説明

降雨補正値特定装置及びナビゲーション装置、並びに降雨補正値を特定するためのコンピュータプログラム、ナビゲーションするためのコンピュータプログラム

【課題】車輌のプローブ情報を用い、降雨状況に基づいてリンク旅行速度を補正するための降雨補正値を自動的に作成する装置及びその方法を提供する。
【解決手段】地図情報保存部から降雨補正値を特定するための対象要素を選択し、選択された対象要素を含むプローブ情報を抽出し、抽出されたプローブ情報から第1の降雨状態のときの第1の速度情報及び第2の降雨状態のときの第2の速度情報を特定し、当該第1の速度情報、第2の速度情報と、予め定められた対象要素の基準速度とをそれぞれ比較して第1の補正値及び第2の補正値を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌のプローブ情報を用い、降雨状況に基づいてリンク旅行速度を補正するための降雨補正値特定装置及び当該装置を用いたナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション装置の普及はめざましく、多くの車輌運転者がナビゲーション装置によって案内されたルートを走行している。一般に、ナビゲーション装置は、地図データを用いて出発地から目的地までの旅行時間が短くなるよう経路を探索し、当該経路と共に目的地への到達予想時間を運転者に案内する。
しかしながら、降雨等の天候状況によっては、車輌走行速度が低下し上記案内された到達予想時間を遅延する等、精度良く到達予想時間を案内することが困難であった。
このような課題を解決すべく、特許文献1では、「晴れ」、「曇り」、「雨」、「雪」などの天候情報等を考慮した経路算出及び通過時刻算出が可能な地図表示装置が提案されている。
本件発明に関連する従来技術を開示する特許文献2〜4も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−285907号公報
【特許文献2】特開2005−266926号公報
【特許文献3】特開2005−004359号公報
【特許文献4】特開2004−234649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、降雨時において、より精度良く、より実際に即して、上記到達予想時間を算出すべく鋭意検討を重ねてきた。
その結果、本発明者らは、降雨状況が強雨であるか、小雨であるかによって、降雨時における晴天時リンク旅行速度からの低下速度が異なることを見出した。図1に示すのは、それぞれ(A)強雨時、あるいは(B)小雨時における、晴天時のリンク旅行速度と、降雨時における晴天時リンク旅行速度からの低下速度との関係を示した図である。
図1に示されるように、強雨時には、晴天時リンク旅行速度が50km/h以上のリンクにおいて約20%の速度低下がみられる一方、小雨時には、当該速度が50km/h以上のリンクにおいて約6%の速度低下が見られるに過ぎない。
すなわち、上記従来技術では、降雨時の天候情報を「雨」の一区分としてリンク旅行時間を設定しているが、強雨や小雨等の降雨状況に対応した車輌走行速度の低下度合い(以下、降雨補正値ともいう)を特定することにより、より精度良く到達予想時間を利用者に提供できるのではないか、と考えた。
また、上記車輌走行速度の低下度合いの特定に際し、実際の走行車輌から得られるプローブ情報を用いることにより、より実際に即した降雨補正値を特定することができる、と考えた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち、
地図情報保存部から降雨補正値を特定するための対象要素を選択する対象要素選択部と、
選択された前記対象要素を含むプローブ情報を抽出するプローブ情報抽出部と、
抽出された前記プローブ情報から第1の降雨状態のときの第1の速度情報を特定する第1の速度情報特定部と、
前記プローブ情報から第2の降雨状態のときの第2の速度情報を特定する第2の速度情報特定部と、
前記第1の速度情報と、予め定められた前記対象要素の基準速度とを比較して第1の補正値を特定する第1の補正値特定部と、
前記第2の速度情報と、前記基準速度とを比較して第2の補正値を特定する第2の補正値特定部と、
を含む、ことを特徴とする降雨補正値特定装置。
【0006】
このように規定される第1の局面の降雨補正値特定装置によれば、降雨補正値の特定対象として選択された対象要素に関し、車輌のプローブ情報から第1の降雨状態及び第2の降雨状態のときの速度情報にかかる情報を抽出し、当該情報と対象要素に設定された基準速度とをそれぞれ比較することにより、当該対象要素における第1の降雨状態及び第2の降雨状態のときの基準速度からの降雨補正値をそれぞれ特定する。このように、降雨状態に対応して降雨補正値を特定すれば、より精度良く、降雨時の到達予想時間を算出することが可能となる。
ここで、降雨補正値とは、降雨時における基準速度からの低下度合いを示す値をいい、当該補正値は、降雨時の速度と基準速度との比や、降雨時の速度と基準速度との差等により表すことができる。また、基準速度とは、ナビゲーション装置において目的地への到達予想時間の算出の際に参照される、リンク等に設定された旅行速度、又は、道路属性から導出される旅行速度をいう。当該旅行速度として例えば、制限速度、晴天時の速度、高速道路や一般道路等の道路種類に応じて設定される速度等に基づき決定された速度を挙げることができる。当該速度は、時間帯、曜日、月日、季節等ごとに設定されていても良い。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定の降雨補正値特定装置において、前記第1の降雨状態及び前記第2の降雨状態の仕分けは、前記プローブ情報に関連付けられた、ワイパー情報及び/又は雨滴センサー情報に基づき行われる。
このように規定される第2の局面に規定の降雨補正値特定装置によれば、抽出されたプローブ情報から第1及び第2の降雨状態の速度情報を特定するに際し、プローブ情報に関連付けられたワイパー情報、雨滴センサー情報を用いて、プローブ情報の仕分けを行う。したがって、実際に即した当該仕分けが可能となり、より精度良く降雨補正値を特定することが可能となる。
【0008】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1〜第3のいずれかの局面に規定の降雨補正値特定装置において、前記第1及び第2の補正値は指定された条件ごとに特定される。
このように規定される第3の局面の降雨補正値特定装置によれば、指定された条件ごとに対象要素の降雨補正値を特定することができる。当該指定された条件は、時間帯、曜日、月日、季節から選択される1以上の条件とすることができる(第4の局面)。例えば、上記基準速度が時間帯に対応して設定されている場合、当該時間帯に対応した当該降雨補正値を特定すれば、より精度良く、到達予想時間を算出可能である。また、当該指定された条件は、複数の前記基準速度に基づき設定される速度帯とすることもできる(第5の局面)。
【0009】
本発明の降雨補正値特定装置で得られた情報を、道路情報としてナビゲーション装置に用いることも可能である。
即ち、この発明の第6の局面は次のように規定される。
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索部を備えるナビゲーション装置であって、
第1〜第5のいずれかの局面に規定の降雨補正値特定装置で特定された第1の補正値を保存する第1の補正値保存部と、
前記降雨補正値特定装置で特定された第2の補正値を保存する第2の補正値保存部と、
降雨状況を判定する降雨状況判定部と、
前記降雨状況判定部が判定した前記降雨状況に基づき、前記第1の補正値保存部及び前記第2の補正値保存部を参照して、降雨時到達予想時間を演算する降雨時到達予想時間演算部と、
演算された前記降雨時到達予想時間を案内する降雨時到達予想時間案内部と、
を含む、ことを特徴とするナビゲーション装置。
【0010】
このように規定される第6の局面のナビゲーション装置によれば、降雨状態に対応して特定された降雨補正値を用いるため、降雨状況判定部において判定された降雨状況を反映させた、より精度の高い、降雨時の到達予想時間を演算することが可能となる。また、実際の車輌走行時のプローブ情報に基づき得られた降雨補正値を用いることにより、実際に即した到達予想時間を案内することが可能となる。
【0011】
また、この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
地図情報保存部から降雨補正値を特定するための対象要素を選択する対象要素選択ステップと、
選択された前記対象要素を含むプローブ情報を抽出するプローブ情報抽出ステップと、
抽出された前記プローブ情報から第1の降雨状態のときの第1の速度情報を特定する第1の速度情報特定ステップと、
前記プローブ情報から第2の降雨状態のときの第2の速度情報を特定する第2の速度情報特定ステップと、
前記第1の速度情報と、予め定められた前記対象要素の基準速度とを比較して第1の補正値を特定する第1の補正値特定ステップと、
前記第2の速度情報と、前記基準速度とを比較して第2の補正値を特定する第2の補正値特定ステップと、
を含む、ことを特徴とする降雨補正値特定方法。
このように規定される第7の局面に規定の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0012】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第7の局面に規定の降雨補正値特定方法において、前記第1の降雨状態及び前記第2の降雨状態の仕分けは、前記プローブ情報に関連付けられた、ワイパー情報及び/又は雨滴センサー情報に基づき行われる。
このように規定される第8の局面に規定の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0013】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
第7又は第8の局面に規定の降雨補正値特定方法において、前記第1及び第2の補正値は指定された条件ごとに特定される。
このように規定される第9の局面に規定の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0014】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第9の局面に規定の降雨補正値特定方法において、前記指定された条件は、時間帯、曜日、月日、季節から選択される1以上の条件である。
このように規定される第10の局面に規定の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0015】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第9又は第10の局面に規定の降雨補正値特定方法において、前記指定された条件は、複数の前記基準速度に基づき設定される速度帯である。
このように規定される第11の局面に規定の発明によれば、第5の局面と同等の効果を奏する。
【0016】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索ステップを備えるナビゲーション方法であって、
降雨状況を判定する降雨状況判定ステップと、
前記降雨状況判定ステップが判定した前記降雨状況に基づき、請求項7〜11のいずれか1項に記載の降雨補正値特定方法で特定された第1の補正値及び前記降雨補正値特定方法で特定された第2の補正値を参照して、降雨時到達予想時間を演算する降雨時到達予想時間演算ステップと、
演算された前記降雨時到達予想時間を案内する降雨時到達予想時間案内ステップと、
を含む、ことを特徴とするナビゲーション方法。
このように規定される第12の局面に規定の発明によれば、第6の局面と同等の効果を奏する。
【0017】
更に、この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、
降雨補正値を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図情報保存部から降雨補正値を特定するための対象要素を選択する対象要素選択手段と、
選択された前記対象要素を含むプローブ情報を抽出するプローブ情報抽出手段と、
抽出された前記プローブ情報から第1の降雨状態のときの第1の速度情報を特定する第1の速度情報特定手段と、
前記プローブ情報から第2の降雨状態のときの第2の速度情報を特定する第2の速度情報特定手段と、
前記第1の速度情報と、予め定められた前記対象要素の基準速度とを比較して第1の補正値を特定する第1の補正値特定手段と、
前記第2の速度情報と、前記基準速度とを比較して第2の補正値を特定する第2の補正値特定手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第13の局面に規定の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0018】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、
第13の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記第1の降雨状態及び前記第2の降雨状態の仕分けは、前記プローブ情報に関連付けられた、ワイパー情報及び/又は雨滴センサー情報に基づき行われる。
このように規定される第14の局面に規定の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0019】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、
第13又は第14の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記第1及び第2の補正値は指定された条件ごとに特定される。
このように規定される第15の局面に規定の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0020】
この発明の第16の局面は次のように規定される。即ち、
第15の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記指定された条件は、時間帯、曜日、月日、季節から選択される1以上の条件である。
このように規定される第16の局面に規定の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0021】
この発明の第17の局面は次のように規定される。即ち、
第15又は第16の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記指定された条件は、複数の前記基準速度に基づき設定される速度帯である。
このように規定される第17の局面に規定の発明によれば、第5の局面と同等の効果を奏する。
【0022】
この発明の第18の局面は次のように規定される。即ち、
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索手段を備えるナビゲーションするためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
降雨状況を判定する降雨状況判定手段と、
前記降雨状況判定手段が判定した前記降雨状況に基づき、請求項13〜17のいずれか1項に記載のコンピュータプログラムで特定された第1の補正値及び前記コンピュータプログラムで特定された第2の補正値を参照して、降雨時到達予想時間を演算する降雨時到達予想時間演算手段と、
演算された前記降雨時到達予想時間を案内する降雨時到達予想時間案内手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第18の局面に規定の発明によれば、第6の局面と同等の効果を奏する。
【0023】
第13〜第18のいずれかの局面に規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第19の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】晴天時のリンク旅行速度と、降雨時((A)強雨時、(B)小雨時)における晴天時リンク旅行速度からの低下速度との関係を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態の降雨補正値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の速度情報特定部の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態の降雨補正値特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態の降雨補正値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施の形態の降雨補正値特定装置を説明する。
図2に、この発明の実施の形態の降雨補正値特定装置1の概略構成を示す。
図2に示すように、この降雨補正値特定装置1は、地図データ保存部2、基準速度保存部3、対象要素選択部4、対象要素保存部5、プローブ情報保存部6、プローブ情報抽出部7、プローブ情報−降雨状態保存部8、速度情報特定部9、速度情報保存部10、補正値特定部11及び補正値保存部12を備えている。
【0026】
地図データ保存部2には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
基準速度保存部3には、後述する対象要素に予め設定された基準速度が保存される。当該基準速度とは、ナビゲーション装置において目的地への到達予想時間の算出の際に参照される、リンク等に設定された旅行速度をいう。当該旅行速度として例えば、制限速度、晴天時の速度等が挙げられる。当該速度は、時間帯、曜日、月日、季節等ごとに設定されていても良い。
【0027】
対象要素選択部4は、地図データ保存部2を参照し、降雨補正値の特定対象となる要素を対象要素として選択する。当該要素としては、例えば、地図情報を構成するリンク(道路)やノード(交差点)等が挙げられる。選択される対象要素として、特に、幹線道路(リンク)や幹線道路上に存在する交差点(ノード)とすることとしても良い。ナビゲーションシステムにおいて、案内ルートとして選択されるのは主に幹線道路となるためである。また、選択される対象要素としては、リンク等1つの要素としてもよいし、リンクやノードを組み合わせた要素としてもよい。選択された当該対象要素は、対象要素保存部5に保存される。
【0028】
プローブ情報保存部6には、車輌から得られるプローブ情報が保存される。当該プローブ情報には、少なくとも座標情報、プローブカーを特定するID情報、速度情報が含まれる。GPS等の位置検出機能を有する車輌であればこれらの情報を特定することができる。また、ワイパー情報、雨滴センサー情報、降雨情報のうちの少なくとも1を備える。当該情報を備えることにより、抽出されたプローブ情報を第1の降雨状態と第2の降雨状態とに仕分ける際の指標として用いることができる。更に、時間情報、方位情報、高度情報、アクセル開度、エンジン回転数、前後加速度、ヨーレイト、ストップランプ、ABSウォーニングランプ、燃料消費量、電力残存容量、舵角(ハンドルの回転角度情報)、シフトレバー情報、車輌高さ情報、車輌重量情報、車輌幅情報等を備えることが好ましい。当該プローブ情報保存部6には、ネットワークを介して無線で連結された車輌から送信されるプローブ情報を保存することとしても良いし、車輌内のメモリへ一旦格納し、直接又は有線を介して得られるプローブ情報を保存することとしても良い。
【0029】
プローブ情報抽出部7は、対象要素保存部5及びプローブ情報保存部6を参照し、プローブ情報保存部6に保存されたプローブ情報から、対象要素保存部5に保存された対象要素を通行した実績のあるプローブ情報を抽出する。抽出されたプローブ情報は、降雨状態に関する情報と関連付けてプローブ情報−降雨状態保存部8に保存される。
速度情報特定部9は、抽出されたプローブ情報に関連付けられた降雨状態ごとに、当該対象要素における速度情報を特定する。特定された速度情報は、当該対象要素と関連付けて速度情報保存部10に保存される。
【0030】
図3を用いて、速度情報特定部9の詳細構成を説明する。
速度情報特定部9は、第1の降雨状態のときの第1速度情報を特定する第1速度情報特定部91と、第2の降雨状態のときの第2速度情報を特定する第2速度情報特定部93とを備える。第1の降雨状態及び第2の降雨状態は、降雨状態のレベルに基づき予め定められる。例えば、プローブ情報としてのワイパー情報に基づき、「ワイパー強」を「強雨時」として第1の降雨状態と、「ワイパー弱」を「小雨時」として第2の降雨状態と定めることができる。また、ワイパー情報として、ワイパースピード、ワイパー間欠作動間隔等を用いることもできる。ワイパー情報の他、雨滴センサー情報や降雨情報に基づき定めることとしても良い。降雨状態のレベルごとに備えられた速度情報特定部は、少なくとも2備えれば良く、3以上備えていても良い。
【0031】
第1速度情報特定部91は、第1プローブ情報抽出部911、第1カウンタ912及び第1速度情報算出部913を備える。
第1プローブ情報抽出部911は、プローブ情報−降雨状態保存部8に保存されたプローブ情報から、第1降雨状態に関連付けられたプローブ情報を第1プローブ情報として抽出する。抽出された当該第1プローブ情報の数は、第1カウンタ912でカウントされる。
【0032】
第1速度情報算出部913は、第1プローブ情報のカウント数と当該第1プローブ情報に関連付けられた速度情報に基づいて、第1降雨状態のときの第1速度情報を算出する。当該算出方法は、特に限定されないが、例えば、上記第1プローブ情報の速度情報から平均速度や標準偏差等を算出することができる。算出された当該第1速度情報は、速度情報保存部10内の第1速度情報保存部101に保存される。
第2速度情報特定部93は、第2プローブ情報抽出部931、第2カウンタ932及び第2速度情報算出部933を備え、第1速度情報特定部91と同様にして、第2降雨状態のときの第2速度情報を算出する。算出された当該第2速度情報は、第2速度情報保存部103に保存される。
【0033】
図2に戻り、補正値特定部11は、第1補正値特定部111及び第2補正値特定部113を備える。
第1補正値特定部は、基準速度保存部3を参照し、第1速度情報保存部101に保存された第1速度情報と、対象要素選択部4で選択された対象要素に予め設定された基準速度とを比較して、第1降雨状態における基準速度からの第1補正値を特定する。当該特定は、特に限定されないが、例えば、第1速度情報と基準速度との比を特定しても良いし、第1速度情報と基準速度との差を特定することとしても良い。特定された当該第1補正値は、第1補正値保存部121に保存される。
【0034】
第2補正値特定部113は、第1補正値特定部111と同様にして、第2降雨状態のときの第2補正値を特定する。特定された当該第2補正値は、第2補正値保存部123に保存される。
本発明の降雨補正値特定装置1で特定されたそれぞれの補正値を用いれば、ナビゲーションする際の降雨状況に応じてより精度の高い到達予想時間を演算することが可能となる。
【0035】
図4を用いて、図2及び図3に示す降雨補正値特定装置1の動作を説明する。
まず、ステップ1では、地図データ保存部2を参照し、降雨補正値の特定対象となるリンク等の要素を対象要素として選択し、対象要素保存部5へ保存する。
ステップ3では、プローブ情報抽出部7は対象要素保存部5及びプローブ情報保存部6を参照し、ステップ1で選択された対象要素に存在するプローブ情報を抽出し、抽出されたプローブ情報に当該プローブ情報が保有する降雨状態に関する情報及び速度情報を関連付けて、プローブ情報−降雨状態保存部8へ保存する。
【0036】
次いで、プローブ情報−降雨状態保存部8に保存されたプローブ情報を、当該プローブ情報に関連付けられた降雨状態に基づき、予め定められた降雨条件ごとにプローブ情報を抽出し、抽出されたプローブ情報をそれぞれカウントする(ステップ5)。
ステップ7では、ステップ5でカウントされたカウント数及び当該カウントの対象となったプローブ情報が保有する速度情報から、降雨状態ごとの平均速度を算出し、速度情報保存部10内のそれぞれの保存部へ保存する。
降雨状態ごとに算出された平均速度と、対象要素に設定された基準速度とから、降雨状態ごとの降雨補正値を特定し、当該補正値を対象要素と関連付けて補正値保存部12内のそれぞれの保存部へ保存する(ステップ9)。当該降雨補正値の特定は、例えば、上記基準速度と平均速度との差や比等に基づき行うことができる。
【0037】
図5に、他の実施の形態の降雨補正値特定装置21を示す。図5において、図2及び図3と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5に示すのは、予め指定された条件ごとに降雨補正値を特定可能な降雨補正値特定装置21である。すなわち、当該装置21は、図3に示す降雨補正値特定装置1内の第1カウンタ912に代えて、第1−1カウンタ915及び第1−2カウンタ917を備え、第2カウンタ932に代えて、第2−1カウンタ935及び第2−2カウンタ937を備える。また、それぞれのカウンタに対応する、速度情報算出部916、918、936、938、速度情報保存部105〜108、補正値特定部115〜118、補正値保存部125〜128を備える。
【0038】
第1−1カウンタ915は、第1プローブ情報抽出部911で抽出された第1プローブ情報のうち第1の条件を満たすプローブ情報を第1−1プローブ情報としてカウントする。
第1−1速度情報算出部916は、第1−1プローブ情報のカウント数と当該第1−1プローブ情報に関連付けられた速度情報に基づいて、第1降雨状態かつ第1の条件のときの第1−1速度情報を算出する。算出された当該第1−1速度情報は、速度情報保存部10内の第1−1速度情報保存部105に保存される。
【0039】
第1−1補正値特定部115は、第1−1速度情報保存部105に保存された第1−1速度情報と、対象要素選択部4で選択された対象要素に予め設定された第1の条件に対応する基準速度とを比較して、第1降雨状態かつ第1の条件のときの基準速度からの第1−1補正値を特定する。特定された当該第1−1補正値は、第1−1補正値保存部125に保存される。
同様にして、第1−2補正値、第2−1補正値、第2−2補正値を特定し、保存部126〜128へそれぞれ保存する。
【0040】
降雨補正値特定装置21では、予め指定された条件として、第1の条件を午前6時〜午後6時、第2の条件を午後6時〜午前6時、とした。第1プローブ情報抽出部911に対応するカウンタの数は、条件の数に応じて適宜備えればよい。このように条件に応じて対象要素の降雨補正値を特定すれば、ナビゲーション装置において到達予想時間を演算する際、当該降雨補正値及び条件ごとに設定された基準速度を用いた、より精度の高い到達予想時間を演算することが可能となる。
当該条件は、目的に応じて適宜指定すれば良く、上記時間帯のほか、曜日、月日、季節、速度帯等とすることができる。当該指定された条件の数は、1であってもよく、2以上指定されていても良い。
【0041】
この発明のナビゲーション装置は、上記補正値保存部の情報をそのまま利用して構成される。
図6は、この発明の実施例のナビゲーション装置41の機能ブロック図である。
このナビゲーション装置41は、制御部410、メモリ部411、入力部412、出力部413、インターフェース部414、自車位置特定部415、車輌情報検出部416、探索部418、ナビゲーション情報保存部419、降雨状況判定部420、降雨時到達予想時間演算部421、降雨時到達予想時間保存部422及び案内ルート保存部423を備えている。
【0042】
制御部410はCPU、バッファメモリその他の装置を備えたコンピュータ装置であり、ナビゲーション装置41を構成する他の要素を制御する。
メモリ部411にはコンピュータプログラムが保存され、このコンピュータプログラムはコンピュータ装置である制御部410に読み込まれて、これを機能させる。このコンピュータプログラムはDVD等の汎用的な媒体へ保存できる。
入力部412は出発地や目的地等を設定するために用いられる。入力部412としてディスプレイの表示内容と協働するタッチパネル式の入力装置を用いることができる。
【0043】
出力部413はディスプレイを含み、ナビゲーションに必要な地図情報、到達予想時間情報、その他の情報を表示する。この出力部413は音声案内装置を含むこともできる。
インターフェース部414はナビゲーション装置41を無線ネットワーク等へ連結させる。
自車位置特定部415はGPS装置やジャイロ装置を用いて利用者端末の現在の位置を特定する。
【0044】
車輌情報検出部416は自車の走行状態を表す車輌情報を検出する。車輌情報としては、例えば、ワイパー情報、速度情報、座標情報、プローブカーを特定するID情報を備えることが好ましい。更には、時間情報、方位情報、高度情報、前後加速度、ヨーレイト、ABSウォーニングランプ、燃料消費量、電力残存容量、舵角(ハンドルの回転角度情報)、エンジン回転数、アクセル開度、ストップランプ、シフトレバー情報等を備えていてもよい。
【0045】
探索部418は指定された出発地から目的地までの経路を探索する。車輌利用者が目的地を設定すると、ナビゲーション装置が作動して目的地までの案内ルートが探索される。当該探索に際し、後述する降雨状況判定部420の判定結果に基づき、基準速度保存部433、第1補正値保存部121及び第2補正値保存部123を参照し、演算される降雨時到達予想時間が短くなるよう、案内ルートを決定する。当該探索された案内ルートは、後述する案内ルート保存部423に保存される。
【0046】
ナビゲーション情報保存部419は、道路情報保存部430及び地図情報保存部431を備える。
道路情報保存部430には道路や交差点など各道路要素の特性を規定する道路情報が保存される。例えば、道路(リンク)の特性を規定する道路情報として、道路種、道路幅、車線数、走行規制及びその他がある。この道路情報保存部430には、基準速度保存部3、第1補正値保存部121及び第2補正値保存部123が備えられる。
【0047】
地図情報保存部431には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
降雨状況判定部420は、現在及び/又は将来の降雨状況を判定する。降雨状況として、降雨の有無、度合いが挙げられる。現在の降雨状況として、例えば、車輌情報検出部416で検出されるワイパー情報に基づき判定することができる。また、将来の降雨状況としては、一定時間経過の降雨予測が座標情報と関連付けられたデータに基づき判定することができる。当該データとして、例えば、気象庁の提供する降水短時間予報や降水ナウキャストを用いることができる。
【0048】
降雨時到達予想時間演算部421は、降雨状況判定部420で判定された降雨状況に基づいて、案内ルートの降雨時到達予想時間を演算する。当該予想時間を演算する際、自車位置特定部415で特定された現在地から所定範囲内(例えば、半径5km以内)については、降雨状況判定部420で判定された現在の降雨状況に基づき、現在地から所定範囲外については将来の降雨状況に基づき、第1補正値保存部121あるいは第2補正値保存部123を参照して、降雨状況に応じた速度を用いて降雨時の到達予想時間を演算する。演算された当該降雨時到達予想時間は、降雨時到達予想時間保存部422に保存される。
案内ルート保存部423には、上述したように、探索部418で探索された経路が保存される。当該案内ルートには、リンク等の形状を併せて保存されていることが好ましい。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0050】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 21 降雨補正値特定装置
2 地図データ保存部
3 基準速度保存部
4 対象要素選択部
7 プローブ情報抽出部
9 速度情報特定部
11 補正値特定部
41 ナビゲーション装置
420 降雨状況判定部
421 降雨時到達予想時間演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報保存部から降雨補正値を特定するための対象要素を選択する対象要素選択部と、
選択された前記対象要素を含むプローブ情報を抽出するプローブ情報抽出部と、
抽出された前記プローブ情報から第1の降雨状態のときの第1の速度情報を特定する第1の速度情報特定部と、
前記プローブ情報から第2の降雨状態のときの第2の速度情報を特定する第2の速度情報特定部と、
前記第1の速度情報と、予め定められた前記対象要素の基準速度とを比較して第1の補正値を特定する第1の補正値特定部と、
前記第2の速度情報と、前記基準速度とを比較して第2の補正値を特定する第2の補正値特定部と、
を含む、ことを特徴とする降雨補正値特定装置。
【請求項2】
前記第1の降雨状態及び前記第2の降雨状態の仕分けは、前記プローブ情報に関連付けられた、ワイパー情報及び/又は雨滴センサー情報に基づき行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の降雨補正値特定装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の補正値は指定された条件ごとに特定される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の降雨補正値特定装置。
【請求項4】
前記指定された条件は、時間帯、曜日、月日、季節から選択される1以上の条件である、ことを特徴とする請求項3に記載の降雨補正値特定装置。
【請求項5】
前記指定された条件は、複数の前記基準速度に基づき設定される速度帯である、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の降雨補正値特定装置。
【請求項6】
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索部を備えるナビゲーション装置であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の降雨補正値特定装置で特定された第1の補正値を保存する第1の補正値保存部と、
前記降雨補正値特定装置で特定された第2の補正値を保存する第2の補正値保存部と、
降雨状況を判定する降雨状況判定部と、
前記降雨状況判定部が判定した前記降雨状況に基づき、前記第1の補正値保存部及び前記第2の補正値保存部を参照して、降雨時到達予想時間を演算する降雨時到達予想時間演算部と、
演算された前記降雨時到達予想時間を案内する降雨時到達予想時間案内部と、
を含む、ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
地図情報保存部から降雨補正値を特定するための対象要素を選択する対象要素選択ステップと、
選択された前記対象要素を含むプローブ情報を抽出するプローブ情報抽出ステップと、
抽出された前記プローブ情報から第1の降雨状態のときの第1の速度情報を特定する第1の速度情報特定ステップと、
前記プローブ情報から第2の降雨状態のときの第2の速度情報を特定する第2の速度情報特定ステップと、
前記第1の速度情報と、予め定められた前記対象要素の基準速度とを比較して第1の補正値を特定する第1の補正値特定ステップと、
前記第2の速度情報と、前記基準速度とを比較して第2の補正値を特定する第2の補正値特定ステップと、
を含む、ことを特徴とする降雨補正値特定方法。
【請求項8】
前記第1の降雨状態及び前記第2の降雨状態の仕分けは、前記プローブ情報に関連付けられた、ワイパー情報及び/又は雨滴センサー情報に基づき行われる、ことを特徴とする請求項7に記載の降雨補正値特定方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の補正値は指定された条件ごとに特定される、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の降雨補正値特定方法。
【請求項10】
前記指定された条件は、時間帯、曜日、月日、季節から選択される1以上の条件である、ことを特徴とする請求項9に記載の降雨補正値特定方法。
【請求項11】
前記指定された条件は、複数の前記基準速度に基づき設定される速度帯である、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の降雨補正値特定方法。
【請求項12】
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索ステップを備えるナビゲーション方法であって、
降雨状況を判定する降雨状況判定ステップと、
前記降雨状況判定ステップが判定した前記降雨状況に基づき、請求項7〜11のいずれか1項に記載の降雨補正値特定方法で特定された第1の補正値及び前記降雨補正値特定方法で特定された第2の補正値を参照して、降雨時到達予想時間を演算する降雨時到達予想時間演算ステップと、
演算された前記降雨時到達予想時間を案内する降雨時到達予想時間案内ステップと、
を含む、ことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項13】
降雨補正値を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図情報保存部から降雨補正値を特定するための対象要素を選択する対象要素選択手段と、
選択された前記対象要素を含むプローブ情報を抽出するプローブ情報抽出手段と、
抽出された前記プローブ情報から第1の降雨状態のときの第1の速度情報を特定する第1の速度情報特定手段と、
前記プローブ情報から第2の降雨状態のときの第2の速度情報を特定する第2の速度情報特定手段と、
前記第1の速度情報と、予め定められた前記対象要素の基準速度とを比較して第1の補正値を特定する第1の補正値特定手段と、
前記第2の速度情報と、前記基準速度とを比較して第2の補正値を特定する第2の補正値特定手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記第1の降雨状態及び前記第2の降雨状態の仕分けは、前記プローブ情報に関連付けられた、ワイパー情報及び/又は雨滴センサー情報に基づき行われる、ことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記第1及び第2の補正値は指定された条件ごとに特定される、ことを特徴とする請求項13又は14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記指定された条件は、時間帯、曜日、月日、季節から選択される1以上の条件である、ことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記指定された条件は、複数の前記基準速度に基づき設定される速度帯である、ことを特徴とする請求項15又は16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
所定のルールに従い出発地から目的地までのルートを探索する探索手段を備えるナビゲーションするためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
降雨状況を判定する降雨状況判定手段と、
前記降雨状況判定手段が判定した前記降雨状況に基づき、請求項13〜17のいずれか1項に記載のコンピュータプログラムで特定された第1の補正値及び前記コンピュータプログラムで特定された第2の補正値を参照して、降雨時到達予想時間を演算する降雨時到達予想時間演算手段と、
演算された前記降雨時到達予想時間を案内する降雨時到達予想時間案内手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項13〜請求項18のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−78129(P2012−78129A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221563(P2010−221563)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】