説明

防振装置

【課題】載置された機器の振動を低減させることができるとともに、メンテナンスが容易で、設置スペースを縮小することができる防振装置を提供する。
【解決手段】ピットの底盤(支持部)4と、底盤4の上部に設置された振動を発生するプレス装置(機器)との間に設けられた防振装置1において、上部にプレス装置が載置される架台(機器載置部)11と、底盤4と架台11との間に介装され上下方向に重ねられた複数の皿ばね12と、複数の皿ばね12の上下方向以外の変位および変形を拘束して支持する皿ばね支持部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプレス装置などの振動が発生する機器が載置されて、該機器の振動を低減させることができる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置などの振動が発生する機器を設置するときには、この振動が周囲へ伝播しないように配慮する必要がある。
例えば、載置された機器の振動を低減させる防振装置として、空気ばねを利用したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−144790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空気ばねを利用した防振装置では、空気ばねの空気もれがあるため、定期的にメンテナンスを行う必要があり、メンテナンスに手間がかかるという問題がある。
特に、大型のプレス装置など大きな振動が生ずる機器が設置される場合には、空気ばねの個数が多数となるため、メンテナンスに多くの手間がかかっている。
また、このような防振装置は、空気ばねのメンテナンスを行うためのスペースが必要となるため、広い設置スペースを確保する必要がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、載置された機器の振動を低減させることができるとともに、メンテナンスが容易で、設置スペースを縮小することができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る防振装置は、支持部と、該支持部の上部に設置された振動を発生する機器との間に設けられた防振装置において、上部に前記機器が載置される機器載置部と、前記支持部と前記機器載置部との間に介装され上下方向に重ねられた複数の皿ばねと、該複数の皿ばねの上下方向以外の変位および変形を拘束して支持する皿ばね支持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、上下方向に重ねられた複数の皿ばねがそれぞれ上下方向に弾性変形することで、機器の上下方向の振動を低減させることができる。
また、皿ばねは、空気ばねと比べてほとんどメンテナンスが必要ないため、空気ばねを利用した従来の防振装置と比べて、メンテナンスにかかる労力を軽減することができる。
さらに、皿ばねのメンテナンスのためのスペースを確保する必要ないため、空気ばねを利用した防振装置と比べて、設置スペースを縮小することができる。
【0008】
また、本発明に係る防振装置では、前記皿ばねは、鋼製であって、防錆油内に配されていることが好ましい。
このようにすることにより、皿ばねが錆びることを抑制することができるため、長期間にわたって皿ばねの性能が安定し、防振装置の寿命を延ばすことができる。
【0009】
また、本発明に係る防振装置では、水平方向の変位を減衰させるダンパを備えていることが好ましい。
このようにすることにより、水平方向の振動を低減させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上下方向に重ねられた複数の皿ばねがそれぞれ上下方向に弾性変形することで、機器の上下方向の振動を低減させることができる。
また、皿ばねは、空気ばねと比べてほとんどメンテナンスが必要ないため、空気ばねを利用した従来の防振装置と比べて、メンテナンスにかかる労力を軽減することができる。
さらに、皿ばねのメンテナンスのためのスペースを確保する必要ないため、空気ばねを利用した防振装置と比べて、設置スペースを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の実施形態による防振装置の設置の一例を示す図で(b)のA−A線断面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図2】(a)は、防振装置を示す図で(b)のC−C線断面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による防振装置について、図1および図2に基づいて説明する。
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態による防振装置1は、プレス装置(機器)2(図1(b)参照)と、プレス装置2が設置されるピット3の底盤4との間に設置されている。
この防振装置1は、プレス装置2の上下方向の振動を軽減させるもので、本実施形態では、目標とする軽減後の上下方向の振動数を2.0Hzとしている。
【0013】
図2(a)および(b)に示すように、防振装置1は、上部にプレス装置2(図1(b)参照)が載置される架台(機器載置部)11と、ピット3の底盤4と架台11との間に介装され上下方向に重ねられた複数の皿ばね12と、皿ばね12の上下方向以外の変位および変形を拘束して支持する皿ばね支持部13と、を備えている。
【0014】
架台11は、平面視において長方形状に形成されていて、載置されたプレス装置2の荷重および振動を下方へ均等に伝達可能に構成されている。本実施形態では、架台11の平面形状は、26m×20mの長方形状とし、プレス装置2と架台11とを合わせた重量は、10000tを超えるものとしている。
なお、プレス装置2および架台11の重量、架台11の形状は上記以外としてもよい。
【0015】
皿ばね12は、例えばSUP10などのばね鋼材で形成された公知の皿ばねで、本実施形態では、外径が250mmのものを使用している。
そして、複数の皿ばね12は、上下方向に4枚ずつ同じ向き(並列)に重ねられて、この重ねられた4枚の皿ばね12の組12Aがさらに27組重ねられている。このとき、上下方向に隣り合う4枚の皿ばね12の組12Aは、その向きが異なる向き(直列)となっている。
本実施形態では、108枚(4枚×27組)の皿ばね12が上下方向に重ねられている。
そして、上下方向に重ねられた最上部の皿ばね12は、座板部材14を介して架台11の下端面11aと当接している。
【0016】
皿ばね支持部13は、上下方向に重ねられた複数の皿ばね12の中央部に形成された孔部12aを貫通する芯棒15と、複数の皿ばね12と芯棒15とが挿入されたシリンダ16とを備えている。
【0017】
図2(a)に示すように、芯棒15は、下端部15aがベースプレート17を介してピット3の底盤4に固定され、上端部15bが上下方向に重ねられた最上部の皿ばね12よりも上方に突出している。
このとき、座板部材14には、芯棒15の上端部15b側が貫通する孔部14aが形成されている。また、架台11の下部側には、該架台11と芯棒15の上端部15bとが干渉しないように下方に開口された凹部18が形成されている。そして、芯棒15の上端部15bと、凹部18の底部18aとの間には、所定の間隔d1が設けられている。
芯棒15と皿ばね12とは、上下方向に相対変位可能に構成されている。
【0018】
シリンダ16は、皿ばね12の外径よりもやや大きい内径に形成され、下端部16aがベースプレート17に当接されている。
ここで、座板部材14の下部側は、シリンダ16の内径よりも小さく形成されシリンダ16内に挿入可能に構成されていて、シリンダ16内の最上部に配された皿ばね12と当接している。また、座板部材14の上部側は、シリンダの外径よりも大きく形成されていて、座板部材14の下部側と比べて径方向外側に突出した形状となっている。
そして、シリンダ16は、上端部16bが座板部材14の上部側の突出した部分と上下方向に間隔d2をあけるように設置されている。
また、シリンダ16の内部には、例えばシリコンオイルなどの皿ばね12の錆を防ぐための防錆油19が充填されている。これにより、皿ばね12は防錆油19内に浸されている。
【0019】
ここで、上下方向に重ねられた複数の皿ばね12、皿ばね支持部13、座板部材14およびベースプレート17で構成された部材を1台の防振部材21とすると、本実施形態では、図1(a)に示すように、4台の防振部材21が束ねられて一組となり、42組がピット3の底盤4と架台11との間に6行×7列となるように配列されている。このため、防振部材21は、4台×42組の168台設置されている。
なお、本実施形態では、皿ばね12の形状や数、防振部材21の数が設定されているが、これらは、架台11に載置される機器の形状や性質、目標とする軽減後の上下方向の振動数に合わせて任意に設定されてよい。
また、防振部材21の配列についても任意に設定されてよく、例えば、底盤4が杭6(図1(b)参照)に支持されているときには、杭の上部となる位置に防振部材21を設置する構成としてもよい。
【0020】
また、本実施形態では、架台11とピット3の側壁5との間には、間隔が設けられており、この間隔には、架台11がピット3内で水平方向へ変位することを防止するための複数のストッパ22が設けられている。
さらに、架台11とピット3の側壁5との間には、架台11が水平方向へ変位した場合にこの変位を吸収するダンパ23(図1(a)参照)が設けられている。本実施形態では、ダンパ23と側壁5との間には、ストッパ22が配されている。
なお、ストッパ22やダンパ23は、必要に応じて設置されればよく、台数も任意に設定することができる。
【0021】
次に、上述した防振装置1の動作について説明する。
架台11に載置されたプレス装置2が上下方向に振動すると、この上下方向の振動が架台11に伝播する。そして、架台11の振動が、座板部材14を介して上下方向に重ねられた皿ばね12に伝達し、皿ばね12が上下方向に弾性変形する。
これにより、上下方向の振動が軽減され、ピット3の底盤4に伝播する振動が軽減される。
【0022】
このとき、皿ばね12が上下方向に弾性変形して、架台11が上下方向に振動するが、芯棒15の上端部15bと架台11に形成された凹部18の底部18aとの間に間隔d1が設けられているため、芯棒15の上端部15bと架台11の凹部18の底部18aとが干渉することがない。
また、座板部材14の上部側の突出した部分とシリンダ16の上端部16bとの間にも間隔d2が設けられていることにより、座板部材14の上部側の突出した部分とシリンダ16の上端部16bとが干渉することがない。
【0023】
次に、上述した防振装置1の作用効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による防振装置1によれば、上下方向に重ねられた複数の皿ばね12がそれぞれ上下方向に弾性変形することで、プレス装置2の上下方向の振動を低減させることができる。
また、皿ばね12は、空気ばねと比べてほとんどメンテナンスが必要ないため、空気ばねを利用した従来の防振装置と比べて、メンテナンスにかかる労力を軽減することができる。
【0024】
さらに、皿ばね12のメンテナンスのためのスペースを確保する必要ないため、空気ばねを利用した防振装置と比べて、設置スペースを縮小することができる。
例えば、防振装置において、本実施形態の防振部材21の代わりに空気ばねを利用すると、空気ばねの周囲にメンテナンスのために作業者が入ることができるスペースが必要となるため、空気ばねの高さに関わらず、空気ばねの周囲には、例えば2m程の高さのスペースが必要となり、架台11とピット3の底盤4との間隔が本実施形態の防振装置1よりも大きくなる。
また、防振部材21と比べて空気ばねの台数が多くなるため、本実施形態の防振装置1よりもメンテナンスが大変となる。
【0025】
また、皿ばね12は、防錆油19内に配されていることにより、長期間にわたって皿ばね12の性能が安定するとともに、防振装置1の寿命を延ばすことができる。
また、防振装置1は、ダンパ23を備えていることにより、水平方向の振動を低減させることができる。
【0026】
以上、本発明による防振装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、シリンダ16の上端部16bと座板部材14の上部側の突出した部分との間に間隔d2が設けられているが、シリンダ16の上端部16bを座板部材14の上部側の突出した部分に当接させて、皿ばね12の伸縮に合わせてシリンダ16が伸縮可能な構成としてもよい。このようにすることにより、上下方向に重ねられた皿ばね12の上部側も防錆油19内に配することができる。
【0027】
また、上述した実施形態では、シリンダ16の内部に防錆油19が充填され、皿ばね12が防錆油19内に設置されているが、例えば、防錆油19を設けない構成としてもよく、皿ばね12に防錆油19を塗布した構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、プレス装置2の上下方向の振動を軽減させ、目標とする軽減後の上下方向の振動数を2.0Hzとしているが、目標とする軽減後の振動数は任意に設定されてよく、これに合わせて皿ばね12の形状や数、防振部材21の数などを設定してよい。
また、上述した実施形態では、防振装置1にプレス装置2が載置されているが、プレス装置2以外の機器を設置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 防振装置
2 プレス装置(機器)
4 底盤(支持部)
11 架台(機器載置部)
12 皿ばね
13 皿ばね支持部
15 芯棒
16 シリンダ
19 防錆油
21 防振部材
23 ダンパ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、該支持部の上部に設置された振動を発生する機器との間に設けられた防振装置において、
上部に前記機器が載置される機器載置部と、
前記支持部と前記機器載置部との間に介装され上下方向に重ねられた複数の皿ばねと、
該複数の皿ばねの上下方向以外の変位および変形を拘束して支持する皿ばね支持部と、を備えることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記皿ばねは、鋼製であって、防錆油内に配されていることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
水平方向の変位を減衰させるダンパを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の防振装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−53720(P2013−53720A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193813(P2011−193813)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】