説明

間仕切壁用の遮音・断熱下地面材

【課題】下地面材の裏面にフェルト状緩衝材が全面接着されている遮音下地材では、単なる一枚の下地面材との差異が殆どなく、下地材側での効果は極めて低い。
【解決手段】無数の空隙が内在し且つ表裏面に複数の凹部2、2a…、3、3a…を形成した基板4と、該基板4の裏面全面を覆うシート材5とを有する遮音・断熱下地材1を躯体壁Wの壁面に接着すると、かかる遮音・断熱下地材1の表裏面における凹部2、2a…、3、3a…により、下地面材6及び躯体壁Wの壁面への接着面を部分的にし点状接着と同様の構造にして、遮音効果を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅、特にRC(鉄筋コンクリート)造又はSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造の集合住宅における隣室との間仕切壁用の遮音・断熱下地面材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅における間仕切壁、特にコンクリート製の間仕切壁にあっては、躯体壁面に直接クロスを貼ったり、躯体壁面が凹凸面であるため、そのまま下地面材を接着すると、形成された下地面も凹凸状になることから、図7に示す様に、躯体壁wの壁面の複数箇所に接着材b、b…を山状に盛り付ける様に塗布し、下地面材tを壁面に、接着材b、b…を押し潰す様に押圧して固定し、形成された下地面s上に仕上げ材aを張り付ける工法が一般的に行われており、この工法によれば、躯体壁wの壁面と下地面材tとの間に隙間、即ち空気層hが形成されるため、壁面の凹凸とは無関係に下地面sを平坦に形成可能である。
【0003】
しかし、上記工法にあっては、躯体壁だけの場合よりもむしろ遮音性能が悪く、特に250Hz及び4,000Hz付近では日本建築学会「建築物の遮音性能基準」集合住宅2級の遮音基準ぎりぎりか或いはそれより低くて、ホテルや集合住宅に適応することが出来ず、更に地下鉄等の振動の影響のある建物においては、基礎から外壁を伝播した振動が当該内装材により250Hz付近で増幅、発音されるなどの被害も出ていることから、下地面材の裏面に、例えばガラス繊維あるいは岩綿繊維などの繊維系から成るフェルト状緩衝材を設け、躯体壁の壁面と下地面材の間に35〜60mmの空気層を形成することで、壁面と下地面材との間に形成される空気層を従来より厚くすることと、上記フェルト状緩衝材を接着材と下地面材との間に挟設することにより、上記空気層での共鳴周波数を従来より下げることが可能になり、全体としてバランスのとれた遮音性能とすることが可能なボード直貼仕上壁における遮音欠損防止工法が見受けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−81377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術にあっては、確かに下地面材とフェルト状緩衝材との複合材であることから、遮音機能の向上が図られているかもしれないが、フェルト状緩衝材自体が非常に薄く、而も下地面材の裏面にフェルト状緩衝材が、遮音欠損を防止するために重要な点状接着でなく全面接着されているため、単なる一枚の下地面材との差異が殆どなく、下地材料側での効果は極めて低い可能性を否定できないなど、解決せねばならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記従来技術に基づく、下地面材とフェルト状緩衝材が一体化されている課題に鑑み、無数の空隙が内在し且つ表裏面に複数の凹部を形成した基板と、該基板の裏面全面を覆うシート材とを有する遮音・断熱下地材を躯体壁の壁面に接着することによって、かかる遮音・断熱下地材の表裏面における凹部により、下地面材及び躯体壁の壁面への接着面を部分的にし点状接着と同様の構造にする様にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
要するに本発明は、無数の空隙が内在し且つ表裏面に複数の凹部を形成した基板を有しているので、かかる遮音・断熱下地材の表裏面における、下地面材及び躯体壁の壁面への接着面を上記凹部により部分的にし点状接着と同様の構造にすることが出来るため、遮音機能の向上を図ることが出来、更に上記凹部を大きくすれば下地面材及び躯体壁の壁面への接着面積を狭くすることが出来るため、より遮音機能を向上出来、又基板自体が断熱機能と若干の遮音機能を有している他、断熱材として一般的に使用されている多孔質ボードやグラスウール、ロックウールは遮音遮音性能をするものであり、而も基材の表裏面側に凹部を形成することで、完成した壁における基材の表側に下地面材により、裏面側にシート材により閉空間が形成されるため、更に断熱・遮音機能の向上を図ることが出来る。
而も、上記基板の裏面全面を覆うシート材を有しているので、施工時に裏面側の凹部への壁面に塗布した接着材の侵入を完全に防止出来るため、かかる凹部による遮音機能を損なわさずに間仕切壁に遮音・断熱機能を具備させることが出来る。
【0008】
又、基板の表面全面を覆う下地面材を有しているので、かかる遮音・断熱下地材によれば、製造時に予め下地面材を接着しておけば、現場での下地面材の張り付け工程を省略することが出来、而も現場において職人が下地面材を接着すると、接着材を必要量以上に塗布してしまって表面側の凹部の一部を埋めてしまう危険性を排除できないが、製造時に接着すればその危険性を排除することが出来るため、遮音機能を損なわさずに簡易に間仕切壁に遮音・断熱機能を具備させることが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】基板の凹部を溝とした遮音・断熱下地材の表面斜視図である。
【図2】図1の遮音・断熱下地材の裏面斜視図である。
【図3】基板の凹部を孔とした遮音・断熱下地材の表面斜視図である。
【図4】図3の遮音・断熱下地材の裏面斜視図である。
【図5】下地面材を有する遮音・断熱下地材の表面斜視図である。
【図6(a)】図1の遮音・断熱下地材を使用した間仕切壁の一施工例を示す水平断面図である。
【図6(b)】図6(a)の他の施工例を示す水平断面図である。
【図7】従来の間仕切壁の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る間仕切壁用の遮音・断熱下地材の一実施例を図面に基づき説明する。
本発明に係る間仕切壁用の遮音・断熱下地材1、1aにあっては、躯体壁Wの壁面に、後述する接着材9により張り付け固定される下地材であって、基本的には無数の空隙が内在し且つ表裏面に複数の凹部2、2a…、3、3a…を形成した基板4と、該基板4の裏面全面を覆うシート材5とを有している。
【実施例1】
【0011】
図1〜4に示す遮音・断熱下地材1は、基板4及びシート材5を有し、上記基板4にあっては、発泡樹脂製ボード、ALCボード、発泡ガラスの様な多孔質ボードや、グラスウール、ロックウールの様な繊維質ボードなどとし、望ましくはウレタンフォーム、発泡スチロールの様な発泡樹脂製のボードとする。
又、表面側の凹部2、2a…及び裏面側の凹部3、3a…にあっては、例えば図1、2に示す様な溝であったり、図3、4に示す様な未貫通の小孔とし、溝の場合には縦横方向の一方又は両方に所定間隔毎に並列形成している。
尚、図1、2の遮音・断熱下地材1には、表面側の凹部2、2a…として縦4本横8本の溝が、裏面側の凹部3、3a…として縦4本の溝が夫々形成されており、図3、4の遮音・断熱下地材1には、表面側の凹部2、2a…として縦5列横10列の孔が、裏面側の凹部3、3a…として縦4列横8列の孔が夫々形成されているが、かかる数及び形状に限定しない。
凹部2、2a…、3、3a…が溝の場合、図1、2では長辺部又は短辺部に対し平行な直線状に形成されているが、長辺部又は短辺部に対し傾斜させたり、破線状、波線状に形成しても良く、凹部2、2a…、3、3a…が孔の場合、図3、4では円孔であるが、楕円孔、多角形孔であっても良い。
【0012】
上記シート材5にあっては裁断容易な材質とし、例えば不織布が好ましい。
【0013】
そして、図6(a)に示す様に、躯体壁Wの壁面全体に接着材9を塗布するか、或いは図6(b)に示す様に、壁面の複数箇所に接着材9、9…を山状に盛り付ける様に塗布した後、躯体壁Wの壁面全体を被覆する様に複数枚の遮音・断熱下地材1、1…を、裏面側のシート材4を躯体壁W側にして張り付けて、躯体壁Wと遮音・断熱下地材1、1…との回転に隙間Hを形成し、そして複数枚の遮音・断熱下地材1、1…の表面に形成された下地面7に下地面材6を張り付けた後に仕上材8を張り付ける。
【実施例2】
【0014】
図5に示す遮音・断熱下地材1aにあっては、実施例1と同様の基板4及びシート材5の他に、基板4の表面全面を覆う、コンパネ、石膏ボードの様な下地面材6を有している。
【0015】
そして、上記遮音・断熱下地材1aを、図1〜4に示す遮音・断熱下地材1と同様に躯体壁Wに張り付けるが、基板4と一体の下地面材6の表面が下地面7になるため、該下地面7に直接仕上材8を張り付ける。
【0016】
次に、本発明に係る間仕切壁用の遮音・断熱下地材の作用について説明する。
主構成部材である基板4には無数の空隙が内在していることから断熱機能が有ることは明らかで、更に表裏面に形成されている多数の凹部2、2a…、3、3aにより遮音機能が有ることも明らかなため、かかる遮音・断熱下地材1、1aに遮音機能及び断熱機能を兼備させることが可能になる。
又、裏面側の凹部3、3a…の数を表面側の凹部2、2a…より少なくすることで、基板4のシート材5への接着面積が若干広くなって、躯体壁Wへの固着強度が向上する。
【0017】
遮音・断熱下地材1、1aにおける基板4の裏面には、主に遮音機能の具備させるための凹部3、3a…が形成されていることから、そのまま接着材9で躯体壁Wの壁面に張り付けると、凹部3、3a…内に接着材9が侵入して遮音機能を低下させてしまうが、シート材5があるため、凹部3、3a…内への接着材9の侵入を完全に防止可能にする。
【符号の説明】
【0018】
2、2a… 凹部
3、3a… 凹部
4 基板
5 シート材
6 下地面材
W 躯体壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切壁となる躯体壁面に張り付ける下地材であって、無数の空隙が内在し且つ表裏面に複数の凹部を形成した基板と、該基板の裏面全面を覆うシート材とを有することを特徴とする間仕切壁用の遮音・断熱下地材。
【請求項2】
基板の表面全面を覆う下地面材を有することを特徴とする請求項1記載の間仕切壁用の遮音・断熱下地材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−248853(P2010−248853A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101758(P2009−101758)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(391065220)
【Fターム(参考)】