説明

鋼管支柱の施工方法

【課題】施工が容易であって、正確な位置(鉛直方向位置および水平方向位置)に鋼管支柱を設置することができる鋼管支柱の施工方法を提供する。
【解決手段】鋼管支柱の施工方法100は、まず、鋼管杭1を地盤900に立設する工程(S1)と、鋼管杭1の内部に土砂2を投入する工程(S2)と、上面31が予定された鉛直方向位置Aになるように底版コンクリート3を打設する工程(S3)と、底版コンクリート3の上面31に鋼管支柱4を載置する工程(S4)と、鋼管支柱4が予定された水平方向位置になるように、鋼管杭1の上端11と鋼管支柱4の側面との間に楔5を挿入する工程(S5)と、鋼管杭1と鋼管支柱4の間に周囲コンクリート6を打設する工程(S6)と、根巻きコンクリート7を打設する工程(S7)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管支柱の施工方法、特に、1本の鋼管支柱を1本の鋼管杭に設置する鋼管支柱の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フーチングと呼ばれるコンクリートからなる基礎部分を構築することなく、鋼管杭と柱とを接合する所謂「1柱1杭基礎構造」について、内面突起が設けられた鋼管杭(鋼管杭)の上端にバンド型補強材やリング型補強材を設置することにより曲げ耐力を増大し、鋼管杭(鋼管杭)の内面の上端近くに、予め発泡スチロール等のスペーサを貼り付けることによって、当該範囲の充填コンクリートの鋼管杭内面からの除去を容易にする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−051428号公報(第7−9頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、撤去された充填コンクリートの上面に柱鉄骨を載置(柱の下端面を当接)するものであるため、充填コンクリートの上面が正確な鉛直方向位置(高さ)に、しかも上面が平坦になるように除去する必要がある。このため、施工性が必ずしも改善されないという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題を解決するものであって、施工が容易であって、正確な位置(鉛直方向位置および水平方向位置)に鋼管支柱を設置することができる鋼管支柱の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る鋼管支柱の施工方法は、鋼管杭を地盤に立設する工程と、
該鋼管杭の内部に土砂を投入する工程と、
前記投入された土砂の上に、上面が予定された鉛直方向位置になるように底版コンクリートを打設する工程と、
前記底版コンクリートが固化した後、前記底版コンクリートの上面に鋼管支柱を載置する工程と、
前記鋼管支柱が予定された水平方向位置になるように、前記鋼管杭の上端と前記鋼管支柱の側面との間に楔を挿入する工程と、
前記楔が挿入された状態で、前記鋼管杭と前記鋼管支柱の間に周囲コンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
(2)また、鋼管杭を地盤に立設する工程と、
該鋼管杭の内部に土砂を投入する工程と、
前記鋼管杭の予定された鉛直方向位置に、内面に突出する支持リブを設置する工程と、
前記支持リブに鋼管支柱を載置する工程と、
前記鋼管支柱が予定された水平方向位置になるように、前記鋼管杭の上端と前記鋼管支柱の側面との間に楔を挿入する工程と、
前記楔が挿入された状態で、前記鋼管杭と前記鋼管支柱の間に周囲コンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
(3)また、鋼管杭の一方の端部から所定位置に支持リブを設置する工程と、
前記支持リブが設置された端部が上端になるように前記鋼管杭を地盤に立設する工程と、
該鋼管杭の内部に土砂を投入する工程と、
前記支持リブにスペーサを載置して、該スペーサの上面を予定された鉛直方向位置にする工程と、
前記スペーサの上面に鋼管支柱を載置する工程と、
前記鋼管支柱が予定された水平方向位置になるように、前記鋼管杭の上端と前記鋼管支柱の側面との間に楔を挿入する工程と、
前記楔が挿入された状態で、前記鋼管杭と前記鋼管支柱の間に周囲コンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
(4)さらに、前記(2)または(3)において、前記支持リブが、円周方向で等角配置された複数の板材または棒材、あるいは、円環状部材または円盤状部材であることを特徴とする。
(5)さらに、前記(1)乃至(4)の何れかにおいて、前記周囲コンクリートを打設する工程の後、前記鋼管支柱の前記鋼管杭から突出した所定範囲と前記鋼管杭の上部の所定範囲とを包囲する根巻きコンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
(6)さらに、前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記鋼管杭の内面の上端の近くに円環状の内面リングが設置され、前記鋼管支柱の外面の下端から所定位置に円環状の外面リングが設置され、前記内面リングが前記外面リングよりも鉛直方向の上に位置し、両者によって前記周囲コンクリートの一部が挟まれることを特徴とする。
(7)さらに、前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記鋼管杭の内面の上端の近くに、鉛直方向で所定の間隔を空けて一対の円環状の内面リングが設置され、
前記鋼管支柱の外面の下端から所定位置に1または2以上の円環状の外面リングが設置され、
前記外面リングが、鉛直方向で前記一対の内面リングの間に位置し、
前記一対の内面リングの鉛直方向の上側に位置する内面リングと前記外面リングとによって前記周囲コンクリートの一部が挟まれ、
前記一対の内面リングの鉛直方向の下側に位置する内面リングと前記外面リングとによって前記周囲コンクリートの一部が挟まれることを特徴とする。
(8)さらに、前記(2)乃至(7)の何れかにおいて、前記周囲コンクリートを打設する工程において、前記鋼管支柱の内部の下端から所定範囲に充填コンクリートが打設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鋼管支柱の施工方法は以上の構成であるから、以下の効果を奏する。
(i)鋼管杭群は、鋼管杭の内部に底版コンクリートを打設する工程と、底版コンクリートの上面に鋼管支柱を載置する工程と、鋼管杭と鋼管支柱との間に楔を挿入する工程と、を有するから、容易に、鋼管支柱を正確な位置(鉛直方向位置および水平方向位置)に設置することができる。
(ii)また、鋼管杭の予定された鉛直方向位置に支持リブを設置する工程と、支持リブに鋼管支柱を載置する工程と、鋼管杭と鋼管支柱との間に楔を挿入する工程と、を有するから、容易に、鋼管支柱を正確な位置(鉛直方向位置および水平方向位置)に設置することができる。
(iii)また、鋼管杭に予め支持リブを設置する工程と、スペーサを支持リブに載置する工程と、スペーサに鋼管支柱を載置する工程と、鋼管杭と鋼管支柱との間に楔を挿入する工程と、を有するから、容易に、鋼管支柱を正確な位置(鉛直方向位置および水平方向位置)に設置することができる。
【0012】
(iv)さらに、支持リブが円周方向で等角配置された複数の板材または棒材であるから、構造が簡素で、製作コストが安価になる。また、支持リブが円環状または円盤状であるから、鋼管杭の剛性および強度を高めるから、鋼管杭を押し広げたり、歪にしたりする力(曲げモーメント)による破損が防止される。また、鋼管支柱に作用する鉛直下向きの力は、当接する支持リブから鋼管杭に直接的に伝達されると共に、鋼管支柱の外面から周囲コンクリートに伝達され、鋼管杭の内面および支持リブから鋼管杭に間接的に伝達される。よって、鋼管支柱が鉛直下向きの力に対して移動する(沈み込む)ことが防止される。
(v)さらに、鋼管支柱の一部と鋼管杭の一部とを包囲する根巻きコンクリートを打設する工程とを有するから、当該範囲の腐食が抑えられ、耐久性が向上する。
【0013】
(vi)さらに、鋼管杭の内面リングと鋼管支柱の外面リングとの間に周囲コンクリートの一部が挟まれるから、鋼管支柱に鉛直上向きの力(引き抜き力)が作用した場合、かかる力は、挟まれた周囲コンクリートの一部を圧縮して鋼管杭に伝達される。よって、鋼管支柱が鋼管杭から抜け出すことが防止される。また、内面リングは鋼管杭の上端近くの剛性および強度を高めるから、鋼管杭を押し広げたり、歪にしたりする力(曲げモーメント)による破損が防止される。
(vii)さらに、鋼管杭の一対の内面リングの間に鋼管支柱の外面リングが位置し、鋼管杭の下側に配置された内面リングと鋼管支柱の外面リングとの間に周囲コンクリートの一部が挟まれるから、前記(vi)の効果が得られると共に、鋼管支柱に鉛直下向きの力(押し込み力)が作用した場合、かかる力は、挟まれた周囲コンクリートの一部を圧縮して鋼管杭に伝達される。よって、鋼管支柱が鋼管杭によって確実に保持されるから、沈み込みが防止される。また、下側に配置された内面リングによって、鋼管杭の当該範囲の剛性および強度を高めるから、鋼管杭を押し広げたり、歪にしたりする力(曲げモーメント)による破損が防止される。
(viii)さらに、鋼管支柱の内部の下端部に充填コンクリートが打設されるから、鋼管支柱の下端部の剛性が向上する。よって、鋼管支柱に曲げモーメントが作用した場合、周囲コンクリートの当該範囲の変形が抑えられ、破損が防止されるから、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る鋼管支柱の施工方法を示すフローチャート。
【図2】本発明の実施の形態1に係る鋼管支柱の施工方法を説明する断面図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る鋼管支柱の施工方法を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態2に係る鋼管支柱の施工方法を説明する断面図。
【図5】本発明の実施の形態3に係る鋼管支柱の施工方法を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態3に係る鋼管支柱の施工方法を説明する断面図。
【図7】本発明の実施の形態4に係る鋼管支柱の施工方法を示すフローチャート。
【図8】本発明の実施の形態4に係る鋼管支柱の施工方法を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1:底版コンクリート打設式]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る鋼管支柱の施工方法を説明するものであって、図1はフローチャート、図2は工程を追って説明する断面図である。なお、図2は模式的に示すものであって、一部は側面(断面にしていない)を描いている。
図1および図2において、鋼管支柱の施工方法100は、まず、鋼管杭1を地盤900に立設する工程(図1のS1、図2の(a))と、
鋼管杭1の内部に土砂2を投入する工程(図1のS2、図2の(b))と、
投入された土砂2の上に、上面31が予定された鉛直方向位置Aになるように底版コンクリート3を打設する工程(図1のS3、図2の(c))と、
底版コンクリート3が固化した後、底版コンクリート3の上面31に鋼管支柱4を載置する工程(図1のS4、図2の(d))と、
鋼管支柱4が予定された水平方向位置になるように、鋼管杭1の上端11と鋼管支柱4の側面との間に楔5を挿入する工程(図1のS5、図2の(e))と、
楔が挿入された状態(鋼管支柱の位置が決まった状態)で、鋼管杭1と鋼管支柱4の間に周囲コンクリート6を打設する工程(図1のS6、図2の(f))と、
鋼管支柱4の鋼管杭1から突出した所定範囲と鋼管杭1の上部の所定範囲とを包囲する根巻きコンクリート7を打設する工程(図1のS7、図2の(g))と、を有する。
【0016】
すなわち、投入された土砂2の上に底版コンクリート3を打設して、その上面31に鋼管支柱4を載置し、上面31が予定された鉛直方向位置Aになっているから、鋼管杭1の設置高さのバラツキに関わらず、鋼管支柱4の鉛直方向精度を、容易かつ正確に保証することができる。また、鋼管杭1の上端11と鋼管支柱4の側面との間に楔5を挿入して、鋼管支柱4が予定された水平方向位置になるように調整するから、鋼管杭1の水平方向の設置位置のバラツキに関わらず、鋼管支柱4の水平方向精度を、容易かつ正確に保証することができる。
【0017】
さらに、鋼管支柱4の下部の一部と鋼管杭1の上部の一部とを包囲する根巻きコンクリート7を打設するから、当該範囲の耐食性が向上する。なお、根巻きコンクリート7の打設を省略してもよい。
なお、以上は、鋼管杭1の内部に土砂2を投入しているが、本発明はこれに限定するものではなく、モルタルやソイルセメント等を打設してもよい。また、周囲コンクリート6の打設に先行して、根巻きコンクリート用の型枠を設けておき、周囲コンクリート6の打設に連続して根巻きコンクリート7を打設してもよい。
【0018】
また、鋼管支柱4に作用する鉛直方向の力(引き抜き力および押し込み力)は、鋼管杭1の内面および鋼管支柱4の外面にそれぞれ付着している周囲コンクリート6のせん断によって伝達されるものであるが、かかるせん断に加え、内面リング12と外面リング42とによって周囲コンクリート6の一部が挟まれているから、鋼管支柱4に作用した上方向の力(引き抜き力)は、両者によって挟まれている周囲コンクリート6の一部を圧縮して鋼管杭1に伝達される。すなわち、周囲コンクリート6の圧縮およびせん断によって鋼管支柱4が鋼管杭1に堅固に保持されることになるから、容易に抜け出すことがない。
また、内面リング12は鋼管杭1の上端11近くの剛性および強度を高めるから、鋼管杭1(特に、上端11の近く)を押し広げたり、歪にしたりする力(曲げモーメント)による鋼管杭1の破損が防止される。
【0019】
一方、外面リング42は鋼管支柱4の当該範囲の剛性および強度を高めると共に、周囲コンクリート6と鋼管支柱4の外面との付着をより確実にしている。
また、鋼管支柱4に作用した下方向の力(押し込み力)は、周囲コンクリート6を経由して鋼管杭1の内面に伝達されると共に、底版コンクリート3にも伝達され、底版コンクリート3を経由して鋼管杭1に伝達される。
なお、鋼管支柱4の下端41に円盤または円環を設置して、下端41の近くにおける剛性および強度を高めたり、鋼管支柱4の内面で下端41の近く(鋼管杭1に挿入される範囲)に、予めコンクリートを充填してから、地盤900に打設したりしてもよい。
【0020】
[実施の形態2:支持リブ打設後取り付け式]
図3および図4は本発明の実施の形態2に係る鋼管支柱の施工方法を説明するものであって、図3はフローチャート、図4は工程を追って説明する断面図である。なお、図4は模式的に示すものであって、一部は側面(断面にしていない)を描いている。また、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0021】
図3および図4において、鋼管支柱の施工方法200は、まず、鋼管杭1を地盤900に立設する工程(図3のS21、図4の(a))と、
鋼管杭1の内部に土砂2を投入する工程(図3のS22、図4の(b))と、
上面81が予定された鉛直方向位置Aになるように、支持リブ8aを鋼管杭1の内面に設置する工程(図3のS23、図4の(c))と、
支持リブ8aの上面81に鋼管支柱4を載置する工程(図3のS24、図4の(d))と、
鋼管支柱4が予定された水平方向位置になるように、鋼管杭1の上端11と鋼管支柱4の側面との間に楔5を挿入する工程(図3のS25、図4の(e))と、
楔が挿入された状態(鋼管支柱の位置が決まった状態)で、土砂2の上方に周囲コンクリート6を打設する工程(図3のS26、図4の(f))と、
鋼管支柱4の鋼管杭1から突出した所定範囲と鋼管杭1の上部の所定範囲とを包囲する根巻きコンクリート7を打設する工程(図3のS27、図4の(g))と、を有する。
【0022】
すなわち、鋼管杭1を地盤900に設置した後、予定された鉛直方向位置Aに支持リブ8aを設置するから、鋼管杭1の設置位置のバラツキに関わらず、鋼管支柱4を鉛直方向の正確な位置に設置することができる。なお、鋼管杭1に土砂2を投入した後に、支持リブ8aの設置をするから、特段の足場を設ける必要がない。
また、支持リブ8aは鋼管杭1の内面と周囲コンクリート6との付着をより確実にするから、鋼管支柱4に作用した下方向の力(押し込み力)は、周囲コンクリート6を経由して鋼管杭1の内面に伝達されると共に、支持リブ8aにも伝達され、支持リブ8aを経由して鋼管杭1に伝達される。
【0023】
なお、支持リブ8aの形状や数量は限定するものではない。
また、鋼管支柱4の下端41の形態は限定されるものではなく、開口しても、円盤等によって閉塞してもよい。また、鋼管支柱4の内部は中空(何もない)でも、中実(コンクリート等を打設)でもよく、下端41を開口させ(円盤によって閉塞しない)、周囲コンクリート6の打設の際、鋼管支柱4の内部にコンクリートが充填されるようにしてもよい。さらに、楔5や根巻きコンクリート7等の作用効果は実施の形態1に同じである。また、根巻きコンクリート7の打設を省略してもよい。
【0024】
[実施の形態3:支持リブ打設前取り付け式]
図5および図6は本発明の実施の形態3に係る鋼管支柱の施工方法を説明するものであって、図5はフローチャート、図6は工程を追って説明する断面図である。なお、図6は模式的に示すものであって、一部は側面(断面にしていない)を描いている。また、実施の形態2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図5および図6において、鋼管杭1の上端11から所定位置に支持リブ8bを設置する工程(図5のS31、図6の(a))と、
支持リブ8bが設置された上端11が上になるように鋼管杭1を地盤900に立設する工程(図5のS32、図6の(b))と、
鋼管杭1の内部に土砂2を投入する工程(図5のS33、図6の(c))と、
支持リブ8bにスペーサ9を載置して、スペーサ9の上面91を予定された鉛直方向位置Aにする工程(図5のS34、図6の(d))と、
スペーサ9の上面91に鋼管支柱4を載置する工程(図5のS35、図6の(e))と、
鋼管支柱4が予定された水平方向位置になるように、鋼管杭1の上端11と鋼管支柱4の側面との間に楔5を挿入する工程(図5のS36、図6の(f))と、
楔5が挿入された状態で、土砂2の上方に周囲コンクリート6を打設する工程(図5のS37、図2の(g))と、
鋼管支柱4の鋼管杭1から突出した所定範囲と鋼管杭1の上部の所定範囲とを包囲する根巻きコンクリート7を打設する工程(図5のS38、図6の(h))と、を有する。
【0025】
すなわち、鋼管支柱の施工方法300は、鋼管杭1を地盤900に設置する前に、鋼管杭1の内面に支持リブ8bを予め設置しておくものであって、地盤900に設置した後で、鋼管杭1に支持リブを設置する実施の形態2とはこの点が相違するから、支持リブ8bの設置作業が容易になる。例えば、鋼管支柱4を施工現場に搬入する前に、例えば、加工工場等において設置作業が容易になる姿勢で支持リブ8bを設置することができる。
なお、支持リブ8bの形状や数量は限定するものではない。さらに、上端11からの距離を相違させた2層(階)以上の多層(階)状に支持リブ8bを設置(固定)してもよい。このとき、鋼管杭1の設置の(高さ方向の)バラツキに応じて、予定された鉛直方向位置Aに近い支持リブ8bにスペーサ9を設置(載置)すれば、スペーサ9の高さ調整量を少なくすることができる。
【0026】
また、スペーサ9の形状や、高さ調整量の調整機構は限定するものではない。例えば、複数の支持リブ8b毎に設置される複数の駒(ブロック)、一対の支持リブ8bを跨いで載置される棒、3個の支持リブ8bを跨いで載置される円盤や円環4個の支持リブ8bを跨いで載置される十字状板や矩形板等であってもよい。また、高さ調整量の調整機構は、必要な厚さの駒(ブロック)を設置したり、スペーサ9に雌ネジを設け、これに螺合する進退自在なボルトを設置したりしてもよい。
鋼管支柱の施工方法300は以上であるから、支持リブ8bの設置作業を容易にすると共に、実施の形態2(鋼管支柱の施工方法200)と同様の効果が得られる。なお、楔5や根巻きコンクリート7等の作用効果は実施の形態1に同じであり、根巻きコンクリート7の打設を省略してもよい。
【0027】
[実施の形態4:支持リング打設前取り付け式]
図7および図8は本発明の実施の形態4に係る鋼管支柱の施工方法を説明するものであって、図7はフローチャート、図8は工程を追って説明する断面図である。なお、図8は模式的に示すものであって、一部は側面(断面にしていない)を描いている。また、実施の形態3と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図7および図8において、鋼管杭1の一方の上端11から所定位置に内面リング12a、12b及び支持リング8cを設置する工程(図7のS41、図8の(a))と、
支持リング8cが設置された上端11が上になるように鋼管杭1を地盤900に立設する工程(図7のS42、図8の(b))と、
鋼管杭1の内部に土砂2を投入する工程(図7のS43、図8の(c))と、
支持リング8cにスペーサ9を載置して、スペーサ9の上面91を予定された鉛直方向位置Aにする工程(図7のS44、図8の(d))と、
スペーサ9の上面91に鋼管支柱4を載置する工程(図7のS45、図8の(e))と、
鋼管支柱4が予定された水平方向位置になるように、鋼管杭1の上端11と鋼管支柱4の側面との間に楔5を挿入する工程(図7のS46、図8の(f))と、
楔5が挿入された状態で、土砂2の上方に周囲コンクリート6を打設する工程(図7のS47、図2の(g))と、
鋼管支柱4の鋼管杭1から突出した所定範囲と鋼管杭1の上部の所定範囲とを包囲する根巻きコンクリート7を打設する工程(図7のS48、図8の(h))と、を有する。
【0028】
すなわち、鋼管支柱の施工方法400は、実施の形態3(鋼管支柱の施工方法300)における支持リブ8bを支持リング8cに変更したものである。支持リング8cは鋼管杭1の内面に嵌った状態で固定されているから、鋼管杭1の剛性および強度を高めている。
また、鋼管支柱4の外面には下端41から所定の位置に外面リング42と、下端41に近い位置に外面リング43とが設置されている。そして、上側の内面リング12a、12bと上側の外面リング42とによって周囲コンクリート6の一部が挟まれ、下側の支持リング8cと下側の外面リング43とによって周囲コンクリート6の一部が挟まれている。
【0029】
したがって、鋼管支柱4に作用した上方向の力(引き抜き力)に対しては、上側においては実施の形態1〜3と同様の作用効果が得られると共に、鋼管支柱4に作用した下方向の力(押し込み力)に対しては、下側で挟まれている周囲コンクリート6の一部が圧縮され、下向きの力が鋼管杭1に伝達される。すなわち、周囲コンクリート6の圧縮およびせん断によって鋼管支柱4が鋼管杭1に堅固に保持されることになるから、容易に押し込まれることがない。
なお、鋼管支柱の施工方法400は、鋼管杭1の内面の上端の近くに内面リング12aが設置され、内面リング12aから鉛直方向で所定の間隔だけ下方に内面リング12bが設置されている。したがって、鋼管支柱4の下方側の外面リング43と鋼管杭1の下方側の内面リング12bとの間にも、周囲コンクリート6の一部は挟まれているから、これによっても、鋼管支柱4に作用した下方向の力(押し込み力)が鋼管杭1に伝達される。よって、該下方向の力(押し込み力)が鋼管杭1により確実に伝達される。また、鋼管支柱4を倒すような力(曲げモーメント)が作用しても、鋼管杭1は下方側の内面リング12bに補強されているから、より堅固になっている。
【0030】
なお、図8には、鋼管支柱4の下方側の外面リング43よりも、鋼管杭1の下方側の内面リング12bが下方に位置するものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、鋼管支柱4の外面リング42と外面リング43との間に、鋼管杭1の下方側の内面リング12bが位置してもよい。このとき、鋼管支柱4に作用した上方向の力(引き抜き力)が、外面リング43と内面リング12bとの間の周囲コンクリート6の一部によって鋼管杭1に伝達されるから、該上方向の力(引き抜き力)が鋼管杭1により確実に伝達される。
さらに、前記効果を必要としない場合には、下方側の内面リング12bの設置を省略してもよい。また、実施の形態1〜3に説明した鋼管支柱の施工方法100〜300において、鋼管支柱の施工方法400に準じて、鋼管杭1の内面に、内面リング12bを設置してもよい。
なお、外面リング43の設置を省略しても、実施の形態3(鋼管支柱の施工方法300)と同じ作用効果が得られる。また、楔5や根巻きコンクリート7等の作用効果は実施の形態1に同じであり、根巻きコンクリート7の打設を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、施工が容易であって、正確な位置(鉛直方向位置および水平方向位置)に鋼管支柱を設置することができるから、鋼管に限定されることなく、各種支柱の施工方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 鋼管杭
2 土砂
3 底版コンクリート
4 鋼管支柱
5 楔
6 周囲コンクリート
7 根巻きコンクリート
8a 支持リブ
8b 支持リブ
8c 支持リング
9 スペーサ
11 上端
12 内面リング
12a 内面リング
12b 内面リング
31 上面
41 下端
42 外面リング
43 外面リング
81 上面
91 上面
100 施工方法(実施の形態1)
200 施工方法(実施の形態2)
300 施工方法(実施の形態3)
400 施工方法(実施の形態4)
A 鉛直方向位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭を地盤に立設する工程と、
該鋼管杭の内部に土砂を投入する工程と、
前記投入された土砂の上に、上面が予定された鉛直方向位置になるように底版コンクリートを打設する工程と、
前記底版コンクリートが固化した後、前記底版コンクリートの上面に鋼管支柱を載置する工程と、
前記鋼管支柱が予定された水平方向位置になるように、前記鋼管杭の上端縁と前記鋼管支柱の側面との間に楔を挿入する工程と、
前記楔が挿入された状態で、前記鋼管杭と前記鋼管支柱の間に周囲コンクリートを打設する工程と、
を有することを特徴とする鋼管支柱の施工方法。
【請求項2】
鋼管杭を地盤に立設する工程と、
該鋼管杭の内部に土砂を投入する工程と、
前記鋼管杭の予定された鉛直方向位置に、内面に突出する支持リブを設置する工程と、
前記支持リブに鋼管支柱を載置する工程と、
前記鋼管支柱が予定された水平方向位置になるように、前記鋼管杭の上端縁と前記鋼管支柱の側面との間に楔を挿入する工程と、
前記楔が挿入された状態で、前記鋼管杭と前記鋼管支柱の間に周囲コンクリートを打設する工程と、
を有することを特徴とする鋼管支柱の施工方法。
【請求項3】
鋼管杭の一方の端部から所定位置に支持リブを設置する工程と、
前記支持リブが設置された端部が上端になるように前記鋼管杭を地盤に立設する工程と、
該鋼管杭の内部に土砂を投入する工程と、
前記支持リブにスペーサを載置して、該スペーサの上面を予定された鉛直方向位置にする工程と、
前記スペーサの上面に鋼管支柱を載置する工程と、
前記鋼管支柱が予定された水平方向位置になるように、前記鋼管杭の上端縁と前記鋼管支柱の側面との間に楔を挿入する工程と、
前記楔が挿入された状態で、前記鋼管杭と前記鋼管支柱の間に周囲コンクリートを打設する工程と、
を有することを特徴とする鋼管支柱の施工方法。
【請求項4】
前記支持リブが、円周方向で等角配置された複数の板材または棒材、あるいは、円環状部材または円盤状部材であることを特徴とする請求項2または3記載の鋼管支柱の施工方法。
【請求項5】
前記周囲コンクリートを打設する工程の後、前記鋼管支柱の前記鋼管杭から突出した所定範囲と前記鋼管杭の上部の所定範囲とを包囲する根巻きコンクリートを打設する工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の鋼管支柱の施工方法。
【請求項6】
前記鋼管杭の内面の上端の近くに円環状の内面リングが設置され、
前記鋼管支柱の外面の下端から所定位置に円環状の外面リングが設置され、
前記内面リングが前記外面リングよりも鉛直方向の上に位置し、両者によって前記周囲コンクリートの一部が挟まれることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の鋼管支柱の施工方法。
【請求項7】
前記鋼管杭の内面の上端の近くに、鉛直方向で所定の間隔を空けて一対の円環状の内面リングが設置され、
前記鋼管支柱の外面の下端から所定位置に1または2以上の円環状の外面リングが設置され、
前記外面リングが、鉛直方向で前記一対の内面リングの間に位置し、
前記一対の内面リングの鉛直方向の上側に位置する内面リングと前記外面リングとによって前記周囲コンクリートの一部が挟まれ、
前記一対の内面リングの鉛直方向の下側に位置する内面リングと前記外面リングとによって前記周囲コンクリートの一部が挟まれることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の鋼管支柱の施工方法。
【請求項8】
前記周囲コンクリートを打設する工程において、前記鋼管支柱の内部の下端から所定範囲にコンクリートが充填されることを特徴とする請求項2乃至7の何れかに記載の鋼管支柱の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−52383(P2012−52383A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197012(P2010−197012)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(591205536)JFEシビル株式会社 (39)
【Fターム(参考)】