説明

障害物質の検出方法および障害物質の検出システム

本発明の課題は、イオン移動度分光計IMSの欠点を排除または最小化した上述の障害物質を検出する方法およびシステムを開発することである。ここで本発明によれば、試験ガス流がIMS(2)のほか複数の検出器へ達する前に試験ガスと基準ガスとを混合して供給する。次に調量前の測定ガス路(8)のガス流と基準ガスのガス流との比に関して得られた測定信号を用いて測定ガス中の元の障害物質濃度を計算する。さらにあらかじめ定義および記憶された測定値との信号レベルの簡単な比較またはパターン識別を行ってアラームをトリガする。また基準ガスおよび必要な付加的な洗浄ガスを供給することにより測定装置の洗浄も行われる。こうした方法およびシステムは周囲空気中の障害物質の識別に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念記載の障害物質の検出方法および請求項7の上位概念記載の障害物質の検出システムに関する。
【0002】
こうした検出方法および検出システムは周囲空気中の障害物質を識別するのに用いられる。事故または災害後に障害物質を検出することは、例えば消防または警察の人員にとって重要である。人員を保護するために独国では最も一般的な33の障害物質のリストが形成されている。このリストはいわゆる使用許容値(ETW値)と称される、呼吸保護手段なしで4時間にわたって安全に作業可能な濃度値を含んでいる。なお現在もこのリストは国際ガイドラインであるAcute Exposure Guideline Levels(AEGL)を考慮して拡張が試みられている。
【0003】
軍事分野ではもちろん、最近はシビリアン分野においても特に付加的な化学兵器物質または爆薬の検出は重要となってきている。
【0004】
危険物質の一部は主として個々の気体検出器またはそれらの種々の組み合わせから成る測定装置によって検出することもできる。この場合、個々の気体検出器の測定信号は予め測定および記憶された信号と比較され、測定されたステータスの記述が行われる。検出器の例として、光イオン化検出器PID、電気化学セルおよび金属酸化物センサ(MOSセンサ)などが挙げられる。2次元情報すなわちスペクトルを出力する測定装置が使用されることもある。その例としては質量分光計MS、フーリエ変換赤外分光計FTIRまたはイオン移動度分光計IMSが挙げられる。
【0005】
簡単な検出器、例えばPID,MOSセンサまたは電気化学セルなどは検出限界が上方のppb領域または下方のppm領域となる障害物質の検出には適しているが、化学兵器物質に対しては不感である。またその選択性は必要な安全性を維持して障害物質を検出するには不充分である。
【0006】
米国特許第2959677号明細書からPIDの主たる機能が公知である。UVランプを用いて検出すべきガスがイオン化され、続いて電気的に検出される。検出すべき化合物のイオン化ポテンシャルが最も重要である。UV放射のエネルギが化合物のイオン化エネルギよりも高ければこの化合物を検出することができる。ただしここではスペクトル情報は出力されない。しかもPIDのランプの汚染が早く、信号効率が劣化しやすいという欠点もある。
【0007】
米国特許第3631436号明細書からは金属酸化物センサの主たる機能が公知である。このセンサは還元ガスおよび酸化ガスと反応し、比較的強い横断感応性(Querempfindlichkeit)を有するため個々の物質を識別することができず、またエラー率が大きく警報発生器として使用することもできない。MOSセンサはガスに曝されてからの応答時間がきわめて短いという特徴を有するが、降下時間が長くかかるという欠点を有する。
【0008】
電気化学セルはMOSセンサよりは選択性が高いが、やはり横断感応が発生するので個々の物質を識別することは不可能である。また全ての物質に使用可能なセルは存在しない。米国特許第3925183号明細書には電気化学セルの主たる機能が記載されている。
【0009】
イオン移動度分光計IMSまたはプラズマクロマトグラフは従来から公知である。これらは他の分光計に比べて可動の煩雑なユニットを要さず、装置を小さく低コストに構成できる。また多数の化合物に対してppt〜ppb領域の検出限界が達成される。したがってこれらの装置は従来、軍事分野で化学兵器物質の検出に用いられてきた。
【0010】
IMSによる個々の成分の記述手段が例えば米国特許第3621240号明細書に記載されている。IMSではイオンの移動度が異なる点が利用される。この装置は通流系と、典型的には放射性のNi63シートを使用するイオン源と、イオンがスタート後に電気的に接続された格子を介して周囲圧での移動度にしたがって分離される電気的なドリフトチューブと、発生したイオンの形成した小さな電流を検出する測定センサとから成る。イオン源では大気圧で主として水クラスタをイオン化する空気分子がイオン化される。これは反応イオンとも称される。続いて陽子転移、電子転移または陽子抽出反応により障害物質がイオン化される。ドリフト区間の極性変化により正の駆動モードで正のイオンが、負の駆動モードで負のイオンが検出される。
【0011】
ポータブルシステムでは一般に通流系は隔壁膜から成っている。米国特許第4311669号明細書にはIMSのための隔壁膜通流系が記載されている。有利には、隔壁膜により測定信号への障害パラメータ(例えば湿分、圧力、温度など)の影響が低減され、IMS装置を小さくポータブルに製造することができる。ただしこの装置には隔壁膜のために測定の応答が遅いという欠点がある。
【0012】
特にIMSで欠点となるのは、機器のスイッチオン後に測定準備が整うまでの待機時間が長いということである。IMSは付着した障害物質を遮断中に洗浄しなければならないので、待機時間を必要とする。また僅かでもオーバドースすると測定不能となり、数十分から数時間も洗浄しなければならない。スペクトルが濃度に依存する点も厄介である。
【0013】
またIMSも部分的には選択性が小さい。なぜならイオン化室における競合反応がしばしば関心物質のイオン化を妨げ、検出不能にしてしまうからである。競合反応が起きると、例えばアンモニアなどの気体が存在する場合、陽子親和性の小さい多数の障害物質、例えば溶剤などは全くスペクトルとして現れない。これとは逆に溶剤が高濃度(ppm領域)で存在すると化学兵器物質の検出が全く不可能ではないもののかなり困難となる。ガスの混合気ではスペクトルが重なるので、エラー率が高まってしまう。また陽子親和性または電子親和性の小さい障害物質は検出限界を向上させてもなかなか検出できない。
【0014】
IMSの別の欠点として、測定領域が制限されていることが挙げられる。例えばイオン化源としてのβ線発生器では典型的には測定領域は最大でも2オーダーである。このため定量記述は困難となる。
【0015】
さらに多数の障害物質の蒸気圧が小さく、検出器の検出限界が反応に充分でないことも問題である。
【0016】
本発明の課題は、IMSの欠点を排除または最小化した上述の障害物質を検出する方法および装置を開発することである。
【0017】
この課題は請求項1記載の特徴を有する方法および請求項7記載の特徴を有する装置により解決される。
【0018】
有利な実施形態は従属請求項から得られる。本発明によれば上述の従来技術の欠点が回避される。
【0019】
IMSの幾つかの欠点は他の検出器を適切に組み合わせることによって克服される。付加的な検出器はIMSでは測定できない物質を検出する。PIDは例えばベンゾールなどの芳香族を検出する。フォスゲンなどの他の化合物は低い検出限界を有する電気化学セルによって検出される。MOSセンサの横断感応性も一酸化炭素などの障害物質の検出に利用される。
【0020】
IMSの選択性改善の補助手段として反応ガスの調量が行われる。選択的に、イオン移動度分光計の箇所に必要に応じてガスフラスコ、拡散細管または浸透容器に貯蔵されている1つまたは複数の反応ガスをバルブを介して調量する反応ガス調量ユニットが設けられる。米国特許第4551624号明細書によれば、有機リン化合物、例えば化学兵器物質などに対する正の駆動モードでのシステムの選択性はアセトンを調量することにより改善される。有機窒素化合物、例えば爆薬に対する負の駆動モードでの装置の選択性は四塩化炭素を調量することにより改善される。ただし、上述のように、反応ガスを調量すると全く検出できなくなる障害物質も多数存在する。
【0021】
したがって一般的な障害物質の検出は反応ガスを調量しないモードで行われる。調査結果の確認のための第2のステップとして反応ガスを調量するとよい。例えば正の駆動モードでアセトンまたはアンモニアを使用して化学兵器物質の検出を確実化し、負の駆動モードでジクロロメタンまたは四塩化炭素を調量して爆発性の化合物の検出を確実化する。
【0022】
基準ガス、例えば浄化された新気を制御された状態で通流系へ調量することにより、IMSのオーバドースが阻止される。希釈の制御パラメータとしてIMSまたはその他の高速な検出器、例えばMOSセンサが用いられる。付加的にIMSの測定領域を1〜2オーダー改善することができる。
【0023】
またスイッチオン後の測定装置の測定準備を促進するために、遮断状態の測定装置をつねに新気により洗浄する。洗浄ガス、例えばオゾン源から取得されたオゾンが測定装置の汚染低減に使用される。これにより装置を迅速に使用可能となる。
【0024】
本発明を以下に図示の実施例に則して詳細に説明する。
【0025】
本発明の障害物質の検出システムは、主軸線上に、例えばIMS2、PID3、電気化学セル(EZ)4および2つのMOSセンサ5,6から成る測定装置1を有する。測定すべきガスは第1のフィードポンプ9により吸入され、IMSへの測定ガス路とその他の検出器への測定ガス路とへ分割される。その他の検出器への測定ガス路はさらに2つのガス路、つまり電気化学セル4へのガス路と、MOSセンサ5,6を介してPID3へ向かうガス路とに分割される。これらのガス路は第1のフィードポンプ9の前方で1つにまとめられている。
【0026】
この測定装置では第2のフィードポンプ7を介して混合用の基準ガスも測定ガス路8へ供給される。基準ガスは上述の第1のフィードポンプ9により吸入される。各検出器を保護するために、測定装置は主として基準ガスを測定するように駆動される。測定信号が小さい場合には第2のフィードポンプ7の圧送量が低減され、測定される周囲空気の成分が増大される。基準ガスの調量は所定のステップにより行われるか、または検出器の測定信号に応じて行われる。
【0027】
IMSのスペクトルが複雑で特に判別の難しい場合には、反応ガス調量ユニット10により反応ガスをIMSへ供給してIMSの選択性を向上させることができる。測定信号を評価する際には反応ガス有りの場合と無しの場合のスペクトルを組み合わせてシステムの選択性を高める。
【0028】
電子回路およびコンピュータ11は個々の検出器のデータを処理し、これをディスプレイユニット12にグラフィック表示するか、音響的に出力する。例えばIMSでは反応イオンのピーク前後の測定信号を統合した信号のみが使用される。システムは負のモードでも正のモードでも動作可能であるので、4個の測定チャネルが得られる。他の検出器の信号と合わせて上述のコンフィグレーションでは8個の測定チャネルが使用できる。もちろんIMSのスペクトルをより精細に分割し、4個よりもはるかに多くのチャネルを評価に利用することもできる。
【0029】
チャネルの信号は続くパターン識別の入力信号として使用される。ここでは簡単なクラシフィケータ、例えばユークリッド距離のクラスタ分析装置から、弁別のクラスタ分析装置またはニューラルネットまで使用される。
【0030】
IMSスペクトルの表示、特にIMSの測定信号を時間の関数として表示することも可能であり、特に化学兵器物質などの個々の化合物の識別にとっては必須である。
【0031】
汚染表面の調査のために、例えば赤外線ランプにより表面を加熱して化合物を蒸発させる付加的な熱源13が用いられる。付加的に測定装置に測位装置、例えばGPSとメモリとが設けられる。こうして各検出器の測定信号を位置的かつ時間的に評価することができる。
【0032】
測定装置が使用されない場合、これは第3のフィードポンプ15を備えた専用の処理ステーション14に保管される。この第3のフィードポンプは測定装置を基準ガスで洗浄するために構成されている。これにより障害成分の測定装置への付着が阻止される。こうすれば測定装置は数分以内に再使用可能となる。処理ステーションは蓄電池の充電にも用いられ、またここから測定装置のデータを読み出したりこれを必要に応じて転送したりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の検出システムの概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1 測定装置、 2 イオン移動度分光計IMS、 3 光イオン化検出器PID、 4 電気化学セル、 5,6 金属酸化物センサMOS、 7 第2のフィードポンプ、 8 測定ガス路、 9 第1のフィードポンプ、 10 反応ガス調量ユニット、 11 電子回路およびコンピュータ、 12 ディスプレイユニット、 13 熱源、 14 処理ステーション、 15 第3のフィードポンプ、 16 電気線路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン移動度分光計IMSと該イオン移動度分光計では検出できない物質を検出するその他の検出器とを組み合わせた測定装置により測定を行う、
ガス状障害物質の検出方法において、
試験ガス流が各検出器またはそのうちのイオン移動度分光計に達する前にフィードポンプを介して調量された基準ガスと試験ガス流とを混合し、これにより検出器へ供給される障害物質の濃度をつねにあらかじめ設定された値以下に保持し、
必要に応じて測定中に反応ガス調量ユニットを介して反応ガスをイオン移動度分光計へ供給して測定装置の選択性を高め、
調量前の測定ガス路のガス流と基準ガスのガス流との比に関して得られた測定信号を用いて測定ガス中の元の障害物質濃度を計算し、
全ての検出器信号とあらかじめ定義および記憶された測定値の信号とを信号レベルの簡単な比較またはパターン識別により比較してアラームをトリガし、
測定フェーズ後には基準ガスおよび必要に応じて付加的な洗浄ガスを供給することにより測定装置を洗浄する
ことを特徴とする障害物質の検出方法。
【請求項2】
基準ガスを、所定量、例えば可能最高流量から始めて徐々に低減して供給し、続いて該ガス流をイオン移動度分光計とこれに並列なその他の検出器とに分割して供給することにより、ガス状障害物質が各検出器またはそのうちのイオン移動度分光計に達する前にフィードポンプを介して試験ガスと基準ガスと混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
高速なセンサ、例えばMOSセンサの相対信号レベルを直接に用いて、測定信号が増大する場合にはフィードポンプによって基準ガス流を短時間だけ増大し、また測定信号が低下する場合にはガス流をフィードポンプによって基準ガス流を短時間だけ低減することにより、1つまたは複数の検出器の測定信号を基準ガスの調量制御に使用し、さらに、比較的長い時間にわたる絶対信号レベルを用いて基準ガス流量の粗調整、つまり最大領域および最小領域を形成することにより、付加的に慣性を有するセンサ、例えばイオン移動度分光計の測定信号から基準ガスのガス流量の絶対領域を形成する、請求項3記載の方法。
【請求項4】
ガス状障害物質を、イオン移動度分光計と芳香族検出用の光イオン化検出器との組み合わせ、必要に応じて付加的にフォスゲンなどの個々の物質の検出用の電気化学セルおよび例えば炭化水素または一酸化炭素検出用のMOSセンサへ供給し、その際に試験ガス流を分割して直接にイオン移動度分光計およびこれに並列な他の検出器へ供給する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工業ソースの障害物質を検出する標準動作に代えてまたは標準動作の直後、通常の測定動作の前後に1つまたは複数の反応ガスを反応ガス調量ユニットを介して定義された状態で、つまり検出すべき障害物質よりも小さい陽子親和性または電子親和性を有し、かつ複数の障害的な化合物がイオン化されないために高い特異性を有する反応ガスを調量することにより、高い陽子親和性または電子親和性を有する障害物質、例えば化学兵器物質または爆薬を選択検出する測定動作を開始し、さらに必要に応じて反応ガスなしの状態と反応ガス有りの状態とにおけるイオン移動度分光計の測定信号を組み合わせて評価する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
測定フェーズの前後に、処理ステーションのフィードポンプを介して基準ガスにより洗浄を行い、測定装置から測定ガスまたは反応ガスを除去し、続いて必要に応じてフィードポンプからのガス流の送出を短時間だけ中断してオゾンなどの洗浄ガスが送出または発生されるようにし、さらに洗浄ガスを測定装置全体へ供給することにより汚染率を低下させて測定装置を直ちに再使用可能とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ガス管を介して第1のフィードポンプ(9)へ接続されたイオン移動度分光計(2)およびその他の検出器から成るポータブルな測定装置(1)と、各検出器の前方またはそのうちのイオン移動度分光計の前方の第2のフィードポンプ(7)を備えた基準ガスの調量制御装置と、反応ガス調量ユニット(10)と、電子回路およびコンピュータ(11)と、ディスプレイユニット(12)と、付加的な光学的音響的警報信号発生器と、測定装置の洗浄のための第3のフィードポンプ(15)を備えた処理ステーション(14)とが配置されている
ことを特徴とするガス状障害物質の検出システム。
【請求項8】
測定ガスが3つの測定ガス路、つまりイオン移動度分光計(2)へのガス路と電気化学セル(4)へのガス路と2つのMOSセンサ(5,6)およびこれに続く光イオン化検出器(3)へのガス路とへ分割されるように各検出器が配置されており、選択的に、イオン移動度分光計の箇所に必要に応じてガスフラスコ、拡散細管または浸透容器に貯蔵されている1つまたは複数の反応ガスをバルブを介して調量する反応ガス調量ユニット(10)が位置している、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
処理ステーション(14)が測定装置に設けられており、洗浄ガスの発生源から洗浄ガスを第3のフィードポンプ(15)により測定装置へ供給して洗浄を行うか、または例えば光イオン化検出器のUVランプへアクセス可能であるか、または蓄電池の充電ユニットなどを備えている、請求項7記載のシステム。
【請求項10】
表面検査のために表面の物質を蒸発させる熱源(13)、有利には赤外線ランプが測定装置に配置されている、請求項7記載のシステム。
【請求項11】
処理ステーション(14)での保管時に読み出しおよび必要に応じた中央コンピュータへのデータ転送を行う測位装置およびメモリが測定装置に設けられている、請求項7記載のシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験ガス流を吸入し、イオン移動度分光計IMSと該イオン移動度分光計では検出できない物質を検出するその他の検出器とを組み合わせた測定装置により測定を行い、得られた測定値を測定信号へ変換する
ガス状障害物質の検出方法において、
試験ガス流が検出器またはそのうちのイオン移動度分光計に達する前にフィードポンプを介して調量された基準ガスと試験ガス流とを混合し、これにより検出器へ供給される障害物質の濃度をつねにあらかじめ設定された値以下に保持し、
IMSのスペクトルが複雑であった場合には測定中に反応ガス調量ユニットを介して反応ガスをイオン移動度分光計へ供給してIMSの選択性を高め、
試験ガスと基準ガスとの混合比に関する測定信号を測定ガス中の障害物質の元の濃度へ適合させ、
全ての検出器信号とあらかじめ定義および記憶された測定値の信号とを信号レベルの簡単な比較またはパターン識別により比較してアラームをトリガし、
測定フェーズ後には基準ガスおよび必要に応じて付加的な洗浄ガスを供給することにより測定装置を洗浄する
ことを特徴とする障害物質の検出方法。
【請求項2】
基準ガスを、所定量、例えば可能最高流量から始めて徐々に低減して供給し、続いて該ガス流をイオン移動度分光計へ供給するか、イオン移動度分光計およびこれに並列なその他の検出器へ分割して供給することにより、ガス状障害物質の混合前またはイオン移動度分光計に達する前にフィードポンプを介して試験ガスと基準ガスとを混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
高速なセンサ、例えばMOSセンサの相対信号レベルを直接に用いて、測定信号が増大する場合にはフィードポンプによって基準ガス流を短時間だけ増大し、また測定信号が低下する場合にはガス流をフィードポンプによって基準ガス流を短時間だけ低減することにより、1つまたは複数の検出器の測定信号を基準ガスの調量制御に使用し、さらに、比較的長い時間にわたる絶対信号レベルを用いて、基準ガス流量の粗調整、つまり最大領域および最小領域を形成することにより、付加的に慣性を有するセンサ、例えばイオン移動度分光計の測定信号から基準ガスのガス流量の絶対領域を形成する、請求項3記載の方法。
【請求項4】
ガス状障害物質を、イオン移動度分光計と芳香族検出用の光イオン化検出器との組み合わせ、これらによって検出できない物質がある場合にはフォスゲンなどの個々の物質の検出用の電気化学セル、および付加的に例えば炭化水素または一酸化炭素検出用のMOSセンサへ供給し、その際に試験ガス流を分割して直接にイオン移動度分光計およびこれに並列な他の検出器へ供給する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工業ソースの障害物質を検出する標準動作の直後、通常の測定動作の前後に1つまたは複数の反応ガスを反応ガスの調量ユニットを介して定義された状態で、つまり当該の反応ガスを検出すべき障害物質よりも小さい陽子親和性または電子親和性を有し、かつ複数の障害的な化合物がイオン化されないために高い特異性を有するものとして調量することにより、高い陽子親和性または電子親和性を有する障害物質、例えば化学兵器物質または爆薬を選択検出する測定動作を開始し、さらに必要に応じてイオン移動度分光計の測定信号を反応ガスなしの状態と反応ガス有りの状態とにおいて評価する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
測定フェーズの前後に、処理ステーションのフィードポンプを介して基準ガスにより洗浄を行い、測定装置から測定ガスまたは反応ガスを除去し、続いて必要に応じてフィードポンプからのガス流の送出を短時間だけ中断してオゾンなどの洗浄ガスが送出または発生されるようにし、さらに洗浄ガスを測定装置全体へ供給することにより汚染率を低下させて測定装置を直ちに再使用可能にする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ガス管を介して第1のフィードポンプ(9)へ接続されたイオン移動度分光計(2)およびその他の検出器、例えば光イオン化検出器(3)、電気化学セル(4)および金属酸化物センサ(5,6)から成るポータブルな測定装置(1)を有する
ガス状障害物質の検出システムにおいて、
検出器の前方に第2のフィードポンプ(7)を備えた基準ガスの調量制御装置が設けられ、付加的にイオン移動度分光計の前方に反応ガス調量ユニット(10)が設けられており、
さらに電子回路およびコンピュータ(11)と、ディスプレイユニット(12)と、付加的な光学的音響的警報信号発生器と、測定装置の洗浄のための第3のフィードポンプ(15)を備えた処理ステーション(14)とが配置されている
ことを特徴とするガス状障害物質の検出システム。
【請求項8】
測定ガスが3つの測定ガス路、つまりイオン移動度分光計(2)へのガス路と電気化学セル(4)へのガス路と2つのMOSセンサ(5,6)およびこれに続く光イオン化検出器(3)へのガス路とへ分割される、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
反応ガス調量ユニット(10)はイオン移動度分光計の箇所に配置されており、該ユニットにはバルブを介し必要に応じてガスフラスコ、拡散細管または浸透容器に貯蔵されている1つまたは複数の反応ガスが調量される、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
処理ステーション(14)が測定装置に設けられており、該処理ステーションでは洗浄ガスの発生源から洗浄ガスを第3のフィードポンプ(15)により測定装置へ供給して洗浄を行うか、または例えば光イオン化検出器のUVランプへアクセス可能であるか、または蓄電池の充電ユニットなどを備えている、請求項7記載のシステム。
【請求項11】
表面検査のために表面の物質を蒸発させる熱源(13)、有利には赤外線ランプが測定装置に配置されている、請求項7記載のシステム。
【請求項12】
処理ステーション(14)での保管時に読み出しおよび必要に応じた中央コンピュータへのデータ転送を行う測位装置およびメモリが測定装置に設けられている、請求項7記載のシステム。

【公表番号】特表2006−519985(P2006−519985A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504251(P2006−504251)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000427
【国際公開番号】WO2004/079359
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(500399105)エアセンス アナリティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Airsense Analytics GmbH
【住所又は居所原語表記】Hagenower Strasse 73, D−19061 Schwerin, Germany
【Fターム(参考)】