説明

銀色の外観を有する発泡壁容器

微孔質発泡ポリマーと微孔質発泡体セル中に含まれた非反応性ガスとで構成された容器で、銀色の外観を有する。この容器の製造方法は、壁部内に非反応性ガスが閉じ込められたポリマー予備成形物を射出成形し、ポリマーの軟化温度より低い温度に予備成形物を冷却し、ポリマーの軟化温度より高い温度に前記予備成形物を再加熱し、予備成形物をブロー成形して、微孔質発泡体セル中に非反応性ガスを含有させた微孔質発泡ポリマーで構成される容器を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、特有な外観を有する発泡壁ポリマー容器に関する。より詳細には、本発明は微孔質発泡体(micro cellular foam)を含む容器であって、発泡体の微細なセルには窒素のような非反応性ガスが含まれ、銀色の外観を有する容器に関する。また、本発明の一態様として、銀色の外観を有する発泡壁容器の製造方法も意図するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸配向の単層及び多層ボトルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリマー材料から熱予備成形により作製することができ、単層又は多層の予備成形物を所望の延伸温度に加熱して、それを囲む金型キャビティに即して圧伸やブロー成形を行う。予備成形物は従来からのいずれの方法によっても作製することができ、例えば、ポリマーによる単層又は多層で構成された予備成形物の押出しによって、又は、既に射出成形した予備成形物にポリマーの連続層を射出することによって作製される。一般に、多層体は飲料用容器に使用され、単層構造容器には通常存在しない拡散遮断性を付与する。
従来からの多層体容器では、ポリマーでできた様々な層が通常は互いに密着しているので、容器の壁を熱エネルギーが容易に伝導してしまう。このため、容器内の冷却した内容物はすぐに周囲温度に温められてしまう。したがって、こうした容器は、例えば発泡ポリスチレン製のシェルで被覆して容器に断熱特性を付与することが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
着色剤を添加せずに、特有の視覚的特性を有する不透明な改良されたプラスチック容器が作製できれば望ましい。さらには、該改良されたプラスチック容器に断熱特性が付与できることが望ましいと考えられる。また、望ましくは、容器のリサイクル特性に悪影響を与えかねない着色剤の添加を必要とせずに銀色の外観を有する改良されたプラスチック容器が作製できるとよい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、驚くべきことに、特有の外観を有する発泡壁容器が見出された。該容器は微孔質発泡ポリマーと、微孔質発泡体セル中に含有された非反応性ガスとを含み、該容器は着色剤を添加しなくても銀色の外観を有する。
また、本発明の一実施形態として、特定の外観を有する発泡壁容器の製造方法も包含する。この製造方法により、壁部中に非反応性ガスが閉じ込められたポリマー予備成形物を射出成形する工程と、ポリマーの軟化温度より低い温度に前記予備成形物を冷却する工程と、前記ポリマー軟化温度より高い温度に予備成形物を再加熱する工程と、予備成形物をブロー成形する工程とを含み、微孔質発泡体セル中に非反応性ガスを含む微孔質発泡ポリマーで構成される容器であって、銀色の外観を有する容器を作製する。
本発明の容器は、炭酸飲料の充填に特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、特定の外観を有し、微孔質発泡ポリマーと微孔質発泡体セル中に含まれた非反応性ガスとで構成される発泡壁容器であって、銀色の外観を有する容器に関する。
本発明の別の実施形態は、特定の外観を有する発泡壁容器の製造方法に関し、該製造方法は、壁部内に非反応性ガスが閉じ込められたポリマー予備成形物を射出成形し、ポリマー軟化温度より低い温度に前記予備成形物を冷却し、前記ポリマー軟化温度より高い温度に予備成形物を再加熱し、予備成形物をブロー成形する工程を含み、微孔質発泡体セル中に非反応性ガスを含む微孔質発泡ポリマーで構成される容器であって、銀色の外観を有する容器を調製する。
容器を調製するのに好適なポリマーは、必ずしも限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び他のポリエステル類、ポリプロピレン、アクリロニトリル酸エステル類、塩化ビニル類、ポリオレフィン類、ポリアミド類等、またこれらの誘導体、混合物、共重合体が含まれる。商品化に適したポリマーはPETである。
従来からの可塑化スクリュー押出機でポリマーフレークを溶融させて、押出機出口でポリマー熱溶融液流を調製する。押出機から排出されるポリマー熱溶融液流の温度は、一般に、約225〜約325℃の範囲である。ポリマー熱溶融液流の温度がいくつかの要因により決まること、即ち、使用されるポリマーフレークの種類、押出機スクリューへの供給エネルギー等の要因により決まることは、この分野の当業者であれば理解できるであろう。一例であるが、PETの押出しは従来より約260〜約290℃の温度で行われる。加圧下、押出機混合部内に非反応性ガスが注入され、最終的にポリマー材料内の微孔中空部としてガスが閉じ込められる。本願明細書で使用の「非反応性ガス」という用語は、ポリマーと接触しても実質的に不活性なガスを意味する。好適な非反応性ガスとしては、二酸化炭素、窒素及びアルゴン、並びにこれらのガスを互いに混合したもの又は他のガスと混合したものが挙げられる。
【0006】
本発明では、前記押出し物を射出成形して、壁部内に非反応性ガスが閉じ込められたポリマー予備成形物を形成する。ポリマー予備成形物の射出成形方法及び射出成形装置については、この分野ではよく知られている。
非晶質PETの密度は1.335g/cm3であることは公知である。また、溶融状態のPETの密度が約1.200g/cm3であることも公知である。そのため、溶融PETを予備成形物の射出キャビティーに完全に充填して冷却させると、できたあがった予備成形物は適切な質量を示すことなく、また、ひけ等の重大な欠陥を多数有することになる。従来からの射出成形についての文献には、非晶質PETと溶融PETの密度の差を埋め合わせるためには、キャビティーの充填後、また、ポリマー材料の冷却中に、少量のポリマー材料を該当部分に追加しなければならないことが教示されている。これは填塞圧(packing pressure)と呼ばれる。射出成形により作製される予備成形物が十分に充填され完全に形成されることを確実にするためには、射出成形サイクルの填塞圧がかかる段階でさらに材料の約10%を追加する必要がある。射出成形作業の填塞圧段階は、PET以外のポリマー材料の場合も同様に適用する。
しかしながら本発明では、ポリマー予備成形物は射出成形されると同時に非反応性ガスを使って発泡が行われる。射出の最中にガスがポリマー材料内に閉じ込められる。従来技術における射出成形方法では追加のポリマー材料を填塞段階で射出するが、これとは逆に、本発明では最小の填塞圧を利用する。ポリマー材料がまだ溶融状態であれば、非反応性ガスの分圧は、ポリマーから分離されたガスを、微孔質発泡構造を形成するガス相中に放出させるのには十分である。こうして本発明の方法により作製された予備成形物は、填塞法を用いる従来からの射出成形法で製造されたポリマー予備成形物と比べ、質量は少ないが形態及び形状は同じである。
【0007】
微小セルには、微孔質発泡体構造の製造方法において一般的に使用される様々な気体の1種以上が含有されていてもよい。商品として許容できる実施形態の1つは、非反応性ガスが、非反応性ガス全質量の少なくとも10質量%の濃度で二酸化炭素を含む。二酸化炭素が前記濃度であれば分圧が十分なので、本発明の容器内の炭酸飲料から二酸化炭素が外界大気中へ拡散することを抑制できる。微孔質発泡体は効果的な断熱材として機能する傾向があり、大気の熱エネルギーが容器内部の冷却した炭酸飲料へ伝わるのを遅らせることができる。
射出成形工程の終了後、予備成形物をポリマー軟化温度より低い温度に冷却する。例えば、PETの軟化温度はおよそ70℃である。そこで、閉じ込められた非反応性ガスはポリマー予備成形物の壁部の中に保持される。この冷却工程によりポリマーが調整され、ブロー成形により容器を首尾よく作製するための好適な特性が維持される。また、この冷却工程はポリエステル類等のポリマーを採用する場合に有用である。それは、このようなポリマーは押出成形されたパリソンから直接ブロー成形を行うことができないからである。前記冷却工程は、ポリマー形成技術において用いられる従来からのいずれの方法でも実行することができ、例えば、予備成形物の表面全体に冷却ガス流を流したり、或いは、成形用の型を冷却することによって金型内で予備成形物を冷却すればよい。
その後、予備成形物をポリマー軟化温度より高い温度に再加熱する。この加熱工程は、例えば、予備成形物を高温ガス流と接触させたり、火炎に当てたり(flame impingement)、赤外線エネルギーを照射したり、予備成形物を従来の炉に通過させる等の公知手段により行うことができる。通常、PETは、引き続き行うブロー成形のために、PETの軟化温度より20〜25℃高い温度に再加熱する。PETをそのガラス転移温度を超える高温で再加熱したり、或いは、過度に長い時間、軟化温度より高い温度に保持すると、望ましくないことにPETは結晶化し始め、白色になる。同様に、微小セル中の非反応性ガスの増大する圧力によりポリマー材料の物理的特性が限度を超えてしまうような温度以上に予備成形物を加熱する場合も、微小セルは望ましくないことに膨張し始めて予備成形物を変形させる。
【0008】
最後に、予備成形物をブロー成形し、微孔質発泡体セル中に非反応性ガスを含有する、微孔質発泡体ポリマーから本質的になる容器を作製する。ポリマー予備成形物から容器をブロー成形により作製する方法及び装置については公知である。
こうして作製されたブロー成形による発泡壁ポリマー容器は、金属製でないにもかかわらず、銀色の外観を有する。ブロー成形容器の色は銀色で、パントンフォーミュラガイド色番号のおよそ420から425の範囲、877、8001、8400及び8420を示すとよい。最終的に完成した容器がなぜ特有の銀色の外観を有するかについては、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、予備成形物キャビティーにポリマーを充填している最中、ポリマーから離れたガスから予備成形物キャビティー内の比較的低い圧力への圧力低下によりポリマーの流頭でガスの気泡が形成されるからと考えられる。予備成形物キャビティー内に導入される際にポリマー材料の流頭で形成された気泡が、その後、予備成形物の外面や内面に堆積する。
上記説明から、当該分野の当業者であれば本発明の本質的な特徴を把握することは容易であり、本発明の本質及び本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更や修正を行い、本発明を様々な用途及び条件に適応させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔質発泡ポリマーと、
微孔質発泡体セル中に含まれた非反応性ガスとを含む容器であって、銀色の外観を有する容器。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリロニトリル酸エステル、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリアミド、又は、これらの誘導体もしくは共重合体の1種以上を含む、請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記ポリマーがポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1記載の容器。
【請求項4】
前記非反応性ガスが二酸化炭素、窒素又はアルゴンの1種以上を含む、請求項1記載の容器。
【請求項5】
前記非反応性ガスが窒素を含む、請求項1記載の容器。
【請求項6】
前記非反応性ガスが少なくとも10質量%の濃度で窒素を含む、請求項1記載の容器。
【請求項7】
前記容器の色が、パントンフォーミュラガイド色番号420、421、422、423、424、425、877、8001、8400又は8420付近である、請求項1記載の容器。
【請求項8】
前記容器の色が、パントンフォーミュラガイド色番号420、421、422、423、424又は425付近である、請求項1記載の容器。
【請求項9】
前記容器の色が、パントンフォーミュラガイド色番号877付近である、請求項1記載の容器。
【請求項10】
ポリエステル、ポリプロピレン、アクリロニトリル酸エステル、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリアミド、又は、これらの誘導体もしくは共重合体の1種以上を含む、微孔質発泡ポリマーと、
二酸化炭素、窒素又はアルゴンの1種以上を含む非反応性ガスとを含む容器であって、
前記容器の色がパントンフォーミュラガイド色番号420、421、422、423、424、425、877、8001、8400又は8420付近である容器。
【請求項11】
前記ポリマーがポリエチレンテレフタレートを含む、請求項10記載の容器。
【請求項12】
前記非反応性ガスが窒素を含む、請求項10記載の容器。
【請求項13】
前記容器の色が、パントンフォーミュラガイド色番号420、421、422、423、424、425又は877付近である、請求項10記載の容器。
【請求項14】
微孔質発泡ポリエチレンポリフタレートと、
微孔質発泡体セル中に含有された窒素を含む非反応性ガスとを有する容器であって、
前記容器の色がパントンフォーミュラガイド色番号877付近である容器。
【請求項15】
容器の製造方法で、
壁部内に非反応性ガスが閉じ込められたポリマー予備成形物を射出成形する工程と、
前記ポリマーの軟化温度より低い温度に前記予備成形物を冷却する工程と、
前記ポリマーの軟化温度より高い温度に前記予備成形物を再加熱する工程と、
前記予備成形物をブロー成形する工程とを含み、微孔質発泡体セル中に非反応性ガスを含有させた微孔質発泡ポリマーから本質的になる容器であって、銀色の外観を有する容器を製造する方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリロニトリル酸エステル、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリアミド、又は、これらの誘導体もしくは共重合体の1種以上を含む、請求項15記載の容器の製造方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項15記載の容器の製造方法。
【請求項18】
前記非反応性ガスが二酸化炭素、窒素又はアルゴンの1種以上を含む、請求項15記載の容器の製造方法。
【請求項19】
前記非反応性ガスが窒素を含む、請求項15記載の容器の製造方法。
【請求項20】
前記非反応性ガスが少なくとも10質量%の濃度で窒素を含む、請求項15記載の容器の製造方法。
【請求項21】
前記容器の色が、パントンフォーミュラガイド色番号420、421、422、423、424、425、877、8001、8400又は8420付近である、請求項15記載の容器の製造方法。
【請求項22】
ポリエステル、ポリプロピレン、アクリロニトリル酸エステル、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリアミド、又は、これらの誘導体もしくは共重合体の1種以上を含む予備成形物であって、二酸化炭素、窒素又はアルゴンの1種以上を含む非反応性ガスを壁部内に閉じ込めた前記予備成形物を射出成形する工程と、
前記予備成形物を約70℃より低い温度に冷却する工程と、
前記予備成形物を約70℃より高い温度に再加熱する工程と、
前記予備成形物をブロー成形する工程とを含み、微孔質発泡体セル中に前記非反応性ガスを含有させた微孔質発泡ポリマーで構成される容器であって、銀色の外観を有する容器を製造する方法。
【請求項23】
前記ポリマーが、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項22記載の容器の製造方法。
【請求項24】
前記非反応性ガスが窒素を含む、請求項22記載の容器の製造方法。
【請求項25】
前記非反応性ガスが少なくとも10質量%の濃度で窒素を含む、請求項22記載の容器の製造方法。
【請求項26】
前記容器の色が、パントンフォーミュラガイド色番号420、421、422、423、424、425又は877付近である、請求項22記載の容器の製造方法。
【請求項27】
非反応性ガスが壁部内に閉じ込められた微孔質ポリマー予備成形物を射出成形する工程と、
前記ポリマーの軟化温度より低い温度に前記予備成形物を冷却する工程と、
前記ポリマーのガラス転移温度より高い温度で、かつ、微小セル気泡の上昇する圧力が材料特性の抵抗能力を上回り、前記微小セル気泡が膨張して予備成形物を変形させる結果となる温度より低い温度に前記予備成形物を再加熱する工程とを含む、微孔質予備成形物の製造方法。
【請求項28】
さらに、前記加熱された予備成形物をブロー成形して、微孔質発泡体セル中に非反応性ガスを含有させた微孔質発泡ポリマーから本質的になる容器を作製する工程を含む請求項27記載の方法によって作製される予備成形物から製造された容器であって、銀色の外観を有する容器。
【請求項29】
前記容器の断熱特性が前記予備成形物における微孔質発泡体の比率に比例する、請求項28記載の容器。
【請求項30】
容器の断熱性が、前記容器を作製するのに用いられる予備成形物における発泡体に比例する、発泡体構造を有するプラスチック容器。

【公表番号】特表2009−530205(P2009−530205A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501453(P2009−501453)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/006264
【国際公開番号】WO2007/109009
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(502319534)プラスティック テクノロジーズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】