説明

限定自由移動ポンプ羽根車カプリング装置

【課題】ポンプモータの回転子シャフトに羽根車を結合する限定自由移動のカプリング装置、及びこのカプリング装置を組み込んだポンプモータを提供する。
【解決手段】カプリング装置10は、回転軸A周りで相対的角度変位するよう軸方向に係合された第1部分20及び第2部分22と、それらの部分に係合して前記相対的角度変位を防止する2つの球状結合部材24を備え、それらの部分の一方は、回転子12のシャフトに、他方は羽根車14に設けられ、第1部分は半径方向突出する2つの離間結合部材アーム30を含み、第2部分は回転軸Aと同軸的に延びる円筒壁66を含み、円筒壁に2つの離間弓形チャンネル50が形成される。各結合部材は各弓形チャンネルに受け入れられ半径方向に突出し弓形チャンネルの両端の間で自由移動できる。第1部分が第2部分に対して回転するとき結合部材アームが結合部材に係合しこれを各々の弓形チャンネルに沿って移動し、やがて結合部材が弓形チャンネルの端に当接し第1部分を第2部分に対してロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプモータの回転子のシャフトに羽根車を結合する限定自由移動のカプリング装置、及びこのカプリング装置を組み込んだポンプモータに係る。
【背景技術】
【0002】
EP0889573A1から、回転子シャフトの回転軸に対して横方向に延びる2つの直面した表面を利用するポンプ羽根車のための限定自由移動カプリングを提供することが知られている。一方の表面は、回転子シャフトに設けられ、そして他方の表面は、羽根車に設けられる。各表面には、弓形チャンネルが形成される。弓形チャンネルにはボールベアリングが設けられ、そこから軸方向に突出する。回転子のシャフトが回転すると、それに関連した横方向表面も回転し、ボールベアリングが弓形チャンネルの端へ移動されて、2つの表面を互いにロックさせる。その結果、羽根車に対する回転子シャフトの初期の角度変位に続いて、回転子シャフト及び羽根車が係合状態となり、羽根車が回転する。
【0003】
始動トルクが低いか又は限定されたモータの場合に、この初期の無負荷の自由移動は、モータが羽根車からの負荷のもとに入る前に、回転子シャフトの角速度を増加させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の構成で示されている顕著な問題は、横方向の表面に弓形チャンネルを設けると、ボールベアリングを通して回転軸に垂直にモーメントが作用し、ボールベアリングが弓形チャンネルに乗り上げて外れる傾向があることである。その結果、表面が軸方向に分離する。表面が軸方向に分離すると、外部の液体及び/又は粒状物体の侵入によりカプリング装置内に潜在的な汚染を招き、そしてボールベアリングがチャンネルを完全に乗り越えると、もはやトルクを羽根車に伝達することができず、ポンプを交換しなければならなくなる。
【0005】
既知の設計に対する明確な変更が試験された。2つの直面した横方向表面を密接な接近関係に保持する努力において羽根車と回転子シャフトの軸方向係合を強化することが研究された。しかしながら、これは、製造コストを高め、部分的な成功しか得られなかった。というのは、時間と共に、ボールベアリングがチャンネルの端を磨耗させる傾向があるからである。
【0006】
チャンネルの端壁の角度をカプリング装置の回転軸と平行になるように増加することも研究された。しかしながら、この場合も、ボールベアリングに接触し、ロック動作中に力を伝達するのは、チャンネルの端壁の縁である。時間と共に、チャンネルの縁が磨耗し、ボールベアリングが変位し又は転がり出すのを促進する。
【0007】
その結果、多大な研究及び開発に続いて、本発明は、この問題に対する解決策を提供することを追及した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、羽根車を回転子のシャフトに結合する限定自由移動のカプリング装置であって、このカプリング装置は、回転軸の周りで相対的に角度変位するように軸方向に係合された第1部分及び第2部分と、これら第1部分及び第2部分に係合して前記相対的な角度変位を防止するための2つの球状結合部材とを備え、第1及び第2部分の一方は、回転子のシャフトに設けられ、そして第1及び第2部分の他方は、羽根車に設けられ、第1部分は、カプリング装置の軸方向に延び且つ半径方向に突出する2つの離間された結合部材アームを含み、第2部分は、カプリング装置の回転軸と同軸的に延びる円筒壁と、この円筒壁に形成された2つの離間された弓形チャンネルとを含み、各々の結合部材は、各々の弓形チャンネルに受け入れられてそこから半径方向に突出すると共に、弓形チャンネルの端と端との間で自由に移動し、第1及び第2部分の一方が、第1及び第2部分の他方に対して回転するときに、第1部分の結合部材アームが結合部材に係合して、これを各々の弓形チャンネルに沿って移動し、やがて、結合部材が弓形チャンネルの端に当接して、第1及び第2部分を互いにロックするようにしたカプリング装置が提供される。
【0009】
好ましくは、結合部材アームは、半径方向外方に突出し、各アームの半径方向最外縁がカプリング装置の回転軸と平行に延びるようにする。
【0010】
好ましくは、第1部分は、結合部材を支持するベース素子と、カプリング装置の回転軸と同軸的にこのベース素子から延び、且つ結合部材の半径方向内方の移動を防止又は制限するボスとを備え、結合部材アームは、ベース素子から、ボスに沿って且つそこから半径方向外方に延びる。
【0011】
好ましくは、結合部材アームは、ベース素子の周縁に向かって途中まで延びる。
【0012】
好ましくは、第2部分は、第1部分及び結合部材が受け入れられる空洞を備え、この空洞は、カプリング装置の回転軸へと横方向に延びる第1表面を含み、この第1表面から円筒壁が延びている。
【0013】
好ましくは、結合部材は、弓形チャンネルから半径方向内方に突出する。
【0014】
好ましくは、弓形チャンネルの長手方向の程度は、同じ平面内である。
【0015】
好ましくは、結合部材アームは、半径方向内方に突出し、各アームの半径方向最内縁がカプリング装置の回転軸と平行に延びるようにする。
【0016】
好ましくは、第1部分は、第2部分及び結合部材が受け入れられる空洞を備え、結合部材アームは、この空洞へと半径方向内方に延びる。
【0017】
好ましくは、第2部分は、結合部材の支持面を含むベース素子と、カプリング装置の回転軸と同軸的にこのベース素子から延び、且つ結合部材の半径方向内方の移動を防止又は制限するボスとを備え、このボスは、円筒壁と、2つの離間された弓形チャンネルとを含む。
【0018】
好ましくは、第1部分が回転子のシャフトに設けられ、そして第2部分が羽根車に設けられる。
【0019】
或いは又、第1部分が羽根車に設けられ、そして第2部分が回転子のシャフトに設けられる。
【0020】
第2の態様によれば、本発明は、巻線型固定子と、シャフトを含む永久磁石回転子と、限定自由移動を許すカプリング装置を経てシャフトに接続されてそれにより駆動される羽根車とを有する同期モータを備えたポンプアッセンブリであって、カプリング装置は、回転軸の周りで相対的に角度変位するように軸方向に係合された第1部分及び第2部分と、これら第1及び第2部分に係合して前記相対的な角度変位を防止するための2つの球状結合部材とを備え、第1及び第2部分の一方は、回転子のシャフトに設けられ、そして第1及び第2部分の他方は、羽根車に設けられるようなポンプアッセンブリにおいて、第1部分は、カプリング装置の軸方向に延び且つ半径方向に突出する2つの離間された結合部材アームを含み、第2部分は、カプリング装置の回転軸と同軸的に延びる円筒壁と、この円筒壁に形成された2つの離間された弓形チャンネルとを含み、各々の結合部材は、各々の弓形チャンネルに受け入れられてそこから半径方向に突出すると共に、弓形チャンネルの端と端との間で自由に移動し、第1及び第2部分の一方が第1及び第2部分の他方に対して回転するときに、第1部分の結合部材アームが結合部材に係合して、これを各々の弓形チャンネルに沿って移動し、やがて、結合部材が弓形チャンネルの端に当接して、第1及び第2部分を互いにロックするようにしたポンプアッセンブリを提供する。
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を一例として詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付図面には、空動きカプリング装置とも称される限定自由移動カプリング装置10が示されている。
【0023】
図示されたカプリング装置10は、洗濯機用のポンプアッセンブリの一部分を形成する。このポンプアッセンブリは、2極永久磁石回転子12と、羽根車14とを備えている。カプリング装置10は、回転子12のシャフト16と羽根車14とを結合する。通常、ゴムリング、ガスケット又はブーツであるエラストマーシール18と、回転子12のベアリング21及びシール18を支持するためのブラケット19も含まれる。回転子シャフト16は、これらシール18及びブラケット19を通して突出する。シール18は、回転子12のチャンバー用のシールとして働き、そこに与えられるベアリンググリースを保護する。このポンプアッセンブリは、洗濯機に使用されるものであるから、ポンプアッセンブリが浸漬される水は、きれいではない。水中の粒状物体が回転子の自由な動きを物理的に妨げることがあり、従って、シール18が必要となる。好ましいシールは、シャフトと回転子チャンバーとの間を直接密封するブーツの形態である。図3に示す好ましいブーツは、ベアリング21とブラケット19との間に通すことによりベアリング21の弾力性マウントとなり、これにより、シャフト及び/又はベアリングの若干の不整列を受け容れるように、ブーツの材料が弾力で押しやられる状態のもとでシャフトと整列するある程度の自由度をベアリングに与える。ベアリング21は、図示されたようにブッシングであるのが好ましい。
【0024】
カプリング装置10は、通常プラスチック成形の第1部分20と、回転子12の回転軸Aの周りで限定相対的角度変位をするために第1部分20を受け入れる通常プラスチック成形の第2部分22と、好ましくはボールベアリングの形態である2つの同一の、通常ステンレススチールの球状結合部材24とを備えている。
【0025】
第1部分20は、第1直径を有する円筒状ベース素子26と、このベース素子26の片面から突出するように一体的に形成された円筒状ボス28と、2つの結合部材アーム30とを含む。
【0026】
円筒状ボス28は、ベース素子26の第1直径より小さい第2直径を有し、従って、ボス28の周りで且つそれに隣接して、ベース素子26上に第1の結合部材支持面32が設けられる。
【0027】
ベース素子26及びボス28の円筒軸B、Sは、同軸であり、そして回転子シャフトの開口34が、ボス28の円筒軸Sに沿って第1部分20を貫通する穴として形成される。回転子シャフトの開口34は、回転子12のアッセンブリの回転子シャフト16を受け入れる大きさにされる。典型的に、回転子シャフト16の端部36は、第1部分20において回転子シャフトの開口34に成形された金属の、通常は銅の、チューブ又はスリーブ37に係合する。このスリーブ37は、シャフト16の端部36に締りばめされる。
【0028】
それとは別に、回転子シャフトは、スリーブを介在させたりさせなかったりして、回転子シャフトの開口にキー止め又はスプライン留めできるが、第1部分20を回転子シャフト16に係合させる他の適当な手段を利用して、第1部分20を回転子シャフト16に対して固定保持することができる。例えば、回転子シャフトの端部と回転子シャフトの開口を相補的な非円形にしてもよい。
【0029】
又、第1部分20を、例えば、成形や鋳込みにより回転子シャフト16の一部分として一体的に形成できることも考えられる。
【0030】
結合部材アーム30は、互いに直径方向に対向して設けられる。これらアーム30は、ベース素子26からボス28の円筒状外壁35に沿って途中まで延びると共に、ボス28から半径方向外方に且つ第1の結合部材支持面32を横切って途中まで延びるように一体的に形成される。各アーム30の半径方向最外縁40は、カプリング装置10の回転軸Aと平行に延びる。
【0031】
各結合部材アーム30は、ボス28に沿って且つベース素子26から離れて、各結合部材24の直径にほぼ等しい距離だけ延びる。これは、若干大きくても、若干小さくてもよい。
【0032】
又、各結合部材アーム30は、各結合部材24の半径に等しいが、好ましくはそれより僅かに小さい距離だけ、第1の結合部材支持面32を横切って半径方向外方に延びる。
【0033】
各結合部材アーム30の半径方向最外周面44は、ボス28の円筒軸Sに対して横方向の平面においては弓形であり、且つボス28の円筒軸Sに平行な平面においては長方形である。
【0034】
カプリング装置10の第2部分22は、羽根車14の一部分を形成し、段付き空洞48を画成するハウジング46と、2つの球状結合部材24を各々受け入れるための2つの離間された細長い弓形チャンネル50とを備えている。羽根車14のブレード52は、ハウジング46の外面に形成され、そして一体的に形成されたプレート状半径方向スカート38に沿って且つブラケット19を越えて半径方向外方に突出する。半径方向スカート38では、4つのスルーホール39が、各羽根車ブレード52間で周囲方向に等離間されている。羽根車ブレード52とは逆の半径方向スカート38の下面は、ベアリング21の付近に低圧力エリアを生成する清掃ブレードを形成する8個の半径方向峰41を有する。
【0035】
段付き空洞48は、第1部分20のボス28を密接回転可能嵌合部として受け入れるための第1の円筒状チャンバー53と、第1部分20の結合部材アーム30を密接回転可能嵌合部として受け入れるための第2の円筒状チャンバー54と、第1部分20のベース素子26をこれも密接回転可能嵌合部として受け入れるための第3の円筒状チャンバー56とを備えている。
【0036】
第1、第2及び第3のチャンバー53、54及び56の円筒軸FC、SC及びTCは、同軸的である。
【0037】
第1チャンバー53は、その直径が、第2チャンバー54の直径より小さく、従って、第1チャンバー53と第2チャンバー54との間に半径方向外方に延びる第1肩部58を形成する。第2チャンバー54は、その直径が、第3チャンバー56の直径より小さく、従って、第2チャンバー54と第3チャンバー56との間に半径方向外方に延びる第2肩部60(1つ又は複数)を形成する。
【0038】
第1肩部58は、第1及び第2チャンバー53、54の円筒軸FC、SCに対して横方向に延びる第2の結合部材支持面62を画成する。
【0039】
第2肩部60(1つ又は複数)は、第3チャンバー56の円筒軸TCに対して横方向に延びるベース素子支持面64を画成する。
【0040】
第2チャンバー54は、カプリング装置10の回転軸Aと同軸的に延びる円筒壁66を有し、この円筒壁66には2つの弓形チャンネル50が互いに直径方向に対向して形成され、第2の結合部材支持面62を半径方向外方に更に延長させる。従って、円筒壁66は、2つの角度的に離間された位置において半径方向外方にくぼむようにされ、各弓形チャンネル50は、2つの半径方向に又は実質的に半径方向に延びる端壁68と、これら2つの端壁68間に延びる周囲壁70とを備えている。
【0041】
弓形チャンネル50は、第1、第2及び第3のチャンバー53、54及び56の円筒軸FC、SC、TCに対して横方向に延びる平面内に形成され、そして各球状結合部材24が自由に且つ独立して移動するのを許すに充分なほどの長手方向の程度を有する。
【0042】
第2チャンバー54の円筒軸SCに垂直な深さである各弓形チャンネル50の半径方向の程度Rは、各結合部材24がその各々のチャンネル50から半径方向内方に突出するようなものである。各弓形チャンネル50の半径方向の程度Rは、各結合部材24の半径に等しいが、それより僅かに小さいのが好ましい。
【0043】
円筒軸SCに平行で且つ半径方向の程度Rに垂直な深さである各弓形チャンネル50の軸方向の程度は、各結合部材24の直径に等しいか又はそれより僅かに大きい。
【0044】
カプリング装置10を組み立てるために、第1部分20が、上述したように、回転子シャフト16の端部36に最初に嵌合される。2つの球状結合部材24が、ベース素子26に設けられた第1の結合部材支持面32上で結合部材アーム30間に着座される。第1の結合部材支持面32の外縁に形成された峰33は、組み立て中に結合部材24を位置保持するためのリップとなる。峰33は、2つの区分に形成されるものとして示されているが、連続した峰でもよい。次いで、第1部分20及び結合部材24を第2部分22の空洞48に挿入して、第1部分20のボス28を第1チャンバー53に配置し、結合部材アーム30及び結合部材24を各々第2チャンバー54及び弓形チャンネル50に配置し、そしてベース素子26を第3チャンバー56に配置する。
【0045】
第1部分20を第2部分22の空洞48内に保持するために、第3チャンバー56の円筒壁74には、第1部分20のベース素子26の付近にグループ72が設けられる。ベース素子26の付近で回転子シャフト16にはカバープレート76が設けられる。このカバープレート76は、第3チャンバー56のグルーブ72とスナップ嵌合又はプッシュ嵌合として係合される。スプリングクリップ又はスプリングワッシャーのようなスプリング78がベース素子26とカバープレート76との間に介在され、カプリング装置10の第1部分20を第2部分22の空洞48へとバイアスさせる。スプリング78とカバープレート76との間のスライディングコンタクトとしてフラットワッシャー79が任意に設けられる。
【0046】
従って、結合部材24は、第1及び第2の結合部材支持面32、62の間に介在され、これは、結合部材24の軸方向移動を防止し又は制限する。又、結合部材24は、ボス28の円筒状外壁35と、第2チャンバー54の円筒壁66のくぼみ部分67との間にも介在され、従って、結合部材24の半径方向移動を防止し又は制限する。くぼみ部分67は、チャンネル50に対応する。
【0047】
細長い弓形チャンネル50は、結合部材24がこの弓形チャンネル50に沿って一端から他端へ周囲方向に移動するのを許す。
【0048】
結合部材アーム30の半径方向の程度Mは、第2部分22のハウジング空洞48の第2チャンバー54の非くぼみ部分69の直径より僅かに小さく、従って、結合部材24が除去された場合には、カプリング装置10の第1及び第2部分20、22が互いに360°以上自由に回転し得ることになる。換言すれば、結合部材アーム30は、チャンネル50の端にも、ハウジング空洞48の第2チャンバー54の円筒壁66にも直接係合することがない。
【0049】
使用中、結合部材24は、それらの各々の弓形チャンネル50から半径方向内方に突出するので、カプリング装置10の第1部分20が回転子の動作により羽根車14に対して回転するときには、半径方向に延びる結合部材アーム30が球状結合部材24と係合するように移動する。各結合部材アーム30は、その半径方向の程度Mが、各結合部材24の半径に等しいか又は実質的に等しいので、接触時にアーム30により結合部材24に加えられる力は、結合部材24の中心を通り又は実質的にその中心を通り、アーム30の接線方向又は実質的に接線方向に与えられる。
【0050】
回転子シャフト16、ひいては、カプリング装置10の第1部分20が、羽根車14に対して回転を続けると、アーム30が結合部材24を各弓形チャンネル50に沿ってプッシュし、やがて、結合部材24は、チャンネル50の端壁68に各々当接する。結合部材24が結合部材アーム30と弓形チャンネル50の端壁68との間にサンドイッチされ、又は挟まれた状態では、アーム30により結合部材24に付与された力が第2部分22へ伝達され、従って、第2部分22を第1部分20と共に回転させる。従って、カプリング装置10の第1及び第2部分20、22が互いにロックされた状態で、回転子シャフト16の回転と共に羽根車14が回転させられる。
【0051】
回転子12は、2極の永久磁石構成であるから、回転子は、始動時にいずれの方向にも回転し得る。従って、各結合部材24は、カプリング装置10の第1及び第2部分20、22がロックされ又は係合された状態になるまで、その弓形チャンネル50の一端から他端へ移動し得る。従って、回転子12に利用できる自由移動又は空動きの量が180°を越え、従って、羽根車14の負荷が加わるまでに回転子が180°以上始動回転するのを許す。
【0052】
自由移動の範囲は、通常、用途及び材料の強度に基づき選択される。好ましくは、大きな負荷ほど、広い範囲の自由移動を要求するが、これは、アーム及びチャンネルの端に、より大きなストレスを作用させる傾向がある。しかしながら、結合部材アームが大きく、チャンネルが短いほど、強度は増加するが、自由移動が少なくなり、従って、所与の負荷を移動するのに、より大きなトルクを必要とする。
【0053】
カプリング装置10により許される自由移動の典型的な範囲は、90°ないし270°である。
【0054】
各結合部材アーム30の半径方向表面42間の角度間隔は、180°未満であり、典型的に、5°ないし95°の範囲である。
【0055】
各端壁68の間で各弓形チャンネル50により描かれる弧は、180°未満であり、典型的に、5°ないし110°の範囲である。
【0056】
結合部材アーム及び弓形チャンネルにより描かれる角度は、必要に応じて、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0057】
図7は、本発明によるカプリング装置を合体したポンプアッセンブリを示す。モータ80は、上述したカプリング装置を通して羽根車14を駆動する回転子を有する。この例では、羽根車は、半径方向スカートを有していない。ポンプモータはフランジ82を有し、これにポンプ渦巻き部が取り付けられて、羽根車が存在するポンプ室が形成され又は完成される。スチールラミネーションのスタック及び固定子コア(見えない)で形成された固定子84は、回転子のための駆動力を与える。モータハウジング86でポンプモータのモータ殻が完成される。
【0058】
上述した実施形態に明白な変更を行なっても、同じ結果を達成できることが容易に明らかであろう。例えば、上述した第1部分を、ポンプの羽根車側に設けて、羽根車の一部分を形成するか又は羽根車に取り付けることができ、そして第2部分を回転子シャフトに設けることもできる。
【0059】
更に、弓形チャンネルをボスの円筒壁に設けることができると共に、結合部材アームを空洞に設けて、第2チャンバーの円筒壁から半径方向内方に突出させることもできる。この場合には、カプリング装置の第1部分は、結合部材アームを伴う空洞を有するハウジングを備え、そして第2部分は、ベース素子、ボス及び弓形チャンネルを備える。
【0060】
2つの直径方向に対向する結合部材アーム、2つの直径方向に対抗する弓形チャンネル及び2つの同じ球状結合部材を設けることで、回転子及び羽根車アッセンブリが使用中にバランス状態を保つことができる。これは、ポンプアッセンブリに非対称的な力が発生し及び/又は作用するのを防止するために極めて重要である。非対称的な力は、磨耗の増加、信頼性の低下、及び動作寿命の減少を招く傾向となる。
【0061】
しかしながら、3つ以上の結合部材アーム、弓形チャンネル及び結合部材を設けてもよいことが明らかであろう。
【0062】
カプリング装置の第1部分を回転子シャフトと軸方向に係合する別の構成では、回転子シャフトの遠方端に、内部に延びる軸方向スクリュースレッドを形成し、そしてスクリュースレッドをもつキャップ素子をそれとねじ係合して、キャップ素子を、ベース素子から離れたボスの端に重畳させることができる。
【0063】
又、第1部分を、例えば、成形又は鋳込みにより、回転子シャフトの一部分として一体的に形成できることも考えられる。
【0064】
従って、結合部材にモーメントが与えられる場合に、回転子シャフト及び羽根車の回転軸に垂直ではなく、その回転軸に平行な軸の周りでモーメントが発生するような限定自由移動カプリング装置を提供することができる。その結果、結合部材により第1及び第2部分に与えられる望ましからぬ力は、半径方向であり、従来技術のように軸方向ではない。第1及び第2部分の半径方向変形が生じるおそれは極めて低く、従って、チャンネルの端が磨耗した後も、結合部材が弓形チャンネルを乗り越える見込みは僅かである。
【0065】
軸方向に平行な壁に弓形チャンネルを設けたことにより、結合部材は、チャンネルから軸方向ではなく半径方向に突出することができる。又、結合部材アームは、弓形チャンネルから半径方向に、即ち半径方向内方又は半径方向外方のいずれかに便利に離間される。
【0066】
結合部材それ自体は、チャンネルの端との係合の衝撃に対してクッションとして作用し、従って、結合部材アームとチャンネルの端との間の直接的な係合に比して磨耗及びノイズを低減する。
【0067】
ボスは、適当な突起であり、例えば、栓でよい。
【0068】
上述した実施形態は、一例に過ぎず、当業者であれば、特許請求の範囲に定められた本発明の範囲から逸脱せずに種々の他の変更がなされ得ることが明らかであろう。例えば、ポンプアッセンブリは、洗濯機に適したものとして説明したが、当業者であれば、多数の他の用途も容易に明らかであろうし、従って、種々の非本質的部分、例えば、シールを省略できることも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】ポンプアッセンブリの回転子と羽根車を結合する本発明によるカプリング装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】回転子シャフトの回転軸に対して横方向に、羽根車を貫通して見たカプリング装置の断面図である。
【図3】図2の断面線X−Xに沿って見たカプリング装置の断面図である。
【図4】カプリング装置の第1部分の斜視図である。
【図5】羽根車の一部分として形成されたカプリング装置の第2部分を下から見た斜視図である。
【図6】カプリング装置の第2部分及び羽根車を除去したカプリング装置の斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に基づく洗濯機のポンプアッセンブリを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
10:カプリング装置
14:羽根車
16:回転子シャフト
20:第1部分
22:第2部分
24:球状結合部材
26:ベース素子
28:ボス
30:結合部材アーム
40:結合部材アームの最外縁
48:空洞
50:弓形チャンネル
58:第1肩部
66:円筒壁
68:弓形チャンネルの端
80:同期モータ
84:固定子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車を回転子のシャフトに結合する限定自由移動のカプリング装置であって、該カプリング装置(10)は、回転軸の周りで相対的に角度変位するように軸方向に係合された第1部分(20)及び第2部分(22)と、これら第1及び第2部分(20,22)に係合して前記相対的な角度変位を防止するための2つの球状結合部材(24)とを備え、前記第1及び第2部分(20,22)の一方は、回転子のシャフトに設けられ、そして前記第1及び第2部分の他方は、羽根車に設けられるようなカプリング装置において、前記第1部分(20)は、前記カプリング装置(10)の軸方向に延び且つ半径方向に突出する2つの離間された結合部材アーム(30)を含み、前記第2部分(22)は、前記カプリング装置の回転軸と同軸的に延びる円筒壁(66)と、この円筒壁(66)に形成された2つの離間された弓形チャンネル(50)とを含み、各々の前記結合部材(24)は、各々の前記弓形チャンネル(50)に受け入れられてそこから半径方向に突出すると共に、前記弓形チャンネル(50)の端(68)と端(68)との間で自由に移動し、前記第1及び第2部分(20,22)の一方が、前記第1及び第2部分(20,22)の他方に対して回転するときに、前記第1部分(20)の前記結合部材アーム(30)が前記結合部材(24)に係合して、これを各々の前記弓形チャンネル(50)に沿って移動し、やがて、前記結合部材(24)が前記弓形チャンネル(50)の端に当接して、前記第1及び第2部分(20,22)を互いにロックするようにしたことを特徴とするカプリング装置。
【請求項2】
前記結合部材アーム(30)は、半径方向外方に突出して、各アーム(30)の半径方向最外縁(40)が前記カプリング装置の回転軸と平行に延びるようにした請求項1に記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項3】
前記第1部分(20)は、前記結合部材(24)を支持するベース素子(26)と、前記カプリング装置の回転軸と同軸的にこのベース素子(26)から延び、且つ前記結合部材(24)の半径方向内方の移動を防止又は制限するボス(28)とを備え、前記結合部材アーム(30)は、前記ベース素子(26)から、前記ボス(28)に沿って且つそこから半径方向外方に延びる、請求項2に記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項4】
前記結合部材アーム(30)は、前記ベース素子の周縁に向かって途中まで延びる、請求項3に記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項5】
前記第2部分(22)は、前記第1部分(20)及び前記結合部材(24)が受け入れられる空洞(48)を備え、この空洞(48)は、前記カプリング装置の回転軸へと横方向に延びる第1肩部(58)を含み、この第1肩部(58)から前記円筒壁(66)が延びている、請求項1から4のいずれかに記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項6】
前記結合部材(24)は、前記弓形チャンネル(50)から半径方向内方に突出する、請求項1から5のいずれかに記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項7】
前記弓形チャンネル(50)の長手方向の広がりは、同じ平面内である、請求項1から6のいずれかに記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項8】
前記第1部分(20)は、回転子のシャフト(16)に設けられ、そして前記第2部分(22)は、前記羽根車(14)に設けられる、請求項1から7のいずれかに記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項9】
前記第1部分(20)は、前記羽根車(14)に設けられ、そして前記第2部分(22)は、回転子のシャフト(16)に設けられる、請求項1から7のいずれかに記載の限定自由移動のカプリング装置。
【請求項10】
巻線型固定子(84)と、シャフト(16)を含む永久磁石回転子(12)と、限定自由移動を許すカプリング装置(10)を経て前記シャフト(16)に接続されてそれにより駆動される羽根車(14)とを有する同期モータ(80)を備えたポンプアッセンブリであって、前記カプリング装置(10)は、回転軸の周りで相対的に角度変位するように軸方向に係合された第1部分(20)及び第2部分(22)と、これら第1及び第2部分(20,22)に係合して前記相対的な角度変位を防止するための2つの球状結合部材(24)とを備え、前記第1及び第2部分(20,22)の一方は、回転子(12)のシャフト(16)に設けられ、そして前記第1及び第2部分(20,22)の他方は、羽根車(14)に設けられるようなポンプアッセンブリにおいて、前記第1部分(20)は、前記カプリング装置の軸方向に延び且つ半径方向に突出する2つの離間された結合部材アーム(30)を含み、前記第2部分(22)は、前記カプリング装置の回転軸と同軸的に延びる円筒壁(66)と、この円筒壁(66)に形成された2つの離間された弓形チャンネル(50)とを含み、各々の前記結合部材(24)は、各々の前記弓形チャンネル(50)に受け入れられてそこから半径方向に突出すると共に、前記弓形チャンネル(50)の端壁(68)と端壁(68)との間で自由に移動し、前記第1部分(20)が前記第2部分(22)に対して回転するときに、前記第1部分(20)の前記結合部材アーム(30)が前記結合部材(24)に係合して、これを各々の前記弓形チャンネル(50)に沿って移動し、やがて、前記結合部材(24)が前記弓形チャンネル(50)の端壁(68)に当接して、前記第1及び第2部分(20,22)を互いにロックするようにしたことを特徴とするポンプアッセンブリ。
【請求項11】
シャフト(16)及び羽根車(14)を有する同期モータ(80)を備えたポンプアッセンブリにおいて、前記羽根車を前記シャフトに接続してそれにより回転駆動するようにした請求項1から9のいずれかに記載の限定自由移動カプリング装置(10)を特徴とするポンプアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−111440(P2008−111440A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−279597(P2007−279597)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(502458039)ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム (90)
【Fターム(参考)】