説明

開閉装置

【課題】外壁と骨組部材とが一体化することなく、既設の構築構造物に容易に後付けできる開閉装置を提供する。
【解決手段】開閉装置15は、既設の建物1に後付けするもので、建物1の開口部6を開閉する装置本体16を備える。装置本体16は、四方枠状の支持体17で支持する。支持体17は、外壁2の貫通孔40に嵌入可能な弾性体41に挿通するねじ42にて、建物1の縦鋼材4に外壁2を介して固定する。弾性体41は、ねじ42を挿通する挿通用貫通孔44を有する円筒状弾性部材45である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁と骨組部材とが一体化することなく、既設の構築構造物に容易に後付けできる開閉装置および開閉装置の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば既設の建物である木造住宅に窓シャッタ等の開閉装置を後付けする場合、まず、ねじを木造住宅の外壁および柱部に直接ねじ込むことにより、四方枠状の支持体を木造住宅の柱部に外壁を介して固定する。その後、支持体に装置本体を引掛けて取り付けることにより、支持体に装置本体を支持させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−263462号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、近年、例えば耐震性に優れた建物として、地震時等の揺れによって外壁が破損するのを防止するロッキング工法を採用した建物がある。
【0004】
そして、このようなロッキング工法を採用した建物に窓シャッタ等の開閉装置を後付けする場合に、例えば前記木造住宅の場合と同じように、ねじを建物の外壁および骨組部材に直接ねじ込んで、支持体を骨組部材に外壁を介して固定したのでは、外壁と骨組部材とが一体化してしまい、地震時等の揺れによって外壁が破損するおそれがある。
【0005】
また、外壁と骨組部材とが剛性上、一体化しないように、外壁を壊して支持体を骨組部材に固定するのでは、工事が大掛かりとなり、非常に手間がかかる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、外壁と骨組部材とが一体化することなく、既設の構築構造物に容易に後付けできる開閉装置および開閉装置の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の開閉装置は、既設の構築構造物に後付けする開閉装置であって、前記構築構造物の開口部を開閉する装置本体と、この装置本体を支持する支持体と、前記構築構造物の外壁に形成された貫通孔に嵌入される弾性体と、この弾性体に挿通され、前記支持体を前記構築構造物の骨組部材に前記外壁を介して固定する固定体とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の開閉装置は、請求項1記載の開閉装置において、弾性体は、固定体が挿通される挿通用貫通孔を有する円筒状弾性部材にて構成されているものである。
【0009】
請求項3記載の開閉装置の施工方法は、既設の構築構造物に後付けする開閉装置の施工方法であって、前記構築構造物の外壁に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔に弾性体を嵌入する工程と、前記弾性体に固定体を挿通し、この挿通した固定体によって支持体を前記構築構造物の骨組部材に前記外壁を介して固定する工程と、前記支持体に前記構築構造物の開口部を開閉する装置本体を支持させる工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、構築構造物の外壁に形成された貫通孔に嵌入される弾性体と、この弾性体に挿通され、支持体を構築構造物の骨組部材に外壁を介して固定する固定体とを備えるものであるため、外壁と骨組部材とが剛性上、一体化することなく、既設の構築構造物に容易に後付けできる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、弾性体は固定体が挿通される挿通用貫通孔を有する円筒状弾性部材にて構成されているため、固定体を円筒状弾性部材の挿通用貫通孔に簡単に挿通できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、各工程を経て開閉装置の施工を行うことにより、外壁と骨組部材とが一体化することなく、開閉装置を既設の構築構造物に容易に後付けできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の開閉装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1および図2において、1は既設の構築構造物である建物で、この建物1は、例えば地震時等の揺れによってALC製の外壁2が破損するのを防止するロッキング工法を採用した既築住宅である。
【0015】
建物1は、構造躯体3と、この構造躯体3に揺動可能に設けられた外壁2とを備えている。
【0016】
構造躯体3は、複数本の骨組部材等にて構成されたもので、断面L字状で上下方向長手状の骨組部材である複数本のL字鋼等の縦鋼材4と、断面L字状で水平方向長手状の骨組部材である複数本のL字鋼等の横鋼材5とを有している。縦鋼材4および横鋼材5は、建物1に形成された略矩形状の開口部6の周囲に配設されている(図3参照)。
【0017】
外壁2は、複数枚のパネル体であるALC板(軽量気泡コンクリート製の板)7にて構成され、各ALC板7は構造躯体3の縦鋼材4および横鋼材5等に対してそれぞれ個別に揺動可能になっている。すなわち例えば地震時等の揺れによって構造躯体3が変形した場合には、外壁2を構成する各ALC板7は縦鋼材4および横鋼材5等に対して取付金具(図示せず)を支点としてそれぞれ個別に揺動し、その結果、外壁2には無理な力が伝わらず、外壁2のひび割れ、脱落等が防止される。
【0018】
また、建物1には、開口部6の室内側を開閉するサッシ装置11が取り付けられている。サッシ装置11は、建物1の開口部6の周縁部分に固定された四方枠状のサッシ枠12と、このサッシ枠12の内側に水平方向に移動可能に嵌着されたサッシ障子13とを備えている。
【0019】
さらに、建物1には、開口部6の室外側を開閉する窓シャッタ等のシャッタ装置である開閉装置15が後付けにより取り付けられている。
【0020】
開閉装置15は、建物1の開口部6の室外側を開閉する装置本体16を備え、この装置本体16は、四方枠状の下地枠等の支持体17にてその装置本体16の全重量が支えられて支持されている。
【0021】
装置本体16は、巻軸21の回転に基づく巻取りおよび巻戻しにより昇降して開口部6の室外側を開閉するシャッタカーテン等の開閉体22およびこの開閉体22を巻軸21を介して支持し開口部6の閉鎖時に開閉体22を収容する収容体23等にて構成された本体部24を有している。また、装置本体16は、開閉体22の昇降時に開閉体22の側端部を案内する上下方向長手状の左右一対のガイドレール部25と、開口部6の閉鎖時に開閉体22の下端部と当接する水平方向長手状の下枠部26とを有している。各ガイドレール部25の上端側には取付片27が切起しにより形成され、この取付片27に本体部24が取り付けられて支持されている。
【0022】
支持体17は、図3に示すように、サッシ枠12より大きな四方枠状のもので、互いに離間対向する上下方向長手状で筒状の左右一対の縦枠部31を有している。両縦枠部31の上端部は、水平方向長手状で筒状の2本の上横枠部32,33にて連結されている。両縦枠部31の下端部は、水平方向長手状で筒状の1本の下横枠部34にて連結されている。なお、各枠部31,32,33,34は、複数のねじ35にて互いに連結された2つの枠部材36,37にて構成されている。
【0023】
そして、支持体17は、建物1の外壁2の貫通孔40に嵌入した弾性体41に挿通された固定体であるねじ42によって、建物1の構造躯体3の縦鋼材4に外壁2を介して複数(例えば10箇所)の位置で固定されている。すなわち例えば、各縦枠部31は、略円筒状の弾性体41の軸方向に沿った中央部に挿通されたねじ42にて、縦鋼材4に外壁2を介して例えば上下方向に等間隔をおいた複数(例えば5箇所)の位置で固定されている。
【0024】
弾性体41は、例えば柔軟性のある円筒状のゴムパッキン等で、図4に示すように、ねじ42が嵌入挿通される挿通用貫通孔44を中心部に有する略円筒状の弾性変形可能なゴム製或いは樹脂製の円筒状弾性部材45にて構成されている。円筒状弾性部材45の外径寸法は外壁2に形成された貫通孔40の径寸法と略同じで、円筒状弾性部材45の軸方向長さ寸法は外壁2の貫通孔40の長さ寸法より短い。なお、ここでいう円筒状弾性部材45の略円筒状には、厳密な意味での円筒形状に加え、略円筒形状も含む意味である。また、円筒状弾性部材45の室外側の端面と縦枠部31の外壁2に面した枠部材36との間には、防水用のシーリング材46が充填されている。
【0025】
ねじ42は、例えば皿タッピンねじ等で、支持体17の縦枠部31の枠部材36の貫通孔47および円筒状弾性部材45の挿通用貫通孔44に挿通され、先端側が縦鋼材4の貫通孔48にねじ込まれ、基端側の頭部42aが枠部材36に押し当てられている。
【0026】
次に、開閉装置15の施工方法つまり開閉装置15を既設の建物1であるALC外壁住宅に後付けする場合について説明する。
【0027】
まず、作業者は、建物1の外壁2のうち縦鋼材4と対向する部分の所望位置に貫通孔40を形成する。
【0028】
次いで、縦鋼材4の露出した部分に、ねじ溝を有しない下穴である貫通孔48を形成した後、弾性体41を外壁2の貫通孔40に嵌入する。
【0029】
続いて、シーリング材46を充填した後、ねじ42を枠部材36の貫通孔47および弾性体41の挿通用貫通孔44に挿通し、ねじ42の先端側を縦鋼材4の貫通孔48にねじ込んで頭部42aを枠部材36に押し当てることにより、そのねじ42にて枠部材36を建物1の縦鋼材4に外壁2を介して固定する。
【0030】
そして、その固定した一方の枠部材36に対して他方の枠部材37を連結して縦枠部31を形成し、その後、縦枠部31に対して上横枠部32,33および下横枠部34を連結部材(図示せず)等を用いて連結して四方枠状の支持体17を形成する。こうして、弾性体41の挿通用貫通孔44に挿通され外壁2との間に弾性体41が介在するねじ42にて、四方枠状の支持体17が建物1の縦鋼材4に外壁2を介して固定された状態となり、この状態を図3に示す。
【0031】
なお、例えば縦枠部31の枠部材37を除いて予め枠組みした四方枠状の支持体17を縦鋼材4に外壁2を介して固定し、その後、縦枠部31の一方の枠部材36に他方の枠部材37を連結するようにしてもよい。
【0032】
次いで、支持体17に装置本体16を取り付けて支持させる。すなわち例えば支持体17に装置本体16のガイドレール部25および下枠部26を固定した後、ガイドレール部25の取付片27に装置本体16の本体部24を引掛けるようにして取り付けて支持させる。
【0033】
そして、このような開閉装置15によれば、ねじ42によって外壁2と縦鋼材4とが剛性上、一体化することなく、外壁2と縦鋼材4との間のフレキシブル性つまりロッキング工法による機能が維持されるため、地震時等の揺れによって縦鋼材4および縦枠部31等が変形しても、外壁2のALC板7は縦鋼材4および縦枠部31等に対してそれぞれ揺動し、外壁2の破損を防止できる。
【0034】
また、従来とは異なり外壁2を破壊する等の大掛かりな工事を伴わず、開閉装置15を既設の建物1に容易に後付けでき、施工費用の低減、施工期間の短縮化等を図ることができる。
【0035】
なお、例えば図5に示すように、弾性体41の軸方向の圧縮変形を防止するため、または装置本体16の重量や振動等が加わることによる弾性体41への影響を軽減するために、ねじ42と弾性体41との間に剛性体、すなわち例えばアルミ等の金属製の円筒状剛性部材51を介在させてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、ねじ溝を有しない貫通孔48を縦鋼材4に形成してその貫通孔48にねじ42をねじ込む場合について説明したが、例えば縦鋼材4にタップ加工によりねじ溝を有する貫通孔48を形成してその貫通孔48にねじ42をねじ込んでもよい。
【0037】
さらに、略円柱状の弾性体41の中心部にねじ42をねじ込むことにより挿通させ、その弾性体41に挿通されたねじ42にて支持体17を縦鋼材4に固定するようにしてもよい。
【0038】
また、支持体17の横枠部32,33,34の少なくともいずれかを弾性体41に挿通するねじ42にて横鋼材5に外壁2を介して固定してもよい。
【0039】
さらに、支持体17は、四方枠状には限定されず、例えば上横枠部32,33または下横枠部34を有しない三方枠状でもよく、左右の両縦枠部31のみからなるものでもよい。
【0040】
また、開閉装置15は、窓シャッタ等のシャッタ装置以外に、ブラインド装置、スライディングウォール装置、スクリーン装置等でもよい。
【0041】
なお、本発明は、外壁と骨組部材との間のフレキシブル性が必要な構築構造物であれば、住宅等の建物1以外に、船、地下街、トンネル等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係る開閉装置の横断面図である。
【図2】同上開閉装置の縦断面図である。
【図3】同上開閉装置の支持体を示す正面図である。
【図4】同上開閉装置の弾性体を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る開閉装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 構築構造物である建物
2 外壁
4 骨組部材である縦鋼材
6 開口部
15 開閉装置
16 装置本体
17 支持体
40 貫通孔
41 弾性体
42 固定体であるねじ
44 挿通用貫通孔
45 円筒状弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の構築構造物に後付けする開閉装置であって、
前記構築構造物の開口部を開閉する装置本体と、
この装置本体を支持する支持体と、
前記構築構造物の外壁に形成された貫通孔に嵌入される弾性体と、
この弾性体に挿通され、前記支持体を前記構築構造物の骨組部材に前記外壁を介して固定する固定体と
を備えることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
弾性体は、固定体が挿通される挿通用貫通孔を有する円筒状弾性部材にて構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
既設の構築構造物に後付けする開閉装置の施工方法であって、
前記構築構造物の外壁に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔に弾性体を嵌入する工程と、
前記弾性体に固定体を挿通し、この挿通した固定体によって支持体を前記構築構造物の骨組部材に前記外壁を介して固定する工程と、
前記支持体に前記構築構造物の開口部を開閉する装置本体を支持させる工程と
を備えることを特徴とする開閉装置の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−7374(P2010−7374A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168765(P2008−168765)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】