説明

銅又は銅合金から成る線材を製造するための方法

本発明は、銅又は銅合金から成る線材を連続的に製造するための方法であって、銅又は銅合金を鋳造ビレット(1)の形で準備し、500℃以上の温度で、ダイ(4)が設けられた押出プレス(2)によって、及び相応の引抜きダイスによって、単数又は複数の線材となるように最終的に引抜き加工する形式のものにおいて、イ)ダイ(4)から出た熱い線材(5)を延伸ゾーン(I)において保護ガスによって酸化防止し、ロ)冷却ゾーン(II)において、60℃以上の温度を有する温度調整された水浴(6)で前記線材を冷却し、ハ)水浴から出た後の線材の横断面寸法を測定し、線材に制御された引張力を加え、これにより、線材の横断面寸法の、目標横断面からのずれを、延伸ゾーン(I)における線材の延伸により減じ、ニ)線材を事前に尖らせることなく、分割されたダイス(14)に挿入し、ダイスを閉じ、鋳造ビレットがなくなるまで中断せずに、線材を最終寸法となるように引抜くことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の銅又は銅合金から成る線材を製造するための方法に関する。このために適した銅合金は例えば、DIN規格のEN1044として規格化されたものである。この銅合金は、銅以外に、合金添加物として、カドミウム、亜鉛、ケイ素、錫、マンガン、ニッケル、銀、リン及びその他の非鉄金属を有している。この合金から通常は、1〜5mmの直径を有する線材が製造される。この発明の主な利用分野は、銅合金を主体とした硬質ろう接(はんだ)線材を製造する分野である。
【0002】
銅又は銅合金から線材及び棒材を製造するための方法及び装置は例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3929287号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19602054号明細書、米国特許第2290684号明細書、米国特許第2795520号明細書に記載されている。線材製造の出発点は、通常、円筒状の鋳造ブロックであり、この鋳造ブロックが550〜600℃に加熱され、押出プレスにより単数又は複数の線材となるように押し出される。ここで得られる素線材は、通常さらなる、引抜きプロセス又は圧延プロセスで所望の最終直径にされる。
【0003】
上記の押出法により、異なる横断面形状を有する線材又は棒材が製造される。有利には円形又は四角形の横断面が形成される。押し出された線材は、通常、一回又は複数回の冷間引抜き加工により最終寸法にされる。各引抜き過程では、合金の場合、25〜30%の変形率の冷間変形しか可能ではない。変形率は、選択された合金により異なる。純銅では、より高い変形率が得られる。変形率は、初期横断面に対する横断面変化の比として規定される。
【0004】
銅又は銅合金は、高温で、表面が酸化銅(II)から成る黒色の酸化膜を形成し、引抜き過程又は圧延過程中の大きな形状変化時には脆弱化傾向にある。このような問題を回避する対策がなければ、押出プレスから出た素線材を、酸化膜を取り除くために希釈硫酸において酸洗いし、次いで水で流さなければならない。脆弱傾向は焼きなましにより減じることができる。上記特許文献によれば、「金属的な光沢の」線材を得るために、押出プレスから出た熱い線材に、適当な噴流ノズルから水を吹き付けることにより酸化膜の形成が防止されている。
【0005】
上記押出法により、種々様々な横断面形状を有する線材又は棒材を製造することができる。円形又は矩形の横断面が有利には形成される。押し出された線材は通常、一回又は複数回の冷間引抜き加工により最終寸法にされる。各引抜き過程につき、材料に応じて、25〜50%の変形率の冷間変形しか可能ではない。変形率はこの場合、初期横断面に対して相対的な横断面変化として規定されている。
【0006】
コンベンショナルな押し出された線材は、経験的に、±5%の横断面寸法の変動幅を有している。しかしながらDIN規格のEN1044の銅合金は、線材に求められる許容誤差は±3%である。許容誤差を維持するために、最終引抜き加工の前に、先ず、いわゆる調整引抜き加工が行われ、横断面寸法の誤差が減じられる。この場合、比較的大きな横断面を有する線材区分は、比較的小さな線材区分よりも著しく変形される。これにより、線材に沿って種々異なる破断延性、引張強さ、硬度が生じることになる。一般的には、硬度と引張強さは、変形率が大きい程増大し、破断延性は減少する。従って、最終的な引抜き加工前に線材を中間焼なましして、変形時に生じた冷間加工ひずみ硬化を再結晶温度以上での焼きなましにより再び除去する必要がある。
【0007】
即ち、押出の品質は、その後の作業過程への影響を及ぼす。
【0008】
さらに先行技術により公知のように、押し出されたろう接線材に冷水を吹き付けることにより、線材の表面は部分的に斑点状になることが示されている。さらに、このように製造された線材は脆弱であり、前もって焼きなましすることなしには、続く引抜きプロセスで加工することはできない。
【0009】
最終寸法となるように引抜き加工するために、引抜き装置が設けられており、その主要部は、ダイアモンド又は硬質金属から成るいわゆるダイスである。ダイスは、線材を通して引抜く引抜き孔を有している。引抜き孔が、線材直径よりも小さいので、線材を引抜き孔に通す前に、適当な装置で尖らせなければならない。このような過程は時間がかかり、鋳造ブロックから、完成寸法を有するろう接線材となるまでの連続製造を妨げる。
【0010】
そこで本発明の課題は、鋳造ブロックの押出を起点として中断することなく、後に続く一度だけの引抜き加工工程で、最終寸法を有した金属光沢のある線材を製造することができる、銅又は銅合金から成る線材を連続的に製造するための方法を提供することである。
【0011】
この課題は、請求項1記載の方法により解決される。方法の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明による方法は、先行技術により公知の押出法を起点としている。銅又は銅合金が鋳造ビレット(1)の形で押出プレス(2)に挿入され、500℃以上の温度で、単数又は複数のダイ孔を有するダイ(4)を通してプレスされ、その後冷却ゾーンで冷却される。ダイから出た単数又は複数の素線材(5)を、その後続く1度だけの引抜き加工プロセスで最終寸法となるように引抜き加工する。この方法は以下のステップを有している。
【0013】
イ)ダイ(4)から出た熱い線材(5)を延伸ゾーン(I)において保護ガスによって酸化防止し、
ロ)冷却ゾーン(II)において、60℃以上の温度を有する温度調整された水浴(6)で前記線材を冷却し、
ハ)水浴から出た後の線材の横断面寸法を測定し、線材に制御された引張力を加え、これにより、線材の横断面寸法の、目標横断面からのずれを、延伸ゾーン(I)における線材の延伸により減じ、
ニ)線材を事前に尖らせることなく、分割されたダイス(14)に挿入し、ダイスを閉じ、鋳造ビレットがなくなるまで中断せずに、線材を最終寸法となるように引抜く。
【0014】
この方法により、複数の線材を平行に製造することができる。押出プレスのダイはこのために相当数の押出孔を有している必要がある。有利にはダイは2つの押出孔を備えている。簡単にするために、以下の説明では、1つの線材の製造についてのみ述べる。複数の線材を製造する際には、この方法工程を、各線材のために互いに独立的に行う必要がある。
【0015】
この方法により、種々異なる横断面形状を有した線材を製造することができ、有利には円形の横断面を有した線材が製造される。
【0016】
本発明によれば、ダイと冷却ゾーンとの間に延伸ゾーンが配置されている。この延伸ゾーンでは、線材の温度は、ダイから出た直後でまだ高く、線材は可塑性を有していて、比較的に小さな力で長手方向に引くことができる。この際に、線材の横断面寸法は、ダイ孔の横断面寸法から目標横断面にまで減じられる。この過程は、±約5%の製造誤差を有している。線材に加える引張力を制御することにより、横断面寸法の誤差は±3%にまで減じることができることが示された。
【0017】
円形の線材では、ダイ孔の直径が、延伸ゾーンを出た後の所望の線材直径よりも1.4〜2倍、有利には1.5〜1.8倍大きい。比較的大きなダイ直径により、押出プレスのプレス圧への要求が減じられる。
【0018】
延伸ゾーン後方の線材の引抜き速度は、有利には0.5〜1.5m/s、特に0.7〜1.0m/sである。
【0019】
延伸過程のために引張力は、冷却ゾーン後方に配置された延伸駆動装置によって線材に加えることができる。引張力を制御するために、水浴から線材が出た後、延伸駆動装置手前で、実際横断面を測定し、目標横断面と比較する。実際横断面は、目標横断面からのずれが制御装置で算出される制御値を成し、延伸駆動装置における引張力の必要な変更を規定するために使用される。線材の目標横断面は例えば光学的な線材厚さ測定装置によって算出される。
【0020】
ダイと冷却ゾーンとの間の延伸ゾーンの長さは、30〜500mmであって良く、有利には50〜300mmの長さを有している。新たに押し出された線材はこのゾーンにおいてまだ極めて熱いので、延伸ゾーンに保護ガスを充填または注入することにより線材表面の酸化を防止するのが有利である。適当な保護ガスは、アルゴン又は窒素であり、有利には窒素が装入される。
【0021】
押し出された素線材を引き続き制御しながら延伸する上記のような押出により、その厚さ変動が、線材を最終寸法となるために引抜き加工するために、後続の一度だけの引抜き加工プロセスで十分である程度まで減じられた線材が得られる。このような引抜き加工プロセスを、中断なしに冷却ゾーンの直後に続けるために、線材は冷却ゾーンを、金属光沢状態で出なければならない。「金属光沢」とは本発明では、ろう接線材の表面に、黒色の酸化銅(II)は存在せず、不可避的な赤色の酸化銅(I)のみが存在するものと解されたい。これにより酸化膜を取り除くための線材の酸洗いは省略できる。
【0022】
本発明によれば、冷却ゾーン後方の線材の金属光沢表面は複数の措置により保証される。
・延伸ゾーンにおいて、不活性ガスを充填又は注入することにより線材の酸化を防止する。
・冷却ゾーンにおいて線材を、60℃以上の温度で、有利には80〜100℃の温度に調整された水浴で冷却する。このために、線材は有利には1〜10秒以内で水浴を通される。
・有利には水浴には、熱い線材表面に気泡が形成されないように常に渦流を発生させる。これは例えば、線材に、進行方向に対して横方向から熱い水を流して当てることにより行われる。
【0023】
上記措置により、金属光沢表面を有するろう接線材が得られ、このような線材は、続く引抜き加工プロセスのために十分な形状変更可能性を有している。この場合重要であるのは、水浴を約60〜95℃に温度調節することである。水浴の温度が60℃以下であると、線材が脆弱になり、その後の引抜き加工においてしばしば線材が破断する。
【0024】
水浴における線材の冷却後に、線材は一度だけの引抜き加工プロセスで最終寸法となるように引抜かれる。この引抜き加工プロセスを中断することなしに全方法工程に組み込むことができるように、分割されたダイスが改良された。これにより、通常行われるように線材を尖らせてダイスに挿入する過程を省くことができる。押出開始後は、線材の始端部が開かれたダイスに置かれ、ダイスは閉じられ、線材は最終寸法となるように引抜かれる。
【0025】
このような方法は基本的に、横断面寸法の誤差が減じられたエンドレス成形材を製造したい全ての押出法に適している。しかしながらこの方法は有利には、銅又は銅合金から線材を製造するために使用される。この銅合金は、銅以外に、銀、カドミウム、亜鉛、ケイ素、錫、マンガン、ニッケル、リン又はこれらの組み合わせから選択された合金添加物を有する。この方法により、1つの連続的な作業工程で、鋳造ブロックから、金属光沢表面を有する、使用可能な完成状態の線材を製造することができる。
【0026】
以下に本発明を実施例及び図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】方法を実施するための基本構造を示した図である。
【図2】延伸駆動装置の制御なしに平行に引抜かれた2つの線材の直径の測定記録を示した図である。
【図3】延伸駆動装置の制御を行いながら平行に引抜かれた2つの線材の直径の測定記録を示した図である。
【図4】分割されたダイスの構造を示した図である。
【0028】
図1には、方法を実施するための基本構成が示されている。符号1は、銅又は銅合金から成る鋳造ビレットを示している。この鋳造ビレット1は、押出プレス2内にあり、外部加熱(図示せず)により例えば600℃の温度に維持される。ラム3によって鋳造ビレット1はダイ(雌型)4の孔を通されてプレスされる。押し出された素線材は符号5で示されている。ダイ4には延伸ゾーンIが続いていて、ここで線材はある程度冷却される。線材の酸化を防止するために、延伸ゾーンIには保護ガスが充填又は注入されている。続く冷却ゾーンIIで、まだ熱い線材が100℃以下の温度に冷却され、そのために線材は、最低60℃の温度に維持される、温度調整された水浴6に通される。水浴は、水面を上方から見た図で示されている。互いに反対側から素線材5に向けられた矢印は、水浴中の線材に沿って配置された複数のノズルから出る水が線材へと流れて当接していることを示している。このために必要な水は循環している。このために水浴の底部には流出部が設けられており、この流出部からポンプが水を吸い上げ、ノズルを介して水浴に再び供給している。線材に横方向から水が当接することにより、線材表面に気泡が付着し、表面が粗くなることを防止している。
【0029】
冷却ゾーンIIの後方には、線材の横断面寸法を検出するための測定システム7が配置されている。機械的又は光学的な測定システムが適している。測定信号は、制御装置8において目標横断面の値と比較され、生じた制御のずれに基づき、延伸駆動装置9の駆動モータに調整値が伝えられる。測定された横断面が目標横断面よりも大きかったら、延伸駆動装置9の引張力が高められ、相応の横断面の減少を伴う延伸が行われる。逆に測定された横断面が目標横断面よりも小さければ、延伸駆動装置9の引張力は減じられる。このような制御により、押出線材の横断面寸法の誤差は、±5%から±3%以下にまで減じられる。
【0030】
続く加工ステーション11では線材は最終寸法となるよう引抜き加工される。この加工ステーション11は、下方ラム12と上方ラム13とを備えたプレス機から成っている。この加工ステーション11の主要部は、ダイス(引抜きダイス)とホルダとから成る装置である。ダイスとホルダは、押出の進行中に、押出プレスにより押し出された線材の挿入を可能にするために分割されている。装置14の各半部が下方ラムと上方ラムに取り付けられている。素線材の押出の開始前に、プレス機の両ラムは互いに離される。素線材がプレス機に達すると、この素線材は開かれたダイスに挿入され、線材の始端部は、ダイスの後方で引抜き駆動装置16に巻き付けられる。次いで、プレス機の上方ラムは、ダイスの両分割面が互いに接触するまで下方ラムへと沈められる。引抜き駆動装置16は、ダイスを通して線材を引抜き、最終寸法にする。完成したろう接線材は、図1には示されていないボビンに巻き付けられる。
【0031】
押出速度、延伸及び最終寸法にするための引抜き加工は、方法の経過時間全体にわたって互いに調整されているので、鋳造ビレットは中断されることなく、不可避的な残量となるまで押し出すことができる。有利には、冷却ゾーンIIの後方での線材の引抜き速度は0.5〜1.5m/sである。
【0032】
プロセスの開始を容易にするために、第1の巻き取り駆動装置の後方に、いわゆるダンサローラ10が設けられており、これによりこの方法の個々の加工ステーション間の短い速度差を補償することができる。符号15は、潤滑ステーションと組み合わされた線材ガイドを示している。
【0033】
図4にはダイスとホルダとから成る装置が示されている。この装置はダイス20から成っていて、このダイス20はホルダ21に固定されている。ダイス20は孔23を有しており、孔23の軸線は引抜き軸線を成す。ダイス20とホルダ21とは引抜き軸線に沿って分割されている。線材を引抜く際には、この装置の両半部は、分割の際に生じた分割面24で互いに接触し、ピンによってピン孔25で互いに正確に位置決めされる。ホルダにおけるねじ山付き孔26は、プレス機の上方ラムと下方ラムに装置の半部を固定するために働く。
【0034】
ダイス20は、硬質金属又はダイアモンド、有利には多結晶ダイアモンドから形成することができる。
【0035】
ダイスの分割により、線材を引抜く際に線材に溝が生じないように、ダイスの孔は正確に製造されなければならない。この場合、有利には、まず、孔を有さないダイスの前成形体を分割されていないホルダに固定する。有利にはダイスは、鋼製のホルダにろう接される。ホルダにピン孔を設けた後、後に引抜き軸線となる線に沿って装置を分割し、分割面を平滑にする。装置の両半部をピン固定した後、分割されないダイスにおける場合と同様に引抜き孔が通常のように製作される。
【0036】
驚いたことに、このようなダイスにより引抜かれた線材には、ダイスの分割による溝が認められないことが示されている。このようなダイスの特別な利点は、素線材を引抜き孔に通すために尖らせる必要がないことである。素線材を尖らせる必要がないので、素線材を1つの引抜きステーションで完成した線材となるまで、線材を尖らせるために中断することなしに、継続的に引抜くことができる。
【0037】
以下の比較例では、銅合金Ag40Cu30Zn28Sn2(DINの識別番号:EN1044:AG105)から成る素線材が押し出される。この素線材は最終的に1.5mmの線材直径となるように引抜かれる。
【0038】
比較例
上記銅合金から成る40kgの鋳造ビレットが、押出プレスにおいて、それぞれ2.9mmの直径の2つの円形のダイ孔を有したダイを通して、2つの平行な線材となるように押し出された。延伸ゾーンでは、線材直径は、一定の引張力を加えることにより、目標寸法1.8mmまで減じられた。延伸ゾーン後方での押出線材の速度は1m/sであった。
【0039】
図2には、880mの線材長さにわたって、光学的な測定システムによって検出された直径の値が示されている。図2において、誤差上限(OT)は1.9mmであり、誤差下限(UT)は1.7mmと記載されている。この値は、約±5%の太さ誤差に相当する。
【0040】
比較的大きな線材直径の変動があったとしても、1.5mmの直径とするための調整および最終的な引抜きのためになお十分な形状変更が可能であるように、線材直径の目標値はこの押出試験では1.8mmに決められた。
【0041】
調整引抜き加工により、線材は1.7mmの直径となるように引抜かれた。押し出された線材の直径変動が大きいことにより、調整引抜きによって、硬度、引張強さ、破断延性の相応の変動が線材に生じた。再結晶温度以上の中間焼きなましにより、このような異なる機械的特性が補償されてから、線材は最終的に1.5mmの直径となるように引抜かれた。
【0042】
例1
上記比較例が、第2の鋳造ビレットで繰り返された。上記比較例との相違点は引張力が制御されたことである。線材の目標直径は1.7mmである。両線材の直径の測定結果は図3に、980mの長さにわたって記載されている。図3にも誤差上限及び誤差下限が示されている。誤差上限は1.75mm、誤差下限は1.65mmであって、これは±3%の直径誤差に相当する。
【0043】
本発明の方法により減じられた素線材の直径誤差により、最終的に1.5mmの直径となるように引抜く間の十分な形状変化を損なうことなしに、素線材の平均直径を1.8mmから1.7mmに減じることができた。
【0044】
例2
以下に記載する試験シリーズでは、金属光沢表面を有する銅合金Ag40Cu30Zn28Sn2(DINの識別番号:EN1044:AG105)から成る素線材が引抜かれた。このような素線材は、1.5mmの直径の線材となるように最終的に引抜き加工された。
【0045】
上記銅合金から成る10kgの鋳造ビレットが、押出プレスにおいて、それぞれ2.9mmの直径の2つの円形のダイ孔を有したダイを通して、2つの平行な線材となるように押し出された。延伸ゾーンでは、線材直径は、制御された引張力を加えることにより、目標寸法1.7mmまで減じられた。延伸ゾーンは、窒素を貫流させることにより空気酸素から保護された。延伸ゾーンは温度調整された水浴に直接開口している。水の渦流を発生させるために水浴には横流装置が設けられた。水浴を通される線材の速度は1m/sであった。
【0046】
異なる温度の水浴で、上記装置によって複数の鋳造ビレットが押し出された。このように押し出された光沢表面を有するろう接線材は、続いて引抜き装置によって1.7mmの直径から1.5mmの直径となるように引抜かれ、引抜き特性が質的に評価された。結果は以下の表に示されている。水浴の温度が60〜80℃のもので、線材を破損することなく最終製品となるように引抜くことができた。
【0047】
:水浴の温度に関する押出線材の引抜き特性
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金から成る線材を連続的に製造するための方法であって、銅又は銅合金を鋳造ビレット(1)の形で準備し、500℃以上の温度で、ダイ(4)が設けられた押出プレス(2)によって、及び相応の引抜きダイスによって、単数又は複数の線材となるように最終的に引抜き加工する形式のものにおいて、
イ)ダイ(4)から出た熱い線材(5)を延伸ゾーン(I)において保護ガスによって酸化防止し、
ロ)冷却ゾーン(II)において、60℃以上の温度を有する温度調整された水浴(6)で前記線材を冷却し、
ハ)水浴から出た後の線材の横断面寸法を測定し、線材に制御された引張力を加え、これにより、線材の横断面寸法の、目標横断面からのずれを、延伸ゾーン(I)における線材の延伸により減じ、
ニ)線材を事前に尖らせることなく、分割されたダイス(14)に挿入し、ダイスを閉じ、鋳造ビレットがなくなるまで中断せずに、線材を最終寸法となるように引抜くことを特徴とする、銅又は銅合金から成る線材を連続的に製造するための方法。
【請求項2】
線材の長手方向の延びに対して横方向から線材に水を流して当てることにより、温度調整された水浴(6)で線材の表面に気泡が生じるのを防止する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
延伸ゾーン(I)後方の引張速度が0.5〜1.5m/sである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ダイ(4)と冷却ゾーン(II)との間の延伸ゾーン(I)の長さが30〜500mmである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
加熱線材の酸化を防止するために、延伸ゾーン(I)に保護ガスを充填又は注入する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
水浴の後方に配置された延伸駆動装置(9)によって線材に引張力を加える、請求項1記載の方法。
【請求項7】
線材の横断面が円形である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ダイ孔の直径が、延伸ゾーン(I)を出た後の所望の線材直径より、1.4〜2倍大きい、請求項7記載の方法。
【請求項9】
複数のダイ孔を備えたダイ(4)を使用することにより複数の線材を同時に押し出す、請求項8記載の方法。
【請求項10】
銅合金が銅以外に、銀、カドミウム、亜鉛、ケイ素、錫、マンガン、ニッケル、リン及びこれらの組み合わせから成るグループから選択された合金添加物を有している、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−534138(P2010−534138A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517350(P2010−517350)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059062
【国際公開番号】WO2009/013150
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】