説明

銅コンタクトを有する集積回路ダイおよび該集積回路ダイのための方法

集積回路ダイ(10)は、銅コンタクト(16,18)を有する。銅コンタクトは、周辺空気にさらされると天然の酸化銅を形成する。有機材料を、銅コンタクトに塗布する。有機材料は、天燃の酸化銅と反応して、銅コンタクト上に有機コーティング(12,14)を形成し、さらなる銅の酸化を防ぐ。このようにして、たとえば100℃を上回る高温でさらに処理を行なっても、過剰な銅の酸化によって妨げられることはない。たとえば高温でワイヤ・ボンド・プロセスを行なっても、有機コーティングのために、信頼性の高いワイヤ・ボンディングを妨げる過剰な酸化には至らない。したがって、有機コーティングを形成することによって、信頼性が高くかつ耐熱性のあるワイヤ・ボンド(32,34)が可能になる。あるいは、集積回路ダイを形成する間のいつでも、露出する銅に有機コーティングを形成して、銅の酸化の形成を防止または抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路に関する。より詳細には、銅コンタクトを有する集積回路ダイに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の製造において、ワイヤ・ボンディングは、電気回路を有する半導体ダイをコンポーネント・パッケージ上のピンに接続するために使用される実績のある方法である。また銅金属相互接続を用いることも、ますます普及している。しかしながら、天然の酸化銅が、ワイヤ・ボンディング温度(通常は130〜170℃よりも高い)において不安定であるために、銅に対する直接的なワイヤ・ボンディングは、既存の製造アセンブリ機器を用いては実現することができない。
【0003】
現在、利用可能な1つの解決方法は、アルミニウム・キャッピング層を用いることである。アルミニウム・キャッピング層を銅ボンド・パッド上で用いて、ワイヤ・ボンドが、銅ではなくてアルミニウムにボンディングするようにする。しかしながら、アルミニウム・キャッピング層を加えることによって、処理コストが増加する。またアルミニウム・キャッピング層を用いる場合には、アルミニウム・キャッピング層と銅ボンド・パッドとの間にバリア層および/または接着層を用いる必要があり、そのため、さらに処理コストが増加する。またアルミニウム対金ワイヤ・ボンディングを行なった場合には、通常、機械的強度が銅対金ボンディングの場合と比較して低い。
【0004】
現在、利用可能な他の解決方法は、銅ボンド・パッド上でセラミック・キャッピング層を用いることである。したがって、銅ボンド・パッドに対する接続を得るためには、ワイヤ・ボンドは、ワイヤ・ボンダから提供される熱超音波エネルギーを介して、セラミック・キャッピング層を通り抜けなければならない。この解決方法では、セラミック・キャッピング層は、ウェハ全体に堆積されるブランケットである。しかしながら、ワイヤ・ボンドが、セラミック・キャッピング層を通り抜けられるようにするために、キャッピング層は極めて薄いものなければならない。しかしながら、ブランケットが薄い層を堆積する場合には、許容可能な均一性を維持することは難しく、そのため、アセンブリの歩留まりが低下する。さらに、ブランケットの堆積が必要であるために、処理コストも増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、銅コンタクトを有する集積回路ダイを改善して、信頼性および耐熱性を向上させるとともに、処理コストを低減し、アセンブリの歩留まりを増加させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本発明の実施形態によって、有機材料がコーティングされた銅コンタクトを有する集積回路ダイが提供される。有機コーティングは、露出している銅コンタクトの銅の酸化を防止または抑制に寄与する。銅の酸化は、室温よりも高い温度において特に問題となり、100度℃よりも高い温度においてはさらに問題となる可能性がある。たとえば、ワイヤ・ボンディング・プロセスでは、有機コーティングを用いて、過剰な銅の酸化を防ぐことができ、銅コンタクトに対して形成されるワイヤ・ボンドを改善することができる。また有機コーティングを、種々の他の用途に用いて、銅の酸化を防止または抑制し、信頼性および耐熱性の向上を実現してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、一例として示されており、添付図面によって限定されることはない。図面では、同一の参照符号は同様の要素を示す。
当業者であれば理解するように、図中の要素は、簡潔および明瞭にするために例示されており、必ずしも一定の比率で描かれてはいない。たとえば、本発明の実施形態の理解が容易になるように、図中のいくつかの要素の寸法は、他の要素に対して誇張されている場合がある。
【0008】
図1に、集積回路ダイ10の一部を例示する。集積回路ダイ10は、能動回路24、能動回路24を覆う金属相互接続層22、金属相互接続層22を覆う最終的な金属相互接続層23、および最終的な金属相互接続層23を覆う保護層26を有する。能動回路24は、異なる機能を実現するために用いられる種々の回路コンポーネントを含むことができる。たとえば、能動回路24には、アナログおよびデジタル回路、メモリ(内部に記憶されるソフトウェアを収容する場合がある)などの組み合わせが含まれていてもよい。これらは、集積回路ダイ10の所望の機能を実現するために利用可能である。金属相互接続層22には、能動回路24と最終的な金属相互接続層23との間の電気的接続をもたらすために用いられる金属配線およびビアが含まれる。最終的な金属相互接続層23には、金属ワイヤ20とコンタクト16および18とを含む最終的な金属層が含まれる。また最終的な金属相互接続層23には、その下の金属相互接続層22に対する電気的接続をもたらすビアたとえばビア32が含まれる。たとえば、ビア32によって、金属ワイヤ34に対する電気的接続が得られる。一実施形態においては、金属相互接続層22および23の金属ワイヤおよびビアを銅で形成してもよい。あるいは、相互接続層22の金属ワイヤおよびビアをアルミニウム、または適切であれば他のいかなる金属で形成してもよい。また、当該技術分野において知られているように、金属相互接続層22および23の金属ワイヤおよびビアは、必要に応じて、誘電体材料によって電気的に絶縁されていることにも注意されたい。
【0009】
なお、一実施形態においては、集積回路ダイ10は、半導体ウェハ上に配置される複数の集積回路ダイの1つであってもよい。なお、銅コンタクト16および18は、銅ボンド・パッド、ワイヤ・ボンド・パッド、または銅ボンド・ポストと称されることもある。また本明細書でなされる説明では、銅コンタクト16および18を、例として用いることにも注意されたい。しかしながら、銅コンタクトは、集積回路ダイ10またはパッケージ基板の処理(この処理では、露出する銅の酸化が防止されるべきである)の間における任意の時点での露出する銅コンタクトを意味する場合があることに注意されたい。たとえば、本明細書で説明する有機コーティングは、金属相互接続層22を形成する間に用いてもよいし、あるいは銅ボンド・ポストをコーティングするために用いてもよい。
【0010】
さらに、図1を参照すると、最終的な金属相互接続層23を覆う保護層26には、開口部28および30が含まれている。開口部において、銅コンタクト16および18が露出する(なお保護層26を、適切ないかなる保護材料により、かつ適切ないかなる方法を用いて形成してもよい。これは、当該技術分野において知られている通りである。また保護層26は、絶縁層26と称される場合もあることにも注意されたい)。開口部28および30を形成して銅コンタクト16および18を露出した後に、銅コンタクト16および18上のそれぞれに、有機コーティング12および14を形成する。有機コーティング12および14は、銅コンタクト16および18の銅金属のさらなる酸化を防ぐために用いられる。すなわち、一旦、銅コンタクトが周辺空気中の酸素に露出すると、銅の酸化が始まる。しかしながら、温度が上昇すると(室温よりも高い、特に100℃よりも高い)、銅の酸化速度は著しく増加する。高温で形成されるこのような酸化銅の過剰な厚みによって、以降の処理で問題が生じる。
【0011】
たとえばワイヤ・ボンド・プロセスでは、高温(一般的に100℃よりも高い)が必要である。銅コンタクト16および18の露出領域には、室温において多少の酸化銅は形成される(天然の酸化銅とも称される)が、ワイヤ・ボンド・プロセス中に使用される高温にさらされると、銅コンタクト16および18上に過剰な酸化銅が形成される。信頼性の高いワイヤ・ボンドが形成できないのは、この過剰な酸化銅のためである。したがって、この過剰な酸化を防ぐために有機コーティング12および14が用いられる。一実施形態においては、ベンゾトリアゾール(BTA:benzotriazole )を、有機コーティング12および14を形成するための有機材料として用いる。BTAは、酸化銅と化学反応を起こして、保護コーティングを形成する。すなわちBTAは、天然の酸化銅と反応して、銅のさらなる酸化を防ぐ(場合によっては、BTAは、その下の銅と反応することもある)。したがって、酸化銅とのBTA反応によって、熱的に安定な保護膜(たとえば有機コーティング12および14)が形成され、その後に信頼性の高いワイヤ・ボンディングを行なうことができる。
【0012】
前述の説明ではワイヤ・ボンディングを参照したが、銅の酸化の防止(または銅の酸化の抑制)が望まれる他の用途において、BTAなどの有機材料を用いてもよい。また代替的な実施形態においては、有機コーティングを形成するために他の材料を用いてもよいことに注意されたい。たとえばBTAは、窒素−水素(N−H)結合を有する分子を含む有機材料である。窒素−水素(N−H)結合を有する分子が、場合によっては、酸化銅と結合して保護有機膜を形成する。したがって、同様の構造を有する他の有機材料を用いてもよい。たとえば、有機コーティングを形成するために用いてもよいBTAと同様のN−H結合を有する他の有機材料には、以下のものが含まれる(しかしながら、これらに限定されない)。トリルトリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、フェニルアゾ−ピラゾロン、ベンジルカルボキシトリアゾール、ポリアニリン、ポリイミダゾール、ポリアミノトリアゾール、ポリアミノフェノール、フタロシアニン誘導体、アミノカルボン酸、アミノポリカルボキシル酸、ヒトロキシフェノールヒドラジン誘導体、ベンザルオキサリジヒドラジン誘導体、ナフトイルヒドラジン化合物、およびジアシルヒドラジンである。また、代替的な実施形態においては、使用される有機材料は、上記の有機材料のいかなる組み合わせであってもよい。
【0013】
一実施形態においては、有機コーティング(たとえば有機コーティング12および14)の耐熱性は、100℃以上である。ワイヤ・ボンディングの場合、この耐熱性によって、銅コンタクトに対するワイヤ・ボンドを信頼性高く形成することができる。また有機コーティングは一般的に薄く、たとえば150オングストローム以下である。好ましくは、コーティング厚みは、100オングストローム以下であり、より好ましくは、50オングストローム以下である。したがって、ワイヤ・ボンディングの場合には、ワイヤ・ボンドは、有機コーティングおよび酸化銅の両方を通り抜けて、銅コンタクトに対して信頼性の高い電気的接続を形成することができる。
【0014】
有機コーティング12および14の形成をより十分に説明するために、以下、図3を参照してプロセスを説明する。図3に、本発明の一実施形態に従って集積回路ダイ10上に有機コーティングを形成するためのプロセスを例示する。図1および図2を参照しながら、図3を説明する。開口部28および30(図1)を形成した後、集積回路ダイ10を含む半導体ウェハを脱脂する(図3のブロック42)。ウェハの脱脂としては、希釈した苛性アルカリ溶液を用いてウェハを洗浄して、有機汚染物質(たとえば指の油、空気中の汚染物質など)を取り除くことが挙げられる。次に、処理は図3のブロック44に続き、そのブロックではウェハを前処理する。前処理としては、ウェハをクリーニングして、既存の酸化銅を安定させることが挙げられる。一実施形態においては、希釈酸性溶液(たとえば0.5モル)を用いて、ウェハをクリーニングして汚染物質を取り除く。あるいは、濃度が2モル未満の希釈酸性溶液を用いてもよい。一実施形態においては、希釈酸性溶液は、希釈硫酸溶液である。代替的な実施形態においては、希釈酸性溶液の代わりに希釈過硫酸溶液を用いてもよい。次に、処理はブロック46へ続いて、そのブロックでは、有機材料を塗布することによって有機コーティングを形成する。この有機コーティングは、種々の方法により形成してもよい。たとえば、有機材料の溶液中にウェハを浸すことによって(スピン・オン・プロセスを用いる)、ウェハに噴霧することによって、物理蒸着(PVD:physical vapor deposition )によって、または化学気相成長法(CVD:chemical vapor deposition )によって形成するのである。一実施形態においては、銅コンタクト上への有機コーティングの形成を、pHレベルが7超、好ましくは7.5超、より好ましくは7.5〜8である有機材料の溶液に銅コンタクトをさらすことによって行なう。
【0015】
たとえば、有機材料としてBTAを用いて有機コーティング12および14を形成する一実施形態においては、浸漬溶液を用いて銅コンタクト16および18上にBTAを塗布して、有機コーティング12および14を形成してもよい。この実施形態においては、BTAを、pHが7以上の溶液から塗布することができる。一実施形態においては、水溶液には、BTAと、緩衝剤として苛性たとえば水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)とが含まれる。水溶液のpHは7以上である。この実施形態では、pHが少なくとも7であるために、BTAと化学反応を起こすために用いられる天然の酸化銅が、浸漬プロセス中に依然として損なわれないでいることが保証される。すなわち、溶液のpHが低すぎると、溶液によって天然の酸化銅が取り除かれてしまい、有機コーティングが形成できない場合がある。何故なら、有機材料が、酸化銅と確実に反応することができないからである。さらに、この実施形態においては、有機コーティングを確実に形成するために、ウェハを溶液中に少なくとも5分間浸漬する。
【0016】
前述したように、代替的な実施形態においては、他の有機材料および有機材料を塗布するための他の浸漬溶液を用いてもよい。たとえば、水溶液以外の他の浸漬溶液を用いて、BTAを塗布してもよい。また、十分な酸化銅が、依然として損なわれないでいて、有機材料と化学反応を起こして有機コーティングを形成する限りは、浸漬溶液に対して種々のpHレベルを用いてもよい。また有機コーティングは、有機材料と酸化銅との反応を通して形成されるため、有機コーティングは一般に、銅の露出領域上に形成することに注意されたい。したがって、図1に示すように、有機コーティング12および14は、銅コンタクト16および18上に優先的に形成される。この結果、均一なブランケットの堆積を行なう必要がなくなるため、信頼性が向上する。
【0017】
再び図3を参照して、有機コーティングを形成した後で、フローはブロック48に進んで、そのブロックでは、脱イオン(DI:deionized )水によるウェハの洗浄を行なう。DI水による洗浄によって、未反応のBTA、および浸漬溶液の残存物または有機コーティングを形成するために使用されるプロセスによって導入される他の汚染物質が、取り除かれる。次にフローは、ブロック50へ進んで、そのブロックでは、ダイをウェハから分離(singulate )する。すなわち集積回路ダイ10は、分離されたダイであってもよいし、依然として半導体ウェハの一部であってもよい。ダイは、当該技術分野で知られる方法を用いて分離することができる。たとえばソーイングによって、あるいはレーザ・アブレーションによって行なう。また複数のダイを一緒に分離して、結果として生じる分離されたダイには、実際には複数のダイが含まれるようにしてもよいことにも注意されたい。次にフローは、ブロック52へ進み、そのブロックでは、ダイをパッケージ基板に取り付ける。すなわち集積回路ダイ10は、分離の後、当該技術分野で知られる種々の方法でパッケージ基板に取り付けられる。たとえばエポキシ粘着剤もしくはポリイミド粘着剤、または他の知られている任意のダイの取り付けを用いて行なわれる。パッケージ基板には、たとえば、ボール・グリッド・アレイ(BGA:ball grid array )基板、リード・フレーム、マルチ・ダイ・パッケージなどが含まれていてもよい。
【0018】
次にフローは、ブロック54に進んで、そのブロックでは、パッケージ基板および取り付けられ分離されたダイを、プラズマ・クリーニングする。プラズマ・クリーニングによって、パッケージ基板およびダイの不純物の一部が除去される。一実施形態においては、プラズマ・クリーニングには、アルゴン−水素ガス混合物をRF場において加えることが含まれる。代替的な実施形態においては、プラズマ・クリーニングには、アルゴン−酸素ガス混合物をRFまたはマイクロ波場において用いることが含まれる。次にフローは、ブロック56に進んで、そのブロックでは、ワイヤ・ボンディングを行なう。図3を参照して、ワイヤ・ボンディングについて説明する。
【0019】
図3に、ワイヤ・ボンド・プロセスの後の集積回路ダイ10を例示する。その集積回路ダイ10では、ワイヤ・ボンド32および34がそれぞれ、開口部28および30内に形成されている。すなわち従来のワイヤ・ボンド・プロセスを用いて、ワイヤ・ボンド32を銅コンタクト16に取り付けて、銅コンタクト16に対する電気的接続を得る。同様に、ワイヤ・ボンド34を銅コンタクト18に取り付けて、銅コンタクト18に対する電気的接続を得る。なお、ワイヤ・ボンド32および34を取り付ける際には、ワイヤ・ボンド32および34は、有機コーティング12および14をそれぞれ通り抜けて、電気的接続を形成する。したがって、図2に示すように、ワイヤ・ボンディング・プロセスが終了した後で、有機コーティング12および14の一部が、集積回路ダイ10上のワイヤ・ボンド32および34の両側に残り得ることに注意されたい。また少量の有機コーティングが、ワイヤ・ボンドと銅コンタクトとの間に、依然として存在している場合があることに注意されたい(図示せず)。ワイヤ・ボンディング・プロセスの間に銅コンタクト上に有機コーティングが存在しているため、より信頼性高くワイヤ・ボンドが形成される。何故なら、ワイヤ・ボンディング・プロセスにおいて通常使用される高温(100度℃よりも高い)において銅コンタクト表面がさらに酸化することが、有機コーティングによって防止されるからである。なおワイヤ・ボンド32および34に対して、種々の異なる材料を用いてもよい。たとえば、金、銅、アルミニウムなどである。
【0020】
再び図3を参照して、ワイヤ・ボンド・プロセスを行なった後に、フローはブロック58に進んで、そのブロックでは、完成してパッケージされた半導体デバイスを形成する従来の処理を用いて、パッケージ・アセンブリを完成させる。
【0021】
なお代替的な実施形態においては、図3のフローは、ブロック50,52,および54を迂回してもよい。この代替的な実施形態においては、集積回路ダイ10は、分離されていなくてもよく、すなわち依然としてウェハ形状であってもよい。次に、ウェハをプラズマ・クリーニングすることができ(ブロック54のプラズマ・クリーニングと同様である)、ブロック56のワイヤ・ボンディングを、分離されたダイ上ではなく、半導体ウェハ上で行なうことができる。
【0022】
ワイヤ・ボンディングを用いて、集積回路ダイに対する電気的コンタクトを得る本発明の一実施形態においては、パッケージ基板上で銅ボンド・ポストを用いて、パッケージ基板から集積回路ダイへの電気的コンタクトを得てもよい。この実施形態においては、集積回路ダイ上の銅コンタクト(すなわち銅ワイヤ・ボンド・パッド)と、パッケージ基板上の銅コンタクト(すなわち銅ボンド・ポスト)との両方に対して、ワイヤ・ボンド接続を形成する。前述したように、有機コーティングを、集積回路ダイ上の銅コンタクト上に形成して、ワイヤ・ボンド接続を改善することができる。しかしながら、有機コーティングを、パッケージ基板上の銅コンタクト(すなわち銅ボンド・ポスト)上に形成して、過剰な銅の酸化を防ぐとともに、銅ボンド・ポストに対するワイヤ・ボンドの直接的な電気的コンタクトを可能にしてもよいことに注意されたい。このように、信頼性が高くかつ耐熱性のある改善されたワイヤ・ボンドが実現される。さらに、この実施形態においては、銅ボンド・ポスト上のさらなる保護層、たとえば銅を保護するためのニッケル−金層を用いる必要がなくなる。ニッケル−金層ではなくて有機コーティングを用いることによって、パッケージ基板上においてより細かいピッチの銅ボンド・ポストを得ることが可能になるとともに、製造コストも減る。
【0023】
また前述の説明は、ワイヤ・ボンディングに対して使用される銅コンタクト16および18に関して行なったが、代替的な実施形態においては、有機コーティングを、種々の他の用途に対して用いてもよい。たとえば一実施形態においては、大きな銅タブを、銅コンタクトとして用いてもよい。たとえば、パワー・デバイスの用途などにおいてである。この実施形態においては、前述したものと同一の有機コーティングを用いて、銅コンタクトに対する信頼性の高い電気的接続(たとえば、ワイヤ・ボンド接続など)を設けてもよい。他の実施形態においては、たとえばRPの用途では、銅インダクタを用いており、銅インダクタに対する電気的接続が望まれる場合がある。したがって、本明細書で説明する有機コーティングを、銅インダクタを過剰な酸化から保護して、信頼性の高い耐熱性のある電気的コンタクトを得るために用いてもよい。
【0024】
以上、理解されるように、本明細書で説明する有機コーティングの実施形態を用いることで、銅コンタクトの過剰な酸化を防止または抑制することができ、その結果、信頼性および耐熱性が向上する。また有機コーティングの実施形態によって、ワイヤ・ボンド(通常は金)と銅コンタクトとの間の直接的な電気的コンタクトを可能にすることができ、その結果、これまで利用可能なものよりも機械的に強いコンタクトが得られることにも注意されたい。さらに有機コーティングの実施形態によって、既存の製造アセンブリ機器を用いながら、銅コンタクトとワイヤ・ボンドとの間のこのような直接的な電気的コンタクトを得ることが可能になる。また有機コーティングの実施形態においては、さらなる金属層またはブランケットの堆積を設ける必要がなくなるため、コストが下がる。さらに、信頼性および耐熱性が向上しおよびコンタクトが強くなる結果、アセンブリ歩留まりが向上する。
【0025】
前述の明細書においては、本発明を、特定の実施形態を参照して説明した。しかしながら、当業者であれば理解するように、添付の請求項で述べる本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および変形を施すことができる。したがって、明細書および図は、限定的な意味ではなく例示的な意味において考慮されるべきであり、このような変更はすべて本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0026】
特定の実施形態に関して、利益、他の優位性、および問題に対する解決方法を前述した。しかしながら、利益、優位性、または問題に対する解決方法、および何らかの利益、優位性、解決方法を生じさせるかあるいはより明白にし得るいかなる要素も、何れかまたは全ての請求項の重要であるか、必要であるか、あるいは不可欠である特徴または要素として解釈してはならない。本明細書で用いる場合、用語「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」またはそれらの他のいかなる変形も、包括的に含めることに及ぶことが意図されている。すなわち、要素のリストを備えるプロセス、方法、物品、または装置には、これらの要素が含まれているだけでなく、明白にはリストにされていない要素、またはこのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素が、含まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態によるコーティングされた銅コンタクトを有する集積回路ダイを示す断面図。
【図2】本発明の一実施形態による銅コンタクトに取り付けられたワイヤ・ボンドを有する集積回路ダイを示す断面図。
【図3】本発明の一実施形態によるコーティングされた銅コンタクトを有する集積回路ダイを形成するための方法をフロー・ダイアグラムの形態で示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路ダイであって、
銅コンタクトと、
有機材料と酸化銅との反応から形成される材料を含む、前記銅コンタクト上のコーティングと、
を備える集積回路ダイ。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路ダイにおいて、
前記コーティングは、前記有機材料を含む溶液に前記銅コンタクトをさらすことによって形成される、集積回路ダイ。
【請求項3】
請求項2に記載の集積回路において、
前記溶液のpHレベルは少なくとも7である、集積回路。
【請求項4】
請求項3に記載の集積回路において、
前記溶液のpHレベルは少なくとも7.5である、集積回路。
【請求項5】
請求項1に記載の集積回路において、
前記有機材料は、窒素−水素結合を有する分子を含む、集積回路。
【請求項6】
請求項1に記載の集積回路において、
前記有機材料はベンゾトリアゾールを含む、集積回路。
【請求項7】
請求項1に記載の集積回路において、
前記有機材料は、トリルトリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ポリアニリン、およびポリイミダゾールのうちの少なくとも1つを含む、集積回路。
【請求項8】
請求項1に記載の集積回路ダイであって、更に、
最終的な銅相互接続層を含む複数の相互接続層と、
前記複数の相互接続層を覆う絶縁層と、
を備え、前記銅コンタクトは、前記最終的な銅層に配置され、前記絶縁層における開口部によってアクセス可能である、集積回路ダイ。
【請求項9】
請求項8に記載の集積回路ダイにおいて、
前記コーティングは前記絶縁層における前記開口部に配置される、集積回路ダイ。
【請求項10】
請求項1に記載の集積回路において、
前記銅コンタクトはワイヤ・ボンド・パッドである、集積回路。
【請求項11】
請求項1に記載の集積回路において、
前記コーティングの耐熱性は100℃以上である、集積回路。
【請求項12】
請求項1に記載の集積回路において、
前記コーティングの厚みは150オングストローム以下である、集積回路。
【請求項13】
請求項1に記載の集積回路において、
前記コーティングの厚みは20〜50オングストロームの範囲である、集積回路。
【請求項14】
請求項1に記載の集積回路において、
前記コーティングの厚みは50オングストローム以下である、集積回路。
【請求項15】
請求項1に記載の集積回路ダイを含む集積回路パッケージであって、更に、
前記集積回路ダイが取り付けられるパッケージ基板と、
前記銅コンタクトに接続されるとともに、前記パッケージ基板のコンタクトに接続されるワイヤと、
を備える集積回路パッケージ。
【請求項16】
集積回路を製造するための方法であって、
有機材料を含む、pHレベルが7以上の溶液に銅コンタクトをさらすことによって、集積回路ダイの銅コンタクト上にコーティングを形成すること、
を備える方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、更に、
前記形成することの後に、前記銅コンタクトにワイヤをボンディングすること、
を備える方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記銅コンタクトにワイヤをボンディングすることは、100℃以上で行なわれる、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、更に、
前記コーティングを形成することの後であり、前記ワイヤをボンディングすることの前に、前記コーティングの露出表面をプラズマ・クリーニングすること、
を備える方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、
前記ボンディングによって、前記ワイヤの真下のコーティング層の少なくとも一部を取り除く、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法において、
前記溶液のpHレベルが7.5以上である、方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、更に、
前記コーティングを形成することの前に、酸によって前記銅コンタクトを前処理すること、
を備える方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法において、
前記有機材料は酸化銅と反応し、前記コーティングは、前記有機材料と酸化銅との反応により形成される材料を含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
前記有機材料は窒素−水素結合を有する分子を含む、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、
前記有機材料はベンゾトリアゾールを含む、方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法において、
前記有機材料は、トリルトリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ポリアニリン、およびポリイミダゾールのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項27】
請求項16に記載の方法において、
前記コーティングを形成することは、更に、前記集積回路ダイを含むウェハを前記溶液に少なくとも5分間浸すことを含む、方法。
【請求項28】
集積回路を製造するための方法であって、
銅コンタクト上にコーティングを形成すること、
前記コーティングを形成することの後に、前記コーティングの露出表面をプラズマ・クリーニングすること、
前記プラズマ・クリーニングすることの後に、前記銅コンタクトにワイヤをボンディングすること、
を備える方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、
前記プラズマ・クリーニングすることは、更に、アルゴンおよびヘリウムのうちの少なくとも一方を含むガス混合物に前記コーティングの露出表面をさらすことを含む、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、
前記銅コンタクトにワイヤをボンディングすることは、100℃以上で行なわれる、方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、
前記ボンディングによって、前記ワイヤの真下のコーティング層の少なくとも一部を取り除く、方法。
【請求項32】
請求項28に記載の方法において、
溶液は、酸化銅と反応する有機材料を含み、前記コーティングは、前記有機材料と酸化銅との反応から形成される材料を含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、
前記有機材料は窒素−水素結合を有する分子を含む、方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法において、
前記有機材料はベンゾトリアゾールを含む、方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法において、
前記有機材料は、トリルトリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ポリアニリン、およびポリイミダゾールのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項36】
請求項28に記載の方法であって、更に、
前記コーティングを形成することの後であり、前記プラズマ・エッチングの前に、前記銅コンタクトを含むダイをウェハから分離すること、
を備える方法。
【請求項37】
請求項28に記載の方法において、
前記銅コンタクトはワイヤ・ボンド・パッドである、方法。
【請求項38】
請求項28に記載の方法であって、更に、
前記コーティングを形成することの前に、酸によって前記銅コンタクトを前処理すること、
を備える方法。
【請求項39】
集積回路ダイであって、
複数の銅ボンド・パッドと、
前記複数の銅ボンド・パッドのそれぞれの上のコーティングと、
を備え、前記コーティングは、有機材料を含む溶液に前記複数の銅ボンド・パッドをさらすことによって形成され、前記有機材料は窒素−水素結合を有する分子を含み、前記コーティングは、前記有機材料と酸化銅との反応により形成される材料を含み、前記コーティングの厚みは150オングストローム以下である、集積回路ダイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−524996(P2007−524996A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509506(P2006−509506)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/009816
【国際公開番号】WO2004/090941
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】