説明

陽イオン性熱硬化性樹脂およびそれを含有する紙

【課題】 本発明は、優れた湿潤紙力性能を有し、かつ、人体等に対する有害性や環境に対する影響の面から好ましくないAOXを樹脂中に含有しない湿潤紙力向上剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)脂肪族ジカルボン酸系化合物と(B)脂環式ジカルボン酸系化合物および(C)ポリアルキレンポリアミンを反応させて得られるポリアミドポリアミンに(D)2,3−エポキシスルホネート化合物を反応させて得られた陽イオン性熱硬化性樹脂および前記陽イオン性熱硬化樹脂を有効成分とする湿潤紙力向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドポリアミンと2,3−エポキシプロピルスルホネートよりなる陽イオン性熱硬化性樹脂に関するものである。さらに詳しくは、吸着性有機ハロゲン化合物(以降AOXと記す。)を含有せず、かつ湿潤紙力性能に優れる、ポリアミドポリアミン系の陽イオン性熱硬化性樹脂水溶液、および前記陽イオン性熱硬化性樹脂を含有する紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙の強度、特に湿潤強度を向上させる薬剤として、ポリアミドポリアミン―エピハロヒドリン樹脂が有用であることは、例えば特開昭56−34729号公報に記載されており、公知である。しかしながら、ポリアミドポリアミン―エピハロヒドリン樹脂水溶液中には、原料として用いられるエピハロヒドリン由来の副生成物として、ジハロヒドリンの1種である1,3−ジクロロ―2−プロパノール(以下DCPと記す)を代表とするAOXが含まれている。AOXは、人体等に対する有害性や環境に対する影響の面から、非常に注目されている物質であり、その削減は特に望まれている。
【0003】
AOXの含有量の少ないポリアミドポリアミン―エピハロヒドリン樹脂水溶液の製造方法に関しては、例えば、ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応において、(I)二段階反応を経る製造法(特許文献1)(II)二段階反応の途中で硫黄原子を含む求核性物質を加えて低分子有機ハロゲン化合物のハロゲン基を置換する製造方法(特許文献2)、(III)二段階反応の途中で塩基性物質を加えて未反応エピハロヒドリンの反応性を高める製造方法(特許文献3)、(IV)二段階反応の途中でアルコール系化合物を加える製造方法(特許文献4)、(V)二段階反応の途中でカルボキシル基を有する化合物を加える製造方法(特許文献5)、(VI)二段階反応を経て、更にアミン化合物を加えることで低分子量有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化を行う製造方法(特許文献6)、もしくは(VII)イオン交換樹脂と接触させる方法(特許文献7)、(VIII)炭素系吸着剤と接触させる方法(特許文献8)、(IX)多孔質合成樹脂と接触させる方法(特許文献9)等が提案されている。しかし、(I)の方法では非常に長い反応時間を必要とし、かつ、AOXの低減が充分ではなく、(II)〜(VI)のそれぞれの方法では、薬剤の添加並びに反応に長時間を必要とする。(VII)〜(IX)のそれぞれの方法では、AOXの吸着剤との接触工程及び、吸着剤の除去工程が必要となる。(I)〜(IX)いずれの方法においても、操作性上の煩雑さは避けられないうえにAOX自体は無くならないことから、優れた湿潤紙力性能を有し、かつ、人体等に対する有害性や環境に対する影響の面から好ましくない樹脂中のAOXを含有しない湿潤紙力向上剤の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開平2−170825号公報
【特許文献2】特開平6−220189号公報
【特許文献3】特開平6−1842号公報
【特許文献4】特開2001−048981号公報
【特許文献5】特開2003―231751号公報
【特許文献6】特開平11−166034号公報
【特許文献7】特開平10−152556号公報
【特許文献8】特開2000−136245号公報
【特許文献9】特開2004−51742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた湿潤紙力性能を有し、かつ、人体等に対する有害性や環境に対する影響の面から好ましくないAOXを樹脂中に含有しない湿潤紙力向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、
(A)脂肪族ジカルボン酸系化合物と(B)脂環式ジカルボン酸系化合物および(C)ポリアルキレンポリアミンを反応させて得られるポリアミドポリアミンに(D)2,3−エポキシスルホネート化合物を反応させて得られた陽イオン性熱硬化性樹脂を湿潤紙力向上剤として使用することにより、AOXを含有せず、さらには優れた湿潤紙力性能を有するということを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れた湿潤紙力性能を有することはもちろん、人体等に対する有害性や環境に対する影響の面から好ましくないAOXを樹脂中に含有しない湿潤紙力向上剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明においては、(A)脂肪族ジカルボン酸系化合物と(B)脂環式ジカルボン酸系化合物および(C)ポリアルキレンポリアミンの縮合反応により、ポリアミドポリアミンを生成させる。本発明における(A)脂肪族ジカルボン酸系化合物は、分子内に2個のカルボキシル基を有する脂肪族化合物の遊離酸およびそのエステル類や酸無水物総称する意味であり、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の遊離酸およびそのエステル類や酸無水物などが挙げられる。これらの中でもグルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、およびこれら遊離酸のエステル類や酸無水物が好ましい。
これらの(A)脂肪族ジカルボン酸およびその誘導体は、一種類のみ用いても、また二種類以上併用してもよい。
【0009】
本発明における(B)脂環式ジカルボン酸系化合物とは分子内に2個のカルボキシル基を有する脂環式化合物の遊離酸およびそのエステル類や酸無水物を総称する意味であり、分子内に2個のカルボキシル基を有する脂環式化合物としては、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸等の遊離酸およびそのエステル類や酸無水物等が挙げられる。
これらの中でもシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の遊離酸およびそのエステル類や酸無水物が好ましい。
これらの(B)脂環式ジカルボン酸系化合物は、一種類のみ用いても、また二種類以上併用してもよい。
【0010】
本発明における(C)ポリアルキレンポリアミンは、分子内に2個の第1級アミノ基および少なくとも1個の第2級アミノ基を有する脂肪族化合物であり、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミンなどが挙げられ、これらの中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イミノビスプロピルアミンが好ましい。
これらの(C)ポリアルキレンポリアミンは、一種類のみ用いても、また二種類以上併用してもよい。また、エチレンジアミンやプロピレンジアミンのような脂肪族ジアミンを、本発明の効果を阻害しない範囲で上記のポリアルキレンポリアミンと併用することもできる。
【0011】
本発明における(A)脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体、(B)脂環式ジカルボン酸及びその誘導体と(C)ポリアルキレンポリアミンとのポリアミド化反応において、通常、(C)1モルに対し、(A)と(B)の合計量を0.5〜2.0モルの範囲で、好ましくは、1.0〜1.2モルの範囲で反応させる。
また、(B)脂環式ジカルボン酸及びその誘導体は、(A)1モルに対し、0.01〜0.99モルの範囲で、好ましくは0.01〜0.12モルの範囲で用いる。
さらにこの際、本発明により得られる水溶性樹脂の性能を阻害しない範囲で、アミノカルボン酸類を併用することもできる。アミノカルボン酸類の例としては、グリシン、アラニン、アミノカプロン酸のようなアミノカルボン酸およびそのエステル誘導体、カプロラクタムのようなラクタム類などが挙げられる。
【0012】
ポリアミド化反応は加熱下で行われ、その際の温度は、通常、100〜250℃であり、好ましくは130〜200℃である。そして、生成ポリアミドポリアミンを50重量%水溶液としたときの25℃における粘度が400〜1000mPa・sとなるまで反応を続ける。ポリアミド化反応終了時の粘度が400mPa・sより低いと、最終製品である陽イオン性熱硬化性樹脂水溶液が十分な湿潤紙力向上効果を発現せず、また1000mPa・sを越えると、最終製品の安定性が悪くなり、ゲル化に至ることが多い。
【0013】
(A)脂肪族ジカルボン酸系化合物および(B)脂環式ジカルボン酸系化合物と(C)ポリアルキレンポリアミンとのポリアミド化反応において、触媒として、硫酸やスルホン酸類を用いることができる。スルホン酸類としては、ベンゼンスルホン酸やパラトルエンスルホン酸などが挙げられる。酸触媒は、(B)ポリアルキレンポリアミン1モルに対して0.005〜0.1モルの範囲で用いるのが好ましく、さらには0.01〜0.05モルの範囲がより好ましい。
【0014】
こうして得られるポリアミドポリアミンは通常、水溶液中で(D)2,3−エポキシスルホネート化合物との反応に供される。
【0015】
本発明における(D)2,3−エポキシスルホネート化合物は、式(1)において、R〜Rが特に限定されない任意の置換基を有する化合物を指す。
【化1】

本発明における(D)2,3−エポキシスルホネート化合物のうち、式(1)において、R、R、R、R、R、Rは相互に独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である化合物が好ましく、さらには、式(1)においてR、R、R、R、Rは相互に独立に水素、又はアルキル基であり、Rは水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である化合物がより好ましい。具体的な化合物としては、例えば、2,3−エポキシプロピルメタンスルホネート、2,3−エポキブチルメタンスルホネート、2,3−エポキシペンチルメタンスルホネート、2,3−エポキシヘキシルメタンスルホネート、2,3−エポキシプロピルエタンスルホネート、2,3−エポキシプロピルプロパンスルホネート、2,3−エポキシプロピルブタンスルホネート、2,3−エポキシプロピルペンタンスルホネート、2,3−エポキシプロピルヘキサンスルホネート、2,3−エポキシプロピルシクロヘキシルスルホネート、2,3−エポキシプロピルベンゼンスルホネート、2,3−エポキシプロピル−4−メチルベンゼンスルホネート、2,3−エポキシプロピルベンジルスルホネートなどが挙げられ、これらの中でも2,3−エポキシプロピルメタンスルホネート、2,3−エポキシプロピル−4−メチルベンゼンスルホネートが好ましい。
【0016】
これらの(D)2,3−エポキシプロピルスルホネート化合物は、一種類のみ用いても、また二種類以上併用してもよい。
【0017】
ポリアミドポリアミンと(D)2,3−エポキシプロピルスルホネート化合物との反応は、反応物濃度10〜80重量%、好ましくは10〜60重量%の水溶液中で、5〜95℃の範囲の温度で行われる。また、ポリアミドポリアミン中の第2級アミノ基に対する(D)2,3−エポキシプロピルスルホネート化合物は、ポリアミドポリアミン中の第2級アミノ基に対して0.01〜2.0モル倍となる範囲で用いるのが好ましい。(D)2,3−エポキシプロピルスルホネートは、通常、一括で添加されるが、2回以上に分割して添加することもできる。
反応は、反応物の樹脂分濃度を25重量%としたときの25℃における粘度が80〜400Pa・s、好ましくは100〜300mPa・sとなるまで続けられる。反応終了時の25重量%濃度の水溶液の粘度が80mPa・sより低いと、最終製品である樹脂の湿潤紙力向上効果が十分でなく、400mPa・sを越えると、樹脂水溶液の安定性が悪くなり、また抄紙過程でパルプスラリーに添加した際に強い発泡を伴い、抄紙作業を困難にするばかりでなく、紙の地合いを損なうことにもなる。
反応終了後は、必要により水で希釈した後、反応を停止させるために、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸のような酸を加えて、pHを1.5〜4に調整し、目的物である陽イオン性熱硬化性樹脂水溶液を得る。
【0018】
こうして得られる陽イオン性熱硬化性樹脂はポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂であり、本発明において湿潤紙力向上剤として用いられる。このポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂は、例えば、抄紙された紙にサイズプレス、ゲートロールコーター等を用いて、水溶液の形で塗布またはスプレーしたり、この樹脂を含む水溶液に紙を浸漬して紙にこの樹脂を含浸するなどの方法で紙中に含有させても、湿潤紙力向上効果を発揮するが、パルプスラリーにこの樹脂を添加して抄紙する、いわゆる内添法において、それもパルプの乾燥重量を基準に0.1重量%以上添加した場合に、高い効果を発揮する。パルプの乾燥重量基準でこの樹脂の添加量が0.1重量%未満の場合でも、湿潤紙力向上効果は発揮されるが、0.1重量%以上用いた場合に特にその効果が顕著である。この樹脂の添加量の上限は、5重量%程度までとするのが好ましい。湿潤紙力増強剤を表面塗工あるいは含浸加工する方法などが挙げられ、中でも湿潤紙力向上剤をパルプスラリーに添加する方法(内添)が好適である。
【0019】
本発明の湿潤紙力向上剤を含有する紙の製造法としては、このポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂とパルプとよく混合できるように添加すればよく、その添加時期に特別な制限はない。また、本発明の方法を実施するにあたり、抄紙自体は従来から公知の方法に従って行うことができる。すなわち、パルプの水性分散液に、前記のようなポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂を添加し、よく混合してから抄紙すればよい。
【0020】
この際、紙の製造に通常用いられている薬剤も、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。例えば、硫酸アルミニウム(いわゆる硫酸バンド)は、サイズ剤として、あるいはポリアクリルアミド等の定着剤として、一般的に使用されており、本発明においても用いることができる。また、他のサイズ剤なども使用可能である。
【0021】
本発明の紙とは本発明によって得られる陽イオン性熱硬化性樹脂が湿潤紙力向上剤として含有されており、用途としては例えばPPC用紙・感光紙原紙・感熱紙原紙のような情報用紙、ティシュペーパー・タオルペーパー・ナプキン原紙のような衛生用紙、化粧板原紙・壁紙原紙・印画紙用紙・積層板原紙・食品容器原紙のような加工原紙、重袋用両更クラフト紙・片艶クラフト紙などの包装用紙、電気絶縁紙、耐水ライナー、耐水中芯、新聞用紙、紙器用板紙等が該当し、何れの抄紙工程においても、抄造された紙に有用な湿潤紙力向上効果を与える。なお、本発明でいう紙には板紙も含まれる。
【0022】
本発明に使用されるパルプは特に限定されるものではなく、木材チップより得られるパルプ原料としては、クラフトパルプ、サルファイトパルプの晒し並びに未晒し化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプなどの晒し又は未晒し高収率パルプなどを挙げることができる。また、用途、品質に応じて合成繊維、内添填料、ガラス繊維など適宜選択/配合できる。
【0023】
本発明により得られる陽イオン性熱硬化性樹脂は、紙の湿潤紙力向上剤としての用途のみならず、製紙工程中に添加される填料の歩留向上剤、製紙速度を向上させるために使用される濾水性向上剤、あるいは工場排液などの汚水中に含まれる微粒子を除去するための沈殿凝集剤としても使用することができる。
【0024】
(実施例)
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中にある%および量比は、特にことわらないかぎり重量基準である。また粘度は、ブルックフィールド粘度計により測定した値である。
【0025】
[製造例1(ポリアミドポリアミンの製造例)]
温度計、リービッヒ冷却器および撹拌棒を備えた四つ口フラスコに、ジエチレントリアミン150.0g(1.45モル)、水10.77g、アジピン酸181.61g(1.24モル)、テトラヒドロフタル酸無水物20.01g(0.14モル)および71%硫酸4.41g(0.03モル)を仕込み、145℃まで昇温し、1時間還流した後、水を抜きながら、140〜160℃で12時間反応させた。その後、水294.51gを徐々に加えて、ポリアミドポリアミンの水溶液を得た。このポリアミドポリアミン水溶液は、固形分濃度50. 7%、25℃における粘度(ローター:No.2 回転数:60rpm)502mPa・sであった。
【0026】
[製造例2(ポリアミドポリアミンの製造例)]
温度計、リービッヒ冷却器および撹拌棒を備えた四つ口フラスコに、ジエチレントリアミン150.0g(1.45モル)、水10.77g、アジピン酸191.70g(1.31モル)、テトラヒドロフタル酸無水物10.39g(0.07モル)および71%硫酸4.41g(0.03モル)を仕込み、145℃まで昇温し、1時間還流した後、水を抜きながら、140〜160℃で12時間反応させた。その後、水294.51gを徐々に加えて、ポリアミドポリアミンの水溶液を得た。このポリアミドポリアミン水溶液は、固形分濃度50. 7%、25℃における粘度(ローター:No.2 回転数:60rpm)498mPa・sであった。
【0027】
[製造例3(ポリアミドポリアミンの製造例)]
温度計、リービッヒ冷却器および撹拌棒を備えた四つ口フラスコに、ジエチレントリアミン150.0g(1.45モル)、水10.8g、アジピン酸191.7g(1.31モル)、3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物および4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物の混合物11.5g(0.07モル)および71%硫酸4.4g(0.03モル)を仕込み、145℃まで昇温し、1時間還流した後、水を抜きながら、140〜160℃で12時間反応させた。その後、水294.5gを徐々に加えて、ポリアミドポリアミンの水溶液を得た。このポリアミドポリアミン水溶液は、固形分濃度50. 7%、25℃における粘度(ローター:No.2 回転数:60rpm)498mPa・sであった。
【実施例1】
【0028】
温度計、還流管および撹拌棒を備えた四つ口フラスコに、製造例1で得られたポリアミドポリアミン水溶液39.19g(2級アミノ基として0.09モル)に反応物濃度が35%になるように水52.72gを仕込み、20〜30℃で2,3−エポキシプロピルメタンスルホネート20.0g(0.13モル)を3時間かけて滴下した後、同温で4時間保温した。その後、水44.77gを加え、45〜70℃で保温して増粘させたあと、冷却した。その後、71%硫酸0.38g、水58.26gを加え、粘度31mPa・s(25℃、ローター:No.1 回転数:60rpm)、pH3.2のポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂Aの水溶液(固形分濃度15.3%)を得た。
【実施例2】
【0029】
温度計、還流管および撹拌棒を備えた四つ口フラスコに、製造例2で得られたポリアミドポリアミン水溶液39.19g(2級アミノ基として0.09モル)に反応物濃度が35%になるように水52.72gを仕込み、20〜30℃で2,3−エポキシプロピルメタンスルホネート20.00g(0.13モル)を3時間かけて滴下した後、同温で4時間保温した。その後、水44.77gを加え、45〜70℃で保温して増粘させたあと、冷却した。その後、71%硫酸0.38g、水58.26gを加え、粘度35mPa・s(25℃、ローター:No.1 回転数:60rpm)、pH3.4のポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂Bの水溶液(固形分濃度15.5%)を得た。
【実施例3】
【0030】
温度計、還流管および撹拌棒を備えた四つ口フラスコに、製造例2で得られたポリアミドポリアミン水溶液39.2g(2級アミノ基として0.09モル)に反応物濃度が35%になるように水52.7gを仕込み、20〜30℃で2,3−エポキシプロピルメタンスルホネート20.00g(0.13モル)を3時間かけて滴下した後、同温で4時間保温した。その後、水44.8gを加え、45〜70℃で保温して増粘させたあと、冷却した。その後、71%硫酸0.38g、水58.3gを加え、粘度35mPa・s(25℃、ローター:No.1 回転数:60rpm)、pH3.4の陽イオン性熱硬化性樹脂Cの水溶液(固形分濃度15.5%)を得た。
【0031】
(抄紙条件)
TAPPI式標準抄紙法により、以下の条件にて抄紙を行い、手抄き紙を得た。
使用パルプ:N−BKP/L−BKP=1/1
叩解度: 392cc
樹脂添加量:0.6%(樹脂固形分の対パルプ乾燥重量)
熱処理条件:110℃、4分間
抄紙平均米坪量:60g/m
【0032】
実施例1〜2で得られたポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂AまたはBの水溶液を用い、上記の抄紙条件にて、手抄き紙を作成した。得られた紙の湿潤引っ張り強さをISO 1924/1−1992に準じて測定し、JAPAN TAPPI No.8(2000)に記載された式を用いて得られた紙の湿潤引っ張り強さから湿潤裂断長を算出し、表1に示した。
【0033】
(DCP含有量)
実施例1〜2で得られたポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂AまたはBの水溶液中のDCP含有量はガスクロマトグラフィーにより定量した。表1中の%は、対水溶液での含有量である。
【0034】
[比較例1]
ポリアミドポリアミン−エポキシ樹脂水溶液を添加していない事以外は上記の抄紙条件に沿って抄紙を行い、手抄き紙を作成した。得られた紙の湿潤列断長の評価結果を表1に記載した。
【0035】
【表1】

1)0.0005%未満(検出限界)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族ジカルボン酸系化合物と(B)脂環式ジカルボン酸系化合物および(C)ポリアルキレンポリアミンを反応させて得られるポリアミドポリアミンに(D)2,3−エポキシスルホネート化合物を反応させて得られた陽イオン性熱硬化性樹脂。
【請求項2】
(D)2,3−エポキシスルホネート化合物が式(1)
【化1】


(式中、R、R、R、R、R、Rは相互に独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)の化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の陽イオン性熱硬化性樹脂。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の陽イオン性熱硬化樹脂を有効成分とする湿潤紙力向上剤。
【請求項4】
請求項3に記載の湿潤紙力向上剤を含有することを特徴とする紙。

【公開番号】特開2011−84678(P2011−84678A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239878(P2009−239878)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】