説明

防振クランプ装置

【課題】乖離防止機構部を有する防振クランプ装置において、その全体の高さを出来る限り低く抑えるとともに、弾性連結部材であるゴム状弾性体を出来る限り柔かなものにて形成させるようにする。
【解決手段】複数本のチューブを保持する保持部16を有するチューブ保持部材1と、チューブ保持部材1を弾性連結部材5を介してボデー側に取付ける役目を果たすボデー装着部材2とが、別体の部材にて形成されるものではあるが、これらが一組の金型を用いて同時に成形加工されるようにするとともに、これら二つの部材1、2が乖離することのないように形成された乖離防止機構部3を有する構成からなるようにする。上記ボデー装着部材2は、ボデー等に設けられたスタッドのところにホルダ部6を介して取付けられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のチューブを保持した状態で、これらを弾性連結部材を介して支持するようにしたクランプ装置に関するものであり、特に、上記複数のチューブを保持する一つのチューブ保持部のところに径の異なる二種類のチューブ等を設置することのできるように形成されるものであって、このようなチューブ保持部を複数個有するように形成されたチューブ保持部材と、当該チューブ保持部材を弾性連結部材を介してボデー側に取付ける役目を果たすボデー装着部材とが、別体の部材にて形成されるものではあるが、一組の金型等を用いて同時に成形加工することのできるようにするとともに、これら二つの部材が乖離することのないようにした乖離防止機構部を有する防振クランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のものとしては、例えば特開平9−250517号公報記載のもの等が挙げられる。このものは、ボデーへの取付部をなすボデー装着部の基枠のところに設けられた大径の円孔内へ、パイプ保持部を形成する枠体の側面部に設けられたピン軸を挿入させて、上記ボデー装着部とパイプ保持部とが乖離することのないようにした乖離防止部を有する構成からなるものである。そして、このような構成からなる上記大径の円孔と上記ピン軸との間には防振機能を発揮する弾性部材が設けられるようになっているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−250517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものにおける乖離防止部は、ボデー装着部を形成する基枠のところに設けられる円孔状の取付部のところに、パイプ保持部側に形成されるピン軸が、ある程度のストローク量を有した状態で保持されるようになっているものである。従って、この受け部を形成する円孔の径も、ある程度の大きさを有するように設定する必要がある。このような比較的大きな径を有する円孔が、上記基枠のところに形成されることとなることより、この基枠の幅(高さ)も、ある程度量の値を有するように設定する必要がある。その結果、この従来のものによるパイプクランプ装置は、全体的に高さの高い大きな形状のものとならざるを得ず、スペースの限られたエンジンルーム内への設置等に当っては問題点がある。また、このものは、ピン軸が円孔の設けられる基枠の側面よりも突出した状態で形成されるようになっていることより、ピン軸を有するパイプ保持部材と、ボデー装着部を形成する基枠とは、別型を用いてそれぞれ別個に成形するとともに、これらを組合わせた状態で別の金型内に設置して間に防振ゴム材等を注入することによって防振クランプ装置を形成させなければならないと言う問題点を有する。このような問題点を解決することとしたチューブ保持用の防振クランプ装置、具体的には乖離防止機構部を有する防振クランプ装置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、チューブ保持部材とボデー装着部材とが乖離することのないように機械的に連結された乖離防止機構部を有する防振クランプ装置に関して、チューブまたはパイプ等を保持することのできるように形成された保持部を少なくとも一個以上有するとともに、当該保持部が、その付け根部のところにおいて硬質合成樹脂材にて一体的に連結され、かつ、平面状の形態からなる基部を基礎に、当該基部に対して垂直状に設立するように形成されたチューブ保持部材と、当該チューブ保持部材をボデー等に固定する役目を果たすものであって硬質合成樹脂材にて形成されるとともに、平面視において上記チューブ保持部材を包み込むように形成された枠部を有するボデー装着部材と、これら両部材間に設けられるものであって振動吸収機能を有するとともに上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間を弾性支持する弾性連結部材と、からなるものにおいて、上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間には両者が乖離することのないように形成されるものであって、上記ボデー装着部材を形成する枠部の一部が、上記チューブ保持部材の基部に対して垂直状に形成された縦壁部の上下端部に設けられた各ストッパ部のところに係合するように形成された乖離防止機構部を有するようにした構成を採ることとした。
【0006】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明においては、上記第一の発明と同様、チューブ保持部材とボデー装着部材とが乖離することのないよう機械的に連結された乖離防止機構部を有する防振クランプ装置に関して、チューブまたはパイプ等を保持することのできるように形成された保持部を少なくとも一個以上有するとともに、当該保持部が、その付け根部のところにおいて硬質合成樹脂材にて一体的に連結され、かつ、平面状の形態からなる基部を基礎に、当該基部に対して垂直状に設立するように形成されたチューブ保持部材と、当該チューブ保持部材をボデー等に固定する役目を果たすものであって硬質合成樹脂材にて形成されるとともに、平面視において上記チューブ保持部材を包み込むように形成された枠部を有するボデー装着部材と、これら両部材間に設けられるものであって振動吸収機能を有するとともに上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間を弾性支持する弾性連結部材と、からなるものにおいて、上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間には両者が乖離することのないように形成されるものであって、上記ボデー装着部材を形成する枠部の一部を成す連結枠のところが、上記チューブ保持部材の基部の延長線上に形成された舌片状の下部ストッパ部並びに上記チューブ保持部材の基部に対して垂直状に形成された縦壁部の上端部に設けられた凸片状の上部ストッパ部のところに係合するように形成された乖離防止機構部を有するようにした構成を採ることとした。
【0007】
次に、請求項3記載の発明である第三の発明においては、上記第一の発明と同様、チューブ保持部材とボデー装着部材とが乖離することのないよう機械的に連結された乖離防止機構部を有する防振クランプ装置に関して、チューブまたはパイプ等を保持することのできるように形成された保持部を少なくとも一個以上有するものであって、当該保持部が直立状に設立されるとともに、その付け根部のところにおいて硬質合成樹脂材にて一体的に連結され、更には、これらが、後に述べるボデー装着部材内に収容されるように形成されたチューブ保持部材と、当該チューブ保持部材をボデー等に固定する役目を果たすものであって硬質合成樹脂材にて形成されるとともに、上記チューブ保持部材を収容するように形成された枠部を有するボデー装着部材と、これら両部材間に設けられるものであって振動吸収機能を有するとともに上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間を弾性支持する弾性連結部材と、からなるものにおいて、上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間には両者が乖離することのないように形成されるものであって、上記ボデー装着部材を形成する枠部に設けられた切欠窓内に、上記チューブ保持部材の一部に設けられた突片状の係合部材からなるものであって当該突片状係合部材の、その先端部が上記ボデー装着部材を形成する枠部の外表面から突出しない状態で係合するように形成された乖離防止機構部を有するようにした構成を採ることとした。
【0008】
次に、請求項4記載の発明である第四の発明においては、請求項1ないし請求項3記載の防振クランプ装置に関して、上記ボデー装着部材を、平面視において四辺形状の形態からなる枠状部材からなる枠部を基礎に形成させるとともに、このような枠部内に上記チューブ保持部材を設置するとともに、このように設置されたチューブ保持部材とボデー装着部材との間にゴム状弾性体からなる弾性連結部材を設けるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明である第一の発明について説明する。本発明によれば、上記構成を採ることにより、チューブ保持部材とボデー装着部材とは平面視においてボデー装着部材を形成する枠部内にすべての部材あるいは部分が包含されるようになっていることより、上記チューブ保持部材及びボデー装着部材を一体的に組み込んだ状態で、同一金型を用いて同時に成形加工をすることができるようになる。その結果、製造コストの低減化を図ることができるようになる。また、チューブ保持部材とボデー装着部材との間には機械的に乖離することのないように形成された乖離防止機構部が設けられるようになっていることより、上記両者の間を連結する弾性連結部材、具体的にはゴム状弾性部材に低い硬度を有するもの、すなわち、柔らかな防振ゴム等を用いることができるようになる。その結果、防振効果をより高めさせることができるようになる。
【0010】
また、請求項2記載の発明である第二の発明のものにおいては、上記請求項1記載の発明のところで述べたと同様の効果、すなわち、乖離防止機構部の作用により、弾性連結部材を形成する防振ゴムの、その硬度を低めのものに設定することができるようになり、これによって防振機能をより高めさせることができるようになる。
【0011】
また、請求項3記載の発明である第三発明のものにおいては、上記乖離防止機構部の作用により、弾性連結部材を形成する防振ゴムの、その硬度を低めのものに設定することができるようになり、これによって防振機能をより高めさせることができるようになる。これらに加えて、本発明のものにおいては、乖離防止機構部を、ボデー装着部材を形成する枠部に設けられた切欠窓内に、上記チューブ保持部材の一部に設けられた突片状の係合部材を係合させることによって形成させるとともに、このような係合部材の、その先端部のところが上記枠部の外表面側には突出しないように形成させるようにしたので、このような乖離防止機構部を有する本防振クランプ装置は、全体がボデー装着部材を形成する上記枠部にて包み込まれた枠状体からなるようにすることができるようになる。その結果、上記チューブ保持部材とボデー装着部材とを同一金型内にて、同時に、かつ、一体的に成形加工をすることができるようになる。そして、このようにして形成されたチューブ保持部材とボデー装着部材との間にゴム状弾性体を別型を用いて設けることによって、乖離防止機構部を有する防振クランプ装置を効率良く形成(製造)することができるようになる。
【0012】
また、請求項4記載の発明である第四の発明のものにおいては、ボデー装着部材を平面視において四辺形状の形態からなる枠状部材からなる枠部を基礎に形成させるとともに、このような枠部内に同じく四辺形状のチューブ保持部材を設置することによって防振クランプ装置を形成させるようにしたので、上記ボデー装着部材とチューブ保持部材とを、同一金型内にて、一体的に組み合わせた状態にて形成(製造)することができるようになり、上記両者の成形工程の効率化を図ることができるようになる。その結果、本防振クランプ装置の製造コストの低減化を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の主要部を成すチューブ保持部材とボデー装着部材との組合せた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の全体構成図を示す平面図である。
【図4】本発明の全体構成図を示す側面図である。
【図5】本発明にかかる下部ストッパ部の構成を示すものであって、図3におけるAA断面部を示すものである。
【図6】本発明にかかる上部ストッパ部の構成を示すものであって、図4におけるBB断面部を示すものである。
【図7】本発明にかかる乖離防止機構部についての、その変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明にかかる乖離防止機構部についての、その変形例を示す正面図である。
【図9】本発明にかかる乖離防止機構部についての、その変形例を示す一部破断面図であって、図8におけるCC断面部を示すものである。
【図10】本発明にかかるチューブ保持部の全体構成を示す斜視図である。
【図11】本発明にかかるチューブ保持部における径の太いチューブを保持したときの状態を示す図である。
【図12】本発明にかかるチューブ保持部における径の細いチューブを保持したときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図1ないし図12を基に説明する。本実施の形態にかかるものは、図1または図2に示す如く、チューブ等を保持するチューブ保持部を少なくとも一個以上有するもの、本実施の形態においては、このようなチューブ保持部を複数個有するチューブ保持部材1と、当該チューブ保持部材1を弾性連結部材5を介してボデー側に取付ける役目を果たすボデー装着部材2とが、別体の部材にて形成されるものではあるが、これらが一組の金型を用いて同時に成形加工することのできるようにするとともに、これら二つの部材1、2が乖離することのないように形成された乖離防止機構部3を有する構成からなることを基本とするものである。このような基本構成からなるものにおいて、上記ボデー装着部材2はボデー等に設けられたスタッド等のところにホルダ部6を介して取付けられるようになっているものである(図1参照)。
【0015】
その具体的な構成について説明する。このものは、例えば図2に示す如く、チューブ、パイプ等を保持する保持部16を少なくとも一個以上有するとともに、これら保持部が複数個あるものについては、各保持部16の、その付け根部のところが硬質合成樹脂材にて一体的に連結され、かつ、平面状の形態からなる基板状の基部11を基礎に、当該基部11に対して上記保持部16が直立するように設けられるチューブ保持部材1と、当該チューブ保持部材1をボデー等に固定する役目を果たすものであって硬質合成樹脂材にて形成されるとともに、平面視において上記チューブ保持部材1を包み込むように形成されるものであって縦枠部21及び連結枠25からなる枠部を有するボデー装着部材2と、これら両部材1、2間に設けられるものであって振動吸収機能を有するとともに上記チューブ保持部材1とボデー装着部材2との間を弾性支持する弾性連結部材5(図1,図3参照)と、からなるものである。このような構成からなるものにおいて、本実施の形態のものにおいては、上記チューブ保持部材1とボデー装着部材2とは、例えば図2に示す如く、両者が組み合わされた状態または結合された状態で一体的に成形加工されるようになっているものである。従って、上記両者1、2は、その後の加工工程等においても常に一組の状態で取り扱われることとなり、両者がバラバラになったりするようなことが無い。その結果、このような一組のチューブ保持部材1とボデー装着部材2との間に設けられるゴム状弾性体からなる弾性連結部材5も、両者1、2間に単に組み込まれているに過ぎず、接着剤等にて接合されているような構成とはなっていない。すなわち、本防振クランプ装置は接着剤レスの構造となっているものである。
【0016】
また、本実施の形態のものにおいては、上記チューブ保持部材1とボデー装着部材2との間には両者が乖離することのないように形成された乖離防止機構部3が設けられるようになっている(図1,図2参照)。このものは、上記ボデー装着部材2を形成する枠部の一部である連結枠25のところが、例えば図4ないし図6に示す如く、上記チューブ保持部材1の基部11に対して垂直状に形成された支柱状縦壁部15の上端部に設けられた上部ストッパ部115(図6参照)並びに基部11の延長線上に設けられた下部ストッパ部112(図5参照)のところに係合するようになっているものである。なお、この乖離防止機構部3に関しては、この他に、図7ないし図9に示すような構成からなるもの(変形例)も考えられる。このものは、ボデー装着部材2を形成する枠部である縦枠部21の一部に設けられた切欠窓215内に、上記チューブ保持部材1の一部に設けられた突片状の係合部材12を係合させるようにした構成からなるものである。
【0017】
なお、上記係合部材12は、その先端部のところが、例えば図7または図9に示す如く、上記縦枠部21の外表面側には突出しないように形成されるようになっている。そして、このような構成からなる切欠窓215と係合部材12との間にはゴム状弾性体からなる弾性連結部材5が設けられるようになっている(図7ないし図9参照)。そして更に、このような乖離防止機構部3を有する本防振クランプ装置は、全体がボデー装着部材2を形成する上記枠部21、25にて包み込まれた枠状部材を主に形成されるようになっているものである。また、上記ボデー装着部材2は内部にチューブ保持部材1を包含した状態で、かつ、外表面側には何らの突起部も無い、なめらかな表面形態を形成するようになっているものである(図3ないし図6参照)。その結果、上記チューブ保持部材1とボデー装着部材2とは同一金型を用いて、同時に、かつ、一体的に成形加工をすることができるようになる。そして、このようにして形成されたチューブ保持部材1とボデー装着部材2との間にゴム状弾性体5を別型を用いて設けることによって、乖離防止機構部3を有する本防振クランプ装置が形成されることとなる。
【0018】
なお、このような構成からなるものにおいて、上記ボデー装着部材2を、例えば図3または図4に示す如く、平面視において四辺形状の形態からなる枠状部材からなる枠部、具体的には縦枠部21及び連結枠25を基礎に形成させるとともに、このような枠部内に同じく四辺形状のチューブ保持部材1を設置することによって上記ボデー装着部材2とチューブ保持部材1とを、同一金型内にて、一体的に組み合わせた状態にて形成させるようにしたものも考えられる。このようにして形成されたチューブ保持部材1とボデー装着部材2との間にゴム状弾性体からなる弾性連結部材5を設けることによって、立方体形状の簡素な形態からなる防振クランプ装置が形成されることとなる。
【0019】
このような構成を採ることにより、本実施の形態のものにおいては、例えば図1ないし図3に示す如く、チューブ保持部材1とボデー装着部材2とは平面視において四辺形の形態からなるボデー装着部材2を形成する枠部21、25内に、すべての部材あるいは部分が包含されるようになる。これによって、上記チューブ保持部材1及びボデー装着部材2を、一体的に組み込んだ状態で同一金型を用いて同時に成形加工をすることができるようになる。その結果、製造コストの低減化を図ることができるようになる。また、チューブ保持部材1とボデー装着部材2との間には機械的に乖離することのないように形成された乖離防止機構部3が設けられるようになっている。
【0020】
なお、この乖離防止機構部3を形成する下部ストッパ部112は、例えば図2または図5に示す如く、平面状の形態からなる基部11の延長線上に舌片状に形成されるようになっているものである。そして、本下部ストッパ部112は、上記ボデー装着部材2の一部を形成する縦枠部21の端縁部と同一平面内に形成されるようになっているものである。すなわち、下部ストッパ部112は、例えば図2または図5に示すような形態(組付状態)からなるものにおいては本防振クランプ装置の最下端部のところに設けられるようになっているものである。従って、本防振クランプ装置の上下方向への移動代(振動代)は、この装着面を基準に設定されることとなり、本防振クランプ装置の全体高さを比較的低く抑えることができるようになる。すなわち、本装置全体の省スペース化を図ることができるようになる。このような乖離防止機構部3を設けることによって、その後の工程、例えば両者の間を連結する弾性連結部材5であるゴム状弾性部材の設置作業等において、両者がバラバラになったりするようなことがなくなり、ゴム状弾性部材の設置作業等を円滑に進めることができるようになる。更には、上記ゴム状弾性部材として硬度の低いもの、すなわち、柔らかな防振ゴム等を用いることができるようになる。その結果、防振効果をより高めさせることができるようになる。
【0021】
また、上記乖離防止機構部に関する、その変形例として、例えば図7ないし図9に示すようなものが挙げられる。このものは、上記ボデー装着部材2を形成する縦枠部21の一部に設けられた切欠窓215と、当該切欠窓215内に設置されるものであって上記チューブ保持部材1の一部に設けられた突片状の係合部材12と、からなるようにしたものである。このような構成からなるものにおいて、上記突片状係合部材12の、その先端部のところは、例えば図9に示す如く、上記ボデー装着部材2を形成する枠部21の外表面から突出しない状態で係合し合うようになっている。これによって上記チューブ保持部材1とボデー装着部材2とは、ボデー装着部材2の枠部21、25内に全体が収容された状態で、かつ、ボデー装着部材2の外表面部には何らの突出部もない平滑な面の状態で形成されるようになる。これによって、上記チューブ保持部材1とボデー装着部材2とは、一組の金型を用いて、一体的に、かつ、同時に成形加工をすることができるようになり、上記両者の成形工程の効率化を図ることができるようになる。
【0022】
また、本実施の形態のものにおいては、上記チューブ保持部材1の保持部(チューブ保持部)16のところには、例えば図10ないし図12に示す如く、径の異なる二種類のチューブ等を保持することができるようになっている。以下に、その具体的内容について説明する。このものは、径の大きなもの、すなわち太いチューブ9等を保持するように形成された第一のチューブ保持部161及び径の値の小さなもの、すなわち、細いチューブ9’等を保持するように形成された第二のチューブ保持部166からなるものである。このような構成からなるものにおいて、第一のチューブ保持部161は、図11に示す如く、水平方向に設けられる基部11及び当該基部11に対して垂直状に形成される縦壁部15、15の付け根部のところに設けられるものであって円弧の一部にて形成される凹陥状の第一受止め部162(図4,図10,図11参照)と、上記縦壁部15の上端部155のところから斜め下方に向かって、かつ、上記第一受止め部162を形成する円弧の基礎となる円の中心に向って延びるように形成されるカンチレバーの形態からなる第一保持腕165と、からなるものである。
【0023】
このような構成からなるものにおいて、径の太いチューブ9の装着に当っては、例えば図11の(イ)に示す如く、チューブ9を第一保持腕165、165のところに持って行き、ここにセットする。次に、このような状態において、チューブ9の上方側から、当該チューブ9を矢印方向に押し込むようにする。これによって、左右の第一保持腕165、165は開き方向に弾性変形をし、上記チューブ9を下方へと通過させる。そして、このチューブ9は、図11の(ロ)に示す如く、半円形状の形態からなる第一受止め部162のところに、その下半部が受止められ、ここに保持されるようになる。なお、このような状態においては、チューブ9の上半部は、図11の(ロ)に示す如く、カンチレバー状の形態からなる第一保持腕165、165の先端部1659、1659にて、下方へと押付けられるように保持されることとなり、チューブ9全体は、本第一のチューブ保持部161のところに確実に保持されることとなる(図10参照)。
【0024】
次に、径の細いチューブ9’等を保持する第二のチューブ保持部166は、例えば図4または図12に示す如く、上記第一保持腕165のそれぞれの上記支柱状縦壁部15の上端部155のところに設けられるようになっているものである。そして更に、この第二のチューブ保持部166は、平面視において、上記第一保持腕165と同様、上記第一保持腕165と同方向に、かつ、当該第一保持腕165の内側に設けられるものであって当該第一保持腕165よりも長く形成されるカンチレバーの形態からなる第二保持腕167並びにこれら各保持腕の設けられるそれぞれの支柱状縦壁部15の付け根部間に設けられるものであって、上記第一受止め部162を形成する円弧の径よりも小さな値の径を有する半円筒状の形態からなるものであり、かつ、上記両支柱状縦壁部15、15間を橋渡しするように形成される第二受止め部168からなるものである。
【0025】
このような構成からなるものにおいて、径の細いチューブ9’の装着に当っては、例えば、図12の(イ)に示す如く、チューブ9’を第二保持腕167、167のところに持って行き、ここにセットする。次に、このような状態において、チューブ9’の上方側から当該チューブ9’を矢印方向へ押し込むようにする。これによって、左右の第二保持腕167、167は開き方向に弾性変形をし、上記チューブ9’を下方へと通過させる。そして、このチューブ9’は、図12の(ロ)に示す如く、半円形状の形態からなる第二受止め部168のところに、その下半部が受止められ、ここに保持されることとなる。なお、このような状態においては、チューブ9’の上半部は、図12の(ロ)に示す如く、カンチレバー状の形態からなる第二保持腕167、167の先端部1679、1679にて下方へと押付けられるように保持されることとなり、チューブ9’全体は本第二のチューブ保持部166のところに確実に保持されることとなる(図10参照)。そして、このような第一のチューブ保持部161及び第二のチューブ保持部166の基礎となる基部11と、これら各チューブ保持部161、166をホルダ部6を介して車体側へ取付ける役目を果たすボデー装着部材2と、の間にはゴム状弾性体からなる弾性連結部材5が設けられるようになっている。その結果、上記チューブ等に発生したビビリ振動等は、このゴム状弾性体からなる弾性連結部材5のところで効率良く遮断されることとなる。
【符号の説明】
【0026】
1 チューブ保持部材
11 基部
112 下部ストッパ部
115 上部ストッパ部
12 係合部材
15 支柱状縦壁部
155 上端部
16 保持部
161 第一のチューブ保持部
162 第一受止め部
165 第一保持腕
1659 先端部
166 第二のチューブ保持部
167 第二保持腕
1679 先端部
168 第二受止め部
2 ボデー装着部材
21 縦枠部
215 切欠窓
25 連結枠
3 乖離防止機構部
5 弾性連結部材
6 ホルダ部
9 チューブ
9’ チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブまたはパイプ等を保持することのできるように形成された保持部を少なくとも一個以上有するとともに、当該保持部が、その付け根部のところにおいて硬質合成樹脂材にて一体的に連結され、かつ、平面状の形態からなる基部を基礎に、当該基部に対して垂直状に設立するように形成されたチューブ保持部材と、当該チューブ保持部材をボデー等に固定する役目を果たすものであって硬質合成樹脂材にて形成されるとともに、平面視において上記チューブ保持部材を包み込むように形成された枠部を有するボデー装着部材と、これら両部材間に設けられるものであって振動吸収機能を有するとともに上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間を弾性支持する弾性連結部材と、からなるものにおいて、上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間には両者が乖離することのないように形成されるものであって、上記ボデー装着部材を形成する枠部の一部が、上記チューブ保持部材の基部に対して垂直状に形成された縦壁部の上下端部に設けられた各ストッパ部のところに係合するように形成された乖離防止機構部を有するようにした構成からなることを特徴とする防振クランプ装置。
【請求項2】
チューブまたはパイプ等を保持することのできるように形成された保持部を少なくとも一個以上有するとともに、当該保持部が、その付け根部のところにおいて硬質合成樹脂材にて一体的に連結され、かつ、平面状の形態からなる基部を基礎に、当該基部に対して垂直状に設立するように形成されたチューブ保持部材と、当該チューブ保持部材をボデー等に固定する役目を果たすものであって硬質合成樹脂材にて形成されるとともに、平面視において上記チューブ保持部材を包み込むように形成された枠部を有するボデー装着部材と、これら両部材間に設けられるものであって振動吸収機能を有するとともに上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間を弾性支持する弾性連結部材と、からなるものにおいて、上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間には両者が乖離することのないように形成されるものであって、上記ボデー装着部材を形成する枠部の一部を成す連結枠のところが、上記チューブ保持部材の基部の延長線上に形成された舌片状の下部ストッパ部並びに上記チューブ保持部材の基部に対して垂直状に形成された縦壁部の上端部に設けられた凸片状の上部ストッパ部のところに係合するように形成された乖離防止機構部を有するようにした構成からなることを特徴とする防振クランプ装置。
【請求項3】
チューブまたはパイプ等を保持することのできるように形成された保持部を少なくとも一個以上有するものであって、当該保持部が直立状に設立されるとともに、その付け根部のところにおいて硬質合成樹脂材にて一体的に連結され、更には、これらが、後に述べるボデー装着部材内に収容されるように形成されたチューブ保持部材と、当該チューブ保持部材をボデー等に固定する役目を果たすものであって硬質合成樹脂材にて形成されるとともに、上記チューブ保持部材を収容するように形成された枠部を有するボデー装着部材と、これら両部材間に設けられるものであって振動吸収機能を有するとともに上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間を弾性支持する弾性連結部材と、からなるものにおいて、上記チューブ保持部材とボデー装着部材との間には両者が乖離することのないように形成されるものであって、上記ボデー装着部材を形成する枠部に設けられた切欠窓内に、上記チューブ保持部材の一部に設けられた突片状の係合部材からなるものであって当該突片状係合部材の、その先端部が上記ボデー装着部材を形成する枠部の外表面から突出しない状態で係合するように形成された乖離防止機構部を有するようにした構成からなることを特徴とする防振クランプ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3記載の防振クランプ装置において、上記ボデー装着部材を、平面視において四辺形状の形態からなる枠状部材からなる枠部を基礎に形成させるとともに、このような枠部内に上記チューブ保持部材を設置するとともに、このように設置されたチューブ保持部材とボデー装着部材との間にゴム状弾性体からなる弾性連結部材を設けるようにした構成からなることを特徴とする防振クランプ装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−237350(P2012−237350A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105781(P2011−105781)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000228981)日本スタッドウェルディング株式会社 (31)
【Fターム(参考)】