説明

防振ユニットの製造方法

【課題】部品点数および製造時の作業工数の削減を図ることができる防振ユニットの製造方法を提供すること。
【解決手段】防振装置10のボス部材11を、第2ブラケット30の被圧入部35に圧入して固定する。よって、防振装置10のボス部材11を第2ブラケット30にボルトで固定(締結固定)する場合と比較して、ボルトを省略できる分、部品点数の削減を図ることができる。また、このように、ボルトが省略できれば、雌ねじ部を防振装置10のボス部材11に形成する必要がないので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。更に、防振装置10のボス部材11を化成処理する際には、雌ねじ部をマスキングボルトで保護する工程を行う必要がないので、マスキングボルトを着脱する作業を不要として、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ユニットの製造方法に関し、特に、部品点数および製造時の作業工数の削減を図ることができる防振ユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体と振動源であるエンジンとの間には、車体側への振動の伝達を抑制するために防振装置が設けられる。例えば、特許文献1には、下側取付具12(ボス部材)と、筒状の上側取付具14(外筒部材)と、これら両取付具12,14を連結するゴム状弾性体からなる防振基体16とを備える防振装置本体18(防振装置)を、その周囲を取り囲む正面視額縁状の第2ブラケット22を介して下側取付具12を車体1側に取り付けると共に、側方へ向けて延出される第1ブラケット20を介して上側取付具14をエンジン2側に取り付けるようにした、いわゆる倒立タイプの防振装置(防振ユニット)が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−014080号(段落[0015]及び第1〜第3図など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、下側取付具12の下面に雌ねじ部24が凹設されており、第2ブラケット22のボルト挿通孔78に挿通したボルト80を、下側取付具12の雌ねじ部24に螺合することで、下側取付具12を第2ブラケット22に固定する構造なので、ボルト80が必要となる分、部品点数の増加を招く。また、下側取付具12に雌ねじ部24を形成する必要があるため、製造時の作業工数の増加を招く。更に、下側取付具12を化成処理する際には、雌ねじ部24をマスキングボルトにより保護する必要があるため、その着脱作業の分、製造時の作業工数の増加を招く。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、部品点数および製造時の作業工数の削減を図ることができる防振ユニットの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の防振ユニットの製造方法によれば、防振装置形成工程によりボス部材と外筒部材との間を防振基体により連結して形成された防振装置を、第1ブラケット保持工程により第1ブラケットの保持孔に軸方向に圧入して第1ブラケットに保持させ、第2ブラケット固定工程では、防振装置のボス部材の圧入部を、第2ブラケットの固定部材の被圧入部に圧入することで、防振装置のボス部材を第2ブラケットの固定部材に固定(圧入固定)するので、防振装置のボス部材を第2ブラケットの固定部材にボルトで固定(締結固定)する場合と比較して、ボルトを省略できる分、部品点数が削減された防振ユニットを製造することができる。また、このように、ボルトが省略できれば、防振装置形成工程において、雌ねじ部を防振装置のボス部材に形成する必要がないので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。更に、防振装置のボス部材を化成処理する際には、雌ねじ部をマスキングボルトで保護する工程を行う必要がないので、マスキングボルトを着脱する作業を不要として、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。
【0007】
この場合、第2ブラケットの固定部材は、固定部材の側面に被圧入部が開口し、第2ブラケット固定工程は、固定部材の被圧入部へ向けて上昇傾斜する冶具傾斜面が形成された冶具を固定部材の側面に並設するか、又は、固定部材の被圧入部の開口側の底面に圧入方向に沿って上昇傾斜して形成されたブラケット傾斜面を第2ブラケットに設けておき、ボス部材の圧入部の下面を、冶具傾斜面またはブラケット傾斜面に沿って摺動させることで、防振装置の防振基体が軸方向に圧縮された状態で、防振装置のボス部材を第2ブラケットの固定部材に固定するので、製造時の作業工数の削減を図ることができる。
【0008】
即ち、第2ブラケットの固定部材と接続部材との間に防振装置を軸方向に圧縮された状態で設置する必要がある場合(例えば、防振装置の無負荷状態での軸方向の高さ寸法が、固定部材と接続部材との間の対向間隔よりも大きい場合)、従来の製造方法では、まず、防振装置を軸方向に短縮し(例えば、第1ブラケットとボス部材とをロボットによりそれぞれ保持して軸方向へ相対変位させる)、次いで、その短縮状態を維持しつつ第2ブラケットの固定部材と接続部材との間に防振装置を設置し、その後、ボルトにより防振装置のボス部材を第2ブラケットの固定部材に締結固定する必要がある。そのため、圧入装置の動作が複雑となり、設備コストが嵩む。また、圧入工程の前に、防振装置を軸方向へ短縮(圧縮)させる工程が必要となり、製造時の作業工数が嵩む。
【0009】
これに対し、請求項1では、防振装置のボス部材に軸直角方向への荷重のみを作用させることで、ボス部材の圧入部の下面を、冶具傾斜面またはブラケット傾斜面に沿って摺動させ、これにより、防振装置の防振基体が軸方向に圧縮された状態で、防振装置のボス部材を第2ブラケットの固定部材に固定することができる。即ち、防振部材のボス部材を第2ブラケットの固定部材に圧入して固定する工程と、防振装置を軸方向に圧縮する工程とを兼用することができる。これにより、製造時の作業工数の削減を図ることができる。また、圧入装置の構造を簡素化して、第2ブラケットの固定部材に防振装置のボス部材を圧入するための設備コストの削減を図ることができる。
【0010】
請求項2記載の防振ユニットの製造方法によれば、請求項1記載の防振ユニットの製造方法の奏する効果に加え、ボス部材の圧入部は、ボス本体の下面側から突出される軸部から張出部が径方向外方へ張り出される一方、固定部材の被圧入部は、張出部被圧入部および軸部被圧入部が、ボス部材の圧入部の張出部および軸部の外形形状に対応する断面形状の空間として形成され、第2ブラケット固定工程では、固定部材の被圧入部へボス部材の圧入部が固定部材の側面における開口から防振装置の軸直角方向に沿って圧入されるので、防振装置のボス部材が第2ブラケットの固定部材に強固に固定された防振ユニットを製造することができる。
【0011】
即ち、本製造方法により製造された防振ユニットによれば、第1ブラケットが第2ブラケットに対し、防振装置の軸方向へ相対変位される場合には、ボス部材の圧入部における張出部が、固定部材の被圧入部における内部空間の内面に係合することで、防振装置のボス部材が第2ブラケットの固定部材に固定された状態を維持できる。また、これに、こじり方向(防振装置の軸を傾斜させる方向)への相対変位が組み合わされた場合も同様である。
【0012】
一方、本製造方法により製造された防振ユニットによれば、第1ブラケットが第2ブラケットに対し、防振装置の軸直角方向であって圧入方向と平行となる方向へ相対変位される場合(即ち、外筒部材が第2ブラケットによってボス部材の圧入方向と反対方向に平行に変位される場合)でも、外筒部材とボス部材との間に防振基体が介設されていることから、ボス部材には、防振基体の弾性変形により、張出部を傾斜させる方向への力も発生し、よって、ボス部材の圧入部における張出部が、固定部材の被圧入部における内部空間の内面に係合する。これにより、ボス部材の圧入部が固定部材の被圧入部から抜け出ることを抑制でき、その結果、防振装置のボス部材が第2ブラケットの固定部材に固定された状態を維持できる。
【0013】
請求項3記載の防振ユニットの製造方法によれば、請求項2記載の防振ユニットの製造方法の奏する効果に加え、固定部材の被圧入部が、固定部材の側面における開口と反対側となる終端に形成される位置決め壁を備え、第2ブラケット固定工程では、ボス部材の圧入部が固定部材の被圧入部における位置決め壁に当接されて圧入が規制される位置まで、ボス部材の圧入部を固定部材の被圧入部に圧入するので、ボス部材の圧入位置を規定位置に調整するための複雑な制御を行う必要がない。即ち、第2ブラケット固定工程では、ボス部材の圧入部を位置決め壁に当接するまで圧入すれば良いので、圧入工程を簡素化して、その制御コストの削減を図ることができると共に、圧入位置の位置精度の向上を図ることができる。
【0014】
また、本製造方法により製造された防振ユニットによれば、ボス部材の圧入部が固定部材の被圧入部における位置決め壁に当接した状態とされるので、第1ブラケットが第2ブラケットに対して相対変位される場合には、圧入部と位置決め壁との係合を利用して、入力荷重を支持することができる。よって、ボス部材が固定部材に固定された状態を強固に維持できる。
【0015】
請求項4記載の防振ユニットの製造方法によれば、請求項3記載の防振ユニットの製造方法の奏する効果に加え、ボス部材の張出部が円板形状に形成されるので、被圧入部の張出部被圧入空間における内壁面との間の係合面積を拡大することができる。よって、張出部と張出部被圧入空間の内壁面との間の係合を利用して、ボス部材が第2ブラケットの固定部材に固定された状態をより確実に維持できる防振ユニットを製造することができる。
【0016】
また、位置決め壁が張出部の円板形状に対応して円弧状に湾曲して形成されることで、製品状態では、張出部と位置決め壁との係合を利用して、入力荷重に対抗することができる。よって、ボス部材が固定部材に固定された状態を強固に維持できる防振ユニットを製造することができる。
【0017】
この場合、位置決め壁が円弧状に湾曲して形成されることで、第2ブラケット固定工程において、ボス部材の圧入位置の位置決めを可能としつつ、被圧入部の幅寸法が嵩むことを抑制して、第2ブラケットの小型化が可能な防振ユニットを製造することができる。また、ボス部材の張出部が、例えば、正方形の板状に形成される場合、被圧入部の幅寸法(圧入方向の寸法)を抑制するためには、位置決め壁全体の板厚を薄肉とする必要があるが、請求項4では、位置決め壁が円弧状に湾曲して形成されるので、位置決め壁の両端の板厚を肉厚として、その位置決め壁の剛性が確保された防振ユニットを製造することができる。
【0018】
請求項5記載の防振ユニットの製造方法によれば、請求項4記載の防振ユニットの製造方法の奏する効果に加え、位置決め壁は、幅方向中央部分に開口形成される開口を備えるので、第2ブラケット固定工程において、ボス部材の被圧入部への圧入時に削り屑が生じた際には、その切り屑を開口から外部へ排出することができる。よって、削り屑が挟まることが抑制され、ボス部材の張出部を位置決め壁に密着させることができるので、ボス部材の圧入位置の位置精度を確保することができる。
【0019】
ここで、位置決め壁は、円弧状に湾曲して形成されるため、幅方向中央部分の板厚が薄肉となる。この場合、開口を設けないと、ボス部材の圧入位置を規制する際の幅方向中央部分の強度を確保する(破損を防止する)ためには、位置決め壁(幅方向中央部分)の板厚を大きくする必要が生じ、その分、第2ブラケット(固定部材)の大型化を招く。これに対し、請求項5では、開口が、位置決め壁の幅方向中央に形成されるので、位置決め壁の強度を確保(幅方向中央部分の破損を防止)しつつ、第2ブラケット(固定部材)の小型化が図られた防振ユニットを製造することができる。
【0020】
請求項6記載の防振ユニットの製造方法によれば、請求項4又は5に記載の防振ユニットの製造方法の奏する効果に加え、ボス部材が軸対称形状に形成されると共に、防振装置の軸に対して同軸上に配置されるので、周方向の方向性を考慮する必要がない。よって、防振装置形成工程において、防振基体の加硫成形時に加硫金型内へボス部材を設置する際には、その設置時にボス部材の軸周りの方向性を考慮せずに作業を行うことができる。同様に、第1ブラケット保持工程において、防振装置の外筒部材を第1ブラケットに圧入して保持させる際には、その圧入時に防振装置の軸周りの方向性を考慮せずに作業を行うことができる。即ち、ボス部材又は防振装置を周方向に位置合わせする作業を省略することができるので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。
【0021】
請求項7記載の防振ユニットの製造方法によれば、請求項3から6のいずれかに記載の防振ユニットの製造方法の奏する効果に加え、位置決め壁は、ボス部材の圧入部が当接される側の面に凹設される共に被圧入部の内壁面側に連なる外縁の少なくとも一部に沿って溝状に延設される溝部を備えるので、第2ブラケット固定工程において、ボス部材の圧入部を固定部材の被圧入部に圧入する際に削り屑が生じた場合には、その切り屑を溝部に収容することができる。即ち、ボス部材の圧入部と位置決め壁との間に削り屑が挟まると、ボス部材の圧入部の圧入位置にばらつきが生じるところ、請求項7によれば、削り屑を溝部に収容して、ボス部材の圧入部を位置決め壁に密着させることができるので、ボス部材の圧入位置の位置精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は、本発明の第1実施の形態における防振ユニットの上面図であり、(b)は、図1(a)の矢印Ib方向から視た防振ユニットの正面図である。
【図2】防振装置の側断面図である。
【図3】(a)は、防振装置の部分拡大正面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるボス部材の断面図である。
【図4】第1ブラケットの上面図である。
【図5】(a)は、第2ブラケットの正面図であり、(b)は、図5(a)のVb−Vb線における第2ブラケット30の断面図である。
【図6】(a)は、圧入前における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)及び(c)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図および部分拡大正面図である。
【図7】(a)は、第2実施の形態における第2ブラケットの部分拡大正面図であり、(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における第2ブラケットの部分拡大断面図であり、(c)は、図7(a)の矢印VIIc方向から視た第2ブラケットの部分拡大上面図である。
【図8】(a)は、圧入前における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)及び(c)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図および部分拡大正面図である。
【図9】(a)は、第3実施の形態における第2ブラケットの部分拡大断面図であり、(b)は、図9(a)の矢印IXb方向から視た第2ブラケットの部分拡大背面図である。
【図10】(a)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大正面図である。
【図11】(a)は、第4実施の形態における圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大正面図である。
【図12】(a)は、第5実施の形態における防振装置の部分拡大正面図であり、(b)は、図12(a)のXIIb−XIIb線におけるボス部材の断面図である。
【図13】(a)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大正面図である。
【図14】第6実施の形態における第2ブラケットの部分拡大正面図であり、(b)は、図14(a)のXIVb−XIVb線における第2ブラケットの部分拡大断面図であり、(c)は、図14(b)におけるXIVc−XIVc線における第2ブラケットの部分拡大断面図である。
【図15】(a)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大正面図であり、(b)は、図15(a)のXVb−XVb線における防振ユニットの部分拡大断面図である。
【図16】(a)は、第7実施の形態における防振装置の部分拡大正面図であり、(b)は、図16(a)のXVIb−XVIb線におけるボス部材の断面図である。
【図17】(a)は、第2ブラケットの部分拡大正面図であり、(b)は、図17(a)の矢印XVIIbから視た第2ブラケットの部分拡大上面図である。
【図18】(a)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大正面図であり、(b)は、図18(a)のXVIIIb−XVIIIb線における防振ユニットの部分拡大断面図である。
【図19】第8実施の形態における圧入前の防振ユニットの断面図である。
【図20】(a)は、変形例における防振装置の部分拡大正面図であり、(b)は、図20(a)の矢印XXb方向から視たボス部材の下面図である。
【図21】(a)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)は、圧入後における防振ユニット501の部分拡大正面図である。
【図22】(a)は、変形例における第2ブラケットの部分拡大断面図であり、(b)は、図22(a)の矢印XXIIb方向から視た第2ブラケットの部分拡大背面図である。
【図23】(a)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大正面図である。
【図24】(a)は、変形例における第2ブラケットの部分拡大断面図であり、(b)は、図24(a)の矢印XXIIb方向から視た第2ブラケットの部分拡大背面図である。
【図25】(a)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大断面図であり、(b)は、圧入後における防振ユニットの部分拡大正面図である。
【図26】変形例における防振ユニットの圧入の過程を示す断面図であり、(a)は圧入前の状態に、(b)は圧入途中の状態に、(c)は圧入後の状態に、それぞれ対応する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施の形態における防振ユニット1の上面図であり、図1(b)は、図1(a)の矢印Ib方向から視た防振ユニット1の正面図である。
【0024】
防振ユニット1は、自動車のエンジン(図示せず)を支持固定しつつ、そのエンジンの振動を車体(図示せず)へ伝達させないようにするための装置であり、ボス部材11と外筒部材12との間がゴム状弾性体からなる防振基体13により連結された防振装置10(いずれも図3参照)と、その防振装置10の外筒部材13を保持すると共にエンジン側に取り付けられる第1ブラケット20と、防振装置10のボス部材11が固定されると共に車体側に取り付けられる第2ブラケット30とを備える。
【0025】
防振装置10は、軸方向を鉛直方向に一致させた縦姿勢に配置されると共にボス部材11側を下方とした倒立状態に配置され、第2ブラケット30に周囲が取り囲まれる。第1ブラケット20は、防振装置10の側方から径方向外方(軸直角方向、図1(a)上方)へ向けて水平に張り出される。
【0026】
なお、第1ブラケット20及び第2ブラケット30には、それぞれ3ヶ所に取付穴h1,h2が穿設されており、それら各取付穴h1,h2に挿通されたボルトによりエンジン側および車体側に締結固定される。また、防振装置10及び第1ブラケット20には、ストッパゴムSGが装着され、防振装置10の上面側および第1ブラケット20の本体部21(図4参照)の外周側がストッパゴムSGにより覆われる。
【0027】
また、防振ユニット1が自動車のエンジンを車体に支持固定した状態(いわゆる1W状態)では、エンジンの重量により、防振基体13が圧縮変形され、その分、防振装置10の上端側と第2ブラケット30の接続部材33との間に所定の隙間が形成される。
【0028】
次いで、図2から図5を参照して、防振ユニット1を構成する防振装置10、第1ブラケット20及び第2ブラケット30についてそれぞれ説明する。
【0029】
図2は、防振装置10の側断面図であり、軸Oを含む平面で切断した縦断面に対応する。なお、図2では、防振装置10が第2ブラケット20に保持された状態が図示される。この図2における第2ブラケット20の断面は、図4のII−II線における断面に対応する。
【0030】
図2に示すように、防振装置10は、第2ブラケット30(図1参照)を介して車体側に取り付けられるボス部材11と、第1ブラケット20を介してエンジン側に取り付けられる筒状の外筒部材12と、これら両部材11,12を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体13とを主に備える。
【0031】
ボス部材11は、上窄まりの断面略円錐台形状に形成される基部11aと、その基部11aから下方(図2下側)へ突出する軸部11bと、その軸部11bの突出先端から径方向外方へ向けて張り出す張出部11c(図3参照)とを備え、アルミニウム合金から一体に形成される。基部11a及び軸部11bは、軸O回りに対称に形成される。なお、ボス部材11の詳細構成については、図3を参照して、後述する。
【0032】
外筒部材12は、鉄鋼材料から上下端(図2上側および下側)が開口した筒状に形成され、ボス部材11の上方(図2上側)に同軸状に配設される。なお、外筒部材12は、段差を有して構成されており、その段差の下側(図2下側)に大径の筒部が、段差の上側(図2上側)に小径の筒部が、それぞれ配設されると共に、大径の筒部が第1ブラケット20に軸方向に圧入され保持される。
【0033】
防振基体3は、ゴム状弾性体から軸O回りに対称な下窄まりの断面略円錐台形状に形成され、ボス部材11の基部11aにおける外面と外筒部材12の内壁面との間に加硫接着される。
【0034】
外筒部材12の内部には、ダイヤフラム14と、仕切り部材15と、弾性仕切り膜16とが配設される。ダイヤフラム14は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成され、外筒部材12の上端側(図2上側)に密着(水密)状態で装着される。その結果、ダイヤフラム14の下面側と防振基体13の上面側との間に液体が封入される液体封入室が形成される。
【0035】
液体封入室には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。仕切り部材15は、液体封入室を防振基体13側の第1液室とダイヤフラム側の第2液室とに仕切る部材であり、その外周側には、第1液室と第2液室とを連通させるオリフィス流路が形成される。また、仕切り部材15の中央には、複数の開口がそれぞれ形成された一対の対向壁が対向配置され、その対向間にゴム状弾性体から円板状に形成された弾性仕切り膜16が収納される。
【0036】
なお、本実施の形態のように、防振装置10を倒立配置して、ボス部材11を車体側に取り付けると共に、外筒部材12を車体側に取り付けることで、仕切り部材15から車体側までの振動伝達経路の一部を防振基体13によって構成することができる。よって、弾性仕切り膜16が仕切り部材15の対向壁に衝突して、規制板が振動した場合には、その振動が車体側へ伝達されることを、振動伝達経路の一部を構成する防振基体13の振動絶縁効果により、確実に抑制して、異音の発生を低減できる。
【0037】
次いで、図3を参照して、ボス部材11の詳細構成について説明する。図3(a)は、防振装置10の部分拡大正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるボス部材11の断面図である。なお、図3(a)は、図2の矢印IIIa方向から視た防振装置10の正面図に対応する。
【0038】
図3に示すように、ボス部材11は、基部11aから軸部11bが下方へ突出すると共に、その軸部11bの突出先端から張出部11cが径方向外方(軸O直角方向)へ向けて張り出し形成され、軸部11bの一部および張出部11cが、第2ブラケット30の被圧入部35に圧入される圧入部とされる。
【0039】
軸部11bは、軸O周りに対称な断面円形の軸状体として形成され、張出部11cは、厚み寸法(図3(a)上下方向寸法)が一定であって幅寸法(図3(b)上下方向寸法)が軸部11bの直径と同一となる一対の平板形状が、軸部11bを挟んで互いに反対方向へ向けて張り出されている。よって、図3(a)に示す正面視においては、ボス部材11の圧入部(軸部11b及び張出部11c)が略T字状となる。
【0040】
なお、防振基体13には、ボス部材11の外壁面を覆うゴム膜13aが連なる。このゴム膜13aは、基部11aの外壁面(外周面および下面)のみを覆い、軸部11bの外壁面および張出部11cの外壁面は覆わない。即ち、軸部11b及び張出部11cは、その外壁面が露出して形成される。
【0041】
次いで、図4を参照して、第1ブラケット20について説明する。図4は、第1ブラケット20の上面図である。なお、図4の紙面垂直方向が、防振装置10の圧入方向(即ち、圧入後の軸O方向、図2参照)に対応する。
【0042】
図4に示すように、第1ブラケット20は、平板状の本体部21と、その本体部21の一側(図4右側)角部から斜めに延設されるブロック状の延設部22とを主に備える。本体部21の他側(図4左側)角部および延設部22の両端には、上述した取付穴h1がそれぞれ穿設される。この取付穴h1に挿通されたボルトをエンジン側に螺合することで、下面側(図4紙面奥側)が取付面となって、エンジン側に締結固定される。
【0043】
本体部21の下方には、上面視円形の圧入穴21aが穿設される。この圧入穴21aには、防振装置10の外筒部材12が軸O方向に圧入され、これにより、防振装置10(外筒部材12)が第1ブラケット20に保持される(図1及び図2参照)。また、本体部21の両側面(図4右側および左側)には、平坦面として形成されるストッパ面21bが形成される。大変位入力時には、このストッパ面21bが、防振装置10に装着されたストッパゴムSG(図1参照)を介して、第2ブラケット30の立設部材32に当接されることで、ストッパ作用が発揮される。
【0044】
次いで、図5を参照して、第2ブラケット30について説明する。図5(a)は、第2ブラケット30の正面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における第2ブラケット30の断面図である。なお、図5(a)では、固定部材31及び立設部材32の一部が部分的に断面視して図示される。
【0045】
第2ブラケット30は、防振装置10と車体側との間に介設される部材であり、防振装置10のボス部材11(図3参照)が固定される固定部材31と、その固定部材31の両側(図5(a)左側および右側)から上方へ向けて立設され防振装置10を挟んで対向配置される一対の立設部材32と、それら一対の立設部材32の立設先端同士を接続し防振装置10を挟んで固定部材31と対向配置される接続部材33とを備え、これら各部材31〜33がアルミニウム合金から正面視枠状に一体に形成される。
【0046】
なお、立設部材32の対向面(内壁面)は、所定間隔を隔てつつ平行に対向配置される平坦面として形成され、接続部材33の下面(内壁面)は、立設部材32の内壁面に対して垂直(即ち、防振装置10の軸に対して垂直)となる平坦面として形成され、これら内壁面は、大変位入力時に防振装置10又は第1ブラケット20を受け止めてその変位を規制するストッパ面として機能する。
【0047】
固定部材31は、被締結部34と、被圧入部35とを備え、これら両部34,35が一体に形成される。被締結部34は、車体側に取り付けられる部位であり、固定部材31の両端(図5(a)左側および右側)に形成される。なお、被締結部34は、板状に形成されると共に上述した取付穴h2が板厚方向(図5(a)上下方向)に穿設されており、その取付穴h2に挿通されたボルトを車体側に螺合することで、下面側(図5(a)下側)が取付面となって、車体側に締結固定される。
【0048】
被圧入部35は、両被締結部34の間に位置し、防振装置10のボス部材11(図3参照)が圧入される部位であり、張出部被圧入空間36と軸部被圧入空間37とを備える。張出部被圧入空間36は、防振装置10のボス部材11における張出部11c(図3参照)が圧入される空間であり、その圧入される張出部11cの外形形状に対応する断面形状に形成され、固定部材35の両側(図5(a)紙面手前側および奥側)の側面に開口を有する。
【0049】
即ち、張出部被圧入空間36は、図5(a)に示す正面視(即ち、後述する圧入方向視)形状が、防振装置10のボス部材11における張出部11cの正面視(圧入方向視)形状(図3(a)参照)に相似の形状とされ、張出部被圧入空間36の正面視形状が張出部11cにおける正面視形状よりも小さくされる。これにより、圧入時の圧入代が確保される。
【0050】
軸部被圧入空間37は、防振装置10のボス部材11における軸部11b(図3参照)が少なくとも通過可能な断面形状の空間として形成され、その空間の下面側が張出部被圧入空間36の上面側に連通されると共に、固定部材35の両側(図5(a)紙面手前側および奥側)の側面および上面(図5(a)上側の面、接続部材33に対向する面)に開口を有する。
【0051】
即ち、軸部被圧入空間37は、図5(a)に示す正面視(即ち、後述する圧入方向視)形状における幅寸法(図5(a)左右方向寸法)が、ボス部材11の軸部11bの直径寸法と略同一とされ、張出部被圧入空間36の幅寸法(図5(a)左右方向寸法)よりも小さい。よって、張出部被圧入空間36の上方(図5(a)上側)には、軸部被圧入空間37を挟んで張り出す板状の規制壁38が形成される。
【0052】
なお、軸部被圧入空間37の正面視形状における幅寸法は、張出部被圧入空間36の幅寸法(図5(a)左右方向寸法)よりも小さければ(即ち、規制壁38が形成可能であれば)、ボス部材11の軸部11bの直径寸法よりも大きくても良く、或いは、ボス部材11の軸部11bが圧入方向へ通過可能であれば、その軸部11bの直径寸法よりも小さくても良い。また、本実施の形態では、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37の正面視形状(圧入方向(図5(a)紙面垂直方向)に垂直な仮想平面で切断した断面形状)は、圧入方向に沿って同一の断面形状とされる。
【0053】
以上のように構成される防振ユニットの製造方法について、図6を参照して、説明する。図6(a)は、圧入前における防振ユニット1の部分拡大断面図であり、図6(b)及び図6(c)は、圧入後における防振ユニット1の部分拡大断面図および部分拡大正面図である。なお、図6(a)及び図6(b)の防振装置10の断面は、図2の断面に対応し、図6(a)及び図6(b)の第2ブラケット30の断面は、図5(b)の断面に対応する。
【0054】
防振ユニット1の製造は、防振装置10の外筒部材12を、第1ブラケット20の圧入穴へ軸O方向に圧入し、第1ブラケット20に防振装置10の外筒部材12を保持させる(第1ブラケット保持工程、図2参照)。次いで、ストッパゴムSGを、防振装置10の上端側(図2上側)から装着した後、防振装置10のボス部材11(圧入部)を第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に圧入し、第2ブラケット30に防振装置10のボス部材11を固定する(第2ブラケット固定工程、図1(b)参照)。以上により、防振ユニット1の製造が完了する。
【0055】
防振装置10の組み立ては、まず、ボス部材11及び外筒部材12が設置された加硫金型内へゴム状弾性体を充填し、ボス部材11と外筒部材12との間が防振基体13により連結された成形体を加硫成形する。次いで、成形体に対し、外筒部材12の開口から、仕切り部材15とダイヤ不ラム14とを順に嵌め込み、外筒部材12の開口縁部(小径の筒部の上端)全体を径方向に縮径加工(絞り加工)する。これにより、防振装置10の組立が完了する(防振装置形成工程)。なお、仕切り部材15は、その一対の対向壁の間に弾性仕切り膜16を収納した状態で、成形体へ嵌め込まれる。
【0056】
図6(a)に示すように、防振装置10のボス部材11と第2ブラケット30の固定部材31との固定(圧入)は、第2ブラケット30を圧入装置のテーブル(図示せず)に固定すると共に、防振装置10のボス部材11を、圧入装置の保持アーム(図示せず)に保持させ、圧入可能位置(即ち、圧入方向視において、被圧入部35の張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37の外形(図5(a)参照)に、ボス部材11の張出部11c及び軸部11bの外形(図3(a)参照)が一致する位置)に配置する。
【0057】
なお、保持アームは、上面視(軸O方向視)U字状に形成され、そのU字形状の内周面にボス部材11の軸部11bを保持する。U字形状の内周面寸法は、軸部11cの外周面寸法に対応し、また、U字形状(保持アーム)の厚み寸法は、第2ブラケット30の固定部材31の上面とボス部材11の基部11a(ゴム膜13a)の下面との間の隙間寸法よりも小さくされる。
【0058】
この状態から、図6(a)の矢印Aで示す圧入方向(軸O直角方向)へ向けて圧入装置の保持アームを移動させ、ボス部材11の張出部11c及び軸部11bを、被圧入部35の張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37に側面の開口から圧入する。圧入装置の保持アームが更に移動し、図6(b)及び図6(c)に示すように、ボス部材11の張出部11c及び軸部11bの圧入位置が規定位置に達することで、圧入(第2ブラケット固定工程)が完了する。
【0059】
このように、防振ユニット1は、防振装置10のボス部材11を、第2ブラケット30の固定部材31に圧入により固定(圧入固定)するので、従来品のように、防振装置10のボス部材11を第2ブラケット30の固定部材31にボルトで固定(締結固定)する場合と比較して、ボルトを省略できる分、部品点数の削減を図ることができる。
【0060】
また、このように、ボルトが省略できれば、ボルトを螺合するための雌ねじ部を防振装置10のボス部材11に形成(即ち、穴を開け、その内周面に雌ねじを螺刻)する必要がないので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。更に、防振基体13を加硫接着するために、防振装置10のボス部材11を化成処理する際には、雌ねじ部をマスキングボルトで保護する工程を行う必要がないので、マスキングボルトを着脱する作業を不要として、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。また、マスキングボルトを準備することも不要なので、その分、製造コストの削減を図ることができる。
【0061】
また、固定部材31の被圧入部35における張出部被圧入空間36が圧入方向に貫通して形成される(即ち、固定部材31の両側の側面に開口される)ので、圧入時に発生した切り屑を外部に排出することができる。
【0062】
また、防振ユニット1は、ボス部材11の圧入部が、軸部11bの突出先端から張出部11cが径方向外方へ張り出された正面視T字状(図3(a)参照)に形成されると共に、第2ブラケット30の固定部材31には、ボス部材11の圧入部の外形に対応する空間(張出部被圧入部36及び軸部被圧入部37)が形成され、その空間へ固定部材31の側面における開口からボス部材11の圧入部が軸O直角方向に圧入されるので、防振装置10のボス部材11を第2ブラケット20の固定部材31に強固に固定できる。
【0063】
即ち、第1ブラケット20が第2ブラケット30に対し、防振装置10の軸O方向(図1(b)上下方向)へ相対変位される場合には、ボス部材11の圧入部における張出部11cが、被圧入部35における空間の内壁面(即ち、規制壁38の下面)に係合することで、防振装置10のボス部材11が第2ブラケット30の固定部材31に固定された状態を確実に維持できる。また、これに、こじり方向(防振装置10の軸Oを傾斜させる方向)への相対変位が組み合わされた場合も同様である。
【0064】
一方、第1ブラケット20が第2ブラケット30に対し、防振装置10の軸O直角方向であって圧入方向と平行となる方向(図1(b)紙面垂直方向、図6(b)左右方向)へ相対変位される場合(即ち、防振装置10の外筒部材12が第1ブラケット20によってボス部材11の圧入方向(図6(a)矢印A方向)と反対方向に平行に変位される場合)でも、外筒部材12とボス部材11との間に防振基体13が介設されていることから、ボス部材11には、防振基体13の弾性変形により、張出部11cを傾斜させる(即ち、ボス部材11が傾斜し張出部11cを回転させる)方向への力も発生し、よって、ボス部材11の張出部11cが、固定部材31の被圧入部35における空間の内壁面(張出部被圧入部36の底面および規制壁38の下面)に係合する。これにより、ボス部材11の圧入部が固定部材31の被圧入部35(張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37)から抜け出ることを抑制できる。よって、防振装置10のボス部材11が第2ブラケット30の固定部材31に固定された状態を確実に維持できる。
【0065】
次いで、図7及び図8を参照して、第2実施の形態における防振ユニット201について説明する。第1実施の形態では、被圧入部35の張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37が圧入方向に貫通して形成される(即ち、被圧入部35の両側面に開口を有する)場合を説明したが、第2実施の形態における被圧入部235は、位置決め壁239が形成されることで、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37が圧入方向に非貫通とされる。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0066】
図7(a)は、第2実施の形態における第2ブラケット230の部分拡大正面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における第2ブラケット230の部分拡大断面図であり、図7(c)は、図7(a)の矢印VIIc方向から視た第2ブラケット230の部分拡大上面図である。なお、図7(a)は、図5(a)の正面図に対応し、図7(b)は、図5(b)の断面図に対応する。
【0067】
図7に示すように、第2実施の形態では、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37の圧入方向の一端側(図7(b)左側)に、位置決め壁239が形成される。位置決め壁239は、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37に圧入されたボス部材11の圧入位置を位置決めするための部位であり、両空間36,37の一方の開口を塞ぐ板状の壁部として形成される。よって、第2実施の形態では、被圧入部235は、位置決め壁239と反対側となる固定部材231の他方の側面のみに、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37の開口を有する。なお、位置決め壁239は、両空間36,37を臨む側の面(図7(b)右側面)が軸Oに平行な平坦面として形成される。
【0068】
図8(a)は、圧入前における防振ユニット201の部分拡大断面図であり、図8(b)は、圧入後における防振ユニット201の部分拡大断面図であり、図8(c)は、圧入後における防振ユニット201の部分拡大正面図である。なお、図8(a)及び図8(b)は、図6(a)に対応し、図8(c)は、図1(b)に対応する。
【0069】
図8(a)に示すように、防振装置10のボス部材11と第2ブラケット230の固定部材231との固定(圧入)は、第1実施の形態の場合と同様に、第2ブラケット230を圧入装置のテーブル(図示せず)に固定すると共に、防振装置10のボス部材11を、圧入装置の保持アーム(図示せず)に保持させ、圧入可能位置に配置する。
【0070】
この状態から、圧入方向(軸O直角方向)へ向けて圧入装置の保持アームを移動させ、ボス部材11の圧入部(張出部11c及び軸部11b)を、被圧入部235の張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37に、固定部材231の側面の開口から圧入する。圧入装置の保持アームを圧入方向へ更に移動させると、ボス部材11の圧入部に位置決め壁239が当接され、この当接により、圧入方向への移動(圧入)が規制される。その結果、図8(a)及び図8(b)に示すように、ボス部材11の圧入部が規定の圧入位置に達したこととなり、圧入(第2ブラケット固定工程)が完了する。
【0071】
なお、ボス部材11の圧入部が位置決め壁239に当接したか否かは、圧入装置の保持アームに設置した荷重センサ(例えば、ロードセルなど)により計測される圧入荷重が基準値を超えたか否かにより判断される。
【0072】
このように、第2実施の形態では、ボス部材11の圧入部を位置決め壁239に当接する位置まで圧入することで、その圧入位置の位置決めを行うことができる。よって、例えば、ボス部材11の固定部材231への圧入位置を、圧入装置の保持アームのストローク量で管理する場合と比較して、圧入工程を簡素化して、その制御コストの削減を図ることができると共に、圧入位置がばらつくことを抑制して、その圧入位置の位置精度の向上を図ることができる。
【0073】
また、防振ユニット201は、ボス部材11の圧入が完了した製品状態では、ボス部材11の圧入部が被圧入部235の位置決め壁239に当接した状態(即ち、ボス部材11の圧入部を位置決め壁239が支持する状態)とされるので、第1ブラケット20が第2ブラケット30に対して相対変位される場合には、ボス部材11の圧入部と位置決め壁239との係合を利用して、入力荷重に対抗することができる。よって、ボス部材11の圧入部が固定部材231の被圧入部235に固定(圧入)された状態を強固に維持できる。
【0074】
次いで、図9及び図10を参照して、第3実施の形態における防振ユニット301について説明する。第2実施の形態では、位置決め壁239の張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37を臨む側の面の全体が平坦面として形成される場合を説明したが、第3実施の形態における位置決め壁339は、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37を臨む側の面の一部に凹溝状の溝部339aが凹設される。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0075】
図9(a)は、第3実施の形態における第2ブラケット330の部分拡大断面図であり、図9(b)は、図9(a)の矢印IXb方向から視た第2ブラケット330の部分拡大背面図である。なお、図9(b)は、図5(b)の断面図に対応する。
【0076】
図9に示すように、第3実施の形態における位置決め壁339には、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37を臨む面(図9(a)右側面、即ち、ボス部材11の圧入部が当接される側の面)に溝部339aが凹設される。なお、位置決め壁339は、第2実施の形態における位置決め壁239に対し、溝部339aの有無を除いて同じ構成であるので、その説明は省略する。
【0077】
溝部339aは、圧入時の削り屑(ボス部材11の圧入部を、固定部材331の被圧入部335に圧入する際に、圧入部の外壁面または被圧入部335の内壁面が削れて発生する削り屑)を収容するための凹溝であり、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37を臨む面(図9(a)右側面)において、被圧入部335の内壁面に連なる外縁に沿って延設される。
【0078】
本実施の形態では、溝部339aは、被圧入部335の内壁面の内、張出部被圧入空間36を形成する底面(図9(a)及び図9(b)下側面)に連なる外縁に沿って、その底面と同じ幅(図9(b)及び図9(c)左右方向幅)だけ延設される。また、溝部339aの断面形状は、半円形状とされ、張出部被圧入空間36を形成する底面に滑らかに連なる。
【0079】
図10(a)は、圧入後における防振ユニット301の部分拡大断面図であり、図10(b)は、圧入後における防振ユニット301の部分拡大正面図である。なお、図10(a)は、図6(a)に対応し、図10(b)は、図1(b)に対応する。
【0080】
防振装置10のボス部材11と第2ブラケット330の固定部材331との固定(圧入)は、第2実施の形態の場合と同様に、第2ブラケット330を圧入装置のテーブル(図示せず)に固定すると共に、防振装置10のボス部材11を、圧入装置の保持アーム(図示せず)に保持させ、圧入装置の保持アームを圧入方向へ移動させることで、ボス部材11の圧入部(張出部11c及び軸部11b)を、図10に示すように、位置決め壁339に当接する位置まで圧入する。
【0081】
この場合、位置決め壁339には、ボス部材11の圧入部が当接される側の面に溝部339aが凹設されるので、ボス部材11の圧入部を固定部材331の被圧入部335に圧入する際に削り屑が生じた際には、その切り屑を溝部339aに収容することができる。即ち、ボス部材11の圧入部と位置決め壁339との間に削り屑が挟まると、ボス部材11の圧入位置(図9(a)左右方向位置)にばらつきが生じるところ、防振ユニット301によれば、削り屑を溝部339aに収容して、ボス部材11の圧入部を位置決め壁339に密着させることができるので、ボス部材11の圧入位置の位置精度を確保することができる。
【0082】
なお、第3実施の形態では、溝部339aを、位置決め壁339の下方側の外縁(即ち、張出部被圧入空間36の底面側に連なる外縁)のみに形成するので、溝部339aの形成領域を必要最低限として、位置決め壁339の強度を確保する一方、圧入により生じ張出部被圧入空間36の底面に落下した削り屑を溝部339aに効率的に収容することができる。また、溝部339aは、断面半円の凹溝として形成されるので、応力集中を抑制して、位置決め壁339の強度を確保することができる。
【0083】
次いで、図11を参照して、第4実施の形態における防振ユニット401について説明する。第1実施の形態では、ボス部材11の軸部11b及び張出部11cが外壁面を露出させる場合を説明したが、第4実施の形態におけるボス部材11の軸部11b及び張出部11cは、その外壁面がゴム膜413aにより覆われる。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0084】
図11(a)は、第4実施の形態における圧入後における防振ユニット401の部分拡大断面図であり、図11(b)は、圧入後における防振ユニット401の部分拡大正面図である。なお、図11(a)は、図6(a)に対応し、図11(b)は、図1(b)に対応する。
【0085】
第4実施の形態における防振装置410は、ボス部材11の基部11aがゴム膜13aに覆われるのに加え、軸部11b及び張出部11cの外壁面の全体が、防振基体13にゴム膜13aを介して連なるゴム膜413aにより覆われる。これにより、防振装置410の製造時には、第1実施の形態の場合のように、ボス部材11の外壁面に付着したゴムバリを除去する作業を省略できるので、作業工数の削減を図ることができる。また、ボス部材11全体をゴム膜13a,413aで覆う構成とすることで、第1実施の形態の場合と比較して、加硫金型のシール性の要求精度を緩やかとすることができるので、その分、製造コストの削減を図ることができる。
【0086】
次いで、図12及び図13を参照して、第5実施の形態における防振ユニット501について説明する。第1実施の形態では、ボス部材11の張出部11cが軸O方向視において矩形形状(図3(b)参照)に形成される場合を説明したが、第5実施の形態における張出部11cは、軸O方向視において円形形状に形成される。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0087】
図12(a)は、第5実施の形態における防振装置510の部分拡大正面図であり、図12(b)は、図12(a)のXIIb−XIIb線におけるボス部材511の断面図である。なお、図12(a)は、図2の矢印IIIa方向から視た防振装置10の正面図に対応する。
【0088】
図12に示すように、第5実施の形態におけるボス部材511は、軸部11bの突出先端から張出部11cが径方向外方(軸O直角方向)へ向けてフランジ状に張り出し形成される。ボス部材511は、第1実施の形態の場合と同様に、軸部11bの一部および張出部511cが、第2ブラケット30の被圧入部35に圧入される圧入部とされる。
【0089】
張出部511cは、厚み寸法(図12(a)上下方向寸法)が一定であって、軸O方向視円形の円板形状に形成され、軸部11bに同心に配置される。よって、ボス部材511は、軸O周りに対象な形状に形成される。また、図12(a)に示す正面視においては、ボス部材11の圧入部(軸部11b及び張出部511c)が略T字状となる。
【0090】
なお、ボス部材511の図12(a)に示す正面視形状は、第1実施の形態におけるボス部材11の図3(a)に示す正面視形状と同一寸法に形成される。この場合、張出部511cの軸O方向視における直径寸法は、第2ブラケット30の被圧入部35(張出部被圧入空間37及び軸部被圧入空間36)の幅寸法(図13(a)左右方向)よりも小さくされる。
【0091】
図13(a)は、圧入後における防振ユニット501の部分拡大断面図であり、図13(b)は、圧入後における防振ユニット501の部分拡大正面図である。なお、図13(a)は、図6(a)に対応し、図13(b)は、図1(b)に対応する。
【0092】
防振装置510のボス部材511と第2ブラケット30の固定部材31との固定(圧入)は、第1実施の形態の場合と同様に、第2ブラケット30を圧入装置のテーブル(図示せず)に固定すると共に、防振装置510のボス部材511を、圧入装置の保持アーム(図示せず)に保持させ、圧入装置の保持アームを圧入方向へ移動させることで、ボス部材511の圧入部(張出部511c及び軸部11b)を、図13に示すように、所定の圧入位置まで圧入する。
【0093】
このように、第5実施の形態における防振ユニット501は、ボス部材11の張出部511cを軸部11bに同心の円板形状に形成するので、周方向の方向性を考慮する必要がない。よって、防振基体13の加硫成形時に加硫金型内へボス部材511を設置する際には、その設置時にボス部材511の軸O周りの方向性を考慮せずに作業を行うことができる。同様に、防振装置510の外筒部材12を第1ブラケット20の圧入穴へ軸O方向に圧入して保持させる際には(第1ブラケット保持工程、図2参照)、その圧入時に防振装置510の軸O周りの方向性を考慮せずに作業を行うことができる。即ち、ボス部材511又は防振装置510を周方向に位置合わせする作業を省略することができるので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。
【0094】
また、ボス部材11の張出部511cを軸O方向視円形の円板形状に形成することで、かかる張出部511cと被圧入部35の張出部被圧入空間37における内壁面(張出部被圧入部36の底面および規制壁38の下面)との間の係合面積を拡大することができる。これにより、上述したように、第1ブラケット20が第2ブラケット30に対して相対変位した場合でも、張出部511cと張出部被圧入空間37の内壁面との間の係合を利用して、ボス部材511の圧入部が固定部材31の被圧入部35(張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37)から抜け出ることを抑制できる。よって、防振装置510のボス部材511が第2ブラケット30の固定部材31に固定された状態を確実に維持できる。
【0095】
次いで、図14及び図15を参照して、第6実施の形態における防振ユニット601について説明する。第6実施の形態における防振ユニット601には、第5実施の形態における防振ユニット501に対し、被圧入部635の張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37に位置決め壁639が設けられる。なお、第6実施の形態における防振ユニット601と第5実施の形態における防振ユニット501とは、位置決め壁639の有無のみが異なり、その他の構成は同一であるので、その説明は省略する。また、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0096】
図14(a)は、第6実施の形態における第2ブラケット630の部分拡大正面図であり、図14(b)は、図14(a)のXIVb−XIVb線における第2ブラケット630の部分拡大断面図であり、図14(c)は、図14(b)におけるXIVc−XIVc線における第2ブラケット630の部分拡大断面図である。なお、図14(a)は、図5(a)に対応し、図14(b)は、図5(b)の断面図に対応する。
【0097】
図14に示すように、第6実施の形態における被圧入部635には、位置決め壁639が形成される。位置決め壁639は、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37に圧入されたボス部材511の圧入位置を位置決めするための部位であり、張出部被圧入空間36の圧入方向の一端側(図14(b)左側)にその一端側の開口を塞ぐ壁部として形成される。なお、本実施の形態では、軸部被圧入空間37には位置決め壁639が形成されず、かかる軸部被圧入空間37の断面形状は圧入方向(図14(b)左右方向)に沿って一定とされる。
【0098】
位置決め壁639は、張出部被圧入空間36を臨む側の面(図14(b)右側面、即ち、ボス部材11の圧入部(張出部511c)が当接される側の面)が、図14(c)に示すように、上面視において円弧状に湾曲し、凹設された状態に形成される。この上面視における円弧形状は、ボス部材511の張出部511cにおける軸O方向視における円形状(図12(b)参照)に対応して(即ち、同一の直径寸法で)形成される。
【0099】
位置決め壁639の幅方向(図14(a)左右方向)中央には、スリット状の開口639aが形成される。開口639aは、圧入時に生じる削り屑を外部へ排出するための開口であり、上端側(図14(a)上側)が軸部被圧入空間37に連通されると共に、下端側(図14(a)下側)が張出部被圧入空間37の底面(被圧入部635の内壁面)に連なる。
【0100】
図15(a)は、圧入後における防振ユニット601の部分拡大正面図であり、図15(b)は、図15(a)のXVb−XVb線における防振ユニット601の部分拡大断面図である。なお、図14(a)は、図1(b)に対応する。
【0101】
防振装置510のボス部材511と第2ブラケット630の固定部材631との固定(圧入)は、第5実施の形態の場合と同様に、第2ブラケット630を圧入装置のテーブル(図示せず)に固定すると共に、防振装置510のボス部材511を、圧入装置の保持アーム(図示せず)に保持させ、圧入可能位置に配置する。
【0102】
この状態から、圧入方向(軸O直角方向)へ向けて圧入装置の保持アームを移動させ、ボス部材511の圧入部(張出部511c及び軸部511b)を、被圧入部635の張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37に、固定部材631の側面の開口から圧入する。圧入装置の保持アームを圧入方向へ更に移動させると、ボス部材511の圧入部(張出部511c)に位置決め壁639が当接され、この当接により、圧入方向への移動(圧入)が規制される。その結果、図14(a)及び図14(b)に示すように、ボス部材511の圧入部が規定の圧入位置に達したこととなり、圧入(第2ブラケット固定工程)が完了する。
【0103】
このように、第6実施の形態では、ボス部材511の圧入部を位置決め壁639に当接する位置まで圧入することで、その圧入位置の位置決めを行うことができるので、圧入工程を簡素化して、その制御コストの削減を図ることができると共に、圧入位置がばらつくことを抑制して、その圧入位置の位置精度の向上を図ることができる。また、圧入後の製品状態では、ボス部材511の圧入部(張出部511c)と位置決め壁639との係合を利用して、入力荷重に対抗することができるので、ボス部材511の圧入部が固定部材631の被圧入部635に固定(圧入)された状態を強固に維持できる。
【0104】
この場合、位置決め壁639は、図15(b)に示すように、上面視において円弧状に湾曲して形成されるので、ボス部材511の圧入位置の位置決めを可能としつつ、被圧入部635の幅寸法(図15(b)上下方向寸法)が嵩むことを抑制して、第2ブラケット630の小型化を図ることができる。また、ボス部材511の張出部511cが、例えば、軸O方向視正方形に形成される場合、被圧入部635の幅寸法を抑制するためには、位置決め壁の全体を薄肉とする必要があるが、本実施の形態のように、位置決め壁を円弧状に湾曲させることができれば、位置決め壁639の両端を肉厚として、その剛性を確保できる。
【0105】
さらに、位置決め壁639には、開口639aが形成されるので、ボス部材511の被圧入部635への圧入時に削り屑が生じた際には、その切り屑を開口639aから外部へ排出することができる。よって、削り屑が挟まることが抑制され、ボス部材511の圧入部(張出部511c)を位置決め壁639に密着させることができるので、ボス部材511の圧入位置の位置精度を確保することができる。
【0106】
ここで、位置決め壁639は、上述の通り、上面視において円弧状に湾曲して形成されるため、幅方向(図15(b)左右方向)中央部分の板厚(図15(b)上下方向寸法)が薄肉となる。この場合、開口639aを設けないと、ボス部材511の圧入位置を規制する際の幅方向中央部分の強度を確保する(破損を防止する)ためには、位置決め壁639(幅方向中央部分)の板厚を大きくする必要が生じ、その分、第2ブラケット630(固定部材631)の大型化を招く。これに対し、本実施の形態では、開口639aが、位置決め壁639の幅方向中央に形成されるので、位置決め壁639の強度を確保(幅方向中央部分の破損を防止)しつつ、第2ブラケット630(固定部材631)の小型化を図ることができる。
【0107】
次いで、図16から図18を参照して、第7実施の形態における防振ユニット701について説明する。第1実施の形態では、防振装置10の圧入部を第2ブラケット30の被圧入部35に対し軸O直角方向へ圧入する場合を説明したが、第7実施の形態における防振装置710は、その圧入部が第2ブラケット730の被圧入部735に対し軸O方向へ圧入される。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0108】
図16(a)は、第7実施の形態における防振装置710の部分拡大正面図であり、図16(b)は、図16(a)のXVIb−XVIb線におけるボス部材711の断面図である。なお、図16(a)は、図3(a)に対応する。
【0109】
図16に示すように、ボス部材711は、基部11aから軸部711bが下方へ突出して形成される。軸部711bは、断面円形の軸状体として形成され、その断面積は、軸Oに沿って一定とされる。第7実施の形態では、この軸部711bが、第2ブラケット730の被圧入部735(図17参照)に圧入される圧入部とされる。
【0110】
図17(a)は、第2ブラケット730の部分拡大正面図であり、図17(b)は、図17(a)の矢印XVIIbから視た第2ブラケット730の部分拡大上面図である。なお、図17(a)は、図5(a)に対応する。
【0111】
図17に示すように、第2ブラケット730の固定部材731における被圧入部735は、軸部被圧入空間737を備える。軸部部被圧入空間737は、防振装置710のボス部材711における軸部711b(図16参照)が圧入される空間であり、断面円形の貫通孔として、固定部材731の被圧入部735に貫通形成される。なお、軸部被圧入空間737の内径寸法は、ボス部材711の軸部711bの外径寸法よりも小さくされ、圧入時の圧入代が確保される。
【0112】
図18(a)は、圧入後における防振ユニット701の部分拡大正面図であり、図18(b)は、図18(a)のXVIIIb−XVIIIb線における防振ユニット701の部分拡大断面図である。
【0113】
防振ユニット701の製造は、防振装置710(外筒部材12)を、第1ブラケット20に圧入して保持させ(第1ブラケット保持工程、図2参照)、ストッパゴムSG(図1参照)を装着した後、防振装置710のボス部材711(圧入部)を第2ブラケット730の固定部材731(被圧入部735)に圧入により固定する(第2ブラケット固定工程、図18参照)ことで、完了する。
【0114】
防振装置710のボス部材711と第2ブラケット730の固定部材731との固定(圧入)は、まず、第2ブラケット730を圧入装置のテーブル(図示せず)に固定すると共に、防振装置710のボス部材11を圧入装置の第1保持アーム(図示せず)に保持し、かつ、第1ブラケット20を圧入装置の第2保持アーム(図示せず)に保持する。次いで、第1保持アーム及び第2保持アームを防振装置710の軸O方向へ相対移動させ、防振装置710(防振基体13)を軸O方向へ圧縮変形させる。
【0115】
この圧縮変形させた状態を維持しつつ、第1及び第2保持アームを平行移動させ、防振装置710を第2ブラケット730の枠内に収め、圧入可能位置(即ち、圧入方向視において、被圧入部735の軸部被圧入空間737の中心に、ボス部材711の軸部711bの中心(軸O)が一致する位置)に配置する。
【0116】
この状態から、圧入方向(軸O方向)へ向けて圧入装置の第1保持アームを移動させ、ボス部材711の軸部711bを、被圧入部735の軸部被圧入空間737へ圧入する。圧入装置の第1保持アームが更に移動し、図18(a)及び図18(b)に示すように、ボス部材711の軸部711bの圧入位置が規定位置に達することで、圧入(第2ブラケット固定工程)が完了する。
【0117】
なお、防振ユニット701は、規定位置まで圧入された状態(製品状態)では、防振装置710の上端側が第2ブラケット730の接続部材33の下面側に当接される(図1(b)参照)。
【0118】
第7実施の形態における防振ユニット701は、ボス部材711が軸O周りに対称形状とされるので、周方向の方向性を考慮する必要がない。よって、防振基体13の加硫成形時に加硫金型内へボス部材711を設置する際には、その設置時にボス部材711の軸O周りの方向性を考慮せずに作業を行うことができる。同様に、防振装置710の外筒部材12を第1ブラケット20の圧入穴へ軸O方向に圧入して保持させる際には(第1ブラケット保持工程、図2参照)、その圧入時に防振装置710の軸O周りの方向性を考慮せずに作業を行うことができる。即ち、ボス部材711又は防振装置710を周方向に位置合わせする作業を省略することができるので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。
【0119】
また、被圧入部735の軸部被圧入空間737が貫通孔として形成されるので、ボス部材711の被圧入部735への圧入時に削り屑が生じた際には、その切り屑を軸部被圧入空間737の下面側(図18(b)下側)の開口から外部へ排出することができる。よって、削り屑に阻害されることなく、ボス部材711の圧入部(軸部711b)を規定位置まで圧入することができるので、ボス部材711の圧入位置の位置精度を確保することができる。
【0120】
次いで、図19を参照して、第8実施の形態における防振ユニット801について説明する。第1実施の形態では、防振装置10の圧入部を第2ブラケット30の被圧入部35に圧入する際に、防振装置10の上端側(圧入部と反対側)が第2ブラケット30の枠内(接続部材33の下面よりも下方)に収まる場合(即ち、防振装置10を軸O方向に圧縮変形させなくても圧入可能な場合)を説明したが、第8実施の形態における防振ユニット801は、防振装置810の圧入部を第2ブラケット30の被圧入部35に圧入する際に、防振装置810の上端側(圧入部と反対側)が第2ブラケット30の枠内(接続部材33の下面よりも下方)に収まらないため、防振装置810を軸O方向に圧縮変形させる必要がある。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0121】
図19は、第8実施の形態における防振ユニット801の断面図であり、圧入前の状態が図示される。なお、図19は、図6(a)に対応する。
【0122】
第8実施の形態における防振ユニット801は、第1実施の形態における防振ユニット1に対し、防振装置810が第1実施の形態における防振装置10と異なる点のみが異なる。具体的には、防振装置810は、その防振基体813の脚長が、第1実施の形態における防振装置10の防振基体13の脚長よりも長くされ、防振装置810の高さ寸法(軸O方向高さ)が防振装置10の高さ寸法よりも大きくされる。防振基体813以外の他の構成は防振措置10、810で同じであるので、その説明は省略する。
【0123】
図19に示すように、防振ユニット801の製造は、防振装置810(外筒部材12)を、第1ブラケット20に圧入して保持させ(第1ブラケット保持工程、図2参照)、ストッパゴムSG(図1参照)を装着した後、防振装置810のボス部材11(圧入部)を第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に圧入により固定する(第2ブラケット固定工程、図18参照)ことで、完了する。
【0124】
ここで、防振ユニット801の防振装置810は、その高さ寸法が大きいため、圧入時、防振装置810の上端側(圧入部と反対側)が第2ブラケット30の枠内(接続部材33の下面よりも下方)に収まらない。この場合、防振装置810のボス部材11を圧入装置の第1保持アームに保持し、かつ、第1ブラケット20を圧入装置の第2保持アームに保持させ、これら第1保持アーム及び第2保持アームを防振装置810の軸O方向へ相対移動させることで、防振装置810(防振基体813)を軸O方向へ圧縮変形させて、圧入を行うことが考えられる。
【0125】
しかし、この方法では、第1保持アーム及び第2保持アームが、圧入方向の他に、圧入方向と直交する方向(軸O方向)にも荷重を発生可能とされ、かつ、その方向へ荷重を発生させた状態を維持しつつ圧入方向(軸O直角方向)への移動が可能とされる圧入装置を使用する必要があり、設備コストが嵩む。また、圧入工程の前に、防振装置810を軸O方向へ圧縮変形させる工程が必要となり、作業工数が嵩む。
【0126】
これに対し、本実施の形態では、次のように、圧入治具IJを使用して、防振装置810のボス部材11(圧入部)を第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に圧入することで、設備コストの削減および作業工数の削減を図る。
【0127】
即ち、本実施の形態では、図19に示すように、第2ブラケット30の圧入側開口に圧入治具IJを並設した状態で、これら第2ブラケット30及び圧入治具IJを圧入装置のテーブルに(図示せず)に固定する。圧入治具IJは、防振装置810を軸O方向へ圧縮変形させる圧縮動作を圧入動作時に併せて行わせる(兼用させる)ためのものであり、第2ブラケット30に対応する枠状に鉄鋼材料から構成される。
【0128】
圧入治具IJは、ボス部材11を案内するための傾斜面IJaを備える。傾斜面IJaは、第2ブラケット30の被圧入部35における張出部被圧入空間36の底面(図19下側面)の幅寸法(図19紙面垂直方向寸法)と同じ幅寸法を有する平坦面であり、圧入装置のテーブルに固定された状態では、終端側(図19左側)が張出部被圧入空間36の底面に滑らかに連なると共に、その終端側から始端側へ向けて下降傾斜するように構成される。
【0129】
防振装置810のボス部材11(圧入部)の第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)への圧入は、第1ブラケット20を圧入装置の第1アームに保持させ、かつ、防振装置810のボス部材11を圧入装置の第2アームに保持させ、これら第1アーム及び第2アームを圧入方向(軸O直角方向)へ移動させることで行われる。なお、第2アームは、上述した保持アームと同様に構成される。
【0130】
ここで、本実施の形態で使用される圧入装置において、第1アームは、圧入方向(軸O直角方向)のみへ移動可能に形成され、圧入時には、外筒部材12が圧入方向以外の方向へ移動すること(例えば、軸O方向への移動や軸O方向に対して傾斜すること)を規制する。一方、第2アームは、圧入方向(軸O直角方向)へ移動可能に形成され、かつ、圧入方向に直交する方向(軸O方向)には従動するように形成され、圧入時には、防振装置810のボス部材11が圧入方向に直交する方向(軸O方向)に移動することは許容されるが、その他の方向(圧入方向以外)に移動すること(例えば、軸O方向に対して傾斜すること)を規制する。
【0131】
よって、図19に示す状態から、第1アーム及び第2アームの圧入方向(図19左方向)への移動により、防振装置810のボス部材11を圧入治具IJの傾斜面IJaに当接させ、これら第1アーム及び第2アームを圧入方向へさらに移動させる。これにより、第1アームに保持された外筒部材12は、第1アームと共に圧入方向へ水平に移動される一方、第2アームに保持されたボス部材11は、圧入治具IJの傾斜面IJa上を案内されることで、傾斜面IJaに沿って第2アームと共に軸O方向へ上昇しつつ(即ち、防振装置810を軸O方向へ圧縮変形させつつ)圧入方向へ移動され、傾斜面IJaの終端を越えると、第2ブラケット30の固定部材31における被圧入部35に圧入される。
【0132】
このように、圧入装置は、第1アーム及び第2アームによって防振装置810へ圧入方向(軸O直角方向)への荷重のみを作用させることで、ボス部材11の圧入部(張出部11c)の下面を、傾斜面IJaに沿って摺動させ、これにより、防振装置810の防振基体813が軸O方向に圧縮された状態で、防振装置810のボス部材11を第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に固定することができる。即ち、防振部材810のボス部材11を第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に圧入して固定する工程と、防振装置810を軸O方向に圧縮する工程とを兼用することができる。これにより、防振装置810を軸O方向へ圧縮させる工程を圧入工程とは別に行うことを不要として、製造時の作業工数の削減を図ることができる。また、圧入装置の構造を簡素化して、第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に防振装置810のボス部材810を圧入するための設備コストの削減を図ることができる。
【0133】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0134】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態では、図面を簡素化して、理解を容易とするために、各構成が模式的に図示される。よって、各構成のスケールを変更する(例えば、ゴム膜13a,413aの厚み寸法を増減させる)ことは当然可能である。
【0135】
上記各実施の形態では、張出部11c,511cが正面視矩形状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、正面視形状において一部に傾斜面を設けても良い。この形態の一例を、第5実施の形態の変形例として、図20及び図21を参照して説明する。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0136】
図20(a)は、変形例における防振装置510の部分拡大正面図であり、図20(b)は、図20(a)の矢印XXb方向から視たボス部材511の下面図である。また、図21(a)は、圧入後における防振ユニット501の部分拡大断面図であり、図21(b)は、圧入後における防振ユニット501の部分拡大正面図である。なお、図20(b)では、防振基体13や外筒12等の図示が省略される。
【0137】
図20に示すように、張出部511cは、その下面と外周面との稜線部(角部)が直線状に切り落とされ、これにより、張出部511cの下面側(図20(a)下側)には、外周縁側へ向けて上昇傾斜する傾斜面511c1が周方向に連続して形成される。即ち、傾斜面511c1は、図20(b)に示す下面図において、軸Oを中心とする円環形状に形成される。その結果、張出部511cは、正面視(即ち、軸O直角方向視)において、台形形状に形成される。
【0138】
よって、張出部511cを被圧入部35に圧入する際には、張出部511cの外周側の厚み寸法が小さくされていることで、張出部511cを被圧入部35の張出部被圧入空間36へ挿入し易くすることができる。
【0139】
また、張出部511cに傾斜面511c1が形成されることで、図21(b)に示すように、張出部511cと被圧入部35の張出部被圧入空間36の内壁面(側面および下面)との間に空間を形成することができる。よって、張出部511cを被圧入部335(張出部被圧入空間36)に圧入する際に生じた削り屑を収容できる。特に、下面側のみに傾斜面511c1を形成しその形成領域を必要最低限とすることで、張出部511cの強度および張出部被圧入空間36の内壁面との係合面積(即ち、係合強度)を確保する一方、圧入時に張出部被圧入空間36の底面に落下した削り屑を効率的に収容できる。
【0140】
また、傾斜面511c1が周方向に連続して形成され、ボス部材511が軸O周りに対称形状とされるので、周方向の方向性の考慮を不要とできる。よって、加硫成形時の加硫金型への設置作業および防振装置510の第1ブラケット20への圧入作業(第1ブラケット保持工程、図2参照)において、周方向に位置合わせする作業を省略して、製造時の作業工数の削減を図ることができる。
【0141】
なお、傾斜面511c1の形成位置は、張出部511cの下面側(図20(a)下側)に限られるものではなく、これに代えて、或いは、これに加えて、張出部511cの上面側(図20(a)上側)に形成しても良い。
【0142】
また、この傾斜面を形成する本変形例の適用対象は、第5実施の形態におけるボス部材511の張出部511cに限られず、他の実施形態におけるボス部材11,711に傾斜面を設けても良い。ボス部材11の張出部11cに傾斜面を形成する場合には、正面視左右側(図3(a)左右側)のみでなく、圧入方向側(図6(a)左側)にも形成することが好ましい。特に、位置決め壁239,339を有する形態の場合は、張出部11cの圧入方向側に傾斜面が形成されることで、圧入時に発生する削り屑の収容性能を高め、圧入位置の位置精度を確保できる。
【0143】
さらに、第4実施の形態における防振装置410のように、ボス部材11の張出部11c全体がゴム膜413aにより覆われる場合には、その張出部11cに傾斜面が形成されることで、張出部11cの傾斜面と張出部被圧入空間36の内壁面との間に形成される空間に、圧入時に余肉となったゴム膜413aを収容することができる。よって、ボス部材11と被圧入部35との間の係合強度を確保できる。
【0144】
上記第3実施の形態では、位置決め壁339の張出部被圧入空間36を臨む側の面の一部に溝状の溝部339aを形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形態とすることは当然可能である。かかる他の形態の第1の一例を、第3実施の形態の変形例として、図22及び図23を参照して説明する。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0145】
図22(a)は、変形例における第2ブラケット330の部分拡大断面図であり、図22(b)は、図22(a)の矢印XXIIb方向から視た第2ブラケット330の部分拡大背面図である。また、図23(a)は、圧入後における防振ユニット301の部分拡大断面図であり、図23(b)は、圧入後における防振ユニット301の部分拡大正面図である。
【0146】
図22に示すように、変形例における位置決め壁339には、張出部被圧入空間36に臨む面の全体に溝部339bが凹設される。即ち、位置決め壁339は、張出部被圧入空間36及び軸部被圧入空間37を臨む面(図22(a)右側面)の内、張出部被圧入空間36を臨む面のみが凹設され、この凹設された部分が溝部239bとされる。
【0147】
よって、図23に示すように、ボス部材11の圧入部が固定部材331の被圧入部335に圧入されると、ボス部材11の軸部11bが位置決め壁339に当接され、その圧入位置が規定位置に位置決めされる。この場合、溝部339bが被張出部圧入空間36を臨む面の全体に凹設されているので、圧入時に生じた削り屑を溝部339bに確実に収容することができ、その結果、ボス部材11の圧入位置の位置精度を確保できる。
【0148】
溝部339aを他の形態とする第2の一例を、第3実施の形態の変形例として、図24及び図25を参照して説明する。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0149】
図24(a)は、変形例における第2ブラケット330の部分拡大断面図であり、図24(b)は、図24(a)の矢印XXIIb方向から視た第2ブラケット330の部分拡大背面図である。また、図25(a)は、圧入後における防振ユニット301の部分拡大断面図であり、図25(b)は、圧入後における防振ユニット301の部分拡大正面図である。
【0150】
図24に示すように、変形例における位置決め壁339cは、張出部被圧入空間36に臨む面の全体が開口形成される。即ち、位置決め壁339cは、一対の規制壁38の間を接続する直方体形状として形成され、軸部被圧入空間37に対応する部分のみに形成される。よって、張出部被圧入空間36は、圧入方向両側(始端側および終端側)が、固定部材331の両側(図24(a)右側および左側)の側面に開口される。
【0151】
よって、図25に示すように、ボス部材11の圧入部が固定部材331の被圧入部335に圧入されると、ボス部材11の軸部11bが位置決め壁339cに当接され、その圧入位置が規定位置に位置決めされる。この場合、張出部被圧入空間36に対応する部分には、位置決め壁339cが形成されていないので、圧入時に生じた削り屑を外部に排出することができ、張出部11cと位置決め壁339cとの間に削り屑が挟まることを回避できる。その結果、ボス部材11の圧入位置の位置精度を確保できる。
【0152】
上記第8実施の形態では、防振装置810を軸O方向に圧縮させるために、圧入治具IJを利用する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の手法を採用することは当然可能である。他の手法の一例を、第8実施の形態の変形例として、図26を参照して説明する。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0153】
図26(a)から図26(c)は、変形例における防振ユニット801の圧入の過程を示す断面図であり、図26(a)は圧入前の状態に、図26(b)は圧入途中の状態に、図26(c)は圧入後の状態に、それぞれ対応する。
【0154】
図26(a)に示すように、変形例における第2ブラケット30の張出部被圧入空間36の圧入方向始端側(図26(a)右側)の底面には、圧入方向の始端側から終端側(図26(a)左側)へ向けて上昇傾斜する傾斜面36aが形成される。なお、張出部被圧入空間36は、傾斜面36aに対応する領域(図26(a)紙面奥側および手前側)の内壁面36bの対向面間隔が、圧入されるボス部材11の張出部11cの幅寸法(図26(a)紙面垂直方向寸法)と同等か若干大きくされる。よって、傾斜面36aの幅寸法(図26(a)紙面垂直方向寸法)も、ボス部材11の張出部11cの幅寸法と同等か若干大きくされる。
【0155】
一方、変形例におけるボス部材11の張出部11cには、圧入方向側(図26(a)左側)の下面に傾斜面11c1が形成される。即ち、傾斜面11c1は、張出部11cの圧入方向側の側面と下面との間の稜線部(角部)を切り落とすことが形成され、圧入姿勢(軸Oを圧入方向(矢印A方向)に直交させた状態)において、張出部被圧入空間36の傾斜面36aと同じ傾斜角で傾斜される。
【0156】
なお、防振装置810のボス部材11(圧入部)を第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)へ圧入する際に使用する圧入装置の構成は、第8実施の形態の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0157】
図26(a)に示す状態から、第1ブラケット20を保持する第1アーム及びボス部材11を保持する第2アームの圧入方向(矢印A方向)への移動により、ボス部材11の張出部11cにおける傾斜面11c1を、被圧入部35の張出部被圧入空間36における傾斜面36aに当接させ、これら第1アーム及び第2アームを圧入方向へさらに移動させる。
【0158】
これにより、外筒部材12は、第1アームと共に圧入方向へ水平に移動される一方、第2アームに保持されたボス部材11は、張出部被圧入空間36の傾斜面36a上を案内されることで、傾斜面36aに沿って第2アームと共に軸O方向へ上昇しつつ(即ち、防振装置810を軸O方向へ圧縮変形させつつ)圧入方向へ移動され、傾斜面36aの終端を越えると、第2ブラケット30の固定部材31における被圧入部35に圧入される。
【0159】
よって、本変形例においても、第8実施の形態の場合と同様に、防振部材810のボス部材11を第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に圧入して固定する工程と、防振装置810を軸O方向に圧縮する工程とを兼用することができ、製造時の作業工数の削減を図ることができる。また、圧入装置の構造を簡素化して、第2ブラケット30の固定部材31(被圧入部35)に防振装置810のボス部材810を圧入するための設備コストの削減を図ることができる。さらに、本変形例では、圧入治具IJを不要とできるので、その分、設備コストの削減を図ることができる。
【0160】
上記第1から第6及び第8実施の形態では、張出部被圧入空間36の断面形状が圧入方向に沿って一定とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、張出部被圧入空間36の断面形状を、少なくとも圧入方向始端側の一部において、張出部11cと同等または若干大きな断面形状としても良い。これにより、削り屑の発生を抑制できる。
【0161】
上記第1から第6及び第8実施の形態では、張出部被圧入空間36の断面形状(圧入方向視形状)が、張出部11c,511cの断面形状(圧入方向視形状)に相似形とされる場合(即ち、張出部被圧入空間36の内壁面の内の上面、底面および側面の全面が圧入代を有する場合)を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、張出部被圧入空間36の上面および底面のみが圧入代を有していても良く、或いは、張出部被圧入空間36の側面のみが圧入代を有していても良い。
【0162】
上記各実施の形態または変形例の一部または全部の構成を、他の実施の形態または変形例の構成と組み合わせても良く、或いは、置き換えても良い。例えば、一例としては、第6実施の形態における位置決め壁639の張出部被圧入空間36を望む面に、第3実施の形態における溝部339aを追加する形態が例示される。
【符号の説明】
【0163】
1,201,301,401,501,601,701,801 防振ユニット
10,510,810 防振装置
11,511 ボス部材
11a 基部
11b,511b,711b 軸部
11c,511c 張出部(圧入部)
12 外筒部材
13,813 防振基体
20 第1ブラケット
30,230,330,630,730 第2ブラケット
31,231,331,631,731 固定部材
32 立設部材
33 接続部材
35,235,335,635,735 被圧入部
36 張出部被圧入空間
36a 傾斜面(ブラケット傾斜面)
37 軸部被圧入空間
239,339,639 位置決め壁
339a 溝部
639a 開口
IJ 治具
ija 傾斜面(治具傾斜面)
O 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス部材と前記ボス部材の上方側に同軸状に配設される筒状の外筒部材とがゴム状弾性体からなる防振基体により連結された防振装置と、
前記防振装置の外筒部材が軸方向に圧入されることで前記防振装置を保持すると共に振動源側に取り付けられる第1ブラケットと、
前記防振装置のボス部材が固定される固定部材の両側から前記防振装置を挟んで対向配置されつつ上方へ向けて一対の立設部材が立設され、前記一対の立設部材の立設先端同士が前記防振装置を挟んで前記固定部材と対向配置される接続部材により接続されると共に、車体側に取り付けられる第2ブラケットと、を備える防振ユニットを製造する防振ユニットの製造方法において、
前記防振基体の加硫成形により前記ボス部材と外筒部材との間を連結し前記防振装置を形成する防振装置形成工程と、
前記防振装置形成工程により形成された前記防振装置を、前記第1ブラケットの保持孔に軸方向に圧入して前記第1ブラケットに保持させる第1ブラケット保持工程と、
前記第1ブラケット保持工程により前記第1部ラケットに保持された前記防振装置のボス部材の圧入部を、前記第2ブラケットの固定部材の被圧入部に圧入することで、前記防振装置のボス部材を前記第2ブラケットの固定部材に固定する第2ブラケット固定工程と、を備え、
前記第2ブラケットの固定部材は、前記固定部材の側面に前記被圧入部が開口し、
前記第2ブラケット固定工程は、
前記固定部材の側面に並設され前記被圧入部の開口へ向けて上昇傾斜する冶具傾斜面が形成された冶具を使用するか、又は、前記固定部材の被圧入部の前記開口に連なり圧入方向に沿って上昇傾斜して形成されたブラケット傾斜面を備える第2ブラケットを使用するものであり、
前記ボス部材の圧入部の下面を、前記冶具傾斜面またはブラケット傾斜面に沿って摺動させつつ、前記ボス部材の圧入部を前記固定部材の被圧入部へ圧入することで、前記防振装置の防振基体が軸方向に圧縮された状態で、前記防振装置が前記第2ブラケットの固定部材と接続部材との間に配設されることを特徴とする防振ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記ボス部材の圧入部は、前記防振基体が連結されるボス本体と、前記ボス本体の下面側から突出される軸状の軸部と、前記軸部の突出先端において径方向外方へ張り出される張出部と、を備え、
前記固定部材の被圧入部は、前記圧入部の張出部の外形形状に対応する断面形状の空間として形成され前記固定部材の側面に開口する張出部被圧入部と、前記張出部被圧入部に連通されると共に前記圧入部の軸部の外形形状に対応する断面形状の空間として形成され前記前記固定部材の側面および上面に開口する軸部被圧入部と、を備え、
前記第2ブラケット固定工程は、前記ボス部材の圧入部を、前記固定部材の被圧入部へ前記固定部材の側面における開口から前記防振装置の軸直角方向に沿って圧入して、前記防振装置のボス部材を前記第2ブラケットの固定部材に固定することを特徴とする請求項1記載の防振ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記固定部材の被圧入部は、前記固定部材の側面における開口と反対側となる終端に形成され、前記開口から圧入された前記ボス部材の圧入部に当接して前記圧入を規制する位置決め壁を備え、
前記第2ブラケット固定工程は、前記ボス部材の圧入部が前記固定部材の被圧入部における位置決め壁に当接されて前記圧入が規制される位置まで、前記ボス部材の圧入部を前記固定部材の被圧入部に圧入することを特徴とする請求項2記載の防振ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記ボス部材の圧入部は、前記張出部が円板形状に形成され、
前記固定部材の被圧入部は、前期位置決め壁が前記張出部の円板形状に対応して、円弧状に湾曲して形成されることを特徴とする請求項3記載の防振ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記位置決め壁は、幅方向中央部分に開口形成される開口を備えることを特徴とする請求項4記載の防振ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記ボス部材は、軸対称形状に形成されると共に、防振装置の軸に対して同軸上に配置されることを特徴とする請求項4又は5に記載の防振ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記位置決め壁は、前記ボス部材の圧入部が当接される側の面に凹設される共に前記被圧入部の内壁面側に連なる外縁の少なくとも一部に沿って溝状に延設される溝部を備えることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の防振ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−36582(P2013−36582A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174955(P2011−174955)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】