り付けられているコイルバネと、を有している。この復元バネ51は、ケーシング内のコイルバネの弾性方向が旋回円Cに沿う向きに配置され、第一ケーシングの底が軸箱25にピン結合され、第二ケーシングの底が台車枠側梁12から延びるブラケット12b(図2)にピン結合されている。
【0037】
減衰ダンパ55は、筒状のケーシングと、一方の端部にピストンが固定されているピストンロッドと、を有している。ケーシング内には、ピストンが摺動可能に挿入され、さらに、ピストンの摺動に対する抵抗となるオイル等が入れられている。この減衰ダンパ55は、ケーシング内のピストンの摺動方向が旋回円Cに沿う向きに配置され、ケーシングの底が軸箱25にピン結合され、ピストンロッドの端部が台車枠側梁12から延びるブラケットにピン結合されている。
【0038】
以上、本実施形態では、輪軸22を回転可能に支持する軸箱25に取り付けられている軸バネ30と台車枠11との間に、旋回器40を設けたので、台車枠11に対して輪軸22を相対的に旋回させることができる。よって、本実施形態の鉄道車両は、小曲線半径(例えば、曲線半径が50m以下)のレール上でも、円滑に走行することができる。
【0039】
また、本実施形態では、復元バネ51により、台車枠11に対する輪軸22の相対的な旋回を抑制し、しかも、減衰ダンパ55により、復元バネ51のバネ振動を素早く収束させることができる。よって、本実施形態の車両は、小曲線半径のレール上でも、直線状のレール上でも安定走行することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、一つの軸箱25に対して、二個の軸バネ30を設けると共に、二個の旋回器40を設けているが、これら二個の旋回器40を一体化して、一つの軸箱25に対して一個の旋回器を設けるようにしてもよい。
【0041】
「第二実施形態」
次に、図8〜図10を用いて、本発明に係る第二実施形態としての鉄道車両について説明する。
【0042】
本実施形態の鉄道車両の台車10bも、図8及び図9に示すように、第一実施形態と同様、車体1の下部に配置されている台車枠11と、台車枠11と車体1との間に配置されている空気バネ15と、台車枠11に取り付けられている左右一対の車輪21を含む輪軸ユニット20bと、を備えている。また、輪軸ユニット20bも、第一実施形態と同様、外側輪軸ユニット20boと、中央側輪軸ユニット20biとがある。
【0043】
各輪軸ユニット20bは、いずれも、前述の一対の車輪21と、一対の車輪21を連結する輪軸22と、輪軸22を回転可能に支持する左右一対の軸箱25と、台車枠11と軸箱25との間に配置されている軸バネ30と、左右一対の軸箱25を上下方向に移動可能に支持する軸箱リンク27と、軸バネ30と台車枠11との間に配置されている旋回器40bと、軸輪22の旋回を抑制する復元バネ51及び減衰ダンパ55と、を有している。
【0044】
軸箱リンク27の一方の端部は、一つの軸箱25とピン結合し、他方の端部は、台車枠11の中間横梁14とピン結合している。各軸箱25の上方には、台車枠側梁12が位置している。すなわち、軸箱リンク27の一方の端部がピン結合する各軸箱25は、左右方向において、台車枠側梁12の位置に設けられている。一方、軸箱リンク27の他方の端部がピン結合する中間横梁14は、一対の台車枠側梁12に対して、左右方向の内側に設けられている。このため、軸箱リンク27は、軸箱25から中間横梁14に向かうに連れて、台車枠11の左右方向の内側に傾斜する傾斜部28を有している。
【0045】
各軸箱リンク27の各ピン結合部分には、図10に示すように、球面ブッシュ29が設けられており、各ピン結合部分を中心として、他方のピン結合部分が相対的に揺動できるようになっている。
【0046】
ここで、本実施形態の旋回軸Ac1は、左右一対の軸箱リンク27のうち、一方の軸箱リンク27の軸箱25とのピン結合位置とこの軸箱リンク27の中間横梁14とのピン結合位置とを結ぶ線分の延長線と、他方の軸箱リンク27の軸箱25とのピン結合位置とこの軸箱リンク27の中間横梁14とのピン結合位置とを結ぶ線分の延長線との交点を通り、上下方向に延びる軸である。また、旋回円C1は、この旋回軸Ac1を中心とし、平面視で軸バネ30の第一軸A1を通る円である。
【0047】
各軸箱25と台車枠側梁12との間であって、台車枠11の前後方向において、軸箱25が支持している輪軸22と同じ位置には、一つの軸バネ30が設けられている。すなわち、本実施形態において、軸バネ30は、一つの軸箱25に対して1個設けられ、一つの台車10bには合計4個設けられている。
【0048】
各輪軸ユニット20bの各旋回器40bは、軸バネ30毎に設けられている。よって、旋回器40bは、一つの台車10bに対して、4個設けられている。この旋回器40bは、基本的に第一実施形態の旋回器40と同じで、各受け座に形成されているガイド溝も旋回円C1に沿った方向に延びている。但し、前述したように、本実施形態の旋回円C1は、第一実施形態と異なっているため、旋回器40bの各受け座に形成されているガイド溝の向きも第一実施形態と異なっている。
【0049】
復元バネ51及び減衰ダンパ55は、いずれも、第一実施形態のものと同一である。但し、前述したように、本実施形態の旋回円C1が第一実施形態と異なっているため、復元バネ51は、そのケーシング内のコイルバネの弾性方向が旋回円C1に沿う向きに配置されている関係で、その位置及び向きが第一実施形態と異なっている。さらに、減衰ダンパ55も、そのケーシング内のピストンの摺動方向が旋回円C1に沿う向きに配置されている関係で、その位置及び向きが第一実施形態と異なっている。
【0050】
以上、本実施形態でも、第一実施形態と同様、軸輪22を回転可能に支持する軸箱25に取り付けられている軸バネ30と、台車枠11との間に、旋回器40bを設けたので、小曲線半径(例えば、曲線半径が50m以下)のレール上でも、円滑に走行することができる。但し、本実施形態では、旋回円C1の半径が第一実施形態の旋回円Cの半径よりも大きいため、円滑に走行できるレールの曲線半径は、第一実施形態よりも大きくなる。
【0051】
「第三実施形態」
次に、図11及び図12を用いて、本発明に係る第三実施形態としての鉄道車両について説明する。
【0052】
本実施形態の鉄道車両の台車10cは、第一実施形態の変形例であり、図11に示すように、以上の各実施形態と同様、車体1の下部に配置されている台車枠11と、台車枠11と車体1との間に配置されている空気バネ15と、台車枠11に取り付けられている左右一対の車輪21を含む輪軸ユニット20cと、を備えている。また、輪軸ユニット20cも、以上の各実施形態と同様、外側輪軸ユニット20coと、中央側輪軸ユニット20ciとがある。
【0053】
各輪軸ユニット20cは、基本的に、第一実施形態の輪軸ユニット20と同一で、一対の車輪21と、一対の車輪21を連結する輪軸22と、輪軸22を回転可能に支持する左右一対の軸箱25と、台車枠11と軸箱25との間に配置されている軸バネ30と、を有している。
【0054】
さらに、外側輪軸ユニット20coは、第一実施形態と同様、軸バネ30と台車枠11との間に配置されている旋回器40と、軸輪22の旋回を抑制する復元バネ51及び減衰ダンパ55と、を有している。
【0055】
一方、中央側輪軸ユニット20ciは、第一実施形態と異なり、旋回器40、復元バネ51及び減衰ダンパ55を有していない。
【0056】
よって、本実施形態では、外側輪軸ユニット20coの輪軸22は、旋回軸Acを中心として比較的容易に旋回する一方で、中央側輪軸ユニット20ciの輪軸22はほとんど旋回しない。
【0057】
このため、本実施形態の鉄道車両が曲率半径Rのレール上を走行する場合、図12を示すように、車体1の前側の下部に配置されている前側台車10cの前側の輪軸ユニット、つまり外側輪軸ユニット20coの輪軸22は、レールの形状に沿って旋回するものの、後側の輪軸ユニット、つまり中央側輪軸ユニット20ciの輪軸22は、ほとんど旋回しない。また、車体1の後側の下部に配置されている後側台車10cの前側の輪軸ユニット、つまり中央側輪軸ユニット20ciの輪軸22は、ほとんど旋回しないものの、後側の輪軸ユニット、つまり外側輪軸ユニット20coの輪軸22は、レールの形状に沿って旋回する。
【0058】
以上のように、本実施形態では、前側台車10c及び後側台車10cの中央側輪軸ユニット20ciの輪軸22がほとんど旋回しないものの、前側台車10c及び後側台車10cの外側輪軸ユニット20co、つまり、この車両の最前部の輪軸ユニット20co及び最後部の輪軸ユニット20coの軸輪22がレール形状に沿って旋回する。このため、本実施形態でも、小曲線半径(例えば、曲線半径が50m以下)のレール上を円滑に走行することができる。
【0059】
また、本実施形態では、各台車10cの中央側輪軸ユニット20ciの輪軸22がほとんど旋回しないため、直線のレール上を安定走行することができる。
【0060】
なお、本実施形態は、第一実施形態の変形例であるが、第二実施形態においても同様に、変形してもよい。
【0061】
「変形例1」
次に、以上の実施形態の第一変形例について、図13を用いて説明する。
【0062】
以上の各実施形態の軸バネ30は、複数の筒31と、複数の筒31の相互間に配置されたゴム32とを有するものであるが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、図13に示すように、軸バネ30dをコイルバネで形成してもよい。
【0063】
この場合、軸箱25の上面に上方に突出する円柱状の凸部26aを形成し、この凸部26aを、軸バネ30dであるコイルバネの一方の端部側から内周側に入れて、この軸バネ30dを軸箱25に取り付ける。また、軸バネ30であるコイルバネの他方の端部には、バネ受け座36dを取り付ける。このバネ受け座36dは、軸バネ30であるコイルバネの外径よりも大きな面積を持つバネ受け板37と、バネ受け板37のほぼ中央から下方に突出する円柱状の凸部38とを有している。この凸部38をコイルバネの他方の端部側から内周側に入れて、このコイルバネで形成されている軸バネ30dをバネ受け座36に取り付ける。
【0064】
旋回器40の第一受け座41は、バネ受け板37にボルト39で固定されている。一方、この旋回器40の第二受け座42は、第一実施形態と同様、台車枠側梁12の下面から下方に突出した受け座堰12aに囲まれて、台車枠側梁12に対して水平方向に相対移動できないよう取り付けられている。
【0065】
なお、本変形例では、バネ受け板37に円柱状の凸部38を形成し、この凸部38を軸バネ30dの内周側に入れているが、バネ受け板37に、円筒状の堰を形成し、この堰の内周側に軸バネ30dを入れるようにしてもよい。また、以上の各実施形態及び本変形例では、軸箱25に円柱状の凸部26aを形成し、この凸部26aを軸バネ30,30dの内周側に入れているが、軸箱25に、円筒状の堰を形成し、この堰の内周側に軸バネ30,30dを入れるようにしてもよい。
【0066】
「変形例2」
次に、以上の実施形態の第二変形例について、図14及び図15を用いて説明する。
【0067】
以上の各実施形態の鉄道車両は、台車枠11と車体1との間に、空気バネ15を設け、この空気バネ15により、車体1に対する台車枠11の上下方向の変位を吸収すると共に、車体1に対する台車枠11の旋回性をある程度確保しているが、図14及び図15に示すように、車体1と台車枠11とのうち、一方に旋回ピン2を設け、他方に、この旋回ピン2が回転可能にはまり込むピン受け座3を設けて、車体1に対する台車枠11の旋回性を確保するようにしてもよい。
【0068】
「その他の変形例」
以上の各実施形態の旋回器40,40bは、いずれも、球形コロ43を有する転がり軸受けであるが、球形コロ43の代わりに、円柱形コロを用いてもよい。
【0069】
また、以上の各実施形態の旋回器は、転がり軸受けではなく、すべり軸受けであってもよい。この場合、第一受け座と第二受け座とのうち、一方に旋回円に沿った方向に延びるガイドを形成し、他方にこのガイドに摺接するガイド受けを形成することになる。
【0070】
また、以上の各実施形態の台車は、いずれも、復元バネ51及び減衰ダンパ55を有しているが、復元バネ51のみであってもよい。また、以上の実施形態では、いずれも、復元バネ51と減衰ダンパ55とが互いに独立しているものであるが、これらの代りに、ケーシング内に、バネ、ピストン、オイル等が入れられ、復元バネと減衰ダンパとの機能を併せ持つダンパを用いてもよい。
【0071】
また、以上の各実施形態の鉄道車両は、いずれも、1台の車体1に対して2台の台車10が設けられているものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1台の車体1に対して台車10が1台のみ設けられているものにも適用することができる。この場合、1台の台車10に対して、4つの空気バネ15を設け、これら4つの空気バネ15で車体1を支持するようにすることが好ましい。これら4つの空気バネ15は、例えば、1台の台車10中の前後の輪軸22のそれぞれの上方に配置する方法が考えられる。このように、1台の車体1に対して台車10を1台のみ設ける場合、空気バネ15の数や位置に応じて、台車枠側梁12等の形状が変わる。
【0072】
但し、第三実施形態のように、台車枠11における車体1の前後方向での外側に配置されている外側輪軸ユニット20coと、台車枠11における車体1の前後方向での中央側に配置されている中央側輪軸ユニット20ciとの構成を変える場合には、1台の車体1に対して複数の台車10が設けられていることを前提としているので、1台の車体1に対して複数の台車10が設けられている必要がある。
【符号の説明】
【0073】
1:車体、10,10b,10c:台車、11:台車枠、15:空気バネ、20,20b,20c:輪軸ユニット、20o,20bo,20co:外側輪軸ユニット、20i,20bi,20ci:中央側輪軸ユニット、21:車輪、22:輪軸、25:軸箱、30,30d:軸バネ、40,40b:旋回器、41:第一受け座、42:第二受け座、43:球形コロ、51:復元バネ、55:減衰ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、該車体の下部に配置されている台車とを備えている鉄道車両において、
前記台車は、前記車体の下部に配置されている台車枠と、該台車枠に取り付けられている1以上の輪軸ユニットと、を備え、
前記輪軸ユニットは、左右の一対の車輪と、該一対の車輪のそれぞれの回転軸となる輪軸と、該輪軸を回転可能に支持する一対の軸箱と、前記台車枠と前記軸箱との間に配置され、該台車枠の上下方向に弾性変形する軸バネと、を有し、
前記輪軸ユニットのうちの少なくとも一の輪軸ユニットは、前記台車枠と前記軸バネとの間に配置された旋回器を有し、
前記旋回器は、前記上下方向に平行な旋回軸を中心として該軸バネを横切る仮想旋回円に沿った方向に延びるガイドを有する第一部材と、該ガイドに沿って該第一部材に対して相対移動可能な第二部材とを有し、該第一部材と該第二部材とのうちの一方の部材が前記軸バネに固定され、他方の部材が前記台車枠に固定されている、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記旋回器を有する前記輪軸ユニットは、前記台車枠に対して前記輪軸の旋回を抑制する旋回抑制器を有する、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鉄道車両において、
前記旋回軸は、前記輪軸上であって、該輪軸が伸びている左右方向の中心に位置している、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の鉄道車両において、
前記台車は、前記車体に対して該車体の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、
前記輪軸ユニットは、一対の前記台車それぞれの前記台車枠に対して、該台車枠の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、
一対の前記輪軸ユニットのいずれもが前記旋回器を有する、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の鉄道車両において、
前記台車は、前記車体に対して該車体の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、
前記輪軸ユニットは、一対の前記台車それぞれの前記台車枠に対して、該台車枠の前後方向に間隔をあけて一対配置されており、
一対の前記輪軸ユニットのうち、前記車体の前後方向での外側に位置する外側輪軸ユニットのみが前記旋回器を有しており、該車体の前後方向での内側に位置する内側輪軸ユニットは前記旋回器を有していない、
ことを特徴とする鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−171414(P2012−171414A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33500(P2011−33500)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】