防火性中空パネル及び防火性屋根構造
【課題】防火性とりわけ耐飛び火性能に優れ、飛び火の熱で溶融樹脂が落滴したり貫通孔を生じたりする恐れがない防火性中空パネルと、この中空パネルを用いた防火性屋根構造を提供する。
【解決手段】パネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部1eが形成された合成樹脂製の中空パネル本体1と、この中空パネル本体のパネル裏面層1bに積層一体化された不燃性無孔層2とからなる防火性中空パネルPとする。飛び火で中空パネル本体1が部分的に溶融しても溶融樹脂が不燃性無孔層2の上に溜まって落滴することがなく、防火性中空パネルPの厚み全体を貫く貫通孔も生じないので、耐飛び火性能が向上する。防火性屋根構造は、上記の防火性中空パネルPを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けた構成とする。
【解決手段】パネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部1eが形成された合成樹脂製の中空パネル本体1と、この中空パネル本体のパネル裏面層1bに積層一体化された不燃性無孔層2とからなる防火性中空パネルPとする。飛び火で中空パネル本体1が部分的に溶融しても溶融樹脂が不燃性無孔層2の上に溜まって落滴することがなく、防火性中空パネルPの厚み全体を貫く貫通孔も生じないので、耐飛び火性能が向上する。防火性屋根構造は、上記の防火性中空パネルPを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性とりわけ耐飛び火性能に優れた防火性中空パネルと、この中空パネルを用いた防火性屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋根葺き材として透光性の合成樹脂中空パネルを使用したトップライトなどの採光屋根を設ける家屋が増えてきた。けれども、合成樹脂中空パネルは、近隣家屋に火災が発生した場合、飛び火により溶融して穴があき、防火性に劣るという問題があった。
【0003】
そのため、建築基準法に定める飛び火試験(財団法人 日本建築総合試験所 建築確認評定センターで行われる,方法書「4.13屋根葺き材の飛び火性能試験・評価方法」)に合格する屋根構造が必要な場合には、合成樹脂中空パネルの下方にガラス板を配置することが提案されている(特許文献1)が、重量が大きいガラス板を屋根に設けることは耐震性の観点から問題があり、しかも、ガラス板は火災時の熱で破損し易いため破片が落下する危険性もある。
【0004】
そこで、本出願人は、樹脂又はガラス表面材と不燃性開孔材を、上下に重ねて若しくは上下に間隔をあけて配置した屋根構造を提案した(特許文献2)。このような屋根構造であると、樹脂表面材が飛び火により溶融しても、溶融樹脂の大部分が不燃性開孔材で受け止められ、また、ガラス表面材が破損しても、その破片の大部分が不燃性開孔材で受け止められるので、落下の危険性は激減する。
【特許文献1】特開平7−3954号公報
【特許文献2】特開2006−97460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の屋根構造は、樹脂又はガラス表面材の下側に配置されるものが多数の開孔を有する不燃性開孔材であるため、飛び火によって溶融した溶融樹脂の一部が不燃性開孔材の開孔から落滴したり、小さなガラス破片が不燃性開孔材の開孔から落下する危険性は、多少なりとも残っており、まだ改良の余地があった。
【0006】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、防火性とりわけ耐飛び火性能に優れ、飛び火の熱で溶融樹脂が落滴したり貫通孔を生じたりする恐れがない防火性中空パネルと、この中空パネルを用いた防火性屋根構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る防火性中空パネルは、パネル表面層とパネル裏面層との間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部が形成された合成樹脂製の中空パネル本体と、この中空パネル本体のパネル裏面層に積層一体化された不燃性無孔層とからなることを特徴とするものである。
【0008】
そして、本発明に係る防火性屋根構造は、本発明の防火性中空パネルを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の防火性中空パネルにおいては、中空パネル本体が透光性のパネルであり、不燃性無孔層が透光性の層であることが好ましい。また、不燃性無孔層は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布よりなる層であることが好ましい。そして、中空パネル本体の長さ方向両端の開口が、封止部材によって、又は、パネル表面層とパネル裏面層の端部同士の融着によって、閉塞されていることが好ましく、更に、中空パネル本体の両側端に沿って、中空パネル本体の裏面側に突き出す中空凸条が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の防火性屋根構造においては、中空凸条が両側端に沿って形成された上記の防火性中空パネルを複数枚並べると共に、連結条材として、防火性中空パネルの中空凸条が嵌め込まれる凸条受部を中央仕切り板の両側に備えた連結条材を使用し、隣接する防火性中空パネルの中空凸条を連結条材の中央仕切り板両側の凸条受部に嵌め込んで防火性中空パネル同士を連結することが好ましい。そして、連結条材の中央仕切り板の防火性中空パネルから上方へ突き出した突出部分にパネル押さえ材を被着し、パネル押さえ材の下端両側の押さえ片によって、連結された防火性中空パネルの側端縁を押さえることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防火性中空パネルのように、合成樹脂製の中空パネル本体のパネル裏面層に不燃性無孔層が積層一体化されていると、飛び火によって中空パネル本体の樹脂が部分的に溶融しても、裏面の不燃性無孔層は飛び火によって燃えたり孔があいたりしないので、この不燃性無孔層の上に溶融樹脂が溜まり、不燃性無孔層から落滴する恐れはなくなる。また、本発明の防火性中空パネルは、飛び火によって中空パネル本体に貫通孔が生じても、不燃性無孔層にまで孔があいて防火性中空パネルの厚み全体に亘る貫通孔を生じることがないので、充分な耐飛び火性能を備えている。
【0012】
そして、中空パネル本体が透光性のパネルであり、不燃性無孔層が透光性の層である防火性中空パネルは、採光用の屋根葺き材として賞用され、更に、不燃性無孔層が樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布よりなる層である防火性中空パネルは、ガラス織布又はガラス不織布の量が200g/m2程度と少なくても、飛び火によって燃えたり孔があいたりすることなく、確実に溶融樹脂の落滴を阻止できるので、例えば、不燃性無孔層として金属板などを使用する場合に比べると、防火性中空パネルの重量増加を大幅に抑えることができる。
【0013】
また、中空パネル本体の長さ方向両端の開口が、封止部材によって、又は、パネル表面層とパネル裏面層の端部同士の融着によって、閉塞されている防火性中空パネルは、中空部の空気の流通がないため、火災時には燃焼の拡大を遅らせる効果があり、常時には断熱や結露防止の効果を発揮することができる。更に、中空パネル本体の両側端に沿って、中空パネル本体の裏面側に突き出す中空凸条が形成されている防火性中空パネルは、この中空凸条を利用して、後述するようにパネル同士を特定の連結条材で簡単かつ確実に連結できる利点がある。
【0014】
一方、本発明の防火性屋根構造のように、上述した本発明の防火性中空パネルを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けると、防火性中空パネルによって優れた耐飛び火性能が発揮されることは勿論であるが、これに加えて、前記特許文献2の屋根構造のように、表面材と不燃性開孔材を上下に重ねて又は上下に間隔をあけて、それぞれ配置、固定する必要がないため、施工性が向上するようになる。
【0015】
特に、中空凸条が両側端に沿って形成された前記の防火性中空パネルを複数枚並べ、連結条材として凸条受部を中央仕切り板の両側に備えた連結条材を使用し、隣接する防火性中空パネルの中空凸条を連結条材の凸条受部に嵌め込んで防火性中空パネル同士を連結した防火性屋根構造は、防火性中空パネルの連結作業が簡単で確実に連結できるため、施工性が大幅に向上する利点がある。そして、連結条材の中央仕切り板の防火性中空パネルから上方へ突き出した突出部分にパネル押さえ材を被着し、パネル押さえ材の下端両側の押さえ片によって、連結された防火性中空パネルの側端縁を押さえた防火性屋根構造は、強風時に防火性中空パネルに負圧が作用したとしても、パネル押さえ材によって中空パネルの浮き上がりが阻止されるので、中空パネル両側端の中空凸条が連結条材から外れる心配がなくなり、また、パネル押さえ材の押さえ片と防火性中空パネルの側端縁との間に防水パッキンを挟めば、雨水が中空パネル相互の連結部分から連結条材の凸条受部に侵入するのを防止することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る防火性中空パネルの部分斜視図、図2は図1のD−D線拡大断面図、図3は同防火性中空パネルの端部拡大縦断面図である。
【0018】
この防火性中空パネルPは、図2,図3に示すように、透光性を有する合成樹脂製の中空パネル本体1と、この中空パネル本体1のパネル裏面層1bに積層一体化された不燃性無孔層2とからなる。
【0019】
中空パネル本体1は、パネル表面層1aとパネル裏面層1bを、パネル長さ方向一端から他端まで延びる互いに平行な複数のリブ1cを介して連結すると共に、パネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に薄い中間層1dを複数層(本実施形態では2層)設け、これらのパネル表面層1a、パネル裏面層1b、リブ1c、中間層1dによって囲まれた多数のパネル長さ方向に貫通する中空部1eをパネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に形成したものである。
【0020】
中空パネル本体1の各部の寸法は特に限定されないが、中空パネルの本来の軽量性等の長所を損なわないで屋根葺き材としての実用的な強度を付与するためには、パネル表面層1a、パネル裏面層1b、リブ1cの厚みを0.2〜2mm程度とし、リブ1cの相互間隔を10〜40mm程度とし、中空パネル本体1の全体の厚みを5〜30mm程度とし、中間層1dの厚さを0.05〜0.2mm程度とし、中間層1dの層数を1〜4層程度とすることが好ましい。なお、中間層1dは省略してもよい。
【0021】
この中空パネル本体1の両側端には、中空パネル本体1の裏面側に突き出す中空凸条1fがパネル長さ方向一端から他端まで形成されている。この中空凸条1fは、中空パネル本体1の撓み強度を高めると共に、パネル連結作業を容易かつ確実に行うために設けられたものであって、後述するように、連結条材7の中央仕切り板両側の凸条受部7bに嵌まり込む寸法の脚形に形成されている。
【0022】
中空パネル本体1の材料樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートその他のエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンその他のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルその他のビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレートその他のアクリル系樹脂など、種々の熱可塑性合成樹脂を使用することができるが、その中でも、透光性、耐候性、熱変形性(加工性)などに優れたポリカーボネートが特に好ましく使用される。
【0023】
中空パネル本体1のパネル裏面層1bに積層一体化される不燃性無孔層2は、飛び火によって中空パネル本体1が部分的に溶融しても、溶融樹脂の落滴を防止する共に、防火性中空パネルPの厚み全体に亘る貫通孔が生じないようにして、耐飛び火性能を高める役目を果たすものである。斯かる不燃性無孔層2としては、金属プレート、金属箔、ガラス繊維シート、カーボン繊維シート、不燃紙などが使用可能であるが、採光用の軽量な屋根葺き材として使用される防火性中空パネルを得るためには、透光性のガラス繊維シートが適しており、その中でも、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布が好ましく使用される。塗布もしくは含浸させる樹脂は、熱硬化性、熱可塑性(例えばエステル系、アクリル系)を問わずどのような樹脂でもよいが、好ましくは自消性、難燃性の樹脂(例えば塩化ビニル系、フッ素系、アミド系等の樹脂、あるいは、リン系等の難燃剤を含む樹脂など)、更に好ましくはシリコーン系樹脂のような耐火性の樹脂が使用される。このような樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布やガラス不織布は、パネル裏面層1bに貼着することによって剥離しないように簡単且つ確実に積層一体化することができ、しかも、ガラス織布やガラス不織布の量を200g/m2程度と少なくし、塗布もしくは含浸する樹脂を30g/m2程度と少なくして、不燃性無孔層2を薄肉軽量化しても、飛び火によって燃えたり孔があいたりすることなく、確実に溶融樹脂の落滴を阻止できる利点がある。本発明にいう「不燃性無孔層」とは、中空パネル本体1の溶融した樹脂の落滴を防止することが困難な孔が存在しない層を意味しており、従って、溶融した樹脂の落滴を十分阻止できるほど細かい網目を有する金属メッシュ(例えばステンレスメッシュ)等からなる層は、本発明にいう「不燃性無孔層」に包含される。
【0024】
この防火性中空パネルPの長さ方向両端には、図1,図3に示すように、封止部材3が設けられており、この封止部材3によって中空パネル本体1の長さ方向両端の開口が閉塞されている。封止部材3としては、アルミテープ等の金属テープが好ましく使用される。このように中空パネル本体1の両端の開口が封止部材3で閉塞され、中空部1eの空気の流通が阻止されていると、断熱効果や結露防止効果が発揮されるだけでなく、火災時の熱で中空パネル本体1から発生した可燃性成分(気体や液体)が、中空パネル本体1の中空部1eを通じて端部に到達したときに周囲の空気中の酸素と熱で発火するのを抑制し、燃焼の拡大を遅らせる効果があるので好ましい。
【0025】
この防火性中空パネルPは、上記のように封止部材3で中空パネル本体1の両端の開口を閉塞しているが、図4に示す防火性中空パネルP1のように、パネル裏面層1bの長さ方向両端の端縁部1gをパネル表面層1aに接近する方向に鈍角に折り曲げ、パネル表面層1aとパネル裏面層1bの端部同士を融着、接合することによって、中空パネル本体1の端部開口を閉塞してもよい。
【0026】
このように融着により端部開口を閉塞した中空パネル本体1は、例えば、次の方法、即ち、長尺の中空の原料パネルを、そのパネル裏面層1bを上側にして支持台上に固定し、原料パネルの長さ方向中間部の少なくとも一箇所と両端部を、下部がV形断面形状を有する熱圧着具で上側から熱圧着して熱圧着と同時に原料パネルを熱圧着箇所で幅方向に溶断する方法により、簡単に得ることができる。
【0027】
次に、図5〜図11を参照して、上記の防火性中空パネルPを用いた本発明の防火性屋根構造を説明する。
【0028】
図5は上記の防火性中空パネルPを用いた本発明の一実施形態に係る防火性屋根構造の平面図、図6は図5のA−A線拡大部分断面図、図7は同防火性屋根構造に用いる連結条材とパネル押さえ材の断面図、図8は図5のB−B線概略断面図、図9は図8の円(a)で囲んだ部分の拡大図、図10は図8の円(b)で囲んだ部分の拡大図、図11は図5のC−C線拡大部分断面図である。
【0029】
この防火性屋根構造は、上記の防火性中空パネルを用いて、図5,図8に示すような防火性トップライトを構築する場合を例示したものである。即ち、図8に示すように、屋根の開口部4の周囲には、方形の枠フレーム5が複数の支持材6に支持されて若干の勾配をもって一段高く取付けられており、この方形の枠フレーム5には、連結条材7で連結された上記の防火性中空パネルPが水切り材8を介して取付けられている。
【0030】
この水切り材8は、図9,図10,図11に示すように、水平板部8aと、この水平板部8aの内側端から立ち上がる起立板部8bと、この水平板部8aの外側端から垂れ下がる垂下板部8cとを備えたアルミニウム型材からなるものであり、水平板部8aが枠フレーム5に重ねられてビス9aで固定されている。この水切り材8の起立板部8bには、連結条材7を嵌め込む凹部(図には表れていない)が形成されており、図9,図10に示すように、連結条材7の両端近傍部が上記凹部に嵌め込まれてL形金具10とビス9bで固定されている。そして、起立板部8bの上端縁には防水パッキン11が被着され、この防水パッキン11が防火性中空パネルPの裏面の不燃性無孔層2に当接して雨水の侵入を防止している。
【0031】
連結条材7は、図6,図7に示すように、中央仕切り板7aの両側に防火性中空パネルPの中空凸条1fが嵌め込まれる凸条受部7bを備えた、断面形状が略「山」字形のアルミニウム型材からなるものであって、中央仕切り板7aの上端部7cは「T」字形の断面形状を備えている。そして、中央仕切り板7aの下端には、後述する押縁材14を取付けるビス9cがねじ込まれる筒部7dが形成されており、この筒部7dの上方には、防火性中空パネルPの中空凸条1fを支える支持片7eが中央仕切り板7aから両側へ突設されている。また、この連結条材7の左右側壁部7fの上端には、防火性中空パネルPの側端部を支える支持片7gが内側に向かって突設されており、この支持片7gの先端部は、防火性中空パネルPの中空凸条1fを凸条受部7bに嵌め込み易くするために、斜め下方へ屈曲されている。
【0032】
防火性中空パネルPの連結は、図6に示すように、双方の中空パネルPの中空凸条1fを連結条材7の中央仕切り板7aの両側の凸条受部7bに嵌め込むと共に、中央仕切り板7aの防火性中空パネルPから上方へ突き出した突出部分(T形の上端部7c)に、アルミニウム型材からなるパネル押さえ材12を長さ方向にスライドさせながら上方に離脱不能に被着し、このパネル押さえ材12の下端両側の押さえ片12aで双方の防火性中空パネルPの側端縁を上方から押さえることによって行われており、この押さえ片12aと防火性中空パネルPの側端縁のパネル表面層1aとの間には防水パッキン13が挟み込まれている。従って、強風時に防火性中空パネルPに負圧が作用しても、パネル押さえ材12によって中空パネルPの浮き上がりが阻止されるので、中空パネル両側端の中空凸条1fが連結条材7の凸条受部7bから上方に抜け出す心配がなく、また、防水パッキン13によって防火性中空パネルPの連結部分から雨水が連結凸条7の凸条受部7bに侵入する心配もない。
【0033】
連結条材7の中央仕切り板7aの両端部は、連結条材7の左右側壁部7fと同じ高さにカットされており、これに対応して、図9,図10に示すようにパネル押さえ材12の両端部の下半部もカットされている。そして、このカットされた部分に、略逆L字形断面形状を有するアルミニウム型材からなる押縁材14の上板部14aを挿入して防火性中空パネルPの前後端縁を押さえると共に、この押縁材14の縦板部14bを、連結条材7の前記筒部7dにねじ込んだビス9cで連結条材7の前後の端面にスペーサ15を介して取付けることによって、防火性中空パネルPの前後の端仕舞処理が行われている。更に、押縁材14の縦板部14bの下端部と前記水切り材8の垂下板部8cとの間には防水パッキン16が詰められており、雨水が縦板部14bと垂下板部8cの間から吹き込まないようになっている。
【0034】
一方、防火性中空パネルPの側端の端仕舞処理は、図11に示すように、中央仕切り板7aを側壁部7fの高さにそろえて切断した連結条材70を用いて、防火性中空パネルPの側端の中空凸条1fを該連結凸条70の中央仕切り板7aより外側の凸条受部7bに嵌め込み、防火性中空パネルPの側端縁のパネル表面層1aを防水パッキン17を介して押縁材14の上板部14aで上方から押さえると共に、押縁材14の縦板部14bをビス9cで連結条材7の側壁部7fに固定することによって行われている。そして、押縁材14の縦板部14bの下端部と水切り材8の垂下板部8cとの間には、上記と同様に防水パッキン16が詰められ、雨水が縦板部14bと垂下板部8cとの間から吹き込まないようになっている。
【0035】
尚、図8において、17は開口部4を取り囲む台枠材、18は折版屋根材であり、また、図8〜図11において、19は方形の枠フレーム5にビスで固定された水切り材である。
【0036】
以上のような構造のトップライトは、透光性の中空パネル本体1のパネル裏面層1bに透光性の不燃性無孔層2を積層一体化した防火性中空パネルPを屋根葺き材として使用するため、常時は良好な採光性を発揮し、一方、近隣家屋の火災時に飛び火によって中空パネル本体1が部分的に溶融しても、溶融樹脂が不燃性無孔層2の上に溜まって落滴することがなく、また、防火性中空パネルPの厚み全体に亘る貫通孔が生じることもないので、優れた耐飛び火性能を発揮する。特に、中空パネルPの端部開口を閉塞したものは、燃焼の拡大を抑えることができるので、防火性が更に向上する。しかも、このトップライトは、使用する防火性中空パネルPが軽量で取扱い易い上に、中空パネル本体1と不燃性無孔層2を別々に枠フレーム5に取り付ける必要がなく、既述したように連結条材7を用いて簡単に連結でき、前後端の端仕舞処理や側端の端仕舞処理も既述したように簡単に行えるので、施工性に優れており、また、連結部分や端仕舞処理した部分から雨水が侵入することもないので、防水性にも優れているなど、多くの効果を奏する。
【0037】
尚、厚み16mm、質量2.9kg/m2のポリカーボネート樹脂製の中空パネル本体のパネル裏面層に、両面をシリコーン系樹脂で塗装した質量230.2g/m2の平織りのガラス織布[シリコーン系樹脂(固形分)32.2g/m2、ガラス織布198g/m2]からなる不燃性無孔層を積層一体化した防火性中空パネルについて、財団法人 日本建築総合試験所 建築確認評定センターに、当該財団法人が制定した「防耐火性能試験・評価業務方法書」の「4.13屋根葺き材の飛び火性能試験・評価方法」に基づく屋根葺き材飛び火性能試験を依頼したところ、「技術的基準に適合」という評価結果が得られ、本発明の防火性中空パネルが基準に適合する耐飛び火性能を有するものであることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る防火性中空パネルの部分斜視図である。
【図2】図1のD−D線拡大断面図である。
【図3】同防火性中空パネルの端部拡大縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る防火性中空パネルの部分拡大縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る防火性中空パネルを用いた防火性屋根構造の平面図である。
【図6】図5のA−A線拡大部分断面図である。
【図7】同防火性屋根構造に用いる連結条材とパネル押さえ材の断面図である。
【図8】図5のB−B線概略断面図である。
【図9】図8の円(a)で囲んだ部分の拡大図である。
【図10】図8の円(b)で囲んだ部分の拡大図である。
【図11】図5のC−C線拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 中空パネル本体
1a パネル表面層
1b パネル裏面層
1c リブ
1d 中間層
1e 中空部
1f 中空凸部
2 不燃性無孔層
3 金属テープ(封止部材)
5 枠フレーム(フレーム材)
7,70 連結条材
7a 中央仕切り板
7b 凸条受部
7c 中央仕切り板のT字形の上端部(突出部分)
7d ビスがねじ込まれる筒部
8,19 水切り材
12 パネル押さえ材
12a 押さえ片
14 押縁材
P,P1 防火性中空パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性とりわけ耐飛び火性能に優れた防火性中空パネルと、この中空パネルを用いた防火性屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋根葺き材として透光性の合成樹脂中空パネルを使用したトップライトなどの採光屋根を設ける家屋が増えてきた。けれども、合成樹脂中空パネルは、近隣家屋に火災が発生した場合、飛び火により溶融して穴があき、防火性に劣るという問題があった。
【0003】
そのため、建築基準法に定める飛び火試験(財団法人 日本建築総合試験所 建築確認評定センターで行われる,方法書「4.13屋根葺き材の飛び火性能試験・評価方法」)に合格する屋根構造が必要な場合には、合成樹脂中空パネルの下方にガラス板を配置することが提案されている(特許文献1)が、重量が大きいガラス板を屋根に設けることは耐震性の観点から問題があり、しかも、ガラス板は火災時の熱で破損し易いため破片が落下する危険性もある。
【0004】
そこで、本出願人は、樹脂又はガラス表面材と不燃性開孔材を、上下に重ねて若しくは上下に間隔をあけて配置した屋根構造を提案した(特許文献2)。このような屋根構造であると、樹脂表面材が飛び火により溶融しても、溶融樹脂の大部分が不燃性開孔材で受け止められ、また、ガラス表面材が破損しても、その破片の大部分が不燃性開孔材で受け止められるので、落下の危険性は激減する。
【特許文献1】特開平7−3954号公報
【特許文献2】特開2006−97460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の屋根構造は、樹脂又はガラス表面材の下側に配置されるものが多数の開孔を有する不燃性開孔材であるため、飛び火によって溶融した溶融樹脂の一部が不燃性開孔材の開孔から落滴したり、小さなガラス破片が不燃性開孔材の開孔から落下する危険性は、多少なりとも残っており、まだ改良の余地があった。
【0006】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、防火性とりわけ耐飛び火性能に優れ、飛び火の熱で溶融樹脂が落滴したり貫通孔を生じたりする恐れがない防火性中空パネルと、この中空パネルを用いた防火性屋根構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る防火性中空パネルは、パネル表面層とパネル裏面層との間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部が形成された合成樹脂製の中空パネル本体と、この中空パネル本体のパネル裏面層に積層一体化された不燃性無孔層とからなることを特徴とするものである。
【0008】
そして、本発明に係る防火性屋根構造は、本発明の防火性中空パネルを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の防火性中空パネルにおいては、中空パネル本体が透光性のパネルであり、不燃性無孔層が透光性の層であることが好ましい。また、不燃性無孔層は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布よりなる層であることが好ましい。そして、中空パネル本体の長さ方向両端の開口が、封止部材によって、又は、パネル表面層とパネル裏面層の端部同士の融着によって、閉塞されていることが好ましく、更に、中空パネル本体の両側端に沿って、中空パネル本体の裏面側に突き出す中空凸条が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の防火性屋根構造においては、中空凸条が両側端に沿って形成された上記の防火性中空パネルを複数枚並べると共に、連結条材として、防火性中空パネルの中空凸条が嵌め込まれる凸条受部を中央仕切り板の両側に備えた連結条材を使用し、隣接する防火性中空パネルの中空凸条を連結条材の中央仕切り板両側の凸条受部に嵌め込んで防火性中空パネル同士を連結することが好ましい。そして、連結条材の中央仕切り板の防火性中空パネルから上方へ突き出した突出部分にパネル押さえ材を被着し、パネル押さえ材の下端両側の押さえ片によって、連結された防火性中空パネルの側端縁を押さえることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防火性中空パネルのように、合成樹脂製の中空パネル本体のパネル裏面層に不燃性無孔層が積層一体化されていると、飛び火によって中空パネル本体の樹脂が部分的に溶融しても、裏面の不燃性無孔層は飛び火によって燃えたり孔があいたりしないので、この不燃性無孔層の上に溶融樹脂が溜まり、不燃性無孔層から落滴する恐れはなくなる。また、本発明の防火性中空パネルは、飛び火によって中空パネル本体に貫通孔が生じても、不燃性無孔層にまで孔があいて防火性中空パネルの厚み全体に亘る貫通孔を生じることがないので、充分な耐飛び火性能を備えている。
【0012】
そして、中空パネル本体が透光性のパネルであり、不燃性無孔層が透光性の層である防火性中空パネルは、採光用の屋根葺き材として賞用され、更に、不燃性無孔層が樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布よりなる層である防火性中空パネルは、ガラス織布又はガラス不織布の量が200g/m2程度と少なくても、飛び火によって燃えたり孔があいたりすることなく、確実に溶融樹脂の落滴を阻止できるので、例えば、不燃性無孔層として金属板などを使用する場合に比べると、防火性中空パネルの重量増加を大幅に抑えることができる。
【0013】
また、中空パネル本体の長さ方向両端の開口が、封止部材によって、又は、パネル表面層とパネル裏面層の端部同士の融着によって、閉塞されている防火性中空パネルは、中空部の空気の流通がないため、火災時には燃焼の拡大を遅らせる効果があり、常時には断熱や結露防止の効果を発揮することができる。更に、中空パネル本体の両側端に沿って、中空パネル本体の裏面側に突き出す中空凸条が形成されている防火性中空パネルは、この中空凸条を利用して、後述するようにパネル同士を特定の連結条材で簡単かつ確実に連結できる利点がある。
【0014】
一方、本発明の防火性屋根構造のように、上述した本発明の防火性中空パネルを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けると、防火性中空パネルによって優れた耐飛び火性能が発揮されることは勿論であるが、これに加えて、前記特許文献2の屋根構造のように、表面材と不燃性開孔材を上下に重ねて又は上下に間隔をあけて、それぞれ配置、固定する必要がないため、施工性が向上するようになる。
【0015】
特に、中空凸条が両側端に沿って形成された前記の防火性中空パネルを複数枚並べ、連結条材として凸条受部を中央仕切り板の両側に備えた連結条材を使用し、隣接する防火性中空パネルの中空凸条を連結条材の凸条受部に嵌め込んで防火性中空パネル同士を連結した防火性屋根構造は、防火性中空パネルの連結作業が簡単で確実に連結できるため、施工性が大幅に向上する利点がある。そして、連結条材の中央仕切り板の防火性中空パネルから上方へ突き出した突出部分にパネル押さえ材を被着し、パネル押さえ材の下端両側の押さえ片によって、連結された防火性中空パネルの側端縁を押さえた防火性屋根構造は、強風時に防火性中空パネルに負圧が作用したとしても、パネル押さえ材によって中空パネルの浮き上がりが阻止されるので、中空パネル両側端の中空凸条が連結条材から外れる心配がなくなり、また、パネル押さえ材の押さえ片と防火性中空パネルの側端縁との間に防水パッキンを挟めば、雨水が中空パネル相互の連結部分から連結条材の凸条受部に侵入するのを防止することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る防火性中空パネルの部分斜視図、図2は図1のD−D線拡大断面図、図3は同防火性中空パネルの端部拡大縦断面図である。
【0018】
この防火性中空パネルPは、図2,図3に示すように、透光性を有する合成樹脂製の中空パネル本体1と、この中空パネル本体1のパネル裏面層1bに積層一体化された不燃性無孔層2とからなる。
【0019】
中空パネル本体1は、パネル表面層1aとパネル裏面層1bを、パネル長さ方向一端から他端まで延びる互いに平行な複数のリブ1cを介して連結すると共に、パネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に薄い中間層1dを複数層(本実施形態では2層)設け、これらのパネル表面層1a、パネル裏面層1b、リブ1c、中間層1dによって囲まれた多数のパネル長さ方向に貫通する中空部1eをパネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に形成したものである。
【0020】
中空パネル本体1の各部の寸法は特に限定されないが、中空パネルの本来の軽量性等の長所を損なわないで屋根葺き材としての実用的な強度を付与するためには、パネル表面層1a、パネル裏面層1b、リブ1cの厚みを0.2〜2mm程度とし、リブ1cの相互間隔を10〜40mm程度とし、中空パネル本体1の全体の厚みを5〜30mm程度とし、中間層1dの厚さを0.05〜0.2mm程度とし、中間層1dの層数を1〜4層程度とすることが好ましい。なお、中間層1dは省略してもよい。
【0021】
この中空パネル本体1の両側端には、中空パネル本体1の裏面側に突き出す中空凸条1fがパネル長さ方向一端から他端まで形成されている。この中空凸条1fは、中空パネル本体1の撓み強度を高めると共に、パネル連結作業を容易かつ確実に行うために設けられたものであって、後述するように、連結条材7の中央仕切り板両側の凸条受部7bに嵌まり込む寸法の脚形に形成されている。
【0022】
中空パネル本体1の材料樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートその他のエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンその他のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルその他のビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレートその他のアクリル系樹脂など、種々の熱可塑性合成樹脂を使用することができるが、その中でも、透光性、耐候性、熱変形性(加工性)などに優れたポリカーボネートが特に好ましく使用される。
【0023】
中空パネル本体1のパネル裏面層1bに積層一体化される不燃性無孔層2は、飛び火によって中空パネル本体1が部分的に溶融しても、溶融樹脂の落滴を防止する共に、防火性中空パネルPの厚み全体に亘る貫通孔が生じないようにして、耐飛び火性能を高める役目を果たすものである。斯かる不燃性無孔層2としては、金属プレート、金属箔、ガラス繊維シート、カーボン繊維シート、不燃紙などが使用可能であるが、採光用の軽量な屋根葺き材として使用される防火性中空パネルを得るためには、透光性のガラス繊維シートが適しており、その中でも、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布が好ましく使用される。塗布もしくは含浸させる樹脂は、熱硬化性、熱可塑性(例えばエステル系、アクリル系)を問わずどのような樹脂でもよいが、好ましくは自消性、難燃性の樹脂(例えば塩化ビニル系、フッ素系、アミド系等の樹脂、あるいは、リン系等の難燃剤を含む樹脂など)、更に好ましくはシリコーン系樹脂のような耐火性の樹脂が使用される。このような樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布やガラス不織布は、パネル裏面層1bに貼着することによって剥離しないように簡単且つ確実に積層一体化することができ、しかも、ガラス織布やガラス不織布の量を200g/m2程度と少なくし、塗布もしくは含浸する樹脂を30g/m2程度と少なくして、不燃性無孔層2を薄肉軽量化しても、飛び火によって燃えたり孔があいたりすることなく、確実に溶融樹脂の落滴を阻止できる利点がある。本発明にいう「不燃性無孔層」とは、中空パネル本体1の溶融した樹脂の落滴を防止することが困難な孔が存在しない層を意味しており、従って、溶融した樹脂の落滴を十分阻止できるほど細かい網目を有する金属メッシュ(例えばステンレスメッシュ)等からなる層は、本発明にいう「不燃性無孔層」に包含される。
【0024】
この防火性中空パネルPの長さ方向両端には、図1,図3に示すように、封止部材3が設けられており、この封止部材3によって中空パネル本体1の長さ方向両端の開口が閉塞されている。封止部材3としては、アルミテープ等の金属テープが好ましく使用される。このように中空パネル本体1の両端の開口が封止部材3で閉塞され、中空部1eの空気の流通が阻止されていると、断熱効果や結露防止効果が発揮されるだけでなく、火災時の熱で中空パネル本体1から発生した可燃性成分(気体や液体)が、中空パネル本体1の中空部1eを通じて端部に到達したときに周囲の空気中の酸素と熱で発火するのを抑制し、燃焼の拡大を遅らせる効果があるので好ましい。
【0025】
この防火性中空パネルPは、上記のように封止部材3で中空パネル本体1の両端の開口を閉塞しているが、図4に示す防火性中空パネルP1のように、パネル裏面層1bの長さ方向両端の端縁部1gをパネル表面層1aに接近する方向に鈍角に折り曲げ、パネル表面層1aとパネル裏面層1bの端部同士を融着、接合することによって、中空パネル本体1の端部開口を閉塞してもよい。
【0026】
このように融着により端部開口を閉塞した中空パネル本体1は、例えば、次の方法、即ち、長尺の中空の原料パネルを、そのパネル裏面層1bを上側にして支持台上に固定し、原料パネルの長さ方向中間部の少なくとも一箇所と両端部を、下部がV形断面形状を有する熱圧着具で上側から熱圧着して熱圧着と同時に原料パネルを熱圧着箇所で幅方向に溶断する方法により、簡単に得ることができる。
【0027】
次に、図5〜図11を参照して、上記の防火性中空パネルPを用いた本発明の防火性屋根構造を説明する。
【0028】
図5は上記の防火性中空パネルPを用いた本発明の一実施形態に係る防火性屋根構造の平面図、図6は図5のA−A線拡大部分断面図、図7は同防火性屋根構造に用いる連結条材とパネル押さえ材の断面図、図8は図5のB−B線概略断面図、図9は図8の円(a)で囲んだ部分の拡大図、図10は図8の円(b)で囲んだ部分の拡大図、図11は図5のC−C線拡大部分断面図である。
【0029】
この防火性屋根構造は、上記の防火性中空パネルを用いて、図5,図8に示すような防火性トップライトを構築する場合を例示したものである。即ち、図8に示すように、屋根の開口部4の周囲には、方形の枠フレーム5が複数の支持材6に支持されて若干の勾配をもって一段高く取付けられており、この方形の枠フレーム5には、連結条材7で連結された上記の防火性中空パネルPが水切り材8を介して取付けられている。
【0030】
この水切り材8は、図9,図10,図11に示すように、水平板部8aと、この水平板部8aの内側端から立ち上がる起立板部8bと、この水平板部8aの外側端から垂れ下がる垂下板部8cとを備えたアルミニウム型材からなるものであり、水平板部8aが枠フレーム5に重ねられてビス9aで固定されている。この水切り材8の起立板部8bには、連結条材7を嵌め込む凹部(図には表れていない)が形成されており、図9,図10に示すように、連結条材7の両端近傍部が上記凹部に嵌め込まれてL形金具10とビス9bで固定されている。そして、起立板部8bの上端縁には防水パッキン11が被着され、この防水パッキン11が防火性中空パネルPの裏面の不燃性無孔層2に当接して雨水の侵入を防止している。
【0031】
連結条材7は、図6,図7に示すように、中央仕切り板7aの両側に防火性中空パネルPの中空凸条1fが嵌め込まれる凸条受部7bを備えた、断面形状が略「山」字形のアルミニウム型材からなるものであって、中央仕切り板7aの上端部7cは「T」字形の断面形状を備えている。そして、中央仕切り板7aの下端には、後述する押縁材14を取付けるビス9cがねじ込まれる筒部7dが形成されており、この筒部7dの上方には、防火性中空パネルPの中空凸条1fを支える支持片7eが中央仕切り板7aから両側へ突設されている。また、この連結条材7の左右側壁部7fの上端には、防火性中空パネルPの側端部を支える支持片7gが内側に向かって突設されており、この支持片7gの先端部は、防火性中空パネルPの中空凸条1fを凸条受部7bに嵌め込み易くするために、斜め下方へ屈曲されている。
【0032】
防火性中空パネルPの連結は、図6に示すように、双方の中空パネルPの中空凸条1fを連結条材7の中央仕切り板7aの両側の凸条受部7bに嵌め込むと共に、中央仕切り板7aの防火性中空パネルPから上方へ突き出した突出部分(T形の上端部7c)に、アルミニウム型材からなるパネル押さえ材12を長さ方向にスライドさせながら上方に離脱不能に被着し、このパネル押さえ材12の下端両側の押さえ片12aで双方の防火性中空パネルPの側端縁を上方から押さえることによって行われており、この押さえ片12aと防火性中空パネルPの側端縁のパネル表面層1aとの間には防水パッキン13が挟み込まれている。従って、強風時に防火性中空パネルPに負圧が作用しても、パネル押さえ材12によって中空パネルPの浮き上がりが阻止されるので、中空パネル両側端の中空凸条1fが連結条材7の凸条受部7bから上方に抜け出す心配がなく、また、防水パッキン13によって防火性中空パネルPの連結部分から雨水が連結凸条7の凸条受部7bに侵入する心配もない。
【0033】
連結条材7の中央仕切り板7aの両端部は、連結条材7の左右側壁部7fと同じ高さにカットされており、これに対応して、図9,図10に示すようにパネル押さえ材12の両端部の下半部もカットされている。そして、このカットされた部分に、略逆L字形断面形状を有するアルミニウム型材からなる押縁材14の上板部14aを挿入して防火性中空パネルPの前後端縁を押さえると共に、この押縁材14の縦板部14bを、連結条材7の前記筒部7dにねじ込んだビス9cで連結条材7の前後の端面にスペーサ15を介して取付けることによって、防火性中空パネルPの前後の端仕舞処理が行われている。更に、押縁材14の縦板部14bの下端部と前記水切り材8の垂下板部8cとの間には防水パッキン16が詰められており、雨水が縦板部14bと垂下板部8cの間から吹き込まないようになっている。
【0034】
一方、防火性中空パネルPの側端の端仕舞処理は、図11に示すように、中央仕切り板7aを側壁部7fの高さにそろえて切断した連結条材70を用いて、防火性中空パネルPの側端の中空凸条1fを該連結凸条70の中央仕切り板7aより外側の凸条受部7bに嵌め込み、防火性中空パネルPの側端縁のパネル表面層1aを防水パッキン17を介して押縁材14の上板部14aで上方から押さえると共に、押縁材14の縦板部14bをビス9cで連結条材7の側壁部7fに固定することによって行われている。そして、押縁材14の縦板部14bの下端部と水切り材8の垂下板部8cとの間には、上記と同様に防水パッキン16が詰められ、雨水が縦板部14bと垂下板部8cとの間から吹き込まないようになっている。
【0035】
尚、図8において、17は開口部4を取り囲む台枠材、18は折版屋根材であり、また、図8〜図11において、19は方形の枠フレーム5にビスで固定された水切り材である。
【0036】
以上のような構造のトップライトは、透光性の中空パネル本体1のパネル裏面層1bに透光性の不燃性無孔層2を積層一体化した防火性中空パネルPを屋根葺き材として使用するため、常時は良好な採光性を発揮し、一方、近隣家屋の火災時に飛び火によって中空パネル本体1が部分的に溶融しても、溶融樹脂が不燃性無孔層2の上に溜まって落滴することがなく、また、防火性中空パネルPの厚み全体に亘る貫通孔が生じることもないので、優れた耐飛び火性能を発揮する。特に、中空パネルPの端部開口を閉塞したものは、燃焼の拡大を抑えることができるので、防火性が更に向上する。しかも、このトップライトは、使用する防火性中空パネルPが軽量で取扱い易い上に、中空パネル本体1と不燃性無孔層2を別々に枠フレーム5に取り付ける必要がなく、既述したように連結条材7を用いて簡単に連結でき、前後端の端仕舞処理や側端の端仕舞処理も既述したように簡単に行えるので、施工性に優れており、また、連結部分や端仕舞処理した部分から雨水が侵入することもないので、防水性にも優れているなど、多くの効果を奏する。
【0037】
尚、厚み16mm、質量2.9kg/m2のポリカーボネート樹脂製の中空パネル本体のパネル裏面層に、両面をシリコーン系樹脂で塗装した質量230.2g/m2の平織りのガラス織布[シリコーン系樹脂(固形分)32.2g/m2、ガラス織布198g/m2]からなる不燃性無孔層を積層一体化した防火性中空パネルについて、財団法人 日本建築総合試験所 建築確認評定センターに、当該財団法人が制定した「防耐火性能試験・評価業務方法書」の「4.13屋根葺き材の飛び火性能試験・評価方法」に基づく屋根葺き材飛び火性能試験を依頼したところ、「技術的基準に適合」という評価結果が得られ、本発明の防火性中空パネルが基準に適合する耐飛び火性能を有するものであることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る防火性中空パネルの部分斜視図である。
【図2】図1のD−D線拡大断面図である。
【図3】同防火性中空パネルの端部拡大縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る防火性中空パネルの部分拡大縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る防火性中空パネルを用いた防火性屋根構造の平面図である。
【図6】図5のA−A線拡大部分断面図である。
【図7】同防火性屋根構造に用いる連結条材とパネル押さえ材の断面図である。
【図8】図5のB−B線概略断面図である。
【図9】図8の円(a)で囲んだ部分の拡大図である。
【図10】図8の円(b)で囲んだ部分の拡大図である。
【図11】図5のC−C線拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 中空パネル本体
1a パネル表面層
1b パネル裏面層
1c リブ
1d 中間層
1e 中空部
1f 中空凸部
2 不燃性無孔層
3 金属テープ(封止部材)
5 枠フレーム(フレーム材)
7,70 連結条材
7a 中央仕切り板
7b 凸条受部
7c 中央仕切り板のT字形の上端部(突出部分)
7d ビスがねじ込まれる筒部
8,19 水切り材
12 パネル押さえ材
12a 押さえ片
14 押縁材
P,P1 防火性中空パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル表面層とパネル裏面層との間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部が形成された合成樹脂製の中空パネル本体と、この中空パネル本体のパネル裏面層に積層一体化された不燃性無孔層とからなることを特徴とする防火性中空パネル。
【請求項2】
中空パネル本体が透光性のパネルであり、不燃性無孔層が透光性の層である請求項1に記載の防火性中空パネル。
【請求項3】
不燃性無孔層が、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布よりなる層である請求項1又は請求項2に記載の防火性中空パネル。
【請求項4】
中空パネル本体の長さ方向両端の開口が、封止部材によって、又は、パネル表面層とパネル裏面層の端部同士の融着によって、閉塞されている請求項1ないし請求項3に記載の防火性中空パネル。
【請求項5】
中空パネル本体の両側端に沿って、中空パネル本体の裏面側に突き出す中空凸条が形成されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の防火性中空パネル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の防火性中空パネルを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けたことを特徴とする防火性屋根構造。
【請求項7】
請求項5に記載の防火性中空パネルを複数枚並べると共に、連結条材として、防火性中空パネルの中空凸条が嵌め込まれる凸条受部を中央仕切り板の両側に備えた連結条材を使用し、隣接する防火性中空パネルの中空凸条を連結条材の中央仕切り板両側の凸条受部に嵌め込んで防火性中空パネル同士を連結したことを特徴とする請求項6に記載の防火性屋根構造。
【請求項8】
連結条材の中央仕切り板の防火性中空パネルから上方へ突き出した突出部分にパネル押さえ材を被着し、パネル押さえ材の下端両側の押さえ片によって、連結された防火性中空パネルの側端縁を押さえたことを特徴とする請求項7に記載の防火性屋根構造。
【請求項1】
パネル表面層とパネル裏面層との間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部が形成された合成樹脂製の中空パネル本体と、この中空パネル本体のパネル裏面層に積層一体化された不燃性無孔層とからなることを特徴とする防火性中空パネル。
【請求項2】
中空パネル本体が透光性のパネルであり、不燃性無孔層が透光性の層である請求項1に記載の防火性中空パネル。
【請求項3】
不燃性無孔層が、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス織布、又は、樹脂を塗布もしくは含浸したガラス不織布よりなる層である請求項1又は請求項2に記載の防火性中空パネル。
【請求項4】
中空パネル本体の長さ方向両端の開口が、封止部材によって、又は、パネル表面層とパネル裏面層の端部同士の融着によって、閉塞されている請求項1ないし請求項3に記載の防火性中空パネル。
【請求項5】
中空パネル本体の両側端に沿って、中空パネル本体の裏面側に突き出す中空凸条が形成されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の防火性中空パネル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の防火性中空パネルを複数枚並べて連結条材で連結し、屋根のフレーム材に取付けたことを特徴とする防火性屋根構造。
【請求項7】
請求項5に記載の防火性中空パネルを複数枚並べると共に、連結条材として、防火性中空パネルの中空凸条が嵌め込まれる凸条受部を中央仕切り板の両側に備えた連結条材を使用し、隣接する防火性中空パネルの中空凸条を連結条材の中央仕切り板両側の凸条受部に嵌め込んで防火性中空パネル同士を連結したことを特徴とする請求項6に記載の防火性屋根構造。
【請求項8】
連結条材の中央仕切り板の防火性中空パネルから上方へ突き出した突出部分にパネル押さえ材を被着し、パネル押さえ材の下端両側の押さえ片によって、連結された防火性中空パネルの側端縁を押さえたことを特徴とする請求項7に記載の防火性屋根構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−133101(P2009−133101A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309722(P2007−309722)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
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