説明

長波長のチオール反応性フルオロフォア

反応性蛍光色素組成物およびその使用方法が開示される。チオール反応性基を有するスクエアレイン核色素、ナイルレッド核色素、ベンゾジオキサゾール核色素、クマリン核色素またはアザクマリン核色素が開示される。少なくとも約575nmの蛍光発光を示すスクエアレイン核色素、ナイルレッド核色素、ベンゾジオキサゾール核色素、クマリン核色素またはアザクマリン核色素が開示される。結合タンパク質およびスクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核またはアザクマリン核を有するバイオセンサーが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、TMMコントラクトNo.W81XWH−04−1−0076の下、米国陸軍医学研究物資司令部(USAMRMC)の助成により一部資金援助を得た研究に基づくため、米国政府は、本発明における一定の権利を有することができる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年5月21日に出願された先行する米国特許仮出願第60/573,944号明細書、および2004年8月6日に出願された米国特許仮出願第60/599,514号明細書の、35U.S.C.§119(e)の下での利益を主張するものである。これらの出願は、その全文が参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
本発明の実施形態は、分析物の検出に使用する新規の長波長フルオロフォアに関する。さらなる実施形態は、分子のチオール基に共有結合できるチオール反応性部位を含有するフルオロフォアに関する。
【背景技術】
【0004】
【非特許文献1】C. Cornelissen-Gude, W. Rettig, R. Lapouyade. "Phhotophysical properties of Squaraine Derivatives: Evidence for Charge Separation." J. Phys. Chem. A 1997, 101, 9673-9677
【非特許文献2】www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/accession number D90885
【非特許文献3】www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/accession number 23052
【非特許文献4】M. L. Pisarchick and N. L. Thompson "Binding of a monoclonal antibody and its Fab fragment to supported phospholipid monolayers measured by total internal reflection fluorescence microscopy" Biophys. J. 1990, 58, 1235-1249
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
蛍光色素またはフルオロフォア化合物は、さまざまな化学的および生物学的処理での使用に適している。さまざまな実施形態は、フルオロフォアをタンパク質などの別の分子と結合(coupleまたはconjugate)させるのに使用されることのできる反応性基を有するフルオロフォアに関する。バイオセンサーは、タンパク質と結合される反応性基を有するフルオロフォアを含む。
【0006】
さらなる実施形態は、反応性基を有し、少なくとも約575nmの発光波長を有する、近赤外色素(NIR色素)と呼ばれるフルオロフォアである。1つの実施形態では、フルオロフォアは約650nmで発光する。フルオロフォアの実施形態としては、特定の結合ペアのメンバーと結合することができるペンダント反応性基がある。
【0007】
フルオロフォアは、特定のリガンドまたは分析物に親和性を有するレセプターおよび結合タンパク質との結合に適している。本発明のさまざまな実施形態では、レセプターまたは結合タンパク質は、リガンドまたは分析物に結合すると立体構造が変化する。フルオロフォアは、結合タンパク質に結合した場合、リガンド結合の結果としての検出可能なシグナルの変化を示す。
【0008】
別の実施形態は、アミノ酸に共有結合できる反応性部分を有するフルオロフォアを提供する。1つの実施形態では、フルオロフォアは、タンパク質のアミノ酸のシステイン残基に結合できるチオール反応性基を有する。フルオロフォアに導入できる好適なチオール反応性基の例としては、ハロアセチル基および特にヨードアセチル基がある。他のチオール反応性基には、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ヨード酢酸またはマレイミドがある。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、チオール反応性基を有し、少なくとも約575nmの発光を有するフルオロフォアを提供する。本発明の1つの実施形態では、フルオロフォアは、ベンゾジオキサゾール、スクエアレイン(squaraine)、9−ジエチルアミノ−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(以下、ナイルレッドと称する)、クマリン、およびアザクマリンである。別の実施形態では、本発明は、スクエアレイン、ベンゾジオキサゾール、ナイルレッド、クマリンおよびアザクマリンの誘導体で、以下それぞれに、スクエアレイン核、ベンゾジオキサゾール核、ナイルレッド核、クマリン核またはアザクマリン核と同じ意味で称される、または集合的に「蛍光色素」と称されるものに関する。スクエアレイン核、ベンゾジオキサゾール核、ナイルレッド核、クマリン核およびアザクマリン核の誘導体は、例えば、タンパク質のアミノ酸基を備えた、誘導体のいずれの反応産物も含む。誘導体とは、前述の核へのいずれの化学的な修飾、付加、除去、または置換も含むことを意味する。1つの実施形態としては、少なくとも約575nmの蛍光発光を示す前述の色素核が挙げられる。1つの実施形態では、スクエアレイン核、ベンゾジオキサゾール核、ナイルレッド核、クマリン核およびアザクマリン核は、タンパク質に結合するためのチオール反応性基を含有している。
【0010】
また、別の実施形態は、結合タンパク質、および結合タンパク質のシステイン残基を介して結合タンパク質に結合したスクエアレイン核、ベンゾジオキサゾール核、ナイルレッド核、クマリン核ならびにアザクマリン核の複合体に関する。タンパク質のシステイン残基は、自然発生であるか、またはタンパク質中へ工学処理することができる。1つの実施形態では、結合タンパク質は、グルコースに親和性を有し、グルコースを可逆的に結合させるグルコース結合タンパク質である。フルオロフォアは、結合に反応して蛍光特性における検出可能な変化をもたらす。蛍光特性における検出可能な変化は、発光波長のシフト、発光エネルギー強度の変化、蛍光寿命の変化、異方性の変化、偏光の変化、またはそれらの組み合わせでありうる。別の実施形態では、結合タンパク質は、マルトースに親和性を有し、マルトースを結合させるマルトース結合タンパク質(MBP)である。別の実施形態では、結合タンパク質は、非天然リガンドに親和性を有し、非天然リガンドを結合させるように変更される。
【0011】
本発明のさまざまな実施形態は、式
A−Y
を有するフルオロフォアであって、
式中、Aは、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核、およびアザクマリン核からなる群から選択され、およびYは、
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、nは1から6の整数)であり、またはYは、A’−CO−Rであり、A’は−RO−または−RN(R)−(式中、RはCからCのアルキル、RはHまたはCH)であり、およびRはCHCl、CHBr、CHIであり、または
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、mは2から6の整数)であるフルオロフォアを提供する。
【0016】
追加の実施形態は、式
A−Y’−B
を有するバイオセンサー化合物であって、
式中、Aは、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核、およびアザクマリン核からなる群から選択されるフルオロフォアであり、Y’−Bは、
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、nは1から6の整数)であり、またはY’−Bは、A’−CO−V−Bであり、A’は−RO−または−RN(R)−(式中、RはCからCのアルキル、RはHまたはCH)、およびV−Bは−CH−B、または
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、mは2から6の整数、およびBは、検出されるリガンドに可逆的な結合親和性を有するレセプター)であるバイオセンサー化合物を提供する。前記バイオセンサー化合物は、リガンド濃度の変化の結果として蛍光特性に生じる検出可能な変化を示す。
【0021】
さらなる実施形態は、少なくとも1つの変異結合タンパク質を有し、フルオロフォアが、前記結合タンパク質のチオール基を介して前記結合タンパク質に共有結合されているバイオセンサー化合物を提供する工程を含む分析物の検出方法であり、フルオロフォアは、少なくとも約575nmの発光蛍光を示し、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核およびアザクマリン核からなる群から選択される。バイオセンサー化合物をエネルギー源に曝して、前記フルオロフォアを励起し、かつ分析物含有源の分析物濃度の指標となる蛍光特性を検出する。
【0022】
本開示は、リガンドおよび特に分析物を検出するためのバイオセンサー成分としての使用に適した蛍光色素、およびその使用方法を対象とする。1つの実施形態は、レセプターに結合してリガンドを検出、定量化、または検出および定量化することができる蛍光色素を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
1つの実施形態では、蛍光色素は、蛍光色素が結合タンパク質に共有結合されるバイオセンサーの作成に使用される。本明細書では、「バイオセンサー」および「バイオセンサー化合物」という用語は、リガンドまたは標的分析物に対する特異反応において検出可能な変化を起こす化合物のことをいう。本明細書で論じられるバイオセンサーの実施形態には、分析物に結合可能な結合タンパク質がある。他の実施形態では、本発明のバイオセンサーは、分析物を検出すること、および分析物濃度の変化を検出することができる。さまざまな実施形態では、タンパク質は、グルコース/ガラクトース結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、アロース結合タンパク質、アラビノース結合タンパク質、ジペプチド結合タンパク質、グルタミン酸/アスパラギン酸結合タンパク質、グルタミン結合タンパク質、Fe(III)結合タンパク質、ヒスチジン結合タンパク質、ロイシン結合タンパク質、ロイシン/イソロイシン/バリン結合タンパク質、リジン/アルギニン/オルニチン結合タンパク質、モリブデン酸塩結合タンパク質、オリゴペプチド結合タンパク質、フォスフェート結合タンパク質、リボース結合タンパク質、サルフェート結合タンパク質、Zn(II)結合タンパク質、およびビタミンB−12結合タンパク質を含むペリプラズム結合タンパク質の群から選択されることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
他の実施形態では、バイオセンサーは、結合タンパク質に共有結合した蛍光色素であり、タンパク質−色素複合体は、575nmまたはこれを超える蛍光発光を示す。1つの実施形態では、蛍光色素は、少なくとも575nmの蛍光発光を示す。1つの典型的な形態では、結合タンパク質は、グルコース含有源と接触した場合に、グルコースと結合することができるグルコース/ガラクトース結合タンパク質(GGBP)である。別の実施形態では、結合タンパク質は、マルトース結合タンパク質(MBP)である。理論に裏付けられているわけではないが、結合タンパク質は、リガンド結合の際に立体構造が変化すると理解されている。リガンドにより占有された部位に結合タンパク質が結合する割合は、リガンド濃度および結合タンパク質の結合定数に依存性である。
【0025】
少なくとも約575nmの蛍光発光を示す蛍光色素の実施形態は、グルコース源の生物系成分または他の成分によるバックグラウンド干渉を回避または最小化する。蛍光色素は、グルコース濃度の変化の結果として結合タンパク質が立体構造の変化を起こす際の、蛍光シグナル強度の変化、最大蛍光発光の発光波長のシフト、蛍光寿命の変化、異方性の変化、偏光の変化、またはそれらの組み合わせを示す。方法の実施形態では、バイオセンサーは、例えば、グルコースなどの分析物含有試料に接触し、分析物を結合タンパク質と結合させることができる。ここでの試料には、血液、唾液、間質液等があるが、これらに限定されるものではない。レーザーまたはLEDなどのエネルギー源は、蛍光色素を励起するためバイオセンサーに適用され、蛍光特性が検出される。結合タンパク質の立体構造の変化、それに続く色素の微環境における変化のいずれか、またはその両方により、検出された蛍光特性または検出された蛍光特性の変化を、分析物の存在または分析物濃度と相関させることができる。蛍光および検出は、所定時間で連続的または断続的に行うことができる。したがって、例えば、グルコースなどの分析物の一時的または連続的な検出が想定される。本明細書に開示されたバイオセンサーは、ストリップ、インプラント、微粒子およびナノ粒子などでの使用に適応可能である。
【0026】
蛍光色素は、所望の蛍光変化を得るため、部位特異的な方法で結合タンパク質に共有結合される。蛍光色素は、立体構造の変化が蛍光特性の変化を最大化するように、結合タンパク質上の部位に付加される。本発明の他の実施形態では、蛍光色素は、結合タンパク質のシステイン残基のチオール基に結合されることができるチオール反応性基を有する。蛍光色素には、前述の、スクエアレイン核、ベンゾジオキサゾール核、ナイルレッド核、クマリン核およびアザクマリン核の誘導体がある。
【0027】
1つの実施形態では、バイオセンサーは、式I
A−Y’−B (I)
を有する。
【0028】
式Iでは、Aは、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核、アザクマリン核、およびそれらの誘導体である。Y’−Bは、
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、nは1から6の整数)であり、またはY’−Bは、A’−CO−V−Bである。A’は−RO−または−RN(R)−である。RはCからCのアルキルである。1つの実施形態では、RはCからCのアルキルである。RはHまたはCHである。V−Bは、−CH−B
または
【0031】
【化6】

【0032】
(式中、mは2から6の整数)である。1つの実施形態では、ROは、−CHCHO−である。別の実施形態では、RN(R)は、−CHCHNH−である。Bは、バイオセンサーにより検出されモニターされるリガンドに結合親和性を有するレセプターである。バイオセンサー化合物は、リガンド濃度の変化の結果として蛍光特性の検出可能な変化を示す。1つの実施形態では、Bは、グルコースなどのリガンド濃度が変化する結果として蛍光強度の検出可能な変化を示す、グルコース/ガラクトース結合タンパク質である。別の実施形態では、Bは、マルトース結合タンパク質である。
【0033】
1つの実施形態では、蛍光色素またはフルオロフォアは、チオール反応性基を有し、一般式
A−Y (II)
を有する。式中、Aは、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核、アザクマリン核、またはそれらの誘導体であり、Yは、チオール反応性基である。
【0034】
式IIにおける他の実施形態では、Yは、
【0035】
【化7】

【0036】
(式中、nは1から6の整数)であり、またはYは、A’−CO−Rである。A’は−RO−または−RN(R)−である。RはCからCのアルキルである。1つの実施形態では、RはCからCのアルキルである。RはHまたはCHである。RはCHCl、CHBr、−CHIであり、または
【0037】
【化8】

【0038】
(式中、mは2から6の整数)である。色素は、少なくとも約575nmの蛍光発光を示すことができる。1つの実施形態では、ROは−CHCHO−である。別の実施形態では、RN(R)は−CHCHNH−である。さらなる実施形態では、Yは−(CHOCOCHCHXであり、XはCl、BrまたはIである。他の実施形態では、Rは−CHCH−などのCからCのアルキルである。
【0039】
本発明の実施形態であるスクエアレイン核は、スクエアレイン構造の誘導体
【0040】
【化9】

【0041】
を基にしている。
【0042】
式IIIのスクエアレイン核は、その環境の変化に伴い蛍光特性の変化を示す。例えば、スクエアレイン核IIIは、メタノールなどの極性プロトン性溶媒からトルエンなどの非極性溶媒へその環境を変化させることで、蛍光量子収率が20倍増加する(非特許文献1参照)。スクエアレイン色素は、635nm付近で最大吸光度を有することができ、約650nmで蛍光発光ピークを示すことができる。これらの色素は、例えば、赤色半導体レーザー励起源からの光に曝露された場合、容易に蛍光することができる。
【0043】
本発明のチオール反応性基スクエアレイン核の実施形態は、式IVおよび式Vの構造を有する。
【0044】
【化10】

【0045】
式中、R’はHまたはOHであり、R’’は独立してメチル、エチルまたはプロピルであり、RはCからCのアルキルまたは(CHCOHであり(式中、qは1から5の整数)、ZおよびZ’は独立してS、O、またはC(CHであり、WおよびW’は独立してH、CH、SOH、縮合ベンゼン、または縮合スルホベンゼンであり、およびYは前述の定義通りである。
【0046】
1つの実施形態では、チオール反応性スクエアレイン核は、式
【0047】
【化11】

【0048】
を有する。式中、Rは、化合物においてはエチル、または化合物においては(CHCOHである。
【0049】
別の実施形態には、一般に約550nmの吸光度、および約575nmまたはこれを超える発光極大を有するナイルレッド核がある。これらの核は、典型的には、脂質環境では発光極大が650nmまでシフトする。1つの実施形態では、ナイルレッド核は、式
【0050】
【化12】

【0051】
を有する。式中、R、R、およびRは、独立してメチル、エチルまたはプロピルであり、およびYは前述の定義通りである。
【0052】
1つの実施形態では、ナイルレッド核は、式
【0053】
【化13】

【0054】
を有する。
【0055】
1つの実施形態には、式
【0056】
【化14】

【0057】
を有するベンゾジオキサゾール核がある。式中、rは1から3の整数であり、R、R、は独立してCからCのアルキルまたは(CHCOH(式中、sは、2から5の整数)である。ZはS、O、またはC(CHである。WはH、CH、SOH、縮合ベンゼン、または縮合スルホベンゼンである。Yは前述の定義通りである。
【0058】
1つの実施形態では、ベンゾジオキサゾール核は、式
【0059】
【化15】

【0060】
を有する。
【0061】
別の実施形態には、式
【0062】
【化16】

【0063】
または
【0064】
【化17】

【0065】
を有するクマリン核およびアザクマリン核がある。式中、DはCHまたはNであり、rは1から3の整数であり、R10、R11およびR12は、独立してCからCのアルキルまたは(CHCOH(式中、sは、2から5の整数)であり、ZはS、O、またはC(CHである。WはH、CH、SOH、縮合ベンゼンまたは縮合スルホベンゼンであり、Yは前述の定義通りである。
【0066】
1つの実施形態では、アザクマリン核は、式
【0067】
【化18】

【0068】
を有する。
【0069】
本発明のスクエアレイン核の実施形態は、さまざまな既知の技術により合成することができる。対称核は、スクアリン酸との芳香族求核剤の反応により調製することができる。ヨードアセチルスクエアレインを生成する第1の反応スキームは、以下のようなスキームIに表される。
【0070】
【化19】

【0071】
ヨードアセトアミジルスクエアレイン核誘導体を生成するための第2の反応スキームは、以下のようなスキームIIに表される。
【0072】
【化20】

【0073】
また、ナイルレッド核誘導体の実施形態は、さまざまな反応スキームを用いて調製することができる。ヨードアセチル誘導体を生成する第1の反応スキームは、以下のようなスキームIIIに表される。
【0074】
【化21】

【0075】
ヨードアセトアミジル誘導体を生成する第2の反応スキームは、以下のようなスキームIVに表される。
【0076】
【化22】

【0077】
ベンゾジオキサゾール核誘導体の実施形態を生成する方法は、以下のような反応スキームVに表される。
【0078】
【化23】

【0079】
スキームVは、以下のスキームVIに示す通り、他の環系を含有するベンゾジオキサゾール核誘導体を生成するために修正することができる。
【0080】
【化24】

【0081】
ベンゾジオキサゾール核誘導体を生成する代替方法は、反応スキームVIaに示される。
【0082】
【化25】

【0083】
ベンゾジオキサゾール核をヨードアセチルリンカーと合成する例示的方法は、スキームVIIに表される。
【0084】
【化26】

【0085】
ベンゾジオキサゾール核誘導体を生成する代替方法は、反応スキームVIIaに示される。
【0086】
【化27】

【0087】
アザクマリン核誘導体を生成する例示的方法は、反応スキームVIIIに表される。
【0088】
【化28】

【0089】
アザクマリン核誘導体を生成する代替方法は、反応スキームVIIIaに表される。
【0090】
【化29】

【0091】
クマリン核を生成する例示的方法は、反応スキームIXに表される。
【0092】
【化30】

【0093】
クマリン核誘導体を生成する別の方法は、反応スキームIXaに表される。
【0094】
【化31】

【0095】
本発明の別の実施形態では、ベンゾジオキサゾール核、スクエアレイン核、ナイルレッド核、クマリン核、およびアザクマリン核は、蛍光発光を有する。1つの実施形態では、上記特定の蛍光核は、約575nmを超える蛍光発光を有する。
【0096】
1つの実施形態では、結果として得られたチオール反応性核を結合タンパク質と反応させて、バイオセンサーとして有用な蛍光結合タンパク質複合体を生成する。
【0097】
1つの実施形態では、結果として得られるスクエアレイン核−結合タンパク質複合体は、以下のマーカッシュ構造式を有する。
【0098】
【化32】

【0099】
式中、Y’−Bは、
【0100】
【化33】

【0101】
(式中、nは1から6の整数)であり、またはY’−Bは、A’−CO−V−Bであり、A’は−RO−または−RN(R)−である。RはCからCのアルキルである。1つの実施形態では、RはCからCのアルキルである。RはHまたはCHである。V−Bは、−CH−Bまたは
【0102】
【化34】

【0103】
(式中、mは2から6の整数)である。1つの実施形態では、ROは−CHCHO−である。別の実施形態では、RN(R)は、−CHCHNH−であり、Bは結合タンパク質である。
【0104】
1つの実施形態では、結果として得られるナイルレッド核−結合タンパク質複合体は、以下のマーカッシュ構造式を有する。
【0105】
【化35】

【0106】
式中、Y’Bは前述の定義通りであり、Bは結合タンパク質である。
【0107】
1つの実施形態では、結果として得られるベンゾジオキサゾール核−結合タンパク質複合体は、以下のマーカッシュ構造式を有する。
【0108】
【化36】

【0109】
式中、Y’Bは前述の定義通りであり、Bは結合タンパク質である。
【0110】
1つの実施形態では、結果として得られるクマリン、およびアザクマリン核−結合タンパク質複合体は、以下のマーカッシュ構造式を有する。
【0111】
【化37】

【0112】
式中、Y’Bは前述の定義通りであり、Bは結合タンパク質である。
【0113】
1つの実施形態では、結果として得られる結合タンパク質複合体は、以下の式を有する。
【0114】
【化38】

【0115】
【化39】

【0116】
【化40】

【0117】
結合タンパク質Bにはチオール基、例えば、システイン残基があり、チオール反応性蛍光色素と反応できる。「結合タンパク質」という用語は、記載の方法により、分析物が存在しない場合から、分析物が時間とともに変動する濃度で存在している場合のいずれの場合をも識別できる形式、または濃度に依存する形式の検出可能シグナルの変換または提供を可能にする形で、特定の分析物と反応するタンパク質のことをいう。本明細書では、検出可能なシグナルを変換できる、または「検出可能なシグナルを提供する」とは、リガンド−タンパク質結合の検出を可能にする形でレポーター基の特性変化を認識する能力のことである。例えば、1つの実施形態では、変異GGBPは、グルコース結合するとその検出可能特性が変化する検出可能レポーター基を含む。検出可能な特性変化は、変異GGBPに付加した標識環境が変化、または結合の結果としてタンパク質の立体構造が変化することが原因となりうる。検出可能なシグナルの変換または提供は、可逆的または非可逆的でありうる。本明細書では、検出可能なシグナルを変換または提供するという用語は、同じ意味で使われる。変換事象には、1回限りの適用または再利用可能な適用も含め、連続的、プログラムされた、および一時的な方法が挙げられる。可逆的なシグナル変換は、即時的または時間依存的であることができ、分析物の存在または濃度との相関を示すことが証明されている。変換に影響を与える形で変異した結合タンパク質が、本発明の実施形態である。結合タンパク質としては、グルコース/ガラクトース結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、アロース結合タンパク質、アラビノース結合タンパク質、ジペプチド結合タンパク質、グルタミン酸/アスパラギン酸結合タンパク質、グルタミン結合タンパク質、Fe(III)結合タンパク質、ヒスチジン結合タンパク質、ロイシン結合タンパク質、ロイシン/イソロイシン/バリン結合タンパク質、リジン/アルギニン/オルニチン結合タンパク質、モリブデン結合タンパク質、オリゴペプチド結合タンパク質、フォスフェート結合タンパク質、リボース結合タンパク質、硫酸結合タンパク質、Zn(II)結合タンパク質、およびビタミンB−12結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
本明細書では、「グルコース/ガラクトース結合タンパク質」すなわち「GGBP」または「マルトース結合タンパク質」すなわち「MBP」という用語は、本来、細菌のペリプラズム画分に見られるタンパク質の一種をいう。これらのペリプラズムタンパク質は、本来、小分子(例えば、糖、アミノ酸、および小ペプチドなど)の細胞質への走化性および輸送に関与している。例えば、GGBPは、ヒンジを形成する3本のストランドによって接続される2つの球状α/βドメインからなる単鎖タンパク質である。結合部位は、2つの球状ドメイン間の凹み(cleft)にある。グルコースが結合部位に入ると、GGBPは立体構造の変化を起こし、ヒンジに集中する。これが2つのドメインを接合させ、グルコースを結合部位に取り込む。野生型大腸菌(E. coli)GGBP DNAおよびアミノ酸配列は、非特許文献2(ゲノムクローン)および非特許文献3(アミノ酸配列)で見ることができる(非特許文献2および3参照)。1つの実施形態では、GGBPは大腸菌(E. coli)由来である。
【0119】
本明細書では、「変異結合タンパク質」(例えば、「変異GGBP」など)は、少なくとも1つのアミノ酸がタンパク質に置換、欠失、付加されている、細菌由来の結合タンパク質をいう。
【0120】
結合タンパク質の変異には、例えば、システイン基の付加または置換、非天然由来のアミノ酸、および本来は非反応性であるアミノ酸と反応性アミノ酸との置換などがある。
【0121】
さらなる実施形態は、位置11でリジンを置換したシステイン(K11C)、位置14でアスパラギン酸を置換したシステイン(D14C)、位置19でバリンを置換したシステインで(V19C)、位置43でアスパラギンを置換したシステイン(N43C)、位置74でグリシンを置換したシステイン(G74C)、位置107でチロシンを置換したシステイン(Y107C)、位置110でトレオニンを置換したシステイン(T110C)、位置112でセリンを置換したシステイン(S112C)、位置112でセリンを置換したシステインおよび位置238でロイシンを置換したセリンを含む二重変異体(S112C/L238S)、位置113でリジンを置換したシステイン(K113C)、位置137でリジンを置換したシステイン(K137C)、位置149でグルタミン酸を置換したシステイン(E149C)、位置149でグルタミン酸を置換したシステインおよび位置213でアラニンを置換したアルギニンを含む二重変異体(E149C/A213R)、位置149でグルタミン酸を置換したシステインおよび位置238でロイシンを置換したセリンを含む二重変異体(E149C/L238S)、位置213でアラニンを置換したセリンおよび位置152でヒスチジンを置換したシステインを含む二重変異体(H152C/A213S)、位置182でメチオニンを置換したシステイン(M182C)、位置213でアラニンを置換したシステイン(A213C)、位置213でアラニンを置換したシステインおよび位置238でロイシンを置換したシステインを含む二重変異体(A213C/L238C)、位置216でメチオニンを置換したシステイン(M216C)、位置236でアスパラギン酸を置換したシステイン(D236C)、位置238でロイシンを置換したシステイン(L238C)、位置287でアスパラギン酸を置換したシステイン(D287C)、位置292でアルギニンを置換したシステイン(R292C)、位置296でバリンを置換したシステイン(V296C)、位置149でグルタミン酸を置換したシステイン、位置213でアラニンを置換したセリンおよび位置238でロイシンを置換したセリンを含む三重変異体(E149C/A213S/L238S)、位置149でグルタミン酸を置換したシステイン、位置213でアラニンを置換したアルギニンおよび位置238でロイシンを置換したセリンを含む三重変異体(E149C/A213R/L238S)、位置149でグルタミン酸を置換したシステイン、位置213でアラニンを置換したシステインおよび位置238でロイシンを置換したセリンを含む三重変異体(E149C/A213C/L238S)を有するGGBPタンパク質変異である。さらなる実施形態には、Y10C、N15C、Q26C、E93C、H152C、M182C、W183C、L255C、D257C、P294C、およびV296CでのGGBP変異が挙げられる。
【0122】
さらなる実施形態は、例えば、D95C、F92C、I329C、S233C、およびS337Cを含むマルトース結合タンパク質変異がある。
【0123】
さらなる実施形態は、例えば、E167C、K229C、V163C、Y230C、Y231C、およびY88Cを含むヒスチジン結合タンパク質がある。
【0124】
さらなる実施形態は、例えば、L65C、N70C、Q294C、R134C、W290C、およびY67Cを含むサルフェート−結合タンパク質変異がある。
【0125】
さらなる実施形態は、例えば、D275C、F23C、K301C、L253C、およびL298Cを含むアラビノース−結合タンパク質がある。
【0126】
さらなる実施形態は、例えば、D450C、K394C、R141C、S111C、T44C、およびW315Cを含むジペプチド−結合タンパク質変異がある。
【0127】
さらなる実施形態は、例えば、A207C、A210C、E119C、F126C、F131C、F270C,G211C、K268C,Q123C、およびT129Cを含むグルタミン酸/アスパラギン酸−結合タンパク質変異がある。
【0128】
さらなる実施形態は、例えば、N160C、F221C、K219C、L162C、W220C、Y163C、およびY86Cを含むグルタミン−結合タンパク質変異がある。
【0129】
さらなる実施形態は、例えば、E203C、K202C、K85C、およびV287Cを含むFe(III)−結合タンパク質変異がある。
【0130】
さらなる実施形態は、例えば、T135C、D165C、E192C、A234C、L236C、およびL265Cを含むリボース−結合タンパク質変異がある。
【0131】
さらなる実施形態は、例えば、A225C、N223C、N226C、S164C、S39C、およびA197Cを含むフォスフェート−結合タンパク質変異がある。
【0132】
変異は、1つまたは複数のいくつかの目的に役立つことができる。例えば、天然由来のタンパク質を、タンパク質の長期安定性を変えるために変異させて、タンパク質を特定の封入マトリックスまたはポリマーに結合させること、結合部位に検出可能レポーター基を提供すること、特定の分析物に関してその結合定数を調整すること、またはそれらの組み合わせを行うことができる。長期安定性には、熱安定性が含まれることが意図されている。
【0133】
1つの実施形態では、分析物および変異タンパク質は、結合パートナーとして作用する。本明細書では、「結合(associatesまたはbinds)」は、タンパク質への結合を、検出手段により検出できるほど十分に強力な相対結合定数(Kd)を有する結合パートナーのことをいう。Kdは、タンパク質の半分が結合している(またはその逆の)遊離分析物の濃度として計算することができる。関心のある分析物がグルコースの場合、結合パートナーのKd値は、約0.0001mM〜約50mMの間となる。
【0134】
蛍光標識を、当技術分野では既知の任意の慣用の方法により、変異タンパク質、例えばGGBPに付加することができる。例えば、レポーター基は、タンパク質のアミン残基またはカルボキシル残基を介して付加することができる。例示的な実施形態には、変異タンパク質または天然タンパク質のシステイン残基のチオール基を介した共有結合がある。例えば、変異GGBPでは、システインは、位置10、位置11、位置14、位置15、位置19、位置26、位置43、位置74、位置92、位置93、位置107、位置110、位置112、位置113、位置137、位置149、位置152、位置154、位置182、位置183、位置186、位置211、位置213、位置216、位置238、位置240、位置242、位置255、位置257、位置287、位置292、位置294、および位置296にあることができる。
【0135】
当技術分野では既知のチオール反応性基は、フルオロフォアなどのレポーター基を、天然または工学処理した、または変異したタンパク質のシステインに付加するのに使用することができる。例えば、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、またはマレイミドなどは、この目的に用いることのできる、十分に既知のチオール反応性部分である。
【0136】
長い発光波長(例えば、約575nm以上)で作用するフルオロフォアは、分子センサーがインビボで使用される場合、例えば、埋め込み型バイオセンサー装置(皮膚は、約575nm未満で不透明な状態である)へ組み込まれる場合の実施形態である。例えば、変異GGBPにおいて構築されたさまざまなシステイン変異体に付加された、これらのフルオロフォアを含有する複合体をスクリーニングして、グルコース結合の際に蛍光強度に最大の変化をもたらす結果となるものを特定することができる。
【実施例】
【0137】
以下の実施例は、本発明のさまざまな実施形態を説明するものである。
【0138】
(実施例1)
この実施例では、ヨードエステルスクエアレイン核を生成するために、スキームIの工程を使用した。
【0139】
中間体1c:ブタノール(5mL)およびベンゼン(5mL)の混合物を、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアニリン1a(322mg、2.2mmol)および4−(N,N−ジメチルアミノフェニル)−3−ヒドロキシ−シクロブタン−1,2−ジオン1b(434mg、2.0mmol)の入ったフラスコに添加した。混合物を加熱して還流し、4Åモレキュラーシーブ5gを添加した。1時間後、混合物は明るい青緑色に変化した。24時間後、混合物は、濃い緑青色の懸濁液になった。溶剤を蒸発させ、残留物を酢酸エチル(25mL)で洗浄した。残りの残留物を水で洗浄し、紺色の残留物を残した。この混合物をソックスレーシンブル(soxhlet thimble)に移し、塩化メチレンにより一晩かけて抽出した。蒸発後、残留物を酢酸エチルで洗浄し、紺色の固体のN−(ヒドロキシエチル)−N,N’,N−トリメチル−ビス(4−アミノフェニル)−スクエアレイン1c(223mg、30%)を生成した。
【0140】
化合物1:DMF1滴を、塩化メチレン(5mL)中のヨード酢酸(224mg、1.2mmol)溶液に添加し、その結果得られた溶液を1分間かけて塩化オキサリル(180mg、1.4mmol)に滴下添加した。激しいバブリングが治まった後、薄いオレンジ色の溶液を30分間25℃にて攪拌した。溶剤を真空下(〜14mmHg)で除去して、濃いオレンジ色の残留物を真空下で15分間保持した。この残留物を塩化メチレン(5mL)中で溶解し、ヨードアセチルクロライド溶液を生成した。前記の合成により得られたヒドロキシエチルスクエアレイン1c(175mg、0.5mmol)を、塩化メチレン(20mL)中で懸濁した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(154mg、1.2mmol)および予め調製したヨードアセチルクロライド溶液をスクエアレイン縣濁液に順次的に分割添加した。その結果得られた青色の不均一混合物を、25℃で2時間攪拌した。溶剤を蒸発させて、その結果得られた紺色の固体を10mLの酢酸エチルで6回、エチルエーテルで6回洗浄し、真空下で乾燥させた。これにより、薄い紫がかった青色の固体である204mgのヨードアセチルエステルを得た。蛍光スペクトル(メタノール):最大励起643nm、最大発光669nm。
【0141】
(実施例2)
この実施例では、ヨードアセトアミドスクエアレイン核は、スキームIIの工程により生成された。この実施例は、RがCであるスキームIIに対応する。
【0142】
中間体2b:2−メチルベンゾチアゾール(1mM)2aおよびN−ブロモエチルフタルイミド(1mM)を、丸底フラスコで100℃にて24時間加熱した。その結果得られた固体を濾過により分離し、クロロホルムを用いた連続洗浄により精製して中間体2bを得た。
H NMR(CDOD,TMS)δppm:4.295(t,CH,2H);4.871(s,CH,3H);5.102(t,CH,2H);7.733および8.148〜8.279(m,芳香族,8H)。
1815Sの分子量の計算値は323(M+)、実測値323(FAB)
【0143】
中間体2c:ジブチルスクエアレートを、3−エチル−2−メチル−ヨウ化ベンゾチアゾリウムと(1:1の比)、エタノール中で還流して反応させた。30分間の還流後、反応混合物を熱時濾過した。冷却する間に濾液よりオレンジ色の固体が結晶化し、これを分離してエタノール中で再懸濁し、還流下で40%のNaOH溶液により処理した。30分後、内容物を冷却して2NのHClで酸性化した(pHを4に調整)。生成物をクロロホルムで抽出して中間体2cを得た。
H NMR(CDCl,TMS)δppm:1.385(t,CH,3H);1.456(t,CH,3H);4.064(q,CH,2H);4.794(q,CH,2H);5.479(s,CH,1H);7.026〜7.518(m,芳香族,4H)。
1411NOSの分子量の計算値は273(M+)、実測値273(FAB)
【0144】
中間体2d:中間体2bおよび2cを、1:1(v/v)のトルエンおよびn−ブタノール含有溶剤混合物中で反応させた。反応混合物を共沸蒸留にかけ、反応中に生成した水をディーン−スタークトラップ(Dean−Stark trap)を用いて除去した。6時間後、反応混合物を室温まで冷却し、青色の生成物を濾過して取り出した。溶離剤にメタノールおよびクロロホルム(1:4の比)を用い、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いてさらなる精製を行い、色素2dを得た。
H NMR(CDCl,TMS)δppm:1.439(t,CH,3H);4.127(t,CH,2H);4.181(q,CH,2H);4.381(t,CH,2H);5.924(s,CH,1H);5.964(s,CH,1H);7.070〜7.823(m,芳香族,12H)。
3223の分子量の計算値は577(M+)、実測値577(FAB)。
【0145】
中間体2e:色素2dを無水塩化メチレン中で溶解し、室温でヒドラジンモノハイドレートにより処理した。脱保護したスクエアレイン色素を、反応混合物から沈降させて濾過により分離し、続いて塩化メチレンで反復洗浄した。
H NMR(CDOD,TMS)δppm:1.420(t,CH,3H);3.780(t,CH,2H);4.320(q,CH,2H);4.520(t,CH,2H);5.924(s,CH,1H);5.964(s,CH,1H);7.200〜7.850(m,芳香族,8H)。
2421の分子量の計算値は447(M+)、実測値447(FAB)
【0146】
化合物2:中間体色素2eを無水塩化メチレン中で溶解し、等量のヨード酢酸無水物を添加した。混合物を室温で3時間攪拌し、生成物を溶剤の蒸発により分離して最終色素を得た。ヘキサン/塩化メチレンからの沈降を繰り返して精製を行った。
H NMR(CDOD,TMS)δppm:1.420(t,CH,3H);3.900(s,CH,2H);4.300(q,CH,2H);4.450(t,CH,2H);4.480(t,CH,2H);5.820(s,CH,1H);5.980(s,CH,1H);7.200〜8.200(m,芳香族,8H)。
2622INの分子量の計算値は615(M+)、実測値615(FAB)。
【0147】
クロロホルム中の化合物の具体的な吸光スペクトルを、図1に示している。クロロホルム中の化合物の励起スペクトルおよび発光スペクトルを、図2に示す。
【0148】
(実施例3)
この実施例では、Rが、スキームIIの中間体3cのCHCHCOHであること以外は、実施例2の工程が繰り返された。その結果得られた、保護アミノ基を備えた中間体色素3dは、NMR分光法により特性化された。
H NMR(DMSO−d,TMS)δppm:2.720(t,CH,2H);3.970(t,CH,2H);4.470(t,CH,2H);4.530(t,CH,2H);5.760(s,CH,1H);5.800(s,CH,1H);7.100〜8.450(m,芳香族,12H)。
【0149】
化合物33dのアミノ基の脱保護を、メタノール中の1Mのメチルアミンとメタノール中の親色素溶液を攪拌することにより、メタノール中のメチルアミンを用いて行った。生成物を、溶剤の蒸発により分離した。色素の脱保護したアミン誘導体3eを、塩化メチレン中でヨード酢酸無水物と反応させ(1:1)、最終生成物を濾過により分離した。最終色素を、塩化メチレンおよびヘキサンを用いて繰り返し沈降させて精製した。
H NMR(DMSO−d,TMS)δppm:1.420(t,CH,3H);3.900(s,CH,2H);4.300(q,CH,2H);4.450(t,CH,2H);4.480(t,CH,2H);5.820(s,CH,1H);5.980(s,CH,1H);7.200〜8.200(m,芳香族,8H)。
【0150】
(実施例4)
この実施例では、チオール反応性ナイルレッド核は、スキームIIIにより調製された。
【0151】
中間体4b:N−フェニル−N−メチル−エタノールアミン4a(50mmol)を、濃HCl(28mL)中で懸濁して5℃に冷却した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム溶液(水10mL中6.67g)を40分間かけて滴下添加した。添加後、反応物を2時間超攪拌し続けた。次に、生成物を濾過し、0.5MのHClで洗浄し真空中で乾燥してニトロソ化合物4bを得た。
H NMR(DO)δppm:3.59(s,CH,3H);3.90(t,CH,2H);4.05(t,CH,2H);7.22〜7.30(m,芳香族,2H);7.50(d,芳香族,1H);7.77(d,芳香族,1H)。13C NMR(DO)δppm:42.44、57.92、58.72、120.29、122.52、125.93、140.56、149.93、163.21。
12の分子量の計算値は180(M+)、実測値181(M+1)(FAB)
【0152】
中間体4d:1,3−ジヒドロキシナフタレン4c(5mmol)を、エタノール(25mL)中で懸濁し、攪拌しながら還流させた。還流液に、45分間かけて中間体4b(5mmol)を分割添加した。添加後、反応混合物を還流で4時間を超えて維持し、次いで冷却した。溶剤を蒸発させ、溶離剤にメタノールおよびクロロホルム(1:9)を用い、生成物色素をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。
H NMR(CDCl)δppm:2.98(s,3H)、3.48(t,2H)、3.83(t,2H)、6.20(s,1H)、6.77(d,1H)、7.10(d,1H)、7.45(s,1H)、7.60〜7.75(m,3H)、7.72(m,1H)、8.08(m,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:39.2、55.6、60.3、102.2、110.2、113.6、124.7、126.3、126.6、126.8、130.6、132.3、133.7、135.1、145.8、148.2、152.4、182.5、183.8。
1926の分子量の計算値は320(M+)、実測値321(M+1)(FAB)
【0153】
化合物4:中間体色素4dを無水アセトニトリル(10mL)中で溶解し、p−ジメチルアミノピリジン(3mg)、次にヨード酢酸無水物(250mg)を添加した。反応物を2時間攪拌した。生成物を溶剤の蒸発により分離し、次いで塩化メチレンおよびヘキサンからの沈降を繰り返して精製を行った。
H NMR(CDCl)δppm:3.14(s,3H)、3.66(s,2H)、3.74(t,2H)、4.38(t,2H)、6.40(s,1H,ArH)、6.54(d,1H,ArH)、6.72(d,1H,ArH)、7.64〜7.75(m,3H,ArH)、8.29(d,1H,ArH)、8.65(d,1H,ArH)。13C NMR(CDCl)δppm:−6.1、39.6、50.9、63.0、97.5、106.4、110.1、124.1、125.6、126.0、130.6、131.2、131.7、131.98、132.0、141.5、146.5、151.8、152.2、169.0、184.1。
2117INの分子量の計算値は488、実測値489(MH)(FAB−MS)。
【0154】
(実施例5)
この実施例は、スキームIVの工程によりナイルレッド核を生成した。
【0155】
中間体5b:9−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン5a(50mg、0.15mmol)、N−ブロモエチルフタルイミド(50mg、0.20mmol)および炭酸カリウム(60mg、0.09mmol)を、攪拌しながらアルゴン下のDMF(15mL)中で混合した。4.5時間還流して反応を進めた。さらなるブロモエチルフタルイミド(25mg)を4.5時間目および6.5時間目(15mg)に添加した。温度を115℃に下げ、一晩かけて反応を進めた。DMFを真空下で除去し、残留物を真空下で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(2%MeOH/CHCl)により、38mgの生成物2−(2−フタルイミジルエトキシ)−ナイルレッド5bを得た。
H NMR(CDCl)δppm:1.22(t,6H)、3.40(q,4H)、4.19(t,2H)、4.40(t,2H)、6.23(s,1H)、6.36(d,1H)、6.59(dd,1H)、7.09(d,1H)、7.52(d,1H)、7.70(m,2H)、7.84(m,2H)、7.96(d,1H)、8.13(d,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:12.8、37.5、45.2、65.3、96.3、105.2、106.5、109.8、118.6、123.5、124.9、126.0、127.9、131.3、132.1、134.2、139.6、146.8、150.7、152.2、161.0、162.8、168.4、183.3。
3025の分子量の計算値は507、実測値508(MH)(FAB−MS)。
【0156】
中間体5c:中間体5b(30mg、0.06mmol)を無水MeOH(8mL)中で溶解し、アルゴン下に置いた。次に、メチルアミン(MeOH中2M、4mL、8mmol))を添加した。反応をRTで5分間、還流で2.5時間行った。フラッシュカラムクロマトグラフィーを、10%MeOH/CHCl中で行って動きの速い不純物を除去し、次いで30%MeOH/CHClで行って生成物2−(2−アミノエトキシ)−ナイルレッド5cを溶出した。溶剤をロータリーエバポレータで除去し、残留物を真空下で蒸発させた。収量:11mg。
H NMR(CDCl)δppm:1.25(t,6H)、3.17(t,2H)、3.45(q,4H)、4.20(t,2H)、6.27(s,1H)、6.43(d,1H)、6.63(dd,1H)、7.15(m,1H)、7.56(d,1H)、8.02(m,1H)、8.18(d,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:12.8、41.6、45.3、63.9、96.4、105.4、106.6、109.9、118.4、124.9、125.9、127.4、128.0、131.3、134.3、147.1、151.0、152.3、161.7、183.5。
2223の分子量の計算値は377、実測値378(MH)(FAB−MS)。
【0157】
化合物5:中間体5c(11mg、0.03mmol)をCHCl(5mL)中で溶解した。ヨード酢酸無水物(21mg、0.06mmol)を次いで添加し、40分間反応させた。CHCl25mLをさらに添加して、反応混合物を分液漏斗に移した。有機相を、10%NaCO(各10mL)で2度洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濾過した。溶剤をロータリーエバポレータで除去した後、最終生成物2−ヨードアセチルアミドエトキシ−ナイルレッド核を真空下で乾燥させ、CHCl/ヘキサンから沈降させた。収量:3.4mg。
H NMR(CDCl)δppm:1.17(t,6H)、3.35(q,4H)、3.69(t,2H)、3.78(s,2H)、4.14(t,2H)、6.12(s,1H)、6.27(s,1H)、6.48(dd,1H)、6.91(d,1H)、7.34(d,1H)、7.74(s,1H)、7.95(s,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:12.9、29.9、40.1、45.3、66.9、96.3、105.2、106.7、109.8、118.0、124.9、125.9、127.8、131.3、134.1、139.4、147.0、151.0、152.2、161.1、168.1、183.3。
2424INの分子量の計算値は545、実測値546(M−H)(CI−MS)。
【0158】
(実施例6)
この実施例は、スキームVによりヨードアセトアミドベンゾジオキサゾール核を生成した。
【0159】
中間体6b:アミノベンゾジオキサゾール6a(10mmol)を、無水炭酸カリウム存在下で臭化エチル(50mmol)と反応させた。生成物を、クロロホルムおよびメタノールを用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、65%収量の中間体6bを得た。
【0160】
1013Oの分子量の計算値は191(M+)、実測値191(M+1)(FAB)であった。
【0161】
中間体6c:POCl(1mL)を、攪拌しながら丸底フラスコで〜5℃にて保持した無水DMF(4mL)に添加した。この混合物に中間体6b(0.4g)を添加し、1時間攪拌し続けた。反応混合物を氷水(100mL)に添加して反応を急冷し、次に1NのKOH(pHを〜9.0に調整)で中和した。生成物を塩化メチレンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。生成物を、クロロホルムを用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、85%の中間体6cを得た。
H NMR(CDCl)δppm:1.36(t,CH,6H);3.91(q,CH,4H);6.19(d,CH,1H);7.82(d,CH,1H);10.01(s,CH,1H)。
1113の分子量の計算値は219(M+)、実測値220(M+1)(FAB)
【0162】
中間体6e:中間体6c(350mg)を、ピペリジン(50mg)存在下で6時間、還流下の無水メタノール中で中間体6d(644mg、中間体2bと同様の方法で調製)と反応させ、親色素6eを生成した。冷却すると分離する結晶を濾過して回収し、次いでメタノール(5%)およびクロロホルムの混合物を用いてシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。
H NMR(CDCl,TMS)δppm:1.42(t,CH,6H);3.20(t,2H);4.0(q,CH,4H);4.40(t,CH,2H);6.50(s,CH,1H);6.51(s,CH,1H);7.5〜8.7(m,芳香族,10H)。
2926Sの分子量の計算値は524(M+)、実測値524(FAB)
得られた色素6eは、以下第1表の極性感受性を示した。
【0163】
【表1】

【0164】
色素のこのような溶剤極性感受性は、タンパク質に付加した場合のその環境−感受性を示している。
【0165】
親中間体であるベンゾジオキサゾール核6eは、NaSおよび水により脱保護して色素6fを生成し、続いてヨード酢酸無水物と反応させて標的色素を形成することができる。
【0166】
(実施例7)
この実施例は、スキームVIによりヨードアセトアミドベンゾジオキサゾール核を生成した。中間体7cは、実施例6の6cと同様の方法で生成された。
【0167】
中間体7d:4−ピコリン(1g)を、12時間125℃にて加熱することによって、2−ブロモエチルフタルイミド(2.5g)と反応させた。形成された無色の固体を、クロロホルムで繰り返し洗浄して精製し、3g(86%)の化合物7dを得た。
H NMR(CDOD)δppm:2.67(s,CH,3H);4.30(t,CH,2H);4.88(t,CH,2H);7.81(m,4H);7.93(d,2H);8.93(m 2H)。13C NMR(CDOD)δppm:22.12、39.63、60.69、124.49、130.00、132.90、135.76、145.45、162.06、169.20。
【0168】
中間体7e:中間体7c(220mg)を、ピペリジン(50mg)存在下で6時間、還流下の無水メタノール中で中間体7d(347mg)と反応させ、親色素7eを形成した。粗生成物を、メタノールおよびクロロホルム(1:9)を用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、7eを得た。
【0169】
化合物77eのフタルイミドの脱保護により、中間体7fを生成し、次いでこれをヨード酢酸無水物と反応させて最終生成物である化合物を生成した。
【0170】
(実施例7−1)
この実施例は、反応スキームVIaによりヨードアセチルベンゾジオキサゾール核7’を生成するために用いることができる。
【0171】
化合物7a’を、炭酸カリウムおよび相間移動触媒の存在下、等量のヨウ化メチルと反応させて中間体7b’を形成する。続いて中間体7b’を2−ブロモエタノールと反応させ、中間体7c’を生成する。中間体7c’のヴィルスマイヤー反応(Vilsmaeir reaction)により中間体7d’を生成し、7d’7e’との反応により中間体7f’を生成する。7f’のヨード酢酸無水物との反応により最終化合物7’を生成する。
【0172】
(実施例8)
この実施例は、スキームVIIによりヨードアセチルベンゾジオキサゾール核を生成する。
【0173】
中間体8b:アミノベンゾジオキサゾール核8a(10mmol)を、無水炭酸カリウム存在下で臭化エチル(50mmol)と反応させた。生成物を、クロロホルムおよびメタノールを用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、65%収量の中間体8bを得た。
【0174】
1013Oの分子量の計算値は191(M+)であり、実測値191(M+1)(FAB)であった。
【0175】
中間体8c:POCl(1mL)を、攪拌しながら丸底フラスコで〜5℃にて保持した無水DMF(4mL)に添加した。この混合物に中間体8b(0.4g)を添加し、1時間攪拌し続けた。反応混合物を氷水(100mL)に添加して反応を急冷し、次に1NのKOH(pHを〜9.0に調整)で中和した。生成物を塩化メチレンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。生成物を、クロロホルムを用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、85%の中間体8cを得た。
H NMR(CDCl)δppm:1.36(t,CH,6H);3.91(q,CH,4H);6.19(d,CH,1H);7.82(d,CH,1H);10.01(s,CH,1H)。
1113の分子量の計算値は219(M+)、実測値220(M+1)(FAB−MS)。
【0176】
中間体8d:2−メチルベンゾチアゾール(2.24g、15mmol)および2−ブロモタノール(2.90g、23mmol)の混合物を、25mLフラスコに取った。反応混合物を120℃で24時間加熱した。24時間後、反応混合物を室温に冷却してクロロホルム(20mL)を添加し、室温で4時間攪拌した。固体生成物を濾過し、クロロホルムで洗浄して乾燥させ、明るい茶色の固体である所望の生成物8dを得た。
H NMR(CDOD)δppm:3.26(s,3H)、4.06(t,2H)、4.94(t,2H)、7.82(t,1H)、7.90(t,1H)、8.25〜8.32(m,2H)。13C NMR(CDOD)δppm:16.8、52.3、59.1、117.0、124.2、128.5、129.4、129.7、141.6、178.1。
【0177】
中間体8e:中間体8c(55mg)を、ピペリジン(100mg)存在下で5時間、還流下の無水メタノール中で中間体8d(70mg)と反応させ、親色素8eを形成した。冷却すると分離する結晶を濾過して回収し、NMRおよび質量分析により確認した。
H NMR(CDOD)δppm:1.38(t,6H)、3.13(t,2H)、4.03(q,4H)、4.13(t,2H)、6.51(d,1H)、6.53(d,1H)、7.67(m,1H)、7.78(m,1H)、7.89(m,1H)、8.03(m,1H)、8.14(m,1H)、8.20(m,1H)。13C NMR(CDOD)δppm:11.62、44.54、51.08、59.18、104.72、108.01、109.18、115.96、123.33、127.47、127.70、129.09、142.10、143.40、144.25、144.97、145.35、149.04、172.69。
2926Sの分子量の計算値は395(M+)、実測値395(FAB MS)。
【0178】
化合物8:親色素8e(20mg)を、ピリジン(50mg)存在下、無水塩化メチレン(5mL)中で室温にて攪拌(3時間)してヨード酢酸無水物(20mg)と反応させた。得られた生成物色素を、ヘキサンから沈降して精製した。
【0179】
2324INの分子量の計算値は563(M+)、実測値563(FAB)であった。
【0180】
(実施例8−1)
この実施例は、反応スキームVIIaによりヨードアセチルベンゾジオキサゾール核8’を生成する。
【0181】
化合物8a’を、無水炭酸カリウムおよび相間移動触媒の存在下、等量のヨウ化メチルと反応させてモノメチルアミノ誘導体8b’を形成する。次いで化合物8b’を、炭酸カリウムおよび相間移動触媒の存在下、2−ブロモエタノールと反応させて中間体8c’を生成する。8c’のヴィルスマイヤー反応により、中間体8d’を生成し、これを8e’と反応させて中間体8f’を形成する。続いて中間体8f’とヨード酢酸無水物との反応により最終化合物8’を生成する。
【0182】
(実施例9)
この実施例は、スキームVIIIによりアザクマリン核を生成する。
【0183】
中間体9b:10mLの濃HCl中のN,N’−ジメチルアミノフェノール9a(3.42g、25mmol)溶液を、100mLフラスコに入れ、混合物を5℃に冷却した。フラスコの内容物を強く攪拌し、水(5mL)中のNaNO(1.80g、26mmol)溶液を、30分間かけて反応混合物に直接に添加した。反応温度を、添加の間中5℃に維持した。添加終了後、反応混合物を5℃で1時間攪拌し、濾過した。固体を、10mLの5MのHCl、次にエタノール(25mL)で洗浄し、風乾して黄色固体9b(3.00g、72%)を得た。
【0184】
10Sの分子量の計算値は166.18、実測値167(MH)(FAB−MS)であった。
【0185】
中間体9e:メタノール5mL中の10%Pd/C(25mg)スラリーをアルゴン雰囲気下で15分間攪拌した。メタノール(5mL)中のNaBH(190mg、5.0mmol)溶液を、このスラリーに添加した。メタノール(13mL)に溶解し、トリエチルアミン(2mL)を含有するニトロソ化合物9b(500mg、2.5mmol)溶液を、5分間かけて、Pd/Cスラリーに滴下添加した。還元反応中、赤色のニトロソ化合物は明るい黄色に変化した。15分後、メタノール(4.0mL)中のNaBH(190mg、5.0mmol)の追加量を添加して確実に完全な還元を行い、中間体9cを形成した。さらに30分間攪拌を続け、エチルピルベート9d(3.0mL、27mmol)を反応混合物に添加し、次いで内容物を加熱還流した。3時間の還流後、反応混合物を室温に冷却し、セライト(登録商標)により濾過して未反応Pd/Cを除去した。濾液を蒸発させて残留物を得、これを、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけてヘキサンおよび酢酸エチル(9:1v/v)の混合物により溶出し、黄色固体9e(400mg、78%)を得た。
H NMR(CDCl)δppm:2.48(s,3H)、3.06(s,6H)、6.40(s,1H)、6.65(m,1H)、7.50(m,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:21.0、40.5、97.5、109.8、122.9、129.2、147.6、148.9、152.0、154.7。
1112の分子量の計算値は204、実測値205(MH)(FAB−MS)。
【0186】
中間体9g:POCl(1.13g、7.4mmol)を、5℃に維持した無水DMF(15mL)に添加した。混合物をアルゴン雰囲気下、5℃で30分間攪拌し、次いで2−(メチルフェニルアミノ)−エタノール(1.12g、7.4mmol)9fを添加し、その結果得られた溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物を、氷水をゆっくり添加して加水分解し、NaOH(2M)を添加して中和し、pHを7.0に調整した。生成物をメチルtert−ブチルエーテル(3x50mL)で抽出し、無水NaSO上で乾燥、蒸発させて黄色い液体を得た。生成物を、以下の通りカラムクロマトグラフィーにより精製した。粗生成物を、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサンおよび酢酸エチル、(9:1v/v)の混合物で溶出した。純留分の蒸発により、化合物9g(0.80g、60%)を得た。
H NMR(CDCl)δppm:3.00(s,3H)、3.64(t,2H)、4.36(t,2H)、6.76(m,2H)、7.28(m,2H)、8.07(s,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:38.9、51.2、61.3、112.4、117.1、129.5、149.0、161.2。
1013NOの分子量の計算値は179、実測値179(M+)(FAB−MS)。
【0187】
中間体9h:無水エタノール(4mL)中の化合物9e(100mg、0.49mmol)および化合物9g(100mg、0.56mmol)の溶液を、アルゴン雰囲気下で攪拌した。この溶液に、ナトリウムメトキシド(26mg、0.50mmol)を添加し、反応混合物を加熱還流した。4時間後、反応混合物を室温に冷却し、蒸発させて暗褐色の残留物を得た。得られた残留物を最少量のクロロホルムに溶解し、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけた。メタノールおよびクロロホルム(5:95、v/v)の混合物を用いた溶出により、固体の生成物9h(40m、23%)を得た。
H NMR(CDCl)δppm:2.96(s,6H)、3.10(s,3H)、3.47(t,2H)、3.82(t,2H)、6.36(s,1H)、6.46(s,1H)、6.53(d,1H)、6.75(m,1H)、6.80(d,2H)、7.24(m,2H)、7.56(d,1H)。13C(CDCl)δppm:38.9、40.6、55.7、60.3、96.9、102.2、103.8、111.0、113.3、117.4、129.4、129.8、143.1、144.5、145.3、149.7、150.3、151.8、178.88。
【0188】
化合物9(ヨードアセチルアザクマリン、IAZCO):無水クロロホルム(2mL)中の化合物9h(20mg、0.060mmol)溶液に、ピリジン(50μL)を添加し、アルゴン雰囲気下で5分間攪拌した。この溶液に、ヨード酢酸無水物(30mg、0.09mmol)を添加し、2時間攪拌し続けた。クロロホルムを蒸発させ、残留物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけてメタノールおよびクロロホルム(5:95、v/v)の混合物で溶出して、暗色の固体の生成物9(25mg、855)を得た。
【0189】
(実施例9−1)
この実施例は、反応スキームVIIIaによりアザクマリン核9’を生成する。
【0190】
3−ヒドロキシ−N−メチルアラニン9a’を、HCl存在下で亜硝酸ナトリウムと反応させて化合物中間体9b’を生成する。9b’のニトロソ基を、Pd/Cおよび水素化ホウ素ナトリウムで還元して中間体9c’を生成し、次に9d’と反応させて中間体9e’を生成する。2−ブロモエタノールを中間体9e’と反応させて中間体9f’生成する。中間体9f’9g’と反応させて中間体9h’を生成する。ピリジン存在下、9h’をヨード酢酸無水物と反応させて最終生成物9’を得る。
【0191】
(実施例10)
この実施例では、反応スキームIXを用いて化合物10を生成した。
【0192】
中間体10c:4−(ジエチルアミノ)サリチルアルデヒド10a(2.00g、10.0mmol)およびグルタコン酸ジエチル10b(2.00g、11.0mmol)を、ピペリジン(50mg)存在下、無水エタノール(25mL)中で還流した。6時間の還流後、反応混合物を室温に冷却し、得られた黄色い結晶を分離し、低温エタノール(10mL)で洗浄、真空下で乾燥して所望の生成物10c(2.60g、82%)を得た。
H NMR(CDCl)δppm:1.22(t,6H)、1.29(t,3H)、3.42(q,4H)、4.23(q,2H)、6.48(d,1H)、6.60(d,1H)、6.94(d,1H)、7.30(d,1H)、7.53(d,1H)、7.70(s,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:12.7、14.6、45.2、60.6、97.2、108.8、109.6、114.8、119.7、130.0、139.6、144.6、151.9、156.7、160.5、168.0。
1821NOの分子量の計算値は315、実測値315(M)(FAB−MS)。
【0193】
中間体10d:水(3mL)を、THF(12mL)中の化合物10c(1.00g、0.315mmol)溶液に添加した。この混合物に、OsO(t−ブタノール中2.5%)20mgを添加し、得られた反応混合物を室温で1時間攪拌した。この後、粉末NaIO(1.50g、7.0mmol)の一部を30分かけて添加し、さらに48時間攪拌し続けた。攪拌後、溶剤を除去し、得られた固体をCHCl(200mL)中に溶解し、水(75ml)で洗浄した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥、蒸発させて黄色固体を得た。少量の出発原料を含有する粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl/EtOAc、4:1)で精製して、黄色固体(320mg、41%)の純生成物10dを生成した。
H NMR(CDCl)δppm:1.25(t,6H)、3.48(q,4H)、6.48(d,1H)、6.64(m,1H)、7.40(d,1H)、8.25,(s,1H)、10.12(s,1H)。13C NMR(CDCl)δppm:12.67、45.49、97.35、108.43、110.39、114.50、132.4、145.6、153.7、159.2、162.1、188.2。
1415NOの分子量の計算値は245、実測値246(MH)(FAB−MS)。
【0194】
中間体10f:2−メチルベンゾチアゾール10e(2.24g、15mmol)および2−ブロモエタノール(2.90g、23mmol)の混合物を、25mLフラスコに取った。反応混合物を120℃で24時間加熱した。24時間後、反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム(20mL)を添加して、室温で4時間攪拌した。固体生成物を濾過し、クロロホルムで洗浄して乾燥させ、明るい茶色の固体である所望の生成物10fを得た。
H NMR(CDOD)δppm:3.26(s,3H)、4.06(t,2H)、4.94(t,2H)、7.82(t,1H)、7.90(t,1H)、8.25〜8.32(m,2H)。13C NMR(CDOD)δppm:16.8、52.3、59.1、117.0、124.2、128.5、129.4、129.7、141.6、178.1。
【0195】
中間体10g:無水メタノール(3mL)中のクマリンアルデヒド10d(60mg、0.22mmol)および化合物10f(50mg、0.20mmol)溶液を10mLフラスコに取った。この溶液に、ピペリジン(30mg)を添加し、加熱還流した。明るい茶色の反応混合物は、約30分でゆっくりと紫色に変化した。内容物を一晩還流し、室温に冷却し、溶剤として3%メタノールを含有するクロロホルムを用いて、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。純留分の蒸発により、45mgの所望の色素、10gを得た。
【0196】
化合物10(ICOBzT):無水クロロホルム(3mL)中の化合物10g(30mg、0.060mmol)溶液に、ピリジン(30mg)を添加し、アルゴン雰囲気下で攪拌した。ヨード酢酸無水物(30mg、0.080mmol)をこの攪拌した反応物に添加し、3時間攪拌し続けた。次いで溶剤を蒸発させ、得られた残留物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけた。5%メタノール含有クロロホルムを用いた溶出により、紫色の固体である純化合物10を得た。本明細書に記載の10(ICOBzT)に結合したグルコース/ガラクトース変異体A213Cは、グルコース100mMの存在下で10nmの波長シフト(レッドシフト)を示した。(622から632nmへのシフト)。
【0197】
(実施例10−1)
この実施例は、反応スキームIXaによりクマリン核10’を生成する。
【0198】
3−ヒドロキシ−N−エチルアニリン(10a’)を2−ブロモエタノールと反応させて中間体10b’を生成する。ヴィルスマイヤー反応を10b’で行い中間体10c’を得た。さらに10c’10d’との反応により中間体10e’を生成する。OsOおよび過ヨウ素酸ナトリウムとの反応により中間体10f’を生成する。続いて、10f’10g’と反応させて中間体10h’を生成する。10h’をヨード酢酸無水物と反応させて所望の生成物10’を得る。
【0199】
(実施例11)
GGBP結合:200uLのPBS緩衝液中のH152C GGBP(4nmol)溶液を調製し、これをDTT(8nmol)で室温にて30分間培養した。スクエアレインヨードエステル核(1mg、120uLのDMSO中に部分溶解)溶液を添加し、混合物をホイルで包み、室温で4時間放置した。標識タンパク質を、PBS緩衝液で溶出しながら、NAP−5サイズ排除カラムから第2留分として得た。タンパク質のグルコースに対する蛍光反応を、96ウェルマイクロウェルプレートのいくつかのウェル中で分析した。グルコースをPBSに添加し、最終グルコース濃度を0〜1mMにした。標識タンパク質のグルコースに対する蛍光反応は、グルコースをPBS緩衝液中の標識タンパク質溶液に添加して判定した。典型的には、蛍光測定は、Varian Cary Eclipse蛍光光度計(Varian, Inc.、パロアルト、CA)またはPTI分光蛍光計(Photon Technology International, Inc.、ローレンスビル、NJ)のどちらかを使用した。プレートの蛍光強度は、625nmでの励起および660nmでの発光を用いて、マイクロウェルプレート調節器を備えたVarian Cary Eclipse蛍光光度計により読み取った。この結果、スクエアレインヨードエステル核−結合タンパク質複合体蛍光特性は、分析物濃度に対応しており、したがってバイオセンサーとして機能していた。これは、図3に示す通り、標識タンパク質およびグルコース間の近似Kdが6uMであることを示した。
【0200】
さらに、各GGBP変異体を、スクエアレインヨードエステル核で標識した。結合定数(第2表)は、96ウェルマイクロプレート中に緩衝液(PBS)中の標識タンパク質約0.1μMを有する試料を調製し、さまざまなグルコース濃度(最終濃度は0〜1mMまたは0〜10mM)の溶液を添加して判定した。Kdは、非特許文献4を出典とする以下の関係式から判定した(非特許文献4参照):
式中、Fは蛍光強度であり、Finfは無限遠の蛍光強度であり、F0はグルコースゼロの蛍光強度であり、xは、以下の関係式により決まるグルコース遊離濃度([GLc]free)である:
【0201】
【数1】

【0202】
式中、[GLc]totおよび[PLo]totは、それぞれグルコースおよびタンパク質の合計濃度である。[GLc]tot>>Kdおよび[GLc]tot>>[Pro]totの場合、上記2つの方程式は、以下の形に単純化できることに注目されたい。
【0203】
F=F0+[(Fconstx)/(1+x/Kd)]
式中、Fconst=(Finf−F0)/Kd。
【0204】
【表2】

【0205】
(実施例12)
表3に示した通り、タンパク質にシステイン置換を有する、色素とGGBP(グルコース/ガラクトース結合タンパク質)との複合体をいくつか調製した。一般に、化合物とGGBPとの複合体は、化合物とGGBPとの複合体より溶液中では大幅に安定していた。PBS緩衝液中のタンパク質のアリコートを、DTT(ジチオスレイトール)で10〜30分間処理し、続いてDMSO中のヨードアセチルスクエアレイン色素を添加した。約3〜4時間後、反応を止め、サイズ排除クロマトグラフィー(NAP−5カラム)により、色素標識されたタンパク質を得た。蛍光反応を、600nmでの励起および625nm〜700nmでスキャンされた発光により判定した。最大発光は660nm付近で観察された。
【0206】
化合物とV19C GGBPとの複合体の吸光スペクトルを、図4のグラフに示す。この吸光スペクトルは、本明細書に記載の複合体の典型的なスペクトルである。
【0207】
全ての複合体を、少なくとも10mMのグルコースで処理し、蛍光変化をモニターした。図5は、V19C GGBPに結合した化合物のグルコース濃度の変化により観察された蛍光変化を示している。誘導体A213Cでは、グルコース結合により、青色領域への2〜3nmの蛍光シフトが観察された。この結果、スクエアレインヨードエステル核2−結合タンパク質複合体の蛍光特性は、分析物濃度に対応しており、したがってバイオセンサーとして機能していた。
【0208】
【表3】

【0209】
(実施例13)
同様のプロトコルを用いて、E149C GGBP、H152C GGBPおよびS337C MBPを、ナイルレッド化合物およびで標識した。蛍光励起は550nmであり、最大発光は650nmであった。蛍光強度の変化を表4に示す。この結果、ナイルレッド核4−および5−結合タンパク質複合体の蛍光特性は、分析物濃度に対応しており、したがってバイオセンサーとして機能していた。
【0210】
【表4】

【0211】
(実施例14)
9(IAZCO)を用いたグルコース/マルトース検出:アザクマリン核IAZCOを、前述の実施例の通りにグルコース結合タンパク質(GBP)およびマルトース結合タンパク質(MBP)に結合させた。システイン残基置換を伴うタンパク質GGBP(グルコース/ガラクトース結合タンパク質)およびMBP(マルトース結合タンパク質)の誘導体を調製した。一般的には、PBS緩衝液中のタンパク質のアリコートを、DTT(ジチオスレイトール)で10〜30分間処理した後、DMSO中の色素を添加した。約3〜4時間後、反応を止め、サイズ排除クロマトグラフィー(NAP−5カラム)により、色素標識されたタンパク質を得た。標識されたタンパク質のグルコース/マルトースに対する蛍光反応を、600nmでの励起および620nm〜700nmでスキャンされた発光により判定した。この結果、(IAZCO)に結合したグルコース/ガラクトース結合タンパク質変異体E149Cは、100mMグルコースの存在下では9nmの波長シフト(ブルーシフト)を示し(653nmから644nmへシフト)、したがってバイオセンサーとして機能していた。
【0212】
さまざまなタンパク質およびグルコース/マルトースを伴うについて観察された蛍光変化を、第5表に示す。これらの結果は、PBS(pH7.4)中の色素−タンパク質複合体(<1.0μM)の蛍光強度を測定することにより得た。グルコース/マルトースの飽和量(100mM)を添加し、蛍光比を得た。この結果、アザクマリン核9−結合タンパク質複合体の蛍光特性は、分析物濃度に対応しており、したがってバイオセンサーとして機能していた。
【0213】
【表5】

【0214】
(実施例15)
経皮的読み取り実験
1つの実施形態では、インビトロでの経皮的グルコース/マルトース検出実験を、本明細書に記載のNIR色素を用いて行った。
【0215】
3つのタンパク質−NIR複合体(以下に示す)を試験基質として選択した。
【0216】
(a)化合物のヨードアセチルアザクマリン核(IAZCO)に結合したA213C GGBP
(b)化合物のヨードアセチルアザクマリン核(IAZCO)に結合したS337C MBP
(c)化合物のヨードアセチルナイルレッド核(INR)に結合したS337C MBP
これらの複合体を、架橋ポリエチレングリコール(PEG)ディスクに注入し、ディスクを経皮的読み取り試験に使用した。マイクロウェルプレート中のこれら複合体のPBS溶液についても経皮試験を行った。ブランクのPEGディスクおよびPBSを対照として使用した。PBSおよびPEGディスク中のタンパク質活性は、インビトロでの実験前に試験した。
【0217】
(i)グルコースに対する反応
図6では、PEGディスク10をウサギの皮膚12に乗せ、レーザー14で励起し、検出器16により皮膚の裏側から読み取った。ウサギの皮膚は、厚さ約3〜4mmでヒトの目には透明でなかった。励起は590nmのLED光を用いて行い、蛍光強度は650nmでモニターした。フィルター18を用いて、励起光および励起散乱の干渉を回避した。
【0218】
PEGディスクおよび溶液ともに蛍光強度は安定しており、グルコースを添加すると蛍光強度は上昇し、2〜4分上昇し続けた。このタイムラグは、図7に示したように、グルコース/マルトースがヒドロゲルへゆっくり拡散したことを表している可能性がある。対照溶液では、反応が速く、ラグは見られなかった。ブランクのPEGディスクおよびPBS溶液を用いた対照試験では、グルコースを添加した際の蛍光変化は見られなかった。この結果、アザクマリン核9−結合タンパク質複合体、およびナイルレッド核4−結合タンパク質複合体の蛍光特性は、分析物の存在に対応しており、したがって経皮的バイオセンサーとして機能していた。
【0219】
(ii)MBPを用いたマルトースに対する反応
INR−MBP PEGディスクおよび溶液を用いて、上記の実験を繰り返した。に結合したA213C GGBPの場合のように、PEGディスクおよび溶液ともに蛍光強度は安定していた。マルトースを添加すると蛍光強度は上昇し、2〜4分上昇し続けた。
【0220】
以下の第6表は、経皮的読み取り実験で観察された蛍光強度の変化をまとめたものである。
【0221】
【表6】

【0222】
これらの実施例で得られたデータは、色素および複合体が周囲条件下で分析物の結合および安定性を示すことを証明している。本発明のさまざまな実施形態を説明するために、いくつかの実施形態が選択されているものの、添付した特許請求の範囲に定義した本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および修正ができることを当業者にあっては理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】クロロホルム中の化合物の吸光スペクトルを示す図である。
【図2】クロロホルム中の化合物の励起および発光スペクトルを示す図である。
【図3】PBS緩衝液中のH152C GGBPに結合した化合物の滴定曲線を示す図である。
【図4】PBS緩衝液中のV19C GGBPに結合した化合物の吸光スペクトルを示す図である。
【図5】PBS緩衝液中のグルコース濃度の変化に反応した、V19C GGBPに結合した化合物の蛍光強度の変化を示す図である。
【図6】実施例15で用いられる器具の概略図である。
【図7】インビトロでの経皮的測定において、グルコースを添加した際の、A213C GGBPに結合したの蛍光特性の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

A−Y
を有するフルオロフォアであって、
式中、Aは、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核およびアザクマリン核からなる群から選択され;および
Yは、
【化1】

(式中、nは1から6の整数);
A’−CO−R(式中、A’は−RO−または−RN(R)−、RはCからCのアルキル、RはHまたはCH、およびRはCHCl、CHBr、CHI);または
【化2】

(式中、mは2から6の整数)
であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項2】
は、CからCのアルキルであることを特徴とする、請求項1に記載のフルオロフォア。
【請求項3】
は、CHCHであることを特徴とする、請求項2に記載のフルオロフォア。
【請求項4】
Oは、−CHCHO−であることを特徴とする、請求項1に記載のフルオロフォア。
【請求項5】
N(R)−は、−CHCHNH−であることを特徴とする、請求項1に記載のフルオロフォア。
【請求項6】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、式
【化3】

を有するスクエアレイン核であり、
式中、R’は、HまたはOHであり、R’’は、独立してメチル、エチル、またはプロピルであり、Yは、請求項1に記載の通りであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項7】
請求項6に記載のフルオロフォアであって、
【化4】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項8】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、式
【化5】

を有するスクエアレイン核であり、
式中、Rは、CからCのアルキルまたは(CHCOH(式中、qは1から5の整数)であり、ZおよびZ’は、独立してS、O、またはC(CHであり、WおよびW’は、独立してH、CH、SOH、縮合ベンゼン、または縮合スルホベンゼンであり、
Yは、請求項1に記載の通りであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項9】
請求項8に記載のフルオロフォアであって、
【化6】

であり、
式中、Rは、エチルまたは(CHCOHであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項10】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、式
【化7】

を有するナイルレッド核であり、
式中、Rは、メチル、エチル、またはプロピルであり、
Yは、請求項1に記載の通りであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項11】
請求項10に記載のフルオロフォアであって、
【化8】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項12】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、式
【化9】

を有するナイルレッド核であり、
式中、RまたはRは、独立してメチル、エチル、またはプロピルであり、
Yは、請求項1に記載の通りであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項13】
請求項12に記載のフルオロフォアであって、
【化10】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項14】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、
【化11】

からなる群から選択される式を有するベンゾジオキサゾール核であり、
式中、rは、1から3の整数であり、RおよびRは、独立してCからCのアルキルまたは(CHCOH(式中、sは、2から5の整数)であり、Zは、S、O、またはC(CHであり、Wは、H、CH、SOH、縮合ベンゼン、または縮合スルホベンゼンであり、
Yは、請求項1に記載の通りであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項15】
請求項14に記載のフルオロフォアであって、
【化12】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項16】
請求項14に記載のフルオロフォアであって、
【化13】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項17】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、
【化14】

からなる群から選択される式を有するベンゾジオキサゾール核であり、
式中、rは、1から3の整数であり、RおよびRは、独立してCからCのアルキルまたは(CHCOH(式中、sは2から5の整数)であり、Wは、H、CH、SOH、縮合ベンゼン、または縮合スルホベンゼンであり、
Yは、請求項1に記載の通りであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項18】
請求項17に記載のフルオロフォアであって、
【化15】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項19】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、
【化16】

からなる群から選択される式を有するアザクマリン核であり、
式中、Yは、請求項1に記載の通りであり、
10、R11およびR12は、独立してCからCのアルキルまたは
−(CHCOHであり、
Dは、CHまたはNであり、
rは、1から3の整数であり、sは、2から5の整数であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項20】
請求項19に記載のフルオロフォアであって、
【化17】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項21】
請求項1に記載のフルオロフォアであって、Aは、
【化18】

からなる群から選択される式の核を有するクマリン核であり、
式中、Yは、請求項1に記載の通りであり、
10、R11およびR12は、独立してCからCのアルキル、または
−(CHCOH(式中、sは2から5の整数)であり、Zは、S、O、または−C(CHであり、rは、1から3の整数であり、Wは、H、CH、−SOH、縮合ベンゼンまたは縮合スルホベンゼンであり、およびDは、CHまたはNであることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項22】
請求項21に記載のフルオロフォアであって、
【化19】

であることを特徴とするフルオロフォア。
【請求項23】

A−Y’−B
を有するバイオセンサー化合物であって、
式中、Aは、蛍光発光を示し、かつスクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核、およびアザクマリン核からなる群から選択されるフルオロフォアであり、
Y’−Bは、
【化20】

(式中、nは1から6の整数)であり、
またはY’−Bは、A’−CO−V−Bであり、A’は−RO−または−RN(R)−(式中、RはCからCのアルキル、RはHまたはCH)であり、およびV−Bは、−CH−Bまたは
【化21】

(式中、mは2から6の整数であり、
Bは、検出されるリガンドに結合親和性を有するレセプター)であり、前記バイオセンサー化合物は、前記リガンドの結合の結果としての蛍光特性における検出可能な変化を示すことを特徴とするバイオセンサー化合物。
【請求項24】
前記レセプターは、結合タンパク質であることを特徴とする、請求項23に記載のバイオセンサー化合物。
【請求項25】
Bは、ペリプラズム結合タンパク質であることを特徴とする、請求項23に記載のバイオセンサー化合物。
【請求項26】
前記バイオセンサーの蛍光発光は、575nmを超えることを特徴とする、請求項23に記載のバイオセンサー化合物。
【請求項27】
Bは、グルコース/ガラクトース結合タンパク質(GGBP)であることを特徴とする、請求項23に記載のバイオセンサー化合物。
【請求項28】
前記結合タンパク質は、少なくとも1つのアミノ酸置換を有するグルコース/ガラクトース結合タンパク質であり、前記少なくとも1つのアミノ酸置換は、位置11のシステイン、位置14のシステイン、位置19のシステイン、位置43のシステイン、位置74のシステイン、位置107のシステイン、位置110のシステイン、位置112のシステイン、位置113のシステイン、位置137のシステイン、位置149のシステイン、位置213のシステイン、位置216のシステイン、位置238のシステイン、位置287のシステイン、位置292のシステイン、位置112のシステインおよび位置238のセリン、位置149のシステインおよび位置238のセリン、位置152のシステインおよび位置213のセリン、位置213のシステインおよび位置238のシステイン、位置149のシステインおよび位置213のアルギニン、位置149のシステインおよび位置213のセリンおよび位置238のセリン、および位置149のシステインおよび位置213のアルギニンおよび位置238のセリンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項23に記載のバイオセンサー化合物。
【請求項29】
Oは、−CHCHO−であることを特徴とする、請求項23に記載のバイオセンサー化合物。
【請求項30】
N(R)は、−CHCHNH−であることを特徴とする、請求項23に記載のバイオセンサー化合物。
【請求項31】
請求項23に記載のバイオセンサー化合物であって、前記
A−Y’−Bは、
【化22】

【化23】

【化24】

からなる群から選択され、
Y’−Bは、
【化25】

(式中、nは1から6の整数)であり、
またはY’−Bは、A’−CO−V−Bであり、A’は−RO−または−RN(R)−(式中、RはCからCのアルキル、RはHまたはCH)、およびV−Bは、−CH−Bまたは
【化26】

(式中、mは2から6の整数であり、
Bは、検出されるリガンドに結合親和性を有するレセプター)であり、前記バイオセンサー化合物は、前記リガンドの濃度変化の結果としての蛍光特性における検出可能な変化を示すことを特徴とするバイオセンサー化合物。
【請求項32】
請求項23に記載のバイオセンサー化合物であって、前記
A−Y’−Bは、
【化27】

【化28】

【化29】

(式中、Bは請求項23に記載の通り)
からなる群から選択されることを特徴とするバイオセンサー化合物。
【請求項33】
少なくとも1つの変異結合タンパク質を有し、前記結合タンパク質のチオール基を介して前記結合タンパク質に共有結合されたフルオロフォアを伴うバイオセンサー化合物であって、前記フルオロフォアは、少なくとも約575nmで発光蛍光を示し、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核およびアザクマリン核からなる群から選択されるバイオセンサー化合物を提供する工程、
前記結合タンパク質を分析物源と接触させて、前記分析物を前記結合タンパク質に結合させる工程、および、
前記結合タンパク質をエネルギー源に曝して前記フルオロフォアを励起する工程、および前記分析物源の分析物または分析物濃度の指標として蛍光特性を検出する工程
を含むことを特徴とする分析物の検出方法。
【請求項34】
前記結合タンパク質は、ペリプラズム結合タンパク質であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、前記結合タンパク質を前記分析物源と連続的に接触させる工程、前記結合タンパク質を前記エネルギー源に連続的に曝す工程、および前記蛍光特性を検出する工程を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記変異結合タンパク質は、前記分析物の分析物濃度の変化の結果として立体構造が変化し、およびここで、前記方法は、前記分析物濃度の変化の結果として前記蛍光特性の変化を検出することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法であって、前記変異結合タンパク質は、位置11のシステイン、位置14のシステイン、位置19のシステイン、位置43のシステイン、位置74のシステイン、位置107のシステイン、位置110のシステイン、位置112のシステイン、位置113のシステイン、位置137のシステイン、位置149のシステイン、位置213のシステイン、位置216のシステイン、位置238のシステイン、位置287のシステイン、位置292のシステイン、位置112のシステインおよび位置238のセリン、位置149のシステインおよび位置238のセリン、位置152のシステインおよび位置213のセリン、位置213のシステインおよび位置238のシステイン、位置149のシステインおよび位置213のアルギニン、位置149のシステインおよび位置213のセリンおよび位置238のセリン、および位置149のシステインおよび位置213のアルギニンおよび位置238のセリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有するグルコース/ガラクトース結合タンパク質であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法であって、前記バイオセンサー化合物は、式
A−Y’−B
を有し、式中、Aは、前記スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核、またはアザクマリン核であり、
Y’−Bは、
【化30】

(式中、nは1から6の整数)であり、またはY’−Bは、A’−CO−V−Bであり、A’は−RO−または−RN(R)−(式中、RはCからCのアルキル、RはHまたはCH)であり、V−Bは、−CH−Bであり、
または
【化31】

(式中、mは2から6の整数であり、
Bは、前記ペリプラズム結合タンパク質)である
ことを特徴とする方法。
【請求項39】
Bは、グルコース/ガラクトース結合タンパク質またはマルトース結合タンパク質であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
Oは、−CHCH−O−であることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
N(R)は、−CHCHNH−であることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
請求項38に記載の方法であって、
A−Y’−Bは、
【化32】

【化33】

【化34】

からなる群から選択され、
Y’−Bは、
【化35】

(式中、nは1から6の整数)であり、
またはY’−Bは、A’−CO−V−Bであり、A’は−RO−または−RN(R)−(式中、RはCからCのアルキル、RはHまたはCH)、およびV−Bは、−CH−Bまたは
【化36】

(式中、mは2から6の整数であり、
Bは、検出されるリガンドに結合親和性を有するレセプター)であり、前記バイオセンサー化合物は、前記リガンドの濃度変化の結果としての蛍光特性における検出可能な変化を示すことを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項38に記載の方法であって、
A−Y’−Bは、
【化37】

【化38】

【化39】

からなる群から選択され、
式中、Bは、請求項38に記載の通りであることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−500446(P2008−500446A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527456(P2007−527456)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017648
【国際公開番号】WO2006/025887
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】