説明

防塵部材の取付構造及びこれを備える作業機

【課題】エアコン用コンデンサの防塵部材の取付構造において、メンテナンスを効率的に行うことができるとともに、容易に製造することができる簡素な構成を提供する。
【解決手段】コンデンサ用防塵ネット41の取付構造は、コンデンサフレーム40の下部に配置され、上方が開放された形状のレール43を備える。また、コンデンサ用防塵ネット41の取付構造は、レール43の上方に配置され、コンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40に対してワンタッチで機械的に固定させることができるカムロック42を備える。カムロック42は、コンデンサ用防塵ネット41の取付時には、コンデンサ用防塵ネット41を、取付板53を介してコンデンサフレーム40側に押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン用のコンデンサに取り付けられる防塵部材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業機において、エンジン近傍に配置されるラジエータやエアコン用コンデンサ等に防塵部材を取り付ける構成が従来から知られている。この種の防塵部材を開示したものに、特許文献1及び特許文献2がある。
【0003】
特許文献1では、ラジエータの防塵部材の取付構造において、以下のような構成が開示されている。即ち、ラジエータを支持するラジエータ支持部材の左右両側にスクリーンガイドが配置され、防塵部材としてのスクリーンが前記スクリーンガイドによって支持されるように構成されている。このスクリーンの取付作業は、当該スクリーンをスクリーンガイドに上方より差し入れることで行われる。特許文献1では、コンデンサの防塵部材の取付構造においても、上述したラジエータの防塵部材の取付構造と略同一に構成されたものが用いられている。
【0004】
特許文献2では、エンジンの冷却水を冷却するラジエータの前面に防塵網を備える作業車両のラジエータ防塵装置において、以下のような構成が開示されている。即ち、特許文献2に開示されるラジエータ防塵装置は、前記防塵網を上下方向に挿脱可能に案内するガイド体を設けるとともに、当該ガイド体を機体前方に向けて傾倒可能に構成されている。特許文献2は、この構成により、防塵部材を支持するガイド体を機体前方に傾倒することで、エンジンの上方を覆う開放状態のボンネットに対して防塵網の上部を離間させることができ、防塵部材の挿脱作業がスムーズに行えるようになるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−195175号公報
【特許文献2】特開2007−146753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される防塵部材の取付構造は、防塵部材を上下方向に挿脱可能に案内するガイドによって、当該防塵部材が支持されるように構成されている。この左右のガイドは、前後方向で防塵部材を挟み込む一対の壁部を有しているため、当該壁部の分だけ、防塵部材と防塵すべき対象物(ラジエータ及びコンデンサ等)との間に前後方向の隙間が形成される。防塵部材と対象物との間に隙間が形成されると、そこから藁屑や塵埃等のダストが侵入してしまうおそれがあり、対象物の防塵を効果的に行うことができない場合があった。また、前記ガイドの壁部と防塵部材との間には、防塵部材の挿脱をスムーズに行うことができるように若干の隙間を形成する必要がある。従って、ガイドと防塵部材の隙間からダストが侵入してしまったり、作業機の走行時の振動によって防塵部材のバタツキが騒音の原因になったりするおそれがあった。
【0007】
一方、特許文献2の構成は、ガイド体を傾動させるための構造を備える必要があり、防塵部材の取付構造が複雑化してしまい、製造コストの効果的な低減が困難であった。また、マグネットの磁気的な吸着によってガイド体が取付位置に固定される構成であるため、走行時の振動によってガイド体の固定が外れてしまうおそれがあった。走行時にガイド体の固定が解除されれば、防塵を行うことができなくなるばかりではなく、周辺の装置と衝突して他の装置の損傷を引き起こすおそれもあった。
【0008】
また、作業機において、エアコン用のコンデンサがラジエータの前面側に配置されるような構成をとることがある。このような構成の場合、前面側に配置されるコンデンサの防塵部材にダストがたまり易くなるので、コンデンサの防塵部材のメンテナンスを頻繁に行う必要がある。従って、コンデンサに用いられる防塵部材のメンテナンス性の向上は特に望まれるところであった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアコン用コンデンサの防塵部材の取付構造において、メンテナンスを効率的に行うことができるとともに、容易に製造することができる簡素な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、エアコン用のコンデンサを支持するコンデンサ支持部に防塵部材を取り付けるための取付構造において、以下の構成が提供される。即ち、防塵部材の取付構造は、前記コンデンサ支持部の下部に配置され、上方が開放された形状の防塵部材支持部を備える。また、防塵部材の取付構造は、前記防塵部材支持部の上方に配置され、前記防塵部材を前記コンデンサ支持部に対してワンタッチで機械的に固定させることができる固定手段を備える。
【0012】
これにより、コンデンサに用いられる防塵部材の取付けをワンタッチで行うことができ、取付作業の効率を向上させることができる。また、固定手段の固定を解除し、防塵部材支持部を支点とするように防塵部材を傾動させて上方に引き抜くことで、防塵部材をコンデンサ支持部から容易に取り外すことができる。従って、コンデンサの周囲に大きなスペースを確保できない場合であっても、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。更に、防塵部材を防塵部材支持部で支持させるとともに、この防塵部材支持部より上方に配置される固定手段によって固定するという簡素な構成なので、作業性の向上及び製造コストの低減を達成できる。
【0013】
前記の防塵部材の取付構造においては、前記固定手段は、前記防塵部材の取付時には、前記防塵部材を前記コンデンサ支持部側に押し付けることが好ましい。
【0014】
これにより、防塵部材をコンデンサ支持部へ取り付けた状態において、当該防塵部材がコンデンサ支持部側に押し付けられるので、両者の間に形成される隙間を小さくすることができる。従って、防塵部材とコンデンサ支持部との隙間にゴミ等がたまったり、防塵部材のバタツキによって騒音が発生したりすることを防止できる。
【0015】
前記の防塵部材の取付構造においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記防塵部材は、当該防塵部材の端部を覆う防塵部材フレームと、前記防塵部材を前記固定手段で固定するための取付部と、を有する。前記取付部は、前記防塵部材フレームの前記コンデンサ支持部に対面する側と反対側に配置される。
【0016】
これにより、防塵部材フレームがコンデンサ支持部に直接対面するように取り付けられるので、防塵部材とコンデンサ支持部との間に隙間が生じることがなく、防塵効果を一層向上させることができる。また、作業者が誤って防塵部材を表裏反対に取り付けた場合は、防塵部材とコンデンサ支持部との間に隙間が生じるので、取り付ける向きが間違っていることを容易に把握できる。
【0017】
前記の防塵部材の取付構造においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記固定手段は、前記コンデンサ支持部の左側に少なくとも1つ、右側に少なくとも1つ、それぞれ配置されている。前記固定手段は左右で高さが異なるように配置されている。前記防塵部材は、当該防塵部材を前記固定手段で固定するための取付部を有し、この取付部が、高さが異なるように配置された前記固定手段の配置場所に対応するように配置されている。
【0018】
これにより、作業者が防塵部材を表裏反対に取り付けようとした場合でも、固定手段と取付部の位置が合わないので、誤った向きのまま防塵部材がコンデンサ支持部に取り付けられてしまうことを未然に防止できる。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、前記防塵部材の取付構造を備える作業機が提供される。
【0020】
これにより、作業機が備えるコンデンサのメンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図。
【図2】ボンネット内のエンジン前面側の一部を示した斜視図。
【図3】コンデンサにコンデンサ用防塵ネットを取り付けた状態を示した斜視図。
【図4】コンデンサにコンデンサ用防塵ネットを取り付けた状態を示した正面図。
【図5】ネットフレームに配置される取付板の様子を示した拡大側面図。
【図6】コンデンサ用防塵ネットをコンデンサフレームに取り付ける様子を示した分解斜視図。
【図7】解除状態のカムロックの様子を示した拡大正面図。
【図8】固定状態のカムロックの様子を示した拡大正面図及びA−A断面矢視図。
【図9】コンデンサ用防塵ネットをコンデンサフレームに取り付ける作業を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るトラクタ10を示した側面図である。図2は、ボンネット20内のエンジン19前面側の一部を示した斜視図である。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、トラクタ10が前進する方向に向かって左側及び右側を意味するものとする。
【0023】
図1に示す農作業用の作業車両(作業機)としてのトラクタ10は、プラウ、ハロー、ローダ等の各種装置を必要に応じて装着し、様々な種類の作業を行うことが可能に構成されている。このトラクタ10の前後には前車輪14及び後車輪15が配置されている。トラクタ10の前部にはボンネット20が配置され、このボンネット20は内部を露出できるように開閉可能に構成されている。
【0024】
このボンネット20内にはエンジン19が収容されている。このエンジン19は、トラクタ10が備える図略のフレームに、直接又は防振部材等を介して支持されている。ボンネット20の後方には、運転のための空間を構成するキャビン16が配置されており、このキャビン16の内部には各種の操作を行うための図略の操作部及び座席部が備えられている。トラクタ10のオペレータは、前記操作部を介して、トラクタ10の走行操作等を行うことができる。
【0025】
エンジン19は、前後方向に延びるクランク軸を有しており、このクランク軸の回転動力を各部に伝達可能に構成されている。このクランク軸はエンジン19のシリンダブロックから前方に突出し、その端部には、冷却ファン28を回転駆動するための図略のプーリ及びベルト等が配置されている。また、クランク軸の後端には図示しないフライホイールが固定されており、このフライホイールの回転がクラッチ及びシャフト等を介して図略のミッションケースに内蔵されたギア等の動力伝達機構に伝達され、適宜変速された後、前車輪14及び後車輪15等に伝達される。
【0026】
図1及び図2に示すように、ボンネット20内のエンジン19の前面側には、ラジエータ22と、サブタンク26と、コンデンサ23と、レシーバドライヤ24と、バッテリ27と、エアクリーナ29等の各種の設備が配置されている。これらの装置は、トラクタ10のフレームに固定された板状の取付プレート21の上面側に配置されている。図2に示すように、取付プレート21の前側端部は平面視でやや丸みを帯びた形状となっており、全体的な輪郭が略U字状となるように構成されている。
【0027】
ラジエータ22は、起立した状態で取付プレート21に固定されたラジエータフレーム39に支持されている。また、ラジエータ22は、エンジン19のウォータジャケット内の冷却水を循環させるための循環経路を有している。ラジエータ22の循環経路中には、冷却コア、アッパタンク及びロアタンク等が配置されている。前記冷却コアは、チューブ及びフィン等から構成されており、アッパタンクとロアタンクとによって上下方向で挟み込まれる形となっている。アッパタンク及びロアタンクは、冷却コアのチューブによって接続されるとともに、それぞれが配管等を介してエンジン19のウォータジャケットに接続されている。また、ラジエータ22の近傍には、ラジエータ22のオーバーフロー分の冷却水を貯留するためのサブタンク26が配置されている。エンジン19側から送られてきた冷却水は、この循環経路を通過することで冷却され、再びエンジン19側に戻される。
【0028】
また、ラジエータ22の前面側には、藁屑、塵埃、虫等のダストから当該ラジエータ22を防塵するためのラジエータ用防塵ネット71が配置されている。このラジエータ用防塵ネット71は、ラジエータ22を支持するラジエータフレーム39に対して取り付けられている。
【0029】
本実施形態のトラクタ10において、ラジエータ22の前面側にはコンデンサ23が配置され、後面側には冷却ファン28(図1)が配置されている。そして、前記コンデンサ23の更に前側にバッテリ27が配置されている。また、コンデンサ23の上部にはブラケットを介してエアクリーナ29が配置されている。エアクリーナ29はホースによってエンジン19に接続されており、エンジン19の吸気構造の一部を構成している。
【0030】
次に、本実施形態のトラクタ10が備える空調装置について説明する。空調装置は、キャビン16内を冷房することが可能な装置であり、コンデンサ23と、レシーバドライヤ24と、コンプレッサと、膨張弁と、エバポレータと、を主要な構成として備えている。
【0031】
コンデンサ23は、高圧の液状冷媒を通過させるチューブと、該チューブの周囲にコルゲート式又はプレート式等で構成されるフィンと、を主要な構成として備えた熱交換器である。前記チューブは、多数平行に配置した複数のフィンの間を左右方向又は上下方向に蛇行するように配置されている。
【0032】
取付プレート21の上面には、それぞれ2本の縦部材及び横部材からなる矩形状のコンデンサフレーム40が、起立した状態で取付プレート21に固定される。前記コンデンサ23の上下左右の周囲は、前記コンデンサフレーム40によって支持(固定)されている。このコンデンサフレーム40の前面には、ダストからコンデンサ23を防塵するためのコンデンサ用防塵ネット41が取り付けられている。なお、このコンデンサ用防塵ネット41の取付構造の詳細については後述する。
【0033】
レシーバドライヤ24は、コンデンサフレーム40の縦部材の側方(右側)に図略のブラケットを介して取り付けられている。このレシーバドライヤ24は、コンデンサ23に接続されるとともに、前記膨張弁に接続されている。また、前記コンプレッサは図略の配管を介してコンデンサ23に接続されている。このコンプレッサはエンジン19前部上に配置されて、エンジン19により駆動される。膨張弁とエバポレータはキャビン16内部の天井部分に取り付けられている。
【0034】
この構成で、前記コンプレッサがエンジン19の駆動力によってVベルトを介して駆動されることで、冷媒となるガスが圧縮されて、高温高圧の半液状の状態でコンデンサ23に送られる。圧縮されたガスが送られたコンデンサ23では冷媒が冷却され、液化が促進されてレシーバドライヤ24へ送られる。レシーバドライヤ24は、液化できなかった冷媒を分離するとともに、乾燥剤やストレーナ等によって水分や不純物を取り除く。この結果、液冷媒のみが配管を介して膨張弁へ送られる。膨張弁では冷媒が噴射されることにより減圧され、エバポレータでは、霧状の冷媒(液体)が気化する際に周囲の熱を奪う。この冷やされたエバポレータに室内ファンで送風を行うと、空気が冷却され、キャビン16内を冷房することができる。エバポレータを出た気化された冷媒は、コンプレッサに戻され、再び圧縮されて液化し、前記冷房サイクルが繰り返される。
【0035】
次に図3から図7までを参照して、コンデンサ用防塵ネット41の取付構造の詳細について説明する。図3は、コンデンサ23にコンデンサ用防塵ネット41を取り付けた状態を示した斜視図である。図4は、コンデンサ23にコンデンサ用防塵ネット41を取り付けた状態を示した正面図である。図5は、ネットフレーム52に配置される取付板53の様子を示した拡大側面図である。図6は、コンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40に取り付ける様子を示した分解斜視図である。図7は、解除状態のカムロック42の様子を示した拡大正面図である。図8(a)は、コンデンサ用防塵ネット41がカムロック42によって固定されている状態を概略的に示した拡大正面図である。また、図8(b)は、図8(a)のA−A断面矢視図である。
【0036】
コンデンサ23は、左右の縦部材と上下の横部材とによって構成されるコンデンサフレーム40によって支持されている。図3及び図4に示すように、コンデンサフレーム40の下側の横部材には、左右方向に延びる受け部材としてのレール43が配置されている。このレール43は前記横部材の前面に固定されており、側面視において、レール43は上方が開放されたU字状に形成されている。
【0037】
また、図3及び図4に示すように、コンデンサフレーム40の左右の縦部材にはカムロック(回転ロック、固定手段)42が、左右それぞれで上下方向の高さが異なるように配置されている。本実施形態においては、右側のカムロック42の取付位置が左側のカムロック42の取付位置よりも下側に位置するように構成されている。それぞれのカムロック42は、コンデンサフレーム40から前方へ突出するように取り付けられている。
【0038】
本実施形態のカムロック42は、作業者が操作を行うための操作具44を有している。操作具44は平板状に形成されており、図7の正面図に示すように、機体前後方向に延びる軸を中心として回転可能に構成される。また、この操作具44は、カムロック42本体部分の取付部分から直角に曲がるように回動することも可能になっている。作業者は、この操作具44をつまんで操作することで、カムロック42の状態を図7に示す解除状態と図8(a)に示す固定状態との間で切り換えることができる。解除状態のカムロック42は、図7に示すように、操作具44の平面部分が正面視で上下方向を向いている。一方、固定状態のカムロック42は、図8(a)に示すように、操作具44の平面部分が正面を向いている。
【0039】
この構成で、例えばカムロック42を解除状態から固定状態に操作するときは、以下のような手順で行う。作業者は、コンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40に取り付けた状態で、操作具44の長手方向が垂直を向くように鎖線の位置まで操作具44を回転させる。次に、この状態から操作具44を左右方向の一側に倒して、当該操作具44の平面部分が正面を向いた状態(図8(a)及び図8(b)に示す状態)にする。これによって、カムロック42は固定状態となる。本実施形態のカムロック42はバネ45を備えており、操作具44が固定状態側へ操作された場合には、前記バネ45が、当該操作具44をコンデンサフレーム40へ近づく向き(図8(b)に示す矢印の向き)に付勢するように構成されている。
【0040】
一方、コンデンサフレーム40に取り付けられるコンデンサ用防塵ネット41は、ネット(防塵網)51と、前記ネット51を保持するためのネットフレーム(防塵部材フレーム)52と、取付板(取付部)53と、を有している。ネット51は、コンデンサ23の前面を全体的に覆うことが可能な大きさに形成されている。ネットフレーム52はネット51の端部を覆うように矩形状に構成されており、上下方向に延びる縦部材と、左右方向に延びる横部材と、を備えている。このネットフレーム52の左右の縦部材には、取付板53がそれぞれ配置されている。
【0041】
図4の正面視に示すように、左右の取付板53は略矩形状の板状部材で形成されており、ネットフレーム52から左右外側に一部がせり出した状態で取り付けられている。取付板53は、コンデンサフレーム40の左右それぞれに配置されるカムロック42の取付位置に対応するように配置されている。従って、左右それぞれの取付板53は上下方向の高さが異なるように、具体的には、右側の取付板53の取付位置が左側の取付板53の取付位置よりも下側になるように配置される。
【0042】
この取付板53は、図5に示すように、ネットフレーム52の前面側に取り付けられている。ここで、ネットフレーム52は、その後面側がコンデンサフレーム40に対面するように当該コンデンサフレーム40に装着される。従って、前記取付板53は、ネットフレーム52のコンデンサフレーム40に対する取付面と反対側の面に配置されることになる。
【0043】
また、図4等に示すように、取付板53の略中央部分には左右方向に延びる長孔状の挿通孔54が形成されている。この挿通孔54は、水平に向けた状態(前記解除状態)のカムロック42の操作具44が通過できるように構成されている。
【0044】
この構成で、コンデンサ用防塵ネット41は、コンデンサ23を支持するコンデンサフレーム40の前面側に取り付けられる。次に図9を参照して、コンデンサ用防塵ネット41の取付作業について順に説明する。
【0045】
図9(a)に示すように、作業者は、コンデンサ用防塵ネット41を垂直から若干斜めに傾けた姿勢でコンデンサフレーム40の前側に上側から差し込み、その下縁部(ネットフレーム52の下側の横部材)を、前記レール43の溝部分に上方から差し入れる。なお、カムロック42の操作具44は予め水平状態(解除状態)としておく。次に、図9(b)に示すように、コンデンサ用防塵ネット41の下部をレール43に支持させた状態で、コンデンサ用防塵ネット41の上部を後面側(コンデンサフレーム40側)に移動させる。これにより、左右の取付板53の挿通孔54を、カムロック42の操作具44が通過することになる。
【0046】
ネットフレーム52をコンデンサフレーム40に接触又は近接させた後、作業者は図9(c)に示すように、左右のカムロック42の操作具44をつまんで水平向きから垂直向きとなるように回す。この結果、操作具44が挿通孔54に対して垂直に交差する状態となる。次に、この状態から図9(d)に示すように、操作具44の平面部分が取付板53に対面するように当該操作具44を倒した状態(図8(a)に示す状態)にする。この結果、操作具44の平面部分が取付板53全体を押しつける形となって、挿通孔54から抜けなくなる。以上のように、カムロック42の操作具44を回して倒すだけの簡単な操作により、コンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40に対して機械的に固定(ロック)することができる。
【0047】
また、カムロック42の操作具44は、解除状態から固定状態への切換操作に伴ってコンデンサフレーム40側に移動し、取付板53が操作具44によってコンデンサフレーム40側(後面側)に押し付けられる。これによって、コンデンサフレーム40とネットフレーム52とが密着して、隙間なくコンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40に取り付けることができる。
【0048】
また、上述した取付作業と逆の手順を踏むことにより、コンデンサ用防塵ネット41の取外しを容易に行うことができる。具体的には、図8(a)及び図9(d)の固定状態の操作具44を引き起こして図9(c)に示す状態にする。次に、カムロック42の操作具44を垂直向きから水平向きとなるように回して、操作具44の長手方向が挿通孔54の長手方向を向いた図7の状態にする。これにより、当該操作具44が取付板53の挿通孔54を通過可能な状態となり、コンデンサ用防塵ネット41を押し付ける力が解除される。以上のように、取外し作業においても、ワンタッチでコンデンサ用防塵ネット41の固定状態を解除することができる。次に、コンデンサ用防塵ネット41を前方に若干倒すように傾動させ、カムロック42の操作具44が取付板53の挿通孔54から抜けるようにする。その後、コンデンサ用防塵ネット41の下縁部をレール43から上方へ引き抜くことで、当該コンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40から取り外すことができる。
【0049】
以上に示したように、本実施形態のコンデンサ用防塵ネット41の取付構造は、以下のように構成される。即ち、コンデンサ用防塵ネット41の取付構造は、コンデンサフレーム40の下部に配置され、上方が開放された形状のレール43を備える。また、コンデンサ用防塵ネット41の取付構造は、レール43の上方に配置され、コンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40に対してワンタッチで機械的に固定させることができるカムロック42を備える。
【0050】
これにより、コンデンサ用防塵ネット41の取付けをワンタッチで行うことができ、取付作業の効率を向上させることができる。また、カムロック42の固定を解除して、レール43を支点にして傾動させてコンデンサ用防塵ネット41を上方に引き抜くことで、コンデンサ用防塵ネット41をコンデンサフレーム40から取り外すことができる。従って、コンデンサ23の周囲に大きなスペースを確保できない場合でも、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。更に、コンデンサ用防塵ネット41をレール43で支持させて、このレール43より上方に配置されるカムロック42によって固定するという簡素な構成なので、作業性の向上及び製造コストの低減を達成できる。
【0051】
また、本実施形態のコンデンサ用防塵ネット41の取付構造においては、カムロック42は、コンデンサ用防塵ネット41の取付時には、コンデンサ用防塵ネット41を取付板53を介してコンデンサフレーム40側に押し付けるように構成されている。
【0052】
これにより、コンデンサ用防塵ネット41がコンデンサフレーム40に取り付けられている状態において、両者の間に形成される隙間を小さくすることができる。従って、コンデンサ用防塵ネット41とコンデンサフレーム40との隙間にゴミ等がたまったり、コンデンサ用防塵ネット41のバタツキによって騒音が発生したりすることを防止できる。
【0053】
また、本実施形態のコンデンサ用防塵ネット41の取付構造においては、以下のように構成される。即ち、コンデンサ用防塵ネット41は、ネット51の端部を覆うネットフレーム52と、コンデンサ用防塵ネット41をカムロック42で固定するための取付板53と、を有する。取付板53は、ネットフレーム52のコンデンサフレーム40に対面する側と反対側(前面側)に配置される。
【0054】
これにより、ネットフレーム52がコンデンサフレーム40に直接対面するように取り付けられるので、コンデンサ用防塵ネット41とコンデンサフレーム40との間に隙間が生じることがなく、防塵効果を一層向上させることができる。また、作業者が誤ってコンデンサ用防塵ネット41を表裏反対に取り付けた場合は、コンデンサ用防塵ネット41とコンデンサフレーム40との間に隙間が生じるので、取り付ける向きが間違っていることを容易に把握できる。
【0055】
また、本実施形態のコンデンサ用防塵ネット41の取付構造においては、以下のように構成される。即ち、カムロック42は、コンデンサフレーム40の左右にそれぞれ1つずつ配置されている。2個のカムロック42は左右で高さが異なるように配置されている。コンデンサ用防塵ネット41は、当該コンデンサ用防塵ネット41をカムロック42で固定するための取付板53を有し、この取付板53が、高さが異なるように配置された前記カムロック42の配置場所に対応するように配置されている。
【0056】
これにより、作業者がコンデンサ用防塵ネット41を表裏反対に取り付けようとした場合でも、カムロック42と取付板53の位置が合わないので、誤った向きのままコンデンサ用防塵ネット41がコンデンサフレーム40に取り付けられることを未然に防止できる。
【0057】
また、本実施形態のトラクタ10は、前記コンデンサ用防塵ネット41の取付構造を備えている。
【0058】
これにより、トラクタ10が備えるコンデンサ23のメンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【0059】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0060】
上記実施形態では、コンデンサ用防塵ネット41を支持する防塵部材支持部として、単一のレール43が用いられているが、防塵部材支持部の構成は事情に応じて適宜変更できる。例えば、複数の支持部材によってコンデンサ用防塵ネット41を支持する構成に変更することができる。更に、防塵部材支持部の形状はU字状とすることに限らず、C字状、J字状、フック状等、様々な形状に変更することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、コンデンサ用防塵ネット41を固定する固定手段としてカムロック42を採用しているが、カムロック以外の固定手段に変更することができる。
【0062】
また、上記実施形態に加えて、ネットフレーム52又はコンデンサフレーム40の少なくとも何れか一方に、変形可能なシール部材を配置する構成とすることができる。この構成により、取付状態において、コンデンサフレーム40とネットフレーム52との間で前記シール部材が変形して隙間を埋めることができるので、コンデンサフレーム40とネットフレーム52との密着性を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 トラクタ(作業機)
23 コンデンサ
40 コンデンサフレーム(コンデンサ支持部)
41 コンデンサ用防塵ネット(防塵部材)
43 レール(防塵部材支持部)
42 カムロック(固定手段)
52 ネットフレーム(防塵部材フレーム)
53 取付板(取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコン用のコンデンサを支持するコンデンサ支持部に防塵部材を取り付けるための防塵部材の取付構造において、
前記コンデンサ支持部の下部に配置され、上方が開放された形状の防塵部材支持部と、
前記防塵部材支持部の上方に配置され、前記防塵部材を前記コンデンサ支持部に対してワンタッチで機械的に固定させることができる固定手段と、
を備えることを特徴とする防塵部材の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の防塵部材の取付構造であって、
前記固定手段は、前記防塵部材の取付時には、当該防塵部材を前記コンデンサ支持部側に押し付けることを特徴とする防塵部材の取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防塵部材の取付構造であって、
前記防塵部材は、
前記防塵部材の端部を覆う防塵部材フレームと、
当該防塵部材を前記固定手段で固定するための取付部と、
を有し、
前記取付部は、前記防塵部材フレームの前記コンデンサ支持部に対面する側と反対側に配置されることを特徴とする防塵部材の取付構造。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の防塵部材の取付構造であって、
前記固定手段は、前記コンデンサ支持部の左側に少なくとも1つ、右側に少なくとも1つ、それぞれ配置されており、
前記固定手段は左右で高さが異なるように配置されており、
前記防塵部材は、当該防塵部材を前記固定手段で固定するための取付部を有し、この取付部が、高さが異なるように配置された前記固定手段の配置場所に対応するように配置されていることを特徴とする防塵部材の取付構造。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の防塵部材の取付構造を備えることを特徴とする作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−173572(P2010−173572A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20417(P2009−20417)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】