説明

錠装置

【課題】錠装置を格納手段に対して容易に後付けできる技術を提供すること。
【解決手段】扉の外面側に取付可能な装置本体部22と、装置本体部22に取付けられ、取っ手部を外部に露出及び遮蔽可能なように開閉自在に覆う遮蔽部材30と、施錠動作に応じて遮蔽部材30を遮蔽状態にロックし、解錠動作に応じて前記ロックを解除する遮蔽ロック部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャビネット等の格納手段に施解錠機能を追加するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイル等の格納物を格納するためのキャビネットとして、開閉自在な扉を備えたものがある。このキャビネットの扉には、該扉を閉状態に維持するためのラッチ機構が組込まれている。このラッチ機構は、例えば、扉の取っ手に組込まれた操作レバーの操作に連動してロック状態又はロック解除状態になるように構成されている。
【0003】
ところで、上記のようなキャビネットに対して、セキュリティ性向上のため、施解錠機能の追加が必要とされることがある。
【0004】
ここで、引出しに対して後付可能な施錠装置として、特許文献1のように、格納手段の本体にラッチ機構を取付け、そのラッチ機構のロック部材を引出しに係合させることで、引出しの開放を防止するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−303828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、格納手段の本体と引出しとの相対的な位置関係を考慮しつつ、ラッチ機構を本体に後付けする必要があるので、その取付けが困難である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、錠装置を格納手段に対して容易に後付けできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、収納本体部と、前記収納本体部に対して開閉自在とされた開閉部材と、前記開閉部材を閉状態に保つようにロックするラッチ機構と、前記開閉部材の外面側に設けられ、前記ラッチ機構をロック及びロック解除動作させるための操作部とを備えた格納手段に取付けられる錠装置であって、前記開閉部材の外面側に取付可能な装置本体部と、前記装置本体部に取付けられ、前記操作部を外部に露出及び遮蔽可能なように開閉自在に覆う遮蔽部材と、施錠動作に応じて前記遮蔽部材を遮蔽状態にロックし、解錠動作に応じて前記ロックを解除する遮蔽ロック手段と、を備えたものである。
【0009】
この場合に、前記遮蔽ロック手段を施錠及び解錠するためのキーをさらに備え、前記キーは、利用可否情報を記憶した記憶部と、前記利用可否情報に基づいて認証に関する動作を行う制御部と、電源とを含み、前記遮蔽ロック手段は、前記キーをセット可能なセット部を有し、前記セット部に前記キーがセットされることで前記キーから電力供給を受けて動作すると共に、前記キーとの間で通信を行って認証動作を行い、利用可と判断された場合に前記遮蔽部材のロックを解除するものであってもよい。
【0010】
さらに、前記遮蔽ロック手段は、前記遮蔽部材の開放状態で、前記キーが前記セット部から抜けるのを防止する第1キー抜け防止手段をさらに備えていてもよい。
【0011】
また、前記開閉部材が開かれた状態で、前記キーが前記セット部から抜けるのを防止する第2キー抜け防止手段をさらに備えた構成であってもよい。
【0012】
また、前記遮蔽部材の開閉に関わらず前記操作部を外部に露出可能にするための緊急解除手段をさらに備えていてもよい。
【0013】
また、前記開閉部材の開閉状態を検知する開閉検知センサと、前記開閉検知センサの出力に基づいて前記開閉部材が開かれた時間が予め設定された所定時間を越えたと判断されたときに報知手段を通じて警告を発する警告制御手段とをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明の錠装置によると、開閉部材の外面側に取付可能な装置本体部と、前記装置本体部に取付けられ、前記操作部を外部に露出及び遮蔽可能なように開閉自在に覆う遮蔽部材と、施錠動作に応じて前記遮蔽部材を遮蔽状態にロックし、解錠動作に応じて前記ロックを解除する遮蔽ロック手段とを備えているため、本錠装置を開閉部材の外面側に取付けることで、キー等を用いた施錠又は解錠動作に応じて、操作部を外部に露出させる状態又は遮蔽可能な状態にすることができる。このため、ラッチ機構及び操作部を有する格納手段に対して本錠装置を容易に後付けして、施錠機能を追加することができる。
【0015】
また、この場合に、前記遮蔽ロック手段を施錠及び解錠するためのキーをさらに備え、前記キーは、利用可否情報を記憶した記憶部と、前記利用可否情報に基づいて認証に関する動作を行う制御部と、電源とを含み、前記遮蔽ロック手段は、前記キーをセット可能なセット部を有し、前記セット部に前記キーがセットされることで前記キーから電力供給を受けて動作すると共に、前記キーとの間で通信を行って認証動作を行い、利用可と判断された場合に前記遮蔽部材のロックを解除するものであると、錠装置自体には、電源を組込むことなく、電子的な錠装置を組込むことができる。従って、より錠装置を容易に組込むことができる。
【0016】
さらに、前記遮蔽ロック手段は、前記遮蔽部材の開放状態で、前記キーが前記セット部から抜けるのを防止する第1キー抜け防止手段をさらに備えていると、遮蔽部材が開放された状態ではキーが抜けなくなるので、遮蔽部材が開放されたままでキーが抜かれて放置されるといった事態を防止できる。
【0017】
また、前記開閉部材が開かれた状態で、前記キーが前記セット部から抜けるのを防止する第2キー抜け防止手段をさらに備えていると、開閉部材が開いたままではキーが抜けないため、開閉部材が開いたままキーが抜かれて放置されるといった事態を防止できる。
【0018】
さらに、前記遮蔽部材の開閉に関わらず前記操作部を外部に露出可能にするための緊急解除手段をさらに備えていると、故障時等にも容易に対処できる。
【0019】
また、開閉部材の開閉状態を検知する開閉検知センサと、前記開閉検知センサの出力に基づいて前記開閉部材が開かれた時間が予め設定された所定時間を越えたと判断されたときに報知手段を通じて警告を発する警告制御手段とをさらに備えていると、開閉部材が開放されたままでの長期間放置を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】錠装置が適用される格納棚を示す斜視図である。
【図2】錠装置及び電子キーを示す斜視図である。
【図3】錠装置に電子キーを差込んだ状態を示す斜視図である。
【図4】錠装置の要部分解斜視図である。
【図5】係止板が遮蔽部材の係止凹部に係止している状態を示す図である。
【図6】係止板が遮蔽部材の長溝内に位置する状態を示す図である。
【図7】図7(a)はバネ部材の係止部が係止板に付勢された状態を示す図であり、図7(b)はバネ部材の係止部が係止板に係合した状態を示す図である。
【図8】錠装置と電子キーとの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】第1変形例に係る錠装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】第2変形例に係る錠装置を示す斜視図である。
【図11】第2変形例に係る錠装置を示す底面図である。
【図12】第3変形例に係る錠装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
{実施形態}
以下、この発明の実施形態に係る錠装置について説明する。
【0022】
図1は錠装置が適用される格納手段としての格納棚を示す斜視図である。この格納棚10は、収納本体部11と、この収納本体部11に対して開閉自在とされた開閉部材としての扉12a,12b及び引出し部14とを備えている。より具体的には、収納本体部11の上半部に収納スペース11aが形成されると共に、収納本体部11の下半部に3つの収納スペース11b,11c,11dが形成されている。収納スペース11aの開口部に、両開きタイプの扉12a,12bが開閉自在に取付けられている。また、各収納スペース11b,11c,11dには、引出し部14が開閉自在、換言すれば、引出し及び押込自在に設けられている。
【0023】
扉12a,12bの合せ目部分は、重なり合って配設されており、一方の扉12aを閉じた状態では、他方の扉12bを開くことができない構成となっている。また、一方の扉12aには、操作部としての取っ手部13aと、ラッチ機構13bとが取付けられている。ラッチ機構13bは、扉12aに組込まれ、扉12aを閉状態に保つようにロックする機構である。このような機構としては、爪部を収納本体部11側に係脱自在に係合させるような周知の機構等を採用できる。取っ手部13aは、扉12aの外面側に姿勢変更自在に取付けられている。この取っ手部13aの姿勢変更に連動して、上記ラッチ機構13bがロック及びロック解除動作を行うようになっている。
【0024】
そして、扉12a,12bを閉じることで、上記ラッチ機構13bが収納本体部11にロックして扉12a,12bが閉じた状態に保たれる。この状態で、取っ手部13aを引張ることで、上記ラッチ機構13bがロック解除状態となり、扉12aを開くことができるようになる。また、扉12aを開くことで、扉12bも開くことができるようになる。
【0025】
また、引出し部14は、上方に開口する筺状に形成されており、その前面に取っ手部15aと、操作部としての操作レバー15bと、ラッチ機構15cとが取付けられている。
【0026】
ラッチ機構15cは、引出し部14の前面側の部分に組込まれ、引出し部14を閉じた状態に保つようにロックする機構である。このような機構としては、爪部を収納本体部11側に係脱自在に係合させるようにした周知の機構等を採用できる。取っ手部15aは、引出し部14を引出し容易にするために設けられた掴み用の部材であり、その内側に上記操作レバー15bが姿勢変更自在に取付けられている。この操作レバー15bの姿勢変更に連動して、上記ラッチ機構15cがロック及びロック解除動作を行うようになっている。
【0027】
そして、引出し部14を閉じることで、上記ラッチ機構15cが収納本体部11にロックして該引出し部14が閉じた状態に保たれる。この状態で、上記操作レバー15bを掴んで操作することで、ラッチ機構15cが解除状態となり、取っ手部15aを掴んで引出し部14を引出せるようになる。
【0028】
なお、格納手段は、上記構成に限られない。格納手段の全体が扉にて開閉される構成であってもよいし、また、複数の引出し部のみを有する構成であってもよい。
【0029】
本錠装置20は、上記のような格納棚10における扉12a,引出し部14の外面側に取付けられる。より具体的には、図1の2点鎖線で示すように、錠装置20は、扉12aにおける取っ手部13aを覆う位置と、各引出し部14における取っ手部15a及び操作レバー15bを覆う各位置に取付けられる。
【0030】
図2は錠装置及び電子キーを示す斜視図であり、図3は錠装置に電子キーを差込んだ状態を示す斜視図であり、図4は錠装置の要部分解斜視図である。
【0031】
この錠装置20は、装置本体部22と、遮蔽部材30と、遮蔽ロック部40とを備えている。
【0032】
装置本体部22は、扉12a及び引出し部14の外面側に取付固定される部材である。取付は、例えば、両面テープやねじ止固定等により行われる。
【0033】
より具体的には、装置本体部22は、ベース板23上に、遮蔽部材30を開閉自在に支持する支持フレーム24と、カバー25とが取付けられてなる。装置本体部22におけるベース板23及び支持フレーム24には窓部25Wが形成されており、この窓部25Wを通じて操作部としての取っ手部13a又は操作レバー15bが外方に露出する構成となっている。
【0034】
遮蔽部材30は、上記装置本体部22に取付けられ、操作部としての取っ手部13a又は操作レバー15bを外部に露出及び遮蔽可能なように開閉自在に覆うように構成されている。
【0035】
より具体的には、遮蔽部材30は、上記窓部25Wよりも大きな広がりを持つ略長方形板状の遮蔽本体板部30aと、この遮蔽本体板部30aの長手方向中間部より延設された延設板部30bとを有し、略T字板状の全体形状に形成されている。また、延設板部30bには、その長手方向(スライド移動方向)に沿って延びる長溝30cが形成されている。長溝30cの先端部側(延設板部30bに対して遮蔽本体板部30aの反対側の端部)には、後述する係止板46が係止可能な係止凹部30dが形成されている。
【0036】
この遮蔽部材30は、上記装置本体部22におけるベース板23と支持フレーム24との間で、所定の遮蔽位置と所定の開放位置間でスライド自在に保持されている。遮蔽部材30が遮蔽位置に配設された状態で、遮蔽本体板部30aが上記窓部25Wを閉塞する位置に配設される。この状態から遮蔽部材30をカバー25側の開放位置へスライド移動させると、遮蔽本体板部30aが窓部25Wの横側方位置に退避し、窓部25Wが開放された状態になる。なお、この遮蔽本体板部30aのスライド移動に連動して、延設板部30bがカバー25内を進出退避移動する。
【0037】
遮蔽ロック部40は、所定の施錠動作に応じて上記遮蔽部材30を遮蔽状態にロックし、また、解錠動作に応じて前記ロックを解除するように構成されている。
【0038】
より具体的には、遮蔽ロック部40は、電子キー60をセット可能なセット部42と、ロック機構44と、錠側制御基板53とを備えている。
【0039】
セット部42は、電子キー60を差込み可能な凹形状を有しており、このセット部42内に電子キー60が一定姿勢で保持される。セット部42には、電子キー60からの電力供給を受ける受電端子42aと、電子キー60との間で通信を行うための通信部42bとが配設されている。受電端子42aは、錠側制御基板53及び後述するソレノイド45に電気的に接続されている。通信部42bは、錠側制御基板53に接続されている。
【0040】
錠側制御基板53には、マイコンチップ等が実装されており、錠側制御部54として機能する電子回路が組込まれている。錠側制御部54は、電子キー60からの電力供給を受けて動作し、該電子キー60との間で通信を行って後述する所定の処理を実行する。
【0041】
ロック機構44は、錠側制御部54の制御に応じて遮蔽部材30をロック又はロック解除するように構成されている。
【0042】
より具体的には、ロック機構44は、ソレノイド45と、ソレノイド45に対して接近離隔移動自在に支持された係止板46と、電子キー60の挿抜に連動して移動する可動板47及び押え付けバネ部材48とを有し、上記カバー25内に配設されている。
【0043】
ソレノイド45は、錠側制御部54の制御下、電子キー60からの電力供給を受けて動作する。また、係止板46は、磁石に吸着する磁性材料によって形成された部材であり、スライド支持手段である支持ロッド46aによってソレノイド45に近い非係止位置とソレノイド45から遠い係止位置との間で接近離隔移動自在に支持されている。また、係止板46は、コイルバネ等の付勢手段46bによってソレノイド45から離反する方向に付勢されている。
【0044】
そして、通常状態では、図5に示すように、付勢手段46bの付勢力によって、係止板46は係止位置に配設され、遮蔽部材30に形成された係止凹部30dに係止している。これにより、遮蔽部材30が開放不能な状態となっている。
【0045】
この状態で、ソレノイド45が通電により励磁状態になることで、図6に示すように、係止板46が非係止位置に引寄せられる。これにより、長溝30c内で係止板46を移動させるようにして、遮蔽部材30をスライド移動させて窓部25Wを開放させることができる。
【0046】
また、可動板47は、電子キー60の挿脱に伴いスライド移動自在に配設されいてる。すなわち、電子キー60を挿入すると、その電子キー60の一部分60aと可動板47の一側片47aとが摺接することにより、可動板47は、バネ等の付勢手段47bの付勢力に抗してスライド移動する。また、可動板47にバネ部材48が取付けられている。バネ部材48の先端部は、略L字状に2箇所屈曲された仮止部48aに形成されている。
【0047】
そして、電子キー60を挿入すると、これに連動して可動板47及びバネ部材48が移動し、図7(a)に示すように、仮止部48aの屈曲部分が係止位置にある係止板46の側部に付勢される。この状態で、ソレノイド45の励磁駆動により、係止板46が非係止位置に移動すると、図7(b)に示すように、仮止部48aの屈曲部分が係止板46に係合するようになる。この後、ソレノイド45が非励磁状態になっても、仮止部48aと係止板46との係合により、係止板46は非係止位置に保たれる。従って、ソレノイド45による非継続的な一度の励磁動作により、係止板46が非係止位置に維持され、遮蔽部材30を開放可能な状態が維持される。
【0048】
また、この状態から電子キー60を抜くと、付勢手段47bの付勢力によって可動板47及びバネ部材48が上記とは逆方向に移動する。これにより、仮止部48aの屈曲部分と係止板46との係合が解除され、係止板46が係止位置に移動する。これにより、遮蔽部材30のロック状態に復帰することになる。
【0049】
また、この錠装置20には、遮蔽部材30の開放状態で、電子キー60がセット部42から抜けるのを防止する第1キー抜け防止手段として、キー抜け防止板50が設けられている。キー抜け防止板50は、長尺板形状を有しており、その一端部が揺動自在に支持されている。また、キー抜け防止板50の他端部には、電子キー60に形成された係止凹部60bに係脱自在な抜止突部51aと、遮蔽部材30の延設板部30bの先端縁部と摺接自在な摺接突部51bとが形成されている。さらに、キー抜け防止板50は、ねじりコイルバネ等の付勢手段50aによって、上記抜止突部51aを電子キー60の係止凹部60bから離間させる方向に付勢されている。
【0050】
そして、解錠動作として電子キー60を差込んだ状態で、窓部25Wを開放させるべく遮蔽部材30をスライド移動させると、延設板部30bの先端縁部が摺接突部51bに摺接する。これにより、キー抜け防止板50が揺動して、抜止突部51aが電子キー60の係止凹部60bに係合し、電子キー60が抜けない状態となる。
【0051】
また、上記状態から窓部25Wを閉じるべく遮蔽部材30をスライド移動させると、延設板部30bと摺接突部51bとの摺接が解除され、付勢手段50aの付勢力によって、抜止突部51aが電子キー60の係止凹部60bから離間し、それらの係合が解除される。これにより、施錠動作としてセット部42から電子キー60を抜くことができるようになる。
【0052】
図8は錠装置と電子キーとの電気的構成を示すブロック図である。
【0053】
すなわち、電子キー60は、電子的な認証によって錠装置20を施錠及び解錠するためのものであり、キー側制御部62と記憶部63と電源64とを有している。なお、この電子キー60は、利用者に応じた利用可否情報を書込んだ状態で、格納棚10の利用者に対して発行される。
【0054】
キー側制御部62は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータにより構成され、その演算動作はすべて予め格納されたソフトウェアプログラムによって実行される要素である。このキー側制御部62には、利用可否情報を記憶した記憶部63が組込まれており、電子キー60が上記セット部42にセットされると、通信部65を介して錠側制御部54との間で通信を行って、認証に関する所定の処理を実行する。なお、記憶部63は、キー側制御部62とは別構成とされていてもよい。
【0055】
電源64は、一般的な電池、好ましくは、充電池であり、キー側制御部62等の電源として機能する。また、電子キー60がセット部42にセットされた状態では、給電端子66及び受電端子42aを介して錠装置20側に給電を行い、錠側制御部54及びソレノイド45の電源として機能する。
【0056】
錠装置20は、錠側制御部54と記憶部55とを有している。錠側制御部54は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータにより構成され、その演算動作はすべて予め格納されたソフトウェアプログラムによって実行される要素である。この錠側制御部54には、上記認証動作に必要な所定の情報を記憶した記憶部55が組込まれている。そして、電子キー60が上記セット部42にセットされると、上記電子キー60との間で通信を行って、認証に関する所定の処理を実行する。そして、認証結果が利用可である場合に、スイッチ部56を一時的にオンにしてソレノイド45に通電可能な状態にする。なお、記憶部55は、錠側制御部54とは別構成とされていてもよい。
【0057】
そして、電子キー60をセット部42にセットすると、給電端子66及び受電端子42aを介して、電源64から錠側制御部54に給電がなされる。そして、通信部42b,65を介して、電子キー60のキー側制御部62と錠側制御部54との間で通信がなされる。ここでは、通信は、電波通信又は光通信等により行われ、好ましくは、FeliCa等に適用される無線通信により行われる。そして、キー側制御部62と錠側制御部54との間で通信を行うことで、該当する格納棚10での使用可か否かに関して所定の認証動作がなされる。
【0058】
ここでの認証処理としては周知の種々の方式を採用できるが、そのうちの一つを例示すると次のような処理である。すなわち、キー側制御部62の記憶部63には、複数の格納棚10(或は対象格納場所)の識別符号と各格納棚10の利用可否とを対応づけたテーブルが記憶されている。また、錠側制御部54には、格納棚10(或は対象格納場所)の識別符号が記憶されている。そして、電子キー60がセット部42にセットされることで、錠側制御部54からキー側制御部62に、格納棚10の識別符号が与えられる。これにより、キー側制御部62は、前記テーブルを参照して格納棚10の利用可否を判断する。利用可と判断された場合に、利用許可指令を錠側制御部54に与える。この指令を受けて、錠側制御部54は、スイッチ部56をオンにして、ソレノイド45を励磁させる。これにより、遮蔽部材30が開放可能な状態となる。
【0059】
なお、上記認証処理の他、例えば、キー側制御部62から錠側制御部に利用可否情報を与え、錠側制御部54で利用可否を判断するようにしてもよい。要するに、電子キー60側の記憶部63に記憶された利用可否情報に基づいて、キー側制御部62と錠側制御部54との通信を通じて利用可否を決定する種々の認証動作を採用することができる。
【0060】
このように構成された錠装置20では、次のようにして利用がなされる。すなわち、利用者が発行された電子キー60を持ち、この電子キー60を、利用を希望する格納棚10(或は格納場所)に取付けられた錠装置20のセット部42にセットする。すると、キー側制御部62と錠側制御部54との相互通信により認証動作が行われ、利用可と判断された場合には、ソレノイド45が励磁され、遮蔽部材30が開放可能な状態となる。この状態で、手で遮蔽部材30を開放させると、操作部としての取っ手部13a又は操作レバー15bが外部に露出し、それらを掴んで扉12aを開いたり、引出し部14を引出したりして利用することができるようになる。なお、この状態では、キー抜け防止板50の抜止突部51aと電子キー60の係止凹部60bとの係合により、電子キー60の抜け防止が図られている。
【0061】
また、格納棚10の利用終了後、手で遮蔽部材30を閉じると、キー抜け防止板50の抜止突部51aと電子キー60の係止凹部60bとの係合が解除される。これにより、電子キー60をセット部42から抜けるようになる。電子キー60をセット部42から抜くと、係止板46が遮蔽部材30の係止凹部30dに係止するようになり、遮蔽部材30が開放不能な状態に復帰する。
【0062】
以上のように構成された錠装置20によると、開閉部材としての扉12a及び引出し部14の外面側に取付可能な装置本体部22と、装置本体部22に取付けられ、操作部としての取っ手部13a又は操作レバー15bを外部に露出及び遮蔽可能なように開閉自在に覆う遮蔽部材30と、施錠動作に応じて遮蔽部材30を遮蔽状態にロックし、解錠動作に応じて前記ロックを解除する遮蔽ロック部40とを備えているため、本錠装置20を扉12a及び引出し部14の外面側に取付けることで、電子キー60を用いた施錠又は解錠動作に応じて、遮蔽部材を開閉可能な状態又は遮蔽した状態に維持する状態にすることができる。このため、格納棚10に対して本錠装置20を容易に後付けして、施錠機能を追加することができる。
【0063】
また、遮蔽ロック部40を施錠及び解錠するための電子キー60をさらに備え、電子キー60は、利用可否情報を記憶した記憶部63と、利用可否情報に基づいて認証動作を行うキー側制御部62と、電源64とを含み、遮蔽ロック部40は、電子キー60をセット可能なセット部42を有し、このセット部42に電子キー60がセットされることで電子キー60から電力供給を受けて動作すると共に、電子キー60との間で通信を行って認証動作を行い、利用可である場合に遮蔽部材30のロックを解除するものであると、錠装置20自体には電源64を組込むことなく、電子的な錠装置20を組込むことができる。従って、電源配線等を敷設することなく、錠装置20を容易に格納棚10に組込むことができる。
【0064】
なお、本実施形態では、遮蔽ロック部40が電子キー60を用いて施解錠を行う場合について説明したが、その他、遮蔽ロック部40は、機械式のシリンダ錠機構や、暗証番号式の錠機構を有し、それらに対する施錠動作又は解錠動作に応じて遮蔽部材30をロックし又はロック解除する構成であってもよい。
【0065】
さらに、本錠装置20は、遮蔽部材30の開放状態で、電子キー60がセット部42から抜けるのを防止するキー抜け防止板50を備えているため、遮蔽部材30が開放されたままの状態では電子キー60を抜くことができなくなる。このため、遮蔽部材30が開放されたままの状態で、電子キー60が抜かれて放置されるといった事態を有効に防止できる。
【0066】
なお、このような錠装置20の使用形態としては、既に所定の設置場所に設置された格納棚10に対して、その設置場所で本錠装置20を後付けする態様が考えられる。あるいは、予め錠装置20を組込まない錠装置20を製造しておき、ユーザーからの要望に応じて、錠装置20を組込まない格納棚10を所定の設置場所に据付けたり、或は、錠装置20を組込んだ格納棚10を所定の設置場所に据付ける態様等が考えられる。これにより、ユーザの要望等に容易かつ柔軟に対応可能というメリットがある。
【0067】
また、本発明は、錠機能を持たない格納棚10に追加する例に限られない。例えば、シリンダ錠付の格納棚に対して、例えば、電子認証タイプのキーやより安全性の高い錠など別の錠装置20を追加したい場合にも、本発明は適用可能である。この場合には、遮蔽部材30は、操作部として既存の鍵穴を開閉自在に覆う形態であってもよい。つまり、操作部は、扉や引出し等のロック機構をロック又はロック解除するための諸操作要素を含む。さらに、上記取っ手部13aや操作レバー15bとは別の位置に、ラッチ機構13b,15cをロック状態に維持する錠装置等が組込まれた構成においては、それらの取っ手部13aや操作レバー15b、或は、錠装置のうちのいずれに取付けるようにした構成であってもよい。
【0068】
{変形例}
図9は第1変形例を示すブロック図である。この第1変形例では、上記錠装置20に、開閉部材としての開閉部材としての扉12a,12b及び引出し部14が開かれた状態で、電子キー60がセット部42から抜けるのを防止する構成、及び、それらが開かれた状態で所定時間経過すると警告を発する構成を付加した例を説明する。
【0069】
すなわち、この第1変形例に係る錠装置20Bでは、開閉検知センサ110、報知部112及びキー抜けロック機構114をさらに備えている。
【0070】
開閉検知センサ110は、扉12a,12bや引出し部14の開閉状態を検出するセンサであり、光センサやマイクロスイッチ等により構成されている。この開閉検知センサ110の検知出力は、錠側制御部54に与えられる。
【0071】
報知部112は、発光ダイオード等の発光手段やスピーカ、ブザー等の発音体により構成されている。そして、錠側制御部54の駆動制御に応じて発光や発音等の報知動作を行う。
【0072】
キー抜けロック機構114は、爪部等の係合片を、ソレノイド等のアクチュエータの駆動によって、電子キー60に形成した所定の係合部位(凹部等)に係脱等させることによって、電子キー60をロック又はロック解除可能に構成したものである。このキー抜けロック機構114の動作も、錠側制御部54によって制御される。
【0073】
そして、錠側制御部54は、開閉検知センサ110からの検知出力に基づいて、扉12a,12b又は引出し部14が開かれた状態であると判断すると、キー抜けロック機構114をロック状態にして電子キー60の抜けを防止する。一方、錠側制御部54は、それらが閉じられた状態であると判断すると、キー抜けロック機構114をロック解除状態にして電子キー60を抜けるようにする。
【0074】
つまり、ここでは、開閉検知センサ110,錠側制御部54及びキー抜けロック機構114とが、第2キー抜け防止手段として機能している。もっとも、上記第1キー抜け防止手段としてのキー抜け防止板50と同様に、扉12a,12bや引出し部14の開閉状態に機械的に連動して電子キー60をロック又はロック解除する構成であってもよい。
【0075】
また、錠側制御部54は、開閉検知センサ110からの検知出力に基づいて、開閉部材としての扉12a,12bや引出し部14が開かれたままとなっている時間が予め設定された時間を越えたと判断されたときに、上記報知部112を通じて警告を発する。つまり、ここでは、錠側制御部54が警告制御手段として機能している。なお、扉12a,12bや引出し部14が開かれたままとなっている時間が予め設定された時間と同じになった時には、警告を発する処理又は発しない処理のいずれを行ってもよい。
【0076】
この第1変形例によると、扉12a,12bや引出し部14が開かれたままでは電子キー60が抜けないようになっているため、それらが開かれたまま遮蔽部材30のみが閉じられて電子キー60が抜かれてしまうといった事態を防止できる。
【0077】
また、扉12a,12bや引出し部14が開かれたまま所定時間を越えたと判断されたときに、警告を発するようにしているため、それらが開かれたまま長時間放置されるといった事態を有効に防止できる。
【0078】
図10は第2変形例を示す斜視図であり、図11は第2変形例を示す底面図である。
【0079】
この第2変形例に係る錠装置20Cでは、装置本体部22の底面に、2つの溝部210を形成している。各溝部210は、装置本体部22の両側部に開口している。
【0080】
この装置本体部22の裏面(図11の車線部分参照)は、両面テープや接着剤等により、扉12a,12bや引出し部14の外面に接着されている。
【0081】
そして、装置本体部22が扉12a,12bや引出し部14の外面に接着された状態で、マイナスドライバーの刃先やその他棒状部材の工具を、装置本体部22の両側部から溝部210内に差込んで、その基端側を持上げる。すると、テコの原理にて、装置本体部22が扉12a,12bや引出し部14の外面からはがされる。
【0082】
なお、溝部210の開口部には、錠装置20Bの不正な取外しを防止するため、図10の2点鎖線に示すように、シール等による封印212を施しておくことが好ましい。
【0083】
図12は第3変形例を示す平面図である。
【0084】
この第3変形例に係る錠装置20Dでは、装置本体部22の四隅近傍に、取付具220が取付けられている。この取付具220は、例えば、シリンダー機構を有し、鍵を鍵穴に差込んで回すことで、シリンダ錠の前後で装置本体部22と扉12a,12b又は引出し部14とを挟持状に保持する構成となっている。
【0085】
これらの第2及び第3変形例では、上記工具や鍵等を用いて、装置本体部22を扉12a,12b又は引出し部14から取外すと、操作部としての取っ手部13a又は操作レバー15bが外方に露出する。このため、仮に、錠装置20C,20Dに故障等の不具合が生じて遮蔽部材30が開かない状態になったとしても、装置本体部22を強制的に取外して容易に対処して格納棚10を利用できる。
【0086】
なお、第2変形例では、溝部210が緊急解除手段として機能し、第3変形例では、取付具220が緊急解除手段として機能している。
【符号の説明】
【0087】
10 格納棚
12a,12b 扉
13a 取っ手部
13b ラッチ機構
14 引出し部
15b 操作レバー
15c ラッチ機構
20,20B,20C,20D 錠装置
22 装置本体部
25W 窓部
30 遮蔽部材
40 遮蔽ロック部
42 セット部
44 ロック機構
45 ソレノイド
50 キー抜け防止板
54 錠側制御部
55 記憶部
60 電子キー
60b 係止凹部
62 キー側制御部
63 記憶部
64 電源
110 開閉検知センサ
112 報知部
114 キー抜けロック機構
210 溝部
220 取付具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納本体部と、前記収納本体部に対して開閉自在とされた開閉部材と、前記開閉部材を閉状態に保つようにロックするラッチ機構と、前記開閉部材の外面側に設けられ、前記ラッチ機構をロック及びロック解除動作させるための操作部とを備えた格納手段に取付けられる錠装置であって、
前記開閉部材の外面側に取付可能な装置本体部と、
前記装置本体部に取付けられ、前記操作部を外部に露出及び遮蔽可能なように開閉自在に覆う遮蔽部材と、
施錠動作に応じて前記遮蔽部材を遮蔽状態にロックし、解錠動作に応じて前記ロックを解除する遮蔽ロック手段と、
を備えた錠装置。
【請求項2】
請求項1記載の錠装置であって、
前記遮蔽ロック手段を施錠及び解錠するためのキーをさらに備え、
前記キーは、利用可否情報を記憶した記憶部と、前記利用可否情報に基づいて認証に関する動作を行う制御部と、電源とを含み、
前記遮蔽ロック手段は、前記キーをセット可能なセット部を有し、前記セット部に前記キーがセットされることで前記キーから電力供給を受けて動作すると共に、前記キーとの間で通信を行って認証動作を行い、利用可と判断された場合に前記遮蔽部材のロックを解除するものである、錠装置。
【請求項3】
請求項2記載の錠装置であって、
前記遮蔽ロック手段は、前記遮蔽部材の開放状態で、前記キーが前記セット部から抜けるのを防止する第1キー抜け防止手段をさらに備えた錠装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の錠装置であって、
前記開閉部材が開かれた状態で、前記キーが前記セット部から抜けるのを防止する第2キー抜け防止手段をさらに備えた錠装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の錠装置であって、
前記遮蔽部材の開閉に関わらず前記操作部を外部に露出可能にするための緊急解除手段をさらに備えた錠装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の錠装置であって、
前記開閉部材の開閉状態を検知する開閉検知センサと、前記開閉検知センサの出力に基づいて前記開閉部材が開かれた時間が予め設定された所定時間を越えたと判断されたときに報知手段を通じて警告を発する警告制御手段とをさらに備えた錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−270590(P2010−270590A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175048(P2010−175048)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【分割の表示】特願2005−79775(P2005−79775)の分割
【原出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【出願人】(595043170)アドバンテック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】