説明

難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子およびその型内発泡成形体

【課題】 非ハロゲン系難燃剤を用いて型内発泡成形体の密度が高い場合および形状厚みが厚い場合に於いても、難燃性に優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子および型内発泡成形体を容易に得ること。
【解決手段】 (A)ポリオレフィン系樹脂、(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤、を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物を基材樹脂とすることを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材、緩衝包材、通箱、バンパー用芯材などの自動車用部材、とくに自動車内装材及び電気電子部材などの製造に用いられる難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子および該難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンの型内発泡成形体は、ポリスチレンの型内発泡成形体と比較して、耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性、圧縮後の歪回復率に優れており、バンパー用芯材、側突パッド、フロアー材といった自動車用部材、緩衝包装材、通箱などに広く用いられている。
【0003】
しかしながら、一般的にポリオレフィン系樹脂からの発泡成形体は、前記のような優れた特性を有する反面、燃焼しやすいという欠点を有する。とくに、発泡成形体は非発泡成形体と比較して燃焼性が高く、容易に燃焼してしまうという欠点を有する。
【0004】
近年、自動車部材、建築材料および電気電子部材に、難燃性や自己消火性を有することが要望されており、これらの要望にこたえるべく難燃性を付与した発泡成形体を得る研究が広く行なわれている。
【0005】
ポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与する難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤などが用いられる。これまで、比較的少ない添加量で優れた難燃性能を発現し、またコストが安いことから、多くの分野でハロゲン系難燃剤が使用されてきた。しかし、燃焼時のハロゲン化ガスなどの有毒ガス発生の問題があるため、近年、非ハロゲン系難燃剤の研究が盛んに進められている。
【0006】
たとえば、ポリオレフィン系樹脂100重量部、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤30〜200重量部、発泡剤0.1〜15重量部および架橋剤10重量部以下からなる難燃性発泡性組成物を、発泡剤の分解温度以下で予め成形したのち、樹脂の融点(軟化点)以上、発泡剤の分解温度以上に加熱、加圧して発泡倍率1.1〜25倍に発泡させることにより、高度の難燃性を有するとともに、可撓性、耐熱性、機械的特性、断熱性、電気的特性などに優れた難燃性発泡体を製造する方法が開示されている(特許文献1)。
【0007】
また、ポリオレフィン系樹脂100重量部、熱分解型発泡剤1〜40重量部、ポリリン酸アンモニウム5〜50重量部およびステアリン酸亜鉛0.5〜5重量部からなる発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を、電子線架橋ののち加熱発泡させて、有毒ガスの発生、着色などの問題のない難燃性発泡体を製造することが記載されている(特許文献2)。
【0008】
また、ポリオレフィン系樹脂100重量部、ポリシロキサン化合物5〜200重量部、発泡剤(加熱分解型発泡剤、液化ガス型発泡剤など)を主成分とする難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物を、電子線架橋ののち加熱発泡させて、機械的強度が高く、外観の良好な難燃性発泡体を製造する方法が開示されている(特許文献3)。
【0009】
しかし、非ハロゲン系難燃剤が予備発泡粒子に配合されると、結合セルや微細セルが形成され、予備発泡粒子の成形性が低下するなどの問題が生じ得る。
【0010】
一方、予備発泡粒子および該予備発泡粒子を成形して得られる型内発泡成形体に難燃性を付与する方法として、つぎの方法が知られている。
【0011】
たとえば、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が相互に融着して形成された発泡体であって、該発泡粒子の相互融着界面に発泡体重量の8〜20重量%の難燃剤として作用する熱膨張性黒鉛粉末が介在している自己消火性発泡体が開示されている(特許文献4)。この方法では、予備発泡粒子にあらかじめ熱膨張性黒鉛粉末を付着させておいて、融着された発泡粒子界面に熱膨張性黒鉛粉末を介在させるための工程が必要になり、複雑になるばかりでなく、予備発泡粒子表面に熱膨張性黒鉛粉末が付着することによって、成形時の発泡粒子同士の融着性がわるくなるなどの問題が生ずる。
【0012】
前記、非ハロゲン系難燃剤の問題を解決する方法として、立体障害性アミンエーテル系難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が開示されている(特許文献5、6)。しかし、この方法で製造したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を用いた難燃性ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体は、型内発泡成形体密度が高くなると難燃性能が低下する問題がある。また、型内発泡成形体の厚みが厚くなるに従い難燃性能が低下する問題もある。ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を用いた型内発泡成形体は、内包する商品や部材の形状に合わせて柔軟に、かつ切削加工無しで成形できること、予備発泡粒子の密度を調整することで幅広い密度の製品を成形できる利点から電気電子部材から産業資材など幅広く利用されている。このため、型内発泡成形体の密度や厚みにおいて安定した難燃性が求められている。
【特許文献1】特開平3−269029号公報
【特許文献2】特開平5−331310号公報
【特許文献3】特開平7−238178号公報
【特許文献4】特開平4−363341号公報
【特許文献5】WO2003/048239号公報
【特許文献6】特開2004−263033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、非ハロゲン系難燃剤を用いて型内発泡成形体の密度が高い場合および形状厚みが厚い場合に於いても、難燃性に優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子および型内発泡成形体を容易に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、従来の立体障害性アミンエーテル系難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子よりも優れた難燃性と安定した性能を得るべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂に立体障害性アミンエーテル系難燃剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤と、フェノール系抗酸化剤、ホスファイト系加工安定剤、硫黄系熱安定剤を併用配合することによって、前記目的を達成しうることを見出し本発明に到達した。
【0015】
即ち、本発明は、(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤、を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物を基材樹脂とすることを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0016】
好ましい態様としては、
(1)前記立体障害性アミンエーテル系難燃剤が、一般式(1):
1NHCH2CH2CH2NR2CH2CH2NR3CH2CH2CH2NHR4 (1)
(式中、R1およびR2は、一般式(2):
【0017】
【化2】

(式中、R5は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、R6はメチル基、シクロヘキシル基またはオクチル基)で表わされるs−トリアジン部分T、R3およびR4の一方は一般式(2)で表わされるs−トリアジン部分T、R3およびR4の他方は水素原子を表わす)で表わされる化合物である、
(2)(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤の使用量が、(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤0.1重量部以上10重量部以下、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.01重量部以上1.0重量部以下、(D)ヒンダードアミン系光安定剤0.01重量部以上1.0重量部以下、(E)フェノール系抗酸化剤0.01重量部以上1.0重量部以下、(F)ホスファイト系加工安定剤0.01重量部以上1.0重量部以下、(G)硫黄系熱安定剤0.01重量部以上1.0重量部以下、である、
(3)ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である、
(4)示差走査熱量計によって測定したときに得られるDSC曲線において2つの融解ピークを示し、かつ2つの融解ピークのうち高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)が1.5J/g以上25.0J/g以下である、
前記記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0018】
本発明の第2は、前記記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなる型内発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子によれば、難燃剤として立体障害性アミンエーテル系難燃剤という非ハロゲン系難燃剤を使用するため、有毒ガスの発生などハロゲン系難燃剤を使用した場合の問題が生じず、また、無機系非ハロゲン難燃剤を使用した場合に見られるセルの連泡化や微細化によるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形性の低下などの問題も生じない。また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填し、蒸気で加熱、融着させることにより型内発泡成形体とする際に、予備発泡粒子間の融着、型内発泡成形体の表面外観を損なうことなく良好な型内発泡成形体を得ることができる。さらに、従来の立体障害性アミンエーテル系難燃剤のみを使用したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を成形してなる型内発泡成形体よりも高い難燃性を付与することができる。さらに、型内発泡成形体の密度が高い場合および製品形状厚みが厚い場合に於いても優れた難燃性を有するため、複雑な形状及び幅広い密度の難燃性を有した型内発泡成形体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体75重量%以上100重量%以下、および、オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体0重量%以上25重量%以下、さらに好ましくは、オレフィン系単量体80重量%以上100重量%以下、および、オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体0重量%以上20重量%以下を重合させた樹脂である。オレフィン系単量体の割合が75重量%未満になると用いたオレフィン系単量体の特性が充分に保持されなくなる。
【0021】
前記オレフィン系単量体の具体例としては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、3−メチル−ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、3,4−ジメチル−ブテン−1、ヘプテン−1、3−メチル−ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などの炭素数2〜12のα−オレフィンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
また、前記オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体の具体例としては、たとえばシクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,8,8a,6−オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記のオレフィン系単量体、および、オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体を重合させたオレフィン系樹脂の具体例としては、たとえば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、たとえば、エチレン含有率1〜15重量%プロピレン含有率85〜99重量%であるエチレン−プロピレン共重合体プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテンなどがあげられる。
【0024】
これらのうちでは、ポリエチレン系樹脂或いはポリプロピレン系樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂であり、更に好ましくは、エチレン含有率1〜15重量%プロピレン含有率85〜99重量%であるエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体であることが、均一かつ独立な気泡構造をもつ難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が容易に得られるという点から好ましい。
【0025】
さらに、ポリオレフィン系樹脂は、チーグラー型塩化チタン系触媒またはメタロセン触媒で重合された、立体規則性の高いものが好ましい。
【0026】
前記ポリオレフィン系樹脂は、無架橋のものがコスト面、リサイクル面および工程の簡略化などの点から好ましい。
【0027】
これらのポリオレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記ポリオレフィン系樹脂は、メルトインデックス(以下、MIと表記する場合がある)が、0.1g/10分以上50g/10分以下であることが好ましく、さらには0.3g/10分以上40g/10分以下であるものが好ましい。ポリオレフィン系樹脂のMIが0.1g/10分未満になると、ポリオレフィン系樹脂の発泡時の流動性がとぼしくなり、発泡が困難となる場合があり、50g/10分をこえると、過度に高い流動性を示し、高度に発泡しにくくなり、また、得られた難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は発泡後に収縮しやすくなる傾向が生じる。
【0029】
前記ポリオレフィン系樹脂には、必要に応じてポリオレフィン系樹脂と混合して使用することができる他の熱可塑性樹脂、たとえばポリスチレン、アイオノマーなどをポリオレフィン系樹脂の性質が失われない範囲で組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明において用いる(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤としては、好ましくは、たとえば一般式(1):
1NHCH2CH2CH2NR2CH2CH2NR3CH2CH2CH2NHR4 (1)
(式中、R1およびR2は、一般式(2):
【0031】
【化3】

(式中、R5は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、R6はメチル基、シクロヘキシル基またはオクチル基)で表わされるs−トリアジン部分T、R3およびR4の一方は一般式(2)で表わされるs−トリアジン部分T、R3およびR4の他方は水素原子を表わす)で表わされる化合物が好ましい。立体障害性アミンエーテル系難燃剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
一般式(2)中、R5である、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基とは、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、2−エチルブチル基、イソペンチル基、1−メチルペンチル基、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルヘキシル基、イソヘプチル基、1,1,3,3−テトラメチルペンチル基、1−メチルウンデシル基、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル基などが例示出来る。
【0033】
前記一般式(2)で表わされるs−トリアジン部分Tの具体例としては、たとえば2,4−ビス[(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン、2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン、2,4−ビス[(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジンなどがあげられる。
【0034】
前記一般式(1)で表わされる立体障害性アミンエーテル系難燃剤の具体例としては、たとえばN,N’,N’’’−トリス{2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノプロピルアミン;N,N’,N’’−トリス{2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン−6イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン;N,N’,N’’’−トリス{2,4−ビス[(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン−6イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン;N,N’,N’’−トリス{2,4−ビス[(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン−6イル}−3,3’−エチレンジイミノプロピルアミン;N,N’,N’’’−トリス{2,4−ビス[(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン−6イル}−3,3’−エチレンジイミノプロピルアミン;N,N’,N’’−トリス{2,4−ビス[(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン−6イル}−3,3’−エチレンジイミノプロピルアミンなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤の使用量は、(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量部以上5重量部以下である。(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤の使用量が0.1重量部未満の場合には、充分な難燃性が得られにくい場合があり、10重量部をこえる場合には、コスト高になり、経済的に不利になる場合がある。
【0036】
本発明において用いる(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、一般的に樹脂に用いることができるものであれば特に制限されないが、好ましい具体例としては、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。中でも、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ルであることが好ましい。
【0037】
前記(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量は、(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し0.01重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下である。(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量が0.01重量部未満の場合には、充分な難燃性改善効果が得られにくい場合があり、1.0重量部をこえる場合には、コスト高になり、経済的に不利になる場合がある。
【0038】
本発明において用いる(D)ヒンダードアミン系光安定剤は、一般的に樹脂に用いることができるものであれば特に制限されないが、好ましい具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セパケート、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。中でも、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケートであることが好ましい。
【0039】
前記(D)ヒンダードアミン系光安定剤の使用量は(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下である。(D)ヒンダードアミン系光安定剤の使用量が0.01重量部未満の場合には、充分な難燃性改善効果が得られにくい場合があり、1.0重量部をこえる場合には、コスト高になり、経済的に不利になる場合がある。
【0040】
本発明において用いる(E)フェノール系抗酸化剤は、樹脂に用いることができるものであれば特に制限されないが、好ましい具体例としては、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4・ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス(2メチ−4ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。中でも、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4・ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトであることが好ましい。
【0041】
前記(E)フェノール系抗酸化剤の使用量は(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下である。(E)フェノール系抗酸化剤の使用量が0.01重量部未満の場合には、充分な難燃性改善効果が得られにくい場合があり、1.0重量部をこえる場合には、コスト高になり、経済的に不利になる場合がある。
【0042】
本発明において用いる(F)ホスファイト系加工安定剤は、樹脂に用いることができるものであれば特に制限されないが、好ましい具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。中でも、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトであることが好ましい。
【0043】
前記(F)ホスファイト系加工安定剤の使用量は(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下である。(F)ホスファイト系加工安定剤の使用量が0.01重量部未満の場合には、充分な難燃性改善効果が得られにくい場合があり、1.0重量部をこえる場合には、コスト高になり、経済的に不利になる場合がある。
【0044】
本発明において用いる(G)硫黄系熱安定剤は、樹脂に用いることができるものであれば特に制限されないが、好ましい具体例としては、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。中でも、ジステアリルチオジプロピオネートであることが好ましい。
【0045】
前記(G)硫黄系熱安定剤の使用量は(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下である。(G)硫黄系熱安定剤の配合割合が0.01重量部未満の場合には、充分な難燃性改善効果が得られにくい場合があり、1.0重量部をこえる場合には、コスト高になり、経済的に不利になる場合がある。
【0046】
本発明において、(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤の使用は、ポリオレフィン系樹脂に対して難燃性を付与する上において必須であるが(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤及び(G)硫黄系熱安定剤全て配合することが必須であり、その配合量、配合比率は配合剤の種類により適時決定される。
【0047】
(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、さらにタルク等のセル造核剤をはじめ、フィラー、他の添加剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、酸化アンチモンのような難燃相乗剤などを加えてもよい。
【0048】
本発明の(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物を基材樹脂とする難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、既知の方法により製造することができる。
【0049】
たとえば、(A)ポリオレフィン系樹脂を(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤、および必要に応じて添加される添加剤とともに溶融混練してポリオレフィン系樹脂粒子とし、該樹脂粒子を水系分散媒中で撹拌下、高温、高圧条件で該樹脂粒子に発泡剤を含浸させたのち、低圧雰囲気下に放出することにより製造される。製造される難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の嵩密度は、要すれば使用される充填剤の有無、樹脂密度などによっても異なるが、好ましくは0.01〜0.3g/cm3、さらに好ましくは0.015〜0.18g/cm3であり、発泡倍率は好ましくは3〜90倍、さらに好ましくは5〜60倍程度である。また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡率は65%以上であることが好ましく、さらには80%以上であるのが好ましい。難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の平均気泡径は50〜1000μmであることが好ましく、さらには100〜800μmであることが好ましい。独立気泡率が65%未満になると難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡してなる型内発泡成形体が収縮し易くなるばかりでなく、成形する際の膨張圧が充分でないため融着性が低下し、また型内発泡成形体の外観が損われ、緩衝性も低下する傾向がある。さらに、前記平均気泡径が50μm未満になると、型内発泡成形体に充分な強度を持たすことが困難となる傾向があり、1000μmをこえると型内発泡成形体の表面性が低下する傾向にある。
【0050】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、前記のごとき特性に加え、示差走査熱量計による測定(以下、DSC法と表記する場合がある)において、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線において、2つの融解ピーク温度を示し、かつ2つの融解ピークのうち高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)が、1.5J/g以上25.0J/g以下であることが好ましい。2つの融解ピーク温度を有することによりポリオレフィン系樹脂を架橋することなく難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形が可能となる。高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)が1.5J/g未満になると、型内発泡成形体の寸法収縮が大きくなり、また型内発泡成形体の圧縮強度などの機械的物性が低下する傾向がある。また、25.0J/gをこえると、型内発泡成形体の表面性がわるくなるとともに内部融着性がわるくなり、機械的物性が低下する傾向がある。とくにポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂の場合には、高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)は1.5J/g以上25.0J/g以下であることが好ましく、さらには5.0J/g以上20.0J/g以下であることが好ましく、とくには8.0J/g以上18.0J/g以下であるのが好ましい。
【0051】
なお、難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の示差走査熱量計による測定によって得られるDSC曲線は、予備発泡粒子1〜10mgのサンプルを、示差走査熱量計にて10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られるものである。また、高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)は、前記DSC曲線において、高温側ピークに基づく融解ピーク熱量QHを決定するための接線(図2に示される破線P)を、低温側ピークと高温側ピークとの間のDSC曲線の勾配が0になる点から高温側のピークの終わる側のDSC曲線に引き、高温側ピークと接線とに囲まれた部分が示す熱量である。高温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)の測定法を示すために、図1で用いたポリプロピレン系樹脂を用いて実施例1で得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線を図2に示す。
【0052】
基材樹脂が、立体障害性アミンエーテル系難燃剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系抗酸化剤、ホスファイト系加工安定剤および硫黄系熱安定剤を含んでなり、かつ高温側ピークに基づく融解ピーク熱量が1.5J/g以上25.0J/g以下である難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形することにより、優れた難燃性を有し、かつ燃焼時有毒ガスが発生しない型内発泡成形体を得ることができる傾向にある。
【0053】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、DSC法による測定で2つの融解ピークを示すことが好ましいものであるが、この2つの融解ピークが示す融解ピーク温度の関係についてはとくに限定はない。前記2つの融解ピークの温度差が10℃以上30℃以下であると、型内発泡成形における加熱時の融着がしやすくなるので好ましい。難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子における2つの融解ピーク温度は、ポリオレフィン系樹脂の分子構造、樹脂の熱履歴、発泡剤量、発泡温度、発泡圧力などによって変わるが、高温側で発泡すると2つの融解ピーク温度の差は大きくなる傾向がある。
【0054】
難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子のDSC曲線に現れる2つの融解ピークは、ポリオレフィン系樹脂粒子の発泡させる際に該ポリオレフィン系樹脂粒子をその融点付近まで加熱したのち急冷することにより基材樹脂の結晶状態が変化して生じやすく、その結果、2つの融解ピークを示す難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が得られやすい。
【0055】
難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)も樹脂の分子構造や添加剤の量によっても変わりうるが、一般に発泡温度を高くするとQHは小さくなる。難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、ポリオレフィン系樹脂粒子の融点をTm(℃)とするとき、予備発泡の発泡温度を[(Tm−25)〜(Tm+10)]℃の範囲に設定することにより、容易に高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)が1.5J/g以上25.0J/g以下の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得ることができる。
【0056】
つぎに、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製法について説明する。
【0057】
(A)ポリオレフィン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいように、あらかじめ押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状などの所望の粒子形状で、その粒子の平均重量が好ましくは0.1〜10mg、より好ましくは0.5〜4mgになるように成形加工され、ポリオレフィン系樹脂粒子とされる。(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤、および必要により加えられる添加剤などの成分は、通常、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加される。
【0058】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造する方法にはとくに限定はなく、公知の方法が適用できる。たとえば耐圧容器中で難燃性ポリオレフィン系樹脂粒子を水系分散媒、代表的には水、に分散させた水分散物を撹拌しながら樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、圧力下で分散液を所定の温度まで加熱したのち、水分散物を低圧域に放出して樹脂粒子を発泡させるなどの方法により製造される。
【0059】
発泡剤としては、たとえばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類などの揮発性発泡剤や、二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス、さらには水などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。発泡剤の使用量にはとくに限定はなく、所望の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率に応じて適量使用すればよいが、たとえば脂肪族炭化水素類および脂環式炭化水素類の場合、通常、難燃性ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましい。また、二酸化炭素の場合、難燃性ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましい。
【0060】
前記水分散物の調製の際に、分散剤として、たとえば第3リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンなどや、分散助剤として、少量の界面活性剤、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダなどが使用され得る。これらはそれぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や用いる難燃性ポリオレフィン系樹脂粒子の種類と使用量などによって異なるが、水系分散媒100重量部に対して、分散剤は0.2重量部以上3重量部以下、分散助剤は0.001重量部以上0.1重量部以下使用することが好ましい。
【0061】
水などの水系分散媒に分散される難燃性ポリオレフィン系樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好なものとするために、水系分散媒100重量部に対して20重量部以上100重量部以下添加することが好ましい。
【0062】
ポリオレフィン系樹脂粒子を水系分散媒および発泡剤と共に耐圧容器に入れて樹脂粒子の水分散物を形成し、加熱下、たとえば使用されているポリオレフィン系樹脂の軟化点より高い温度で樹脂粒子に発泡剤が含浸せしめられる。発泡剤を含有する樹脂粒子の水分散物は、ついで耐圧容器中で加圧下に発泡温度まで加熱され、該容器から2〜10mmφの開口オリフィスを通して低圧域に放出され、ポリオレフィン系樹脂粒子が発泡せしめられ、本発明の難燃性ポリオレフィン系予備発泡粒子が得られる。発泡温度は、用いる難燃性ポリオレフィン系樹脂粒子の種類、目的とする難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の有するDSC法で測定される高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)をどの値にするかなどによって変わってくるので一義的には定められないが、用いた難燃性ポリオレフィン系樹脂粒子のDSC法によって測定された融点(融解ピーク温度)をTm℃としたとき、予備発泡の発泡温度を[(Tm−25)〜(Tm+10)]℃とすることが好ましい。発泡温度が前記範囲内であれば、得られる難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子はDSC法で2つの融解ピーク温度を有し、高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)が1.5J/g以上25.0J/g以下の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が容易に得られる傾向がある。
【0063】
また、発泡圧力は主に所定の発泡倍率により選択されるが、おおむね0.78〜4.90MPaであることが好ましい。
【0064】
前記耐圧容器にはとくに限定はなく、前記圧力および温度に耐えられるものであればいずれのものでも使用し得る。前記耐圧容器の具体例としては、たとえばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0065】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子からの型内発泡成形体の製造は、従来から知られている型内発泡成形方法により、型内発泡成形体にすることができる。例えば、イ)発泡粒子を無機ガスで加圧処理して発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、ロ)発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、ハ)特に前処理することなく発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などの方法が利用し得る。
【0066】
前記無機ガスとしては、空気、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどが使用できる。これらは単独で用いても、2種以上混合使用してもよい。これらの中でも、汎用性の高い空気、窒素が好ましい。
【0067】
こうして得られた型内発泡成形体は、優れた難燃性を有し、表面外観もよく、緩衝性や耐衝撃性などの機械的強度に優れている。とりわけ、型内発泡成形体の厚みが増しても良好な難燃性をしめす。したがって、各種用途に使用し得るが、とくに電気電子部材や自動車部材や建築材料など、難燃性や自己消火性の必要とされる分野に好適に使用することができる。
【0068】
つぎに、本発明において用いられるDSC法について説明する。
【0069】
測定装置としては、通常の示差走査熱量計、たとえばセイコーインスツルメンツ(株)性のDSC6200型などがあげられる。難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の基材樹脂の融点(Tm(℃))の測定は、ポリオレフィン系樹脂1〜10mgのサンプルにつき、前記測定装置を用いて10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温し、ついで10℃/分の降温速度で40℃まで降温したのち、再度10℃/分の昇温速度で220℃まで昇温する条件下で行なわれ、2回目の昇温時に得られるDSC曲線に現れるピークの温度を融点(Tm)とする。
【0070】
図1はポリオレフィン系樹脂としてエチレン含有率3.0重量%のエチレン−プロピレンランダム共重合体を用いたポリオレフィン系樹脂粒子の融点(Tm)を測定した例を示す。
【実施例】
【0071】
つぎに、本発明を実施例および比較例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これらにおいて、特にことわりのない限り「部」は「重量部」を示す。実施例および比較例における評価は下記方法によって行なった。
【0072】
(高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)の測定)
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ(株)性のDSC6200型を使用し、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子1〜10mgのサンプルにつき、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して得られるDSC曲線の低温側ピークと高温側ピークとの間のDSC曲線の勾配が0になる点から高温側ピークの終わる側のDSC曲線に接線(直線P)を引き、DSC曲線と接線とでかこまれた部分の面積を求めることにより求めた熱量から、単位重量当りの熱量を求めた。
【0073】
(嵩密度)
10000cm3のバケツを用い、予備発泡粒子10Lの正確な重量W(g)を求め、予備発泡粒子の嵩密度D(g/cm3)を次式から求める。
D =W/10000
【0074】
(平均セル径)
得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の中から任意に30個の予備発泡粒子を取り出し、JIS K6402に準拠してセル径を測定し、平均セル径を算出した。
【0075】
(独立気泡率)
空気比較式比重計(BECKMAN社製930型)を用いて、得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の独立気泡体積を求め、かかる独立気泡体積を別途エタノール浸漬法で求めた見かけ体積で除することにより独立気泡率を算出した。
【0076】
(融着率)
型内発泡成形体を破断させ、その断面を観察し、断面の粒子の全個数に対する破断粒子数の割合を求め、以下の基準で評価した。通常、型内発泡成形体として満足すべき融着率の水準は少なくとも60%である。
◎:破断粒子の割合が80%以上
○:破断粒子の割合が60%以上80%未満
×:破断粒子の割合が60%未満
【0077】
(寸法収縮率)
型内発泡成形体の寸法をノギスで測定して、金型寸法に対する収縮率を計算し、以下の基準で評価した。
○:収縮率3%未満
△:収縮率3%以上5%未満
×:収縮率5%以上
【0078】
(難燃性)
1)残炎時間
UL−94水平試験法に準じて評価を行ない。各試験のn数5点の平均残炎時間を測定した。ここでいう残炎時間はバーナーの接炎をやめてからの燃焼時間のことである。
【0079】
2)総合評価
UL−94水平試験法に準じて評価を行ない、下記の基準で評価する。
◎:サンプル厚み13mmでHF−2に合格
○:サンプル厚み7mmでHF−2に合格
△:サンプル厚み3.5mmでHF−2に合格
×:全ての厚みサンプルでHF−2に不合格
ここで、UL−94水平試験法におけるHF−2合格の基準は以下の通りである。試験片に炎を60±1秒当ててから100mm以上試験片から離し、残炎時間(試験片が炎を燃えている状態)を測定する。n数5点の試験片のうち4点の残炎時間が2秒以下、1点の残炎時間が10秒以下で且つ試験片の燃焼した長さが60mm以下であることに適合しなければならない。ここで発炎物質の滴下による標識綿の着火はあってもよい。
【0080】
(表面外観)
型内発泡成形体表面を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:表面に凹凸がなく、各粒子間隙もほとんどない
×:表面に凹凸があり、各粒子間隙がきわめて大きい
【0081】
(実施例1〜12および比較例1〜5)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(エチレン含有率3.0重量%、MI=6.1g/10分)100部と、化学式(3):
RNHCH2CH2CH2NRCH2CH2NHCH2CH2CH2NHR (3)
(式中、Rは、式:
【0082】
【化4】

で表わされる基を示す)で表わされる(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤(商品名:NOR116、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN326、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)、(D)ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:TINUVIN770、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)、(E)フェノール系抗酸化剤(商品名:IRGANOX1010 、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)、(F)ホスファイト系加工安定剤(商品名:IRGAFOS168、チバ スペシャルティ ケミカルズ(社製)、(G)硫黄系熱安定剤(商品名:IRGANOX―PS802、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)、着色剤としてカーボンブラックの表1に示す量とセル造核剤としてタルク0.01部を混合し、単軸押出機で混練したのち造粒し、樹脂粒子(1.3mg/粒)を製造した。得られたポリオレフィン系樹脂粒子の融点は143.3℃〜143.9℃であった。
【0083】
該樹脂粒子100部およびイソブタン10部を、パウダー状塩基性第3リン酸カルシウム2部およびn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.05部を含む水300部からなる分散媒とともに10L耐圧容器に仕込み、該容器内部を表1記載の発泡温度に加熱した。ついで、容器内圧力を、イソブタンを圧入して表1記載の所定発泡圧力に調整した。そののち、容器内圧力をチッ素で保持しつつ、耐圧容器下部のバルブを開いて水分散物を開孔径4.0mmφのオリフィス板を通して大気圧下に放出することによって、表1に記載の特性を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

得られた予備発泡粒子を圧力容器中で空気加圧圧力0.19MPaG下、18時間、加圧処理をおこない、予備発泡粒子内に空気を含浸させて0.20〜0.22MPaの内圧を付与した後、400mm×300mm×22mmの金型に圧縮率が5%以上になるように充填し、予備発泡粒子同士を圧力0.28MPaG(ゲージ圧力)の水蒸気で10秒間加熱、融着させ、型内発泡成形体を得た。得られた型内発泡成形体の評価を行なった。難燃性試験には、型内発泡成形体を長さ150mm×幅50mm×表2記載の厚みに切削し、これを燃焼試験に用いた。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

以上の結果から、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子から得られる型内発泡成形体は、例えば、特開2004−263033号公報に記載されているような立体障害性アミンエーテル系難燃剤のみを含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子と比べて、7mmや13mmという厚みにおいて、良好な難燃性を示すことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】ポリオレフィン系樹脂として、エチレン含有率3重量%、メルトインデックスMI=6.1g/10分のプロピレン−エチレンランダムコポリマーの粒子5.4mgを用いて融点(Tm)を測定するために求めたDSC曲線である。
【図2】実施例1で得られた難燃性ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子について求めたDSC曲線の高温側のピークに基づく融解ピーク熱量QHの測定法を示したグラフであって、QHを求めるための直線Pは、低温側のピークと高温側のピークとの間の曲線の勾配が0になる点から高温側のピークの終わる側のDSC曲線に接線を引くことにより得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン系樹脂、
(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、
(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、
(D)ヒンダードアミン系光安定剤、
(E)フェノール系抗酸化剤、
(F)ホスファイト系加工安定剤、
(G)硫黄系熱安定剤、
を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物を基材樹脂とすることを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項2】
前記立体障害性アミンエーテル系難燃剤が、一般式(1):
1NHCH2CH2CH2NR2CH2CH2NR3CH2CH2CH2NHR4 (1)
(式中、R1およびR2は、一般式(2):
【化1】

(式中、R5は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、R6はメチル基、シクロヘキシル基またはオクチル基)で表わされるs−トリアジン部分T、R3およびR4の一方は一般式(2)で表わされるs−トリアジン部分T、R3およびR4の他方は水素原子を表わす)で表わされる化合物である請求項1記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項3】
(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤、(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(D)ヒンダードアミン系光安定剤、(E)フェノール系抗酸化剤、(F)ホスファイト系加工安定剤、(G)硫黄系熱安定剤の使用量が、(A)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、
(B)立体障害性アミンエーテル系難燃剤0.1重量部以上10重量部以下、
(C)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.01重量部以上1.0重量部以下、
(D)ヒンダードアミン系光安定剤0.01重量部以上1.0重量部以下、
(E)フェノール系抗酸化剤0.01重量部以上1.0重量部以下、
(F)ホスファイト系加工安定剤0.01重量部以上1.0重量部以下、
(G)硫黄系熱安定剤0.01重量部以上1.0重量部以下、
である請求項1または2記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である請求項1〜3何れか一項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項5】
示差走査熱量計によって測定したときに得られるDSC曲線において2つの融解ピークを示し、かつ2つの融解ピークのうち高温側ピークに基づく融解ピーク熱量(QH)が1.5J/g以上25.0J/g以下である請求項1〜4何れか一項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項6】
請求項1〜5何れか一項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなる型内発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−298892(P2009−298892A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153725(P2008−153725)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】