説明

防曇性反射防止膜を有する光学素子及び防曇性反射防止膜の製造方法

【課題】 耐擦傷性、防曇性を兼ね備えた低屈折率の反射防止膜であって、低いガラス転移温度を有するレンズにも適する反射防止膜を有する光学素子及び反射防止膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 基体表面に防曇性の反射防止膜を有し、前記反射防止膜はシリカエアロゲル層を有し、前記シリカエアロゲル層の水に対する接触角が15°以下である光学素子及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇性反射防止膜を有する光学素子と、防曇性反射防止膜の製造方法に関し、特に優れた防曇性と耐擦傷性を兼ね備え、光ピックアップ装置、半導体装置、内視鏡等に用いる大きな開口数(NA)を有する光学素子や光通信に用いるボール状の光学素子と、その反射防止膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置、半導体装置、内視鏡等の対物レンズには、大きな開口数を有するレンズが使用されており、近年では、レーザーの使用波長を405 nmとし、NA0.85の対物レンズを用いた光ピックアップ装置が提案されている。NA0.85のレンズは、例えば図3に示すような形状である。対物レンズとして使用する場合、レーザー光はR1面側から照射され、R2面側に透過する。レーザー光はほぼ平行光であり、対物レンズの中心に垂直入射するように照射される。このためレンズ周辺部においては、光線入射角は非常に大きい。図3に示す例では、レンズの有効径E内における光の最大入射角度は65°である。対物レンズは照射された光を効率的に透過させるのが望ましいが、入射角度に比例して反射光量も多くなる。図3に示す形状であって、反射率1.72のガラスからなるレンズのR1面における反射率を図4に示す。光線入射角度65°の位置では、照射された光のうち15.5%は反射されてしまう。
【0003】
反射光量を減少させて照射光を効率よく透過させるために、光ピックアップ装置や半導体装置の対物レンズの表面には反射防止膜がコーティングされている。例えば単層の反射防止膜は、反射防止膜表面での反射光と、反射防止膜とレンズの境界での反射光との光路差が波長の1/2の奇数倍となってこれらの光が干渉により打ち消し合う厚さになるように設計される。単層の反射防止膜は、基材より小さく、かつ空気等の入射媒質より大きい屈折率を有するように設計される。屈折率1.5程度のガラスからなるレンズの反射防止膜は、屈折率1.2〜1.25が理想的であると言われている。しかし、このような理想的な屈折率を有する物質は無いので、屈折率1.38のMgF2が反射防止膜材料として汎用されている。
【0004】
光ピックアップ装置は車載されることも多く、温度や湿度の変化が比較的大きい場所で使用される。そのため、対物レンズの表面にMgF2からなる反射防止膜をコーティングしておいても、温度や湿度の変化によって曇りが発生し、読み取り不良が起こってしまうという問題がある。また内視鏡の対物レンズにおいても、体内に入れると曇り易く、観察が阻害されてしまうという問題がある。
【0005】
特開平11-77876号(特許文献1)には、基材の表面に形成され、多孔質MgF2膜からなる防曇性被覆が記載されている。特許文献1に記載の防曇性被覆は1.30以下の屈折率を有し、多孔質であるために僅かに防曇効果を示す。しかし、多孔質MgF2膜の防曇効果は光ピックアップ装置や内視鏡等に用いるには十分でない。また多孔質MgF2膜の表面は非常に脆く、耐擦傷性が小さ過ぎて実用に耐えないという問題がある。
【0006】
特開平8-259270号(特許文献2)は、酸化ケイ素を主として含む物質の表面をシランカップリング剤で処理した後、側鎖または疎水性基中間部に反応性基を持つ反応性界面活性剤を表面に反応させた防曇性能を有する光学物品を記載している。また特開平9-113704号(特許文献3)は、無機アルコキシドの加水分解物をポリアクリル酸類の存在下で重縮合反応させて得られる組成物からなる防曇性反射防止膜を記載している。特許文献2に記載の光学物品や、特許文献3に記載の防曇性反射防止膜は表面に親水性の有機基を有しており、防曇性を示す。しかしながら、屈折率1.5程度のガラスからなるレンズの反射防止膜としては屈折率が大きすぎ、十分な反射防止特性を得られないという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平11-77876号公報
【特許文献2】特開平8-259270号公報
【特許文献3】特開平9-113704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、耐擦傷性、防曇性を兼ね備えた低屈折率の反射防止膜を有する光学素子及び防曇性反射防止膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、(a) 表面に有機基を有しないシリカエアロゲル層は、低屈折率であって防曇性を有すること、及び(b) 酸化ケイ素を有機修飾した後でゾル状にして基体表面にコーティングし、ゲルの収縮及びスプリングバック現象によって得られた有機修飾シリカエアロゲル層を熱処理することにより、実質的に有機基を有しないシリカエアロゲル層を作製できることを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の第一の光学素子は、基体表面に防曇性の反射防止膜を有し、前記反射防止膜はシリカエアロゲル層を有し、前記シリカエアロゲル層の水に対する接触角が15°以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第二の光学素子は、基体表面に防曇性の反射防止膜を有し、前記反射防止膜はシリカエアロゲル層を有し、前記シリカエアロゲル層が有機基の分解温度以上、かつ前記基体のガラス転移温度以下の温度で熱処理されたものであることを特徴とする。
【0012】
いずれの光学素子においても、前記シリカエアロゲル層の屈折率が1.05〜1.35であるのが好ましい。前記基体の有効径内であって基板傾斜角度50°以上の部分の投影面積は、前記有効径内の投影面積の10%以上であるのが好ましい。前記シリカエアロゲル層の物理層厚は15〜500 nmであるのが好ましい。
【0013】
本発明の反射防止膜の製造方法は、基体表面に反射防止膜を製造するもので、(a) ゾル状又はゲル状の酸化ケイ素を有機修飾剤と反応させて有機修飾ゾル又は有機修飾ゲルとする工程と、(b) 前記有機修飾ゾル又は前記有機修飾ゲルをゾル状にしたものを前記基体又は前記シリカエアロゲル層以外の前記反射防止膜の層上にコーティングし、得られた有機修飾シリカゲル層にスプリングバック現象を生じさせ、有機修飾シリカエアロゲル層にする工程と、(c) 前記有機修飾シリカゲル層の有機基の分解温度以上、かつ前記基体のガラス転移温度以下で前記有機修飾シリカエアロゲル層を熱処理する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
前記有機修飾ゾル又はゲルを超音波処理した後で前記シリカゲル層を形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
水に対する接触角が15°以下のシリカエアロゲル層は大きな空隙率を有し、低屈折率である上、優れた防曇性を示す。このようなシリカエアロゲル層を表面に有する光学素子は、優れた反射防止効果を示す上、曇り難いので、光ピックアップや内視鏡の対物レンズに好適である。
【0016】
本発明の反射防止膜の製造方法においては、スプリングバック現象によって有機修飾シリカエアロゲル層を形成させた後で熱処理し、有機基を除去する。有機基を除去することによってシリカエアロゲル層は親水化し、シリカエアロゲル層の空隙中に水が入り込み易くなる。また熱処理中にシリカエアロゲルを構成する粒子同士の結合が強くなるので、耐擦傷性にも優れている。従って、本発明の反射防止膜の製造方法により、耐擦傷性、防曇性を兼ね備えた低屈折率のシリカエアロゲル層を有する反射防止膜を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[1] 反射防止膜を有する光学素子
図1は本発明の光学素子の一例を示す。図1に示す光学素子は、凸状の第一の面11を有するレンズ1と、第一の面11に成膜された防曇性反射防止膜2とからなる。光学素子の裏面側は、凹状の第二の面12となっている。図1に示す例では第一の面11にのみ反射防止膜2が成膜されているが、本発明はこれに限定されず、レンズ1の第一の面11及び第二の面12に反射防止膜2が成膜されたものを含む。図中の反射防止膜2は、実際より厚く描かれている。なお回折を生じるように第一の面11及び/又は第二の面12に輪帯を有するものも本発明の範疇である。
【0018】
図1(b) に示すように、レンズ1の有効径E内であって基板傾斜角度θが50°以上の部分の投影面積Sは、有効径E内部の投影面積の10%以上である。このようなレンズの場合、有効径E内部における最大基板傾斜角度θmaxは通常60°〜75°である。本明細書において基板傾斜角度θは、図2に示すように第一の面11の中心110に接する面Foと、第一の面11上の点tに接する面Fとのなす角度を示す。60°〜75°の最大基板傾斜角度θmaxを有するレンズは、光ピックアップ装置等の対物レンズに好適である。
【0019】
レンズ1の屈折率は1.45〜1.85であるのが好ましい。屈折率1.45未満であると、高Na化し難すぎる。屈折率1.85超であると、一般に紫外〜青色域の波長の光を吸収するので特に405 nm光用途では硝材として適しない。屈折率1.45〜1.85の物質の例としては、BK7、LAK14、LASF016等の光学ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英、青板ガラス、白板ガラス、PMMA樹脂、PC樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これらのうち好ましいのは、後述する加熱処理工程の温度より100℃以上高いガラス転移温度を有する材料である。
【0020】
防曇性反射防止膜2はシリカエアロゲル層を有する。図1に示す例では反射防止膜2は単層であるのでシリカエアロゲル層のみからなっているが、本発明はこれに限定されず、シリカエアロゲル層以外の層を有するものを含む。多層の反射防止膜2の場合、シリカエアロゲル層を表面に有する。シリカエアロゲル層を表面に設けることにより、入射媒質と反射防止膜2との屈折率差が小さくなって、優れた反射防止特性を示す上、十分な防曇効果を得ることができる。なお本明細書中、「反射防止特性」は反射率及び光透過率を示し、「優れた反射防止特性を有する」は小さな反射率及び大きな光透過率を有することを示す。
【0021】
親水化処理後のシリカエアロゲル層の空隙には水分が入り込み易くなっており、親水性シリカエアロゲル層は防曇性を示す。シリカエアロゲル層の水に対する接触角は15°以下であり、12°以下であるのが好ましい。空隙に水分が入り込むことによって、シリカエアロゲル層の屈折率は多少大きくなるが、実用上支障の無い程度であり、曇りを防ぐことによって得られる利益のほうが遥かに大きい。
【0022】
シリカエアロゲル層の好ましい厚さは、レンズ1の屈折率や使用波長によって様々である。光ピックアップ装置の対物レンズの場合、シリカエアロゲル層の好ましい物理層厚は15〜500 nmであり、より好ましい物理層厚は100〜350 nmである。
【0023】
レンズ周辺部における反射防止膜2の物理膜厚Dとレンズ中心の物理膜厚D0との比D/D0は、(COS(基板傾斜角度))0.7〜(COS(SIN-1(SIN(基板傾斜角度/反射防止膜の屈折率))))-1であるのが好ましい。本明細書中、「レンズ周辺部」とは基板傾斜角度θが50°以上の部分を示す。反射防止膜2の物理膜厚はレンズ中心から周辺部にかけて徐々に小さくなっているものの、その減少は比較的小さい。このためレンズ中心で最適な膜厚となるように設計されている場合でも、レンズ周辺部における反射防止膜2の膜厚が小さ過ぎず、良好な反射防止効果を示すことができる。レンズ周辺部における物理膜厚が一様でない場合、その最大値、最小値及び平均値のいずれを物理膜厚Dとしても良い。
【0024】
防曇性反射防止膜2の屈折率は1.05〜1.35であるのが好ましい。屈折率は反射防止膜2の空隙率に依存する。屈折率1.05未満にするには、反射防止膜2の空隙率を90%超にする必要がある。このため屈折率1.05未満であると、機械的強度が小さすぎる。屈折率1.35超であると、優れた反射防止特性を示さない。
【0025】
[2] 反射防止膜の製造方法
レンズ1の表面にシリカエアロゲル層のみからなる防曇性反射防止膜2を形成する場合を例にとって、光学素子の製造方法を説明する。
(a) シリカエアロゲル層の原料
(a-1) アルコキシシラン及びシルセスキオキサン
アルコキシシラン及び/又はシルセスキオキサンの加水分解重合により、シリカゾル及びシリカゲルが生成する。アルコキシシランはモノマーでも、オリゴマーでも良い。アルコキシシランモノマーはアルコキシル基を3つ以上有するのが好ましい。アルコキシル基を3つ以上有するアルコキシシランを出発原料とすることにより、優れた均一性を有する反射防止膜が得られる。アルコキシシランモノマーの具体例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが挙げられる。アルコキシシランオリゴマーとしては、上述のモノマーの縮重合物が好ましい。アルコキシシランオリゴマーはモノマーの加水分解重合により得られる。
【0026】
シルセスキオキサンを出発原料とした場合も、優れた均一性を有する反射防止膜が得られる。シルセスキオキサンは一般式RSiO1.5(ただしRは有機官能基を示す。)により表され、ネットワーク状ポリシロキサンの総称である。Rとしては、例えばアルキル基(直鎖でも分岐鎖でも良く、炭素数1〜6である。)、フェニル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)が挙げられる。シルセスキオキサンはラダー型、籠型等種々の構造を有することが知られている。また優れた耐候性、透明性及び硬度を有しており、シリカエアロゲルの出発原料として好適である。
【0027】
(a-2) 溶媒
溶媒は水とアルコールからなるのが好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコールが好ましく、エタノールが特に好ましい。溶媒の水/アルコールのモル比は0.01〜2とするのが好ましく、0.1〜2とするのがより好ましい。水/アルコールのモル比が2超であると、加水分解反応が速く進行し過ぎる。水/アルコールのモル比が0.01未満であると、アルコキシシラン及び/又はシルセスキオキサン(以下、単に「アルコキシシラン等」という)の加水分解が十分に起こらない。
【0028】
(a-3) 触媒
アルコキシシラン等の水溶液に触媒を添加するのが好ましい。適当な触媒を添加することによりアルコキシシラン等の加水分解反応を促進することができる。触媒は酸性であっても塩基性であっても良い。酸性の触媒の例として塩酸、硝酸及び酢酸が挙げられる。塩基性の触媒の例としてアンモニア、アミン、NaOH及びKOHが挙げられる。好ましいアミンの例としてアルコールアミン、アルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン)が挙げられる。
【0029】
(b) ゾル及び/又はゲルの作製
水とアルコールからなる溶媒に、アルコキシシラン等を溶解する。溶媒/アルコキシシラン等のモル比は3〜100にするのが好ましく、3〜40にするのがより好ましい。モル比を3未満とすると、アルコキシシラン等の重合度が高くなり過ぎる。モル比を100超とすると、アルコキシシラン等の重合度が低くなり過ぎる。触媒/アルコキシシラン等のモル比は1×10-4〜3×10-2にするのが好ましく、3×10-4〜1×10-2にするのがより好ましい。モル比が1×10-4未満であると、アルコキシシラン等の加水分解反応が十分に起こらない。モル比を3×10-2超としても、触媒効果は増大しない。
【0030】
アルコキシシラン等を含む溶液を20〜60時間程度エージングする。具体的には、25〜90℃で溶液を静置するか、ゆっくり撹拌する。エージングによりゲル化が進行し、酸化ケイ素を含有するゾル及び/又はゲルが生成する。本明細書中、「酸化ケイ素を含有するゾル」には酸化ケイ素からなるコロイド粒子が分散状態になっているもののほか、凝集したコロイド粒子からなるゾルのクラスターが分散状態になっているものも含まれる。
【0031】
(c) 有機修飾
ゾル及び/又はゲルに有機修飾剤の溶液を加え、ゾル及び/又はゲルと有機修飾剤溶液とが十分接触した状態にすることにより、ゾル又はゲルを構成する酸化ケイ素の末端にある水酸基等の親水性基を疎水性の有機基に置換する。好ましい有機修飾剤は下記式(1)〜(6)
MpSiClq ・・・(1)
M3SiNHSiM3 ・・・(2)
MpSi(OH)q ・・・(3)
M3SiOSiM3 ・・・(4)
MpSi(OM)q ・・・(5)
MpSi(OCOCH3)q ・・・(6)
(ただしpは1〜3の整数であり、qはq = 4−p を満たす1〜3の整数であり、Mは水素、アルキル基又はアリール基であり、アルキル基は置換又は無置換であって炭素数1〜18であり、アリール基は置換又は無置換であって炭素数5〜18である)のいずれかにより表される化合物及びそれらの混合物である。
【0032】
有機修飾剤の具体例としてトリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、2-トリメチルシロキシペント-2-エン-4-オン、n-(トリメチルシリル)アセトアミド、2-(トリメチルシリル)酢酸、n-(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルプロピオレート、ノナメチルトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、t-ブチルジメチルシラノール及びジフェニルシランジオールが挙げられる。
【0033】
有機修飾剤溶液の溶媒はヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物が好ましい。
【0034】
有機修飾剤の種類や濃度にもよるが、有機修飾反応は10〜40℃で進行させるのが好ましい。10℃未満であると、有機修飾剤が酸化ケイ素と反応し難過ぎる。40℃超であると、有機修飾剤が酸化ケイ素以外の物質と反応し易過ぎる。反応中、溶液の温度及び濃度に分布が生じないように、溶液を撹拌するのが好ましい。例えば有機修飾剤溶液がトリエチルクロロシランのヘキサン溶液の場合、10〜40℃で10〜40時間(例えば30時間)程度保持すると、シラノール基が十分にシリル修飾される。修飾率は10〜30%であるのが好ましい。
【0035】
(d) 分散媒の置換
ゾル及び/又はゲルの分散媒は、前述のエージング工程においてエージングを促進したり遅らせたりする表面張力及び/又は固相−液相の接触角や、有機修飾工程における表面修飾の範囲に影響する他、後述するコーティング工程における分散媒の蒸発率にも関係する。ゲルに取り込まれている分散媒は、ゲルの入った容器に置換すべき分散媒を注ぎ、振とうした後でデカンテーション操作を繰り返すことによって置換することができる。ゾルの場合、低沸点の分散媒又は置換すべき分散媒と共沸する分散媒をゾルに加え、元の分散媒を揮発させた後、新しい分散媒を補給することによって置換することができる。
【0036】
置換する分散媒としては水、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、メチルi-ブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチルメチルi-ブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル及びこれらの混合物を使用するのが好ましい。
【0037】
置換する分散媒としてより好ましいのは、ケトン系溶媒である。後述する超音波処理工程までにケトン系溶媒に置換しておくと、良好な分散性の有機修飾シリカ含有ゾルを得ることができる。ケトン系溶媒はシリカ(酸化ケイ素)及び有機修飾シリカに対して優れた親和性を有する。そのためケトン系溶媒中で、シリカ及び/又は有機修飾シリカは良好な分散状態になる。(a) 有機修飾反応の前にケトン系溶媒に置換してもよいし、(b) ヘキサン等を溶媒として酸化ケイ素を有機修飾した後で、ケトン系溶媒に置換してもよいが、工程数を少なくする観点から、(a) 有機修飾反応の前に置換しておくのが好ましい。
【0038】
ケトン系溶媒としてより好ましいのは、60℃以上の沸点を有するものである。60℃未満の沸点を有するケトンは、後述する超音波照射の工程で揮発しすぎる。例えばアセトンを分散媒として用いると、超音波照射中にアセトンが大量に揮発してしまうため、分散液の濃度を調節し難過ぎる。また成膜工程においても素早く揮発し過ぎるため、十分な成膜時間が得られないという問題もある。さらにアセトンは人体に有害であることが知られており、作業者の健康の面からも好ましくない。
【0039】
ケトン系溶媒のうち、特に好ましいのはカルボニル基の両側に異なる置換基を有する非対称なケトンである。非対称ケトンは大きな極性を有するために、シリカ及び有機修飾シリカに対して特に優れた親和性を有する。分散液中で、有機修飾シリカは200 nm以下の粒径を有するのが好ましい。有機修飾シリカの粒径が200 nmより大きいと、実質的に平滑な表面を有するシリカエアロゲル膜を形成し難過ぎる。
【0040】
ケトンの有する置換基はアルキル基でもよいし、アリール基でもよい。好ましいアルキル基は炭素数1〜5程度のものである。ケトン系溶媒の具体例としてメチルi-ブチルケトン、エチルi-ブチルケトン、メチルエチルケトンが挙げられる。
【0041】
(e) 超音波処理
超音波処理により、ゲル状及び/又はゾル状の有機修飾酸化ケイ素をコーティングに好適な状態にすることができる。ゲル状の有機修飾酸化ケイ素の場合、超音波処理により、電気的な力若しくはファンデルワールス力によって凝集していたゲルが解離するか、金属と酸素との共有結合が壊れて、分散状態になると考えられる。ゾル状の場合も、超音波処理によってコロイド粒子の凝集を少なくすることができる。超音波処理には、超音波振動子を利用した分散装置を使用することができる。照射する超音波の周波数は10〜30 kHzとするのが好ましい。出力は300〜900 Wとするのが好ましい。
【0042】
超音波処理時間は5〜120分間とするのが好ましい。超音波を長く照射するほど、ゲル及び/又はゾルのクラスターが細かく粉砕され、凝集の少ない状態になる。このため超音波処理によって得られるシリカ含有ゾル中で、有機修飾酸化ケイ素のコロイド粒子が単分散に近い状態になる。5分未満とすると、コロイド粒子が十分に解離しない。超音波処理時間を120分超としても、有機修飾酸化ケイ素のコロイド粒子の解離状態はほとんど変わらない。
【0043】
シリカ含有ゾルの濃度や流動性が適切な範囲になるように、分散媒を加えても良い。超音波処理に先立って分散媒を添加しても良いし、ある程度超音波処理した後で分散媒を添加しても良い。分散媒に対する有機修飾酸化ケイ素の質量比は0.1〜20%とするのが好ましい。分散媒に対する有機修飾酸化ケイ素の質量比が0.1〜20%の範囲でないと、均一な薄層を形成し難いので好ましくない。
【0044】
(f) コーティング
有機修飾シリカ含有ゾルからなる層をレンズ1の表面11に設ける。有機修飾シリカ含有ゾルからなる層を設ける方法の例としてスプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、フローコート法及びバーコート法が挙げられる。有機修飾シリカ含有ゾルをコーティングすると、ゾルの構成要素である分散媒が揮発して、有機修飾シリカエアロゲル層が生成する。有機修飾シリカエアロゲル層の空隙率は、分散媒が揮発している間は、毛管圧によって生じるゲルの収縮のために小さくなるが、揮発し終わると、スプリングバック現象によって回復する。このため有機修飾シリカエアロゲル層の空隙率は、ゲルネットワークの元々の空隙率とほぼ同じであり、大きな値を示す。シリカゲルネットワークの収縮及びスプリングバック現象については、米国特許5,948,482号に詳細に記載されている。
【0045】
単分散に近い状態の酸化ケイ素コロイド粒子を含有するゾルを用いると、小さな空隙率を有する有機修飾シリカエアロゲル層を形成することができる。大きく凝集した状態のコロイド粒子を含有するゾルを用いると、大きな空隙率を有する有機修飾シリカエアロゲル層を形成することができる。すなわち、超音波処理時間は有機修飾シリカエアロゲル層及びそれを加熱処理することによって得られるシリカエアロゲル層の空隙率に影響すると言うことができる。5〜120分間超音波処理したゾルをディップコートすることにより、空隙率25〜90%の有機修飾シリカエアロゲル層を得ることができる。
【0046】
(g) 加熱処理
有機修飾シリカエアロゲル層を加熱処理し、有機基を分解させる。加熱処理温度は有機基がシリカから脱離する温度以上とし、かつレンズ1のガラス転移温度以下とする必要がある。加熱処理温度は少なくとも150℃超とし、300℃以上とするのがより好ましく、400度以上とするのが特に好ましい。加熱処理温度を150℃超とすると、有機基を分解し、親水性を有するシリカエアロゲル層を得ることができる。加熱処理温度を300℃以上にすると、ほとんどの有機基を分解し、優れた親水性を与えることができる。加熱処理温度をレンズ1のガラス転移温度より高くすると、レンズ1が変形し易すぎる。加熱処理温度の上限は、レンズ1のガラス転移温度より100℃以上低くするのがより好ましい。
【0047】
加熱処理する時間は、加熱処理温度やシリカエアロゲル層の厚さ等にも拠るが、10分〜4時間とするのが好ましい。加熱処理温度を300℃より高くしても、10分未満では有機基を十分に分解させることができない。また有機基は4時間以内にほとんど除去されてしまうため、4時間より長く加熱処理しても、時間のロスとなるだけである。
【0048】
加熱処理によって有機基を熱分解することにより、シリカエアロゲル層は親水化して防曇性になる他、シリカ粒子間の結合が強くなるによって耐擦傷性も向上する。
【実施例】
【0049】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
(i) 有機修飾シリカ含有ゾルの調製
(i-1) シリカゲルの作製
テトラエトキシシラン5.21 gと、エタノール4.38 gとを混合した後、0.01規定の塩酸0.4 gを加えて90分間撹拌した。次いでエタノール44.35 gと、0.02規定のアンモニア水溶液0.5 gとを添加し、46時間撹拌した後、60℃に昇温して46時間熟成したところ、湿潤状態のシリカゲルが生成した。湿潤状態のシリカゲルの溶媒をデカンテーションによって除去した後、素早くエタノールを加えて振とうし、デカンテーションすることによりシリカゲルの分散媒をエタノールに置換した。その後、ヘキサンを加えて振とうし、デカンテーションすることによりエタノール分散媒をヘキサンに置換した。
【0051】
(i-2) 有機修飾
ゲル状のシリカにジエチルジクロロシランのヘキサン溶液(濃度5体積%)を加え、30時間撹拌して、酸化ケイ素末端を有機修飾した。有機修飾シリカゲルを含有する混合物からヘキサンをデカンテーションした後、新たにヘキサンを加えて1質量%にし、超音波処理(20 kHz、500 W、20分間)したところ、有機修飾シリカ含有ゾルが得られた。
【0052】
(ii) ディップコート
LAK14ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.70、ガラス転移温度Tg = 668℃)の第一の面11に、実施例1(i) で得られた有機修飾シリカ含有ゾルをディップコートし、室温で乾燥させたところ、有機修飾シリカエアロゲル膜となった。乾燥中に、ゲルの収縮及びスプリングバックが起こったと考えられる。有機修飾シリカエアロゲル膜の空隙率を測定したところ、41%であった。
【0053】
(iii) 加熱処理
実施例1(ii)で得た光学素子を500℃で2時間加熱処理して有機基を分解し、シリカエアロゲル膜を有する光学素子を得た。シリカエアロゲル膜の膜厚は102 nmであり、屈折率は1.28であった。
【0054】
実施例2
BK7ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.53、ガラス転移温度Tg = 553℃)の第一の面11に、実施例1(i) で作製した有機修飾シリカ含有ゾルをディップコートし、室温乾燥後に450℃で2時間加熱処理した以外実施例1と同様にして、シリカエアロゲル膜を有する反射防止膜を作製した。シリカエアロゲル膜の膜厚は108 nmであり、屈折率は1.26であった。
【0055】
実施例3
(i) 有機修飾シリカ含有ゾルの調製
有機修飾剤としてジエチルジクロロシランの代わりにトリエチルクロロシランを使用して濃度8体積%のヘキサン溶液とし、超音波処理(20 kHz、500 W)の時間を10分間にした以外、実施例1(i)と同様にして、有機修飾シリカ含有ゾルを調製した。
【0056】
(ii) ディップコート
LAK14ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.70、ガラス転移温度Tg = 668℃)の第一の面11に、実施例3(i) で得られた有機修飾シリカ含有ゾルをディップコートした。これを室温で乾燥させたところ、ゲルの収縮及びスプリングバックが起こって有機修飾シリカエアロゲル膜となった。有機修飾シリカエアロゲル膜の空隙率を測定したところ、76%であった。
【0057】
(iii) 加熱処理
実施例3(ii) で得られた光学素子を400℃で1時間加熱処理し、シリカエアロゲル膜を有する光学素子を得た。シリカエアロゲル膜の膜厚は120 nmであり、屈折率は1.11であった。
【0058】
実施例4
LAK14ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.70、ガラス転移温度Tg = 668℃)の第一の面11に、電子ビーム式の真空蒸着装置を用いて、厚さ163 nmとなるようにMgF2(屈折率n = 1.38)を蒸着した。形成したMgF2層の上に実施例3(i) で得られた有機修飾シリカ含有ゾルをディップコートした後、400℃で3時間熱処理した。加熱処理後のシリカエアロゲル層の厚さは246 nmであり、屈折率は1.13であった。得られた反射防止膜の層構成を表1に示す。
【0059】
【表1】

注 層No.は、レンズ側から順にNo.1、No.2とする。
【0060】
実施例5
表2に示す層厚になるように、電子ビーム式の真空蒸着装置を用いて、LAK14ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.70、ガラス転移温度Tg = 668℃)の第一の面11に、Al2O3層、SiO2層及びMgF2層を形成した。次いで、実施例3(i) で得られた有機修飾シリカ含有ゾルをMgF2層上にディップコートし、400℃で3時間熱処理した。加熱処理後のシリカエアロゲル層の厚さは305 nmであり、屈折率は1.13であった。
【表2】

注 層No.は、レンズ側から順にNo.1、No.2、・・・・No.4とする。
【0061】
実施例6
(i) 有機修飾シリカ含有ゾルの作製
シリカゲルの分散媒としてヘキサンの代わりにメチルi-ブチルケトン(MIBK)を使用した以外実施例1(i-1)と同様にして、ゲル状のシリカを作製した。
【0062】
ゲル状のシリカにトリメチルクロロシランのMIBK溶液(濃度5体積%)を加え、20時間撹拌したところ、有機修飾シリカゲルが生成した。有機修飾シリカゲルを含有する混合物からMIBKをデカンテーションした後、MIBKを加えて1質量%にし、超音波処理(20 kHz、500 W、20分間)したところ、有機修飾シリカ含有ゾルが得られた。
【0063】
(ii) ディップコート
LAK14ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.70、ガラス転移温度Tg = 668℃)の第一の面11に、実施例6(i) で得られた有機修飾シリカ含有ゾルをディップコートし、室温で乾燥させたところ、ゲルの収縮及びスプリングバックが起こって空隙率69%の有機修飾シリカエアロゲル膜となった。
【0064】
(iii) 加熱処理
実施例6(ii)で得た光学素子を450℃で1時間加熱処理して有機基を分解し、シリカエアロゲル膜を有する光学素子を得た。シリカエアロゲル膜の膜厚は130 nmであり、屈折率は1.14であった。
【0065】
比較例1
電子ビーム式の真空蒸着装置を用いて、LAK14ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.70、ガラス転移温度Tg = 668℃)の第一の面11に、MgF2(屈折率n=1.38)を膜厚132 nmとなるように蒸着した。MgF2からなる緻密膜を有する光学素子が得られた。
【0066】
比較例2
各層の膜厚が表3のとおりとなるように、ZrO2(屈折率n= 2.04)からなる薄膜と、MgF2(屈折率n= 1.38)からなる薄膜とを交互に形成した以外比較例1と同様にして、多層緻密膜を有する光学素子を作製した。
【0067】
【表3】

注 層No.は、レンズ側から順にNo.1、No.2、・・・・No.8とする。
【0068】
比較例3
BK7ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.53)の第一の面11に、膜厚114 nmとなるようにMgF2(屈折率n=1.38)を蒸着した以外比較例1と同様にして、MgF2緻密膜を有する光学素子を作製した。
【0069】
比較例4
電子ビーム式の真空蒸着装置を用いて、LAK14ガラスからなる対物レンズ1(両面非球面レンズ、屈折率n=1.70、ガラス転移温度Tg = 668℃)の第一の面11に、空隙率58%となるように調節してMgF2(屈折率n=1.38)を蒸着した。膜厚164 nm、屈折率1.16の多孔質MgF2膜が得られた。
【0070】
比較例5
有機修飾シリカエアロゲル膜を有する光学素子を加熱処理する温度を150℃とした以外実施例6と同様にして、光学素子を作製した。
【0071】
比較例6
有機修飾シリカエアロゲル膜を有する光学素子を加熱処理する温度を150℃とした以外実施例4と同様にして、光学素子を作製した。
【0072】
比較例7
有機修飾シリカエアロゲル膜を有する光学素子を加熱処理する温度を150℃とした以外実施例5と同様にして、光学素子を作製した。
【0073】
実施例1〜6及び比較例1〜7の光学素子の光透過率、耐擦傷性、水の接触角及び防曇性を、下記に示すように測定した。また比較例8としてLAK14ガラスレンズ、比較例9としてBK7ガラスレンズの光透過率等を同様に測定した。
【0074】
(1) 光透過性
実施例1〜5及び比較例1〜4の第一の面11に、空気中で波長405 nmのレーザー光を照射し、光透過率 (%)を測定した。結果を表4に示す。
(2) 耐擦傷性
不織布に水を含浸させたもので、実施例1〜5及び比較例1〜4の反射防止膜、並びに比較例8及び9の第一の面11を擦り、擦った後の反射防止膜及びレンズ面を観察した。評価基準は次のとおりとした。
◎:全く傷がついていない。
○:傷は付いているが、光学的な影響が無い。
△:光学的な影響を与える傷が発生するが、反射防止膜は剥離しない。
×:反射防止膜が剥離する。
結果を表4に併せて示す。
(3) 水に対する接触角
実施例1〜5及び比較例1〜4の反射防止膜、並びに比較例8及び9の第一の面11に純水を滴下し、接触角を測定した。
結果を表4に併せて示す。
(4) 防曇性
実施例1〜5及び比較例1〜4の反射防止膜、並びに比較例8及び9の第一の面11に呼気を吹きかけ、曇りの発生状況を観察した。評価基準は次のとおりとした。
◎:全く曇らない。
○:曇りは発生するが、瞬時に消える。
△:曇りが発生し、しばらく消えない。
×:防曇性が全く認められない。
結果を表4に併せて示す。
【0075】
【表4】

注1:反射防止膜が成膜されていないことを示す。
注2:加熱処理をしていないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の光学素子の一例を示す図であり、(a) は縦断面を示し、(b) は上面を示す。
【図2】図1に示す光学素子の部分拡大断面図である。
【図3】光ピックアップ装置の対物レンズの一例を示す断面図である。
【図4】レンズの光線入射角度と反射率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0077】
1・・・光学素子
11・・・第一の面
12・・・第二の面
2・・・防曇性反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体表面に防曇性の反射防止膜を有する光学素子において、前記反射防止膜がシリカエアロゲル層を有し、前記シリカエアロゲル層の水に対する接触角が15°以下であることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
基体表面に防曇性の反射防止膜を有する光学素子において、前記反射防止膜がシリカエアロゲル層を有し、前記シリカエアロゲル層が有機基の分解温度以上、かつ前記基体のガラス転移温度以下の温度で加熱処理されたものであることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学素子において、前記シリカエアロゲル層の屈折率が1.05〜1.35であることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子において、前記基体の有効径内であって基板傾斜角度50°以上の部分の投影面積が、前記有効径内の投影面積の10%以上であることを特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学素子において、前記シリカエアロゲル層の物理層厚が15〜500 nmであることを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子において、光ピックアップ装置の対物レンズに用いられることを特徴とする光学素子。
【請求項7】
基体表面に反射防止膜を製造する方法において、(a) ゾル状又はゲル状の酸化ケイ素を有機修飾剤と反応させて有機修飾ゾル又は有機修飾ゲルとする工程と、(b) 前記有機修飾ゾル又は前記有機修飾ゲルをゾル状にしたものを前記基体又は前記シリカエアロゲル層以外の前記反射防止膜の層上にコーティングし、得られた有機修飾シリカゲル層にスプリングバック現象を生じさせ、有機修飾シリカエアロゲル層にする工程と、(c) 前記有機修飾シリカゲル層の有機基の分解温度以上、かつ前記基体のガラス転移温度以下で前記有機修飾シリカエアロゲル層を熱処理する工程とを有することを特徴とする反射防止膜の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の反射防止膜の製造方法において、前記有機修飾ゾル又は前記有機修飾ゲルを超音波処理した後で前記シリカゲル層を形成することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−221144(P2006−221144A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359430(P2005−359430)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】