説明

開閉装置、開閉方法、電子機器および記録再生装置

【課題】 フロントパネルが他の部分と干渉しないように、フロントパネルの外面を上方に向けさせることができる開閉装置、開閉方法、電子機器および記録再生装置を提供する。
【解決手段】 フロントパネル2の上部側を、本体側固定部材82のガイド溝に沿って、フロントパネル2が閉じた状態における第1の上部位置と、第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置との間において変位可能とし、フロントパネル2の下部側を、パネル側固定部材84のガイド溝に沿って、少なくとも、フロントパネル2が閉じた状態における第1の下部位置と、第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置との間において変位可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開閉装置、開閉方法、電子機器および記録再生装置に関し、特に、フロントパネルの外面を上方に向けさせる開閉装置、開閉方法、電子機器および記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録再生装置などの電子機器の前面にスイッチなどの操作キーが配されたフロントパネルが設けられている。フロントパネルの外面は、通常、電子機器の設置面に対して垂直とされており、操作キーの視認性および操作性が良好でない。特に、パネルへの指の接触をセンサによって検出するタッチパネル装置をフロントパネルに配置した場合、タッチパネル装置のパネルへの手指の接触面積が小さくなる、タッチパネル装置のパネルに手指の爪が触れてしまうなどの理由によって、良好な指先の接触の検出が難しい。
【0003】
そこで、開閉装置によってフロントパネルの下側を突出させ、フロントパネルを上方に向けさせることによって、操作キーの視認性および操作性を向上させることができる。
【0004】
例えば、以下の特許文献1には、電子機器本体のフロントパネルに表示部を有する開閉扉を備え、開閉扉は駆動機構により扉下部がパネル前方側に迫り出しながら下方へ開放動作し、開閉扉の開放位置では当該扉と共に表示部がやや上向き傾斜状態になるようにしたことで、開閉扉の開放状態において表示部がユーザの視認し易い角度となり、操作性の向上と共に前面パネルのデザイン性を高めることができる電子機器が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−173362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の開閉装置、開閉方法、電子機器および記録再生装置には、以下のような問題点があった。フロントパネルにタッチパネル、表示装置などの比較的厚みのあるものを備えさせた場合、必然的にフロントパネルの厚みが厚くなってしまう。このように厚みのあるフロントパネルは、簡単な構造によってフロントパネルと本体部とが干渉しないように外面を上方に向けさせることが困難であるという問題点があった。
【0007】
特に、記録再生装置には光ディスクなどの着脱可能な記録媒体の挿入口が機器の前面側、すなわちフロントパネル側に設けられていることが多く、単純にフロントパネルの外面を上方に向けさせるとフロントパネルと記録媒体の出入路とが干渉してしまうという問題点があった。
【0008】
したがって、この発明の目的は、フロントパネルが他の部分と干渉しないように、フロントパネルの外面を上方に向けさせることができる開閉装置、開閉方法、電子機器および記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、フロントパネルの上部側に設けられている支点を、フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置と、第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置との間において変位可能にガイドする第1のガイド部と、
第1のガイド部によるフロントパネルの上部側の変位と連動して、フロントパネルの下部側を、少なくとも、フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置と、第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置との間において変位可能にガイドする第2のガイド部と
を有することを特徴とする。
【0010】
第1の発明では、フロントパネルの外面を上方に向けさせる際に、フロントパネルの上部側に設けられている支点は、フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置から第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置に変位し、それと連動して、フロントパネルの下部側は、フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置から、第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置に変位するため、第1の下部位置から第2の下部位置までは、フロントパネルの下部側は、前方斜め下方に向かって変位する。また、フロントパネルを閉じる際に、フロントパネルの上部側に設けられている支点は、第2の上部位置から第1の上部位置に変位し、それと連動して、フロントパネルの下部側は、第2の下部位置から第1の下部位置に変位するため、第2の下部位置から第1の下部位置までは、フロントパネルの下部側は、後方斜め上方に向かって変位する。したがって、フロントパネルの上部側および後部側と他の部分との干渉を防止できる。
【0011】
第1の発明において、第2のガイド部は、さらにフロントパネルの下部側を、第2の下部位置と、第2の下部位置よりも前方斜め上方にある第3の下部位置との間において変位可能にガイドすることが好ましい。これによって、フロントパネルの外面を上方に向けさせる際に、フロントパネルの下部側は、第1の下部位置から第3の下部位置に変位するため、第2の下部位置から第3の下部位置までは、フロントパネルの下部側は、前方斜め上方に向かって変位する。また、フロントパネルを閉じる際に、フロントパネルの下部側は、第3の下部位置から第1の下部位置に変位するため、第3の下部位置から第2の下部位置までは、フロントパネルの下部側は、後方斜め下方に向かって変位する。したがって、フロントパネルの下部側と他の部分との干渉を防止できる。
【0012】
また、第1の発明において、第2のガイド部は、フロントパネルの下部側を、第1の下部位置と第2の下部位置と第3の下部位置との間において、凸部が下側となる曲線状にガイドすることが好ましい。これによって、フロントパネルの下部側を滑らかに変位させることができる。
【0013】
また、第1の発明において、曲線は、フロントパネルの最も上側の位置よりも上方であり、フロントパネルの最も前側の位置よりも前方である位置を中心とする円弧であることが好ましい。これによって、フロントパネルの上部側、後部側および下部側と他の部分との干渉を防止できる。
【0014】
また、第1の発明において、フロントパネルの下部側を第1の下部位置からガイド方向に向かって押し出す押出部をさらに有することが好ましい。これによって、自動的にフロントパネルの外面を上方に向けさせることができる。さらに、少なくともフロントパネルを閉じた状態では、フロントパネルの下部側の変位動作がロックされることが好ましい。これによって、ロックが解除された際に自動的にフロントパネルの外面を上方に向けさせることができる。また、押出部によるフロントパネルの下部側の変位速度を一定速度に抑制するダンパが設けられていることが好ましい。これによって、フロントパネルの外面をゆっくりと一定速度で上方に向けさせることができる。
【0015】
また、第1の発明において、第1のガイド部および第2のガイド部は、フロントパネルの両側面側に設けられていることが好ましい。これによって、丈夫且つ安定してフロントパネルの開閉を行うことができる。
【0016】
第2の発明は、フロントパネルの上部側に設けられている支点を、前方斜め下方に向かって変位させると共に、フロントパネルの下部側を、前方斜め下方に向かって変位させることによって、フロントパネルの外面を上方に向けさせる
ことを特徴とする。
【0017】
第2の発明では、フロントパネルの上部側に設けられている支点は、フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置から第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置に変位し、それと連動して、フロントパネルの下部側は、フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置から、第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置に変位するため、フロントパネルの上部側および後部側と他の部分との干渉を防止できる。
【0018】
第3の発明は、前面側から略水平方向に記録媒体を着脱可能に構成されたドライブ部と、
本体部の前面側に取り付けられ、記録媒体を上記ドライブ部に遊挿可能な切り欠きが上部側の上記記録媒体の出入路部分に形成されたフロントパネルと、
フロントパネルの上部側に設けられている支点を、フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置と、第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置との間において変位可能にガイドする第1のガイド部と、
第1のガイド部によるフロントパネルの上部側の変位と連動して、フロントパネルの下部側を、フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置と、第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置との間において変位可能にガイドすると共に、第2の下部位置と、第2の下部位置よりも前方斜め上方にある第3の下部位置との間において変位可能にガイドする第2のガイド部と
を有することを特徴とする。
【0019】
第3の発明では、フロントパネルの外面を上方に向けさせる際に、フロントパネルの上部側に設けられている支点は、フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置から第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置に変位し、それと連動して、フロントパネルの下部側は、フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置から、第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置に変位してから、第2の下部位置よりも前方斜め上方にある第3の下部位置に変位するため、第1の下部位置から第2の下部位置までの間は、フロントパネルの下部側は、前方斜め下方に向かって変位し、第2の下部位置から第3の下部位置までは、フロントパネルの下部側は、前方斜め上方に向かって変位する。また、フロントパネルを閉じる際に、フロントパネルの上部側に設けられている支点は、第2の上部位置から第1の上部位置に変位し、それと連動して、フロントパネルの下部側は、第3の下部位置から第2の下部位置に変位してから第1の下部位置に変位するため、第3の下部位置から第2の下部位置までは、フロントパネルの下部側は、後方斜め下方に向かって変位し、第2の下部位置から第1の下部位置までは、フロントパネルの下部側は、後方斜め上方に向かって変位する。したがって、フロントパネルの上部側、後部側および下部側と他の部分との干渉を防止できる。
【0020】
第3の発明において、フロントパネルを開けた際に、記録媒体の出入路部分と切り欠きの底部とが干渉しないように、第2のガイド部のガイド形状が設定されていることが好ましい。これによって、フロントパネルを開けた際にも記録媒体の着脱が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、フロントパネルが他の部分と干渉しないように、フロントパネルの外面を上方に向けさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
まず、この発明の一実施形態による開閉装置を備えた記録再生装置について説明する。図1は、この発明に適用可能な記録再生装置1の一例のフロントパネル2の構成を示す。この記録再生装置1は、光ディスクを記録媒体として用い、ビデオカメラなど外部から供給された映像信号の記録媒体に対する記録や、記録媒体に記録された映像信号の再生を行うようにされている。記録再生装置1に適用可能な記録媒体としては、例えば、波長405nmのレーザ光を発する青紫色レーザを光源とし、片面1層構造で23GB(ギガバイト)の記録容量が実現した光ディスクを用いることができる。
【0024】
後述するが、記録再生装置1は、フロントパネル2に例えばLCD(Liquid Crystal Display)などによる表示部10が設けられ、記録媒体から再生された映像信号や外部から供給された映像信号を映出させることができると共に、表示部10に記録再生装置1の各種ステータス情報などを、映像信号と共に表示させることができる。
【0025】
フロントパネル2上に配置される各操作子は、一部を除きタッチパネルを用いて構成される。タッチパネルは、例えば、基板上に設けられた電極の静電容量の変化に基づき手指の接触を検出する、静電容量結合方式のものを用いることができる。例えば、フロントパネル2の表示部10を除く略全面に対応する基板に対して、操作部分に対応する位置に所定に電極を形成する。基板は、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)などによるフィルムが用いられる。この基板に対して、ガラス板やアクリル板などの誘電体の板を接着し、パネル面を形成する。
【0026】
基板に接着する誘電体の板は、例えばアクリル板が用いられ、さらに透明アクリル板を用いることで、デザインに高級感を持たせることができ好ましい。以下では、基板に接着する誘電体の板として透明アクリル板を用いるものとし、当該板をパネル板と呼ぶ。
【0027】
より具体的には、タッチパネルは、図2に一例が概略的に示されるように、PETシート41BにITO(Iridium Tin Oxide)膜41Aで信号パターンとGND(Ground)パターンとを形成した透明電極シート41を、透明アクリル板からなるパネル板40に接着してなる。
【0028】
パネル板40は、例えば裏面から塗装され、電極構造が外部から隠蔽されると共に、各キーの機能などを示す文字や記号が印刷される。このとき、塗装に透過部を設け、その裏面にLED(Light Emitting Diode)などの発光素子を配することができる。タッチパネルの操作に応じて対応する位置の発光素子を所定に点灯させることで、操作結果などを明示的に示すことができる。
【0029】
フロントパネル2における各部のレイアウトについて、概略的に説明する。フロントパネル2の左側部分に、例えばLCDを用いた表示部10が設けられる。表示部10には、この記録再生装置1に入力された映像またはこの記録再生装置1で記録媒体から再生された映像を映出可能であると共に、この記録再生装置1の各種ステータスや後述するファンクションキー20、20、・・・の機能などが表示される。
【0030】
フロントパネル2の右側上部は、上端から横長の矩形状に切り欠いた切り欠き部11が設けられ、切り欠き部11により、記録再生装置1の本体側に設けられるディスク挿入口12が露出されるようになっている。すなわち、このフロントパネル2は、記録再生装置1に対して可動構造とされており、下端部が前方に迫り出すように作動し、フロントパネル2が傾斜可能となっている。フロントパネル2は、下端部が前方に迫り出すと共に上端部が所定に下がるように動作し、フロントパネル2を傾斜させた際に、ディスク挿入口12に対するディスクの挿入を妨げないようにされる。
【0031】
フロントパネル2の左側の下端部には、例えば音声入力信号のレベル調整を行うための回転つまみ13A、13B、13Cおよび13Dが設けられる。回転つまみ13A、13B、13Cおよび13Dは、それぞれフロントパネル2の下端に弧の一部が露出され、弧の他の部分は上述したパネル板40に覆われるように配置される。露出される部分は、ユーザが指を掛け回転つまみ13A、13B、13Cおよび13Dを回転させるのに必要十分である程度とされる。回転つまみ13A、13B、13Cおよび13Dの目盛りなどは、例えば回転つまみ13A、13B、13Cおよび13Dの表面に記され、パネル板40を介して視認可能なようにされる。回転つまみ13A、13B、13Cおよび13Dの右側には、回転つまみ13A、13B、13Cおよび13Dの調整モード設定するスイッチ14が設けられる。
【0032】
フロントパネル2の左端側に、上から、電源スイッチ15、リモート選択スイッチ16、ヘッドフォンレベルボリューム17およびヘッドフォンジャック18が設けられる。また、ディスク挿入口12の右側には、ディスク挿入口12から挿入され記録再生装置に装填されたディスクを排出するためのイジェクトボタン19が設けられる。さらに、フロントパネル2の中央付近に、シフトキー24が設けられる。
【0033】
フロントパネル2のタッチパネルで構成された操作子について説明する。以下に説明するキーやサーチバーなどの実体は、パネル板40を介して設けられる透明電極シート41上に形成された電極によるセンサであって、静電容量の変化に基づき手指の接触を検出して所定の制御信号を出力する。このフロントパネル2においては、手指の接触が検出されたか否かを示す信号を出力するディジタル方式のセンサと、2点間の手指の位置を連続的に検出することができるアナログ方式のセンサとが用いられている。この図1の例では、各種キーにディジタル方式のセンサが用いられ、サーチバー30にアナログ方式のセンサが採用されている。
【0034】
なお、以下では、ディジタル方式のセンサによる各種キーに触れ、当該キーに触れたことを検出させることを、便宜上、当該キーを押すと表現する。
【0035】
表示部10の右側に隣接するように、ファンクションキー20、20、・・・が配される。ファンクションキー20、20、・・・は、複数(図1の例では、ファンクションF1〜F5の5個)のキー20、20、・・・からキー組が構成され、キー組毎に、キー20、20、・・・それぞれの機能を所定に切り替えることができるようにされている。ファンクションキー20、20、・・・それぞれに割り当てられる機能は、表示部10に表示される表示画面の表示モードがファンクションメニューモードであるときに、表示部10の右端の、ファンクションキー20、20、・・・それぞれに対応する位置に表示される。
【0036】
ファンクションキー20、20、・・・の下部に、ページキー21およびディスプレイキー22が配される。ページキー21は、表示部10の表示モードをファンクションキーが表示されるファンクションモードに切り換えると共に、ファンクションキー20、20、・・・のキー組を切り換える。ディスプレイキー22は、表示部10に表示されている画面のモードを切り替える。
【0037】
ディスク挿入口12の下部に、編集操作やシステム設定などに用いられる各種キー23A〜23Eが配される。これら各種キー23A〜23Eは、ユーザがパネル面を見なくても操作が可能なように、表面に所定に突起部が設けられる。なお、この図1の例では、キー23A〜23Cには、それぞれ2つの機能が割り当てられ、それぞれの機能の内容がキーの上下に記されている。シフトキー24を押しながらキー23A〜23Cを押すことで、例えばキーの下側に記されている機能が選択される。
【0038】
図1の例では、キー23Aは、簡易的に編集を行う際に用いるキーであって、クリップの切り出しや接続を指示する。キー23Bは、サムネイル画像の表示を指示する。シフトキー24と共にキー23Bを操作することで、エッセンスマークサーチが指示される。エッセンスマークは、例えばカメラのフィルタ交換など、映像記録時の所定の条件の変化に応じて自動的に記録されるマークである。キー23C〜23Eは、この記録再生装置1のシステム設定を行う際に用いられるキーである。なお、キー23Cは、編集作業の際にも用いられる。
【0039】
各種キー23A〜23Eの下部に、各種の記録再生動作を制御するためのキー25A〜25Eが配される。すなわち、キー25Aは、例えば1度押すことで現在再生または選択されているクリップの先頭に戻り、連続的に2度押すことで、ディスクに記録されている先頭のクリップに移動する。キー25Bは、順方向への1倍速の再生を指示するプレイバックキーである。キー26Cは、例えば1度押すことで現在再生または選択されているクリップの次のクリップの先頭に移動し、連続的に2度押すことで、ディスクに記録されている最後のクリップに移動する。キー25Dは、再生を停止する指示を出す停止キー、キー25Eは、記録を指示する記録キーである。記録キー25Eの両側には、誤操作を防ぐためのガードとして、縦長の棒状に凸部が設けられる。なお、プレイバックキー25Bとプレビューキー25Aとを同時に操作することで、逆方向への高速再生が指示される。また、プレイバックキー25Bとネクストキー25Dとを同時に操作することで、順方向への高速再生が指示される。
【0040】
キー25A〜25Eの右側に、4方向キー27が配される。この4方向キー27は、上下左右の4方向にそれぞれ対応した4個のキーからなり、例えば表示部10の表示に基づき方向指示を行うことが必要な際に用いられる。また、4方向キー27は、例えば編集作業を行う場合に、上述したキー23Cと共に押すことで、IN点およびOUT点の指定や、再生位置に対するマーキングの指定がなされる。なお、フロントパネル2の4方向キー27のそれぞれに対応する位置は、凸型形状とされ、ユーザがパネル面を見なくても操作可能とされている。
【0041】
キー25A〜25Eの下部に、アナログ方式のセンサからなるサーチバー30が配される。サーチバー30は、手指が触れた位置を直線状に検出することができる。例えば、サーチバー30の両端に配置された2つの電極それぞれの静電容量の変化に基づき、手指が触れた位置を検出する。両端の2点の値を用いて位置を検出するので、ユーザの指の太さなどにかかわらず、検出される位置を1点に特定することができる。サーチバー30は、パネル板40が円弧状に抉られ、横長の凹型形状をなしている。また、サーチバー30は、凹型形状内における横方向中央部のやや上側に突起32が設けられ、ユーザが中央部を識別容易とされている。
【0042】
また、サーチバー30の円弧状に抉られた底部は、サーチバー30における横方向に直線状の位置検出可能範囲に対応してスリット状に透過部31が形成され、パネル板40の裏面側のこの透過部に対応する位置にLEDといった発光素子を設けた場合に、発光素子の発光がパネル面側から確認できるようにする。詳細は後述するが、発光素子は、スリット状の透過部31の全体にわたって複数個が設けられ、サーチバー30に手指が触れた位置に対応して発光するようにされている。
【0043】
また、サーチバー30の右側に、サーチバー30の操作に対する動作モードなどの指定および表示を行う、サーチモードキー28A〜28Cが配される。サーチモードキー28A〜28Cに対応してパネル板40に透過部が所定に形成され、パネル板40の裏面側のこの透過部に対応する位置にLEDといった発光素子が設けられる。
【0044】
図3は、フロントパネル2に関する回路構成を概略的に示す。タッチパネル部42は、図2を用いて説明したパネル板40および透明電極シート41と、透明電極シート41からの出力信号を後続するKYマイコン44に対応した制御信号に変換する制御モジュールとを含む。タッチパネル部42がLED基板モジュール43を介してKYマイコン44に接続される。KYマイコン44は、記録再生装置1の本体側のシステムコントローラ(シスコン)45に接続される。
【0045】
なお、例えばシフトキー24などの、非タッチパネル方式によるキーの一部または全部は、出力信号が例えばKYマイコン44に直接的に供給される。
【0046】
LED基板モジュール43は、タッチパネル部42のフロントパネル2正面から見て奥に取り付けられ、基板上の所定位置にLEDが配置されると共に、LEDの発光制御回路が設けられる。上述したように、LEDの位置に対応したパネル板40に透過部が設けられ、LEDによる発光がフロントパネル2の表面側から確認できるようになっている。図1の例では、上述もしたが、サーチモードキー28A〜28Cに対応する位置にそれぞれLEDが配置されると共に、サーチバー30におけるスリット状の透過部31の全長に対応して、複数個のLEDが配置される。
【0047】
KYマイコン44は、例えばマイクロプロセッサからなり、タッチパネル部42から供給された制御信号に応じた命令を、本体側のシステムコントローラ45に対して出力する。また、KYマイコン44は、タッチパネルに対する操作やシステムコントローラ45からの命令に基づきLED基板モジュール43の発光制御回路を制御し、LEDを所定に点灯させる。
【0048】
図4は、フロントパネル2の各操作キーにより制御される動作の一例を説明するための記録再生装置1の部分的な構成の一例を示す。
【0049】
システムコントローラ45は、例えばROM(Read Only Memory)に記録されているプログラムによって、上述したKYマイコン44などから供給されるタッチパネル、非タッチパネル方式の操作キーに応じた制御信号に基づき、以下のような記録/再生処理を行うように記録再生装置1を構成する各部を制御する。
【0050】
<記録処理>
記録処理時には、ビデオカメラなどから入力端子51を介して音声信号が音声信号入力部52に供給される。音声信号入力部52は、入力端子51を介して供給された音声信号に対して所定の処理を施す。音声信号入力部52によって処理された音声信号は、音声/映像(A/V)信号処理部53に供給される。
【0051】
一方、ビデオカメラなどから入力端子54を介して映像信号が映像信号入力部55に供給される。映像信号入力部55は、入力端子54を介して供給された映像信号に所定の処理を施す。映像信号入力部55によって処理された映像信号は、音声/映像信号処理部53に供給される。
【0052】
音声/映像信号処理部53は、音声信号入力部52から供給された音声信号と映像信号入力部55から供給された映像信号のそれぞれに、システムコントローラ45からの制御信号に基づく所定の処理を施す。所定の処理が施された音声/映像信号は、記録再生装置1の外部に出力可能とされる。所定の処理が施された映像信号は、表示用の処理が施され表示部10にも供給される。これによって、表示部10に映像が表示される。所定の処理が施された音声/映像信号は、記録時には、エンコーダ/デコーダ(ENC/DEC)56にも供給される。
【0053】
エンコーダ/デコーダ56は、メモリ57を用いて音声/映像信号処理部53から供給される音声/映像信号に圧縮符号化処理を行う。エンコーダ/デコーダ56によって処理された音声/映像信号は、ドライブ58に供給される。
【0054】
ドライブ58は、エンコーダ/デコーダ56から供給された音声/映像信号に対して、エラー訂正符号化、記録符号化変調などの処理を順次行って、光ディスク59に音声/映像信号を記録する。
【0055】
<再生処理>
再生処理時には、ドライブ58は、光ディスク59から読み出された音声/映像信号に対して、復調、エラー訂正符号の復号などの処理を順次行う。ドライブ58によって処理された音声/映像信号は、エンコーダ/デコーダ56に供給される。
【0056】
エンコーダ/デコーダ56は、ドライブ58から供給された音声/映像信号の圧縮符号を伸長する。エンコーダ/デコーダ56によって伸長された音声/映像信号は、音声/映像信号処理部53に供給される。
【0057】
音声/映像信号処理部53は、エンコーダ/デコーダ56から供給された音声/映像信号のそれぞれに、システムコントローラ45からの制御信号に基づく所定の処理を施す。所定の処理が施された音声/映像信号は、記録再生装置1の外部に出力可能とされる。なお、映像信号は、表示用の処理が施され表示部10にも供給される。これによって、表示部10に再生映像が表示される。
【0058】
以上のように、記録再生装置1では、フロントパネル2の操作キーによって、記録/再生処理などを制御することができる。
【0059】
なお、一実施形態では、記録/再生を行う記録媒体として光ディスク59を用いたが、他の記録媒体を用いてもよい。図5は、記録再生装置1の部分的な構成の変形例を示すブロック図である。図6は、記録再生装置1の部分的な構成の他の変形例を示すブロック図である。
【0060】
図5に示す記録再生装置1は、記録/再生を行う記録媒体を磁気テープ60としたもの、すなわち図1に示すフロントパネル2のディスク挿入口12をテープカセット挿入口としたものである。
【0061】
図5に示す記録再生装置1では、ドライブ58は、記録時にエンコーダ/デコーダ56から供給された音声/映像信号に対して、エラー訂正符号化、記録符号化変調などの処理を順次行って、磁気テープ60に音声/映像信号を記録する。また、ドライブ58は、再生時に磁気テープ60から読み出された音声/映像信号に対して、復調、エラー訂正符号の復号などの処理を順次行う。他の動作については、図4を参照して説明したのと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0062】
図6に示す記録再生装置1は、記録/再生を行う記録媒体を着脱可能なメモリ62としたもの、すなわち図1に示すフロントパネル2のディスク挿入口12をメモリカートリッジの挿入口としたものである。
【0063】
図6に示す記録再生装置1では、記録時にエンコーダ/デコーダ56によって圧縮符号化された音声/映像信号は、メモリインタフェース(I/F)61に供給され、フラッシュメモリなどの着脱可能なメモリ62に音声/映像信号が記録される。また、再生時には、メモリ62から読み出された音声/映像信号がメモリインタフェース61を介してエンコーダ/デコーダ56に供給される。他の動作については、図4を参照して説明したのと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0064】
これら変形例および他の変形例における記録再生装置1についても、フロントパネル2の操作キーによって、記録/再生処理などを制御することができる。
【0065】
次に、この発明の要部である開閉装置について詳細に説明する。一実施形態による開閉装置は、フロントパネル2の外面を上方に向けさせるための開閉機構として記録再生装置1に適用されている。
【0066】
図7は、記録再生装置1の全体構造の一例を示す斜め上方からの斜視図である。また、図8は、記録再生装置1の左側面の前方側を示す図である。フロントパネル2は、フロントパネル2の上部側と後部側とが本体部71と接するように本体部71に取り付けられている。
【0067】
本体部71の底部側には、脚72が設けられている。これによって、記録再生装置1は、設置した際に設置面73との間に隙間が設けられる構成とされている。なお、図8中の破線は、上述した切り欠き部11による光ディスク59の出入路下側の切り欠きの境界線を示している。切り欠き部11は、光ディスク59を遊挿可能な形状とされている。
【0068】
フロントパネル2には、表示部10およびタッチパネルがこれらの制御回路と共に配置されている。フロントパネル2は、このような厚みのあるものを配置するため比較的厚く形成されている。例えば、フロントパネル2は、2.5cm〜4.5cm程度の厚みを有する。
【0069】
また、フロントパネル2と本体部71との間には隙間がほとんど設けられていない。このような状態にあって、フロントパネル2の前面、すなわち外面を上方へ向けさせる場合について考察してみる。
【0070】
図9に示すように、フロントパネル2の後面側の上部に位置する回動軸75を中心として、フロントパネル2を反時計回りに回転させて傾斜しようとすると、フロントパネル2の上部側が本体部71のフロントパネル2の上部側と接する凸部74と干渉してしまう(干渉A)。また、フロントパネル2を傾斜した際に、切り欠き部11の境界線が傾斜前のときよりも上側に上がってしまい、光ディスク59の出入路と干渉してしまう(干渉B)。
【0071】
図10に示すように、フロントパネル2の前面側の上部に位置する回動軸76を中心として、フロントパネル2を反時計回りに回転させて傾斜しようとすると、上述した干渉Aは生じないが、干渉Bは生じてしまう。また、回転の初期において、フロントパネル2の後面側の上部の角部77が本体部71の前面側と干渉してしまう。
【0072】
記録再生装置1に適用されている開閉装置は、これら干渉をなくしてフロントパネル2の外面を上方へ向けさせ傾斜させるものである。なお、記録再生装置1は、光ディスク59の出入路の下側に位置するフロントパネル2の上面側に、凸部74の前面と光ディスク59の前面とが略同じ面上となるように構成とされているため、凸部74がない構成であっても同じように干渉をなくす必要がある。また、フロントパネル2の上部側は、デザイン性、耐衝撃性などの観点からも本体部71の凸部74によって覆う構成とすることが好ましい。
【0073】
図11は、記録再生装置1に適用されている開閉装置の構成の一例を示す。また、図12は、その左側面側を拡大したものである。なお、図12では、説明を容易とするために、一部の構造を省略している。
【0074】
この開閉装置は、フロントパネル2を閉じている状態から、フロントパネル2の上部側を前方斜め下方へ直線的に可動させる直線可動部と、同じくフロントパネル2を閉じている状態から、フロントパネル2の下部側を前方に向かって、下側が凸部側となる曲線の弧を描くように可動させる曲線可動部とを有する構成とされている。記録再生装置1は、これら可動部によって、フロントパネル2の前面を上方に向けさせる構造とされている。
【0075】
直線可動部は、パネル側固定部材81と本体側固定部材82とを有している。直線可動部のパネル側固定部材81は、フロントパネル2の両側面側の上部にそれぞれ取り付けられている。パネル側固定部材81は、例えば直線形状とされており、一端側がフロントパネル2の上部やや下側に固定され、他端側がフロントパネル2の後部側から斜め上方に向かって突出するようにして固定されている。パネル側固定部材81の他端側には、本体側固定部材82と係合する係合部81aが設けられている。係合部81aは、フロントパネル2の支点であり、係合部81aを中心としてフロントパネル2が回動可能に構成される。
【0076】
直線可動部の本体側固定部材82は、本体部71の両側面側にそれぞれ取り付けられている。本体側固定部材82は、孔部82aを有しており、例えばこの孔部82aを用いてネジ止めすることによって本体部71に固定されている。
【0077】
また、本体側固定部材82は、パネル側固定部材81の係合部81aをガイドするガイド溝82bを有している。ガイド溝82bは、係合部81aをフロントパネル2の前方斜め下方に向かって直線的にガイドするように形成されている。これによって、係合部81aは、フロントパネル2が閉じている状態における第1の上部位置と、第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置との間において変位可能とされる。
【0078】
ガイド溝82bの設置位置、角度および長さなどは、傾斜後のフロントパネル2の目的位置、傾斜時のフロントパネル2の軌跡などを考慮して最適に決められる。なお、ガイド溝82bは、曲線状、例えば円弧状であってもよいし、曲線と直線とを組み合わせた形状であってもよい。この係合部81aを変位可能にガイドするガイド部の詳細については、後述する。
【0079】
曲線可動部は、本体側固定部材83とパネル側固定部材84とを有している。曲線可動部の本体側固定部材83は、本体部71の両側面側にそれぞれ取り付けられている。なお、図12では、説明を容易とするため本体側固定部材83の一部を省略している。本体側固定部材83は、例えば「へ」の字形状とされており、一端側に孔部83aを有しており、例えばこの孔部83aを用いてネジ止めすることによって本体部71に固定されている。本体側固定部材83の他端側には、曲線可動部のパネル側固定部材84と係合する係合部83bが2つ間隔を空けて設けられている。
【0080】
曲線可動部のパネル側固定部材84は、フロントパネル2の両側面側の下部側にそれぞれ回動可能に取り付けられている。パネル側固定部材84は、例えば曲線形状とされており、一端側がフロントパネル2の下部側に取り付けられている。すなわち、パネル側固定部材84の一端側は、フロントパネル2の下部側に回動可能に支持されている。なお、パネル側固定部材84は、他端側がフロントパネル2の後部側から斜め上方に向かって突出するように取り付けられている。
【0081】
また、パネル側固定部材84は、本体側固定部材83の2つの係合部83bをガイドするガイド溝84aを有している。ガイド溝84aは、2つの係合部83bによってパネル側固定部材84がフロントパネル2の前面側に曲線状、例えば円弧状にガイドされるように形成されている。なお、この曲線は、凸部が下部側となるように形成されている。これによって、フロントパネル2の下部側は、少なくとも、フロントパネル2が閉じている状態における第1の下部位置と、第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置との間において変位可能とされる。また、フロントパネル2の下部側は、第2の下部位置と、第2の下部位置よりも前方斜め上方にある第3の下部位置との間において変位可能とされる。一実施形態では、これら変位可能な構成とするために、ガイド溝84aを曲線状としているため、フロントパネル2の下部側を滑らかに変位させることができる。
【0082】
ガイド溝84aの設置位置、曲線形状および長さなどは、傾斜後のフロントパネル2の目的位置、傾斜時のフロントパネル2の軌跡などを考慮して最適に決められる。なお、ガイド溝84aは、直線的に設けたり、曲線と直線とを組み合わせて設けたりしてもよい。このフロントパネル2の下部側を変位可能にガイドするガイド部の詳細については、後述する。
【0083】
パネル側固定部材84の他端側には、バネ85の一端側が固定されている。なお、バネ85の中間部は、図示省略している。バネ85の他端側は、パネル側固定部材84の一端側において、本体部71に固定されている。これによって、バネ85の弾性力により、パネル側固定部材84には、フロントパネル2の下部側が常にガイド方向に向かって突出する方向に応力が働く構造とされている。この応力は、フロントパネル2を介して直線可動部にも働く。これにより、フロントパネル2の上部側と下部側とが連動して変位する。
【0084】
なお、バネ85の形状、種類、取り付け位置などは、パネル側固定部材84にこの応力が働くのであれば、特に図示したものに限ったものではない。また、この応力は、バネ85に限らず、ゴムなど他の弾性体によるものであってもよい。さらに、この応力は、ダンパによるものであってもよい。
【0085】
また、パネル側固定部材84は、ガイド溝84aに沿った形状のラック84bを有している。ラック84bは、連動ギア86と噛み合う構成とされている。なお、図12では、説明を容易とするため、左側面側の連動ギア86を省略している。
【0086】
両側面のそれぞれの連動ギア86は、本体部71において軸支された回動軸88に固定されている。これによって、両側面側におけるフロントパネル2の動作を同期させることができ、丈夫且つ安定してフロントパネル2の開閉を行うことができる。連動ギア86は、ダンパ87が有するダンパギア87aと噛み合う構成とされている。ダンパ87は、孔部87bを有しており、例えばこの孔部82aを用いてネジ止めすることによって本体部71に固定されている。ダンパ87は、ダンパギア87aと噛み合っている連動ギア86の回転動作を一定の速度でゆっくりと行うようにする。例えば、ダンパ87として、オイルダンパを用いることができる。
【0087】
連動ギア86の近傍の回動軸88には、カム89が固定されている。カム89は、カム溝89aを有している。カム溝89aは、カム89の上部に取り付けられている制御部材90が一端側に有するローラ90aが嵌脱可能な構成とされている。カム溝89aは、カム89の中心を対称としてカム89の円弧状の外周部に2つ設けられており、一方のカム溝89aは、フロントパネル2を傾斜していない状態、すなわちフロントパネル2が閉じている状態のときにローラ90aが嵌合し、他方のカム溝89aは、フロントパネル2を所定の角度まで傾斜した状態、すなわちフロントパネル2が開いている状態のときにローラ90aが嵌合する構成とされている。
【0088】
このカム89と制御部材90とによるロック機構によって、フロントパネル2が不用意に簡単に回転してしまわないようにすることができる。また、フロントパネル2が閉じた状態においてロックが解除された際に、自動的にフロントパネル2を変位させることができる。なお、カム89の形状は、図示したものに限ったものではない。例えば、フロントパネル2が閉じている状態のときにのみカム溝89aがローラ90aと嵌合する構成であってもよいし、フロントパネル2が開く途中段階においてもローラ90aと嵌合する構成としてもよい。途中段階においてローラ90aと嵌合する構成とすることによって、フロントパネル2の傾斜角度を多段階的に変えることができる。
【0089】
制御部材90は、例えば「へ」の字形状とされており、屈折部またはその近傍の固定部90bが回動可能に本体部71に取り付けられている。
【0090】
また、制御部材90の他端側には、バネ91の一端側が固定されている。なお、バネ91の中間部は、図示省略している。バネ91の他端側は、一端側よりも上方において、本体部71に固定されている。これによって、バネ91の弾性力により、制御部材90には、ローラ90aが常に下方に変位する方向に応力が働く構造とされている。なお、バネ91の形状、種類、取り付け位置などは、制御部材90にこの応力が働くのであれば、特に図示したものに限ったものではない。また、この応力は、バネ91に限らず、ゴムなど他の弾性体によるものであってもよい。
【0091】
制御部材90の他端側には、上下方向に可動するロックスイッチ92の受け部90cが設けられており、ロックスイッチ92を矢印方向に下げることにより、制御部材90の一端側が上方へ変位し、ローラ90aがカム溝89aから外れる構造とされている。なお、図12では、説明を容易とするため、ロックスイッチ92を省略している。
【0092】
図11に示した例では、ダンパ87、カム89、制御部材90、バネ91およびロックスイッチ92を左側面側に設けているが、これらは、右側面側または両側面側に設けてもよい。両側に設けた場合には、より丈夫で安定的にフロントパネル2の開閉を行うことができる。
【0093】
図13は、フロントパネル2を傾斜後の開閉装置の状態を示す。記録再生装置1は、傾斜前の状態から傾斜後の状態とする際、以下のように動作する。
【0094】
まず、図11および図12に示す状態から、ロックスイッチ92が下げられる。これによって、制御部材90の他端側が下がり、固定部90bを支点として制御部材90が回転し、制御部材90の一端側が上がる。制御部材90の一端側が上がると、ローラ90aがカム溝89aから外れて回動軸88のロックが解除される。
【0095】
回動軸88のロックが解除されると、パネル側固定部材84がガイド溝84aに沿ってフロントパネル2の前方側に変位する。このとき、パネル側固定部材84に働いていたバネ85による応力は、パネル側固定部材81に対しても働き、パネル側固定部材81も本体側固定部材82のガイド溝82bに沿って前方斜め下方に変位する。また、ダンパ87が連動ギア86の動作をスムーズなものとし、フロントパネル2は、一定の速度でゆっくりと変位する。
【0096】
カム89が半回転する位置までラック84bが変位すると、カム89のカム溝89aにローラ90aが嵌合し、回動軸88がロック状態となる。これにより、制御部材90の他端側が上がり、ロックスイッチ92が元の状態となる。以上によって、図13に示す傾斜後の状態となる。なお、ロックスイッチ92を下げた後の一連の動作は、バネ85の弾性力によって、自動的に行われる。
【0097】
記録再生装置1は、傾斜後の状態から傾斜前の状態とする際、以下のように動作する。まず、図13に示す状態から、ロックスイッチ92が下げられる。これによって、制御部材90の他端側が下がり、固定部90bを支点として制御部材90が回転し、制御部材90の一端側が上がる。制御部材90の一端側が上がると、ローラ90aがカム溝89aから外れて回動軸88のロックが解除される。
【0098】
このロック解除状態において、ユーザによってフロントパネル2が本体部71側に押されると、パネル側固定部材84がガイド溝84aに沿って後方側に変位すると共に、パネル側固定部材81が本体側固定部材82のガイド溝82bに沿って後方斜め上方に変位する。
【0099】
カム89が半回転する位置までラック84bが変位すると、カム89のカム溝89aにローラ90aが嵌合し、回動軸88がロック状態となる。これにより、制御部材90の他端側が上がり、ロックスイッチ92が元の状態となる。以上によって、図11および図12に示す傾斜前の状態となる。ユーザは、フロントパネル2を閉じる場合にロックスイッチ92が元の状態となるまでフロントパネル2を押し続けることになる。なお、ユーザの操作によって自動的にフロントパネル2を閉じる構成としてもよい。
【0100】
図14は、フロントパネル2の軌跡の一例を連続的に示した図である。マーク93は、パネル側固定部材81の係合部81aの軌跡を示し、マーク94は、フロントパネル2の下部側のパネル側固定部材84を支持する支持部の軌跡を示す。フロントパネル2の目的の傾斜角度βは、42°としている。なお、傾斜角度βは、これに限定されるものではなく、操作キーの視認性および操作性などを考慮して、適切に設定される。
【0101】
フロントパネル2は、マーク93を支点として回動する。すなわち、フロントパネル2は、中心位置が変化しながら回動する。フロントパネル2を閉じている状態におけるマーク93aの位置を上述した第1の上部位置とすると、マーク93fが第2の上部位置となる。また、フロントパネル2を閉じている状態におけるマーク94aの位置を上述した第1の下部位置とすると、マーク94dが第2の下部位置となり、マーク94fが第3の下部位置となる。
【0102】
マーク94の軌跡の中心点95の位置は、例えばフロントパネル2の最も上側の位置よりも上方であり、フロントパネル2の最も前側の位置よりも前方である位置に設定される。これによって、フロントパネル2の上部側および後部側が光ディスク59の出入路を含む本体部71と干渉するのを防ぐことができると共に、フロントパネル2の下部側が設置面73と干渉するのを防ぐことができる。傾斜前の位置であるマーク94aと傾斜後の位置であるマーク94fとのなす角度αは、約25度となっている。なお、具体的な中心点95の位置は、本体部71内に収まるパネル側固定部材83の大きさの限界、バネ85の弾性力などから求められる。
【0103】
図示するように、マーク93およびマーク94の軌跡を開扉動作の初期時において前方斜め下方とすることによって、フロントパネル2と光ディスク59のドライブを含む本体部71との干渉を防ぐことができる。また、マーク94の軌跡を開扉動作の後期において前方斜め上方とすることによって、フロントパネル2と設置面73との干渉を防ぐことができる。なお、マーク94の軌跡は、開扉動作の初期時において前方斜め下方となり、開扉動作の後期において前方斜め上方となるのであれば、図示した円弧に限ったものではなく、楕円弧、弧と直線の組み合わせなどであってもよい。
【0104】
以上のことから、一実施形態による開閉装置によれば、フロントパネル2が本体部71および設置面73と干渉しないように、フロントパネル2の外面を上方に向けさせることができる。これによって、タッチパネルによる操作キーを備えたフロントパネル2の視認性および操作性を向上することができる。
【0105】
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述した説明では、記録再生装置1を電子機器の一例としたが、これに限らず、フロントパネル2などの開閉扉の外面を上方に向けさせる必要があり、開閉扉の上部側および後部側に干渉部分が位置している他の電子機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】この発明の一実施形態による開閉装置を適用した記録再生装置のフロントパネルの構成の一例を示す図である。
【図2】タッチパネルの構成の一例を示す断面図である。
【図3】フロントパネルに関する回路構成の一例を示すブロック図である。
【図4】記録再生装置の部分的な構成の一例を示すブロック図である。
【図5】記録再生装置の部分的な構成の変形例を示すブロック図である。
【図6】記録再生装置の部分的な構成の他の変形例を示すブロック図である。
【図7】記録再生装置の全体構造の一例を示す斜め上方からの斜視図である。
【図8】記録再生装置の左側面の前方側を示す図である。
【図9】干渉について説明するための図である。
【図10】干渉について説明するための図である。
【図11】開閉装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図12】開閉装置(傾斜前)の左側面側の斜視図である。
【図13】開閉装置(傾斜後)の左側面図である。
【図14】フロントパネルの軌跡の一例を連続的に示した図である。
【符号の説明】
【0107】
1・・・記録再生装置
2・・・フロントパネル
11・・・切り欠き部
12・・・ディスク挿入口
74・・・凸部
81・・・パネル側固定部材(直線可動部側)
81a・・・係合部(直線可動部側)
82・・・本体側固定部材(直線可動部側)
82b・・・ガイド溝(直線可動部側)
83・・・本体側固定部材(曲線可動部側)
83b・・・係合部(曲線可動部側)
84・・・パネル側固定部材(曲線可動部側)
84a・・・ガイド溝(曲線可動部側)
85・・・バネ
86・・・連動ギア
87・・・ダンパ
88・・・回動軸
89・・・カム
90・・・制御部材
91・・・バネ
92・・・ロックスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントパネルの上部側に設けられている支点を、上記フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置と、上記第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置との間において変位可能にガイドする第1のガイド部と、
上記第1のガイド部による上記フロントパネルの上記上部側の変位と連動して、上記フロントパネルの下部側を、少なくとも、上記フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置と、上記第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置との間において変位可能にガイドする第2のガイド部と
を有することを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
上記第2のガイド部は、さらに上記フロントパネルの上記下部側を、上記第2の下部位置と、上記第2の下部位置よりも前方斜め上方にある第3の下部位置との間において変位可能にガイドする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
上記第2のガイド部は、上記フロントパネルの上記下部側を、上記第1の下部位置と上記第2の下部位置と上記第3の下部位置との間において、凸部が下側となる曲線状にガイドする請求項2に記載の開閉装置。
【請求項4】
上記曲線は、上記フロントパネルの最も上側の位置よりも上方であり、上記フロントパネルの最も前側の位置よりも前方である位置を中心とする円弧である請求項3に記載の開閉装置。
【請求項5】
上記フロントパネルの上記下部側を上記第1の下部位置からガイド方向に向かって押し出す押出部をさらに有する請求項1に記載の開閉装置。
【請求項6】
少なくとも上記フロントパネルを閉じた状態では、上記フロントパネルの下部側の変位動作がロックされる請求項5に記載の開閉装置。
【請求項7】
上記押出部による上記フロントパネルの上記下部側の変位速度を一定速度に抑制するダンパが設けられている請求項5に記載の開閉装置。
【請求項8】
上記第1のガイド部および上記第2のガイド部は、上記フロントパネルの両側面側に設けられている請求項1に記載の開閉装置。
【請求項9】
フロントパネルの上部側に設けられている支点を、前方斜め下方に向かって変位させると共に、上記フロントパネルの下部側を、前方斜め下方に向かって変位させることによって、上記フロントパネルの外面を上方に向けさせる
ことを特徴とする開閉方法。
【請求項10】
本体部の前面側に取り付けられたフロントパネルと、
上記フロントパネルの上部側に設けられている支点を、上記フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置と、上記第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置との間において変位可能にガイドする第1のガイド部と、
上記第1のガイド部による上記フロントパネルの上記上部側の変位と連動して、上記フロントパネルの下部側を、少なくとも、上記フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置と、上記第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置との間において変位可能にガイドする第2のガイド部と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項11】
前面側から略水平方向に記録媒体を着脱可能に構成されたドライブ部と、
本体部の前面側に取り付けられ、上記記録媒体を上記ドライブ部に遊挿可能な切り欠きが上部側の上記記録媒体の出入路部分に形成されたフロントパネルと、
上記フロントパネルの上部側に設けられている支点を、上記フロントパネルが閉じた状態における第1の上部位置と、上記第1の上部位置よりも前方斜め下方にある第2の上部位置との間において変位可能にガイドする第1のガイド部と、
上記第1のガイド部による上記フロントパネルの上記上部側の変位と連動して、上記フロントパネルの下部側を、上記フロントパネルが閉じた状態における第1の下部位置と、上記第1の下部位置よりも前方斜め下方にある第2の下部位置との間において変位可能にガイドすると共に、上記第2の下部位置と、上記第2の下部位置よりも前方斜め上方にある第3の下部位置との間において変位可能にガイドする第2のガイド部と
を有することを特徴とする記録再生装置。
【請求項12】
上記フロントパネルの下部を上記第1の下部位置から上記第3の下部位置まで変位させた際に、上記記録媒体の上記出入路部分と上記切り欠きの底部とが干渉しないように、上記第2のガイド部のガイド形状が設定されている請求項11に記載の記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−302335(P2006−302335A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118148(P2005−118148)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】