説明

電力変換装置

【課題】電力変換装置においてスイッチング素子のオンオフ動作によって発生するコモンモードノイズを低減できるようにする。
【解決手段】上アーム側スイッチング素子(130)が搭載され、搭載された上アーム側スイッチング素子(130)の一方のドレイン(131)が接する上アーム側パターン配線(40)と、下アーム側スイッチング素子(140)のみが1つ搭載され、搭載された下アーム側スイッチング素子(140)の一方のソース(142)が接する複数の下アーム側パターン配線(50)とを設ける。また、各上アーム側スイッチング素子(130)のもう一方のソース(132)と複数の下アーム側パターン配線(50)とを上アーム側ワイヤ配線(70)で1対1に接続する。そして、下アーム側パターン配線(50)と電力出力端子(20)とを出力端子側ワイヤ配線(80)で1対1に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力から交流電力への変換や、交流電力から直流電力への変換を行う電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機などの冷凍装置では、電動機に電力を供給するために、電力変換装置(インバータ回路など)が用いられる。この電力変換装置は、直流電力から交流電力への変換や、交流電力から直流電力への変換を行う装置である。このような電力変換装置には、複数のスイッチング素子で上アームと下アームを構成し、該スイッチング素子のオンオフ動作により所定の電力を得るようになっているものがある。このようなスイッチング素子は、ベアチップとして形成してプリント基板上に搭載し、上アームと下アームの両方を含んだモジュール(パワーモジュール)として構成するのが一般的である。そして、これらのスイッチング素子は動作中に発熱するので、スイッチング素子を冷却するためのヒートシンクがパワーモジュールに設けられる場合がある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−99677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のパワーモジュールでは、スイッチング素子が取り付けられているパターン配線と、ヒートシンクとがコンデンサを構成するので、ヒートシンクが電気的に接地されていると、スイッチング素子のオンオフ動作で発生した電圧変動によって高周波電流がそのコンデンサに流れ、それがノイズ(コモンモードノイズ)として流出することになる。特に、下アームのスイッチング素子の高電圧側のノード(コレクタ)がパターン配線に接続されていると、その部分でより大きな高周波電流が発生する可能性がある。特に、SiC(Silicon Carbide,炭化ケイ素)を主材料に用いたスイッチング素子を電力変換装置に採用して、高速なスイッチングを行うと、前記コモンモードノイズはより顕著になると考えられる。
【0005】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、電力変換装置においてスイッチング素子のオンオフ動作によって発生するコモンモードノイズを低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の発明は、
上アームを構成する複数の上アーム側スイッチング素子(130)と、
下アームを構成する複数の下アーム側スイッチング素子(140)と、
複数の電力出力端子(20)と、
前記下アーム側スイッチング素子(140)のみが1つ搭載され、搭載された下アーム側スイッチング素子(140)の一方の被制御端子(142)が接する複数の下アーム側パターン配線(50)と、
前記下アーム側パターン配線(50)と前記電力出力端子(20)とを1対1に接続する複数の出力端子側ワイヤ配線(80)と、
を備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成では、下アーム側パターン配線(50)と電力出力端子(20)との間が出力端子側ワイヤ配線(80)によって結ばれているので、下アーム側パターン配線(50)の面積を低減させることが可能になる。したがって、この下アーム側パターン配線(50)を電極とするコンデンサの容量を低減させることが可能になる。
【0008】
また、第2の発明は、
第1の発明の電力変換装置において、
それぞれの下アーム側パターン配線(50)は、前記下アーム側スイッチング素子(140)を1つ搭載する大きさの搭載部(51)と、前記出力端子側ワイヤ配線(80)のみを接続する接続部(52)とから構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成では、下アーム側パターン配線(50)は、下アーム側スイッチング素子(140)の搭載と、出力端子側ワイヤ配線(80)の接続のみに使用される。すなわち、下アーム側パターン配線(50)の面積をより効果的に低減させることが可能になる。
【0010】
また、第3の発明は、
第2の発明の電力変換装置において、
前記出力端子側ワイヤ配線(80)は、ワイヤボンディングにより前記接続部(52)に接続され、
前記接続部(52)は、前記ワイヤボンディングが可能な最小限の面積であることを特徴とする。
【0011】
この構成により、ワイヤボンディングにより、出力端子側ワイヤ配線(80)を下アーム側パターン配線(50)に接続することが可能になる。
【0012】
また、第4の発明は、
第1から第3の発明のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記上アーム側スイッチング素子(130)、及び前記下アーム側スイッチング素子(140)は、それぞれの被制御端子(131,132,141,142)間において双方向の電流を許容するスイッチング素子であることを特徴とする。
【0013】
この構成では、各スイッチング素子(130,140)として、いわゆる双方向スイッチを用いているので、後述の同期整流が可能になる。すなわち、この構成では、還流ダイオードを省略できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、第1の発明によれば、下アーム側パターン配線(50)を電極とするコンデンサの容量を低減させることが可能になるので、下アーム側スイッチング素子(140)のオンオフ動作によって発生するコモンモードノイズを低減することが可能になる。
【0015】
また、第2の発明によれば、下アーム側パターン配線(50)の面積をより効果的に低減させることが可能になるので、より効果的に前記コモンモードノイズを低減することが可能になる。
【0016】
また、第3の発明によれば、ワイヤボンディングにより電力変換装置を製造する場合に上記の効果を得ることが可能になる。
【0017】
また、第4の発明によれば、還流ダイオードを省略できるので、上アーム側パターン配線(40)や下アーム側パターン配線(50)の面積を低減させて、各スイッチング素子(130,140)のオンオフ動作によって発生するコモンモードノイズを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同期整流の基本的な概念を示す図である。
【図3】インバータ回路におけるスイッチング素子の実装状態を模式的に示す図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である
【図4】下アーム側パターン配線の構成を説明する図である。
【図5】インバータ回路におけるノイズ(コモンモードノイズ)の発生原理を説明する図である。
【図6】本実施形態のインバータ回路における電流経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
《発明の実施形態の概要》
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。この電力変換装置(1)は、交流電源(2)をコンバータ回路(110)によって整流し、その直流をインバータ回路(120)によって三相交流に変換してモータ(3)に供給するものである。このモータ(3)は、例えば、空気調和機の冷媒回路に設けられる圧縮機を駆動するものである。なお、図1では、交流電源(2)を単相交流としているが、三相交流としてもよい。
【0021】
なお、本明細書でいう「電力変換装置」とは、本実施形態のようにコンバータ回路(110)とインバータ回路(120)の両方を含んだものの他、例えばインバータ回路のみで構成された装置も含む概念である。
【0022】
《インバータ回路(120)》
インバータ回路(120)は、上アームを構成する3つの上アーム側スイッチング素子(130)と、下アームを構成する3つの下アーム側スイッチング素子(140)とを備え、これら6個のスイッチング素子(130,140)によって同期整流を行うように構成されている。これらのスイッチング素子(130,140)は、それぞれのドレイン・ソース間(これらの端子を被制御端子と呼ぶ)において双方向の電流を許容するいわゆる双方向スイッチング素子である。具体的には、それぞれのスイッチング素子(130,140)は、ワイドバンドギャップ半導体を用いたユニポーラ素子(ここでは、SiC MOSFET)である。また、本実施形態では、1つのスイッチング素子(130,140)は、1つのベアチップとして形成され、ベアチップの一方の面にドレイン電極が形成され、もう一方の面にソース電極とゲート電極が形成されている。
【0023】
また、インバータ回路(120)は、各スイッチング素子(130,140)の逆導通特性を利用し、同期整流を行う。図2は、同期整流の基本的な概念を示す図である。同期整流とは、図2に示すように、寄生ダイオード(133,143)に逆方向電流が流れる際に、スイッチング素子(130,140)をオンにし、該スイッチング素子(130,140)側に逆方向電流を流す制御方法である。これにより逆方向電流が流れた際の導通損失を低減できる。
【0024】
〈インバータ回路(120)におけるスイッチング素子の実装〉
図3は、インバータ回路(120)におけるスイッチング素子(130,140)の実装状態を模式的に示す図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。この例では、各スイッチング素子(130,140)は、絶縁基板(10)上に実装され、電力出力端子(20)を介して交流電力を出力する。具体的には、このインバータ回路(120)では、3相交流の各相(U,V,W)に対応した3つの電力出力端子(20)が設けられている。これらの電力出力端子(20)は、図3に示すように、例えばリードフレームによって構成され、その一端が、プリント基板(15)に対して半田付けにより接続されている。上記のように絶縁基板(10)上に形成されたインバータ回路(120)は、コンバータ回路(110)や駆動回路(図示は省略)とともに、所定のパッケージ(図示は省略)に収容されてパワーモジュールを構成している。
【0025】
本実施形態のインバータ回路(120)では、各スイッチング素子(130,140)等は、絶縁基板(10)上のパターン配線やワイヤ配線によって電気的に接続されている。具体的には、この絶縁基板(10)には、パターン配線として、グランド側パターン配線(30)、上アーム側パターン配線(40)、及び下アーム側パターン配線(50)が設けられている。また、このインバータ回路(120)ではワイヤ配線として、グランド側ワイヤ配線(60)、上アーム側ワイヤ配線(70)、及び出力端子側ワイヤ配線(80)が設けられている。これらのワイヤ配線は、いわゆるワイヤボンディングにより、パターン配線(30,40,50)やスイッチング素子(130,140)と接続されている。
【0026】
〈パターン配線〉
グランド側パターン配線(30)は、コンバータ回路(110)の負側のノードに接続されている。
【0027】
また、上アーム側パターン配線(40)は、コンバータ回路(110)の正側のノードに接続されている。そして、この上アーム側パターン配線(40)には、3つの上アーム側スイッチング素子(130)が実装されている。より具体的には、それぞれの上アーム側スイッチング素子(130)は、ドレイン(131)側の面を上アーム側パターン配線(40)側にして搭載され、該ドレイン(131)(一方の被制御端子)が上アーム側パターン配線(40)と電気的に接続されている。
【0028】
下アーム側パターン配線(50)は、絶縁基板(10)上の3箇所に設けられている。それぞれの下アーム側パターン配線(50)には、1つの下アーム側スイッチング素子(140)のみが搭載されている。より具体的には、それぞれの下アーム側スイッチング素子(140)は、ドレイン(141)側の面を下アーム側パターン配線(50)側にして搭載され、該ドレイン(141)(一方の被制御端子)が下アーム側パターン配線(50)と電気的に接続されている。なお、これらの下アーム側パターン配線(50)の構成については後に詳述する。
【0029】
〈ワイヤ配線〉
グランド側ワイヤ配線(60)は、下アーム側スイッチング素子(140)毎に設けられている。この例では、1つの下アーム側スイッチング素子(140)に対して2本のグランド側ワイヤ配線(60)が設けられている。それぞれのグランド側ワイヤ配線(60)は、対応した下アーム側スイッチング素子(140)のソース(142)(もう一方の被制御端子)と、グランド側パターン配線(30)とを電気的に接続している。
【0030】
また、上アーム側ワイヤ配線(70)は、上アーム側スイッチング素子(130)毎に設けられている。この例では、1つの上アーム側スイッチング素子(130)に対して2本の上アーム側ワイヤ配線(70)が設けられている。それぞれの上アーム側ワイヤ配線(70)は、図3に示すように、上アーム側スイッチング素子(130)のソース(132)(もう一方の被制御端子)と下アーム側パターン配線(50)とを1対1に接続している。
【0031】
また、出力端子側ワイヤ配線(80)は、下アーム側パターン配線(50)毎に設けられている。出力端子側ワイヤ配線(80)も、1つの下アーム側パターン配線(50)に対し、2本ずつが設けられている。そして、それぞれの出力端子側ワイヤ配線(80)は、対応した下アーム側パターン配線(50)と電力出力端子(20)とを電気的に接続している。
【0032】
〈下アーム側パターン配線(50)の構成〉
図4は、下アーム側パターン配線(50)の構成を説明する図である。それぞれの下アーム側パターン配線(50)は、図4に示すように、下アーム側スイッチング素子(140)を1つ搭載する大きさの搭載部(51)と、出力端子側ワイヤ配線(80)のみを接続する接続部(52)とから構成されている。
【0033】
搭載部(51)は、理論的にはベアチップ(すなわち下アーム側スイッチング素子(140))の搭載面(ドレイン(141)側の面)と同じ大きさでよいが、この例では、製造(搭載作業)が可能な最小限の大きさを確保するため、ベアチップよりも若干大きめに設定している。これにより、図4に示すように、搭載部(51)では、該ベアチップを搭載した際に、周縁にわずかにスペースができている。
【0034】
また、接続部(52)は、ワイヤボンディングが可能な最小限の大きさである。具体的に、本実施形態の接続部(52)の大きさは、図4に示すように、実際にワイヤをボンディングする部分の大きさと、ボンディング後にワイヤの先端を切断するための作業領域の大きさから決定している。例えば、ボンディングする部分の大きさは、使用するワイヤのサイズ(太さ)等から決定すればよい。また、切断の作業領域は、製造装置などの都合で決定することになる。具体的には、例えば、ワイヤの先端とベアチップとの間に6ミリ程度の間隔を要する例がある(図4を参照)。
【0035】
《本実施形態における効果》
〈インバータ回路(120)におけるコモンモードノイズ〉
図5は、インバータ回路(120)におけるノイズ(コモンモードノイズ)の発生原理を説明する図である。この例ではインバータ回路(120)が収容されたパッケージにヒートシンク(150)が取り付けられ、ヒートシンク(150)は電気的に接地させられている。このヒートシンク(150)は、各スイッチング素子(130,140)等を空冷するものであり、前記パッケージ外面部材(例えば金属板など)を介して、絶縁基板(10)に熱的に接続されている。
【0036】
このような構成では、絶縁基板(10)上のパターン配線(30,40,50)とヒートシンク(150)とが絶縁体(絶縁基板(10))を介して対向することになる。すなわち、絶縁基板(10)のパターン配線(30,40,50)とヒートシンク(150)との間にコンデンサが形成されることになる。この状態で、各スイッチング素子(130,140)がオンオフ動作を繰り返すと、このコンデンサの両端で電圧変動が起こり、高周波電流が図5に破線で示した経路にコモンモードノイズとして流れる。このとき、インバータ回路(120)において電圧変化率が比較的大きなノードは、下アーム側スイッチング素子(140)のドレイン(141)側である。つまり、絶縁基板(10)のパターン配線(30,40,50)のうち、電圧変化率が比較的大きな配線パターンは、下アーム側パターン配線(50)ということになる。したがって、このインバータ回路(120)でのコモンモードノイズの大きさは、下アーム側パターン配線(50)とヒートシンク(150)とによって構成されたコンデンサ(C)を流れる高周波電流の大きさが支配的になる。そして、スイッチング動作で発生する高周波電流は、該コンデンサ(C)の容量が大きいほど大きくなる傾向にある。
【0037】
〈コモンモードノイズの大きさ〉
ところで、一般的なインバータ回路では、上記のような絶縁基板にベアチップを搭載する場合には、スイッチング素子間やスイッチング素子と他の端子との間の配線は、なるべくパターン配線を用いて、ワイヤ配線を用いる箇所を最小限にとどめるようにするのが一般的である(以下、説明の便宜上このようなインバータ回路を、従来のインバータ回路と呼ぶ)。これは、パターン配線で配線した方がワイヤ配線で配線するよりも容易であるうえ、コストも低減できるからである。したがって、本来ならば、上記の下アーム側スイッチング素子(140)と電力出力端子(20)の間もパターン配線で結ぶ方がコストなどの面からは有利である。
【0038】
しかしながら、下アーム側スイッチング素子(140)と電力出力端子(20)の間をパターン配線で結ぶと、実質的に下アーム側パターン配線(50)の面積が増大することになる。これにより、下アーム側パターン配線(50)とヒートシンク(150)とによって構成されたコンデンサ(C)の容量が増大し、該コンデンサ(C)を流れる高周波電流(コモンモードノイズ)も増大することになる。
【0039】
その点、本実施形態によれば、下アーム側パターン配線(50)と電力出力端子(20)との間がワイヤ配線(80)によって結ばれているので、従来のインバータ回路に比べ、下アーム側パターン配線(50)の面積を低減できるのである。すなわち、本実施形態の電力変換装置(1)によれば、スイッチング素子のオンオフ動作によって発生するコモンモードノイズを低減することが可能になる。
【0040】
また、下アーム側パターン配線(50)は、下アーム側スイッチング素子(140)を1つ搭載する大きさの搭載部(51)と、出力端子側ワイヤ配線(80)のみを接続する接続部(52)とから構成されている。つまり、この下アーム側パターン配線(50)は、下アーム側スイッチング素子(140)の搭載と、出力端子側ワイヤ配線(80)の接続のみに使用されるのである。したがって、本実施形態では、下アーム側パターン配線(50)の面積をより効果的に低減させることが可能になり、コモンモードノイズのより大きな低減を期待できる。
【0041】
そして、本実施形態の下アーム側パターン配線(50)は、ワイヤボンディングが可能な最小限の大きさに、接続部(52)を形成している。つまり、ワイヤボンディングにより電力変換装置(1)を製造する場合に上記の効果を得ることが可能になる。
【0042】
〈ノイズモード変換〉
また、図6は、インバータ回路(120)における電流の経路を説明する図である。このインバータ回路(120)には3相に対応した電流経路がある。具体的には、上アーム側パターン配線(40)とコンバータ回路(110)の正側との接続ノード(P)から、上アーム側パターン配線(40)、上アーム側スイッチング素子(130)、上アーム側ワイヤ配線(70)、及び下アーム側パターン配線(50)を経て電力出力端子(20)に至る電流経路が3相分ある。また、電力出力端子(20)、出力端子側ワイヤ配線(80)、下アーム側パターン配線(50)、下アーム側スイッチング素子(140)、グランド側ワイヤ配線(60)、及びグランド側パターン配線(30)を経て、該グランド側パターン配線(30)とコンバータ回路(110)の負側との接続ノード(N)に至る電流経路が3相分ある。図6では、これらの電流経路のうち、U相,W相についての経路を矢印で示してある(図中のA1、A2、B1、B2)。そして、電流経路(A1)のインピーダンスと電流経路(A2)のインピーダンスとが異なっていたり、電流経路(B1)のインピーダンスと電流経路(B2)のインピーダンスとが異なっていたりすると、上記のコモンモードノイズがノーマルモードノイズに変換される場合がある。
【0043】
本実施形態では、各パターン配線(40,50)には、スイッチング素子(130,140)以外の素子が搭載されていないので、各スイッチング素子(130,140)を近接して配置することができる。この例では、図3に示すように、3つの上アーム側スイッチング素子(130)同士は、互いに近接して一列に並んで配置されている。同様に、3つの下アーム側スイッチング素子(140)同士も互いに近接して一列に並んで配置されている。そして、上アーム側スイッチング素子(130)の列と、下アーム側スイッチング素子(140)の列とは近接して配置されている。これにより、例えば、パターン配線上に外付けのダイオードが搭載されたインバータ回路(従来のインバータ回路と呼ぶ)よりも、各相の電流経路の長さの差を小さくすることが可能になる。すなわち、本実施形態では、各相の電流経路のインピーダンスの差を低減することが可能になるのである。したがって、本実施形態によれば、従来のインバータ回路と比べ、コモンモードノイズからノーマルモードノイズへの変換を抑制することができ、回路の誤動作等を防ぐことが出来る。
【0044】
《その他の実施形態》
なお、本実施形態における各パターン配線(30,40,50)の配置や形態は例示である。
【0045】
また、上記の実施形態は空冷用のヒートシンク(150)以外の冷却機構を用いてスイッチング素子等(インバータ回路(120))を冷却する場合にも有効である。空冷用ヒートシンク以外の冷却機構としては、例えば、冷凍装置の冷媒回路を循環する冷媒でパワーデバイスを冷却する構成の冷却機構等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、直流電力から交流電力への変換や、交流電力から直流電力への変換を行う電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 電力変換装置
20 電力出力端子
40 上アーム側パターン配線
50 下アーム側パターン配線
51 搭載部
52 接続部
70 上アーム側ワイヤ配線
80 出力端子側ワイヤ配線
130 上アーム側スイッチング素子
131 ドレイン(被制御端子)
132 ソース(被制御端子)
140 下アーム側スイッチング素子
142 ソース(被制御端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームを構成する複数の上アーム側スイッチング素子(130)と、
下アームを構成する複数の下アーム側スイッチング素子(140)と、
複数の電力出力端子(20)と、
前記下アーム側スイッチング素子(140)のみが1つ搭載され、搭載された下アーム側スイッチング素子(140)の一方の被制御端子(142)が接する複数の下アーム側パターン配線(50)と、
前記下アーム側パターン配線(50)と前記電力出力端子(20)とを1対1に接続する複数の出力端子側ワイヤ配線(80)と、
を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1の電力変換装置において、
それぞれの下アーム側パターン配線(50)は、前記下アーム側スイッチング素子(140)を1つ搭載する大きさの搭載部(51)と、前記出力端子側ワイヤ配線(80)のみを接続する接続部(52)とから構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2の電力変換装置において、
前記出力端子側ワイヤ配線(80)は、ワイヤボンディングにより前記接続部(52)に接続され、
前記接続部(52)は、前記ワイヤボンディングが可能な最小限の面積であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記上アーム側スイッチング素子(130)、及び前記下アーム側スイッチング素子(140)は、それぞれの被制御端子(131,132,141,142)間において双方向の電流を許容するスイッチング素子であることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24348(P2011−24348A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167528(P2009−167528)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】