説明

鋳造圧縮機物品及びそれを形成する方法

【課題】鋳造によって、鋳造翼形部、ステータ、ブレード、ガスタービン及びガスタービンシェルのような圧縮機物品の形成方法を提供する。
【解決手段】鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金をアルゴン雰囲気内で溶解して、酸化を最少とするように準備するステップと、Fe−Mn−Al−Si−C基合金を圧縮機物品の形状を有する鋳造品にニアネットシェイプ鋳造プロセスを利用して鋳造するステップと、鋳造後仕上げ加工を行って、圧縮機物品を形成するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には鋳造圧縮機物品に関する。より具体的には、本発明は、鋳造翼形部、ステータ、ブレード、ガスタービン、ガスタービンシェル等々及びそれを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、様々なガスタービンで使用される最新の圧縮機物品は、従来型のまた時には僅かに変更したステンレス鋼で製造されかつ鍛造プロセス及びそれに続く広範なプロセス後機械加工によって該物品がその最終形状になるように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4975335号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の第1の態様は、圧縮機物品の形成方法を提供し、本方法は、鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金を準備するステップと、Fe−Mn−Al−Si−C基合金を圧縮機物品の形状を有する鋳造品に鋳造するステップと、鋳造後仕上げ加工を行って、圧縮機物品を形成するステップとを含む。
【0005】
本開示の第2の態様は、圧縮機物品の形成方法を提供し、本方法は、鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金を準備するステップと、Fe−Mn−Al−Si−C基合金を、翼形部、ステータ、ガスタービン、ブレード及びガスタービンシェルからなる群から選択される圧縮機物品の形状を有する鋳造品に鋳造するステップと、鋳造後仕上げ加工を行って、圧縮機物品を形成するステップとを含む。
【0006】
本開示の第3の態様は、圧縮機を提供し、本圧縮機は、鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金で製造した部品を含む。
【0007】
本発明のこれらの及びその他の特徴は、本発明の様々な実施形態を示す添付図面と関連させてなした本発明の様々な態様の以下の詳細な説明から一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による、圧縮機物品の形成方法の実施形態のフロー図。
【図2】本発明による、圧縮機部品の実施形態としての圧縮機ブレードを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
圧縮機物品のための鍛造のような最新の形成プロセスは、適当に圧縮力を加えることによって原材料を加熱しかつ成形するステップを使用している。このプロセスの性質により、一般的に事後プロセスにおいて、生成物をそれらの最終形状にする広範な機械加工が必要となる。全体プロセスは、非常に高価であり、時間がかかりかつ環境的に不健全である可能性がある。鋳造プロセスを使用すること及び鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金を使用することにより、機械加工が排除又は最少にされ、リードタイムが短縮されかつプロセスの二酸化炭素排出量が減少することが見出された。鋳造部品はまた、熱間等静圧圧縮成形(HIP)して、内部空隙を排除/最少にすることができる。また、Fe−Mn−Al−Si−C基合金を使用することにより、一般的に最新の形成プロセスで使用される材料と比較して、原材料の使用においてコスト削減が得られることも、見出された。
【0010】
図1を参照すると、圧縮機物品の形成方法の実施形態を示している。本方法は、第1のステップS1つまり鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金を準備するステップと、第2のステップS2つまりFe−Mn−Al−Si−C基合金を圧縮機物品の形状を有する鋳造品に鋳造するステップと、第3のステップS3つまり鋳造後仕上げ加工を行って、圧縮機物品を形成するステップとを含む。
【0011】
Fe−Mn−Al−Si−C基合金を準備する方法ステップS1に関して、本発明の実施形態では、Fe−Mn−Al−Si−C基合金は、約54.3%〜76.4%のFe、約12%〜30%のMn、約5%〜12%のAl、約0.3%〜2.5%のSi及び約0.3%〜1.2%のCを含む。別の実施形態では、Fe−Mn−Al−Si−C基合金は、約59.5%のFe、約29.4%のMn、約8.8%のAl、約1.3%のSi及び約1%のCを含む。別の実施形態では、Fe−Mn−Al−Si−C基合金は、約0.5%〜1%のモリブデン(Mo)をさらに含む。
【0012】
Fe−Mn−Al−Si−C基合金は、アルゴン雰囲気内で合金の成分を溶解して、酸化を最少にしかつ溶融金属Fe−Mn−Al−Si−C基合金を形成することによって準備することができる。説明したように溶融Fe−Mn−Al−Si−C基合金を準備するプロセスは、当技術分野では周知であり、簡潔にするためこれ以上の説明は行わない。
【0013】
準備したFe−Mn−Al−Si−C基合金は、時効硬化特性を改善したダクタイル鋳鉄と同様の鋳造特性を有する。Fe−Mn−Al−Si−C基合金は、低い密度(6.5〜7.2g/cm3)、600MPa〜2000MPaの引張強さ(UTS)、溶体化処理した場合における70%破断ひずみを越えるほど大きい優れた延性、10%〜70%の伸び率及び600〜1000MPaの降伏強さ(YS)を有する。Fe−Mn−Al−Si−C基合金の優れた流動性及び時効硬化能力特性は、ニアネットシェイプ鋳造プロセスを利用して圧縮機物品を製造するために該Fe−Mn−Al−Si−C基合金を使用するのを可能にする。鋳造プロセスの実施例を下記に説明する。
【0014】
Fe−Mn−Al−Si−C基合金は、2種類の主基地成分(オーステナイト及びフェライト)を有する。2つの成分は、Fe−Mn−Al−Si−C基合金を有する状態で形成した圧縮機物品の振動減衰性能(dampening capability)を増大させる。表Iは、Fe−Mn−Al−Si−C基合金の特性を、一般的に圧縮機物品のための形成プロセスで使用する他の合金と比較したものである。
【0015】
【表1】

Fe−Mn−Al−Si−C基合金を圧縮機物品の形状を有する鋳造品に鋳造する方法ステップS2に関して、本発明の実施形態では、鋳造は、砂型鋳造、インベストメント鋳造、金型鋳造及びダイキャスティングからなる群から選択される。説明したように前述の鋳造プロセスは、当技術分野では周知であり、簡潔にするためこれ以上の説明は行わない。前述の鋳造プロセスはまた、あったとしても非常に僅かのプロセス後機械加工しか必要としないニアネットシェイププロセスである。本発明の実施形態では、方法ステップS1で準備したFe−Mn−Al−Si−C基合金は、圧縮機物品の形状になった予め製作した鋳型(金型)内に注入される。
【0016】
鋳型は、最終圧縮機物品の幾何学形状に一致した空洞を有する。鋳型はまた、該鋳型の空洞へのチャネルを構成した湯口システムを有する。実施形態では、鋳造品は、翼形部、ステータ、ガスタービン、ブレード及びガスタービンシェルからなる群から選択される幾何学形状を有する鋳型内に生じる。別の実施形態では、Fe−Mn−Al−Si−C基合金は、本合金の鋳造に適した方法或いは今後開発される方法を用いて鋳造することができる。
【0017】
鋳造後仕上げ加工を行って、前記圧縮機物品の形成を行う方法ステップS3に関して、本発明の実施形態では、鋳造後仕上げ加工には、それに限定されないが、鋳型からの物品の分離、分離した物品の熱処理、分離した物品の時効硬化及び処理機械加工が含まれる。分離した物品は次に、溶体化熱処理して、物品に予め選択した機械的特性を満たすようにする。溶体化熱処理は、脱炭及び酸化を防止する雰囲気内で1000℃以上で行うことができる。次に、約500℃〜650℃の温度範囲内において物品の所定の機械的特性を得るのに必要な時間にわたって、時効硬化処理を行うことができる。別の実施形態では、鋳造後ステップは、Fe−Mn−Al−Si−C基合金の鋳造後処理に適した或いは今後開発される方法を使用して行うことができる。
【0018】
S3により形成した圧縮機物品には、それに限定されないが、翼形部、ステータ、ガスタービン、ブレード及びガスタービンシェルが含まれる。形成した物品は、上記の表Iに記載した特性並びに304SS(ステンレス鋼)に匹敵する酸化及び溶接特性を有する。形成した物品はまた、高張力軽量アルミニウム(HSLA)鋼よりも12%〜18%軽量である。形成した物品はまた、高クロム添加物及び高価なニッケル添加物を必要とする従来型のステンレス鋼よりも安価である。
【0019】
図2を参照すると、本発明による圧縮機部品/物品の実施形態として、圧縮機ブレード1を示している。一実施形態では、圧縮機は、鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金を含む圧縮機ブレード1を備えている。Fe−Mn−Al−Si−C基合金の特性、形成方法及び様々な実施形態は、上記で説明した通りであり、簡潔にするためこれ以上の説明は行わない。一実施形態では、圧縮機ブレード1は、鋳造により形成される。Fe−Mn−Al−Si−C基合金を含む圧縮機部品/物品の特性、形成方法及び様々な実施形態は、上記で説明した通りであり、簡潔にするためこれ以上の説明は行わない。本発明の実施形態では、圧縮機部品は、翼形部、ステータ、ガスタービン、ブレード及びガスタービンシェルからなる群から選択される。
【0020】
本明細書における「第1」、「第2」などの用語は順序、数量又は重要性を意味するものではなく、ある構成要素を他の構成要素から区別するために用いられる。単数形で記載したものであっても、数を限定するものではなく、そのものが少なくとも1つ存在することを意味する。数量に用いられる「約」という修飾語は、記載の数値を含み、文脈毎に決まる意味をもつ(例えば、特定の数量の測定に付随する誤差範囲を含む)。本明細書に開示した範囲はすべてその上下限を含み、独立に結合可能である(例えば、「約25重量%以下、具体的には約5〜約20重量%」という範囲は、「約5〜25重量%」の上下限とその範囲内のすべての中間値を含む)。また、本明細書及び特許請求の範囲に示す合金組成はすべて重量%に基づくものである。
【0021】
本明細書では様々な実施形態について説明してきたが、本明細書の記載から、構成要素の様々な組合せ、変更及び修正を当業者がなし得ること、並びにそれらが本発明の技術的範囲に属することは明らかであろう。さらに、特定の状況又は材料に適応させるために、その本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機物品の形成方法であって、
(S1)鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金を準備するステップと、
(S2)前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金を圧縮機物品の形状を有する鋳造品に鋳造するステップと、
(S3)鋳造後仕上げ加工を行って、前記圧縮機物品を形成するステップと
を含む圧縮機物品の形成方法。
【請求項2】
前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金が、54.3%〜76.4%のFe、12%〜30%のMn、5%〜12%のAl、0.3%〜2.5%のSi及び0.3%〜1.2%のCを含む、請求項1記載の圧縮機物品の形成方法。
【請求項3】
前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金が、59.5%のFe、29.4%のMn、8.8%のAl、1.3%のSi及び1%のCを含む、請求項2記載の圧縮機物品の形成方法。
【請求項4】
前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金が0.5%〜1%のMoをさらに含む、請求項1記載の圧縮機物品の形成方法。
【請求項5】
前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金を準備するステップが、該Fe−Mn−Al−Si−C基合金の成分を溶解して、溶融金属Fe−Mn−Al−Si−C基合金を形成するステップを含む、請求項1記載の圧縮機物品の形成方法。
【請求項6】
前記鋳造品が、翼形部、ステータ、ガスタービン、ブレード(1)及びガスタービンシェルからなる群から選択される形状を有する、請求項1記載の圧縮機物品の形成方法。
【請求項7】
圧縮機物品の形成方法であって、
(S1)鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金を準備するステップと、
(S2)前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金を、翼形部、ステータ、ガスタービン、ブレード及びガスタービンシェルからなる群から選択される圧縮機物品の形状を有する鋳造品に鋳造するステップと、
(S3)鋳造後仕上げ加工を行って、前記圧縮機物品を形成するステップと
を含む圧縮機物品の形成方法。
【請求項8】
前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金が、54.3%〜76.4%のFe、12%〜30%のMn、5%〜12%のAl、0.3%〜2.5%のSi及び0.3%〜1.2%のCを含む、請求項7記載の圧縮機物品の形成方法。
【請求項9】
鉄−マンガン−アルミニウム−ケイ素−炭素(Fe−Mn−Al−Si−C)基合金で製造した部品を含む、圧縮機。
【請求項10】
前記Fe−Mn−Al−Si−C基合金が、54.3%〜76.4%のFe、12%〜30%のMn、5%〜12%のAl、0.3%〜2.5%のSi及び0.3%〜1.2%のCを含む、請求項9記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−67870(P2011−67870A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211479(P2010−211479)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】