説明

難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物及び絶縁保護被膜

【課題】 高難燃性で硬化後の膜の密着性、ブリードアウト性、硬度等の諸特性に優れた難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物の提供。
【解決手段】 ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対し、光硬化性リン酸エステル化合物が40〜50質量部配合されていることを特徴とする難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板製造に用いるアルカリ水溶液で現像可能な液状の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物およびそれを硬化して得られる絶縁保護皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造においては、従来より、エッチング時に使用されるレジスト、はんだ付け工程で使用されるソルダーレジストなど、種々の基板保護手段が必要とされる。小型機器等に使用されるフィルム状のプリント配線板(フレキシブルプリント配線板、以下、FPCと記す。)の製造過程においても、部品搭載のためのはんだ付け工程において無関係な配線を保護するためのソルダーレジストが必要とされる。
【0003】
このような基板の保護手段として、従来はポリイミドフィルムを所定の型に打ち抜いたものを積層したカバーレイ、または耐熱性材料で構成されたインクを印刷したカバーコートが用いられてきた。このカバーレイ、カバーコートは、はんだ付け後の配線の保護膜も兼ねており、はんだ付け時の耐熱性、絶縁性、基板の組み込み時の折り曲げでクラックが入らない可撓性が必要とされる。さらにはUL規格に定める難燃性も必要とされる。
【0004】
ポリイミドフィルムを打ち抜いて形成されるカバーレイは前記の要求特性を満足しており、現在最も多く使用されているが、型抜きに高価な金型が必要な上に、打ち抜いたフィルムを人手によって位置合わせ、張り合せするために高コストになり、また、微細パターンの形成が困難であるという問題がある。
【0005】
また、これらの問題を解決する方法として、基板上に感光性樹脂組成物を液状で塗布し、またはフィルム状で添付する方法が提案され、この方法によれば、基板上に皮膜を形成した後、写真技術によって露光、現像、加熱すれば微細パターンのカバーコートやカバーレイを容易に形成することができることから、従来種々の感光性樹脂組成物が開発されてきている。
【0006】
感光性樹脂組成物に難燃性を付与する方法としては、従来より臭素化エポキシ樹脂などのハロゲン化物系難燃剤や、これに三酸化アンチモンなどの難燃助剤を組み合わせてなる難燃剤系を用いる方法があった(例えば、特許文献1,2参照。)。しかし、近年、環境問題への関心が高まるにつれて、電子部品に使用される樹脂成形材料についても脱ハロゲン、脱アンチモン化の要求が高まっている。
【0007】
一方、難燃剤としてリン酸エステルを使用する方法も提案されている(例えば、特許文献3〜特許文献5参照。)。しかし、リン酸エステルのみでは難燃効果が弱く、UL規格による難燃性の基準を満たすことは難しい。
【0008】
このように、脱ハロゲン、脱アンチモン化を達成でき、しかもUL規格による基準を満たすほどの高い難燃性を備えたレジストフィルムを得るのは容易ではなく、さらなる改良が望まれていた。
【特許文献1】特開平9−325490号公報
【特許文献2】特開平11−242331号公報
【特許文献3】特開平9−235449号公報
【特許文献4】特開平10−306201号公報
【特許文献5】特開平11−271967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リン酸エステル化合物単独による難燃化技術は環境対応型難燃化技術として注目されているが、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物としてUL規格による基準を満たすほどの高い難燃性を得るには、リン酸エステル化合物を多量に添加する必要があり、硬化後の膜の密着性、ブリードアウト性、硬度を著しく低下させてしまう問題がある。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、高難燃性で硬化後の膜の密着性、ブリードアウト性、硬度等の諸特性に優れた難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対し、光硬化性リン酸エステル化合物が40〜50質量部配合されていることを特徴とする難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物において、前記光硬化性リン酸エステル化合物は、1分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和結合を併せ持つことが好ましい。
【0013】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物において、前記ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料に光硬化性樹脂材料が含まれていることが好ましい。
【0014】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物において、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有することが好ましい。
【0015】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物において、有機溶媒が含まれていることが好ましい。
【0016】
また本発明は、前述した本発明に係る難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化して得られる絶縁保護皮膜を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は、ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対し、光硬化性リン酸エステル化合物が40〜50質量部配合されたものなので、硬化後の膜は難燃性、密着性、ブリードアウト性、硬度等の諸特性に優れたものとなり、脱ハロゲン、脱アンチモン化を達成でき、しかもUL規格による基準を満たすほどの高い難燃性を備えたFPC製造用の難燃性ソルダーレジストを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は、ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対し、光硬化性リン酸エステル化合物が40〜50質量部配合されていることを特徴としている。
【0019】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物において、前記ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料は、光硬化性樹脂材料又は熱硬化性樹脂材料が好ましく、その中でも光硬化性樹脂材料が好ましい。
【0020】
光硬化性樹脂材料としては、可視光、紫外線等により硬化しうるものであれば特に制限はないが、好ましくは、アクリル系モノマーに由来するエチレン性不飽和末端基を有する感光性プレポリマー(A)、前記感光性プレポリマー(A)を除くエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、および光重合開始剤(C)からなるものが挙げられる。
【0021】
(1)感光性プレポリマー(A)
本発明に用いられる感光性プレポリマー(A)は、アクリル系モノマーに由来するエチレン性不飽和末端基を有するものである。ここでいうアクリル系モノマーは、アクリル酸若しくはメタクリル酸(以下、アクリル酸とメタクリル酸をあわせて「(メタ)アクリル酸」という)またはこれらのアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル等の誘導体である。かかる感光性プレポリマーとしては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等が挙げられ、中でもエポキシアクリレートおよびウレタンアクリレートが好ましい。
【0022】
本発明において、感光性プレポリマーとしては上記条件を満たすものであれば特に限定されないが、1分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和結合を併せ持つものが好ましい。具体的には、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物(EA)、またはカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(UA)が特に好ましいものとして挙げられる。
【0023】
<カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物(EA)>
本発明におけるカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物としては、特に限定されるものでは無いが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
【0024】
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、または脂肪族エポキシ化合物などのエポキシ化合物が挙げられる。これらは単独または二種以上併用することもできる。
【0025】
不飽和基含有モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸等が挙げられる。また、水酸基含有アクリレートと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、不飽和基含有モノグリシジルエーテルと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物も挙げられる。これら不飽和基含有モノカルボン酸は、単独または二種以上併用することもできる。
【0026】
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、エンドビシクロ−[2,2,1]−ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。これらは単独または二種以上併用することもできる。
【0027】
このようにして得られるカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物の分子量は特に制限されないが、好ましくは数平均分子量が1000〜40000、より好ましくは2000〜5000である。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。
【0028】
また、前記エポキシ(メタ)アクリレート化合物の酸価(固形分酸価を意味する。以下同様)は10mgKOH/g以上であることが好ましく、45mgKOH/g〜160mgKOH/gの範囲にあることがより好ましく、さらに50mgKOH/g〜140mgKOH/gの範囲がアルカリ溶解性と硬化膜の耐アルカリ性のバランスが良く、とりわけ好ましい。酸価が10mgKOH/gより小さい場合にはアルカリ溶解性が悪くなり、逆に大きすぎると、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物の構成成分の組み合わせによっては硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性を下げる要因となる場合がありうる。
【0029】
前記カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、単独で感光性プレポリマー(A)を構成していてもよいが、後述するカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物と併用してもよい。その場合は、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、100質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
【0030】
<カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(UA)>
本発明におけるカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート由来の単位と、ポリオール由来の単位と、ポリイソシアナート由来の単位とを構成単位として含む化合物である。より詳しくは、両末端がヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート由来の単位からなり、該両末端の間はウレタン結合により連結されたポリオール由来の単位とポリイソシアナート由来の単位とからなる繰り返し単位により構成され、この繰り返し単位中にカルボキシル基が存在する構造となっている。
【0031】
すなわち、前記カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、Ra−(ORbO−OCNHRcNHCO)n-Ra〔式中、Raはヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート由来の単位、ORbOはポリオールの脱水素残基、Rcはポリイソシアナートの脱イソシアナート残基を表す。〕で表される。
【0032】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、少なくとも、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートと、ポリオールと、ポリイソシアナートとを反応させることにより製造できるが、ここで、ポリオールまたはポリイソシアナートの少なくともどちらか一方には、カルボキシル基を有する化合物を使用することが必要である。好ましくは、カルボキシル基を有するポリオールを使用する。このようにポリオールおよび/またはポリイソシアナートとして、カルボキシル基を有する化合物を使用することにより、RbまたはRc中にカルボキシル基が存在するウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造することができる。なお、上記式中、nとしては1〜200程度が好ましく、2〜30がより好ましい。nがこのような範囲であると、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜の可撓性がより優れる。
【0033】
また、ポリオールおよびポリイソシアナートの少なくとも一方が2種類以上用いられている場合には、繰り返し単位は複数の種類を表すが、その複数の単位の規則性は完全ランダム、ブロック、局在等、目的に応じて適宜選ぶことができる。
【0034】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(UA)に用いられるヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトンまたは酸化アルキレン付加物、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート−アクリル酸付加物、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−酸化アルキレン付加物−ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
これらのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうちでは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを使用すると、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の合成がより容易である。
【0036】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(UA)に用いられるポリオールとしては、ポリマーポリオールおよび/またはジヒドロキシル化合物を使用することができる。ポリマーポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ジオール、多価アルコールと多塩基酸のエステルから得られるポリエステル系ポリオール、ヘキサメチレンカーボネート、ペンタメチレンカーボネート等に由来の単位を構成単位として含むポリカーボネート系ジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリブチロラクトンジオール等のポリラクトン系ジオールが挙げられる。
【0037】
また、カルボキシル基を有するポリマーポリオールを使用する場合は、例えば、上記ポリマーポリオール合成時に(無水)トリメリット酸等の3価以上の多塩基酸を共存させ、カルボキシル基が残存するように合成した化合物などを使用することができる。
【0038】
ポリマーポリオールは、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのポリマーポリオールとしては、数平均分子量が200〜2000であるものを使用すると、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化させて形成した硬化膜の可撓性がより優れるため好ましい。また、これらのポリマーポリオールのうち、ポリカーボネートジオールを使用すると、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化させて形成した硬化膜の耐熱性が高く、プレッシャークッカー耐性に優れるため好ましい。さらに、ポリマーポリオールの構成単位が、単一の構成単位からのみではなく、複数の構成単位からなるものであると、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化させて形成した硬化膜の可撓性がさらに優れるためより好ましい。このような複数の構成単位からなるポリマーポリオールとしては、エチレングリコールおよびプロピレングリコールに由来の単位を構成単位として含むポリエーテル系ジオール、ヘキサメチレンカーボネートおよびペンタメチレンカーボネートに由来の単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0039】
ジヒドロキシル化合物としては、2つのアルコール性ヒドロキシル基を有する分岐または直鎖状の化合物を使用できるが、特にカルボキシル基を有するジヒドロキシ脂肪族カルボン酸を使用することが好ましい。このようなジヒドロキシル化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が挙げられる。カルボキシル基を有するジヒドロキシ脂肪族カルボン酸を使用することによって、ウレタン(メタ)アクリレート化合物中に容易にカルボキシル基を存在させることができる。ジヒドロキシル化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、ポリマーポリオールとともに使用してもよい。
【0040】
また、カルボキシル基を有するポリマーポリオールを併用する場合や、後述するポリイソシアナートとしてカルボキシル基を有するものを使用する場合には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノンなどのカルボキシル基を持たないジヒドロキシル化合物を使用してもよい。
【0041】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(UA)に用いられるポリイソシアナートとしては、具体的に2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ジフェニルメチレンジイソシアナート、(o,m,またはp)−キシレンジイソシアナート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアナートおよび1,5−ナフタレンジイソシアナート等のジイソシナートが挙げられる。これらのポリイソシアナートは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、カルボキシル基を有するポリイソシアナートを使用することもできる。
【0042】
本発明で用いられるカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(UA)の分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均分子量が1000〜40000、より好ましくは8000〜30000である。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。また、前記ウレタン(メタ)アクリレートの酸価は、5〜150mgKOH/gが好ましく、さらに好ましくは30〜120mgKOH/gである。
【0043】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物の数平均分子量が1000未満では、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化させて形成した硬化膜の伸度と強度を損なうことがあり、40000を超えると硬くなり可撓性を低下させるおそれがある。また、酸価が5mgKOH/g未満では難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物のアルカリ溶解性が悪くなる場合があり、150mgKOH/gを超えると硬化膜の耐アルカリ性・電気特性等を悪くする場合がある。
【0044】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物の酸価は5〜150mgKOHであれば、好ましいが、その範囲でも酸価を高くすれば現像性は改善されるものの、可撓性が低下する傾向があり、酸価を低くすれば、可撓性は高くなるもの、現像性が低下し現像残りが生じやすくなる傾向がある。その場合、少なくとも2種類の酸価が異なるカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を組み合わせて使用することで、優れた可撓性を有しかつ良好な現像性を有する難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を容易に得ることができる場合がある。
【0045】
とりわけ、酸価が5mgKOH/g以上、60mgKOH/g未満のカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物と、酸価が60mgKOH/g以上、150mgKOH/g以下のカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物をそれぞれ少なくとも1種以上選んで組み合わせることが好ましい。
【0046】
また、酸価の異なるカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を組み合わせて使用する場合の使用割合は、酸価が5mgKOH/g以上、60mgKOH/g未満のものが過剰であることが好ましく、より具体的には、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(UA)100質量部中、酸価が5mgKOH/g以上、60mgKOH/g未満:酸価が60mgKOH/g以上、150mgKOH/g以下=60〜90:40〜10の質量比(あわせて100とする)であることがより好ましい。
【0047】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物は、(1)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートと、ポリオールと、ポリイソシアナートを一括混合して反応させる方法、(2)ポリオールとポリイソシアナートを反応させて、1分子あたり1個以上のイソシアナート基を含有するウレタンイソシアナートプレポリマーを製造した後、このウレタンイソシアナートプレポリマーとヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させる方法、(3)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとポリイソシアナートを反応させて、1分子あたり1個以上のイソシアナート基を含有するウレタンイソシアナートプレポリマーを製造した後、このプレポリマーとポリオールとを反応させる方法などで製造することができる。
【0048】
(2)エチレン性不飽和基を有する化合物(B)
難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物中の光硬化成分に含まれるエチレン性不飽和基を有する化合物は、感光性プレポリマー(A)以外のものであり、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物の粘度を調整したり、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化物としたときの耐熱性、可撓性などの物性を調整する目的で使用されるものである。好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを使用する。
【0049】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;
【0050】
ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはグリセロールジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート;
【0051】
2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート;メタクリロキシエチルフォスフェート、ビス・メタクリロキシエチルフォスフェート、メタクリロオキシエチルフェニールアシッドホスフェート(フェニールP)等のリン原子を有するメタクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス・グリシジル(メタ)アクリレート等のジアクリレート;
【0052】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリアクリレート;ビスフェノールSのエチレンオキシド4モル変性ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル変性ジアクリレート、脂肪酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド3モル変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド6モル変性トリアクリレート等の変性ポリオールポリアクリレート;
【0053】
ビス(アクリロイルオキシエチル)モノヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸骨格を有するポリアクリレート;α,ω−ジアクリロイル−(ビスエチレングリコール)−フタレート、α,ω−テトラアクリロイル−(ビストリメチロールプロパン)−テトラヒドロフタレート等のポリエステルアクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;ω−ヒドロキシヘキサノイルオキシエチル(メタ)アクリレート;ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート;フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0054】
また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等もエチレン性不飽和基を有する化合物として好適に用いることができる。
【0055】
これらのうち好ましいものとしては、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートおよびウレタンアクリレートであり、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレートが挙げられる。また、耐熱性が高くなることから、エチレン性不飽和基を3個以上有するものが好ましい。
【0056】
感光性プレポリマー(A)とエチレン性不飽和基を有する化合物(B)との配合比は、質量比で(A):(B)=95:5〜50:50、好ましくは90:10〜60:40、さらに好ましくは85:15〜70:30である(あわせて100とする)。(A)成分の配合量が95質量%を超えると、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化させて形成した硬化膜のはんだ耐熱性が低下することがあり、(A)成分の配合量が50質量%未満になると難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物のアルカリ可溶性が低下する傾向にある。
【0057】
(3)光重合開始剤(C)
本発明に用いられる光重合開始剤(C)としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、ジエトキシアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類、チオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2,4−ジメチルチオキサンテン等のチオキサンテン類、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のアルキルアントラキノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類などを挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。さらに必要に応じて光増感剤を併用することができる。
【0058】
これらの光重合開始剤のうちベンゾフェノン類、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類が好ましく。具体的なものとしては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0059】
これらの光重合開始剤(C)の配合量は、感光性プレポリマー(A)とエチレン性不飽和基を有する化合物(B)とからなる光硬化成分の合計100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.2質量部〜10質量部がより好ましい。光重合開始剤の配合量が0.1質量部未満であると硬化が不十分な場合がある。
【0060】
本発明で用いられる熱硬化性樹脂材料としては、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン誘導体(例えば、ヘキサメトキシメラミン、ヘキサブトキシ化メラミン、縮合ヘキサメトキシメラミン等)、尿素化合物(例えば、ジメチロール尿素等。)、ビスフェノールA系化合物(例えば、テトラメチロール・ビスフェノールA等。)、オキサゾリン化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
これらのうちエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、e−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。さらに、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂等を使用してもよい。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
本発明で用いられる光硬化性リン酸エステルとしては、分子内に少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和結合とエステル結合したリン酸部分を有し、光を照射することによって重合硬化し、難燃性の重合体を形成する化合物などが用いられる。本発明において好適な光硬化性リン酸エステルとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート(分子量196)が挙げられる。
【0063】
本発明で用いられる光硬化性リン酸エステルの配合量は、ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対し40〜50質量部の範囲とされる。光硬化性リン酸エステルの配合量が40質量部未満であると、組成物を光硬化させて得られる絶縁性保護被膜の難燃性が不十分となるおそれがある。一方、光硬化性リン酸エステルの配合量が50質量部を超えると、組成物を光硬化させて得られる絶縁性保護被膜の硬度が低下し、傷付きやすくなる。
【0064】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物には、前述したソルダーレジスト用硬化性樹脂材料と、難燃剤である光硬化型リン酸エステルに加えて、着色剤、流動調整剤として界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、紫外線防止剤、可塑剤などを、本発明の主旨を損ねない範囲で添加することができる。着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等が挙げられる。増粘剤としては、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられる。消泡剤は、印刷、塗工時および硬化時に生じる泡を消すために用いられ、具体的には、アクリル系、シリコン系等の界面活性剤が挙げられる。レベリング剤は、印刷、塗工時に生じる皮膜表面の凹凸を失くすために用いられ、具体的には、アクリル系、シリコン系等の界面活性剤が挙げられる。密着性付与剤としては、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0065】
また、FPC等の表面に塗布するために、本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は有機溶媒を含有し、塗布するために好適な流動性を有していることが望ましい。この有機溶媒としては、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;カルビトールアセテート、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系、カルビトール系およびそれらのエステル、エーテル誘導体の溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;ニトロ化合物系溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサメチルベンゼン、クメン芳香族系溶媒;テトラリン、デカリン、ジペンテン等の炭化水素からなる芳香族系および脂環族系等の溶媒等が挙げられる。1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。有機溶媒の使用量は、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物の粘度が500〜500,000mPa・s[B型粘度計(Brookfield Viscometer)にて25℃で測定]になるよう調節するのが好ましい。
【0066】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物に配合する各材料は、ハロゲン元素、特にF,Cl,Br,Iの各元素の含有量が少ないものが好ましい。ハロゲン元素の含有量が少ない難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は、燃焼時にダイオキシン等の有害物質の発生を少なくすることができる。
【0067】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は、前述したソルダーレジスト用硬化性樹脂材料と、難燃剤である光硬化性リン酸エステルと、必要に応じて添加される各種添加剤及び有機溶媒とを、均一に混合して製造される。各配合成分を均一に混合するための装置は、レジストなどの硬化性樹脂組成物を製造するために用いる従来公知の装置や設備を用いて実施し得る。
【0068】
本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は、FPC基板等の表面の必要な部分に塗布され、硬化することによって絶縁保護皮膜として利用される。難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物が光硬化性である場合、絶縁保護皮膜を形成する場合には、難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を導電体によって回路が形成された基板上に10μm〜100μmの厚みで塗布した後、60℃〜100℃の温度範囲で、5〜30分間程度で熱処理して乾燥し、5〜70μmの厚みとした後、所望の露光パターンが施されたネガマスクを介して露光し、未露光部分を現像液で除去して現像し、100℃〜180℃の温度範囲で、10〜40分間程度熱硬化して硬化させる方法が挙げられる。この難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は、難燃性のみならず、硬化物とした場合の可撓性にとりわけ優れ、柔軟性に優れるため、FPC基板の絶縁保護皮膜に用いるのに特に適していて、カールが少なく、取扱い性にも優れたFPC基板とすることができる。また、例えば、多層プリント配線基板の層間の絶縁樹脂層として使用してもよい。
【0069】
露光に用いられる活性光は、公知の活性光源、例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク等から発生する活性光が用いられる。感光層に含まれる光重合開始剤(C)の感受性は、通常、紫外線領域において最大であるので、その場合は活性光源は紫外線を有効に放射するものが好ましい。もちろん、光重合開始剤(C)が可視光線に感受するもの、例えば、9,10−フェナンスレンキノン等である場合には、活性光としては可視光が用いられ、その光源としては前記活性光源以外に写真用フラッド電球、太陽ランプなども用いられる。
【0070】
現像液には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液を使用することができる。
【0071】
本発明は、本発明の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を基板上で硬化させて、所定の位置に前記絶縁保護皮膜を形成してなるプリント配線板もまた提供する。本発明のプリント配線板は、UL規格による基準を満たすほどの高い難燃性と可撓性を共に備え、はんだ耐熱性、耐湿性、高温信頼性等にも優れた絶縁保護皮膜を有している。
【実施例】
【0072】
表1中に示す配合組成(単位:質量部)の通り、各材料を配合し、有機溶媒としてジエチレングリコールモノジエチルエーテルを加えてミキサーにより混合し、粘度が3000mPa・s程度の実施例1〜2及び比較例1〜6の各組成物を調製した。表1中に記す各材料は、以下のものを用いた。
【0073】
・エポキシアクリレート:ビスフェノールAエポキシアクリレート ZAR(日本化薬社製)。
・アクリレートモノマー:KAYARAD TMPTA(日本化薬社製)。
・光重合開始剤:Irgacure369(チバスペシャルティーケミカルズ社製)。
・熱硬化剤:トリエチレンテトラミン。
・光硬化性リン酸エステル:ライトアクリレート P−1A(共栄社化学社製)。
・縮合リン酸エステル:CR−741(大八化学社製)。
・エポキシ樹脂:NC−3000(日本化薬社製)。
【0074】
調製した実施例1〜2及び比較例1〜6の各組成物を光硬化させたそれぞれの絶縁保護皮膜に対して、次の評価試験及び評価基準に基づいて試験を行い、難燃性、ブリードアウト性、鉛筆硬度、密着性について評価した。結果を表1に示す。
【0075】
[評価試験及び評価基準]
<難燃性(UL94)(1)
燃焼性試験片は、以下の方法で作製した。厚み25μm、200mm×50mmのポリイミドフィルム(東レデュポン製,カプトン100H)の両面に、厚みが25μmの硬化性難燃組成物層を設け、その後、500mJ/cmでUV照射後、150℃、30分で熱硬化した。この試料を70℃で168時間状態調整した後、260℃のサンドバスにて10秒のソルダーショック処理を行ない難燃試験用の試料とした。燃焼特性は米国のUnderwriters Laboratories Inc.(ULと略す)の高分子材料の難燃性試験規格94UL−VTM試験に準拠した方法で難燃性を評価した。
なお、表1中の「VTM」は、以下の基準による。
・「VTM−0」:下記の要求事項をすべて満足するもの(1)全ての試験片は、各回接炎中止後10秒を越えて有炎燃焼しない。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が50秒を超えないこと。
(3)有炎または赤熱燃焼が125mmの標線まで達しないこと。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しないこと。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は30秒を超えないこと。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき、または有炎時間の合計が51秒から55秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが(1)から(5)を満足すること。
・「VTM−1」:下記の要求事項をすべて満足するもの
(1)全ての試験片は、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えないこと。
(3)有炎または赤熱燃焼が125mmの標線まで達しないこと。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しないこと。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は60秒を超えないこと。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき、または有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが(1)から(5)を満足すること。
・「VTM−2」:下記の要求事項をすべて満足するもの(1)全ての試験片は、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えないこと。
(3)有炎または赤熱燃焼が125mmの標線まで達しないこと。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しても良い。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は60秒を超えないこと。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき、または有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが(1)から(5)を満足すること。
【0076】
また「V−0」は、ASTM D 3801、IEC 707、またはISO 1210に準拠し、TEST FOR FLAMMABILITY OF PLASTIC MATERIALS−UL94(JULY 29, 1997)に記載された20mm垂直燃焼試験に従って行い、前記文献に記載された分類にしたがって評価した。
【0077】
<ブリードアウト性(2)
乾いた布で硬化膜表面を拭き、色落ちするまでの回数が5回以上のものを合格とした。
【0078】
<鉛筆硬度(3)
硬化膜の鉛筆硬度をJIS K5600−5−4の試験法に準じて測定し、硬度H以上のものを合格とした。
【0079】
<密着性(4)
露光後に基材から剥離しないものを合格とした。
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示す通り、難燃剤としてソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対して、40〜50質量部の光硬化性リン酸エステルを配合した実施例1〜2の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物は、優れた難燃性(V−0合格)を達成した。また、ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対して、光硬化性リン酸エステルを40〜50質量部の範囲で配合することで、ブリードアウト性、硬度及び密着性についても良好となることがわかった。
【0082】
一方、光硬化性リン酸エステルの配合量が少ない(35質量部)比較例1では、難燃性が低下した。
また、光硬化性リン酸エステルの配合量が多い(55質量部)比較例2では、難燃性が良好であるが、硬化膜が軟らかくなり、鉛筆硬度が不合格であった。
また、光硬化性リン酸エステルに代えて難燃剤として縮合リン酸エステルを配合した比較例3〜6では、難燃性、ブリードアウト性、鉛筆硬度、密着性が殆ど不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料100質量部に対し、光硬化性リン酸エステル化合物が40〜50質量部配合されていることを特徴とする難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項2】
前記光硬化性リン酸エステル化合物が1分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和結合を併せ持つことを特徴とする請求項1に記載の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項3】
前記ソルダーレジスト用硬化性樹脂材料に光硬化性樹脂材料が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項4】
熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項5】
有機溶媒が含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ソルダーレジスト樹脂組成物を硬化して得られる絶縁保護皮膜。

【公開番号】特開2006−330235(P2006−330235A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152052(P2005−152052)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】