説明

電力供給線監視装置及びそのネットシステム

【課題】 電源線の配線の必要もなく、バッテリーの交換も必要なく長期間作動できるようにした、電力供給線の傷・腐食,ガイシの漏れ電流を検査してその検査情報を無線で外部に送信できる電力供給線監視装置を提供する。
【解決手段】 電力供給線に非接触的に取り付けたピックアップコイル6aと同ピックアップコイルの電流を整流して充電する整流器6b,充電回路6c,充電器6d,電源制御部6eの電源回路を備え、電力供給線Dに超音波振動を与える超音波振動子2aと、超音波受信センサー3aと、同センサーの反射波を入力して傷・腐食の有無とその位置を計算する傷検出位置算出部4aと、ガイシの外周に取り付けた漏れ電流検出用ピックアップコイル7aと、これらから得た情報・命令の送受を行う無線送受信回路5aと送信変調部5b等を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力供給線の傷や腐食の進行状態を遠隔監視して電力供給線の断線などを予測する電力供給線監視装置に関する。併せて、ガイシの漏れ電流、鉄塔付近の天候情報、鉄塔地面の地震情報も外部へ送信できるネットシステムである。
【背景技術】
【0002】
電気機器は腐食やその他の原因で機器の温度上昇が生じるがこの温度上昇を監視する電気機器監視装置が特許文献1に開示されている。この技術は被監視物の測定位置に取り付けて測定位置の温度を検出する熱電対等からなる温度センサーと、同温度センサーが測定した温度測定値を無線で送信する送信機器とを備えていることを特徴としている。
【0003】
ところで、前記技術では検出の動作に必要な電力を常時給電するために電源が設けられるが、その電力線の引き回しが煩雑で設置に手間を要し、又常時通電のために総消費電力量が大きくなる問題があった。又高電圧下での測定では絶縁対策の為に装置に電池を内蔵させる方式もあるが、その装置が大型化すると設置場所が限定され、更に電池が消耗すると交換作業の手間が生じる問題があった。
【0004】
一方、外部からの給電を必要としない監視装置の特許が、特許文献2に開示されている。この技術は太陽電池とこれにより充電されるバッテリーを備えており、動作に必要な電力は自給できるものである。しかしながら太陽光が照射されがたい場所では発電効率が低下し、又悪天候が続くとバッテリーがあがってしまい、長期にわたって電力を安定的に自給することは難しい。
【0005】
以上のように、電気機器の腐食などによる温度上昇の監視システムは、多々問題があるが一応対策がとられている。その対策は、電力送電線については腐食や傷などによる温度上昇の調査は非特許文献3に示すようにヘリコブタに赤外線カメラを取り付けて電力送電線を写し取り温度上昇した場所から腐食や傷など特定する方法が提案されている。この技術は調査した時だけの監視であり、常に調査するとすれば膨大な時間と費用が生じ現実的でない。
【特許文献1】特開平5−101291号公報
【特許文献2】特開2003−346270号公報
【非特許文献3】平成20年電気学会全国大会発表論文7−132「赤外線カメラによる送電線の腐食点検について」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来の問題点を解決し、外部からの電源線による給電や電池交換を必要とせず、天候や設置場所の制約なしに安定的に作動に必要な電力を自給して恒久的に動作させることができ、電力供給線の傷・腐食の有無とその位置を遠隔操作で検出して報知できるようにした電力供給線監視装置を提供することにある。
本発明の他の課題は、電力供給線のガイシの漏れ電流の定期的、不定期的な監視ができ、更に、鉄塔付近の天候又は鉄塔地の地震情報も送信して報知できるようにすること及び鉄塔間の無線による情報のネットシステムを構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 電力供給線に振動を与える振動発生手段と、同振動発生手段と近接した位置に設けた電力供給線上に生ずる振動を受信する振動受信手段と、振動受信手段が受信した前記振動発生手段の発生振動の波形信号とその振動の反射波の波形信号とを入力してそれらの波形信号の時間差又はその位相差から電力線上の傷又は腐食個所の有無とその位置を算出する傷検出手段と、前記振動発生手段・振動受信手段又は傷検出手段が得た情報を無線で識別情報を付して外部に送信し且つ外部からこれら手段の制御操作命令を受信してこれら手段をその命令に基づいて作動させる無線制御部と、電気供給線からコイルを用いて非接触的に電流を抽出して充電してその電力を前記各手段及び無線制御部に給電する給電手段とを備えた、電力供給線監視装置
2) 無線制御部によって制御され、給電手段から給電され、電力供給線を固定する絶縁ガイシに流れる漏れ電流を検出してその信号を無線制御部に入力する漏れ電流検出手段を備え、漏れ電流情報を外部に無線で送信できるようにした、前記1)記載の電力供給線監視装置
3) 漏れ電流検出手段は、電力給電線を固定する絶縁ガイシの外周に非接触のピックアップコイルを設けて同ピックアップによって漏れ電流を検出するようにした、前記2)記載の電力供給線監視装置
4) 電力供給線のある鉄塔付近の大気の温度・湿度・風向・風速・気圧・大気中のチリ・黄砂又は特定ガスの量の天候状態を測定してそのデータを無線制御部に入力する天候観測装置を備え、同天候観測装置は給電手段から給電を受け、無線制御部からの命令で制御されるようにし、天候情報を無線制御部から識別情報を付して外部へ無線で送信できるようにした、前記1)〜3)いずれか記載の電力供給線監視装置
5) 電力供給線のある鉄塔に地震の震度観測装置を設置し、同震度観測装置の観測データは無線制御部に入力され、震度観測装置は給電手段から給電を受け、無線制御部からの命令で制御されるようにし、地震情報を無線制御部から識別情報を付して外部へ無線で送信できるようにした、前記1)〜4)いずれか記載の電力供給線監視装置
6) 前記1)〜5)の電力供給線監視装置を電力供給線を支持する鉄塔毎に設け、各鉄塔の供給線監視装置の無線制御部はその供給線監視装置で得た情報を自己の識別情報を付して無線で他の鉄塔の供給線監視装置の無線制御部に送信し、受信した無線制御部は自己の情報の他に受信した他の鉄塔の情報をその識別情報を付して更に次の鉄塔へ送信して、情報の無線ネットを形成した、電力供給線監視ネットシステム
7) 同じ鉄塔の電力供給線に取り付けた複数の電力供給線監視装置のうち、一つの親機となる電力供給線監視装置の無線制御部のみが鉄塔間における無線による情報命令の授受が行え、同じ鉄塔の他の電力供給線監視装置の無線制御部は、前記親機の無線制御部と無線で情報命令の授受を行い、同じ鉄塔の各電力供給線の情報及び命令は親機に集約して他の鉄塔へ授受されるようにした、前記6)記載の電力供給線監視ネットシステム
にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動発生手段により電力供給線に振動を与え、振動受信装置でその発生振動とその振動の次の鉄塔での反射波又は電力供給線の途中に傷・腐食があればその個所からの反射波を受信し、これら振動波形信号は傷検出手段に入力され、この傷検出手段で発生振動の波形信号と反射波形信号との時間差・位相差から反射した位置を特定し、この反射した位置が鉄塔間の途中であれば、電力供給線途中に傷又は腐食があると判定し、その判定と傷・腐食の位置の情報を無線制御部に入力して外部へ無線で報知させる。
しかも、これら手段及び無線制御部に必要な電力は、電力供給線からコイルを用いて非接触的に電流を抽出して充電する給電手段から給電されるので、システムに必要な電力の為の電源線を特別に必要とせず、又交換する必要のあるバッテリーを電力源としないので、電源の為の配線工事も、又バッテリーの交換作業も必要なく、単独で恒久的に動作でき、メンテナンスフリーの状態にできる。更に、天候観測装置を設置した発明では、鉄塔付近の温度・風速等の天候情報を無線で報知させることができる。
震度観測装置を設置した発明では、鉄塔の加わる震度(鉄塔のある地面の地震)情報を無線で報知できる。
加えて、無線制御部が鉄塔間で情報の伝達できるネットシステムを組んだ発明では、電力線の傷・腐食個所の情報、ガイシ漏れ電流、天候情報、震度情報を鉄塔を介する無線ネットで遠隔地まで報知できるようになり、本発明の電力供給線監視装置を無線で操作・制御するのに、鉄塔の無線が届く位置に特別に中継設備を設置する必要もなく、又、操作作業者が鉄塔近くまで行く必要が無く、一個所で鉄塔毎の各情報を集める及び操作命令を発することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のピックアップコイルは先に特許出願している特許文献4に示すようなロゴスキコイルやカレントトランス(C.T)でもよく、充分なパワーの供給が得られればどのような形状でもよい。特にロゴスキコイルは電力供給線を取り外すことなしに取り付けが可能である。加振器と受信センサーは並べて配置でき、電力供給線を加振できその振動が電力供給線に伝わっていくことができれば電力供給線の取付端子でも電力供給線上でもよい。ピックアップコイルについては電力供給線を固定している絶縁ガイシの電力供給線側で絶縁ガイシに流れる微小電流が検出できる場所に取り付ける。ピックアップコイルの形状は微小電流が検出できれば形状を選ばない。
【特許文献4】特開2004−165790号公報
【0010】
本発明の電力供給線監視装置は予め設定された時間周期で動作させてもよいし、無線による命令に従って不定期的に又は定刻時に動作させてもよい。無線による命令に従って動作させる場合には通信手段は一般的に知られている「待ち受け受信」でもよく、いつもは動作を休眠して動作電力の備蓄を計り充分に動作電力を備蓄した後に動作を開始してもよいし、あるいは一定時間動作を休眠した後に動作を開始してもよい。そうすることにより本発明の消費電力を抑制することができる。この場合はピックアップコイルから得られる動作電力を著しく軽減させることができ、さらなる小型化が可能になる。
【0011】
給電手段には蓄電手段を備え、充放電可能な二次電池や大容量コンデンサを使用することができる。ピックアップコイルからの出力は交流電流であるので整流する。また、出力電圧が低い場合は昇圧する。
【0012】
本発明で振動を与える振動発生手段としては、磁力を用いた偏心モータ、往復動の小型ハンマー打撃器、超音波振動子、小型スピーカー等が使用できる。又、10μ〜10mS程のパルス的打撃でも、又は1m〜10mS程のバースト波でもよい。振動の伝播速度は約5000m/s程度であり、鉄塔間は500m程であるので0.2秒程で反射されて戻ってくる。
【0013】
各電力供給線監視装置の識別情報は、鉄塔IDと電力供給線IDとを含ませる。コンテントの測定内容又は算出データの情報には、その測定時又は入力・計算時・発信時等の必要な年月日時刻情報を付すものとする。
無線ネットは、電力供給線の送電方向の下流方向のみ伝達し、その最下流の都市でこれら無線ネット情報を入力管理するようにしてもよいし、下流・上流・支流関係なく双方向に伝達させてもよい。又識別情報を識別できる無線搬送周波数を変えることでも代用できる。
【0014】
本発明の電力供給線監視装置は、鉄塔の各電力供給線毎に設けるのが通常であるが、鉄塔無線ネットにする場合は同じ鉄塔の各電力供給線からの無線情報を同じ鉄塔に取り付けた本発明と同じ給電手段を有する無線中継器でもって受信し、これら情報を鉄塔単位で集約して一本化して無線で他の鉄塔へ送信できるようにするのがよい。この無線中継器としては本発明の電力供給線監視装置の一つを親機として使用することもできる。この親機では同じ鉄塔の他の電力供給線監視装置の無線情報か否か判別する鉄塔識別弁別部と鉄塔毎情報集約部を設け、同じ鉄塔からの無線情報であれば、この鉄塔の電力供給線IDの識別情報とその測定・検出情報とを鉄塔毎情報集約部で鉄塔単位で情報を集約して一本化して、次の鉄塔へ無線で送信し、次の鉄塔でその無線中継器又は上記の鉄塔識別弁別部を有する親機の電力供給線監視装置で自己の鉄塔の情報に加えて他の鉄塔の情報を含ませて鉄塔ID・電力供給線ID等の識別情報を付して無線で更に次の鉄塔へ送信する。
【0015】
これらの無線ネットにおいて、天候観測装置・震度観測装置は鉄塔毎に一つで充分であるので上記鉄塔毎の無線中継器又は親機にのみ入力して無線でそれら情報を鉄塔IDを付して送信するようにするのが実用的である。又、この方法では、親機となる以外の子機の電力供給線監視装置の無線出力は鉄塔付近のみの無線送受信で済むので、微小出力で済む。又ネットシステムの無線情報の複雑化をなくせる。
【0016】
情報命令の無線での他の送受方法としては、本発明の電力供給線監視装置の無線制御部の無線が届く固定位置にある所内電力供給線状態管理設備又は地上固定中継基地との間での送受信でもよいし、又は作業者が無線が届く鉄塔近くまで行って、携帯式無線制御操作器で送受してもよい。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
本実施例1は、発生させる振動源として超音波振動子を用い、20kHz程の超音波振動のバースト波を与えて供給電力線の傷・腐食の有無とその位置を検出するとともにその情報・ガイシの漏れ電流情報・天候情報及び震度(地震)情報をも、鉄塔間無線ネットで遠隔地にこれら情報を伝達するシステムの例である。
又、本実施例1の鉄塔間の無線ネットは、同じ鉄塔で各電力供給線に取り付けた本発明の電力供給線監視装置の中の一つを無線ネットの親機として使用する。親機では、同じ鉄塔の各電力供給線の各種情報を鉄塔IDと電力供給線IDとの識別情報を付して集約して下流側の他の鉄塔にある親機に送信するとともに、上流側の他の鉄塔から受信した情報をも下流側の鉄塔の親機へ併せて送信することで電力供給線方向(下流方向)へ送信される無線ネットを形成している。同じ鉄塔の他の子機となる電力供給監視装置は同じ鉄塔の親機との間で情報・命令を無線で送受信する。子機の無線は同じ鉄塔の親機との間での情報命令の授受が主となるので、消費電力も小さくて済む。天候観測装置及び震度観測装置の情報命令の授受は一台の親機との間だけとなっている例である。
【0018】
図1は、実施例1の説明図である。
図2は、実施例1の親機となる電力供給線監視装置の構成を示す説明図である。
図3は、実施例1の子機となる電力供給線監視装置の構成を示す説明図である。
図4は、傷検出回路の傷・腐食の位置検出と判定フロー図である。
図5は、実施例1の電力供給線監視ネットシステムの説明図である。
図6は、実施例1の発生振動と反射波の状態を示す説明図である。
図7は、実施例1の親機の処理フローを示す説明図である。
図8は、実施例1の親機の処理フローを示す説明図である。
図9は、実施例1の子機の処理フローを示す説明図である。
【0019】
図中、1は実施例1の電力供給線監視装置、1aは親機、1bは子機、2aは超音波振動子、2bは超音波制御回路、3aは超音波受信センサー、3bは振動受信回路、4aは傷検出位置算出部、5は無線制御部、5aは無線送受信回路、5bは送信変調部、5cは送信情報記憶部、5dは受信命令情報抽出部、5eは命令制御部、5fは受信情報一時記憶部、6aは給電用ピックアップコイル、6bは整流器、6cは充電回路、6dは充電器、6eは電源制御部、7aは漏れ電流検出用ピックアップコイル、7bは漏れ電流検出部、8は天候観測装置、8a〜8fはその構成部分であり、8aは温度計、8bは湿度計、8cは風速計、8dは気圧計、8eは風向計、8fは天候情報出力部、9は震度観測装置、9aはその震度計、9bはその震度出力部、10は電力供給線DとガイシGとの間のクランプ本体、10aは導電部である。
【0020】
又、Cは時計、IDは鉄塔IDと電力供給線IDを発生する識別情報発生部、Dは電力供給線、Gはガイシ、Tは鉄塔、Rは電力供給線DとガイシGとを連結する導体の電結部、Hは同電結部に取り付けた引き留めクランプ、Mは無線通信部M1と通信制御部M2とを有する所内電力供給線状態管理システム装置、Nは無線ネット情報管理局である。
【0021】
本実施例1の振動発生手段は、電力供給線Dに超音波振動を生起する超音波振動子2aと、同超音波振動子を作動させる超音波制御回路2bとからなる。
【0022】
本実施例1の振動受信手段は、超音波振動を受信する受信センサー3aと、同受信センサーから振動の波形信号を出力する振動受信回路3bとからなる。
【0023】
本実施例1の傷検出手段は、同受信回路3bの発生超音波振動の波形信号と反射して受信された超音波振動の反射波の波形信号を入力して、その波形信号の時間差から反射した位置を算出し、その位置からその反射波が次の鉄塔からの戻りの反射波が、その中間の傷又は腐食個所から生じた反射波かの判断し、その判断結果、位置情報及び各波形信号情報を無線制御部5に出力する傷検出位置算出部4aで構成されている。
【0024】
本実施例1の親機1aの電力供給線監視装置の無線制御部5は、無線送受信回路5aと、同無線送受信回路に傷・漏れ等の測定・算出した各種情報とこの監視装置の固有の識別情報(鉄塔IDと電力供給線IDの識別情報)及び他の鉄塔から受信したこれらの情報・命令を変調して送信する送信変調部5bと、送信する前記情報を一時記憶する送信情報記憶部5cと、無線送受信回路5aで受信した自己の電力供給線監視装置に向けられた制御操作命令・情報を抽出し、及び受信した他の鉄塔の情報命令等を抽出する受信命令情報抽出部5dと、同受信命令情報抽出部5dで受信した自己の電力供給線に係る命令を命令された回路の制御信号に変換して制御信号を各回路へ出力し、他の電力供給線に係る命令は、送信変調部5bへ入力し、無線送受信回路5aから子機1bに向けて送信させる命令制御部5eと、受信した情報命令を一時記憶する受信情報一時記憶部5fとの6つの部分の無線送受信回路5a・送信変調回路5b・受信命令情報抽出部5d・送信情報記憶部5c・命令制御部5e・受信情報一時記憶部5fとからなる。尚、子機1bとなる電力供給線監視装置の無線制御部5の受信情報一時記憶部5fでは他の鉄塔に関する情報命令については記憶はせず、又送信情報記憶部5cでも他の鉄塔の情報を記憶しない。更に子機1bには天候観測装置8,震度観測装置9との接続はあまりなくこれらの情報の授受及びその記憶はあまりしない。他は、子機の構成・機能は親機のものと同じである。これら電力供給線監視装置1の構成は、電気回路・半導体チップ・ロジカル回路・小型CPU等を用いて製作される。
【0025】
本実施例1の給電手段は、電力供給線Dの外周に非接触的に取り付けたピックアップコイル6aと、同ピックアップコイルの電流を整流する整流器6bと、同整流器の電力を充電器6dに充電する充電回路6cと、充電器6dと、電源の給電と停止とを管理する電源制御部6eとからなる。
【0026】
本実施例1の漏れ電流検出手段は、ガイシGの電力供給線D側の連結部の外周に非接触的に取り付けたピックアップコイル7aと、同ピックアップコイルの電流から漏れ電流を検出して漏れ電流情報を送信情報記憶部5cへ出力する漏れ電流検出部7bとからなる。
【0027】
本実施例1の天候観測装置8は親機1aにのみに接続され、本実施例1の電力供給線監視装置1を装置した鉄塔Tに取り付けた温度計8a,湿度計8b,風速計8c,気圧計8d,風向計8eと、これら観測器の観測データを所定の電気的信号に変換して送信情報記憶部5cへ出力する天候情報出力部8fとからなる。
【0028】
本実施例1の震度観測装置9は親機にのみ接続され、鉄塔Tに設置した震度計9aと、同震度計の震度データを送信情報記憶部5cへ出力する震度出力部9bとからなる。
【0029】
本実施例1の動作について説明する。
本実施例1では、ピックアップコイル6aが電力供給線Dの外周に非接触的に取り付けられていて、電力供給線Dの交番電流によってピックアップコイル6aには微小電流が発生し、この電流を整流器6bで整流し、充電回路6cによって充電器6dに充電される。この充電は電力供給線Dに大電流が流されているので常時微小電流を得て充電器6dを充分に充電できる。電源制御部6eは、電力が必要な回路・装置に給電し、不要な場合は給電停止して省エネとしている。又充電不足の時は充電が完了するまで給電の一時停止もできるようになっている。この給電方式は、商用電源等の外部電源から配線によって電源を得るものでないので電源線の配線工事が不要となる。又充電器6dは常時充電できるので、充電器の交換も不要にできる。
【0030】
この実施例1では、超音波制御回路2bは定期的に一定時刻になると、又は無線による命令があると、超音波振動子2aを作動させ、20kHzの超音波の1mS〜10mS程のバースト波を発生させる。同バースト波はクランプ本体10の外周から電力供給線Dに伝わって同電力供給線Dを5000m/s程の速さで伝播する。電力供給線Dの500m程離れた次の鉄塔で反射される。又途中に傷・腐食があるとこの位置からも反射される。この発生振動と反射波は電力供給線Dのクランプ本体10に近い所に配置した超音波受信センサー3aが検出して、振動受信回路3bに入力し、更にこれら振動情報は傷検出位置算出部4aに入力される。図6に発生振動と反射波の波形を示している。
【0031】
同傷検出位置算出部4aでは、振動の伝播速度vが5000m/sであるので、発生振動の時刻と反射波の到達までの時間△tから、反射位置は△t*v/2でもって算出し、その反射位置が1〜500mの鉄塔の中間であれば電力供給線Dの途中の傷又は腐食の個所からの反射であると判定し、測定年月日時刻と判定結果及びデータをデジタル化して電力供給線IDとともに送信情報記憶部5cへその測定年月日時刻を付して入力して一時記憶する(図4のフロー図参照)。
【0032】
漏れ電流検出は、ガイシGの外周に非接触的に設けたピックアップ7aが、ガイシGの表面に汚れ・付着物等によって電流が流れると、その電流を検出して、漏れ電流検出部7bへその電流値を入力し、漏れ電流の大きさから、それが漏れ電流か否か判定し、判定結果及びその測定年月日時刻とそのデータをデジタル化して電力供給線IDとともに送信情報記憶部5cで記憶する。
【0033】
電力供給線監視装置1の親機1aの方では、天候観測装置8の温度計8a,湿度計8b,風速計8c,気圧計8d,風向計8e等の鉄塔T近くの天候のデータが、天候情報出力部8fへ入力され、これら情報はデジタル化して観測年月日時刻と鉄塔IDとともに送信情報記憶部5cへ入力されて一時記憶される。
【0034】
同様に、震度観測装置9の震度データを震度出力部9bに入力しその震度の程度を判定し、その結果とデータを測定年月日時刻と鉄塔IDを付して送信情報記憶部5cに入力し一時記憶する。
【0035】
このように、電力供給線監視装置1の親機1a,子機1bともに、鉄塔Tの各電力供給線Dの傷・腐食個所の有無とその位置情報,ガイシの漏れ電流情報には、鉄塔IDと電力供給線IDとこれらの測定年月日時刻情報と併せて送信情報記憶部5cに入力されて記憶される。
【0036】
親機1aでは、天候情報,震度情報も、鉄塔IDと測定年月日時刻とともに送信情報記憶部5cに入力され記憶される。
【0037】
これらの送信情報記憶部5cの記憶された情報は、定刻又は不定期的に送信変調部5bに送られ、無線送受信回路5aから無線で送信される。
【0038】
同じ鉄塔Tにある子機1bの方は、親機1aの方へ送られる。
【0039】
親機1aでは、子機1bからのこれら情報の電波と、他の鉄塔Tからの情報・命令の電波とを無線送受信回路5aで受信し、受信命令情報抽出部5dで、電波のうち、機器の命令と内容の情報とに弁別し、自己の鉄塔Tで自己の電力供給線に関する命令の場合は命令制御部5eに入力し、この電力供給線監視装置1の各構成の作動命令として信号を発生する。自己の鉄塔で他の電力供給線の場合は、その電力供給線IDを付して送信変調部5bに入力し、無線送受信回路5aを介して子機1bへ無線で送信する(図7,8の処理フローを参照)。子機の処理フローは図9参照。
一方、他鉄塔の命令及び内容のコンテンツの情報に関しては、受信情報一時記憶部5fに入力し、送信情報記憶部5cへ入力され、記憶され、自己の鉄塔の自己の電力供給線の情報及び同じ鉄塔の他の電力供給線の情報を集約化して、及び他の鉄塔に関する記憶された命令・情報とともに次の鉄塔へ適時送信される。
【0040】
このように、自己の鉄塔の各種情報の他に他の鉄塔の命令及び情報も、次々と鉄塔へ無線で授受していって、電力供給線下流にある無線ネット情報管理局Nへ送られる。これら情報は、ケーブル又は無線によって鉄塔の出発地の発電所、又は大型電力中継基地へも送られる。
【0041】
このように、各鉄塔及びその電力供給線に関する全情報は鉄塔間無線で無線ネット情報管理局N,所内電力供給線状態管理システム装置Mで集約されて管理される。又必要な命令もここから発信できるようになっている。
本実施例1において、鉄塔無線ネットとせず、全て子機1bのみにして、無線で10km程以内に設けた既設の所内電力供給線状態管理システム装置Mとの間で無線で情報・命令の直接の送信を行うようにしてもよい。この所内電力供給線状態管理システム装置Mと発電所,中央電力管理局等とはインターネット又はオンラインで情報を送受するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、鉄塔の天候・地震情報を広域に得ることができ、天気予報,大気の公害状況,地震の正確な情報ネットを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1の説明図である。
【図2】実施例1の親機となる電力供給線監視装置の構成を示す説明図である。
【図3】実施例1の子機となる電力供給線監視装置の構成を示す説明図である。
【図4】傷検出回路の傷・腐食の位置検出と判定フロー図である。
【図5】実施例1の電力供給線監視ネットシステムの説明図である。
【図6】実施例1の発生振動と反射波の状態を示す説明図である。
【図7】実施例1の親機の処理フローを示す説明図である。
【図8】実施例1の親機の処理フローを示す説明図である。
【図9】実施例1の子機の処理フローを示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 電力供給線監視装置
1a 親機
1b 子機
2a 超音波振動子
2b 超音波制御回路
3a 超音波受信センサー
3b 振動受信回路
4a 傷検出位置算出部
5 無線制御部
5a 無線送受信回路
5b 送信変調部
5c 送信情報記憶部
5d 受信命令情報抽出部
5e 命令制御部
5f 受信情報一時記憶部
6a 給電用ピックアップコイル
6b 整流器
6c 充電回路
6d 充電器
6e 電源制御部
7a 漏れ電流検出用ピックアップコイル
7b 漏れ電流検出部
8 天候観測装置
8a 温度計
8b 湿度計
8c 風速計
8d 気圧計
8e 風向計
8f 天候情報出力部
9 震度観測装置
9a 震度計
9b 震度出力部
10 クランプ本体
10a 導電部
C 時計
ID 識別情報発生部
D 電力供給線
G ガイシ
T 鉄塔
R 電結部
H 引き留めクランプ
M 所内電力供給線状態管理システム装置
M1 無線通信部
M2 通信制御部
N 無線ネット情報管理局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給線に振動を与える振動発生手段と、同振動発生手段と近接した位置に設けた電力供給線上に生ずる振動を受信する振動受信手段と、振動受信手段が受信した前記振動発生手段の発生振動の波形信号とその振動の反射波の波形信号とを入力してそれらの波形信号の時間差又はその位相差から電力線上の傷又は腐食個所の有無とその位置を算出する傷検出手段と、前記振動発生手段・振動受信手段又は傷検出手段が得た情報を無線で識別情報を付して外部に送信し且つ外部からこれら手段の制御操作命令を受信してこれら手段をその命令に基づいて作動させる無線制御部と、電気供給線からコイルを用いて非接触的に電流を抽出して充電してその電力を前記各手段及び無線制御部に給電する給電手段とを備えた、電力供給線監視装置。
【請求項2】
無線制御部によって制御され、給電手段から給電され、電力供給線を固定する絶縁ガイシに流れる漏れ電流を検出してその信号を無線制御部に入力する漏れ電流検出手段を備え、漏れ電流情報を外部に無線で送信できるようにした、請求項1記載の電力供給線監視装置。
【請求項3】
漏れ電流検出手段は、電力給電線を固定する絶縁ガイシの外周に非接触のピックアップコイルを設けて同ピックアップによって漏れ電流を検出するようにした、請求項2記載の電力供給線監視装置。
【請求項4】
電力供給線のある鉄塔付近の大気の温度・湿度・風向・風速・気圧・大気中のチリ・黄砂又は特定ガスの量の天候状態を測定してそのデータを無線制御部に入力する天候観測装置を備え、同天候観測装置は給電手段から給電を受け、無線制御部からの命令で制御されるようにし、天候情報を無線制御部から識別情報を付して外部へ無線で送信できるようにした、請求項1〜3いずれか記載の電力供給線監視装置。
【請求項5】
電力供給線のある鉄塔に地震の震度観測装置を設置し、同震度観測装置の観測データは無線制御部に入力され、震度観測装置は給電手段から給電を受け、無線制御部からの命令で制御されるようにし、地震情報を無線制御部から識別情報を付して外部へ無線で送信できるようにした、請求項1〜4いずれか記載の電力供給線監視装置。
【請求項6】
請求項1〜5の電力供給線監視装置を電力供給線を支持する鉄塔毎に設け、各鉄塔の供給線監視装置の無線制御部はその供給線監視装置で得た情報を自己の識別情報を付して無線で他の鉄塔の供給線監視装置の無線制御部に送信し、受信した無線制御部は自己の情報の他に受信した他の鉄塔の情報をその識別情報を付して更に次の鉄塔へ送信して、情報の無線ネットを形成した、電力供給線監視ネットシステム。
【請求項7】
同じ鉄塔の電力供給線に取り付けた複数の電力供給線監視装置のうち、一つの親機となる電力供給線監視装置の無線制御部のみが鉄塔間における無線による情報命令の授受が行え、同じ鉄塔の他の電力供給線監視装置の無線制御部は、前記親機の無線制御部と無線で情報命令の授受を行い、同じ鉄塔の各電力供給線の情報及び命令は親機に集約して他の鉄塔へ授受されるようにした、請求項6記載の電力供給線監視ネットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−291046(P2009−291046A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143437(P2008−143437)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(500372717)学校法人福岡工業大学 (32)
【出願人】(391057764)株式会社巧電社 (4)
【Fターム(参考)】