説明

銅張り積層板および銅めっき皮膜の成膜方法

【課題】銅めっき皮膜のエッチングファクターを向上させることにより、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板と銅張り積層板に成膜する銅めっき皮膜の成膜方法を提供する
【解決手段】1槽の銅めっき槽28または複数の銅めっき槽12、13、14中の銅めっき液に、PEGとSPSとJGBおよびクエン酸塩等のように、めっきされる銅に炭素および酸素を共析させる添加剤を添加し、該銅めっき液に樹脂フィルム1浸漬させることにより、樹脂フィルム1の少なくとも表面に、上流側の上記銅めっき層から下流側の上記めっき層に向けて、段階的または漸次、上記炭素および酸素の共析量が多くなる1層の銅めっき層8または複数層の銅めっき層4、5、6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やディスプレイ等に組み込まれているプリント配線板を製造するために用いられる銅張り積層板、上記銅張り積層板に成膜する銅めっき皮膜の成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅張り積層板は、被めっき材である樹脂フィルムに、ニッケルクロム合金スパッタ膜と、銅スパッタ膜とを順に成膜し、銅スパッタ膜の上に銅めっき皮膜を成膜したものである。
【0003】
また、上記銅張り積層板は、パターニング処理を行なうことにより、導体回路の形成された上記プリント配線板を得るための中間加工品である。
【0004】
上記パターニング処理としては、カッターやレーザにより、余分な銅めっき皮膜を切除して、導体回路を形成する方法がある。しかしながら、導体回路の形成に時間を有することや加工が困難である等の問題点があることから、一般的に、サブトラクティブ法が行なわれている。
【0005】
このサブトラクティブ法は、先ず、銅めっき皮膜上の導体回路となる位置にフォトレジストを塗布して、このフォトレジストによるパターンマスクをフォトリソグラフィー法によって形成する。そして、このパターンマスクの上から塩化第2鉄水溶液などのエッチング液を吹き付けることにより、パターンマスクの開口部に露出している銅めっき皮膜を除去した後に、パターンマスクをエッチング液により除去して導体回路を形成するものである。なお、この銅のエッチング液としては、塩化第2鉄水溶液が主として使用されている。
【0006】
しかしながら、エッチング液により、パターンマスクの開口部に露出している銅めっき皮膜を除去する際に、銅めっき皮膜の表面側がサイドエッチングされてしまい、これにより、導体回路は、図6に示すように、トップ幅Tが狭くなり、断面形状が台形状になってしまう。
【0007】
従って、サブトラクティブ法は、導体回路間の電気的絶縁性を確保するまでエッチングを行うと配線ピッチ幅が広くなり過ぎてしまうために、近年、電子機器の小型化に伴いプリント配線板の小型化が要求されている中で、ファインピッチの微細回路を形成することができないという問題点があった。
【0008】
この問題に対して、下記特許文献1においては、電解めっき法により被めっき材に銅めっき層を形成する際に、電極に供給するめっき電流密度を制御することにより、サブトラクティブ法により、ファインピッチの微細回路を形成することが可能となるものが提案されている。
これは、電流密度を、低い電流密度から高い電流密度へと連続的に制御することにより、銅の結晶粒を大きいものから小さいものへと変化させて、被めっき材側から銅めっき層の表面方向に向けて、易エッチング構造を有する銅めっき層から難エッチング構造を有する銅めっき層へと構造を連続的に変化させるものである。これにより、エッチング処理の際に、表面側の銅めっき層のエッチングレートが遅くなり、被めっき材側の銅めっき層のエッチングレートが速くなるために、エッチングの深さ方向の進行量に対する水平方向の進行量の比率、即ち、銅めっき皮膜のエッチングファクターを向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−190073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の発明にあっては、電流密度を制御して銅の結晶組織を変化させても、銅張り積層板の製造直後、銅の結晶状態が不安定であり、製造工程の熱処理(乾燥装置等)などにより、表面側の銅めっき皮膜の微細な銅結晶が粗大化して均一となる。このために、表面側の銅めっき皮膜の銅微細な結晶状態を維持することが非常に困難であり、この結果、エッチングファクターを確実に向上させることができないという問題点があった。
【0011】
本発明は、従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、銅めっき皮膜のエッチングファクターを向上させることにより、サブトラクティブ法を行なっても、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板および銅張り積層板の銅めっき皮膜の成膜方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の銅めっき皮膜の成膜方法は、被めっき材を、順次複数の銅めっき槽中の銅めっき液に浸漬させることにより、被めっき材の少なくとも表面に段階的に複数の銅めっき層を形成する銅めっき皮膜の成膜方法において、上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させるとともに、当該炭素および酸素の共析量が異なる添加剤を用い、上流側の上記めっき槽から下流側の上記めっき槽に向けて、段階的に上記共析量が多くなるように、上記添加剤を上記めっき液中に添加することを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載の銅めっき皮膜の成膜方法は、被めっき材を、順次複数の銅めっき槽中の銅めっき液に浸漬させることにより、被めっき材の少なくとも表面に段階的に複数の銅めっき層を形成する銅めっき皮膜の成膜方法において、上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させる添加剤を用い、上流側の上記めっき槽から下流側の上記めっき槽に向けて、段階的に上記添加剤の濃度が高くなるように、上記めっき液に添加する上記添加剤の添加量を調整することを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項3に記載の銅めっき皮膜の成膜方法は、被めっき材を、銅めっき液を収容した銅めっき槽に浸漬させることにより、被めっき材の少なくとも表面に銅めっき層を形成する銅めっき皮膜の成膜方法において、上記銅めっき液に、上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させる添加剤を添加し、銅めっき時に、当該添加剤の濃度が漸次高くなるように、上記銅めっき液に経時的に上記添加剤を添加することを特徴とするものである。
【0015】
そして、請求項4に記載の銅めっき皮膜の成膜方法は、上記添加剤は、炭素を含有する、ポリエチレングリコール、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、ヤーヌスグリーンBおよびクエン酸塩の少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項5に記載の銅張り積層板は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の銅めっき皮膜の成膜方法によって、上記被めっき材に、銅めっき皮膜を成膜してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の銅めっき皮膜の成膜方法によれば、被めっき材を、順次複数の銅めっき槽中の銅めっき液に浸漬させることにより、被めっき材の表面に段階的に複数の銅めっき層を形成する際に、上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させるとともに、当該炭素および酸素の共析量が異なる添加剤を用い、上流側の上記めっき槽から下流側の上記めっき槽に向けて、段階的に上記共析量が多くなるように、上記添加剤を上記めっき液中に添加しているために、上記被めっき材の表面に、厚さ方向に向けて、段階的に上記炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層を形成することが可能となる。そして、当該炭素および酸素が共析することにより銅めっき層の結晶粒径を微細化し、この共析物が銅めっき層の溶解を抑制するために、厚さ方向に向けて段階的に銅めっき層のエッチングレートが遅くなり、この結果、銅めっき皮膜のエッチングファクターが向上する。
従って、プリント配線板を製造する際に、サブトラクティブ法を行なっても、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板を製造することが可能となる。
【0018】
また、請求項2に記載の銅めっき皮膜の成膜方法によれば、被めっき材を、順次複数の銅めっき槽中の銅めっき液に浸漬させることにより、被めっき材の表面に段階的に複数の銅めっき層を形成する際に、上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させる添加剤を用い、上流側の上記めっき槽から下流側の上記めっき槽に向けて、段階的に上記添加剤の濃度が高くなるように、上記めっき液中に添加する上記添加剤の添加量を調整しているために、請求項1に記載の銅めっき皮膜の成膜方法と同様に、上記被めっき材の表面に、厚さ方向に向けて、段階的に炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層を形成することが可能となる。そして、当該炭素および酸素が共析することにより銅めっき層の結晶粒径を微細化し、この共析物が銅めっき層の溶解を抑制するために、厚さ方向に向けて段階的に銅めっき層のエッチングレートが遅くなり、この結果、銅めっき皮膜のエッチングファクターが向上する。
従って、請求項1の銅めっき皮膜の成膜方法と同様に、プリント配線板を製造する際に、サブトラクティブ法を行なっても、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板を製造することが可能となる。
【0019】
さらに、請求項3に記載の銅めっき皮膜の成膜方法によれば、被めっき材を、銅めっき液を収容した銅めっき槽に浸漬させることにより、被めっき材の表面に銅めっき層を形成する際に、上記銅めっき液に、上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させる添加剤を添加し、銅めっき時に、当該添加剤の濃度が漸次高くなるように、上記銅めっき液に経時的に上記添加剤を添加しているために、上記被めっき材の表面に、厚さ方向に向けて、漸次炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層を形成することが可能となる。そして、当該炭素および酸素が共析することにより銅めっき層の結晶粒径を微細化し、この共析物が銅めっき層の溶解を抑制するために、厚さ方向に向けて漸次銅めっき層のエッチングレートが遅くなり、この結果、銅めっき皮膜のエッチングファクターが向上する。
従って、請求項1および請求項2の銅めっき皮膜の成膜方法と同様に、プリント配線板を製造する際に、サブトラクティブ法を行なっても、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板を製造することが可能となる。
【0020】
ところで、銅は、エッチング液である塩化第2鉄水溶液中において下記の半反応式に示すように、Fe3+イオンにより酸化されて、銅イオンとして溶解する。
Cu+Fe3+→Cu++Fe2+
【0021】
そして、エッチング液中の銅の溶解速度は、Fe3+イオンがFe2+イオンに還元される速度の影響が強いといわれている。
【0022】
そこで、請求項4に記載の銅めっき皮膜の成膜方法のように、上記添加剤として、炭素を含有する、ポリエチレングリコール、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、ヤーヌスグリーンBおよびクエン酸塩の少なくとも1種を用いることにより、確実にめっきされる銅に炭素および酸素を共析させることが可能である。この炭素および酸素の共析物は、銅の還元反応活性を抑制するために、めっきされた銅に少量共析させると、Fe3+イオンの還元反応が抑制される。この結果、銅めっき層の溶解速度、即ち、エッチングレートを遅くすることが可能となる。
【0023】
また、請求項5に記載の銅張り積層板によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の銅めっき皮膜の成膜方法によって、上記被めっき材に、銅めっき皮膜を成膜してなるために、エッチングによりプリント配線板の導体回路を形成する際に、サブトラクティブ法を行なってもファインピッチの微細回路を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る銅張り積層板の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る銅張り積層板の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る銅張り積層板をパターニング処理することにより形成されたプリント配線板を示すものであり、(a)は図1から形成されたプリント配線板の縦断面図、(b)は図2から形成されたプリント配線板の縦断面図である。
【図4】図1の銅張り積層板を製造するめっき装置の概略構成図である。
【図5】図2の銅張り積層板を製造するめっき装置の概略構成図である。
【図6】従来の銅張り積層板をパターニング処理することにより形成されたプリント配線板の縦断面図である。
【図7】実施例に係る銅張り積層板を示すものであり、(a)は第1の銅張り積層板の縦断面図であり、(b)は第2の銅張り積層板の縦断面図である。
【図8】図7の第1の銅張り積層板の表面側の銅めっき層における銅の粒径毎の銅張り積層板の面積を占める割合を示すグラフである。
【図9】図7の第1の銅張り積層板の樹脂フィルム側の銅めっき層における銅の粒径毎の銅張り積層板の面積を占める割合を示すグラフである。
【図10】図7の第1の銅張り積層板の回路形成後の状態を示す顕微鏡写真である。
【図11】図7の第2の銅張り積層板の回路形成後の状態を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係わる銅張り積層板の第1実施形態を、図1を用いて説明する。
まず、厚さ20〜50μmからなる帯状の樹脂フィルム1の上に、総厚5〜200nmからなるニッケルクロム合金スパッタ膜2と銅スパッタ膜3とが順に成膜されている。
【0026】
そして、銅スパッタ膜3の上に、第1銅めっき層4と第2銅めっき層5および第3銅めっき層6とが順に、総厚5〜15μmとなるように積層されている。
【0027】
この銅めっき層4、5、6は、めっきされた銅に炭素および酸素を共析させたものであって、表面側の第3銅めっき層6が、樹脂フィルム1側の第1銅めっき層4に比べて、炭素および酸素の共析量が多くなっている。
【0028】
従って、銅張り積層板7は、樹脂フィルム1側の銅めっき層4よりも銅めっき層5の方が、さらに銅めっき層5よりも銅めっき層6の方が、炭素および酸素の共析量が多くなっており、樹脂フィルム1から表面の厚さ方向に向けて、段階的に炭素および酸素の共析量の多くなる銅めっき層4、5、6からなる銅めっき皮膜が積層されて構成されている。
【0029】
次いで、上記銅張り積層板7に成膜された銅めっき皮膜の成膜方法について、2つの実施形態を説明する。
まず、第1実施形態においては、帯状の樹脂フィルム1の表面を、アルゴン雰囲気によるプラズマ処理によって洗浄することにより親水性も向上した同表面に、真空雰囲気下のスパッタ装置にて、ニッケルクロム合金スパッタ膜2と、このニッケルクロム合金スパッタ膜2の上に銅スパッタ膜3とを順次連続的に成膜する。
【0030】
次いで、このニッケルクロム合金スパッタ膜2と銅スパッタ膜3とが成膜された樹脂フィルム1をロール状に巻き取った後、この巻きロール10を、めっき装置11に付属する巻き出し部材に、軸方向を上下方向に向けて設置する。
【0031】
このめっき装置11は、図4に示すように、巻き出し部材によって巻きロール10から巻き出される樹脂フィルム1の下流側に設置された複数(本実施形態においては3槽)の電解銅めっき槽12、13、14によって概略構成されている。そして、これらの電解銅めっき槽12、13、14は、樹脂フィルム1の搬送方向に沿って一列に配設されており、各電解銅めっき槽12、13、14には、硫酸銅めっき溶液が貯留されている。
【0032】
ここで、第1電解銅めっき槽12内の硫酸銅めっき液には、SPSと、PEGを混合してなる添加剤が添加されている。
【0033】
また、第2電解銅めっき槽13内の硫酸銅めっき液には、PEGからなる添加剤が添加されている。
【0034】
さらに、第3電解銅めっき槽14内の硫酸銅めっき液には、SPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)と、PEG(ポリエチレングリコール)と、JGB(ヤーヌスグリーンB)を混合してなる添加剤が添加されている。
【0035】
そして、めっき装置11には、これら電解銅めっき槽12、13、14間ならびに電解銅めっき槽12、13、14の上流側および下流側に、それぞれ給電水洗槽15、16、17、18が備えられている。
【0036】
一方、各給電水洗槽15、16、17、18には、それぞれ樹脂フィルム1の表面に接触して、樹脂フィルム1を安定的に搬送させる回転ローラ19とともに銅スパッタ膜3に電気を供給する回転自在な給電ローラ20が内蔵されている。
【0037】
また、第1電解銅めっき槽12の上流側に設置された給電水洗槽15と、巻き出し部材との間には、銅スパッタ膜3の表面に付着している無機汚染物を分解除去する硫酸が収容された酸洗槽21が設置されている。
【0038】
他方、第3電解銅めっき槽14の下流側に設置された給電水洗槽18の後段に下流側に向けて、順に防錆槽22、水洗槽23、乾燥装置24および巻き取りローラ25が配設されている。
【0039】
以上の構成からなるめっき装置により、巻きロール10から巻き出された樹脂フィルム1は、銅スパッタ膜3の表面が酸洗槽21で洗浄された後に、各々電解銅めっき槽12、13、14内において、順次異なる添加剤を添加した硫酸銅めっき液に浸漬ることにより、銅スパッタ膜3の表面に銅めっき層4、5、6が形成される。
【0040】
その際、先ず樹脂フィルム1には、給電水洗槽15、16において銅スパッタ膜3に通電されることにより、第1電解銅めっき槽12において、銅スパッタ膜3の表面に、めっきされた銅に10〜30ppmの酸素および20〜30ppmの炭素を共析した第1銅めっき層4が形成される。
【0041】
次いで、給電水洗槽16、17において第1銅めっき層4に通電されることにより、第2電解銅めっき槽13において、第1銅めっき層4の表面に、めっきされた銅に500〜850ppmの酸素および100〜200ppmの炭素を共析した第2銅めっき層5が形成される。
【0042】
次に、給電水洗槽17、18において第2銅めっき層5に通電されることにより、第3電解銅めっき槽14において、第2銅めっき層5の表面に、めっきされた銅に500〜850ppmの酸素および400〜1500ppmの炭素を共析した第3銅めっき層6が形成される。
【0043】
なお、銅めっき層に炭素を共析する際に、炭素の含有(共析)量が2000ppmを超えると、銅めっき皮膜の比抵抗値が3μΩcmを超えてしまう。すると導電率が著しく低下してしまうために、炭素の含有量を2000ppm以下にするのが好ましい。
【0044】
その後、銅めっき層4、5、6が形成された樹脂フィルム1は、防錆槽22にて防錆液に浸漬され、次いで、水洗槽23にて水洗されて、乾燥装置24内にて乾燥された後に、巻き取りローラ25に巻き取られる。これにより、銅張り積層板7が得られる。
【0045】
次に、上記銅張り積層板に成膜する銅めっき皮膜の成膜方法の第2実施形態について説明する。
なお、本実施形態の成膜方法は、第1実施形態においては3槽の電解銅めっき槽12、13、14に3種類の異なる添加剤をそれぞれ添加したのに対し、本実施形態においては3槽の電解銅めっき槽12、13、14に1種の添加剤をそれぞれ濃度が異なるように添加している点が第1実施形態と異なっている。このため、スパッタ膜2、3の形成工程などの第1実施形態と同一の工程については、同一符号を用いることにより説明を省略する。
【0046】
第2実施形態においては、第1実施形態と同様のめっき装置11が用いられており、第1電解めっき槽12内の硫酸銅めっき液に、SPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)と、PEG(ポリエチレングリコール)と、JGB(ヤーヌスグリーンB)を混合してなる添加剤が、めっきである銅に炭素および酸素を共析すべく所定の添加量で添加されている。
【0047】
そして、第2電解銅めっき槽13内の硫酸銅めっき液に、SPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)と、PEG(ポリエチレングリコール)と、JGB(ヤーヌスグリーンB)を混合してなる添加剤が、第1電解銅めっき槽12より多い添加量で添加されている。
【0048】
さらに、第3電解銅めっき槽14内に、SPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)と、PEG(ポリエチレングリコール)と、JGB(ヤーヌスグリーンB)を混合してなる添加剤が、第2電解銅めっき槽13より多い添加量で添加されている。
【0049】
以上の構成からなるめっき装置11により、巻きロール10から巻き出された樹脂フィルム1は、銅スパッタ膜3の表面が酸洗槽21で洗浄された後に、各々電解銅めっき槽12、13、14内において、各々添加剤の濃度の異なる硫酸銅めっき液に浸漬されて、銅スパッタ膜3の表面に銅めっき層4、5、6が成膜される。
【0050】
その際、先ず樹脂フィルム1には、給電水洗槽15、16において銅スパッタ膜3に通電されることにより、第1電解めっき槽12において、銅スパッタ膜3の表面に、めっきされた銅に炭素および酸素を共析した第1銅めっき層4が形成される。
【0051】
次いで、給電水洗槽16、17において第1銅めっき層4に通電されることにより、第2電解銅めっき槽13において、第1銅めっき層4の表面に、めっきされた銅に第1銅めっき層4より多い共析量で炭素および酸素を共析した第2銅めっき層5が形成される。
【0052】
次に、給電水洗槽17、18において第2銅めっき層5に通電されることにより、第3電解銅めっき槽14において、第2銅めっき層5の表面に、めっきされた銅に第2銅めっき層5より多い共析量で炭素および酸素を共析した第3銅めっき層6が形成される。
【0053】
その後、銅めっき層4、5、6が形成された樹脂フィルム1は、防錆槽22にて防錆液に浸漬され、次いで、水洗槽23にて水洗されて、乾燥装置24内にて乾燥した後に、巻き取りローラ25に巻き取られる。これにより、銅張り積層板7が得られる。
【0054】
以上の構成からなる第1実施形態に係る銅めっき皮膜の成膜方法によれば、順次3槽の電解銅めっき槽12、13、14中の硫酸銅めっき液に、PEGおよびSPSからなる添加剤、PEGからなる添加剤、およびPEG、SPSおよびJGBからなる添加剤を順に添加して、樹脂フィルム1を該硫酸銅めっき液に段階的に浸漬しているために、樹脂フィルム1の表面に、厚さ方向に向けて、段階的に炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層4、5、6を形成することが可能となる。そして、当該炭素および酸素の共析物は、エッチングの際に銅の還元反応活性を抑制するために、厚さ方向に向けて銅めっき層4、5、6のエッチングレートが段階的に遅くなり、この結果、銅めっき皮膜のエッチングファクターが向上する。
従って、実際、プリント配線板を製造する際に、サブトラクティブ法を行なっても、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板を製造することが可能となる。
【0055】
また、第2実施形態に係る銅めっき皮膜の成膜方法によれば、順次3槽の銅めっき槽中の硫酸銅めっき液に、第1電解銅めっき槽12から第3電解銅めっき槽14に向けて、段階的に上記添加剤の濃度が高くなるように、上記硫酸銅めっき液中に添加するPEGとSPSおよびJGBからなる添加剤の添加量を調整しているために、請求項1に記載の銅めっき皮膜の成膜方法と同様に、樹脂フィルムの表面に、厚さ方向に向けて段階的に炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層4、5、6を形成することが可能となる。そして、当該炭素および酸素の共析物は、エッチングの際に銅の還元反応活性を抑制するために、厚さ方向に向けて銅めっき層4、5、6のエッチングレートが段階的に遅くなり、この結果、銅めっき皮膜のエッチングファクターが向上する。
従って、実際、プリント配線板を製造する際に、サブトラクティブ法を行なっても、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板を製造することが可能となる。
【0056】
そして、第1実施形態に係る銅張り積層板によれば、樹脂フィルムの厚さ方向に向かって、段階的に炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層3、4、5からなる銅めっき皮膜を成膜してなるために、プリント配線板を製造する際に、銅スパッタ膜3および銅めっき被膜を塩化第2鉄水溶液でエッチングした後に、ニクロム合金スパッタ膜2をエッチングして導体回路を形成するサブトラクティブ法を行なっても、図3(a)に示すように、表層である銅めっき層6のサイドエッチングによって、導体回路のトップ幅Tが設計値よりも狭くなってしまうことを効果的に防止でき、ファインピッチの微細回路を形成することが可能となる。
【0057】
次に、本発明に係わる銅張り積層板の第2実施形態を、図2を用いて説明する。
まず、銅張り積層板の第1実施形態と同様に、厚さ20〜50μmからなる帯状の樹脂フィルム1の上に、総厚5〜200nmからなるニッケルクロム合金スパッタ膜2と銅スパッタ膜3とが順に成膜されている。
【0058】
そして、銅スパッタ層3の上に、銅めっき層8が、厚さ5〜15μmに積層されている。
【0059】
この銅めっき層8は、めっきされた銅に炭素および酸素を共析させたものであって、樹脂フィルム1から表面の厚さ方向に向けて、漸次炭素及び酸素の共析量が多くなっている。
【0060】
従って、銅張り積層板9は、樹脂フィルム1から表面に厚さ方向に向けて、漸次炭素および酸素の共析量の多くなる銅めっき層8からなる銅めっき皮膜が積層されて構成されている。
【0061】
次に、上記銅張り積層板9に成膜する銅めっき皮膜の成膜方法について説明する。
なお、本実施形態の成膜方法は、電解銅めっき槽を1槽にして、その電解銅めっき槽に1種の添加剤を添加し、さらに電解めっき中に電解銅めっき槽に経持的に添加剤を添加していく点が、銅張り積層板の第1実施形態における銅めっき皮膜の成膜方法の第1実施形態および第2実施形態と異なっている。このため、スパッタ膜2、3の形成工程などの銅張り積層板の第1実施形態における銅めっき皮膜の成膜方法の第1実施形態および第2実施形態と同一の工程については、同一符号を用いることにより説明を省略する。
【0062】
本実施形態に用いられるめっき装置27は、図5に示すように、巻き出し部材によって巻きロール31から巻き出される樹脂フィルム1の下流側に設置された1槽からなる電解銅めっき槽28によって概略構成されている。そして、該電解銅めっき槽28には、硫酸銅めっき溶液が貯留されている。
【0063】
ここで、電解銅めっき槽28内の硫酸銅めっき液には、SPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)と、PEG(ポリエチレングリコール)と、JGB(ヤーヌスグリーンB)を混合してなる添加剤がめっきされる銅に炭素および酸素を共析すべく所定の添加量で添加されている。
【0064】
一方、電解銅めっき槽28には、めっき装置27の外部からSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)と、PEG(ポリエチレングリコール)と、JGB(ヤーヌスグリーンB)を混合してなる添加剤を導入する添加剤導入管38が備えられている。
【0065】
そして、電解銅めっき槽28の上流側および下流側に、それぞれ給電水洗槽29、30が備えられている。
【0066】
また、各給電水洗槽29、30には、それぞれ樹脂フィルム1の表面に接触して、樹脂フィルム1を安定的に搬送させる回転ローラ32とともに銅スパッタ膜3に電気を供給する回転自在な給電ローラ33が内蔵されている。
【0067】
また、電解銅めっき槽28の上流側に設置された給電水洗槽29と、巻き出し部材との間には、銅スパッタ膜3の表面に付着している無機汚染物を分解除去する硫酸が収容された酸洗槽34が設置されている。
【0068】
他方、電解銅めっき槽28下流側に設置された給電水洗槽30の後段に下流側に向けて、順に防錆槽35、水洗槽36、乾燥装置37および巻き取りローラ26が配設されている。
【0069】
以上の構成からなるめっき装置27により、巻きロール31から巻き出された樹脂フィルム1は、その銅スパッタ膜3の表面が酸洗槽34によって洗浄された後に、電解銅めっき槽28内において硫酸銅めっき液に浸漬されて、電流を供給することにより銅めっき層8が形成される。
【0070】
この際、この電解銅めっき槽28内の硫酸銅めっき液は、添加剤導入管38より、経持的にSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)と、PEG(ポリエチレングリコール)と、JGB(ヤーヌスグリーンB)を混合してなる添加剤が導入されていくことにより、硫酸銅めっき液の上記添加剤の濃度が漸次高くなっていく。これにより、銅スパッタ膜3の表面に、樹脂フィルム1から表面の厚さ方向に向けて、漸次炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層8が形成される。
【0071】
次いで、銅めっき層8が成膜された樹脂フィルム1は、防錆槽35にて防錆液に浸漬され、次いで、水洗槽36にて水洗されて、乾燥装置37内にて乾燥した後に、巻き取りローラ26に巻き取られる。これにより、銅張り積層板9が得られる。
【0072】
以上の構成からなる銅めっき皮膜の成膜方法によれば、硫酸銅めっき液に、PEGとSPSおよびJGBからなる添加剤を添加して、樹脂フィルムを該硫酸銅めっき液に浸漬し、銅めっき時に、該添加剤の濃度が漸次高くなるように、上記硫酸銅めっき液に経持的に上記添加剤を添加しているために、樹脂フィルム1の表面に、厚さ方向に向けて、漸次炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層8を形成することが可能となる。そして、当該炭素および酸素の共析物は、エッチングの際に銅の還元反応活性を抑制するために、厚さ方向に向けて銅めっき層8のエッチングレートが漸次遅くなり、この結果、銅めっき皮膜のエッチングファクターが向上する。
従って、実際、プリント配線板を製造する際に、サブトラクティブ法を行なっても、ファインピッチの微細回路を形成することが可能な銅張り積層板を製造することが可能となる。
【0073】
そして、第2実施形態に係る銅張り積層板によれば、樹脂フィルムの厚さ方向に向かって、漸次炭素および酸素の共析量が多くなる銅めっき層8からなる銅めっき皮膜を成膜してなるために、プリント配線板を製造する際に、銅スパッタ膜3および銅めっき皮膜を塩化第2鉄水溶液でエッチングした後に、ニクロム合金スパッタ膜2をエッチングして導体回路を形成するサブトラクティブ法を行なっても、図3(b)に示すように、表面側の銅めっき層8のサイドエッチングによって、導体回路のトップ幅Tが設計値よりも狭くなってしまうことを効果的に防止することができ、ファインピッチの微細回路を形成することが可能となる。
【0074】
加えて、第1実施形態および第2実施形態の銅張り積層板に係る銅めっき皮膜の成膜方法によれば、炭素を含有する、ポリエチレングリコール、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、ヤーヌスグリーンBおよびクエン酸塩の少なくとも1種からなる添加剤を用いているために、確実にめっきされる銅に炭素および酸素を共析させることが可能である。この炭素および酸素の共析物は、銅の還元反応活性を抑制するために、めっきされた銅に少量共析させると、Fe3+イオンの還元反応が抑制される。この結果、銅めっき層の溶解速度、即ち、エッチングレートを遅くすることが可能となる。
【0075】
なお、本実施形態の銅張り積層板7、9おいては、エッチング処理により導体回路の断面形状が台形状になるのを抑制する形状に形成されているが、銅張り積層板は、エッチング処理により、トップ幅と樹脂フィルム側の幅が同等であり、中央部の幅がサイドエッチングによって狭くなる場合もある。このときは、樹脂フィルム側および銅めっき皮膜の表面側の銅めっき層を形成する際に、炭素および酸素の共析量が少ない添加剤を添加し、中央部側の銅めっき層を形成する際に、炭素および酸素の共析量が多くなる添加剤を添加することにより、対応可能である。
【実施例】
【0076】
まず、本実施例に係る第1の銅張り積層板を製造する事前準備として、めっき装置11の第3の電解銅めっき槽14および給電水洗槽18を取り除き、残り2槽の電解銅めっき槽12、13に、各々25℃に維持した下記表1に記載の硫酸銅めっき液を2L貯留した。そして、第1の電解めっき槽12の硫酸銅めっき液には、下記表2に記載の添加剤を添加し、電解めっき槽13の硫酸銅めっき液には、下記表3に記載の添加剤を添加した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
次に、帯状の樹脂フィルム(東レ・デュポン製 カプトンEN)1の表面を、アルゴン雰囲気によるプラズマ処理によって洗浄することにより親水性も向上した同表面に、真空雰囲気下のスパッタ装置にて、ニッケルクロム合金スパッタ膜2と、ニッケルクロム合金スパッタ膜2の上に銅スパッタ膜3とを順次連続的に成膜した。
【0081】
次いで、これらのスパッタ膜2、3を成膜した樹脂フィルム1をロール状に巻き取った後に、この巻きロール10をめっき装置11に付属する巻きだし部材に、軸方向に向けて設置した。
【0082】
次に、銅スパッタ膜3の表面を酸先槽21によって洗浄した後に、給電水洗槽15、16によって、銅スパッタ膜3に電流密度2A/dm2の条件で9分間の通電を行なうことにより、第1電解めっき槽12において、銅スパッタ膜3の表面に4μmの銅めっき層39を形成した。
【0083】
次いで、給電水洗槽16、17によって、銅めっき層4に電流密度2A/dm2の条件で
9分間の通電を行なうことにより、第2電解銅めっき槽13において、銅めっき層39の表面に4μmの銅めっき層40を形成した。
【0084】
その後、銅めっき層39、40が形成された樹脂フィルム1は、防錆槽22にて防錆液に浸漬され、次いで、水洗槽23にて水洗されて、乾燥装置24にて乾燥された後に巻き取りローラ25に巻き取られる。これにより、図7(a)に示すように、銅めっき層39、40からなる銅めっき皮膜を成膜した銅張り積層板42を得た。
【0085】
そして、本実施形態の銅張り積層板42の各々銅めっき層39、40全体の炭素および酸素の共析量を、GD−MS法(グロー放電質量分析)により測定した。
【0086】
並びに平均結晶粒径を、EBSP法(Electron Bask Scatter diffraction Pattern)により計測した。
【0087】
また、本実施形態の銅張り積層板の銅めっき皮膜41上の導体回路となる位置にフォトレジストを塗布して、このフォトレジストによるパターンマスクをフォトリソグラフィー法によって形成する。そして、このパターンマスクの上から塩化第2鉄水溶液などのエッチング液を吹き付けることにより、パターンマスクの開口部に露出している銅めっき皮膜41を除去した後に、パターンマスクをエッチング液により除去して導体回路を形成し、各々銅めっき層39、40のエッチングレートを計測するととともに、回路形成後の断面形状を確認した。
【0088】
この際、上記実施形態の銅張り積層板と比較するために、めっき装置11の電解銅めっき槽を第1電解銅めっき槽12の1槽のみとし、当該第1電解銅めっき槽12に同条件の硫酸銅めっき液を貯留し、上記表2の添加剤のみを添加し、銅スパッタ膜3の表面に電流密度2A/dm2の条件で18分間通電を行なうことにより、第1の電解銅めっき槽12において、図7(b)に示すように、銅スパッタ膜3の表面に8μmの銅めっき層41からなる銅めっき皮膜を成膜した第2の銅張り積層板43を得た。そして、上記回路形成方法を行なうことにより導体回路を形成し、回路形成後の断面形状を確認した。
【0089】
下記表4は本実施形態の銅張り積層板の各々銅めっき層39、40の炭素および酸素の共析量、並びにエッチングレートを示すものである。また、図8は銅めっき層40における銅の粒径毎の本実施形態の銅張り積層板の面積を占める割合示すものであり、図9は銅めっき層39における銅の粒径毎の本実施形態の銅張り積層板の面積を占める割合示すものである。
【0090】
【表4】

【0091】
上記表4によれば、銅めっき層39に比べて銅めっき層40の方が炭素および酸素の共析量が多くなっていることが確認できる。
【0092】
また、各々銅めっき層39、40の平均粒径を測定すると、銅めっき層39における銅の平均粒径が1.40μmであり、銅めっき層40における銅の平均粒径が0.40μmであることが確認できる。
【0093】
これにより、炭素および酸素の共析量を多くする程、めっきされる銅が微細化されることが実証できた。
【0094】
そして、回路形成時のエッチングレートを確認すると、炭素及び酸素の共析量が少ない銅めっき層39に比べて、炭素および酸素の共析量が多い銅めっき層40の方が、エッチングレートが遅くなっていることが確認できる。
【0095】
これにより、銅めっき時、電解銅めっき槽に添加する上記添加剤の量や濃度を調整することにより、回路形成時のエッチングレートを調整できることができることが実証できるとともに、炭素及び酸素を共析量が多いほどエッチングレートが遅くなることが実証できた。
【0096】
一方、図10の回路形成後の本実施形態の銅張り積層板を確認すると、本実施形態の銅張り積層板は、サイドエッチングされることなく、導体回路の断面形状が正方形状に形成されているのが確認できる。
【0097】
それに比べて、図11の回路形成後の第2の銅張り積層板を確認すると、銅めっき皮膜の表面側がサイドエッチングされてしまい、導体回路のトップ幅が狭くなり、導体回路の断面形状が台形状に形成されているのが確認できる。
【0098】
この結果、樹脂フィルム1から表面の厚さ方向に向けて、炭素および酸素の共析量が多くなるように銅めっき層を形成することにより、導体回路の断面形状が正方形状に形成されることが実証できた。
【符号の説明】
【0099】
1 樹脂フィルム(被めっき材)
4 第1銅めっき層
5 第2銅めっき層
6 第3銅めっき層
7 銅張り積層板(第1実施形態)
8 銅めっき層
9 銅張り積層板(第2実施形態)
12 第1電解銅めっき槽
13 第2電解銅めっき槽
14 第3電解銅めっき槽
28 電解銅めっき槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき材を、順次複数の銅めっき槽中の銅めっき液に浸漬させることにより、被めっき材の少なくとも表面に段階的に複数の銅めっき層を形成する銅めっき皮膜の成膜方法において、
上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させるとともに、当該炭素および酸素の共析量が異なる添加剤を用い、上流側の上記めっき槽から下流側の上記めっき槽に向けて、段階的に上記共析量が多くなるように、上記添加剤を上記めっき液中に添加することを特徴とする銅めっき皮膜の成膜方法。
【請求項2】
被めっき材を、順次複数の銅めっき槽中の銅めっき液に浸漬させることにより、被めっき材の少なくとも表面に段階的に複数の銅めっき層を形成する銅めっき皮膜の成膜方法において、
上記メッキされる銅に炭素および酸素を共析させる添加剤を用い、上流側の上記めっき槽から下流側の上記めっき槽に向けて、段階的に上記添加剤の濃度が高くなるように、上記めっき液に添加する上記添加剤の添加量を調整することを特徴とする銅めっき皮膜の成膜方法。
【請求項3】
被めっき材を、銅めっき液を収容した銅めっき槽に浸漬させることにより、被めっき材の少なくとも表面に銅めっき層を形成する銅めっき皮膜の成膜方法において、
上記銅めっき液に、上記めっきされる銅に炭素および酸素を共析させる添加剤を添加し、銅めっき時に、当該添加剤の濃度が漸次高くなるように、上記銅めっき液に経時的に上記添加剤を添加することを特徴とする銅めっき皮膜の成膜方法
【請求項4】
上記添加剤は、炭素を含有する、ポリエチレングリコール、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、ヤーヌスグリーンBおよびクエン酸塩の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銅めっき皮膜の成膜方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の銅めっき皮膜の成膜方法によって、上記被めっき材に、銅めっき皮膜を成膜してなることを特徴とする銅張り積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−222651(P2010−222651A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72117(P2009−72117)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】