説明

集積パネルと流体デバイスとの接続構造

【課題】流体配管の集積化を促進すべく、さらにコンパクト化が可能な集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供する。
【解決手段】集積パネル1とバルブ2とを、各々の管状流体通路3a,7と環状流体通路4a,8とを同心状に配置し、内外の環状ガスケットG1,G2を介してシール状態で接続する同心状二重流路型の接続構造において、フッ素樹脂製の流体給排口部1A,2Aに環状突起11,21,31,41を、フッ素樹脂製のガスケットG1,G2には環状溝51,61を夫々形成し、両流体給排口部1A,2Aどうしを引寄せて維持する維持手段Iにより、これら環状突起と環状溝とが嵌り合って嵌合シール部10を形成する接合状態が維持され、内側の第1ガスケットG1は、その内周面54aが管状流路3a,7の外壁面を兼ね、かつ、外周面55aが環状流体通路4a,8の内壁面を兼ねる多機能化された中間ガスケットに構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積パネルと流体デバイスとの接続構造に係り、詳しくは、半導体製造や医療・医薬品製造、食品加工、化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる高純度液や超純水、或いは洗浄液の配管系等において今後需要が見込まれる流体用の集積パネルと、ポンプ、バルブ、アキュムレータ等の流体デバイスとをガスケットを介してシール状態で連通接続させるための接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記接続構造として、例えば、流体デバイスの一例であるバルブと、流体通路が内部形成された集積パネルとを一対の給排流路どうしを連通させて接続連結するものがあり、特許文献1や特許文献2において開示された接続構造が知られている。特許文献1で開示される接続構造は、一対の給排流路を近接させて配列し、夫々に独立したリング状のガスケットを介して複数のボルトで液密に接続連結させるものであり、特許文献2で開示される接続構造は、一対の給排流路を近接させて配列し、それら一対の給排流路に対応する一対の流路孔を有した単一のガスケットを単一の外ねじナットを用いて接続連結させるものである。
【0003】
特許文献1や2に開示されている接続構造は、いずれも多数の流体機器を流体ブロックに集積させて取付ける構造、いわゆる集積配管構造を採るものであり、これは配管系全体のコンパクト化やモジュール化が可能となる点で有用なものである。そこで、コンパクト化やモジュール化をさらに促進させるには、流体デバイス単品の小型化は勿論であるが、その流体デバイス自体のコンパクト化が実現されたその次には、集積パネルと流体デバイスとの接続構造をコンパクト化することに対する要求が生じると予測される。
【特許文献1】特開2001−82609号公報
【特許文献2】特開平10−169859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、上述した利点を有する集積パネルを用いた配管系における集積化を促進すべく、さらにコンパクト化が可能となる集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提案し、実現させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、
集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、管状の流体通路3a又は環状の流体通路と一以上の環状の流体通路4aとが同心状に形成されて開口する第1流体給排口部1Aを備えた集積パネル1の前記第1流体給排口部1Aと、管状の流体通路7又は環状の流体通路と一以上の環状の流体通路8とが同心状に形成されて開口する第2流体給排口部2Aを備えた流体デバイス2の前記第2流体給排口部2Aとを、それぞれの複数の流体通路3a,4a,7,8が相対応され、かつ、前記第1流体給排口部1Aと前記第2流体給排口部2Aの間に介在される複数のリング状のガスケットG1,G2によって各流体通路3a,4a,7,8がシールされる状態で連通接続するにあたり、
前記第1流体給排口部1A及び前記第2流体給排口部2Aには、各端面に開口する前記各流体通路3a,4a,7,8の外径側部分に環状突起21,11,41,31が形成され、
前記各ガスケットG1,G2は、前記第1,第2流体給排口部1A,2Aの相対応する前記流体通路3a,4a,7,8どうしを連通すべく形成された流体経路W1,W2と、前記第1及び第2流体給排口部1A,2Aの端面に形成された前記環状突起21,11,41,31のそれぞれに嵌合すべく前記流体経路W1,W2の外径側部分に形成された一対の環状溝51,61とを有する可撓性を備えた材料から構成されており、
前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとが互いに前記複数のガスケットG1,G2を介して引寄せられることにより、前記第1流体給排口部1Aの前記環状突起21,41と前記各ガスケットG1,G2の一端の環状溝51,61とが、及び前記第2流体給排口部2Aの前記環状突起11,31と前記各ガスケットG1,G2の他端の前記環状溝51,61とがそれぞれ嵌め合わされて嵌合シール部10が形成され、かつ、前記第1及び第2流体給排口部1A,2Aの端面における前記環状突起21,11,41,31の内外径側に形成される環状押え部分22,23,12,13,42,43,32,33と、前記ガスケットG1,G2における前記環状溝51,61を形成するために軸心方向に突出形成された内外径側の周壁端部52,53,62,63とが当接して、前記内外径側の周壁端部52,53,62,63が前記環状溝51,61と前記環状突起21,11,41,31との嵌合によって拡径又は縮径変形するのを抑制又は阻止する拡縮変形防止手段Yが形成される接合状態が構成され、
前記拡縮変形防止手段Yは、前記環状押え部分22,23,12,13,42,43,32,33と前記環状突起21,11,41,31とで囲まれた谷部24,25,14,15,44,45,34,35が奥窄まり状となるように前記環状押え部分22,23,12,13,42,43,32,33における環状突起側の側周面が傾斜したテーパ周面22a,23a,12a,13a,42a,43a,32a,33aと、前記内外径側の周壁端部52,53,62,63に形成されたテーパ周面52a,53a,62a,63aとの圧接によって構成されるとともに、
前記複数のガスケットG1,G2のうち、前記接合状態において内径側及び外径側の双方に前記流体通路W1,W2が存在する中間ガスケットG1は、これの外周部55aが前記中間ガスケットG1の外径側に存する前記第1流体給排口部1Aの前記環状の流体通路8及び前記第2流体給排口部2Aの前記環状の流体通路4aを連通する環状の流体経路W2を形成するための壁面となる状態に形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記環状押え部分22,23,12,13,42,43,32,33のテーパ周面22a,23a,12a,13a,42a,43a,32a,33aと前記内外径側の周壁端部52,53,62,63のテーパ周面52a,53a,62a,63aとの圧接によってシール部S2を形成するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記ガスケットGの断面形状が略H型形状を呈するものに構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記環状溝51,61に前記環状突起21,11,41,31を入れ易くすべく、前記環状突起21,11,41,31がその先端の内周角部及び/又は外周角部が面取りされた断面先細り形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記嵌合シール部10及び前記拡縮変形防止手段Yが形成される前記接合状態を維持する維持手段Iが装備されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造において、前記維持手段Iは、前記第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとを引寄せて前記接合状態を得るための引寄せ機能を発揮するものに構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、二以上の流体通路を同心状に多重配管することにより、複数の流体通路を独立して配列する構造に比べて接続構造部分のコンパクト化を図ろうとする手段である。第1、2流体給排口部にそれぞれに形成された環状突起と、ガスケットの一端面及び他端面にそれぞれ形成された環状溝とが、軸線方向の相対移動によって互いに嵌り合って嵌合シール部を形成するので、これら両者が多少軸線方向にずれ動くことがあっても環状突起と環状溝とによる嵌合シール部のシール機能が維持され、第1,2流体給給排口部間からの液漏れを阻止する優れたシール性を発揮し続けることが可能になる。つまり、第1、2流体給排口部どうしを、その引寄せられる方向において嵌合しあう構造とするものであり、増し締めを殆ど行わなくても良好なシール性が維持できるとともに、その組付け作業性も改善される集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することができる。
【0012】
例えば、半導体製造設備における洗浄装置の配管系統にこのような接続構造を用いれば、良好なシール性を確保し得ながら装置の占有面積を減少できてコスト上有利であるとともに、大流路が確保されることによって循環流量を多くし、薬液の高純度化を高めて歩留まり向上に寄与できるという効果を奏することが可能である。
【0013】
ところで、凹に凸を挿入しての嵌合構造においては、例えこれら両者が互いに同じ材質のものであっても、凸側の部材は殆ど変化(圧縮変形)せず、凹側の部材が拡がり変形する傾向のあることが一般に知られている。そこで、本請求項1においては、集積パネルや流体デバイスに凸である環状突起を、かつ、ガスケットに凹である環状溝を形成する構成としてあるので、クリープや経時変化によって変形するのは、集積パネルや流体デバイスに比べて小さな部品であるガスケット側であって集積パネルや流体デバイス側は殆ど変形しないから、ガスケットを交換することで長期に亘って良好なシール性能を維持し得る利点が廉価に実現される効果もある。
【0014】
前述したように、凹凸嵌合においては凹側が広がり変形し易い傾向があるから、それは即ち本発明においては環状溝を形成するためにガスケットに形成される内外径側の周壁端部が拡径又は縮径変形することを意味している。そこで、内径側の周壁端部の縮径変形、及び外径側の周壁端部の拡径変形を抑制又は阻止する環状押え部分を第1及び第2流体給排口部に形成してあるから、内外径側の周壁端部が拡径又は縮径変形することを解消又は軽減して環状突起の内外周面と環状溝の内外周面とが強い圧接力でもって嵌合でき、これら両者の嵌合による優れたシール機能を所期どおりに発揮させることができる。しかも、環状押え部分が存在することによって周壁端部の剛性不足を補うことができるので、これらが存在しない場合に比べてガスケットの周壁端部の厚みを薄くすることが可能であるから、ガスケットの幅寸法を小さくして流体通路の全体径のコンパクト化、つまりは集積パネルと流体デバイスとの接続構造としてのコンパクト化が図れる利点もある。
【0015】
そして、接合状態においては、第1及び第2流体給排口部の環状突起と、各ガスケットの一端面又は他端面の環状溝との嵌合部分の内径側に、第1及び第2流体給排口部のテーパ周面とガスケットのテーパ周面とが圧接される構成が存在しており、それらテーパ周面どうしの当接により、接続構造部分をコンパクト化することが可能である。加えて、テーパ周面どうしを圧接させる構造であるから、集積パネルや流体デバイスとガスケットとを強く押し付けるに従って圧接力が増し、上記コンパクト化及び環状突起と環状溝との嵌合によるシール性能向上効果をより強化できる利点がある。また、それによってテーパ周面どうしの間における液溜りの生じない接続構造とすることが可能である。
【0016】
また、拡縮変形防止手段により、接合状態においてはガスケットの環状溝が拡がらないようになるので、環状溝の開口部付近の部位(先端部)と環状突起の根元付近の部位(基端部)との強い圧接状態、即ち優れたシール状態を実現及び保持することができる。この環状突起の根元部位での確実なシール機能により、流体やそれに含まれる混合物、異物が環状溝の根元部分に及び難く又は及ばないようになり、使用後においてシール部に流体等が残留することが無く、クリーンな状況を維持できる利点も得られる。
【0017】
加えて、ガスケットの内外に流体通路が形成されることとなる中間ガスケットにおいては、その内周部だけでなく、外周部も流体経路の壁面に兼用される構造としたので、内外で隣り合う流体通路の間隔は中間ガスケットの厚みだけとなって、複数の流体通路を極力径方向に近づけて配置することが可能になり、集積パネルと流体デバイスとの接続構造部分の一層のコンパクト化が可能となる利点がある。その結果、複数の流体通路を同心状に配列して接続させる集積パネルと流体デバイスとの接続構造を実現できたことにより、モジュール化やコンパト化に有利な流体デバイスの集積化を促進するに寄与できるとともに、良好なシール性能を長期に亘って維持できて信頼性に優れ、しかもさらにコンパクト化が可能となる集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、接合状態においては、第1及び第2流体給排口部の環状突起と、各ガスケットの一端面又は他端面の環状溝との嵌合による嵌合シール部が形成されるに加えて、内外径側の環状押え部分とガスケットにおける内外径側の周壁端部との圧接によるシール部が形成されるので、これら複数のシール部によってシール性が強化されるようになり、より優れたシール性能を持つ集積パネルと流体デバイスとの接続構造とすることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、ガスケットの断面形状が略H型のものに形成されるので、例えば横倒しT型形状のものに比べてガスケットやこれと嵌合される部分である第1、第2流体給排口部の設計、製作が容易化されるとともに、集積パネルや流体デバイスに嵌合される場合のバランス(強度バランス、組付けバランス)に優れたものにできる。
【0020】
請求項4の発明によれば、環状突起の内周角部及び/又は外周角部を面取りした先細り形状として、環状突起が環状溝に入り易くなるようにしてあるから、第1,第2流体給排口部とガスケットとの相対位置が多少ずれている状態でも、これら両者が引寄せられることによる環状突起と環状溝との嵌合が確実に行われるようになる。その結果、複数のガスケットを介して第1,第2流体給排口部を引寄せる組付け操作が多少粗いものであっても、環状突起と環状溝とが確実に嵌合されて嵌合シール部が確実に機能する好ましい集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、維持手段によって、両流体給排口部どうしが互いにガスケットを介して引寄せられた接合状態を維持できるので、集積パネルと流体デバイスとが液漏れなく良好なシール性を確保し得る状態を長期に亘って維持可能となり、信頼性に優れる集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することができる。その結果、増し締めを殆ど行わなくても良好なシール性が維持できるとともに、その組付け作業性も改善される集積パネルと流体デバイスとの接続構造を提供することができる、という作用効果をより強化することが可能になる。
【0022】
請求項6の発明によれば、維持手段は第1流体給排口部と第2流体給排口部との接合状態を維持するだけでなく、第1流体給排口部と第2流体給排口部とを引寄せて接合状態を得るための引寄せ機能も発揮できるので、他に引寄せ手段を用意する必要が無くなり、全体としての組付け手間の省略化やコストダウンが可能となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明による集積パネルと流体デバイスとの接続構造の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1,2は実施例1による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を示す全体図と要部断面図、図3は第1ガスケットと第1流体給排口部との詳細な嵌合構造を示す要部の断面図、図4は実施例2による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を示す全体図、図5,6は第1別構造による維持手段の半欠截断面図と組付説明図、図7,8は第2別構造による維持手段の半欠截断面図と組付説明図、図9は第3別構造による維持手段の断面図である。また、図10は環状突起の別構造である。
【0024】
〔実施例1〕
実施例1による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図1、図2に示す。この集積パネルと流体デバイスとの接続構造は、複数の管状の流体通路3,4が内部形成された集積パネル1と、これの上面1aに内外の計2個のリング状のガスケットG1,G2を介して搭載されるバルブ(開閉バルブ、ストップバルブ等)2とに跨って構成された縦向きの軸心Pを共有する同心状二重流路型のものである。
【0025】
集積パネル1は、図1、図2に示すように、PFAやPTFE等のフッ素樹脂製のパネル材(又はブロック材)5の内部に、パネル上面1aに開口する上下向きの縦通路3aと横向きの横通路3bとから成る管状の供給側流体通路3と、縦通路3aの外径側に形成されてパネル上面1aに開口する環状の縦リング通路4aとこれの底部に連通される横向きの横通路4bとで成る排出側流体通路4とが形成されたものである。この集積パネル1における給排流体通路3,4が二重配管状に開口する部分を第1流体給排口部1Aと称するものとし、この第1流体給排口部1Aにおいては、管状の縦通路3aと環状の縦リング通路4aとが互いに同一の軸心Pを有する同心状の通路に形成されている。また、第1流体給排口部1Aには、その上端面に開口する各流体通路3,4の外径側部分のそれぞれには、軸心Pを中心とする環状で、かつ、上方に突出した内外の環状突起21,41を有する下第1シール端部t21及び下第2シール端部t22が形成されている。
【0026】
バルブ(流体デバイスの一例)2は、図1、図2に示すように、PFAやPTFE等のフッ素樹脂製で上下方向視形状が円形のバルブケース6を有しており、そのバルブケース6の下端部は、底面6aに開口する状態でその中心に縦向きに配された管状の供給側流体通路7と、この供給側流体通路7の外径側に形成されて底面6aに開口する状態で縦向きに配された環状の排出側流体通路8とを有した第2流体給排口部2Aに形成されている。つまり、この第2流体給排口部2Aにおいては、管状の供給側流体通路7と環状の排出側流体通路8が互いに同一の軸心Pを有する同心状の通路に形成されている。そして、バルブケース6下端の外周部には、一対のボルト挿通孔9aを有するPFAやPTFE等のフッ素樹脂又はその他の材料による取付フランジ9が融着によって一体化されている。尚、バルブケース6と取付フランジ9とは、切削加工や成形加工によって一体形成された一体型のものでも良い。また、第2流体給排口部2Aには、その下端面に開口する各流体通路7,8の外径側部分のそれぞれには、軸心Pを中心とする環状で、かつ、上方に突出した内外の環状突起11,31を有する上第1シール端部t11及び上第2シール端部t12が形成されている。
【0027】
内外のガスケットG1,G2は径が異なるのみで断面形状は同一のものに形成されている。その構造を内側の第1ガスケットG1を例に挙げて説明する。尚、説明を省略する外側の第2ガスケットG2には、第1ガスケットG1に対応する箇所には対応した符号を付す(例:54a→64a)ものとする。さて、第1ガスケットG1は、第1,第2流体給排口部1A,2Aの相対応する流体通路である縦通路3a及び供給側流体通路7どうしを連通すべく形成された管状の流体経路W1と、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの端面に形成された上第1シール端部t11の環状突起11と上第2シール端部t12の環状突起31のそれぞれに嵌合すべく流体経路W1の外径側部分に形成された上下一対の環状溝51,51とを有するPFAやPTFE等のフッ素樹脂製のものに構成されている。
【0028】
つまり、第1ガスケットG1の断面形状は、上下一対の環状溝51,51と、これら環状溝51,51を形成するための内周壁54及び外周壁55とを有するとともに、上下の環状溝51,51は深さ及び幅が同一となる上下対称であり、かつ、内及び外周壁54,55も左右対称であって、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの軸心P方向に沿う縦中心Z、及び、その縦中心線Zに直交する横中心線Xの双方に関して線対称(ほぼ線対称でも良い)となる略H状の形状に形成されている。内周壁54の上下端部は、内周面54aである流体経路W1の上下端部が先拡がり状に外向き傾斜するテーパ内周面52a,52aに形成されるとともに、外周壁55の上下端部も、その外周面55aの上下端部が内向き傾斜するテーパ外周面53a,53aに形成されている。
【0029】
集積パネル1の第1流体給排口部1Aの下第1及び下第2シール端部t21,t22の環状突起21,41及びバルブ2の第2流体給排口部2Aの上第1及び上第2シール端部t11、t12における環状突起11,31の内及び外径側に、各ガスケットG1,G2における環状溝51,61を形成するために軸心P方向に突出形成された内外の周壁端部52a,53a,62a,63aが、相対応する環状溝51,61と相対応する環状突起11,21,31,41との嵌合によって拡がり変形するのを阻止する環状押え突起(環状押え部分の一例)12,13,22,23,32,33,42,43が形成されている。
【0030】
上記環状押え突起に関する構造を、第1ガスケットG1と上第1シール端部t11とについて説明する。内外の環状押え突起12,13は対称のものであり、これらと環状突起11とで囲まれた谷部14,15が奥窄まり状(上窄まり状)となるように環状突起側の側周面が傾斜したテーパ外周面12a及びテーパ内周面13aを有する先窄まり状の環状突起に形成されている。つまり、上第1シール端部t11は、環状時突起11とその内外の両側に形成される環状押え突起12,13及び谷部14,15の総称である。
【0031】
第1ガスケットG1の内外の周壁54,55の上端部は、環状押え突起12,13のテーパ外周面12aとテーパ内周面13aのそれぞれに当接するテーパ内周面52aとテーパ外周面53aを有して14,15に入り込み自在な先窄まり状の環状シール突起(周壁端部の一例)52,53を有し、接合状態(図1参照)においては、内外の周壁54,55の上端部である環状シール突起52,53が対応する谷部14,15に入り込み、上第1シール端部t11のテーパ外周面12aと第1ガスケットG1のテーパ内周面52aとが圧接され、かつ、上第1シール端部t11のテーパ内周面13aと第1ガスケットG1のテーパ外周面53aとが圧接されるように構成されている。
【0032】
つまり、第1ガスケットG1の上端部には、環状溝51とその内外の環状シール突起52,53とで上シール部g11が形成されており、同様に下端部には下シール部g12が形成されている。上シール部g11は上第1シール端部t11と嵌合して嵌合シール部10を形成し、下シール部g12は下第2シール端部t21と嵌合して嵌合シール部10を形成する。同様に、第2ガスケットにも上シール部g21と下シール部g22とが形成されており、それぞれ上第2シール端部t12と下第2シール端部t22と嵌合して嵌合シール部10を形成する。
【0033】
嵌合シール部10の嵌合構造を、上第1シール端部t11と第1ガスケットG1の上シール部g11について詳細に説明すると、図2、図3に示すように、内外の谷部14,15どうし、及び内外の環状シール突起52,53どうしは互いに対称であって、内外の谷部14,15全体の挟角α°と内外の環状シール突起52,53全体の向い角β°との間には、α°<β°という関係が設定されており、好ましくはα°+(20〜40°)=β°という関係に設定すると良い。この構成により、上第1シール端部t11の上環状突起11と環状溝51とが嵌り合った接合状態(後述)では、上内環状押え突起12と上内環状シール突起52とは、それらのテーパ外周面12aとテーパ内周面52aとが最内径側部分で圧接される状態となり(図3の仮想線を参照)、流体通路W1を通る流体がこれら外内のテーパ周面12a,52aどうしの間に入り込むことをも阻止する二次シール部S2として機能する利点が得られる。
【0034】
つまり、維持手段I(後述)が作動する等によって第1流体給排口部1Aと第2流体給排口部2Aとが互いにガスケットGを介して引寄せられることにより、第1流体給排口部1Aの環状突起21,41と各ガスケットG1,G2の一端の環状溝51,61とが、及び第2流体給排口部2Aの環状突起11,31と各ガスケットG1,G2の他端の環状溝51,61とがそれぞれ嵌め合わされて嵌合シール部10が形成され、かつ、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの端面における環状突起21,41,11,31の内及び外径側に形成される環状押え突起22,23,42,43,12,13,32,33と、各ガスケットG1,G2における環状溝51,61を形成するために軸心方向に突出形成された内外の環状シール突起52,53,62,63とが当接して、内外の環状シール突起52,53,62,63が環状溝51,61と環状突起21,41,11,31との嵌合によって縮径変形(内環状シール突起52,62)、及び拡径変形(外環状シール突起53,63)するのを抑制又は阻止する拡縮変形防止手段Yが形成される接合状態が構成されている。
【0035】
拡縮変形防止手段Yは、実質的には、各環状押え突起22,23,42,43,12,13,32,33のテーパ外周面22a,42a,12a,32a、テーパ内周面23a,43a,13a,33aで構成されており、対応する各ガスケットG1,G2のテーパ内(外)周面52a,53a,62a,63aが、これらテーパ外及び内周面22a,42a,12a,32a,23a,43a,13a,33aに当接(圧接)することによって、各環状シール突起52,53,62,63が環状溝51,61側に寄る方向に変形しようとする分力が生じるのである。つまり、内径側の環状シール突起52,62は外径側に押付けられ、外環状シール突起53,63は内径側に押付けられるので、環状溝51,61が狭まるように、即ち、環状突起21,41,11,31を径方向に締付ける作用が生じるのである。この場合、各環状シール突起52,53,62,63は、それらの先端側ほど分力が強く作用するので、環状突起21,41,11,31の根元側ほど(環状シール突起52,53,62,63の先端側ほど)強く押付けられる傾向になる。
【0036】
従って、もしも流体が二次シール部S2を越えて一次シール部S1に及ぶことが生じても、その流体は嵌合シール部10の入り口部分でシールされることとなり、嵌合シール部10の奥深く、即ち嵌合溝51,61の内奥部には入り込まないようになり、嵌合溝51,61の内奥に流体や混合物、異物等が残り、以後に通過する流体の純度や性状に悪影響を及ぼす不都合が生じ難い利点がある。
【0037】
そして、上環状突起11の幅d1と上環状溝51の幅d2との間には、d1>d2という関係が設定されており、好ましくはd1×(0.75〜0.85)=d2という関係に設定すると良い。そして、上環状突起11の突出長さh1と上環状溝51の深さh2との間にはh1<h2という関係が設定されている。これらの構成により、上環状突起11と上環状溝51とが、詳しくは、上環状突起11の内外の両側周面と相対応する上環状溝51の内外の側周面とが強く圧接され、流体の漏れを阻止する優れたシール性能を発揮する一次シール部S1が形成されるとともに、上内環状押え突起12のテーパ外周面12aと上内環状シール突起52のテーパ内周面52aとが必ず当接することになり、前述した二次シール部S2が良好に形成される利点がある。尚、このような関係は、下環状突起21と下環状溝51との間や、第2ガスケットG2の環状溝61と上下の環状突起31,41との間においても成り立つと良い。
【0038】
嵌合シール部10については、図3に示すように、内径側及び外径側の各一次シール部S1を確実に機能させるべく、環状突起11,31(21,41)と環状溝51(61)夫々の軸心Pに対する内外径の半径をR1,R3,R2,R4としたときに、R1<R2かつR3>R4が成り立つように設定すれば好都合である。また、環状押え突起12,22(13,23,32,42,3,43)の軸心P方向に沿う高さh3と環状突起11(21,31,41)の突出長さh1との関係は、図3に示すh1>h3という関係以外に、h1=h3という関係の場合や、h1<h3という関係の場合でも良い。
【0039】
また、環状押え突起12,13の先端、及び環状シール突起52,53の先端はピン角とならないようにカットされた形状、即ち、傾斜カット面12b,13b、並びにカット面52b,53bに形成されている。これらの構成により、上内環状押え突起12の先端が流体通路W1側に若干広がり変形したとしても、もともとカットされた形状であることから、流体通路W1途中に大きく開いた断面三角形状の凹みができるだけとなり、その凹みに存在する流体が容易に流れ出すようになって実質的に液溜りが生じないようになる。加えて、その凹みの開き角度、即ち、傾斜カット面12bとテーパ内周面52aとの挟角は十分に大きく、表面張力による液溜りのおそれも回避される。また、環状突起11先端の内角及び外角は面取り加工された形状11aとしてあるので、幅の狭い環状溝51への圧入移動をかじり等の不都合なく円滑に行えるものとなっている。
【0040】
尚、図10(a)に示すように、環状突起11を、その先端の内周角部及び外周角部の面取り形状部11aを明確に大きくした断面先細り形状に形成することにより、環状突起11が環状溝51に入り易くされた構成としても良い。このように構成すれば、第1,第2流体給排口部1A,2Aと第1ガスケットG1との組付け時における相対位置が所期する適性状態から多少ずれていることがっても、テーパ面状の内又は外の面取り形状部11aがガイドとなって環状突起11が確実に環状溝51内へ導かれるようになるのである。この場合の嵌合シール部10(一次シール部S1)は、環状突起11の根元部と環状溝51の先端部との嵌合部によって形成される構成となる。このような構造は、他の環状突起31,21,41、並びに第2ガスケットG2においても同様に構成可能である。
【0041】
また、図10(b)に示すように、面取り形状部11aをさらに大きくして、環状突起11の内外の側周面が全て傾斜したテーパ側周面11aとなるよう、極端に先細り形状化させた構成としても良い。この場合には、環状突起11の環状溝51への入り易さがさらに容易になるとともに、環状突起11が環状溝51を押し広げる楔効果が生じて、環状溝51の先端部と環状突起11の根元部とが線接触又は極小さい面積でもって周状に圧接されることとなり、より確実にシール機能を発生させることが可能となる利点がある。このような構造は、他の環状突起31,21,41、並びに第2ガスケットG2においても同様に構成可能である。
【0042】
嵌合シール部10についてさらに詳述する。図2、図3に示すように、環状押え突起12,13における環状突起側のテーパ周面12a,13aの開き角(谷部14,15の開き角)Dは50〜70度の範囲の値(50°≦D°≦70°)に設定されており、環状シール突起52,53のテーパ周面52a,53aの尖り角Eは60〜80度の範囲の値(60°≦D°≦80°)に設定されている。そして、開き角Dと尖り角Eとには、開き角Dに10〜20度を加えたものが尖り角Eとなる[D°+(10〜20°)=E°]ように設定されている。より好ましい値としては、開き角Dが69〜71度(D°=70±1°)、尖り角Eが79〜81度(E°=80±1°)、及び尖り角Eは開き角D+9〜11度(E°−D°=10±1°)に設定すると良い。
【0043】
また、環状押え突起12,13の傾斜カット面12b,13bのカット角Dsは49〜51度(Ds°=50°±1°)に設定されており、周壁端部52,53の先端カット面52b,53bの迎え角Esは124〜126度(Es°=125°±1°)に設定されている。このような角度設定により、テーパ外周面12aとテーパ内周面52a及びテーパ内周面13aとテーパ外周面53aの夫々は環状の線接触状態で当接されるようになり、シールリップ効果が二次シール部S2において発揮されるようになる。
【0044】
つまり、前記第1流体給排口部1Aと前記第2流体給排口部2Aとが互いに引寄せられる方向である引寄せ方向に対する前記環状シール突起(周壁端部)52,53のテーパ周面52a,53a(テーパ内周面52a、テーパ外周面53a)の尖り角Eが、前記引寄せ方向に対する前記環状押え突起12,13における環状突起11側のテーパ周面12a,13a(テーパ外周面12a、テーパ内周面13a)の開き角Dに10〜20度、好ましくは10度又はほぼ10度加えた値に設定されている。そして、前記尖り角Eが60〜80度、好ましくは80度又はほぼ80度に設定されている。
【0045】
このように尖り角E及び開き角Dを90度に近い鈍角的な値に設定する構成とすれば、環状押え突起12,13は、その径方向幅に比べて引寄せ方向(軸方向)の突出量が小さくなって相対的に強度、剛性が向上することとなり、環状シール突起52,53の拡がりを規制しながらも、自身(環状押え突起12,13)が径方向へ拡がり変形するおそれをより効果的に抑制することができる利点がある。そして、環状シール突起52,53の谷部14,15への刺さり込みによってテーパ周面52a,53aが環状押え突起12,13を径方向に押し広げる分力を小さくでき、この点からも環状押え突起12,13の径方向への拡がり変形を抑制することができる。
【0046】
以上述べた嵌合シール部10の構造は、第1ガスケットG1の下側、及び第2ガスケットG2においても同様に構成されており、対応する箇所には対応する符号を付すものとする。第2ガスケットG2は、径は異なるが断面形状に関しては第1ガスケットG1のものと全く同じである。但し、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの上第2シール端部t12と下第2シール端部t22については、その外周側に流体通路が存在しないので、それぞれ上第1シール端部t11と下第2シール端部t21とやや形状が異なる。
【0047】
即ち、上第2シール端部t12に関しては、環状押え突起33のテーパ内周面33aに続く状態で、バルブケース6の下端部を形成するための下端内周部6bが存在している点である。この下端内周部6bは、第2ガスケットG2の上シール部g21を上第2シール端部t12に嵌め合わす際のガイドとして機能するとともに、テーパ内周面33aと共に第2ガスケットG2の外周壁65の拡がり変形を阻止する機能も発揮可能である。そして、下第2シール端部t22に関しては、外側の環状押え突起43の外周側にパネル材5が連続して存在している点であり、下シール部g22と下第2シール端部t22との嵌め合せ時に、第2ガスケットG2の下シール部g22の外環状シール突起63の拡がり変形がテーパ内周面43aによって阻止される作用効果が強化されるようになる。
【0048】
一方、第1及び第2ガスケットG1,G2のうち、接合状態において内径側及び外径側の双方に流体通路7,8が存在する中間ガスケットである第1ガスケットG1は、これの外周部である外周面55aが、第1ガスケットG1の外径側に存する第1流体給排口部1Aの環状の流体通路4aと第2流体給排口部2Aの環状の流体通路8とを連通する環状の流体経路W2を形成するための壁面となる状態に形成されている。このように第1ガスケットG1の内外周面54a,55aの双方が流体通路W1,W2を形成する壁面を兼ねる構成とすれば、「第1ガスケットG1の厚み」=「環状流体通路3a,7と管状流体通路4a,8との間隔」となり、第1及び第2流体給排口部1A,2Aの接続部をよりコンパクト化することが可能になる。
【0049】
なお、図1に仮想線で示すように、第2ガスケットG2の外周壁65に横突出するリング状の脱着フランジ1fを一体形成しておけば、第1又は第2流体給排口部1A,2Aから第2ガスケットG2を抜出す際に、工具や手指でフランジ1fを引張る等して外し易くすることができるという利点がある。この場合、脱着フランジ1fの厚みは、接合状態における第1及び第2流体給排口部1A,2Aどうしの間隙よりも小さい値とする。
【0050】
次に、維持手段Iについて説明する。維持手段Iは、図2、図3に示すように、集積パネル1の第1流体給排口部1Aとバルブ2の第2流体給排口部2Aとが互いに第1及び第2ガスケットG1,G2を介して引寄せるとともに、その引寄せ作用によって、第1流体給排口部1Aの上第1シール端部t11及び上第2シール端部t12と、第1及び第2ガスケットG1,G2の上シール部g11,g21とが、及び第2流体給排口部2Aの下第1及び下第2シール端部t21,t22と、第1及び第2ガスケットG1,G2の下シール部g12,g22とがそれぞれ嵌め合わされて各嵌合シール部10が形成される接合状態を維持するものに構成されている。即ち、第2流体給排口部2Aの環状突起11,31と第1及び第2ガスケットG1,G2の上側の環状溝51,61とが、及び第1流体給排口部1Aの環状突起21,41と第1及び第2ガスケットG1,G2の下側の環状溝51,61とがそれぞれ嵌め合わされる。
【0051】
維持手段Iの具体構造は、第2流体給排口部2Aの取付フランジ9のボルト挿通孔9aに挿通される一対のボルト66と、一対のボルト挿通孔9a,9aに対応して第1流体給排口部1Aに(パネル材5に)形成されたナット部67,67とで構成されており、ボルト66をナット部67に螺着させての締め付け操作により、バルブ2を集積パネル1に引寄せ、かつ、その引寄せ状態を維持することができる。また、経時変化やクリープ等が生じて各嵌合シール部10の圧接力が低下した場合には、ボルト66を増し締めすることで対処することができ、良好なシール性能を維持することが可能である。
【0052】
〔実施例2〕
実施例2による集積パネルと流体デバイスとの接続構造は、図4に示すように、集積パネル1と、流体デバイスの一例であるポンプ(洗浄装置循環ライン用のベローズポンプ等)2とをフランジ配管71を介して連通接続させるものである。内外のガスケットG1,G2を介した接続部自体の構成は実施例1によるもの同一であるので、主な符号だけを付すとともに、その詳細な説明は割愛する。
【0053】
さて、集積パネル1については、排出側の流体通路4の取出し方向が、実施例1による集積パネル1の場合と逆になっている以外は基本的に同じ構造である。ただし、実施例1による集積パネルと流体デバイスとの接続構造は集積パネルの上面に構成されているに対して、この実施例2による接続構造は、集積パネル1の横側面に構成されている。ポンプ2の給排用の流体通路7,8は横側面に開口する構造であり、集積パネル1では一対の流体通路3,4が二重管構造であるに対して、縦に並んで配備される独立タイプのものである。
【0054】
フランジ配管71は、前述の取付フランジ9を有するフランジ部72と、これに続く略二股状の管路部73とから成り、管路部73は、管状の供給側流体通路74を持つ供給側配管73Aと、管状の排出側流体通路75を持つ排出側の流体通路73Bとから構成されている。フランジ部72においては、供給側流体通路74が軸心Pを中心とする管状のものとして集積パネル1の縦通路3aに正対して開口されるとともに、集積パネル1の縦リング通路4aに正対して開口される環状通路部分75aが排出側流体通路75に連続する状態で形成されている。各流体通路74,75は融着等の手段によってポンプ2のイン側ポート76、及びアウト側ポート77に連通状態で接続連結されている。
【0055】
このように、二重配管構造のフランジ部72と独立した2本の配管部73とを有するフランジ配管71を用いることにより、集積パネル1における二重配管構造の第1流体給排口部1Aと並列配置された一対のイン及びアウト側ポート76,77で成る第2流体給排口部2Aとを、即ち、集積パネル1とポンプ2とを、流体通路の開口構造が互いに異なるものどうしでありながらも、互いに近接させて無理なくコンパクトに連通接続させることができている。
【0056】
〔実施例3〕
実施例3による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図5,6に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第1別構造の維持手段Iについて説明する。なお、図5,6においては、図1〜3に示す実施例1のものと対応する箇所には対応する符号を付してある。第1別構造による維持手段Iは、図5及び図6に示すように、集積パネル1の上面に形成された平面視で円形を呈する突起状の第1流体給排口部1Aの外周部に雄ネジ1nを形成し、その雄ネジ1nに螺合自在な雌ネジ81nを備えた筒状ナット81と、バルブ2のバルブケース6の下端部に形成された外向きフランジ9に、環状の流体通路7の軸心P方向で干渉する二つ割り、または三つ割り以上の割型リング82とから構成されている。第1流体給排口部1Aの雄ネジ1nに雌ネジ81nを螺着させての筒状ナット81の締付け操作により、両流体給排口部1A,2Aを互いに2個のガスケットG1,G2を介して接近する方向に引寄せ可能に、かつ、引寄せ状態を維持可能な引寄せ機能付きの維持手段Iに構成されている。
【0057】
筒状ナット81のバルブ2側(上側)に形成される内向きフランジ83の開口部83aは、外向きフランジ9の通過を許容するに足りる最小限の内径寸法に設定されている。割型リング82の外径は、筒状ナット81に入り込み自在となるよう雌ネジ81nの内径よりも僅かに小さい寸法に設定され、かつ、内径は、バルブ2の円形の第2流体給排口部2Aの外径部に外嵌自在となる最小限の寸法に設定されている。この場合、割型リング82を装備するには、第2流体給排口部2Aにおける外向きフランジ9を除いた径の細い部分の軸方向長さが、筒状ナット81の軸方向長さと割型リング82の厚さとの和を上回る値とすることが必要である。具体的には、図6(b)に示すように、バルブケース6の付根部6tに当接させた状態の筒状ナット81と外向きフランジ9との間の長さd3が、割型リング82の厚さd4よりも大きいこと(d3>d4)が条件となる。
【0058】
また、筒状ナット81における雌ネジ81nの内奥端部と内向きフランジ83との間に、割型リング82に軸方向に摺動自在で、かつ、割型リング82の幅寸法をカバーする軸心P方向長さを有する内周面部81mが軸心Pと同心にフラットな内周面に形成されている。すなわち、筒状ナット81の雌ネジ81nと内向きフランジ83との間における内径部81aが供給側流体通路7と同心にフラットな内周面に形成され、かつ、その内周面部81mの内径が断面矩形に形成された割型リング82の外径よりも極僅かに大きくした嵌め合い公差状態に寸法設定される一方、第2流体給排口部2Aの外径部が供給側流体通路7と同心にフラットな外周面に形成され、かつ,その外径部の外径と、割型リング82の内径とがほぼ同一径に形成される。これにより、筒状ナット81を螺進させた際に割型リング82が傾いて抉るような状態になったり、外向きフランジ9に筒状ナット81の螺進による軸心P方向の押圧力がうまく伝わらなかったりする、という不都合が生じることが防止され、有効に外向きフランジ9を押して、第1、第2流体給排口部1A,2Aを互いに接近する方向に良好に引寄せることができるようにされている。
【0059】
第1別構造の維持手段Iを用いて両流体給排口部1A,2Aどうしを接続連結する操作手順は次のようである。先ず、図6(a)に示すように、外向きフランジ9をやり過ごして筒状ナット81をバルブ2の第2流体給排口部2Aの外周に嵌装し、その最内奥側まで(付根部6tに当接するまで)移動させる。次いで、図6(b)に示すように、割型リング82を、外向きフランジ9と筒状ナット81の先端との間を通して第2流体給排口部2Aに外嵌装備させる。このとき又はその前に第1及び第2ガスケットG1,G2をいずれかの流体給排口部1A,2Aの端面に環状突起11,21,31,41と環状溝51,61との仮嵌合を介して装着させておいてもよい。次いで、両ガスケットG1,G2を介して第1流体給排口部1Aを第2流体給排口部2Aにあてがい、その状態で筒状ナット81をスライド移動させてから締付け操作[図6(c)参照]することにより、図5に示す接続状態が得られる。なお、図6においては、上下に積層される集積パネル1とバルブ2とを、図面記載都合により横倒し状態で描いてある。
【0060】
〔実施例4〕
実施例4による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図7,8に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第2別構造の維持手段Iについて説明する。なお、図7,8においては、図1〜3に示す実施例1のものと対応する箇所には対応する符号を付してある。第2別構造の維持手段Iは、第1及び第2流体給排口部1A,2Aをその端面側ほど径が大きくなるように拡径して成る第1及び第2円錐台状端部1D,2Dと、第1円錐台状端部1Dのテーパ外周面1dに当接する第1テーパ内周面84a、及び、第2円錐台状端部2Dのテーパ外周面2dに当接する第2テーパ内周面84bとによって断面が略く字状を呈する内周面を有する一対の半割円弧部材84,84で成る割型押えリング85と、半割円弧部材84,84どうしを引寄せるボルト86及び一方の半割円弧部材84に形成されたナット87とを有して構成されている。
【0061】
接合状態における第1円錐台状端部1Dと第2円錐台状端部2Dとに跨らせて一対の半割円弧部材84を被せた状態において、他方の半割円弧部材84の挿通孔に84hに通されたボルト86及びナット87の締め付けにより、一端が蝶番状に支点Qで枢支されている半割円弧部材84,84どうしが引寄せられることによるテーパ面どうしの当接による力によって、各流体給排口部1A,2Aどうしが互いに引寄せられる。割型押えリング85は、フッ素樹脂材から形成されのが好ましいが、アルミ合金等のそれ以外の材料から成るものでも良い。
【0062】
第2別構造の維持手段Iを用いて両流体給排口部1A,2Aどうしを接続連結する操作手順は次のようである。先ず、図8(a)に示すように、先ず第1,第2流体給排口部1A,2Aを第1及び第2ガスケットG21,G2を介して軽く接続連結させる予備連結操作を行う。次に、その予備連結された第1及び第2円錐台状端部1D,2Dに割型押えリング85を被せてボルト86による締め付け操作を行う。このボルト86の締め付けにより、両ガスケットG1,G2が各流体給排口部1A,2Aに深く嵌り込み、図8(c)に示すように、集積パネル1とバルブ2との接続連結状態が得られる。
【0063】
〔実施例5〕
実施例5による集積パネルと流体デバイスとの接続構造を図9に示す。これは実施例1によるものと維持手段Iが異なるのみであり、その第3別構造の維持手段Iについて説明する。なお、図9においては、図1〜3に示す実施例1のものと対応する箇所には対応する符号を付してある。第3別構造の維持手段Iは、集積パネル1の上面に、外周部に雄ネジ1nを有する状態で形成された平面視で円形を呈する突起状の第1流体給排口部1Aと、第2流体給排口部2Aにおいて外周部に雄ネジ9nを有する状態でバルブケース6の下端部に形成されたフランジ部9と、これら両雄ネジ1n,9nに螺着自在な雌ネジ91n,92nを有する第1及び第2リングナット91,92と、これらリングナット91,92の外周溝91m、92mに嵌着可能な断面形状が略コ字状の係合リング93とから構成されている。
【0064】
両リングナット91,92及び係合リング93の材質は、例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂製であり、ある程度の可撓性を有している。そこで第3別構造の維持手段Iを用いて両流体給排口部1A,2Aどうしを接続連結する手順は、予め各リングナット91,92に係合リング93を係着して一体化された第1及び第2リングナット91,92を形成しておき、その一体化された第1,2リングナット91,92を、ガスケットG1,G2を介して互いに引寄せられて組付状態とされている第1及び第2流体給排口部1A,2Aに螺装し、集積パネルと流体デバイスとの接続構造を形成する、という具合になる。勿論、この場合は各雄ネジ1n,9nが互いに同一のネジであることが条件であり、螺装後に各リングナット91,92を回してより強く締付けたり、或いは後に増し締めすることが行える。
【0065】
また、次のような組付け手順も可能である。即ち、それぞれのリングナット91,92を対応する雄ネジ1n,9nに螺装した状態で、両流体給排口部1A,2Aを第1及び第2ガスケットG1,G2を介して引寄せ、ガスケットG1,G2が圧接されてのシール状態で接続する引寄せ工程を行う。この引寄せ工程は、維持手段Iとは別の専用の引寄せ手段を用いて行う。それから、各雄ネジ1n,9nのそれぞれに互いに隣接する状態で螺装されている第1及び第2リングナット91,92の外周溝91m,92mに、係合リング93を強制的に拡径変形することで入れ込むことにより、集積パネルと流体デバイスとの接続構造が形成される。つまり、係合リング93は無理嵌めによって両リングナット91,92に係着される。
【0066】
この構成による維持手段Iは文字通り、第1及び第2流体給排口部1A,2AのガスケットG1,G2を介してのシール接続状態を維持する機能だけを有するものである。しかしながら、各リングナット91,92と係合リング93とは相対回動可能であるから、これらリングナット91,92は共に単独での回動移動が可能であり、経時変化やクリープ等によってシール圧接力が低下した場合には、いずれか若しくは双方のリングナット91,92を強制的に回動操作して、増し締め操作を行うことは可能である。
【0067】
〔その他の実施例〕
図1〜3に示す集積パネルと流体デバイスとの接続構造においては、外径側の第2ガスケットG2は、図示は省略するが、外周壁63の上下端が内周壁53よりも短く、かつ、単に水平状に切断された構造のものでも良い。二重配管接続構造では、最外径側の第2ガスケットG2の外周壁63にはシール機能が無くても良い。実施例1〜5におけるガスケットG1,G2は上下及び左右に対称形状のものであるが、例えば、内外の周壁の長さや厚みの異なるものや、上下非対称のものなどでも良く、図示の形状に限定されない。また、外側の環状流体通路8のさらに外側に一又は複数の環状の流体通路を有する三重以上の集積パネルと流体デバイスとの接続構造も可能であり、最外側に位置するガスケット以外のガスケットは、その内外周面の双方が流体経路を兼ねる構成が採れる。
【0068】
なお、本発明における「流体デバイス」とは、バルブ、ポンプ、アキュムレータ、流体貯留容器、熱交換器、レギュレータ、圧力計、流量計、ヒーター、フランジ配管等の、要は集積パネル以外の流体関係のものの総称と定義する。さらに、引寄せ機能付維持手段としては、ターンバックル式(例:図9に示す構造において、いずれかの雄ネジ1n,9nを逆ネジとして、これら両雄ネジ1n,9nに跨るターンバックルナットを螺装する構造)のものも可能である。また、環状押え突起33,43については、環状押え壁部33,43に読み代えるものとし、これら環状押え突起12,13,22,23,32,42と環状押え壁部33,43とを総称して「環状押え部分」と定義するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】集積パネルとバルブとの同心状多重流路接続構造を示す断面図(実施例1)
【図2】図1の接続構造に用いるガスケットと流体給排口部の要部の断面図
【図3】ガスケットと流体デバイスとの嵌合構造の詳細を示す要部の拡大断面図
【図4】フランジ配管を介した集積パネルとポンプとの同心状多重流路接続構造を示す断面図(実施例2)
【図5】引寄せ機能付き維持手段の第1別構造を示す要部の断面図(実施例3)
【図6】図4の維持手段を有する接続構造の接続手順を示す説明図
【図7】引寄せ機能付き維持手段の第2別構造を示す要部の断面図(実施例4)
【図8】図6の維持手段を有する接続構造の接続手順を示す説明図
【図9】維持手段の構造を示す要部の断面図(実施例5)
【図10】(a)、(b)は、共に環状突起の別形状を示す要部の断面図
【符号の説明】
【0070】
1 集積パネル
1A 第1流体給排口部
1n 雄ネジ部
2 流体デバイス
2A 第2流体給排口部
3a,7 管状の流体通路
4a,8 環状の流体通路
9 外向きフランジ
9a 貫通孔
10 嵌合シール部
11,21,31,41 環状突起
12,13,22,23,32,33,42,43 環状押え部分
12a,13a,22a,23a,32a,33a,42a,43a テーパ周面
14,15,24,25,34,35,44,45 谷部
51,61 環状溝
52,53,62,63 周壁端部
52a,53a,62a,63a テーパ周面
55a 中間ガスケットの外周部
66 ボルト
67 ナット部
81 筒状ナット
81n 雌ネジ部
82 割型リング
83 内向きフランジ
83a 開口部
G1,G2 ガスケット
P 軸心
S1 シール部
W1,W2 流体経路
X,Z 中心線
Y 拡縮変形防止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の流体通路又は環状の流体通路と一以上の環状の流体通路とが同心状に形成されて開口する第1流体給排口部を備えた集積パネルの前記第1流体給排口部と、管状の流体通路又は環状の流体通路と一以上の環状の流体通路とが同心状に形成されて開口する第2流体給排口部を備えた流体デバイスの前記第2流体給排口部とを、それぞれの複数の流体通路が相対応され、かつ、前記第1流体給排口部と前記第2流体給排口部の間に介在される複数のリング状のガスケットによって各流体通路がシールされる状態で連通接続するにあたり、
前記第1流体給排口部及び前記第2流体給排口部には、各端面に開口する前記各流体通路の外径側部分に環状突起が形成され、
前記各ガスケットは、前記第1,第2流体給排口部の相対応する前記流体通路どうしを連通すべく形成された流体経路と、前記第1及び第2流体給排口部の端面に形成された前記環状突起のそれぞれに嵌合すべく前記流体経路の外径側部分に形成された一対の環状溝とを有する可撓性を備えた材料から構成されており、
前記第1流体給排口部と第2流体給排口部とが互いに前記複数のガスケットを介して引寄せられることにより、前記第1流体給排口部の前記環状突起と前記各ガスケットの一端の環状溝とが、及び前記第2流体給排口部の前記環状突起と前記各ガスケットの他端の前記環状溝とがそれぞれ嵌め合わされて嵌合シール部が形成され、かつ、前記第1及び第2流体給排口部の端面における前記環状突起の内外径側に形成される環状押え部分と、前記各ガスケットにおける前記環状溝を形成するために軸心方向に突出形成された内外径側の周壁端部とが当接して、前記内外径側の周壁端部が前記環状溝と前記環状突起との嵌合によって拡径又は縮径変形するのを抑制又は阻止する拡縮変形防止手段が形成される接合状態が構成され、
前記拡縮変形防止手段は、前記環状押え部分と前記環状突起とで囲まれた谷部が奥窄まり状となるように前記環状押え部分における環状突起側の側周面が傾斜したテーパ周面と、前記内外径側の周壁端部に形成されたテーパ周面との圧接によって構成されるとともに、
前記複数のガスケットのうち、前記接合状態において内径側及び外径側の双方に前記流体通路が存在する中間ガスケットは、これの外周面が、前記中間ガスケットの外径側に存する前記第1流体給排口部の前記環状の流体通路と前記第2流体給排口部の前記環状の流体通路とを連通する環状の流体経路を形成するための壁面となる状態に形成されている集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項2】
前記環状押え部分のテーパ周面と前記内外径側の周壁端部のテーパ周面との圧接によってシール部を形成するように構成されている請求項1に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項3】
前記ガスケットの断面形状が略H型形状を呈するものに構成されている請求項1又は2に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項4】
前記環状溝に前記環状突起を入れ易くすべく、前記環状突起がその先端の内周角部及び/又は外周角部が面取りされた断面先細り形状に形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項5】
前記嵌合シール部及び前記拡縮変形防止手段が形成される前記接合状態を維持する維持手段が装備されている請求項1〜4の何れか一項に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。
【請求項6】
前記維持手段は、前記第1流体給排口部と第2流体給排口部とを引寄せて前記接合状態を得るための引寄せ機能を発揮するものに構成されている請求項5に記載の集積パネルと流体デバイスとの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−313007(P2006−313007A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203939(P2005−203939)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【分割の表示】特願2005−134236(P2005−134236)の分割
【原出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】