説明

防水構造、及び端末装置

【課題】パッキンにケーブルをセットする作業の効率を向上しつつ、防水構造を小型化する。
【解決手段】筐体(1・2)の内から外へ貫通するケーブル引き出し部の防水構造であって、筐体(1・2)を貫通して形成され、複数本のケーブル4を挿通するための挿通孔14(24)と、複数本のケーブル4を等間隔に固定する固定部6と、固定部6を覆うように成型され、挿通孔14(24)に圧入されるパッキン5と、からなる。固定部6は、ケーブル4を固定する位置が1本ごと交互に入れ替わる配置となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内から外へ貫通するケーブル引き出し部の防水構造と、その防水構造を備える端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防水構造を備える折り畳み型の端末装置において、浸水可能なヒンジ部と筐体間の防水用のパッキンに穴を設け、その穴にケーブルを通すようにしている(例えば特許文献1参照)。このようなケーブルを通す穴を有するパッキンの製造方法はケーブルとパッキンを一体成型するか、穴を開けたパッキンを製造し、後から穴にケーブルを通すようにする。
【特許文献1】特開2004−47968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、折り畳み型の携帯端末は、使用しないときには折り畳むことで小型化できるという長所を持つ反面、ヒンジ部を有するため、防水に対応するためには大型化したり構造が複雑になったりするという問題がある。
その対応策として、特許文献1のように、浸水可能なヒンジ部と筐体間の防水用のパッキンに穴を設け、その穴にケーブルを通すことで、パッキンにより防水を図っている。
【0004】
しかしながら、ケーブルを通す穴を有するパッキンの製造方法として、例えばケーブルとパッキンを一体成型する方法をとる場合は、ケーブルを等間隔に揃えるのが難しく、また、先に穴を開けたパッキンを製造し、後から穴にケーブルを通す方法をとる場合では、防水のために穴はケーブル径より細く開けられるため、ケーブルに穴を通す工程が難しいという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、パッキンにケーブルをセットする作業の効率を向上しつつ、防水構造を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、筐体の内から外へ貫通するケーブル引き出し部の防水構造であって、筐体を貫通して形成され、複数本のケーブルを挿通するための挿通孔と、前記複数本のケーブルを等間隔に固定する固定部と、前記固定部を覆うように成型され、前記挿通孔に圧入されるパッキンと、からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水構造であって、前記固定部は、前記ケーブルを固定する位置が1本ごと交互に入れ替わる配置となっていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の防水構造であって、前記固定部は、互いに嵌合する対をなす2つの金具からなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の防水構造であって、前記挿通孔は、前記筐体の内側が狭くなっていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、第一の筐体と第二の筐体がヒンジ部を介して折り畳み可能に連結された端末装置であって、前記第一の筐体と前記ヒンジ部の間の前記ケーブル引き出し部、及び前記第二の筐体と前記ヒンジ部の間の前記ケーブル引き出し部に、請求項1から4のいずれか一項に記載の防水構造を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の端末装置であって、前記第一の筐体及び前記第二の筐体は、各々合体される対をなす2つのケースからなり、前記対をなす2つのケースの周縁部間に防水のために配される環状のパッキンと、請求項1に記載の前記パッキンを一体化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パッキンにケーブルをセットする作業の効率が向上するとともに、防水構造の小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明を適用した端末装置の一実施形態の構成として折り畳み可能な携帯電話を開いた状態を示したもので、図2はその筐体内部等のケーブル配線を示したものであり、1は第一の筐体、2は第二の筐体、3はヒンジ部、4はケーブル、5はパッキンである。
【0014】
図示のように、第一の筐体1と第二の筐体2はヒンジ部3を介して折り畳み可能(開閉可能)に結合され、第一の筐体1に図略のキー入力部が設けられて、第二の筐体2に図略の表示部が設けられている。第一の筐体1は、対をなす下ケース11及び上ケース12を図略した環状のパッキンを介し防水して合体され、第二の筐体2も、対をなす下ケース21及び上ケース22を図略した環状のパッキンを介し防水して合体されている。なお、図2において、13は第一の筐体1の下ケース11に設けたパッキン溝、23は第二の筐体2の下ケース21に設けたパッキン溝である。
【0015】
図示例において、ヒンジ部3は、2軸ヒンジユニット30で構成されている。すなわち、2軸ヒンジユニット30は、第一の筐体1と第二の筐体2を折り畳み可能に結合するヒンジ軸31と、このヒンジ軸31と軸線を直交して配置され、第一の筐体1に対し第二の筐体2を回転自在に結合する回転支軸32とを備えている。ヒンジ軸31は、ブラケット33で第一の筐体1の下ケース11にパッキン溝13の外側で固定され、回転支軸32は、ブラケット33と一体化されていて、別のブラケット34で第二の筐体2の下ケース21にパッキン溝23の固定されている。
【0016】
そして、第一の筐体1の内部と第二の筐体2との内部とにわたり2軸ヒンジユニット30の内部を通してケーブル4が配設されている。すなわち、図示のように、10本のケーブル4が、第一の筐体1の下ケース11に貫通して形成した横長の挿通孔14と、第二の筐体2の下ケース21に貫通して形成した横長の挿通孔24を挿通するとともに、2軸ヒンジユニット30の回転支軸32の中空部内及びブラケット33の一端部内を各々挿通して配設されている。なお、ケーブル4の第一の筐体1の下ケース11内の一端部にはコネクタ41が備えられ、ケーブル4の第二の筐体2の下ケース21内の他端部にはコネクタ42が備えられている。
【0017】
10本のケーブル4は、第一の筐体1の下ケース11の挿通孔14と、第二の筐体2の下ケース21の挿通孔24とにおいて、パッキン5を各々介して引き出されている。
【0018】
図3は図1の第一の筐体1のケーブル4の引き出し部で破断して拡大したもので、図4はそのケーブル4の引き出し部をさらに拡大して示しており、6は固定部であるインサート金具、7は環状のパッキンである。すなわち、パッキン5には、10本のケーブル4の固定部であるインサート金具6がインサート成型されている。なお、パッキン溝13には環状のパッキン7がセットされている。
【0019】
挿通孔14は、図3及び図4に示したように、第一の筐体1の内側の上下間隔が狭くなっている。
【0020】
パッキン5は、図5にも示すように、外周に2本のシールリップ51が形成されている。
【0021】
インサート金具6は、図6に示すように、横に細長い板状部に10本のケーブル4を等間隔で1本ずつカシメ付けにより各々保持するケーブル保持部61を一体に備えたもので、そのケーブル保持部61が1本ごと前後方向に交互に入れ替わる配置となっている。
【0022】
このように10本のケーブル4をケーブル保持部61にそれぞれ保持して並べたインサート金具6を、図示しない成型金型にセットしてラバーを注入充填することでパッキン5を成型する。
【0023】
以上の10本のケーブル4のパッキン5を、第一の筐体1の下ケース11の挿通孔14に対し外側から圧入する。
【0024】
なお、第二の筐体2の下ケース21の挿通孔24も同様に、第二の筐体2の内側の上下間隔が狭くなっており、その挿通孔24にも同様に、10本のケーブル4のパッキン5が圧入されている。
【0025】
以上、実施形態の携帯電話によれば、第一の筐体1及び第二の筐体2を貫通する10本のケーブル4を挿通する挿通孔14・24と、10本のケーブル4を等間隔に固定するインサート金具6と、そのインサート金具6をインサート成型した、挿通孔14・24に圧入されるパッキン5と、からなる防水構造にしたことで、パッキンにケーブル4を1本ずつセットすることが不要になり、従って、パッキンにケーブルをセットする作業の効率が向上するとともに、防水構造の小型化が図れる。
【0026】
そして、インサート金具6のケーブル保持部61により、ケーブル4を固定する位置を1本ごと交互に入れ替えるようにしたことで、ケーブル4の間隔を狭くすることができ、従って、より小型化できる。
【0027】
さらに、挿通孔14・24は筐体1・2の内側の上下間隔が狭くなっているので、筐体1・2の外側からパッキン5をそれぞれ圧入する際に、挿通孔14・24内でパッキン5を容易に止めることができる。
【0028】
また、第一の筐体1とヒンジ部3の間及び、第二の筐体2とヒンジ部3の間において、それぞれパッキン5を介してケーブル4を引き出す防水構造にしたことで、非防水の携帯電話と構造差異の少ない携帯電話を製造することができる。
【0029】
(実施形態2)
図7は図5のパッキン5部の内部構造として実施形態2を示したもので、8は固定部であるインサート金具であり、図8はそのインサート金具8を分解して示したものである。
【0030】
すなわち、実施形態2において、インサート金具8は、図示のように、横に細長い板状部の前後片に10本のケーブル4を等間隔で1本ずつ挿通して保持するケーブル保持溝81を形成して、横に細長い板状部の左右端に湾曲変形させた係止片82を一体に備えたものである。このようなインサート金具8が上下一対用意される。
【0031】
図8に示すように、10本のケーブル4を下側のインサート金具8のケーブル保持溝81にそれぞれ保持して並べてから、上側からもう1つのインサート金具8のケーブル保持溝81にケーブル4をそれぞれ保持させるとともに、両端の係止片82どうしをその湾曲変形によるばね性を活かして互いに嵌め合わせて、ケーブル4を上下のケーブル保持溝81間に押えながら対をなすインサート金具8どうしを嵌合する。
【0032】
以上の上下一対のインサート金具8を、図示しない成型金型にセットしてラバーを注入充填することでパッキン5を成型する。
【0033】
以上の10本のケーブル4のパッキン5を、第一の筐体1及び第二の筐体2の下ケース11・21の挿通孔14・24に対し外側からそれぞれ圧入する。
【0034】
以上、実施形態2の防水構造によれば、10本のケーブル4を上下から嵌合する2つのインサート金具8のケーブル保持溝81で保持するようにしたことで、前述した実施懈怠1のようなカシメ付けを必要とするインサート金具6の場合と比較して、組み立てが容易になる。
【0035】
そして、上下から嵌合する2つのインサート金具8からなる固定部の周りに一様なラバー厚みによるパッキン5が形成されることから、挿通孔14・24にパッキン5を圧入した際の圧縮率を安定させやすくして、安定した防水構造が得られる。
【0036】
(実施形態3)
図9は筐体2内部とケーブル4のパッキン5及びコネクタ42として実施形態3を示したもので、9は環状のパッキンであり、図10はそのケーブル4のパッキン5及びコネクタ42を拡大して示したものである。
【0037】
すなわち、実施形態3は、図示のように、第二の筐体2の下ケース21のパッキン溝23にセットされる環状のパッキン9を、10本のケーブル4のパッキン5と一体成型したものである。
【0038】
なお、環状のパッキン9は、図示のように、ケーブル4のパッキン5の上下に分かれて形成されるため、ケーブル4のパッキン5が圧入される挿通孔24は、下ケース21及び上ケース22の合わせ面にパッキン溝23を含んで形成されている。
【0039】
以上、実施形態3の携帯電話によれば、下ケース21及び上ケース22の間を防水するために周縁部に配される環状のパッキン9と、10本のケーブル4の引き出し部のパッキン5とを一体化したことにより、機密性が高く、組立性、スペース効率に優れる。
【0040】
ここで、第一の筐体1の下ケース11のパッキン溝13にセットされる環状のパッキン7についても、10本のケーブル4のパッキン5と一体成型してもよい。
【0041】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書、その他の端末装置すべてに用いることができる。
また、実施形態では、2軸ヒンジとしたが、折り畳みのみの1軸ヒンジであってもよい。
さらに、ケーブルをヒンジ部品の中空軸等に挿通した状態でインサート成型してパッキンを得るようにしてもよい。
また、ケーブルの本数、パッキン及び固定部の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を適用した端末装置の一実施形態の構成を示すもので、折り畳み可能な携帯電話を開いた状態を示した斜視図である。
【図2】図1の筐体内部等のケーブル配線を示した図である。
【図3】図1の第一の筐体のケーブル引き出し部で破断した拡大図である。
【図4】図3のケーブル引き出し部をさらに拡大して示した図である。
【図5】図2のケーブルのパッキン部及びコネクタ部の拡大図である。
【図6】図5のパッキン部の内部構造をさらに拡大して示した図である。
【図7】図5のパッキン部の内部構造を示すもので、実施形態2を示した斜視図である。
【図8】図7の金具を分解して示した図である。
【図9】筐体内部とケーブルのパッキン部及びコネクタ部を示すもので、実施形態3を示した分解斜視図である。
【図10】図9のケーブルのパッキン部及びコネクタ部の拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
1 第一の筐体
11 下ケース
12 上ケース
13 パッキン溝
14 挿通孔
2 第二の筐体
21 下ケース
22 上ケース
23 パッキン溝
24 挿通孔
3 ヒンジ部
30 2軸ヒンジユニット
31 ヒンジ軸
32 回転支軸
33・34 ブラケット
4 ケーブル
41・42 コネクタ
5 パッキン
51 シールリップ
6 インサート金具
61 ケーブル保持部
7 環状のパッキン
8 インサート金具
81 ケーブル保持溝
82 係止片
9 環状のパッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内から外へ貫通するケーブル引き出し部の防水構造であって、
筐体を貫通して形成され、複数本のケーブルを挿通するための挿通孔と、
前記複数本のケーブルを等間隔に固定する固定部と、
前記固定部を覆うように成型され、前記挿通孔に圧入されるパッキンと、からなることを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記固定部は、前記ケーブルを固定する位置が1本ごと交互に入れ替わる配置となっていることを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記固定部は、互いに嵌合する対をなす2つの金具からなることを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項4】
前記挿通孔は、前記筐体の内側が狭くなっていることを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項5】
第一の筐体と第二の筐体がヒンジ部を介して折り畳み可能に連結された端末装置であって、
前記第一の筐体と前記ヒンジ部の間の前記ケーブル引き出し部、及び前記第二の筐体と前記ヒンジ部の間の前記ケーブル引き出し部に、請求項1から4のいずれか一項に記載の防水構造を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項6】
前記第一の筐体及び前記第二の筐体は、各々合体される対をなす2つのケースからなり、
前記対をなす2つのケースの周縁部間に防水のために配される環状のパッキンと、請求項1に記載の前記パッキンを一体化したことを特徴とする請求項5に記載の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−114126(P2010−114126A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282985(P2008−282985)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】