説明

銅層転写シート

【課題】銅層転写シートの銅層を被転写体に転写する際に、銅層と接着層との剥離を防ぐ。
【解決手段】基材上に少なくとも銅層、プライマー層、接着層をこの順に積層した銅層転写シートにおいて、プライマー層が少なくともバインダーと2つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸からなることを特徴とする銅層転写シート。さらに前記カルボン酸のプライマー層中の含有率が0.1〜10重量%であることを特徴とする銅層転写シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板、電磁波シールド、シートコイル、積層セラミック電子部品などの製造において、所定の形状の銅層を転写するための銅層転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属層転写シートを用いて、基板上に回路パターンなどを形成する方法が知られている。このような金属層転写シートは、例えば、易剥離性シートの上に金属層を転写可能に有してなり、基板の上に金属層を圧着させて、易剥離性シートを剥がすことにより、その基板の上に金属層を転写して、これによって、所定パターンの金属層を基板の上に形成するものである(特許文献1、2)。金属層は、被転写体に対して接着力をもたないため通常は、金属層上に接着層を設ける。金属層の材料に銅を用いた場合、金属層と接着層との接着力が充分でなく転写時に金属層と接着層の間で、剥離が生じることがあった。
【0003】
特許文献3、4には、金属蒸着膜と接着層の間に、プライマー層を設けている。このプライマー層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のバインダーからなるものであるが、金属に銅を用いるとこれらのバインダーからなる接着層と金属層との接着力は充分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−332385号公報
【特許文献2】特開2004−306412号公報
【特許文献3】特開昭63−268684号公報
【特許文献4】特開2002−192645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、銅層転写シートの銅層を被転写体に転写する際に、銅層と接着層との剥離を防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、基材上に少なくとも銅層、プライマー層、接着層をこの順に積層した銅層転写シートにおいて、プライマー層が少なくともバインダーと2つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸からなる銅層転写シートとするものである。
第2発明は、前記カルボン酸のプライマー層中の含有率が0.1〜10重量%である第1発明記載の銅層転写シートとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、銅層転写シートの銅層を被転写体に転写する際に、銅層と接着層との剥離を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリサルフォンフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどの公知のプラスチックフィルムが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いるとよい。
【0009】
また、基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜100μmである。さらに好ましくは、5〜50μmの範囲のものを使用する。
【0010】
なお、基材は、その表面が、銅層に対して容易に剥離できるように剥離性を有しているものが好ましく、より具体的には、その表面に、離型処理が施されたものが、好ましく用いられる。離型処理は、例えば、シリコーン系、フッ化シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などの離型剤を、基材の表面に塗布して離型層を形成するなど、公知の離型処理方法を用いることができる。
【0011】
銅層は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの真空成膜法を用いて、薄膜の銅層としてもよいし、電解メッキで銅層を形成してもよい。薄膜の銅層の場合の厚みは0.01〜0.5μmの範囲が好ましく、電解メッキの銅層の厚みは0.5〜20μmの範囲が好ましいがこれに限定されるものではない。銅層は、基材の全域に形成してよいし、公知のパターン形成方法でパターンを形成してもよい。電解メッキのパターンニング法は、アディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法などの公知のパターンニング法が挙げられる。
【0012】
プライマー層は、少なくともバインダーとカルボン酸からなるものである。
【0013】
バインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン−エポキシ共重合樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、メラミン−アクリル共縮合樹脂等のアミノ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、石油系樹脂、ロジン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂やクロロプレンゴム、塩化ゴム、環化ゴム等のゴム系樹脂、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂、フェノール系樹脂、塩素化ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、キシレン樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等を挙げることができる。従って、用いる樹脂によっては、必要に応じて、適量の硬化剤が用いられる。このような硬化剤としては、例えば、リン酸やリン酸エステル(アミノ樹脂の硬化剤)やイソシアネート(ウレタン樹脂の硬化剤)等を挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0014】
これらの樹脂の中でも、セルロース樹脂、ブチラール樹脂を用いると銅層とプライマー層との接着力を高くすることができる。
【0015】
2つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、イタコン酸、エチルマロン酸、オキサル酢酸、キノリン酸、グルタル酸、コハク酸、シュウ酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ピメリン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、メサコン酸、メチルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、イソクエン酸、オキサルコハク酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ピロメリット酸、メリト酸等が挙げられる。これらのカルボン酸より1種以上選択して用いることができる。
【0016】
プライマー層中のカルボン酸の含有量は、0.1〜10重量%の範囲とする。好ましくは、0.5〜5重量%の範囲とする。前記範囲未満であると、銅層とプライマー層との接着力向上にはあまり寄与せず、前記範囲を超えるとプライマー層の凝集力が低くなるため接着性が低下する。
プライマー層の厚みは、0.1〜10μmの範囲が好ましい。さらに好ましくは、0.5〜5μmの範囲とする。前記範囲未満であると 銅層とプライマー層との接着力向上にはあまり寄与せず、前記範囲を超えると、転写において箔切れ性が低下しやすい。
【0017】
接着層は、プライマー層の上に積層するものである。接着層には、熱可塑性樹脂をもちいることが出来る。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール、塩素化ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、ゴム系樹脂、アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合体樹脂等より1種以上を選んで使用することができる。
【0018】
接着層の厚みは、0.1〜10μmの範囲が好ましい。さらに、好ましくは、0.5〜5μmの範囲とする。前記範囲未満であると、プライマー層または銅層と接着層との接着力向上にはあまり寄与せず、前記範囲を超えると、転写において箔切れ性が低下しやすい。
【0019】
離型層、プライマー層、接着層の形成は、有機溶剤等に溶解させた各塗工液をロールコーティング法、グラビアコーティング法、リバースコーティング法、スプレイコーティング法などの通常のコーティング法により塗布、乾燥することにより行なうことができる。
【実施例】
【0020】
実施例1〜9、比較例1〜3
背面にシリコーン樹脂系耐熱保護層を形成した厚さ3.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面側に、下記処方の離型層用組成物をホットメルト塗工して塗布量1.0g/mの離型層を形成した。

離型層用組成物
成 分 重量部
パラフィンワックス 60
キャンデリラワックス 40
合 計 100
【0021】
前記離型層上に下記処方の蒸着保護層用塗工液を塗布、乾燥して塗布量0.5g/mの蒸着保護層を形成した。

蒸着保護層用塗工液
成 分 重量部
アクリル樹脂(ガラス転移点90℃) 10
メチルエチルケトン 90
合 計 100
【0022】
前記蒸着保護層上に真空蒸着法で厚さ0.03μmの銅蒸着層を形成し、さらに無電解銅メッキ液(ELC−UM(商品名) ;上村工業(株)製) に浸漬することにより銅蒸着層上に膜厚3μmの無電解銅メッキ層が積層されてなる銅層を形成した。
前記無電解銅メッキ層上に、表1に示す配合組成(重量部)のプライマー層用塗工液を塗布後に100℃で2分間乾燥して厚みが0.6μmとなるようにプライマー層を形成した。
【0023】
次いで、下記処方の接着層用塗工液を塗布後に100℃で2分間乾燥して厚みが0.5μmとなるように接着層を形成し、銅層転写シートを作成した。
接着層用塗工液
成 分 重量部
アクリル樹脂(パラロイドB-48N ローム&ハース製) 18
メチルエチルケトン 82
合 計 100
【0024】
評価方法
実施例1〜9、比較例1〜3の銅層転写シートを用いて、厚さ1mmのポリカーボネート樹脂板表面に銅層転写シートのプライマー層および接着層が形成された面を対向させ、ホットラミネーター(大成ラミネーター製、大成ファーストラミネーターVAII−700)を用いて150℃で熱圧接し、室温に下がるまで放置した後、先の銅層転写シートの離型層が形成された基材を剥離して、銅層がプライマー層および接着層を介して転写されたポリカーボネート樹脂板を作製した。
次いで、下記に記す評価を行った。評価結果は、表1に記載した通りである。
【0025】
銅層とプライマー層間の密着性
JIS−K−5600のクロスカット法に準拠し、銅層が転写された転写物の銅層−プライマー層間の密着性を評価した。
◎=剥離なく密着性が極めて良好
○=2割未満の面積が剥離するが密着性良好
△=2割以上10割未満の面積が剥離し密着性不足
×=全面剥離し密着性不良
【0026】
(表1)プライマー層塗工液 (重量部)

【0027】
実施例10
実施例2と同様の方法で基材上に銅蒸着層を作製したのち、さらに20%硫酸銅電解メッキ溶液を調製し、5μmの膜厚になる条件下で電解銅メッキ処理を行ない、銅蒸着層上に銅メッキ層が積層されてなる銅層を形成した。
次いで、実施例1と同様にプライマー層および接着層を形成して銅層転写シートを得た。
【0028】
実施例2と同様にプライマー層と銅層との密着性が良好(◎)である結果が得られた。
実施例11
無電解銅メッキ層を施さないこと以外は実施例2と同様に、基材上に、離型層、銅蒸着層、プライマー層および接着層を形成して銅層転写シートを得た。
実施例2と同様にプライマー層と銅層との密着性が良好(◎)である結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも銅層、プライマー層、接着層をこの順に積層した銅層転写シートにおいて、プライマー層が少なくともバインダーと2つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸からなることを特徴とする銅層転写シート。
【請求項2】
前記カルボン酸のプライマー層中の含有率が0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載の銅層転写シート。

【公開番号】特開2011−235456(P2011−235456A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106286(P2010−106286)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】