説明

防音暖房床用積層体及び防音暖房床

【課題】 スラブコンクリート等の床下地に直張りした場合でも高い暖房効率と防音性能とを有し、歩行感の良好な防音暖房床用積層体及び防音暖房床を提供する。
【解決手段】 放熱層、流体配管が組み込まれた硬質発泡体からなるマット層、軟質層、及び、硬質層がこの順に積層された積層体からなる防音暖房床用積層体であって、前記マット層を構成する硬質発泡体は、JIS K 7221−2に準拠し、23℃、50%RHの条件下において測定した曲げ弾性率が5〜30MPaであり、前記硬質層は、JIS
K 7220に準じて常温下、圧縮速度10mm/minの条件で測定される圧縮降伏応力が0.5Mpa以上、かつ、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下である防音暖房床用積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブコンクリート等の床下地に直張りした場合でも高い暖房効率と防音性能とを有し、歩行感の良好な防音暖房床用積層体及び防音暖房床に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、床暖房需要の増加により、樹脂発泡体に溝付け加工を施し、温水等の流体を流すための流体配管を配置した暖房床が多く設置されている。
これらの暖房床としては、例えば、捨て貼り材の上部に、温水を通す配管が組み込まれたマット層敷き、該マット層上にフローリング材等の板状体(仕上げ材)を敷く形式のものが広く普及している(例えば、特許文献1等)。
【0003】
このような構造の暖房床を集合住宅に設置する場合、階下へ伝わる軽量衝撃音等を軽減する必要があり、特にスラブコンクリート等の床下地に直張りする工法においては、板状体として木質防音床材が用いられる。木質防音床材は、板材部の裏面に多数の溝を設けるとともにクッション材を積層することにより床全体の曲げ剛性を低減させたものであり、衝撃緩和作用により高い防音性能を有する(図2A)。また、このような衝撃緩和作用をマット層側に持たせるための工夫として、温水マット裏面に多数のスリット加工を施すことによりマット層の曲げ剛性を減少させるとともに、マット層の底面にクッション材を張り合わせた防音マット層も普及してきた(図2B)。
【0004】
しかし、図2Aに示したような木質防音床材を用いる方法では、クッション材が断熱層として働き、マット層から上部への熱の抜けが悪くなり、部屋及び床表面の温まりの立ち上りが遅くなる。このため、ガス温水式床暖房システム等では、運転開始から1時間程度は80℃近くの温水を流すことを要するため、暖房床にたどり着くまでの配管部分での熱ロスが大きい。また、昨今、普及してきたヒートポンプ式熱源の温水床暖房システムでは、温水温度を高く設定することが難しく、床表面が快適温度になかなか達しないという問題があった。
【0005】
図2Bに示したような防音マット層を用いた場合には、上述のようなクッション材による断熱という問題は生じないものの、構造上、マット層における温水配管下の断熱部分が薄くなってしまい、コンクリートスラブへの熱逃げが大きく熱効率が悪くなる。熱効率を改善するためには、マット層の厚さを厚くしたり、クッション材の厚さを厚くしたりすることが考えられる。しかし、マット層の厚さを厚くすると、マット層全体の曲げ剛性が上がり、防音性能が低下してしまう。曲げ剛性を低く抑えるためにはスリット溝を深くすればよいが、このように深いスリット溝を発泡体に施すのは極めて困難であり、コストアップの原因となる。一方、クッション材の厚さを厚くした場合には、ふわふわした歩行感となり、いわゆる船酔い現象の原因となる。
【0006】
【特許文献1】特開平07−217920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、スラブコンクリート等の床下地に直張りした場合でも高い暖房効率と防音性能とを有し、歩行感の良好な防音暖房床用積層体及び防音暖房床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、放熱層、流体配管が組み込まれた硬質発泡体からなるマット層、軟質層、及び、硬質層がこの順に積層された積層体からなる防音暖房床用積層体であって、前記マット層を構成する硬質発泡体は、JIS K 7221−2に準拠し、23℃、50%RHの条件下において測定した曲げ弾性率が5〜30MPaであり、前記硬質層は、JIS K
7220に準じて常温下、圧縮速度10mm/minの条件で測定される圧縮降伏応力が0.5Mpa以上、かつ、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下である防音暖房床用積層体である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の防音暖房床用積層体は、放熱層、流体配管が組み込まれた硬質発泡体からなるマット層、軟質層、及び、硬質層がこの順に積層された積層体からなる。
図1に本発明の防音暖房床用積層体及び防音暖房床の一例を示す模式図を示した。
図1に示した防音暖房床1は、放熱層2、マット層3、軟質層5、及び、硬質層6からなる防音暖房床用積層体上に、板状体7が積層された構造を有する。マット層3には、流体配管4が配置されている。
【0010】
上記放熱層は、マット層中の流体配管を流れる流体の熱を、より効率よく上面側に伝導する役割を有する。
上記放熱層としては熱伝導性に優れるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム及びその合金、鉄、鋼材、銅及びその合金等からなるものが好適である。
上記放熱層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は400μmである。20μm未満であると、皺等を生じることなく施工することが難しく、400μmを超えると、防音性を損ねる恐れがある。より好ましい下限は30μm、より好ましい上限は200μmである。
【0011】
上記マット層は、流体配管が組み込まれた硬質発泡体からなる。
上記流体配管は、熱源で温められた温水や不凍液等が流すための経路である。上記流体配管には、内径が4〜13mm程度、断面が真円状、楕円状、小判状、多角形状、袋状である管の他、温水が漏れなく流れ、放熱体として機能する限りにおいて、マット層自体に加工を施してこれを流路とする場合を含む。
【0012】
上記流体配管としては、耐熱性ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等からなる樹脂管;銅等からなる金属管;金属層と樹脂層とを有する金属強化樹脂管等が好適に用いられる。
【0013】
上記マット層を構成する硬質発泡体は、JIS K 7221−2に準拠し、23℃、50%RHの条件下において測定した曲げ弾性率の下限が5MPa、上限が30MPaである。5MPa未満であると、マット層の柔軟性が高すぎ、圧縮方向の弾性率も不足することから、床下に施工した場合、歩行する際に歩行感が悪く、「船酔い現象」が生じる。30MPaを超えると、暖房床積層体、ひいては暖房床全体の柔軟性、制振性が低下し、充分な防音性が得られない。好ましい下限は10MPa、好ましい上限は25MPaである。
なお、曲げ弾性率は、JIS K 7221−2に準拠し、23℃、50%RHの条件下で厚さ9mmのサンプルを支点間距離192mmで支持し、その中点に上部より5mm/minの速度で下降しさせたときの変位−応力曲線より求めたものである。
【0014】
上記マット層を構成する硬質発泡体は、JIS K 7220に準じ圧縮速度10mm/minの条件で測定される圧縮降伏応力が0.5MPa以上であることが好ましい。0.5MPa未満であると、局所荷重がかかったときにへたりを生じることがある。
【0015】
上記マット層を構成する硬質発泡体は、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下であることが好ましい。0.08W/(m・K)を超えると、上部以外、例えば下部方向へ放熱してしまい、昇温が遅くなったり、安定時の熱効率が悪くなったりすることがある。
【0016】
上記マット層を構成する硬質発泡体は、ガラス転移点が0℃以下、融点が90℃以上である樹脂からなることが好ましい。ガラス転移点が0℃を超えると、樹脂そのものの圧縮弾性率は向上するものの、耐衝撃性が低下し、セル壁の薄い発泡体においては座屈、変形等が発生しやすくなり、局所荷重が繰り返しかかったときにはへたりが生じてしまう。融点が90℃未満であると、暖房床の通常の使用条件下でも軟化してしまい、充分な床性能が発揮できない。
【0017】
このような樹脂としては特に限定されないが、暖房床の使用温度条件下でクリープ現象等が起きにくいことから、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の結晶性樹脂が好適であり、なかでもポリオレフィン系樹脂がより好適である。
なお、本明細書においてポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン性モノマーの(共)重合体を意味する。
【0018】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレン等のポリプロピレン;ポリブテン、ポリブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。
これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記マット層を構成する硬質発泡体は、軽量、耐薬品性、柔軟性、弾性等のポリオレフィン系樹脂等の特徴を損ねず、かつ、発泡に必要な溶融粘度に影響を与えない限りにおいて、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、及び、これらの共重合体等の樹脂を含有してもよい。
【0020】
上記硬質発泡体の発泡倍率の好ましい下限は2倍、好ましい上限は30倍である。2倍未満であると、断熱性能に劣り、コストも高くなり実用的ではなく、30倍を超えると、気泡のセル壁の厚みが薄くなり、圧縮強度が低下することがある。
【0021】
上記樹脂からなり、上述の機械的性能を発揮できる硬質発泡体としては、例えば、厚さ方向に発泡されたもの(縦長気泡タイプ);厚さ方向にリブ構造を有するもの(リブタイプ)等が挙げられる。
【0022】
上記縦長気泡タイプの硬質発泡体は、厚さ方向に発泡されたものであり、その気泡が厚み方向に縦長状になっているものである。このような縦長気泡タイプの硬質発泡体は、厚さ方向に圧縮力を受けたときに、紡錘形の気泡の長軸方向に力がかかることになるので、その方向に高い圧縮強度、圧縮弾性率を示す。
【0023】
上記縦長気泡タイプの硬質発泡体は、含有される気泡の暖房床に垂直な方向の最大径Dと、暖房床に平行な方向の最大径Dxyとの比(D/Dxy:アスペクト比)の平均値の好ましい下限が1.1、好ましい上限が4.0である。1.1未満であると、気泡がほぼ球形となり、紡錘形状に起因する圧縮強度、圧縮弾性率の向上が得られず、床等に重量
物を一定時間置いた後の変形回復が不充分となる。また、体感評価においても床がへこむため歩行感が悪い。4.0を超えると、安定して生産することが困難になる。
図3に、上記縦長気泡タイプの硬質発泡体中の断面を示す模式図を示した。
なお、本明細書において上記アスペクト比は、硬質発泡体を暖房床に垂直な方向(z方向)に平行な任意な面に切断し、その断面の倍率10倍の拡大写真を撮り、無作為に選ばれる少なくとも50個の気泡について、暖房床に垂直な方向及び暖房床に平行な方向の最大値を測定し、その個数平均値を算出することにより得たものを意味する。
【0024】
上記縦長発泡タイプの硬質発泡体を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、原反の面内方向の発泡力を抑制しうる強度を有する面材を原反の少なくとも片面に積層した上で、後述する化学発泡法又は物理発泡法により発泡を行う方法が好適である。これは、発泡時に面内の2次元方向の発泡を抑制することで、厚み方向にのみ発泡させることが可能となるからであり、結果的に、発泡体の気泡は厚み方向に、その長軸を配向した紡錘形の気泡を有する発泡体が得られる。
具体的には、発泡原反の少なくとも一方の面に、上記発泡原反の発泡温度以上の環境に耐え得る面剤、例えば、紙、布、木材、鉄、非鉄金属、不織布、寒冷紗、ガラス繊維、無機物繊維、テトラフルオロエチレンシート等を積層した上で発泡させる。
【0025】
上記リブタイプの硬質発泡体は、厚さ方向にリブ構造を有するものであり、上記リブは厚さ方向に柱、壁状等に形成されている。このようなリブタイプの硬質発泡体は、厚さ方向からの圧縮力に対して、つぶれにくいという優れた性質を有する。上記リブの形状としては柱、壁状に形成されていれば特に限定されず、例えば、ハニカム構造、I鋼、C鋼、梁等の建築で用いられるような圧縮に強い構造等が挙げられる。
【0026】
上記リブタイプの硬質発泡体としては特に限定されないが、例えば、シート状の連続発泡層の少なくとも一方の面に凸状に形成された高発泡体部を備え、該高発泡体部の全表面が上記連続発泡層及び低発泡体層により被覆され、上記低発泡体層により被覆された相隣接する前記高発泡部間に凹部が形成されることにより凹凸が形成されているものが好適である。このようなリブタイプの硬質発泡体は、厚さ方向からの圧縮力に対して特につぶれにくい。
【0027】
なお、ここで高発泡体部及び低発泡体層とは、該高発泡体部と低発泡体層との発泡倍率を比較して高い又は低いと表現したものである。
上記高発泡体部の発泡倍率の好ましい下限は2倍、好ましい上限は100倍である。2倍未満であると、得られる本発明の暖房床用積層体用積層体の軽量化が困難となり、100倍を超えると、得られる硬質発泡体の圧縮強度が不充分となることがある。より好ましい下限は5倍、より好ましい上限は50倍であり、更に好ましい下限は8倍、更に好ましい上限は35倍である。
上記低発泡体層の発泡倍率の好ましい下限は1.1倍、好ましい上限は10倍である。1.1倍未満であると、床材の軽量化が困難になり、かつ、弾性率が増大するため防音性能が低下してしまうことがあり、10倍を超えると、床材の沈み込み量が増加し、又、歩行時及び重量物を載置したときに破壊しやすくなる。より好ましい下限は1.2倍、より好ましい上限は7倍であり、更に好ましい上限は5倍である。
上記連続発泡層の発泡倍率の好ましい下限は1.1倍、好ましい上限は10倍である。1.1倍未満であると、得られる本発明の暖房床用積層体の軽量化が困難となり、10倍を超えると、融着力が低下して高い圧縮強度を有する硬質発泡体が得られないことがある。より好ましい下限は2倍、より好ましい上限は8倍であり、更に好ましい上限は7倍である。
【0028】
図4〜図8に、上記リブタイプの硬質発泡体の好ましい一例を示す模式図を示した。
図4に示したリブタイプの硬質発泡体10は、ポリオレフィン系樹脂よりなる連続発泡層20と、連続発泡層20の少なくとも一面に凸状に形成されたポリオレフィン系樹脂よりなる複数の高発泡体部30、及び、低発泡体層40を備えている。高発泡体部30の全表面は、連続発泡層20又は低発泡体層40により被覆され、かつ、相隣接する高発泡体部30間の低発泡体層40は互いに凹部41が形成されることにより、表面に凹凸が形成されている。また、図3に示したリブタイプの硬質発泡体10では、相隣接する高発泡体部30間の低発泡体層40は互いに熱融着されているが、必ずしも融着されていなくてもよく図6に示したリブタイプの硬質発泡体のように互いの高発泡体部3が離間されていてもよい。
【0029】
図4に示したリブタイプの硬質発泡体10においては連続発泡体層20の表面が平坦であるが、図5又は図6に示したリブタイプの硬質発泡体10では、高発泡体部30の連続発泡体層20に接する側に凹部32が形成され、これにより連続発泡層20には凹部22が形成されている。このように、リブタイプの硬質発泡体10の複数の高発泡体部30が、一方の表面は凸状に形成され、他方の表面が凹状に形成されている場合には、高い圧縮強度を示しながら、緩衝性が更に向上する。
すなわち、図5又は図6に示したリブタイプの硬質発泡体10は、少なくとも一方の面が凸状に形成された複数の高発泡体部30を備え、その側面の一部で隣接する高発泡体部30と接合され(又は接合されずに離間されて)、接合されていない部分(又は接合されずに離間された部分)が空隙(又は凹部41)となることにより凹凸形状を形成している構造となる。
【0030】
図5又は図6に示したリブタイプの硬質発泡体10では、凹部22の深さの好ましい下限は1mm、好ましい上限は5mmである。1mm未満であると、緩衝性の向上効果が得られないことがあり、5mmを超えると、高い圧縮強度を発現することが困難となることがある。より好ましい上限は5mmである。
【0031】
上記リブタイプの硬質発泡体10の厚み精度、質量精度の向上及び圧縮強度のバラツキの低減の為には、複数の高発泡体部30が発泡体横断面方向において平面的に略均一に配置されることが好ましい。もっとも、複数の高発泡体部30を平面的に略均一に配置する態様としては、特に限定されるものではない。
【0032】
例えば、図7に示したリブタイプの硬質発泡体10においては、複数の高発泡体部30が低発泡体層40により画成されて格子状に配置されている。この場合には、個々の高発泡体部30が四角柱の形状となり、硬質発泡体10の表面平滑性が良好となり、かつ、圧縮強度も充分となる。
また、図8に示したリブタイプの硬質発泡体10においては、複数の高発泡体部30がハニカム状に形成された低発泡体層40に画成されて千鳥状に配置されている。この場合、複数の六角柱状の高発泡体部30が形成され、隣接する高発泡体部30同士の壁面が熱融着時に低発泡層(低発泡薄膜)40となる構造となり、全体としてハニカム状の硬質発泡体10が得られることになり、表面平滑性が向上し、圧縮強度が特に優れたものとなる。
【0033】
図4〜図8に示したリブタイプの硬質発泡体10において、高発泡体部30の平面方向(横断面方向)の最大直径の好ましい下限は3mm、好ましい上限は50mmである。3mm未満であると、得られる本発明の暖房床用積層体の軽量化が困難となることがあり、50mmを超えると、硬質発泡体10の圧縮強度が不充分となることがある。より好ましい下限は5mm、より好ましい上限は30mmである。
高発泡体部30の連続発泡層20からの高さ(凸状部の高さ)の好ましい下限は1mmである。1mm未満であると、充分な緩衝性を発揮できないことがある。より好ましい下限は2mm、更に好ましい下限は3mmである。
なお、高発泡体部30の大きさは均一である必要はなく、不均一であってもよい。
【0034】
図4〜図8に示したリブタイプの硬質発泡体10において、連続発泡層20の縦断面方向の平均厚さの好ましい下限は100μm、好ましい上限は5mmである。100μm未満であると、高い圧縮強度を有する硬質発泡体が得られないことがあり、5mmを超えると、得られる本発明の暖房床用積層体の軽量化が困難となることがある。より好ましい下限は300μm、より好ましい上限は3mmであり、更に好ましい下限は500μm、更に好ましい上限は2mmである。
なお、連続発泡層20の厚さは均一である必要はなく、不均一であってもよい。
【0035】
図4〜図8に示したリブタイプの硬質発泡体10において、充填率の好ましい下限は30%、好ましい上限は95%である。30%未満であると、充分な緩衝性が得られないことがあり、95%を超えると、高い圧縮強度を有する硬質発泡体が得られないことがある。より好ましい下限は50%、より好ましい上限は90%である。
なお、本明細書において充填率とは、平板状に樹脂発泡体10を置いた際の最大高さから求められる体積(嵩体積)における、樹脂発泡体10の質量を密度で割ることで求められる体積(真体積)の比であり、例えば、図4において一点鎖線で示す直方体Kに対する樹脂発泡体10の占める割合である。
【0036】
上記リブタイプの硬質発泡体を製造する方法としては特に限定されず、例えば、発泡剤を含有した発泡性樹脂組成物(発泡性樹脂組成物)を所定の容器中で発泡させ、一面を除いた外表面が樹脂よりなる低発泡体層が被覆されている高発泡体を製造し、これを上記低発泡体層を介して熱融着し、別途製造した連続気泡層の少なくとも一方の面に熱融着等により積層する方法;発泡性樹脂組成物からなる薄膜上に、発泡性樹脂組成物からなる粒状体を均一に配置して接着した後、これを発泡剤の分解温度以上に加熱し発泡させる方法等が挙げられる。
【0037】
上記発泡性樹脂組成物からなる薄膜を調製する方法としては特に限定されず、例えば、樹脂と熱分解型発泡剤とを射出成形機に供給し、該熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練し、配置する発泡性樹脂組成物からなる粒状体の形状に応じた凹部を有する金型に射出した後冷却する方法;樹脂と熱分解型発泡剤とを押出機に供給し、該熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練した後、軟化状態のシート状体を、該シート状体の厚さより狭いクリアランスを有し、少なくとも一方の外周面に多数の凹部が均一に配設された異方向に回転する一対の賦形ロールに導入し、この凹部に軟化状態のシート状体の一部を圧入した後、冷却、離型する方法等が挙げられる。
【0038】
上記発泡性樹脂組成物からなる薄膜の厚さとしては、目的とするリブタイプの硬質発泡体の発泡倍率や厚さ等によっても異なり特に限定されないが、好ましい下限は0.05mm、好ましい上限は3mmである。0.05mm未満であると、発泡性樹脂組成物からなる粒状体を保持できないことがあり、3mmを超えると、発泡時に発泡性樹脂組成物からなる粒状体が移動してしまったり、幅方向及び長手方向における膨張が大きくなってしまったりすることがある。より好ましい下限は0.1mm、より好ましい上限は2mmである。
【0039】
上記発泡性樹脂組成物からなる粒状体の形状としては特に限定されず、例えば、六方体、円柱状、球状体等が挙げられるが、発泡が均一にできることから円柱状が好適である。このような円柱状の発泡性樹脂組成物からなる粒状体の径の好ましい下限は1mm、好ましい上限は30mmである。1mm未満であると、発泡時の加熱で円柱が溶融変形して一次元発泡性を発現できないことがあり、厚み精度、重量精度のばらつきが大きくなったり、表面平滑性が低下したりすることがあり、30mmを超えると、発泡速度が低下してしま
うことがある。より好ましい下限は2mm、より好ましい上限は20mmである。
また、円柱状の発泡性樹脂組成物からなる粒状体の高さの好ましい下限は1mm、好ましい高さは30mmである。1mm未満であると、幅方向及び長手方向において大きく膨張して所定のリブ構造が得られないことがあり、30mmを超えると、発泡速度が低下してしまうことがある。より好ましい下限は2mm、より好ましい上限は20mmである。
【0040】
上記発泡性樹脂組成物からなる粒状体の配置方法としては特に限定されず、均一であってもよいし、不均一であってもよい。上記発泡性樹脂組成物からなる粒状体が格子状に配置された場合には、個々の発泡性樹脂組成物からなる粒状体が発泡してなる高発泡体部が四角柱の形状となり、また、千鳥状に配置された場合には、高発泡体部が六角柱の形状となるため、擬似的なハニカム構造を構成する。
【0041】
配置する上記発泡性樹脂組成物からなる粒状体の距離としては、目的とするリブタイプの硬質発泡体の発泡倍率や厚さ等によっても異なるため特に限定されないが、好ましい下限は2mm、好ましい上限は50mmである。2mm未満であると完全充填してしまうことがあり、50mmを超えると、発泡性樹脂組成物からなる粒状体が発泡したときに充填不足となる可能性がある。より好ましい下限は3mm、より好ましい上限は30mmである。
【0042】
上記リブタイプの硬質発泡体を製造する方法の一例を説明する模式図を図9に示した。
図9においては、発泡性樹脂組成物からなる薄膜200上に、発泡性樹脂組成物からなる粒状体(発泡性樹脂柱状体)300を平面的に略均一に間隔を開けて配置して発泡性樹脂シート100を調製している。ここで、薄膜200は複数の発泡性樹脂柱状体300を連結して一体化している。
【0043】
上記発泡性樹脂シート100を調製する方法の好ましい一例を説明する模式図を図10に示した。図10に示した方法では、まず、発泡性樹脂組成物を押出機により溶融混練押出ししたり、カレンダーロールを用いて溶融化したりする方法により軟化状態のシート状体を得る。次いで、軟化状態のシート状体を、該シート状体の厚さより狭いクリアランスを有し、少なくとも一方の外周面に多数の凹部が均一に配設された異方向に回転する一対の賦形ロール700、800に導入し、この凹部に軟化状態のシート状体の一部を圧入した後、冷却、離型する。
【0044】
賦形ロール700の外周面の凹部の配設は、目的とする発泡性樹脂シート100の質量精度、厚み精度の向上の為、略均一的に配置されることが好ましい。賦形ロールの外周面の凹部の配設は、賦形ロール外周面全体で均一的にあれば特に限定されないが、より均一であることから、格子または千鳥に配設されていることが最も好ましい。
【0045】
賦形ロール700の外周面の凹部の形状として特に限定されず、例えば、六方体状、円柱状、球状体等が挙げられるが、凹部を成形し易い点、発泡性樹脂柱状部300を均一に成形しやすい点、冷却後の離型が行い易い点から円柱が最も好ましい。
【0046】
賦形ロール700のクリアランスは、軟化状態のシート状体の厚さより狭いことが必要である。この範囲であれば、目的とする発泡性樹脂シート100の形状により変化するため特に限定されないが、好ましい下限は0.05mm、好ましい上限は3mmである。0.05mm未満であると、冷却後の離型時に発泡性樹脂薄膜200が破れやすくなり、3mmを超えると、1次元発泡を行える発泡性樹脂シート100が形成できないことがある。より好ましい下限は0.1mm、より好ましい上限は2mmである。
【0047】
軟化状態のシート状体の一部を凹部へ圧入する方法は、1対の賦形ロールのクリアランス
を変化させないことにより、軟化状態のシート状体に賦形ロールからの圧力が付与されて成し遂げられる。
【0048】
一部を圧入された賦形された軟化状態のシート状体の冷却方法としては、発泡性樹脂組成物の融点以下に下げることができれば特に限定されず、例えば、賦形ロール7内部に冷却水を流す等の方法が挙げられる。
【0049】
調製した発泡性樹脂シート100を発泡剤の分解温度以上で加熱して発泡させ、得られた発泡体を冷却することにより、リブタイプの硬質発泡体を得ることができる。
即ち、発泡性樹脂シート100を発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させると、発泡性樹脂柱状体300の部分が発泡するが、このとき、隣接する発泡性樹脂柱状体300の壁面同士が発泡圧力により低発泡体層を有する構造となる。この結果、柱状体内部の高い発泡倍率の高発泡体部同士を低発泡体層が熱融着して低発泡体層が低発泡薄膜を形成した状態となる。一方、薄膜200も同様に発泡するが、厚みが薄く気泡保持性が低いことから低発泡倍率の連続発泡体となる。発泡後に冷却装置の隙間を、発泡膨張するシート状体が完全充填される以上に設定することで融着が一部分のみ進行し、完全充填できない空隙(図4等における凹部41)を有する。これにより、この連続発泡体層の上に高発泡体部が複数配置された図4に示したような構造の硬質発泡体が得られる。
【0050】
加熱により発泡させる工程においては、発泡性樹脂柱状体300に含有されている熱分解型発泡剤の分解温度以上にシート状体を加熱し得る適宜の方法を用いることができ、例えば、電気ヒーター、遠赤外線ヒーター、加熱された油や空気等の加熱媒体を循環させてなる加熱装置等を用いて加熱する方法を挙げることができる。
【0051】
発泡性樹脂シート100を、発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させた後、発泡膨張するシート状体が完全充填される以上の隙間を有する冷却装置により冷却することが好ましい。上記冷却装置としては、発泡膨張するシート状体が完全充填される以上の隙間を有していれば特に限定されず、発泡体を構成する樹脂の軟化点以下の温度に冷却し得る適宜の方法を採用することができ、例えば、冷却された水や空気等の冷却媒体を循環させる形式の冷却装置などを用いて冷却する方法を採用することができる。
【0052】
上記発泡膨張するシート状体が完全充填される以上の隙間は、発泡性樹脂シート100の発泡倍率、質量等から計算される大きさであるが、隙間が大きすぎると得られる硬質発泡体全体が大きく波打つため、発泡性樹脂シート100の発泡倍率、質量等から計算される完全充填の隙間プラス10mm以下であることが好ましく、プラス5mm以下であることがより好ましく、プラス3mm以下であることが更に好ましい。
【0053】
なお、発泡性樹脂柱状体300に用いられる発泡性樹脂組成物と、薄膜200に用いられる発泡性樹脂組成物とでは、同一の樹脂を用いる必要性はないが、発泡性及び接着性等の観点から、同一又は同種の樹脂を用いることが好ましい。同一又は同種の樹脂を用いることにより連続発泡層と高発泡体部との融着力が高くなり、これにより得られるリブタイプの硬質発泡体の圧縮荷重付与時の破壊が起こりにくくなる。
【0054】
上記軟質層は、上記マット層の下部に積層することにより、適度な歩き心地と、より高い防音性を発揮するものである。とりわけ、上記マット層が、上記リブタイプの硬質発泡体からなる場合にはこれらの効果が顕著である。
本明細書において軟質層は、上記硬質層と相対的に圧縮弾性率の小さいものであれば特に限定されず、例えば、発泡倍率が10〜30倍のポリエチレン製発泡体、発泡倍率が20〜40倍のポリウレタン発泡体等の軟質発泡体からなるものが挙げられる。
上記軟質発泡体の圧縮弾性率は特に限定されないが、好ましい下限は20kPa、好まし
い上限は300kPaである。20kPa未満であると、歩行感が悪化することがあり、300kPaを超えると、防音性能が低下してしまうことがある。
上記軟質発泡体の厚さの好ましい下限は0.5mm、好ましい上限は5mmであり、更に好ましい下限は1mm、更に好ましい上限は3mmである。
【0055】
上記リブタイプの硬質発泡体からなるマット層の下に上記軟質層が積層されると、硬質発泡体の台形リブ形状により軟質層に局部的に荷重が掛り、沈み込みが増すに従って接触面積が広がる。これにより、適度なバネ効果が得られる。また、軟質層に含有される空気がつぶれる事により、リブの空間に空気が流れることにより、空気が流れる時の粘性によりバネ効果の向上が得られる。更に、これらの効果により高い防音性能を発揮することができる。
【0056】
上記軟質層としては特に限定されないが、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン等の軟質発泡体等からなるものが挙げられる。なかでも、防音効果が特に高いことから、発泡ポリウレタンが好適である。
【0057】
上記硬質層は、下方向への断熱効率を向上させ、歩行時の沈み込み量を少なくし、歩行感を良好にさせる役割を有する。このような硬質層を積層することにより、本発明の暖房床をスラブコンクリート上等へ設置した場合でも、下方向への断熱効率がよく、比較的低温の流体を用いた場合でも初期の温まりが非常に速く、高い熱効率が得られる。また、歩行時の沈み込み量を少なくし、歩行感を良好にすることができる。
【0058】
上記硬質層は、圧縮降伏応力が0.5MPa以上、かつ、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下である。圧縮降伏応力が0.5MPa未満であると、歩行時に沈み込みが生じ歩行感が悪くなる。熱伝導率が0.08W/(m・K)を超えると、充分な断熱性能を発揮できず、熱効率が悪化する。
【0059】
上記硬質層としては特に限定されないが、上述のマット層を構成する硬質発泡体と同様のものを好適に用いることができる。
即ち、ガラス転移点が0℃以下、融点が90℃以上であるポリオレフィン系樹脂からなるものが好適であり、また、含有される気泡の暖房床に垂直な方向の最大径Dと、暖房床に平行な方向の最大径Dxyとの比(D/Dxy)の平均値が1.1〜4.0である硬質発泡体;厚さ方向にリブ構造を有する硬質発泡体;シート状の連続発泡層の少なくとも一方の面に凸状に形成された高発泡体部を備え、該高発泡体部の全表面が上記連続発泡層及び低発泡体層により被覆され、低発泡体層により被覆された相隣接する高発泡部間に凹部が形成されることにより凹凸が形成されている厚さ方向にリブ構造を有する硬質発泡体が好適に用いられる。
【0060】
本発明の防音暖房床用積層体において、上記放熱層、マット層、軟質層、及び、硬質層は、接着やネジ、釘等により互いに固定されていてもよいし、施工時に積層してもよい。施工時に積層する場合には、各層は極めて軽量であることから、施工が容易である。
スラブ上に硬質層、軟質層、マット層、放熱層、及び、板状体層をこの順に積層する防音暖房床の施工方法もまた、本発明の1つである。
【0061】
本発明の防音暖房床用積層体は、マット層が適度の柔軟性を有するうえ、防音性に優れる軟質層が一体化されることで、高い防音性能を有する。また、断熱性の高い硬質層を再下層に用いることにより、スラブコンクリートへ直置きした場合でも高い断熱効率が発現し、55℃程度以下の比較的低温の温水熱源を用いた場合でも充分に暖房床としての性能を発揮できる。更に、全体としての、弾性率も適当であることから、歩行時の沈み込み量も僅かであり、歩行感も良好である。
【0062】
本発明の防音暖房床用積層体の放熱層上に、板状体を積層することにより防音暖房床が完成する。
本発明の防音暖房床用積層体の放熱層上に、板状体が積層されている防音暖房床もまた、本発明の1つである。
【0063】
上記板状体としては特に限定されず、例えば、フローリング、コルク、タイル、畳、カーペット、化粧板等が挙げられる。一般的には、木質材料で作られたフローリングが用いられることが多い。このようなフローリングの基材としては、例えば、スギ、ヒノキ等の天然木の他、合板、パーチクルボード、ウエハーボード、MDF等の木質ボード類等も挙げられる。また、必要に応じて、突板、合成樹脂シート、合成樹脂発泡シート、化粧紙、合成樹脂含浸シート等の表面化粧材を積層し、木目調や大理石調に加飾したものも用いることができる。更に、意匠性、木質感、耐傷性等を付与するために、印刷、塗装、着色、コーティング、溝切加工等を行ってもよい。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、スラブコンクリート等の床下地に直張りした場合でも高い暖房効率と防音性能とを有し、歩行感の良好な防音暖房床用積層体及び防音暖房床を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
(板状体)
以下の3種類の板状体を用いた。
(1)板状体−1
厚さ5mm、縦横150mm×900mmが1プライであり、床に敷き詰められるように、おすめす部分が明確になった本さね構造を有する、合成樹脂シートにより表面を木目調に加飾された合板を用いた。
(2)板状体−2
市販の厚さ5mmの遮音フローリング(松下電工社製、3mm仕上げ材+2mm不織布)を用いた。
(3)板状体−3
市販の厚さ13mmの遮音フローリング(松下電工社製、9mm仕上げ材+4mm不織布)を用いた。
【0067】
(放熱層)
アルミテープ平板(イノアック社製モジュラーパネル用灼熱アルミテープ、雛板DMTA470−25)を放熱層−1として用いた。
【0068】
(マット層)
以下の3種のマット層を用いた。
(1)マット層−1
低(無)架橋性樹脂として高密度ポリエチレン(三菱化学社製;品番「HY34O」、密度0.952g/cm、MI=1.5g/10分、融点133℃)25重量部、高架橋性樹脂として高密度ポリエチレン(三菱化学社製;品番「HJ381P」、密度0.951g /cm、MI=9.Og /10分、融点132℃)25重量部、ポリプロピレン(三菱化学社製;品番「MA3」、密度0.9O0g/cm、MI=11g/10分、融点151℃)29重量部、シラン架橋性ポリプロピレン(三菱化学社製;品番「XP
M8OOHM」21重量部、シラン架橋触媒(三菱化学社製;品番「 PZ−1OS」)1 重量部、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学社製;品番「SO−20」)9 重量部の混合物を、2軸押出機(径44mm)にて180℃で溶融混練し、面長300mm、リップ1.5mmのTダイにより軟化状態のシート状発泡性熱可塑性樹脂を押出した。
【0069】
更に、図10に示したように、高さ5mm、直径4mmの凹部が賦形ロール700のみに千鳥状に配置された、径250mm、面長300mmの発泡性熱可塑性樹脂シート状体を賦型しつつ冷却し、発泡性熱可塑性シート状体を98℃の熱水中に2時間浸漬した後、乾燥させることにより、図9に示したような発泡性熱可塑性樹脂シート状体(架橋度15%)を得た。
得た発泡性熱可塑性樹脂シート状体では、賦型ロールの凹部に対応する部分において発泡性熱可塑性樹脂粒状体が構成されており、該発泡性熱可塑性樹脂粒状体がその端部にて厚み0.4mmの発泡性熱可塑性樹脂薄膜により連結されて、全体として発泡性熱可塑性樹脂シート状体が構成されていた。
【0070】
得られた発泡性熱可塑性樹脂シート状体を、ポリテトラフルオロエチレンシート上に配置した状態で加熱装置を有する無端ベルトに供給し、発泡性熱可塑性樹脂シート状体を発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させることにより、図4に示したような硬質発泡体を得た。なお、発泡性熱可塑性樹脂シート状体の送り速度は0.5mm/min、加熱装置長さ5mm、温度210℃とした。また、冷却装置は長さ5mm、温度30℃であった。得られた硬質発泡体の厚みは9mmであった。
【0071】
得られた硬質発泡体について、JIS K 6767に準ずる方法により発泡倍率を測定したところ10倍であった。
また、得られた硬質発泡体について、JIS K 7221−2に準ずる方法により、23℃、50%RHの条件下において曲げ弾性率を測定したところ15MPa、JIS K7220に準ずる方法により23℃、50%RHの条件下において圧縮弾性率を測定したところ5.1MPa、JIS K 7220に準ずる方法により常温下、圧縮速度10mm/minの条件で圧縮降伏応力は0.7Mpaであった。
【0072】
得られた硬質発泡体を、600×900mmに切断した後、ピッチ間75mmで凹溝(幅、深7.2mm)ホットプレスにより溝付けし、巾7.2mm、深さ7.2mmの流体配管用の溝を75mmのピッチで溝付け加工した。
【0073】
(2)マット層−2
市販の厚さ12mmのポリスチレン発泡体(発泡倍率10倍)を用いた。
このポリスチレン発泡体について、JIS K 7221−2に準ずる方法により、23℃、50%RHの条件下において曲げ弾性率を測定したところ5MPa、JIS K7220に準ずる方法により23℃、50%RHの条件下において圧縮弾性率を測定したところ0.7MPa、JIS K 7220に準ずる方法により常温下、圧縮速度10mm/minの条件で圧縮降伏応力は0.1Mpaであった。
これを600×900mmに切断した後、ピッチ間75mmで凹溝(幅、深7.2mm)ホットプレスにより溝付けし、巾7.2mm、深さ7.2mmの流体配管用の溝を75mmのピッチで溝付け加工した。
(3)マット層−3
市販の厚さ12mmのポリスチレン発泡体(発泡倍率20倍)を用いた。
このポリスチレン発泡体について、JIS K 7221−2に準ずる方法により、23℃、50%RHの条件下において曲げ弾性率を測定したところ50MPa、JIS K7220に準ずる方法により23℃、50%RHの条件下において圧縮弾性率を測定したと
ころ36MPa、JIS K 7220に準ずる方法により常温下、圧縮速度10mm/minの条件で圧縮降伏応力は2.0Mpaであった。
これを600×900mmに切断した後、ピッチ間75mmで凹溝(幅、深7.2mm)ホットプレスにより溝付けし、巾7.2mm、深さ7.2mmの流体配管用の溝を75mmのピッチで溝付け加工した。
【0074】
(軟質層)
市販の厚さ2mmのウレタン発泡体(ブリジストン社製、発泡倍率50倍)を軟質層−1、厚さ2mmの不織布を軟質層−2として用いた。
【0075】
(硬質層)
(1)硬質層−1
変性用スクリュー押出機として、BT40(プラスチック工学研究所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機を用いた。これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは35、Dは39mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜6バレルからなり、ダイは3穴ストランドダイであり、揮発分を回収するため第4バレルに真空ベントが設置されている。操作条件は下記の通りとした。
・シリンダーバレル設定温度:第1バレル;180℃
第2〜6バレル;220℃
ダイ;220℃
・スクリュー回転数:150rpm
この構成の変性用スクリュー押出機に、まず、ポリオレフィン系樹脂、その後端ホッパーから投入し、第3バレルからジビニルベンゼンと有機過酸化物の混合物を押出機内に注入し、これらを溶融混和して変性樹脂を得た。このとき、押出機内で発生した揮発分は真空ベントにより真空引きした。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンランダム共重合体(日本ポリケム製「EX6」、MI;1.8、密度;0.9g/cm)を用い、その供給量は10kg/hとした。変性用モノマーとしてはジビニルベンゼンを用い、その供給量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5重量部とした。また、有機過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3を用い、その供給量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1重量部とした。
ポリオレフィン系樹脂、ジビニルベンゼン、有機過酸化物の溶融混和によって得られた変性樹脂を、ストランドダイから吐出し、水冷し、ペレタイザーで切断して、変性樹脂のペレットを得た。
【0076】
発泡剤混練用スクリュー押出機はTEX−44型(日本製鋼所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機であり、これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは45.5、Dは47mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜12バレルからなり、成形ダイは7穴ストランドダイである。温度設定区分は下記の通りとした。
第1バレルは常時冷却
第1ゾーン;第2〜4バレル
第2ゾーン;第5〜8バレル
第3ゾーン;第9〜12バレル
第4ゾーン;ダイおよびアダプター部
発泡剤を供給するために第6バレルにサイドフィーダーが設置され、揮発分を回収するため第11バレルに真空ベントが設置されている。操作条件は下記の通りである。
・シリンダーバレル設定温度:第1ゾーン;150℃
第2ゾーン;170℃
第3ゾーン;180℃
第4ゾーン;160℃
・スクリュー回転数:40rpm
得られた変性樹脂とホモタイプのポリプロピレン(日本ポリケム製「FY4」、MI;5.0、密度;0.9g/cm)とを、それぞれ10kg/hの供給量で、発泡剤混練用スクリュー押出機に供給した。また、発泡剤(アゾジカルボンアミド(ADCA))を、それぞれ1.0kg/hの供給量で、同押出機にサイドフィーダーから供給した。
こうして変性樹脂と発泡剤の混練によって得られた発泡性樹脂組成物を、Tダイから押し出し、幅1000mm×厚み0.5mmのシート状成形体を得た。
【0077】
得られた発泡性樹脂組成物シートの両面に、ポリエチレンテレフタレート製の不織布(東洋紡績社製、「スパンボンド エクーレ 6301A」、秤量30g/m)を積層し、ダブルシート発泡機を用い、厚さ9mmのポリオレフィン系樹脂発泡体を製造し、これを硬質層−1とした。
【0078】
得られた硬質層−1について、JIS K 6767に準ずる方法により発泡倍率を測定したところ約10倍であった。
また、厚さ方向(z方向)にカットし、断面の中央部を光学顕微鏡で観察しつつ15倍の拡大写真を撮した。その映像内の全ての気泡(ただし、Dzが0.05mm以下の気泡及び10mm以上の気泡は除外した)についてDzとDxyをノギスを用いて測定し、アスペクト比を求めたところ1.8であった。
また、JIS K 7220に準じて常温下、圧縮速度10mm/minの条件で圧縮降伏応力を測定したところ0.8Mpaであり、熱伝導率は0.053W/(m・K)であった。
【0079】
(2)硬質層−2
市販の厚さ3mmのポリエチレン架橋発泡体(積水化学工業社製:ソフトロン)を硬質層−2として用いた。
【0080】
(実施例1)
得られたマット層−1を縦横900mm×1200mmに組み合わせ、この溝部に架橋ポリエチレン管(PEX−5A、内径5mm、厚さ1.1mm)を1回路でマット全面にいきわたるように挿入し、マット層−1の上面に放熱層を貼付し、その上面に板状体−1を貼付し、マット層の下面に軟質層を貼付し、更に硬質層−1を下面に敷き、図1に示した防音性温水暖房床を作製した。
【0081】
(比較例1)
硬質層を積層しなかった以外は実施例1と同様にして防音性温水暖房床を作製した。
【0082】
(比較例2)
硬質層−2を用いた以外は実施例1と同様にして防音性温水暖房床を作製した。
【0083】
(比較例3)
板状体−2、マット層−2、軟質層−2を用い、硬質層を積層しなかった以外は実施例1と同様にして防音性温水暖房床を作製した。
【0084】
(比較例4)
板状体−3、マット層−3を用い、軟質層、硬質層を積層しなかった以外は実施例1と同様にして防音性温水暖房床を作製した。
【0085】
(評価)
実施例1及び比較例1〜4で作製した防音性温水暖房床をコンクリートスラブ厚250mmの試作棟地材に両面テープで全面貼付した。ヘッダーを介して金型温調機と接続し、試作棟内を20℃に維持しながら55℃の温水を流速0.6L/minで流した。この状態で以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0086】
(1)上面放熱効率
防音性温水暖房床の上下面に熱流束計を設置し、温水流水開始後60分後の瞬間値を記録した。
【0087】
(2)防音評価
JIS A 1418に準拠する方法により軽量床衝撃騒音レベルを測定し、防音評価を行った。
【0088】
(3)歩行感(ふみごこち)
鉄球50Rを硬質板状態上に80Kgfの力で押し付けた時の沈み込み量を測定し、以下の基準により評価した。
〇:沈み込み量が3mm以内
×:沈み込み量が3mmを超える
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、スラブコンクリート等の床下地に直張りした場合でも高い暖房効率と防音性能とを有し、歩行感の良好な防音暖房床用積層体及び防音暖房床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の防音暖房床用積層体及び防音暖房床の一例を示す模式図である。
【図2】従来の暖房床の一例を示す模式図である。
【図3】縦長気泡タイプの硬質発泡体中の断面を示す模式図である。
【図4】リブタイプの硬質発泡体の好ましい一例を示す模式図である。
【図5】リブタイプの硬質発泡体の好ましい一例を示す模式図である。
【図6】リブタイプの硬質発泡体の好ましい一例を示す模式図である。
【図7】リブタイプの硬質発泡体の好ましい一例を示す模式図である。
【図8】リブタイプの硬質発泡体の好ましい一例を示す模式図である。
【図9】リブタイプの硬質発泡体を製造する方法の一例を説明する模式図である。
【図10】発泡性樹脂シートを調製する方法の好ましい一例を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0092】
1 防音暖房床
2 放熱層
3 マット層
4 流体配管
5 軟質層
6 硬質層
7 板状体
10 リブタイプの硬質発泡体
20 連続発泡層
30 高発泡体部
40 低発泡体層
41 凹部
32 凹部
22 凹部
100 発泡性樹脂シート
200 発泡性樹脂組成物からなる薄膜
300 発泡性樹脂組成物からなる粒状体(発泡性樹脂柱状体)
700、800 賦形ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱層、流体配管が組み込まれた硬質発泡体からなるマット層、軟質層、及び、硬質層がこの順に積層された積層体からなる防音暖房床用積層体であって、
前記マット層を構成する硬質発泡体は、JIS K 7221−2に準拠し、23℃、50%RHの条件下において測定した曲げ弾性率が5〜30MPaであり、
前記硬質層は、JIS K 7220に準じて常温下、圧縮速度10mm/minの条件で測定される圧縮降伏応力が0.5Mpa以上、かつ、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下である
ことを特徴とする防音暖房床用積層体。
【請求項2】
マット層を構成する硬質発泡体は、ガラス転移点が0℃以下、融点が90℃以上であるポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の防音暖房床用積層体。
【請求項3】
マット層を構成する硬質発泡体は、含有される気泡の暖房床用積層体に垂直な方向の最大径Dと、暖房床用積層体に平行な方向の最大径Dxyとの比(D/Dxy)の平均値が1.1〜4.0であることを特徴とする請求項1又は2記載の防音暖房床用積層体。
【請求項4】
マット層を構成する硬質発泡体は、厚さ方向にリブ構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の防音暖房床用積層体。
【請求項5】
厚さ方向にリブ構造を有する硬質発泡体は、シート状の連続発泡層の少なくとも一方の面に凸状に形成された高発泡体部を備え、該高発泡体部の全表面が前記連続発泡層及び低発泡体層により被覆され、前記低発泡体層により被覆された相隣接する前記高発泡部間に凹部が形成されることにより凹凸が形成されているものであることを特徴とする請求項4記載の防音暖房床用積層体。
【請求項6】
軟質層は、発泡ポリウレタンからなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の防音暖房床用積層体。
【請求項7】
硬質層は、気泡の暖房床用積層体に垂直な方向の最大径Dと、暖房床用積層体に平行な方向の最大径Dxyとの比(D/Dxy)の平均値が1.1〜4.0である硬質発泡体からなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の防音暖房床用積層体。
【請求項8】
硬質層は、厚さ方向にリブ構造を有する硬質発泡体からなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の防音暖房床用積層体。
【請求項9】
硬質層を構成する厚さ方向にリブ構造を有する硬質発泡体は、シート状の連続発泡層の少なくとも一方の面に凸状に形成された高発泡体部を備え、該高発泡体部の全表面が前記連続発泡層及び低発泡体層により被覆され、前記低発泡体層により被覆された相隣接する前記高発泡部間に凹部が形成されることにより凹凸が形成されているものであることを特徴とする請求項8記載の防音暖房床用積層体。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の防音暖房床用積層体の放熱層上に、板状体が積層されていることを特徴とする防音暖房床。
【請求項11】
スラブ上に硬質層、軟質層、マット層、放熱層、及び、板状体層をこの順に積層することを特徴とする防音暖房床の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−144273(P2006−144273A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332393(P2004−332393)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】