説明

離型剤塗布装置および離型剤塗布方法

【課題】シース被覆前のコア線に対して、粉体からなる離型剤を全体的に満遍なく薄く塗布できるようにすること。
【解決手段】コア線12の外周面に粉体からなる離型剤13を塗布する離型剤塗布装置であって、上記離型剤13を貯留する離型剤槽21と、該離型剤槽21の側面における上記離型剤13に埋没する位置に形成されたコア線12の入口21aおよび出口21bと、これら入口21aと出口21bとを直線で結ぶ、コア線12が走行するコア線経路25のわきに設けられて離型剤13をコア線経路25に寄せるように流通循環させる攪拌手段31,32とを有した離型剤塗布装置11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブルを製造する工程において使用される離型剤塗布装置と離型剤塗布方法に関し、より詳しくは、シース(外皮)を被覆する前段において、線心(被覆電線)からなるコア線に対してタルク等の粉体状の離型剤を塗布する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
離型剤は、ケーブルの接続工事等においてシースを剥ぎ取りやすくするために重要な存在である。
【0003】
離型剤のコア線に対する塗布は、様々な方法で行われ得るが、一般的には、下記特許文献1に開示されているように、走行するコア線を下へ引き回して離型剤の中に通し、離型剤と接触させる方法で行われる。
【0004】
この特許文献1の方法によれば、逆三角形状に配置された3個のプーリを用いてコア線を下に引き回すので、離型剤の塗布時にコア線は湾曲する。コア線が特許文献1に開示されているように平行に走行する複数本の線心である場合には問題はないが、コア線が複数本の線心を撚り合わせたものからなる場合には、離型剤が付着しすぎるという難点がある。
【0005】
すなわち、撚って形成されたコア線が下に引き回されて湾曲すると、各線心の撚り合わさった部分が開くことになるので、離型剤が線心の間に入り込んでしまう。線心間に入り込んだ離型剤は、湾曲する部分を通過してコア線の撚りが閉じた時に閉じ込められ、そのまま線心間に残る。外周面の付着ムラもさることながら、離型剤が線心間に入り込むと、ケーブルの外形寸法に狂いが生じたり、離型剤の使用量が増えたりするなどの問題が顕著になる。
【0006】
また、離型剤は、コア線の外周面に対して全体的に満遍なく薄く塗布されるのが好ましい。
【0007】
このため、特許文献1においても、離型剤を付着させたコア線に対してエアを吹き付けて離型剤の層の厚さを均一にするような工夫がなされている。
【0008】
しかし、コア線と接する離型剤は、バイブレータが付設された容器に入れられている。この離型剤の中をコア線が走行し、離型剤の付着が行われるわけであるが、離型剤は単に振動するだけであるので、コア線に対して接触するときの圧力などの条件は、部分によって、またコア線に接する離型剤の量や湿度などの作業時の環境によって大きく異なる。このため、付着にムラが生じやすく、そのムラは、エアを噴きつけだけでは容易に解消できるものではない。
【0009】
一方で、特許文献1のようにコア線を下に引き込まずに離型剤を塗布する技術も提案されている(下記特許文献2参照)。
【0010】
この特許文献2の塗布装置は、コア線を一直線に走行させ、突起片付回転体の回転ですくい上げた離型剤を走行中のコア線に対して上から落下させて塗布するというものである。
【0011】
しかし、塗布は離型剤の落下により行われるので、コア線の上面側と下面側とで離型剤の付着量に差が生じる問題点がある。
【0012】
しかも、突起片付回転体は、その中心にコア線を通すように中空に形成されており、周囲に形成された突起片が離型剤をすくい上げるように構成されているので、突起片付回転体の回転方向が不変である限り、コア線に対する離型剤の落下の向きは一定である。このため付着量には、はなはだしい差が生じてしまう。
【0013】
上述のように、これまでの塗布装置では、コア線に対する離型剤の塗布を、全体的に満遍なく薄く行うことは難しかった。
【0014】
【特許文献1】特開2001−67958号公報
【特許文献2】特開2000−231838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこでこの発明は、コア線に対する離型剤の理想的な塗布が確実に行えるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのための手段は、コア線の外周面に粉体からなる離型剤を塗布する離型剤塗布装置であって、上記離型剤を貯留する離型剤槽と、該離型剤槽の側面における上記離型剤に埋没する位置に形成されたコア線の入口および出口と、これら入口と出口とを直線で結ぶ、コア線が走行するコア線経路のわきに設けられて離型剤を流通循環させる攪拌手段とを有した離型剤塗布装置である。
【0017】
この構成によれば、離型剤槽内に形成されるコア線経路は直線である。このため、コア線が撚り合わされたものであっても走行中に湾曲して、コア線の線心間に離型剤が入り込んでしまうことを防止できる。
【0018】
また、攪拌手段がコア線経路のわきに設けられており、この攪拌手段は離型剤を流通循環させるので、離型剤を落下させたり振動させたりする場合に比して、その積極的な移動により全体的に満遍なく付着させることができる。つまり、離型剤は攪拌手段により搬送され、離型剤槽内を流通循環するので、コア線の走行速度と攪拌手段の駆動条件とを定めれば付着条件を一定にすることができ、所望の付着状態を得ることができる。このため、余剰の離型剤を気体の噴射等の手段で容易に落とせるような付着状態にすることが可能である。
【0019】
ここで、上記構成要件については、次のような態様に構成することができる。
【0020】
その態様の一つは、上記攪拌手段が、周面に羽根を有したスクリュからなり、コア線経路を左右に挟む位置に設けられるとともに、該スクリュの羽根の向きとスクリュの回転方向が、離型剤をコア線経路に向けて搬送するように設定されたものである。
この構成によれば、攪拌手段がスクリュからなるので、攪拌は連続してよどみなく行えるとともに、離型剤槽内に貯留された離型剤の全体を容易に攪拌できる。また、攪拌されて流通循環する離型剤は、コア線経路に沿う方向に移動しながら順次コア線に付着するので、離型剤の付着条件から貯留された離型剤の量や湿度などの外因性のものを排除でき、より一そう所望の付着状態を得ることができるようになる。しかも、攪拌手段は、コア線経路を左右に挟む位置に設けられているので、離型剤の全体的な攪拌がより小さい攪拌手段で効率よく行える。
【0021】
態様の他の一つは、上記スクリュが、周面に螺旋状の羽根を有するとともに、該羽根を有する部分が、離型剤槽の内法における長さ方向の長さよりも短く形成され、平面視方形をなす離型剤槽の対角位置に配設されたものである。
この構成によれば、スクリュはその周面に螺旋状の羽根を有するので、スクリュの回転により離型剤は攪拌されスクリュの軸方向に移送されながらコア線に付着する。そして、スクリュにおける上記羽根を有する部分が短く形成され、離型剤槽の対角位置に配設されているので、螺旋状の羽根が存在しない部分が設けられることになる。このため、螺旋状の羽根を有する部分を離型剤槽における内法の長さ方向の長さに対応するように形成した場合に比して、離型剤全体の流通循環を緩やかに行うことができ、ブリッジの発生を良好に防止できる。
【0022】
この場合には、上記スクリュの羽根より先端側の部分に、基部がスクリュの軸方向に延びる平板状の板状羽根が形成されるとよい。
このように構成すると、板状羽根はその基部がスクリュの軸方向に延びるものであり、たとえば水車の羽根のような形態であるので、スクリュの螺旋状の羽根から離れて移動する離型剤をかき上げるように攪拌する。このかき上げるような攪拌によって、下部に滞留しようとする離型剤の搬送がより円滑に行える。
【0023】
態様の他の一つは、上記離型剤槽の後段側に、コア線に付着した離型剤を他の部材の摺接により殺ぎ落とす摺接手段が設けられた離型剤塗布装置である。摺接手段は、たとえば、走行するコア線の外周面に接するゴムやブラシ等の適宜の部材で構成できる。
この構成によれば、コア線に付着した離型剤のうちの一部を殺ぎ落とすことができ、全体的に満遍なく付着した離型剤を薄くすることができる。
【0024】
態様の他の一つは、上記離型剤槽の後段側に、コア線に付着した離型剤を気体の噴射により払い落とす気体噴射手段が設けられた離型剤塗布装置である。
この構成によれば、コア線に付着した離型剤のうちの一部を払い落とすことができ、全体的に満遍なく付着した離型剤を薄くすることができる。
この場合、上記気体噴射手段は、コア線の走行方向前段側に向けて気体を噴射するものであるとよい。走行するコア線に対して向かい側から気体を噴射することになるので、効率よく払い落とすことができるとともに、後段側に流れる離型剤の量を抑えて、離型剤の不要な飛散を抑制することができる。
【0025】
別の手段は、走行するコア線の外周面に粉体からなる離型剤を塗布する離型剤塗布方法であって、上記離型剤を貯留した離型剤槽の内部に、上記コア線を離型剤に埋没した状態で直線的に走行させるとともに、上記コア線が走行するコア線経路のわきに設けられた攪拌手段による攪拌で離型剤槽内に流通循環している離型剤をコア線に付着させる離型剤付着工程を有した離型剤塗布方法である。
【0026】
この構成によれば、離型剤槽内に形成されるコア線経路は直線である。このため、コア線が撚り合わされたものであっても走行中に湾曲して、コア線の線心間に離型剤が入り込んでしまうことを防止できる。
【0027】
また、攪拌手段がコア線経路のわきに設けられており、この攪拌手段は離型剤を流通循環させるので、離型剤を落下させたり振動させたりする場合に比して、その積極的な移動により全体的に満遍なく付着させることができる。つまり、離型剤は攪拌手段により搬送され、離型剤槽内を流通循環するので、コア線の走行速度と攪拌手段の駆動条件とを定めれば付着条件を一定にすることができ、所望の付着状態を得ることができる。また、攪拌手段はコア線経路のわきに設けられているので、離型剤の全体的な攪拌がより小さい攪拌手段で効率よく行える。
【0028】
この離型剤塗布方法においては、上記離型剤付着工程の後段に、他の部材の摺接および/または気体の噴射により離型剤付着工程で付着した離型剤のうちの一部を除去する余剰離型剤除去工程を設けるとよい。
コア線に付着した離型剤のうちの一部を殺ぎ落としたり払い落としたりすることができ、全体的に満遍なく付着した離型剤を薄くすることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のようにこの発明によれば、コア線に対する離型剤の付着を全体的に満遍なく薄く行えるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0031】
図1は、離型剤塗布装置11の全体を示す正面図であり、この離型剤塗布装置11は、ケーブルの製造ラインにおけるシース被覆工程の前段に置かれる。すなわち、シース被覆前のコア線12に対してタルク等の粉体からなる離型剤13を塗布する装置である。
【0032】
離型剤13には、タルクのほかに、たとえば炭酸カルシウム等の適宜の粉体が使用される。また、この離型剤塗布装置11は、コア線12が複数本の線心12a(図7、図8参照)を撚り合わされて構成されたものである場合に適しているが、線心が平行に並ぶコア線に対して使用することもできる。
【0033】
離型剤塗布装置11は、離型剤13を貯留する離型剤槽21と、該離型剤槽21の後段側に設けられた2個の回収部(第1回収部22と第2回収部23)を有し、これら各部21,22,23の中をコア線12が一直線に走行する。離型剤塗布の概略を説明すると、まず離型剤槽21においてコア線12の全体に満遍なく離型剤13を付着させ(離型剤付着工程)、つづいて離型剤槽21を出たところで付着している離型剤13の一部を殺ぎ落とすとともに、第2回収部23に入る位置でさらに離型剤13の一部を払い落とす(余剰離型剤除去工程)。
【0034】
図2、3、4、5は、主として離型剤槽21の構造を示す。これらの図に示したように、離型剤槽21は、平面視長方形をなす有底箱状に形成され、その長手方向の一側面に入口21aが、他側面に出口21bが設けられている。これら入口21aと出口21bを繋ぐと一直線になる。入口21aと出口21bを繋ぐ仮想の直線が、コア線12が走行するコア線経路25である。
【0035】
入口21aには、図2に示したようにコア線12の侵入を許容する一方、離型剤13がこぼれるのを抑制する入口規制部26が設けられる。この入口規制部26は、たとえばコア線12が通る大きさの孔と、この孔を開閉可能に塞ぐべく放射状の切れ目が形成されたゴム板等を組み合わせて構成できる。
【0036】
そして、コア線経路25を左右に挟む2位置に、攪拌手段としてのスクリュ31,32が離型剤槽の長さ方向に沿って設けられている。
【0037】
なお、図示したように、離型剤槽21の底を形成する底板27は、スクリュ31,32で攪拌される離型剤13の流通循環が円滑に行われるように下に凸に大きく湾曲している。また、コア線経路25の高さは、スクリュ31,32の中心位置より下に設定される。
【0038】
スクリュ31,32は、円筒状をなし、その周面に螺旋状の羽根31a,32aを有するものであって、離型剤槽21内の同一高さにおける対角位置に配設される。スクリュ31,32の長さは離型剤槽21の内寸に対応する長さよりも短く設定されている。短くといっても、具体的には、スクリュの遊端が、離型剤槽21の中間位置よりも遊端側に位置する長さである。そして、各スクリュ31,32は、その反コア線経路25側が、離型剤槽21の壁面に近接するように取り付けられている。これらスクリュ31,32の羽根31a,32aの向きと回転方向は、スクリュ31,32によって攪拌される離型剤13がコア線経路25に向いて移動するように設定される。
【0039】
詳しくは、図4に示したように、平面視においてコア線12の走行方向を図面上右にした状態では、入口21a側でコア線経路25の下側に、出口21b側でコア線経路25の上側に、それぞれスクリュ31,32が配置される。入口21a側のスクリュ31は図4の右から見て右螺旋の羽根31aが形成され、出口21b側のスクリュ32にも右螺旋の羽根32aが形成されるが、入口21a側のスクリュ31は右に回転し、出口21b側のスクリュ32は、左に回転する。
【0040】
このような2本のスクリュ31,32の存在により、図6に示した如く、離型剤13はコア線経路25に沿って搬送されながら、横に滑るようにコア線経路25に向かって移動する。同時に、スクリュ31,32の羽根31a,32aから離れた離型剤13は、スクリュ31,32遊端側のスクリュ31,32が存在しない部分においても、スクリュ31,32の回転による推進力で順次移動する。そして、離型剤槽21の端部に当たった離型剤13は、コア線経路25に向けて移動し、離型剤槽21内全体によどみなく流通循環する。また、離型剤槽21の底板27は下に凸に湾曲しているので、重力による移動も手伝って、離型剤13はコア線経路25に向けて次々に移動する。
【0041】
そのうえスクリュ31,32は、壁面に近接して設けられているので、上述のようにスクリュ31,32によって移動する離型剤13は、コア線経路25から離れる方向に拡散せずに、効率よくコア線経路25に向かって移動する。
【0042】
上記出口21bには、コア線12の走行を許容しつつ離型剤13がこぼれないように規制する出口規制部28が設けられる。この出口規制部28も、前記入口規制部26と同様に構成され得るが、離型剤13のこぼれを極力少なくするためには、コア線12の走行を許容しつつも規制する部分が2重、3重と、複数段設けられるとよい。コア線12の走行を許容しつつも離型剤13が零れないように規制する部分を、たとえばコア線12が通る大きさの孔と、これを開閉可能に塞ぐ切れ目を有したゴム板等からなる規制部材で構成した場合には、図示したようにその一つを着脱可能に構成するとよい。上記孔の大きさが異なる規制部材28aを複数備えて、塗布の対象となるコア線12の太さに応じて選択使用すれば、コア線12の走行に伴う離型剤13のこぼれをより少なくすることができる。
【0043】
また、出口21bには、直方体状をなす第1回収部22が離型剤槽21の側面に隣接した状態で設けられる。
【0044】
そして、出口規制部27の第1回収部22側の外側面には、図5に示したようにゴム板からなる摺接部材41が備えられる。
【0045】
摺接部材41は、ゴム板に放射状をなす複数の切り込みが形成され、略三角形の複数枚の摺接片41aを有している。これら摺接片41aは、走行するコア線12に対して相対的に摺接し、コア線12に付着した離型剤13の一部を殺ぎ落とす。
【0046】
上記出口21bの外側面には、殺ぎ落とした離型剤13を前方に導く滑り台42が設けられる。滑り台42の上に落下した離型剤13は、第1回収部22の下部に備えられた回収箱43内に収まる。
【0047】
なお、上記離型剤槽21と第1回収部22は、その上面に、開閉可能な蓋体21c,22aを有する。
【0048】
上記第2回収部23は、第1回収部22よりも断面形状が小さくコア線経路25に沿って長い筒状に形成され、内部における第1回収部22側の位置には、エア噴射手段51が設けられている。エア噴射手段51はリング状に形成され、複数の噴射ノズル51aを有する。これら噴射ノズル51aは、コア線12の走行方向前段側に向けられており、走行するコア線12に逆らうようにエアを吹き付ける。エアの吹き付けにより、コア線12に付着した離型剤13の一部は吹き飛ばされ、第1回収部22の回収箱43内に落下する。
【0049】
第2回収部におけるエア噴射手段の上方には、内部を視認するための点検窓22aが形成されている。
【0050】
また、第2回収部23におけるエア噴射手段51よりも後段側の下面には、排出口52が形成され、ダクト53を介して集塵機(図示せず)に接続される。さらに、排出口52より後段側の端部には送出口54を有し、離型剤13が塗布されたコア線12を後段に向けて送り出すように構成している。
【0051】
このように構成された離型剤塗布装置11では、図7、図8に模式的に示したように離型剤13の付着と余剰離型剤の除去が続けて行われる。
【0052】
すなわち、離型剤槽21で行われる離型剤付着工程では、コア線12が離型剤槽21内を流通循環する離型剤13と接触して、コア線12の外周面に離型剤13が付着する。このとき、離型剤13は、2本のスクリュ31,32で、コア線経路に向かって移動するようによどみなく流通循環するので、図7に示したように、全体的に満遍なく付着する。しかも、コア線経路25が直線であるので、コア線12が撚り合わされたものであっても走行中に撚り合わせられた部分が開いたりすることはなく、コア線12の線心12a間に離型剤13が入り込んでしまうことを防止できる。
【0053】
また、離型剤13を積極的に移動させ、走行するコア線12に対して接触させるので、離型剤を落下させたり振動させたりするだけの消極的な接触に比して、より全体的に満遍なく付着させることができる。このため、コア線12の走行速度とスクリュ31,32の駆動条件とを定めれば、離型剤13の付着条件から外因性のものを排除でき、所望の付着状態を得ることが可能である。この結果、余剰の離型剤を気体の噴射等の手段で容易に落とせるような軽度の付着状態にすることが可能となる。
【0054】
さらに、離型剤13の攪拌はスクリュ31,32で行うので、攪拌が連続してよどみなく行えるとともに、離型剤槽21内の離型剤13の全体を容易に攪拌することもできる。
【0055】
また、2本のスクリュ31,32はコア線経路25を左右に挟む位置に設けられており、これらのスクリュ31,32の回転で離型剤13を流通循環させる。このため、離型剤13の全体的な攪拌がより小さいスクリュ31,32で効率よく行え、装置の小型化を図ることもできる。
【0056】
さらに、スクリュ31,32の長さが離型剤槽21の長さよりも短く設定され、離型剤槽21内にスクリュ31,32が存在しない部分を有するので、離型剤13全体の流通循環を緩やかに行うことができ、ブリッジの発生を良好に防止できる。このため、離型剤13の付着は所望通りに行える。
【0057】
なお、上記スクリュ31,32が存在しない部分での離型剤13の移送がより円滑に行え、ブリッジの発生をより良好に防止するには、図9に示したように、スクリュ31,32の遊端側に、基部がスクリュの軸方向に延びる平板状の板状羽根31b,31c,32b,32cを配設するとよい。
【0058】
すなわち、板状羽根31b,31c,32b,32cは、スクリュ31,32の長さ方向に2組配設されるが、これら各組みの板状羽根31b,31c,32b,32cを構成する板羽根は、それぞれ等間隔に配設された4枚の板羽根からなる。板羽根は方形板状をなし、各組みにおいて、45度ずつ周方向にずらして配設される。
【0059】
このように板状羽根31b,31c,32b,32cが形成されると、スクリュの回転により板状羽根31b,31c,32b,32cが離型剤13をかき上げるような攪拌を行い、上下方向での流通循環を活発にする。このため、下部に滞留しようとする離型剤13を円滑に流動させることができ、全体の流通循環を促進できる。
【0060】
続いて、離型剤槽21を出て第1回収部22、第2回収部23へと走行する間の余剰離型剤除去工程では、コア線12に付着した離型剤13のうち、余分なものが取り除かれる。
【0061】
すなわち、図8に示したように、コア線12の走行に伴って、摺接部材41の摺接片41aがコア線12の外周面に摺接し、余剰の離型剤13を落下させる。このとき、線心12a間の谷間に付着した離型剤13も良好に落とせる。
【0062】
次に第2回収部23に移行すると、エア噴射手段51からのエアにより、コア線12の外周面に付着している余分な離型剤13が吹き飛ばされる。エア噴射手段51の作用を受ける前段で摺接部材41による殺ぎ落としを経ているので、離型剤13はエアの吹付けで払い落としやすい状態である。
【0063】
また、エア噴射手段51は、走行するコア線12に対して逆らうようにエアを噴射するので、離型剤13を効率的に払い落とすことができるとともに、後段側に流れる離型剤13の量を抑えて、離型剤13の不要な飛散をすることができる。
【0064】
このように余剰離型剤除去工程において、離型剤付着工程で全体的に満遍なくコア線12に付着した離型剤13のうち余剰のものが除去されるので、離型剤13の付着は全体的に薄くなり、理想的に塗布状態を得ることができる。
【0065】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の攪拌手段は、上記一形態のスクリュ31,32に対応し、
以下同様に、
摺接手段は、摺接部材41に対応し、
気体噴射手段は、エア噴射手段51に対応するも、
この発明は、上記一形態の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
【0066】
たとえば、攪拌手段は、螺旋状の羽根を有したものではなく、断続的に羽根が形成されたものであるもよい。
【0067】
また、摺接部材は、ブラシ等の部材で構成されるもよく、出口規制部と別体に設けられるものであるもよい。気体噴射手段はリング状ではなく、その他の形状をなすものであるもよい。
【0068】
さらに、余剰離型剤除去工程では、摺接部材またはエア噴射手段のいずれか一方のみで余剰離型剤の除去を行うもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】離型剤塗布装置の正面図。
【図2】離型剤塗布装置の側面図。
【図3】要部の縦断面図。
【図4】要部の横断面図。
【図5】離型剤塗布装置の一部断面側面図。
【図6】作用状態を示す横断面図。
【図7】離型剤付着工程を示す説明図。
【図8】余剰離型剤除去工程を示す説明図。
【図9】要部の横断面図。
【符号の説明】
【0070】
11…離型剤塗布装置
12…コア線
13…離型剤
21…離型剤槽
21a…入口
21b…出口
25…コア線経路
31,32…スクリュ
31a,32a…羽根
31b,31c,32b,32c…板状羽根
41…摺接部材
51…エア噴射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア線の外周面に粉体からなる離型剤を塗布する離型剤塗布装置であって、
上記離型剤を貯留する離型剤槽と、
該離型剤槽の側面における上記離型剤に埋没する位置に形成されたコア線の入口および出口と、
これら入口と出口とを直線で結ぶ、コア線が走行するコア線経路のわきに設けられて離型剤を流通循環させる攪拌手段とを有した
離型剤塗布装置。
【請求項2】
前記攪拌手段が、周面に羽根を有したスクリュからなり、コア線経路を左右に挟む位置に設けられるとともに、
該スクリュの羽根の向きとスクリュの回転方向が、離型剤をコア線経路に向けて搬送するように設定された
請求項1に記載の離型剤塗布装置。
【請求項3】
前記スクリュが、周面に螺旋状の羽根を有するとともに、
該羽根を有する部分が、離型剤槽の内法における長さ方向の長さよりも短く形成され、平面視方形をなす離型剤槽の対角位置に配設された
請求項2に記載の離型剤塗布装置。
【請求項4】
前記スクリュの羽根より先端側の部分に、基部がスクリュの軸方向に延びる平板状の板状羽根が形成された
請求項3に記載の離型剤塗布装置。
【請求項5】
前記離型剤槽の後段側に、コア線に付着した離型剤を他の部材の摺接により殺ぎ落とす摺接手段が設けられた
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の離型剤塗布装置。
【請求項6】
前記離型剤槽の後段側に、コア線に付着した離型剤を気体の噴射により払い落とす気体噴射手段が設けられた
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の離型剤塗布装置。
【請求項7】
前記気体噴射手段が、コア線の走行方向前段側に向けて気体を噴射するものである
請求項6に記載の離型剤塗布装置。
【請求項8】
走行するコア線の外周面に粉体からなる離型剤を塗布する離型剤塗布方法であって、
上記離型剤を貯留した離型剤槽の内部に、上記コア線を離型剤に埋没した状態で直線的に走行させるとともに、上記コア線が走行するコア線経路のわきに設けられた攪拌手段による攪拌で離型剤槽内に流通循環している離型剤をコア線に付着させる離型剤付着工程を有した
離型剤塗布方法。
【請求項9】
前記離型剤付着工程の後段に、他の部材の摺接および/または気体の噴射により離型剤付着工程で付着した離型剤のうちの一部を除去する余剰離型剤除去工程を有した
請求項8に記載の離型剤塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−213846(P2007−213846A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29624(P2006−29624)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(391018732)富士電線工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】