説明

防水シート

【課題】防水シートの表面が三次元架橋型表面保護層を有するにもかかわらず、防水シートの端部同士の重ね貼り工法(ラッピング工法)が可能な新規な防水シートの提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂製防水シート基材(A)およびその上に設けられた三次元架橋型表面保護層(B)よりなる防水シートであって、該熱可塑性樹脂製防水シート同士または他の熱可塑性樹脂製部材とをその1部で重ね併せて接合するための端部領域として前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)を設けたことを特徴とする防水シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルの屋上や屋根などに使用できる防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モルタル下地などの下地上に熱可塑性樹脂シートやゴムシートなどの防水シートを施工する場合、防水シートの端部と隣の防水シートの端部の接合には、接着剤や熱溶着法が用いられている(特許文献1および2参照)。
また、近年、前記防水シートを施工した後、その表面に防水シートの紫外線劣化を防ぎ、耐久性、耐汚染性を向上させるため三次元架橋型表面保護層(紫外線硬化型樹脂や架橋型ポリウレタンを使用した層)を形成する傾向がある。
【0003】
しかしながら、前記三次元架橋型表面保護層が存在すると隣接する防水シートの端部同士を重ね合わせ、その重ね合わせ部を熱溶着法や溶剤によりその部分を溶解させて接着する溶剤接着法(以下、これらの方法をラッピング工法ということがある)を採用することはできず、接着剤の使用が必要となる。しかし、架橋型表面保護層は接着性に劣る為、良好な接合部を得ることは困難である。
【0004】
【特許文献1】特開昭57−046808号公報
【特許文献2】特開昭56−163363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、防水シートの表面が三次元架橋型表面保護層を有するにもかかわらず、熱溶着法や溶剤溶着法などの防水シート端部同士を重ねて貼り合わせるラッピング工法が可能な新規な防水シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、熱可塑性樹脂製防水シート基材(A)およびその上に設けられた三次元架橋型表面保護層(B)よりなる防水シートであって、該熱可塑性樹脂製防水シート同士または他の熱可塑性樹脂製部材とをその1部で重ね併せて接合するための端部領域として前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)を設けたことを特徴とする防水シートに関する。この1つの例を図5に示す。
本発明の第2は、前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域が、熱可塑性樹脂製防水シート基材のそれ以外の部分とは色が異なっているものである請求項1記載の防水シートに関する。
【0007】
前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)は、図1に示すように1枚のシートの4つの端部領域である場合、図2に示すように1枚のシートの3つの端部領域である場合、図3に示すように1枚のシートの2つの端部領域である場合、図4に示すように1枚のシートの1つの端部領域である場合がある。このうち、どれを選ぶかはその防水シートの使用される場所によって自と定まってくることである。
【0008】
前記三次元架橋型表面保護層(B)は、三次元架橋型樹脂をコーティング(塗布)することなどにより形成する。通常膜厚は5〜50μmである。
前記三次元架橋型樹脂としては、高山蹊男著「UV効果技術の進歩」、「プラスチック・機能性高分子材料事典」第658〜666頁、「プラスチック材料活用事典」第621〜622頁などに記載されているように、光ディクの保護層などにも用いられているウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどの他にポリウレタン系やアクリル系樹脂を用いることができるが、とくに制限はない。
【0009】
前記熱可塑性樹脂製防水シート基材(A)としては、ポリ塩化ビニルや、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂に代表される熱可塑性樹脂よりなるシートあるいは前記種々の熱可塑性樹脂の複合体、またはこれらのシートと織布または不織布との積層体などを挙げることができる。
【0010】
ラッピング工法を適用する端部領域は、通常熱可塑性樹脂製防水シート基材の端から20〜100mm程度、好ましくは30〜80mm程度、とくに好ましくは40〜60mm前後の幅をもつ部分を指す。
【0011】
ラッピング工法に使用する溶剤は熱可塑性樹脂製防水シート基材の樹脂を溶解させることのできるものであるから、熱可塑性樹脂製防水シート基材の樹脂により異なってくるが、塩化ビニル系樹脂の場合は、テトラハイドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトン等のエーテル類、酢酸エチル等を挙げることができる。
【0012】
前述のように熱可塑性樹脂製防水シート基材の溶剤接着用部分となる端部領域(C)は、三次元架橋型表面保護層が設けられている部分とは別の色とすることが好ましい。これにより一目で溶剤を適用する部分がわかるので、作業効率の向上に役立つ。別の色とするためには、図6に示すように、この部分のみ熱可塑性樹脂製防水シート基材を構成している樹脂と同一の樹脂または親和性の大きい別種の樹脂よりなる端部領域相当巾のシートであって、熱可塑性樹脂製防水シート基材とは異なった色をもつ熱可塑性樹脂製シート(C′)を、熱可塑性樹脂製防水シート基材の端部領域にラミネートしておくことが好ましい。前記異なった色をもつ熱可塑性樹脂製シートの厚みは0.05〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.3mmである。
【0013】
前記熱可塑性樹脂製防水シート基材(A)の厚さは1.0〜4.0mm、好ましくは1.5〜3.0mmである。巾は通常約900〜1800mmである。三次元架橋型表面保護層(B)の厚さは5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。
また、本発明の防水シートを施工するにあたっては、屋上の形状により、あるいは屋上に設置されている各種の構造物や設備により防水シートを任意の部分で切断しその切断端部を他の防水シートと接合する必要が生じてくる。つまり三次元架橋型表面保護層が形成されている部分で接合する必要も生じる。そのような場所は熱や溶剤、接着剤による接合が困難であるので、その部分の三次元架橋型表面保護層を剥離する必要が生じる。
この剥離手段としてはサンドペーパーなどで機械的に切削除去する方法、あるいは強アルカリ性の剥離剤(例えばアミン系化合物、アニオン系の界面活性剤)などを用いる化学的手段で剥離除去する方法が適用できる。
【発明の効果】
【0014】
従来は、熱可塑性樹脂製防水シート基材表面に三次元架橋型表面保護層をもつ防水シートは、溶剤による接合や熱による接合が不可能で、接着剤を使用しなければならなかったが、本発明のものは溶剤による接合や、熱による接合が可能であるため、作業時間が大幅に節約でき、またコストも引き下げることができた。
また、端部領域の色を変えることにより、施工対象部分が明確化し、作業効率を大幅に向上できる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0016】
実施例1
塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダーで圧延し、厚さ2.0mm、巾1200mm、長さ10mの長尺状のシートを作り、これを防水シート基材とした。この防水シート基材の表面に、長さ方向の両端のそれぞれ巾60mmの部分を除いてアクリルウレタン樹脂系紫外線硬化組成物を塗布し、紫外線を照射して該組成物を硬化させて三次元架橋型表面保護層を形成した。
この防水シートを屋上に施工した。施工にあたりまず第1番目に施工した防水シートをその基材側をコンクリート下地にウレタン樹脂系接着剤で貼り付け、次いで三次元架橋型表面保護層が形成されていない部分の上に、隣接する第2番目の防水シートの端部裏面を重ね、重なり部分を加熱して第1番目と第2番目の防水シートを溶融させ、圧着して端部同士を接合した。尚、三次元架橋型表面保護層が形成されている部分で接合する必要な箇所については、サンドペーパーで機械的に三次元架橋型表面保護層を切削除去し、以後同様にして第n番目の防水シートと接合した。
施工後の防水シートは端部の接合強度も良好であり、三次元架橋型表面保護層が形成されているので耐久性も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)が、1枚の放水シートの4つの端部領域である場合を示す。
【図2】前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)が、1枚の放水シートの3つの端部領域である場合を示す。
【図3】前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)が、1枚の放水シートの2つの端部領域である場合を示す。
【図4】前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)が、1枚の放水シートの1つの端部領域である場合を示す。
【図5】図1におけるX−X線部分の断面図であって、熱可塑性樹脂製防水シート基材の端部領域(C)が、三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている状態を示す。
【図6】図5における防水シート基材の端部領域が、熱可塑性樹脂製防水シート基材を構成している樹脂と同一の樹脂または親和性の大きい別種の樹脂よりなる端部領域相当巾の熱可塑性樹脂製シート(C′)がラミネートされている防水シートの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製防水シート基材(A)およびその上に設けられた三次元架橋型表面保護層(B)よりなる防水シートであって、該熱可塑性樹脂製防水シート同士または他の熱可塑性樹脂製部材とをその1部で重ね併せて接合するための端部領域として前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域(C)を設けたことを特徴とする防水シート。
【請求項2】
前記三次元架橋型表面保護層が存在せず熱可塑性樹脂製防水シート基材がむき出しになっている端部領域が、熱可塑性樹脂製防水シート基材のそれ以外の部分とは色が異なっているものである請求項1記載の防水シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−230201(P2008−230201A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76967(P2007−76967)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000133076)株式会社タジマ (34)
【Fターム(参考)】