説明

防爆構造を備えたエレベータ用巻き上げ機

【課題】エレベータ用巻き上げ機において、電動機のケーシングを肥大化させることなく、最低限のケーシングで、防爆規格に適合させるとともに、ブレーキ装置の保守点検を外部からスムースに行えるようにする。
【解決手段】エレベータの巻き上げ機は、電動機の駆動軸に同軸状に固定されて一体に回転するブレーキドラムの両側に対向して配置され、その外周面に形成した摩擦面に対し、ブレーキシューを圧接させる制動位置と、開放する開放位置との間で揺動可能な一対のブレーキアームを備えている。ブレーキアームを開放位置に駆動する電磁駆動装置のケーシングを、特定の防爆規格に適合する強度、剛性を備えた構造とする。このケーシングに、特定の防爆規格に適合するとともに、ブレーキアームの駆動に連動して、内部に収容された電磁駆動装置の動作を感知するスイッチを押圧するスイッチ押圧装置を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ用巻き上げ機に関し、特に防爆構造を備えたエレベータ用巻き上げ機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化学工場関係やプラント関係などにおいて、取り扱われる可燃性ガス・蒸気などが大気に放出・漏洩され、空気と混合して爆発性雰囲気を形成した場合、電気機器が着火源となって、爆発事故につながる可能性がある。
そこで、特に、このように、爆発性ガスの発生する危険場所で使用されるエレベータには、各種の防爆規格に適合させる必要がある。
こうしたエレベータの巻き上げ機については、全閉構造であって、爆発性雰囲気が容器の内部に侵入して爆発が生じた場合、容器が爆発圧力に耐え、かつ爆発による火炎が容器の外部の爆発性雰囲気に点火しないようにした耐圧防爆構造とするのが一般的である。
【0003】
エレベータ用巻き上げ機は、大きく分けて、エレベータのメインロープが巻き掛けられるシーブ、これを駆動する電動機、電動機とシーブとを機構的に連結する減速装置及びエレベータを所定階に停止させるためのブレーキ装置とから構成される。
減速機とシーブはそもそも構造的に高い強度が求められており、さらに外部の爆発性雰囲気の着火原因となるような火花や過熱も発生しないので、爆発の着火源となることはなく、しかも、それ自体電気部品の範疇に属さないので、防爆規格への適合を検討する必要はない。
また、電動機については、そもそも個別にケーシングを備えており、このケーシングの強度、剛性を防爆規格に適合するように設計すればよい。
【0004】
ところで、ブレーキ装置としては、下記特許文献1にみられるように、電動機の回転軸を反出力側に延出し、その周囲に設けた円板体を電磁駆動装置で駆動されるブレーキシューで制動する型式と、下記特許文献2、特許文献3にみられるように、電動機の出力側回転軸に同軸上に固定されたブレーキドラムの外周にブレーキシューを配置し、このブレーキアームを介して電磁駆動装置でこのブレーキシューで制動する型式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−195342号公報
【特許文献2】特開2010−202375号公報
【特許文献3】特開2011−63434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の型式の場合、電動機のケーシングで一体的に覆うことで防爆規格に適合できるが、そのためには、回転軸の反出力側に設けたブレーキ装置全体を覆うように電動機のケーシングを拡大させる必要があり、電動機ケーシングの大型化、コストアップを招いていた。
特に、近年、エレベータの落下事故を反映して、エレベータ用巻き上げ機に2系統のブレーキ装置を配備することが求められるようになったことから、電動機ケーシングをさらに大型化せざるを得ない状況にある。
しかも、こうしたブレーキ装置には安全管理上、定期検査が求められているが、このように、防爆規格に適合したケーシング内のブレーキ装置を保守点検するために、重量のある開閉蓋を毎回取り外して、限られた時間内で点検作業を行わなければならないことから、作業負担がきわめて高いという問題があった。
【0007】
一方、後者の形式の場合、ブレーキドラム、ブレーキアーム自体は電気部品の範疇に属さないが、防爆検定の特例として、検査対象として扱われている。しかし、これらは、そもそも設計上非常に高い強度、剛性が要求されているため、制動時の温度上昇が所定値を超えることはないという条件をクリアできれば、防爆規格に適合するものとされており、検証実験の結果、温度上昇については、防爆規格取得時に安全性に問題のないことが確認されている。
一方、このブレーキアームを駆動するための電磁石を含む電磁駆動装置については、設計上所定の強度、剛性を有する全閉構造の鋼製容器などに収容することにより、防爆規格に適合する耐圧防爆構造とすることができる。また、この型式のブレーキ装置では、ブレーキドラムの周囲に2系統のブレーキを配置することにより、ブレーキシューの点検及び調整が容易になり上述の安全基準にも適合することができる。
【0008】
しかし、上述したブレーキ装置の動作状態を常に確認するためには、電磁駆動装置によるブレーキアームの作動を確認するためのマイクロスイッチを、ブレーキアーム周辺に設置する必要があるが、こうしたマイクロスイッチ自体、爆発の着火源となり得る電気部品の範疇に属し、電気的接点のスムースなオンオフを維持した上で、防爆規格に適合させるのは非常に困難であり、全閉かつ耐圧防爆構造の専用ケーシングや接点を開発するなど、非常に高価なものになってしまう。しかも、マイクロスイッチと電磁駆動装置が、それぞれ別個の全閉ケーシングに収容されるため、両ケーシングの耐圧防爆構造を維持しながら、両者の連携を確実に行うための機構の設計、設置場所の選定、さらには円滑な作動を実現するための調整が非常に困難なものとなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するため、電動機のケーシングを肥大化させることなく、最低限のケーシングで、防爆規格に適合させるとともに、ブレーキ装置の保守点検を外部からスムースに行えるエレベータ用巻き上げ機を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため本発明のエレベータ用巻き上げ機においては、次のような技術的手段を講じた。すなわち、電動機の駆動軸に同軸状に固定されて一体に回転するブレーキドラムと、該ブレーキドラムの両側に対向して配置され、前記ブレーキドラムの外周面に形成した摩擦面に対し、ブレーキシューを圧接させる制動位置と、開放する開放位置との間で揺動可能な一対のブレーキアームと、前記ブレーキアームの一端を付勢し、該ブレーキアームを前記制動位置に圧接させるスプリングと、前記ブレーキアームの他端に当接し、該ブレーキアームを前記開放位置に駆動する電磁駆動装置とを備えたエレベータの巻き上げ機において、前記電動機及び前記電磁駆動装置を収容するケーシングをそれぞれ特定の防爆規格に適合する強度、剛性を備えた構造とし、前記電磁駆動装置を収容するケーシングの内部に、該電磁駆動装置の動作を感知するスイッチを配設するとともに、前記電磁駆動装置を収容するケーシングに、前記特定の防爆規格に適合する強度、剛性を備え、かつ、外部からの作動力に応じて前記スイッチを押圧するスイッチ押圧装置を取り付け、前記電磁駆動装置の作動により、前記一対のブレーキアームが駆動されたのに連動して、前記スイッチ押圧装置を介して前記スイッチを作動させるロッドを、前記一対のブレーキアームの前記他端に配設した。
【0011】
また、上記のエレベータの巻き上げ機において、前記スイッチ押圧装置は、前記ロッドの押圧により前記マイクロスイッチを作動させる押圧シャフトと、前記電磁駆動装置を収容するケーシングの内壁に固定されるとともに、内部に前記押圧シャフトが挿通される隔壁が一体成型された円筒体を備えた本体とを有し、前記押圧シャフト及び前記本体が、前記防爆規格に適合する強度、剛性を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電磁ブレーキ装置により作動される2つのブレーキアームにより、2系統のブレーキを確保するとともに、電磁ブレーキ装置の動作を確認するためのスイッチを含め、エレベータの巻き上げ機の全体構造を所望の防爆規格に確実に適合させることができる。
さらには、ブレーキ動作を検知するスイッチに対し、別個に防爆規格に適合させる必要がなくなることから、エレベータの巻き上げ機のコストを低減できるとともに、保守点検の作業性を抜本的に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エレベータの全体構造を示す図。
【図2】巻き上げ機の正面図。
【図3】巻き上げ機の平面図。
【図4】電磁ブレーキを電動機の駆動軸方向からみた図。
【図5】マイクロスイッチ押圧構造の内部拡大図。
【図6】電磁駆動装置制御系の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面とともに説明する。
【実施例】
【0015】
図1はエレベータの全体構造、図2、図3は巻き上げ機の正面図、平面図をそれぞれ示す。
エレベータ1は、昇降路2の上端に専用の機械室3を備え、その内部に巻き上げ機4が設置されている。巻き上げ機4は、ワイヤロープ5を介して乗りかご6及び釣り合い重り7を昇降路2に吊り下げている。
【0016】
巻き上げ機4は、シーブ8を回転させることによりワイヤロープ5を巻き上げ、あるいは巻き戻すことで、乗りかご6及び釣り合い重り7を昇降路2に沿って昇降動させるものであり、図2、図3に示すように、巻き上げ機4は、機械室3内において、複数の支柱を組み合わせた機械台9に据え付けられている。
巻き上げ機4は、電動機10、歯車減速機11、ドラム式の電磁ブレーキ12を備え、電動機10の駆動軸は、ウォームシャフト、ウォームホイールなどからなる歯車減速機11を介してシーブ8に連結されている。
【0017】
電磁ブレーキ12は、乗りかご6を各階で停止させ、その状態を保持するためのものであり、電動機10と歯車減速機11との間に配置されており、電動機10の駆動軸方向からみた図4に示すように、ブレーキドラム13、一対のブレーキアームレバー14a、14b、ブレーキパッド15c、15dをそれぞれ有する一対のブレーキシュー15a、15b、電磁駆動装置16を備えている。
ブレーキドラム13は、電動機10の駆動軸に同軸状に固定されて、駆動軸と一体に回転するものであり、その外周面には、制動力を発生させる摩擦面が形成されている。
また、電磁駆動装置16は鉄心16aとその外周の電磁コイル16bとを備え、通電時、鉄心16aに一体に取り付けられたロッド16c、16dを介して、ブレーキアームレバー14a、14bの上端を引き込み、一対のブレーキシュー15a、15bのそれぞれを外方に駆動して、ブレーキドラム13を開放する。
【0018】
すなわち、ブレーキアーム14a、14bは、ブレーキドラム13の摩擦面の外周に対向して配置されており、その長手方向に沿い、機械台9側の下端部(図4下方側)と、電磁駆動装置16側の上端部(図4上方側)を有し、電磁駆動装置16側の端部より下方に設けられたアームレバーピン17a、17bにより、電磁駆動装置16のケーシング16eの下方に一体的に形成されたアーム16fに枢動可能に連結されている。
【0019】
ブレーキアーム14a、14bの下端部には開口が設けられ、この開口には、それぞれ、機械台9に設置されたスタッドボルト固定ブロック18に固設されたスタッドボルト18a、18bが挿通されている。なお、スタッドボルト固定ブロック18は、電動機10の駆動軸の直下に設置されており、それぞれ外方に延びるスタッドボルト18a、18bを備えている。
各開口から外側に突出したスタッドボルト18a、18bには、スプリング押さえ板18e、18fを介してコイルバネ18g、18hが挿入されており、スタッドボルト18a、18bに螺合するナットを回動して、スプリング押さえ板18e、18fの位置を調整することにより、コイルバネ18g、18hによる弾圧力を調整できるようになっている。なお、スプリング押さえ板18e、18fの位置は、目盛板18c、18dにより確認できるようになっている。
【0020】
コイルバネ18g、18hは、ブレーキアーム14a、14bの下端部をそれぞれ外方から内方に向けて所定の弾発力で押圧しているため、仮に電磁駆動装置16が停電や制御装置の異常により作動しなくなっても、ブレーキアーム14a、14bがアームレバーピン17a、17bを中心に枢動し、ブレーキシュー15a、15bをブレーキドラム13の摩擦面の外周を強力に押圧するので、ブレーキドラム13を確実に停止状態に維持できるようになっている。
【0021】
一方、ブレーキアーム14a、14bの上端部には、それぞれ電磁駆動装置16のロッド16c、16dの外端がそれぞれ嵌合しており、電磁駆動装置16に通電することにより、鉄心16aと電磁コイル16bの作用により、ロッド16c、16dを内側に引き込み、コイルバネ18g、18hの弾発力に抗して、ブレーキアーム14a、14bの下端部を外方に駆動して、ブレーキシュー15a、15bをブレーキドラム13の摩擦面から開放して、電動機10、歯車減速機11を介してシーブ8が回転駆動され、乗りかご6の昇降が行われる。
【0022】
図6は、電磁駆動装置16の制御系の概略を示すもので、通常運転時、乗りかご6に設けた接続箱を介して入力される、運転制御盤からの制御信号により、電磁駆動装置16の電磁コイル16bへの通電が制御され、特定の階に停止した乗りかご6を、次の階に上昇または下降させる際、ブレーキシュー15a、15bをブレーキドラム13の摩擦面から開放する。その作動に伴い、左右それぞれに設けられた、後述するマイクロスイッチ22が、ブレーキの動作を感知するようになっている。
【0023】
この実施例では、上記のように構成されたエレベータ用巻き上げ機を、所定の防爆規格に適合させるため、電動機10、歯車減速機11、電磁駆動装置16を覆う、それぞれのケーシングを所定の厚さを有する鋼鉄等で形成し、その防爆規格で規定された所定の強度、剛性を得るようにして耐圧防爆構造としている。
なお、前述のように、シーブ8はそもそも構造的に高い強度が求められており、ブレーキアーム14a、14b、電磁駆動装置16のロッド16c、16d、さらにはケーシング16eの下方に一体的に形成されたアーム16fなども、強力な制動力を発生させるものであることから、設計上の強度で防爆規格上の強度を十分にクリアすることができ、温度上昇面でも着火源となる値にはならないものである。
【0024】
一方、保守管理上義務付けられている電磁ブレーキ装置12の点検に関しては、電磁駆動装置16に通電して円滑に動作部分が動作するかは勿論であるが、ブレーキシュー15a、15bに貼りついている摩擦材15c、15dの厚みを測定し基準値以下で使用していないことを確認し、実際に十分な制動力が維持されているか否かを確認することが必要である。この電磁ブレーキ装置12は動作部分及びドラム13が開放されている為、防爆エリアでも容易に目視による確認及び測定ができ、スタッドボルト18a、18bに螺合するナットによりスプリング押さえ板18e、18fの位置を調整することで制動力を調整でき、その際のスプリング押さえ板18e、18fの位置を目盛板18c、18dで確認できる。
【0025】
本発明では、図4に示されているように、ブレーキシュー15a、15bの作動に伴いオンオフするマイクロスイッチ22を、電磁駆動装置16を覆うケーシング16eの内部に収納することにより、防護規格に適合させるもので、図5にマイクロスイッチ押圧構造の内部拡大図をそれぞれ示す。
ブレーキアーム14a、14b上端には、図4に示されるように、スイッチブラケット19がそれぞれ設けられており、このスイッチブラケット19は、ブレーキアーム14a、14bからケーシング16eに沿って上方に延び、ケーシング16eに向けて屈曲した後、ケーシング16eと所定の間隙を隔ててケーシング16eに対向するよう配置されている。スイッチブラケット19の上端には、位置調整可能なボルト式のロッド20が螺合されており、そのケーシング16e側の端部は、図5に示されるように、スイッチ押圧装置21のプッシュボタン21bに対向している。なお、プッシュボタン21bは、スイッチ押圧装置21の押圧シャフト21aの外端に取り付けられており、ブレーキアーム14a、14bの作動に連動して、ロッド20のケーシング16e側端部が、プッシュボタン21bを所定のストロークで押圧あるいは開放されるよう位置調整されている。
【0026】
図5に示されるように、スイッチ押圧装置21の本体の外周にネジ溝が形成され、外端(図5からみて右側端部)からやや内側に隔壁21dを有する円筒体21cとから形成され、円筒体21cの隔壁21dには、その中心から、押圧シャフト21aが挿通され、マイクロスイッチ22の方向に延びている。なお、この円筒体21cは、鋼鉄等の金属で一体的に成型されており、隔壁21dも含め、数mm程度の肉厚を有し、所定の防護規格で規定された種々の条件を十分クリアできる強度、剛性を備えた構造体となっている。
【0027】
スイッチ押圧装置21の本体は、電磁駆動装置16のケーシング16eの内側から、その円筒体21c外周に設けたネジ溝を、ケーシング16eに設けた開口に形成されたネジ溝に螺合させて、円筒体21cに一体成型されたフランジ部をケーシング16eの内壁に当接させた後、さらに、ケーシング16eの外側からナット21fを円筒体21cに設けたネジ溝に螺合させて締め付けるとともに、円筒体21cに一体成型されたフランジ部に設けたネジ穴を利用して、ボルトでケーシング16eの内壁に強固に取り付けられている。
【0028】
円筒体21cに挿通された押圧シャフト21aは、その隔壁21dから外側に突出した端部にプッシュボタン21bが一体的に取り付けられており、ケーシング16e内部側端部に形成した押圧部が、ケーシング16e内部において、円筒体21cと一体的に形成された取付ブラケット21eに取り付けられたマイクロスイッチ22のスイッチ端部22aに当接するよう位置決めされている。一方、隔壁21dと、押圧シャフト21aの外端に取り付けたプッシュボタン21bのバネ受けとの間には、スプリング21gが介挿されている。
【0029】
プッシュボタン21bを押圧したときには、スプリング21gが圧縮されるとともに、押圧シャフト21aの内部側端部がマイクロスイッチ22を作動させ、押圧を解除したときに、スプリング21gの弾発力により、プッシュボタン21bを復帰させて、円筒体21cの外端に形成したストッパに当接させることができる。
【0030】
また、電磁駆動装置16に通電することにより、ブレーキアーム14a、14bを外方に駆動して、ブレーキシュー15a、15bを摩擦面から開放した場合に、この動作に連動して、ブレーキアーム14a、14bの上端がアームレバーピン17aを介して内側に駆動され、スイッチブラケット19に設けられたロッド20がスプリング21jに抗してプッシュボタン21bを押圧する。これにより、ブレーキアーム14a、14bが適正に調節されているか否かを、押圧シャフト21aの内側ストロークによるマイクロスイッチ22の作動の有無で簡単に確認することができる。
なお、プッシュボタン21bを外方から手動で押圧することにより、マイクロスイッチ22自体の異常も簡単に点検することができる。
【0031】
上記の実施例では、電磁駆動装置16のケーシング16eの内部において、スイッチ押圧装置21によりブレーキアームの作動を検知するスイッチとして、マイクロスイッチ22を採用したが、電磁駆動装置16のケーシング16eにより防護されていることから、より安価な接点式スイッチなど、さまざまなスイッチを採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、電磁駆動装置16により作動される2つのブレーキアーム14a、14bにより、2系統のブレーキを確保するとともに、電磁駆動装置16の動作を確認するためのスイッチを含め、エレベータの巻き上げ機の全体構造を防爆規格に確実に適合させることができる。さらには、電動機のケーシング内に、ブレーキ動作を検知するスイッチを設ける必要がなくなることから、エレベータの巻き上げ機のコストを低減できるとともに、保守点検の作業性を抜本的に改善することができるので、爆発性ガスの発生する危険場所に設置されるエレベータのみならず、安全性、保守性の高いエレベータの巻き上げ機として広く採用されることが期待できる。
【符号の説明】
【0033】
1 エレベータ
2 昇降路
3 機械室
4 巻き上げ機
5 ワイヤロープ
6 乗りかご
7 釣り合い重り
8 シーブ
9 機械台
10 電動機
11 歯車減速機
12 ドラム式の電磁ブレーキ
13 ブレーキドラム
14a、14b ブレーキアームレバー
15a、15b ブレーキシュー
16 電磁駆動装置
17a、17b アームレバーピン
18 スタッドボルト
19 スイッチブラケット
20 ボルト式のロッド
21 スイッチ押圧装置
21a 押圧シャフト
21b プッシュボタン
21c 円筒体
21d 隔壁
22 マイクロスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動軸に同軸状に固定されて一体に回転するブレーキドラムと、
該ブレーキドラムの両側に対向して配置され、前記ブレーキドラムの外周面に形成した摩擦面に対し、ブレーキシューを圧接させる制動位置と、開放する開放位置との間で揺動可能な一対のブレーキアームと、
前記ブレーキアームの一端を付勢し、該ブレーキアームを前記制動位置に圧接させるスプリングと、
前記ブレーキアームの他端に当接し、該ブレーキアームを前記開放位置に駆動する電磁駆動装置とを備えたエレベータの巻き上げ機において、
前記電動機及び前記電磁駆動装置を収容するケーシングをそれぞれ特定の防爆規格に適合する強度、剛性を備えた構造とし、
前記電磁駆動装置を収容するケーシングの内部に、該電磁駆動装置の動作を感知するスイッチを配設するとともに、
前記電磁駆動装置を収容するケーシングに、前記特定の防爆規格に適合する強度、剛性を備え、かつ、外部からの作動力に応じて前記スイッチを押圧するスイッチ押圧装置を取り付け、
前記電磁駆動装置の作動により、前記一対のブレーキアームが駆動されたのに連動して、前記スイッチ押圧装置を介して前記スイッチを作動させるロッドを、前記一対のブレーキアームの前記他端に配設したことを特徴とするエレベータの巻き上げ機。
【請求項2】
前記スイッチ押圧装置は、前記ロッドの押圧により前記マイクロスイッチを作動させる押圧シャフトと、前記電磁ブレーキ装置を収容するケーシングの内壁に固定されるとともに、内部に前記押圧シャフトが挿通される隔壁が一体成型された円筒体を備えた本体とを有し、前記押圧シャフト及び前記本体が、前記防爆規格に適合する強度、剛性を備えていることを特徴とする請求項1に記載されたエレベータの巻き上げ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2549(P2013−2549A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134180(P2011−134180)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(594052700)横浜エレベータ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】